不正解です。
取締役への委任事項の内容に変更がないのであれば、委任内容について取締役会で毎年決議をする必要はありません。問題文は誤りです。
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2019年7月3日 取締役への委任事項の決議(会員限定)
不正解です。
取締役への委任事項の内容に変更がないのであれば、委任内容について取締役会で毎年決議をする必要はありません。問題文は誤りです。
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2019年7月3日 取締役への委任事項の決議(会員限定)
正解です。
取締役への委任事項の内容に変更がないのであれば、委任内容について取締役会で毎年決議をする必要はありません。問題文は誤りです。
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2019年7月3日 取締役への委任事項の決議(会員限定)
東証一部上場企業のA社では、同じく東証一部上場企業でX事業やY事業を営むB社の株式の51%を保有しています。このたびA社はB社に対してB社の展開するX事業をA社に譲渡してもらう案を打診したところ、B社の独立役員会および取締役会で否決されました。そこでA社の取締役会ではB社への対応策を検討中です。3人の発言のうち、誰の発言がGood発言でしょうか?(本役員会Good&Bad発言集は実際の事例に題材を求めていますが、発言内容自体はフィクションです)
取締役A:「ちょうどB社の定時株主総会で議決権を行使するタイミングなので、X事業の譲渡に反対した取締役全員の再選議案に反対する案はどうでしょう。業績不振の責任を取ってもらいます。」
取締役B:「独立社外取締役の再選議案にも反対すると言うことですね。でも、独立社外取締役の再選議案は業績不振とは直接の関係がないのではないでしょうか。むしろ、X事業を当社へ譲渡する案に反対された直後に独立社外取締役の再選議案に反対票を投じてしまうと、わが社がB社の少数株主の意見を無視したかのように受け止められてしまうリスクがあります。」
取締役C:「株主総会の議決権行使を資本の論理に委ねるのは当然の話です。なんといっても、わが社はB社の議決権の過半数をおさえているので、B社の独立社外取締役の人事を決めるのは親会社である当社をおいて他にはありません。」
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上場子会社を有している上場会社が、その上場子会社の株主総会の議決権を行使する際に留意しなければならないことの一つに、自社以外の株主(一般株主)への配慮があります。すなわち、子会社が100%子会社ではなければ、自社の利益と一般株主の利益が相反する(利益相反となる)場合が生じ得ますが、その子会社が「上場」している以上、一般株主への利益にも配慮しなければ、証券市場に対する信認が揺らぎかねません。
このように「上場子会社」は、そもそもからして利益相反を内在した存在であることは、以前から日本の証券市場の特殊性として指摘されてきました(上場子会社の役員人事と利益相反については2019年6月25日のニュース「上場子会社の役員人事」を参照)。経済産業省が「グループ・ガバナンス・システムに関する実務指針」を策定し、「上場子会社に関するガバナンスの在り方」に1章を割いたのも、上場子会社が抱える問題解決に向けてのガイドラインを示すことを目的としていました。「グループ・ガバナンス・システムに関する実務指針」が公表された矢先に勃発したのが「ヤフー・アスクル」問題です。
この問題はまずアスクルが2019年7月17日に公表した下記のリリース「ヤフー株式会社からの社長退陣要求と、アスクルからの提携解消協議申入れのお知らせ」で明らかになりました。
各位
ヤフー株式会社からの社長退陣要求と、アスクルからの提携解消協議申入れのお知らせ
当社は、当社株主ヤフー株式会社(以下「ヤフー社」)との間の業務・資本提携関係(以下「本提携関係」)を解消すべく、ヤフー社に対し、協議の申入れを行いましたので、お知らせいたします。
1.本件経緯
当社とヤフー社は、2012年4月に業務・資本提携契約を締結し、ヤフー社は当社の議決権の42.47%(現在約45%)を保有する筆頭株主となりました。また、この業務・資本提携に基づく事業として、当社はBtoC通販LOHACOを立ち上げました。その後、2015年5月にヤフー社による当社のIFRS連結を契機に業務・資本提携契約を更改し、現在に至っています。
2019年1月、ヤフー社から当社に対し、LOHACO事業のヤフー社への譲渡の可否、および譲渡が可能な場合の各種条件について検討するよう要請がありましたところ、翌月、当社は独立役員会および取締役会の審議を経て、ヤフー社への譲渡の提案は行わないことを決定し回答しました。
同年6月27日、ヤフー社川邊社長が当社へ来訪、岩田社長に対し退陣要求するとともに、ヤフー社が8月2日の当社定時株主総会において岩田社長再任へ反対することの意向表明がありました。当社は、指名・報酬委員会の審議等、当社所定の手続きに従い、7月の当社取締役会において、指名・報酬委員会の提案に基づき現任取締役全員の再任案を決議しました。
当社は、この半年に渡り、当社とヤフー社との経営思想の違い、業務・資本提携契約で合意したイコールパートナーシップ精神の喪失、上場企業としての独立性の侵害が顕著になったことを鑑み、もはや当初本提携関係によって実現しようとしていた個人向けECを両社共同で成功させるという目的を達成することができなくなったと考え、本提携関係の解消を申し入れることといたしました。
本リリース添付別紙のとおり、7月10日以降、当社からヤフー社に質問書、本提携関係解消の協議開始申入れ書等を交付し、ヤフー社からは当社株式の譲渡先・譲渡条件について質問がありましたので、当社はこれに回答しております。
なお、当社の今期(2020年5月期)連結業績は、営業利益88億円(前期比194.7%)の大幅増益を見込んでおります。2017年からの物流センター火災、宅配クライシスの影響を完全に克服し、当社のBtoB事業、BtoC事業、ロジスティクス事業の3事業のシナジーを最大化するECの実現に引き続き邁進していきます。
※2019年5月期決算説明資料(2019年7月3日発表)
https://pdf.irpocket.com/C2678/Uxy1/yH62/a8Am.pdf
2.本件の問題点
(1)業務・資本提携契約の精神に反すること
両社間の業務・資本提携契約には、当社が上場会社でありながら、ヤフー社という実質的な支配株主が存在することとなるに当たり、当社の少数株主の皆様の利益が毀損されることがないよう、締結当時、当社の社外役員を中心に構成された特別委員会、独立委員会の審議を踏まえ、ヤフー社と交渉した結果、以下のような特徴的条件を織り込んでおります。
①当社およびLOHACOの独立性に関する条項
冒頭、目的・精神に関する条項において、「イコールパートナーシップの精神」や、ヤフー社が、当社およびLOHACO事業の独立性を最大限尊重することが明記されています。また、LOHACOの運営をヤフー社が運営するYahoo!ショッピング、Yahoo!オークションと区別するという条項も置かれています。
②当社による取締役の受入れに関する条項
ヤフー社は、当社の常勤取締役1名、および非常勤取締役1名の指名権を有する旨が定められています。
一方、当社のその余の取締役候補者に関しては、当社が設置する指名・報酬委員会の答申を最大限尊重の上、当社の取締役会において決定することとされています。
③明確な目標設定と誠実協力義務に関する条項
「お客様に最高のEコマースを提供する」という両当事者の壮大な目標をLOHACOにおいて具現化するため、ヤフー社と協議の上、当社が、主体的、自主的に各時点において最善と考える施策を講じることとし、ヤフー社は、これに誠実に協力する旨が定められています。
ヤフー社の一連の行為は業務・資本提携契約の精神に反するものであり、当社としては本提携関係の解消が最適な解決と考えます。
(2)ガバナンスプロセスを逸脱する行為が行われたこと
当社は独立役員の確保等、適切なコーポレート・ガバナンス体制を積極的に整備してきており、都度適切な経営判断を実施しております。健全なコーポレート・ガバナンス体制は、持続的成長、中長期的な企業価値の向上に欠かせないものと考えております。
当社は、前述のとおり圧倒的多数である約45%の株式を保有する実質的な支配株主であるヤフー社が存する一方、上場会社として、少数株主の利益にも配意した適切なコーポレート・ガバナンスの体制を実現するべく、取締役10名中、社外取締役5名(内独立役員3名)を選任すると共に、指名・報酬委員会を設置しており、株主総会に提出する取締役の選任に関する議案に関しては、取締役会による決定に先立ち、同委員会の答申を受け、これを最大限尊重することとしております。
なお、別紙のとおり、当社独立役員会からも、本提携関係を見直すべきとの意見書が当社に提出されております(本件業務・資本提携契約に基づく売渡請求権の行使については現在決まっておりません)。
3.公表にいたった理由
今般、当社としては
①本件が約45%の株式の異動に関すること、業務・資本提携契約解消に関すること、当社岩田社長の再任の否決可能性に関することから、株主の皆様にとって重大な情報であり速やかに開示すべき
②ガバナンスの観点からも看過しがたい支配株主による強引な株主権の行使であり、当社各ステークホールダーに開示すべき
③目前に株主総会が迫っており、議決権を行使される株主の皆様にとって重要な情報であり会社として情報提供すべきと考え、本件の公表にいたりました。本件の推移につきましては、今後も、適時適切に公表する所存でおります。
それまでの経緯はリリースの<参考資料>に時系列順で説明されています。これによると、ことの発端は2019年1月15日にヤフーよりアスクルに対して「LOHACO事業のヤフー社への譲渡の可否、および譲渡可能な場合の各種条件について検討依頼」にあることが明らかにされています。
一方のヤフーも同日、「アスクル株式会社の第56回定時株主総会における取締役選任議案(第2号議案)に対する当社議決権行使に関するお知らせ」をリリースしました。
当社は、連結子会社のアスクル株式会社(以下、「アスクル」)が2019年8月2日に開催を予定している第56回定時株主総会の第2号議案(取締役選任議案)において、低迷する業績の早期回復、経営体制の若返り、アスクルの中長期的な企業価値向上、株主共同利益の最大化の観点から、抜本的な変革が必要と判断し、岩田彰一郎代表取締役社長(以下、「岩田社長」)の再任に反対の議決権を行使する予定であることをお知らせいたします。
当社は、2012年にアスクルと業務・資本提携契約を締結以降、アスクルの上場企業としての独立性を尊重しながら、企業価値の最大化を実現すべく、協調・協業を続けています。また、2015年の業務・資本提携契約の改定後、当社はアスクルの株式を約45%(議決権ベース)保有し、アスクルを連結子会社としています。
アスクルにとっての重要領域であるEコマース市場は、BtoB、BtoCともに高い市場成長が続いており、競合各社の利益・株価は好調に推移しています。しかし、アスクルは2018年5月期の営業利益が前年度を50%下回る約41億円となったことに加え、2019年5月期は、アスクルが6月27日に発表しているとおり(※1)、従来の通期業績予想から営業利益を25%下回る約45億円、純利益は89%減の約4億円になるなど業績の低迷が続いています。
事業別では、主力事業であるBtoB事業(アスクル事業)の売上成長率は鈍化傾向にあるほか、当社の協力により運営しているBtoC事業(LOHACO事業)は2012年10月のサービス開始から現在まで収益の改善は見られず、2014年5月期の約29億円の赤字から悪化して、2019年5月期は約92億円の赤字という結果となりました(※2)。これらの実績から、当社としては現在のEコマース市場の環境下における岩田社長の事業計画の立案力および事業計画の遂行力に疑問を抱くに至りました。
※1:特別損失(減損損失)の計上および通期業績予想の修正に関するお知らせ(2019年6月27日発表) (外部リンク)
※2:BtoC事業(LOHACO事業)の業績(△は赤字を表す):
2019年5月期:△約92億円、2018年5月期:△約76億円、2017年5月期:△約46億円、2016年5月期:△約34億円、2015年5月期:△約32億円、2014年5月期:△約29億円
当社としては大変遺憾には存じますが、変化の激しいEコマース市場において、アスクルの低迷する業績の早期回復、中長期的な企業価値の向上、株主共同利益の最大化を実現するためには、抜本的な変革が必要であり、1997年から現在に至るまで長期にわたり代表取締役社長を務めている岩田社長から経営の若返りを図り、新たな経営陣のもとで新たな経営戦略を推し進めるのが最善と考えるに至りました。また、他の取締役候補者への議決権行使につきましても、慎重に検討していきます。
なお、アスクルの第56回定時株主総会にて岩田社長の取締役の再任議案が否決された場合、当社はアスクルの筆頭株主として、引き続きアスクルの上場企業としての独立性が重要との考えから、新経営陣とアスクルの意向を尊重いたします。当社は、アスクルの中長期的な企業価値の向上および早期の株主共同の利益の最大化に向けて迅速に取り組めるよう、最大限協力をして参る所存です。
ここから、アスクルの株主総会開催日に向けて両社の対立が激化していきます。そして2019年7月23日にアスクルの独立役員会がアスクルとヤフーの提携関係の見直しを検討し、ヤフーと交渉すべきであるとの意見をとりまとめ公表したところ、その翌日(7月24日)に、ヤフーは、岩田社長のみならず、独立社外取締役の再任議案に対して反対票を投じた旨表明したことから、「大株主が意見の異なる独立社外取締役の再任議案に反対することの是非」を巡り、学者等を巻き込んだ論争が起きました。
以上のリリースから明らかになった両社の主張(両社の主張にはそれを補完する第三者の主張も含みます)を並べると次のとおり。
| 論点 | ヤフー側の主張 | アスクル側の主張 |
| 株主権行使について | アスクルの数年に渡る業績低迷の早期回復に向けて、株主権の行使を考えている。アスクルの個別の事業に対して、なんら意図するものではない。 ・株式会社のガバナンスにおいて、株主総会が最高の意思決定機関であり、議決権は、株主として最も重要な権利である。この株主としての議決権行使が蔑ろにされるのであれば、上場企業(親子上場に限られない)においては、実質的に取締役会が最高の意思決定機関となることを意味することとなり、株式会社制度の根幹を否定することになる。上場企業のアスクルの経営の独立性を尊重することと、株主の議決権行使とは全く次元が異なる問題であり、岩田社長による主張は、株主総会が取締役の選解任を通じてガバナンスを効かせる株式会社制度の根幹を完全に無視しており、保身のために自身の社長続投を正当化しようとするものに他ならない。 |
(上村達男早稲田大学名誉教授)「日本では一般に株式を多数有していれば資本の論理により、社長の不再任は免れがたいという思い込みがあるようだが、資本の論理とは出資に対応する財産権の問題であり、株式については利益配当請求権ないしキャピタルゲインの帰属のような問題にはそのまま妥当する。しかし、議決権は企業のあり方や企業社会のあり方を左右するいわば企業社会におけるデモクラシー関与権であり、株主がそうした権利を行使するに相応しいとされてきたのは、欧州では株主とは個人や市民であるという強い規範意識の存在を理由とする。アメリカは日本と同じかというと、支配株主の忠実義務を始めとする責任論が権利行使と一体である(支配株主は会社ないし少数株主に対する忠実義務を負う)。株式を多数有していれば無条件に責任なき支配が貫徹されるわけではない。」 |
| アスクルの岩田社長の取締役再任議案の是非 | ・業績低迷により反対。なお、岩田社長の再任が否決された場合の新しい代表取締役社長については、アスクルの取締役会で決議する ものと考えており、当社から社長を派遣するつもりはない。 ・(プラスのリリース)「当社としては、当社が創業者として設立したアスクルに対し長年にわたって協力を続けてきたが、近時、岩田社長が当社代表取締役社長でアスクル社外取締役である今泉公二に関し、一部マスメディアの取材等で「ヤフーに利用された可能性は大いにあり得る」などと憶測に基づく話をされている点について、大変残念に思っている。また、アスクルが、ヤフー、プラス両社の議決権行使に関する意向表明後に突如として、ヤフーとの業務・資本提携関係を解消しようとしたことについては、担当取締役が本件発覚後の記者会見の場ですらLOHACO事業での連携を含むヤフーとのシナジーを強調されていたことと相反しており、アスクルの業績の維持向上のためではなく、岩田社長による現体制維持と保身のための行動にほかならないと捉えている。それを適切に是正できなかった独立社外取締役各位の姿勢は、少数株主の立場からしても遺憾であったことを付言させていただく。」 ・レオスコメント「アスクルの業績向上および株価向上のため、8月2日開催の株主総会に係る議決権行使についてのヤフーの判断を支持する。本株主総会以降、速やかにアスクル(および大株主であるヤフー)が適切なガバナンス体制を構築されることを期待するとともに、少数株主の利益の確保が果たされているかを注視していく。」 |
・物流センター火災、宅配クライシスといった2つの課題に対して岩田社長を始め現経営陣が適切に対処したことによりV字回復を目指せる状況にまで早期に回復した事実からすれば、業績回復基調にある今の段階において「低迷する業績への責任」を追及されることは適切ではない。 ・(アスクルの独立役員会)「アスクルは上場会社であり、社外取締役を選任して指名・報酬委員会を設置するなど、透明性の高いガバナンスが求められている。また、指名・報酬委員会が所定のプロセスに従って次期取締役候補者の選定を議論している。ヤフーは、アスクルの指名プロセスを認識しており、仮に取締役候補者について意見があるなら、派遣取締役を通じて指名・報酬委員会にその旨伝えるべき。ヤフーは、指名・報酬委員会での議論が終わった後、株主総会直前になって、岩田社長個人に対して辞任を迫るという方法をとった。ヤフーの社長退陣要求には、総会直前になって本人から辞任を申し出させることにより、指名・報酬委員会の議論を回避してトップ人事を決めようとする意図がうかがえる。今後の事業計画や経営課題を踏まえて次期経営体制を議論してきた指名・報酬委員会をないがしろにしており、上場企業のガバナンスを全く無視している。ヤフーの社長退陣要求は、総会まで1ケ月というタイミングで「トップは辞めろ。後任トップは好きに決めろ」と言っている。現場の混乱は必至であり、支配株主として無責任極まりない。」 |
| アスクルの社外取締役の選任議案の是非 | 下記「業務・資本提携関係の見直し」を参照 | ・(日本取締役協会)「アスクルの社長候補の取締役を不再任にしただけでなく、同じ理由で、独立社外取締役まで全員不再任としたのは、親子上場企業のガバナンス上、重大な問題である。支配的株主の横暴をけん制するために存在している独立取締役を緊急性も違法行為もない状態で解任できるならば、ガバナンスの基本構造が成り立たなくなる。ヤフーが問題としている社長選任については、親会社として株主総会において拒否権を持っており、それを理由に独立取締役まで不再任にする必要はない。しかるに経営者選任を巡る意見の相違を根拠に、支配的株主の横暴をけん制するために存在している独立取締役を、緊急性も違法行為もない状態で解任できるならば、親子上場のガバナンスの基本構造が成り立たなくなる。この不再任は、親子間の利益相反における上場子会社の少数株主保護を独立取締役に託したCGSガイドラインの主旨に明確に反し、独立取締役がゼロになった状況は、金融庁・東証のコーポレートガバナンス・コード上も、独立取締役を置かない場合にその相当性の説明義務を規定する会社法上も、大きな問題状況を生み出している。」 ・(特定非営利活動法人日本コーポレート・ガバナンス・ネットワーク)「グループガイドラインが示すとおり、上場子会社における独立社外取締役には支配株主からの独立性を求められる。そのため、その判断が支配株主の意向に沿うものでない場合も当然予想されるところである。しかし、独立社外取締役の判断が自らの判断とそぐわないからといって、支配株主が当該独立社外取締役の再任を拒絶できるとあっては、結局のところ独立社外取締役は、支配株主の意向を伺うこととなり、本来期待される役割を果たすことができなくなるから、上場子会社において少数株主の利益を保護するための実効的なガバナンス体制を構築することなど不可能となる。支配株主においても、被支配会社をあえて上場子会社とすることで我が国の資本市場の恩恵を受けている以上、かかるガバナンス体制の構築に責任を有するというべきである。かかる観点からすれば、支配株主は、少なくとも自らが一度はその選任に賛成した独立社外取締役については、明白な過誤等がない限り、その再任を拒絶すべきではない。」 |
| 株価が低迷していること | 株価の向上は、大株主と少数株主の共同利益ですが、日経平均の年平均成長率(CAGR)が約 3 年間(2016 年 7 月1 日から 2019 年 7 月 10 日)で 17 パーセント上昇している一方で、アスクルの株価の年平均成長率(CAGR)は22.2 パーセントの減少となっている。 | ・当社株価は、物流センター火災・宅配クライシスといった一時的要因による影響を受けているが、今期のV字回復を成し遂げることにより企業価値向上に努めている。 ・一方で、ヤフーが当該リリースで切り出している期間は、「2017年2月物流センター火災」「2018年からの宅配クライシス」の期間を主要部分としており、大変意図的な期間設定と認識している。 ・なお、ヤフーとの資本・業務提携契約を締結した2012年5月をスタートラインとして当社とヤフーの株価を比較すると、当社の株価はパフォーマンスの点において、ヤフー株を大きく上回っている。 |
| 抜本的な経営改革を通じた業績の回復 | 今回ヤフーが主張しているのは岩田社長と社外取締役の再任反対のみであり、「抜本的な経営改革」の提案は出されておらず、当社としてはこれが何を指すものが不明。 | |
| LOHACO事業の譲渡について | 当社は、アスクルとしてそもそもLOHACO事業を譲渡する考えがあるのかの意向をうかがったに過ぎない。アスクルからその意向はないと回答を受けたため、当社としては今後も譲渡を申し入れる方針はない。 | ・(アスクルの独立役員会)「ヤフーに、LOHACO譲渡する場合、ヤフーが競業に該当するビジネスを手掛けている上、支配株主との利益相反取引であるため、少数株主保護のため、より透明性の高いプロセスで譲渡の是非・条件を議論し、対等な関係で交渉をすることが求められる。ここに至るまでのヤフーのやり方(1月にアスクル側から譲渡を提案するよう要請、6月末のガバナンス無視の岩田社長退陣要求)は極めて不透明であり、支配株主としての立場を利用して圧力をかけようという意図が疑われる。」 ・(アスクルの独立役員会)「ヤフーの真の意図がLOHACO事業の譲渡である場合、もしくはヤフーへの譲渡が再び議論されることがあれば、経済産業省が2019年6月28日に策定した「グループ・ガバナンス・システムに関する実務指針(グループガイドライン)」の6.1.3「上場子会社の利益相反構造」に示される競業相手である支配株主ヤフーとの利益相反取引であることを十分に理解し、極めて透明性の高いプロセスの下、対等な立場で交渉することが求められており、この実務指針が活きるようにすべきである。独立役員会としては、その時点のアスクル経営陣が一般株主・少数株主の利益を考慮して支配株主との交渉に当っているかどうかについて、独立した立場から厳正に監督していく所存である。」 |
| 業務・資本提携関係の見直し | ・当社としては業務・資本提携関係の見直しについての協議は不要と考えている。 ・当社の協力を拒絶する業務・資本提携の解消はLOHACO事業の価値を毀損する結果となるBtoB専業であったアスクルがBtoC事業であるLOHACOを開始してから現在に至るまで、ヤフーは、BtoC向けサービスを提供してきた経験やノウハウに基づき、Yahoo!JAPANトップページやYahoo!ショッピングなど各種サービスからの送客をはじめとするさまざまな支援を行ってきた。ヤフーによるLOHACO事業への支援は、アスクルが単独でLOHACO事業を運営するよりも、成長スピードは加速され、規模の拡大も図ることができたものと自負している。岩田社長と、独立社外取締役3名を含む独立役員会は、Yahoo!JAPAN各サービスからの送客などから得られているヤフーとのシナジーをなくしてまでも、何ら正当な契約上の根拠なく、ヤフーとの間における業務・資本提携契約を解消しようとしている。このシナジーをなくすことは、現状のLOHACO事業の成長と黒字化を困難にさせる経営判断と言わざるを得ず、アスクルの中長期的な企業価値を著しく毀損させる。したがって、ヤフーとしては、アスクルの中長期的な企業価値向上、株主共同利益の最大化の観点からも、岩田社長はもちろん、業務・資本提携契約の解消を求める独立社外取締役3名についても信任はできないと考えている。 ・アスクルの第56回定時株主総会にて岩田社長の取締役の再任議案が否決された場合、当社はアスクルの筆頭株主として、引き続きアスクルの上場企業としての独立性が重要との考えから、新経営陣とアスクルの意向を尊重する。アスクルの中長期的な企業価値の向上および早期の株主共同の利益の最大化に向けて迅速に取り組めるよう、最大限協力をする。 ・ヤフーとしては、業務・資本提携契約とは無関係に、もしアスクルの企業価値をヤフーより向上できる株式の譲受希望者がいる旨のアスクルの取締役会からの打診があれば、当該第三者の話を伺うことを拒否するものではない。 |
・ヤフーは「アスクル経営の独立性を尊重しながら」「アスクルにおける指名プロセスの独立性を前提としつつ」と記載があるが、これを実現するには、当社の指名・報酬委員会による答申を踏まえ当社取締役会で決議された取締役候補の再任を認めることが一番の近道であると考える。 |
最終的には、2019年8月2日のアスクルの株主総会で岩田社長と3人の社外取締役が再任議案は否決となりました。
日本の証券取引所が上場子会社を認める制度を維持している以上、こういった上場子会社を巡る利益相反問題は、決してヤフーとアスクルだけに限った問題ではなく、他の上場子会社を有する上場会社でも潜在的に起きている問題であると言えます。今回の騒動では、「株主総会」と「取締役会」の関係(資本の論理以外に親会社株主が配慮すべきものの有無)、親会社における上場子会社の独立役員の選任議案へのあるべき対応などの論点でさまざまな考え方が示されたと言え、上場会社がコーポレートガバナンスについて考えを深める良いきっかけになったのではないでしょうか。
さて、以上の解説をご覧いただければ、どれがGOOD発言か、もうお分かりですね。正解は以下のとおり。(本発言集はフィクションであり、実在する企業や人物とはまったく関係がありません)
社外取締役B:「『X事業の譲渡に反対した取締役全員』となると、独立社外取締役の再選議案にも反対すると言うことですね。でも、独立社外取締役の再選議案は業績不振とは直接の関係がないのではないでしょうか。むしろ、X事業を当社へ譲渡する案に反対された直後に独立社外取締役の再選議案に反対票を投じてしまうと、B社の少数株主の声を代弁する独立社外取締役の意見を封殺したかのように受け止められてしまうリスクがあります。」
(コメント:B社は上場会社である以上、X事業を当社に譲渡するかどうかはB社の社内で必要とされるプロセスに則って、それが中長期的な企業価値を高めるかどうかにより独自に決めるべき話です。その社内プロセスでX事業を当社へ譲渡する案が否決された直後に、当該案に反対票を投じた独立社外取締役の再任議案に反対することは、A社にとってみれば『親会社の横暴』と批判されるリスクがあります。また、そもそも社外取締役は業務を執行しない以上、業績不振の直接の責任を負わせるべきではありません。以上よりBの発言はGoodです。)
建築資材の販売や住宅販売等を手掛けるすてきナイスグループ(東京証券取引所市場第一部:以下、すてきナイス)は、業績予想を下方修正したにもかかわらず、決算数値が下方修正後の水準に到底達しそうになかったため、会長が個人で株式を100%持っている会社の子会社(非連結)に対して期末直前に不動産を売却する等の決算対策を施して2015年3月期の決算を粉飾していた(売上高を21億円水増し)。
すてきナイスが2019年7月に第三者委員会の調査報告書を公表するまでの経緯は次のとおり。
2014年
10月31日:すてきナイスは、前期の決算短信で開示した2015年3月期の第2四半期の連結業績予想が売上高115,000百万円、当期純利益▲1,400百万円であったところ、第2四半期の実績が売上高104,830百万円、当期純利益▲1,744百万円であったため、2015年3月期通期の連結業績予想を売上高250,000百万円、当期純利益500百万円に下方修正した。
12月20日:すてきナイスでは、10月末に下方修正したばかりの連結業績予想ですら実現は困難と目されており、取締役会でCEOの平田恒一郎氏は「今期は業績が厳しいので、期末までの3ヶ月は売上に注力し、それ以外の事はやらなくていい、期末までの3ヶ月の間に、約束した数字ができなければ辞表を出すように」との趣旨のことを述べた。
2015年
1月17日:CEOの平田氏は、すてきナイスおよびナイス(すてきナイスの子会社)の取締役会で、役員に対して、コミットメントした数字を達成できない場合は辞表を出す意識で取り組むよう求めた。
3月13日:すてきナイスでは、下方修正後の業績予想の達成が不能であることが確実になったことから、粉飾決算案が検討された。この時点の粉飾決算案でも経常利益が公表値700百万円に対して266百万円にしかならず、434百万円不足することから、再度の下方修正が必要になることが予想された。この日にすてきナイスは持ち合い株式の三菱鉛筆株式を17万株売却した(売却額は約7億3250万円)。
3月24日:粉飾決算案に追加策が盛り込まれるも、経常利益見込額が公表値700百万円に対して324百万円不足しており、依然として再度の下方修正は不可欠と予想された。
3月25日:ナイスはザナック(会長が個人で株式を100%持っている会社で、すてきナイスは連結対象にしていなかった)に不動産を売却し、売却益を計上した。
3月31日:すてきナイスは決算日を迎えた。
(決算日後)
4月~5月:すてきナイスは売却した株式数と同じ17万株を買戻した(購入額は約8億2493万円)。
5月・11月:ナイスはザナックから土地の一部を買い戻した。
2019年
5月16日:すてきナイスに対して、金融商品取引法違反(2015年3月期の有価証券報告書の虚偽記載)の容疑で、証券取引等監視委員会及び横浜地方検察庁により強制調査が実施された(リリースはこちら)。
5月20日:すてきナイスの代表取締役会長兼CEOの平田氏および代表取締役副会長の日暮氏が同社の代表取締役および取締役を辞任(リリースはこちら)。
5月30日:すてきナイスの取締役会は第三者委員会の設置を決議(リリースはこちら)。
7月24日:すてきナイスは第三者委員会の調査報告書を公表(リリースはこちら)。
7月25日:すてきナイスの元CEOの平田氏、元代表取締役副会長の日暮氏、元取締役の大野氏が金融商品取引法違反により横浜地方検察庁に逮捕される(リリースはこちら)。
すてきナイスが公表した第三者委員会の調査報告書によると、同社が実施した粉飾決算等の手法と粉飾決算等を許した要因、再発防止策は次のとおりである。
| 内容 | すてきナイスは持ち合い株式である三菱鉛筆の株式を、2015年3月に17万株売却して、2か月以内に売却した株式数と同じ17万株を買戻した。すてきナイスは三菱鉛筆の株式を結果的に保有し続けているにもかかわらず、売却益を計上して利益をかさ上げすることができた。 |
| 関係者 の反応 |
監査法人(原会計事務所)は、すてきナイスから「持ち合い株式を売却して直後に買い戻す可能性がある」旨相談を受けた際に、売却直後に買い戻す可能性を伝えたところ、売却直後に買い戻してはならないと注意を受ける。 また、証券会社からも、売却から購入までの期間をなるべく長く空けるに越したことはないこと、購入を前提とした売却の決断とならないように注意すべきとのアドバイスを受ける。 |
| 手法 | すてきナイスは、業績の良かった横浜地所と三友ビルドを新たに連結の範囲に含めるとともに、マルオカとクロダを持分法適用会社とすることとした。 |
| いままで連結してこなかった理由 | すてきナイスでは、住宅事業における地方進出のために設立した子会社の設立趣旨を「テストマーケティング目的」として、そこで事業が成り立つかどうか、万が一成り立たない場合にはその子会社を清算するというスキームのために設立後しばらくは質的に重要性が低いものと解釈して、連結の範囲に含めなかった。こういった連結の範囲の検討に関する情報について、監査法人(原会計事務所)には、口頭で説明が行われていた。「テストマーケティングを目的として設立された会社なので質的に重要性が乏しい」という主張は監査上は容認できないはずなのに監査法人は容認していた。 |
| 手法 | ナイスおよびナイスエスト(すてきナイスの子会社)は、2015年3月末ぎりぎりになって、仙台に所有していた土地と店舗や首都圏のマンション(75室)をザナック設計コンサルタント(以下、ザナック)へ売却して、売上高約30億円と売却益約4億2千万円を計上した。ザナックは購入原資としてナイスコミュニティーから資金を35億円借り入れ、それに先立ってナイスグループ各社はナイスコミュニティーに資金を31億円貸し付けていた。すてきナイスにとってみれば、ザナックに資金を貸し付けて不動産を売却していただけであり、ザナックが連結対象でないことを利用した利益のかさ上げ目的の取引であった(仙台物件は一部をナイスが買い戻したり、首都圏マンションは登記移転すら行っていなかったりした)。この利益かさ上げ取引はCEOの平田氏の了解または指示により行われていた。 |
| 粉飾決算を許した要因 | ・ザナックは2009年にエイワ(CEOの平田氏が個人的に100%保有する会社)の100%出資により設立された(CEOの平田氏はナイスの代表取締役であり、ナイスにとって緊密者に該当する(緊密者とナイスの持株を合わせて50%超を保有していることになる)。また、ナイスとエイワの間で中古住宅購入販売事業の業務を委託する業務提携及び業務委託契約が締結されており(重要な契約の存在)、エイワの資金調達額の過半はナイスコミュニティーが融資していた。以上より、ザナックはナイスが意思決定機関を支配している会社(ナイスの実質支配下にある)と言え、ザナックはナイスの子会社と言える。また、ザナックの預金通帳や銀行届出印はナイスが管理しており、取締役もエイワやナイスから選出していた。本来であれば、ザナックはその親会社であるエイワとともに、ナイスおよびすてきナイスが実質支配しているとして連結(ゼロパーセント連結)すべき会社であった。 ・ナイス住宅事業本部西島氏がザナックへの不動産の売却は粉飾決算にあたらないのかを秦氏に確認したところ、秦氏(ナイス経理部長)は「一回だけなら大丈夫」という趣旨の回答をした。 ・すてきナイスおよびナイスの常勤監査役は、ザナックへの押し込み販売に会計上の疑義があると感じ、監査法人(原会計事務所)の担当公認会計士に報告・相談をしたところ、担当公認会計士は「仮にザナックが関係会社にあたると仮定したとしても、会計上の問題はない」との説明を行っていた。 |
| その他、粉飾決算を許した要因 | 創業家の強い影響力 ナイスグループにおいては、創業家である平田家が圧倒的な影響力を有していた。 経営陣のコンプライアンス意識の低さ 社外取締役によるガバナンス不在 手薄な内部監査体制 |
| 再発防止策 | 経営陣の刷新 ・CEOの平田氏および日暮氏の体制を許容してきた経営陣を刷新する。ナイスグループの創業家またはこれと密接な関係を有する者はナイスグループの経営から退いてもらう。 ・ザナック関連案件を主導ないし直接的に関与していたすてきナイスおよびナイスの取締役、監査役は、ナイスグループの経営から退いてもらう。そしてその責任を明確化するため、関与の程度を十分に検証し、適切な対応を行う。 ・十分な法務または会計の知識を有し、高い倫理観を有した取締役、監査役を登用する。社外役員においても、法務または会計の知識を有している社外取締役、社外監査役を登用する。 ・すてきナイスおよびナイス等主要な事業会社の経営陣として適切な人員が選任されるよう、「指名・報酬委員会」の人選を見直すなどの対策を講じることを検討する。 すてきナイスおよびナイスの位置付けの再検討 経営陣に対する強力な牽制部門の構築 企業風土の改革 連結範囲の見直しおよび子会社、関連会社等の整理 |
直近まですてきナイスの会長兼CEOであった平田氏が有価証券報告書の虚偽記載の容疑で逮捕(しかも逮捕は第三者委員会の調査報告書の公表日の翌日)される事態には驚きを禁じえません。平田氏は「清く、正しく、まじめなナイス」「家族に恥じる仕事はするな」といったスローガンを掲げて役職員一同に周知していましたが、少なくとも決算に関しては「清く、正しく、まじめ」とは程遠い内容でした。
また、この決算に適正意見を出していたすてきナイスの会計監査人である原会計事務所は、1962年の東証第二部上場時から半世紀以上にわたり同社の会計監査を担ってきました。監査契約の期間があまりに長期間になると、独立性が問題視されかねません。2020年3月期から監査法人との継続監査期間を有価証券報告書で開示する制度がスタートしますが、今後は継続監査期間が長期化している上場会社では監査法人交替のプレッシャーが強まることが予想されます。
すてきナイスでは、社長が株式を100%持っている会社を連結(すてきナイスにとってはゼロパーセント連結)すべきかどうかが問題視されました。上場会社では、関連当事者情報の集計時にすべての情報を集めきれているか、またそれらの会社のうち支配力基準から連結すべき会社はないのか、もう一度点検しておきたいところです。
2020年4月1日から「同一労働同一賃金」を求める改正労働者派遣法が施行されます。
ただし、同一労働同一賃金への対応は各社一律とはならないはずです。
企業は、派遣労働者の待遇を「派遣先均衡方式」により決定するのか、あるいは「労使協定方式」により決定するのか、また、派遣契約を無期労働契約に転換する(いわゆる“無期転換”)のか、請負契約に変更するのか、派遣契約のままとするのかなどについて、慎重に検討する必要があります。既に無期転換を実施している企業も目に付きますが、労働者の仕事内容によっては派遣契約を継続した方が良いケースもあります。
改正労働者派遣法の施行に向け自社はどのような対応をとるのがベストなのか、考えてみてください。
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議決権行使助言会社最大手のISSは(2019年)7月22日、2020年版の議決権行使助言方針(ポリシー)の改定に向けた「グローバル・サーベイ(ISS Opens Global Policy Survey for 2020)」を実施することを発表した。米国や欧州などグローバルなエリア別に全21項目の質問を設定、機関投資家や公的機関などからオープン・コメントを募集している(締切りは8月9日)。
日本向けポリシーについては・・・
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議決権行使助言会社最大手のISSは(2019年)7月22日、2020年版の議決権行使助言方針(ポリシー)の改定に向けた「グローバル・サーベイ(ISS Opens Global Policy Survey for 2020)」を実施することを発表した。米国や欧州などグローバルなエリア別に全21項目の質問を設定、機関投資家や公的機関などからオープン・コメントを募集している(締切りは8月9日)。
日本向けポリシーについては、(1)株式持ち合い、(2)ROE基準の2つに関連した論点へのコメントを求めている。
ROE:Return On Equity=株主資本利益率(利益/株主資本)。実務上、ROEの利益には「当期純利益」を使うことが多い。これは、株主資本に対応するのは、株主資本に帰属する当期純利益であるとの考え方による。
(1)株式持ち合いで縛られた不適切な資本配分(Misallocation of Capital Tied Up in Cross-Shareholdings)
2018年10月23日のニュース「ISSが2019年版ポリシー案公表、時価総額上位10社で3人が新独立性基準に抵触」で速報したとおり、ISSは2019年版のポリシーで、社外取締役および社外監査役に関する新たな独立性基準として、「自社が政策保有株式として株式を保有している企業の出身者」を「独立性がない」とみなすというものを追加し、2020年2月から適用するとしていた(6ページ「独立性基準」の一番下及びその注釈15参照)。
Misallocation: 不適正配分
さらに今回のサーベイでは、株式持ち合いを「日本で最も深刻なコーポレートガバナンスにおける問題」(most serious corporate governance problems in Japan)と改めて指摘したうえで、持ち合い株式が資産の“相当割合”を占める企業については、経営トップの再任議案に反対することの是非を問うている。
また、ここでいう「資産の相当割合」の定義として適切な値についても意見を求めている。具体的な選択肢としては、「株主資本」の5%、10%、20%などが提示されているが、ここで重要なのは、「総資産(株主資本+負債)」ではなく「株主資本」がベースとなっているということだ。持ち合い株式が「株主資本の5%」を占める企業は決して少なくないだろう。
(2)ROEと指名委員会等設置会社(ROE and Three-Committee System Companies)
現在のISSのポリシーでは、過去5年間の平均および直近期のROEが5%未満である場合、機関設計の種類を問わず、すべての企業の経営トップの選任議案に反対を推奨している(以下、ROE基準)。今回のサーベイでは、指名委員会等設置会社の場合、法定の指名委員会があって、過半数を占める社外取締役を通じて株主の意思が反映されるため、経営トップの再任を適切に規律づけることが期待できるとし、ROE基準の対象外とすることを検討している。
ただし、仮に経営トップの選任議案に賛成する場合、何か条件を付けるとするならばどのようなものが適切かについて聞いている。具体的には、取締役会の過半数が独立性基準(ISSの独立性基準は、2019年版ポリシーの6ページ「独立性基準」 を参照)を満たしていること、指名委員会の全員が独立性基準を満たしていること、指名委員会の議長が独立性基準を満たしていること、という3つの選択肢が提示されている。
ISSは、指名委員会等設置会社が導入されてから20年近く経った現在でも未だ上場企業の2%に過ぎず、残りの大部分の企業においては指名および報酬が未だ社内の者に握られているということを指摘している。ポリシー改定によって日本企業が指名委員会等設置会社に移行するインセンティブを付与し、日本におけるコーポレートガバナンス改革を一層進めようとしているのかもしれない。
働き方改革の一環として副業・兼業の解禁に踏み出す企業が増えてきた。政府も「働き方改革実行計画」(2017年3月28日の働き方改革実現会議で決定)の中で、副業や兼業は、労働者にとってワークライフバランスの充実、所得の増加、起業や第2の人生への準備に資するばかりでなく、企業にとっても新たな技術の開発、オープン・イノベーションに資するものであるとして、副業・兼業の普及を後押しする姿勢を打ち出している。
オープン・イノベーション:自社のみならず、他社、大学、自治体、社会起業家など異業種、異分野が持つ技術やサービス、アイデア・ノウハウ、情報・データなどを取り込み、革新的なビジネスモデルや製品・サービスなどを開発すること。
働き方改革実行計画を受け厚生労働省に設置された「柔軟な働き方に関する検討会」は2018年1月、副業・兼業について、企業や労働者が現行の法令の下でどのような事項に留意すべきかをまとめた「副業・兼業の促進に関するガイドライン」を公表したが、同省はこれにあわせてモデル就業規則も改定、それまで労働者に「許可なく他の会社等の業務に従事しないこと」を遵守させることとしていた規定を削除し、新たに次のような規定を新設している。
新モデル就業規則(2018年1月改定)
副業についてのスタンスが「原則禁止」から「原則OK」へと180度転換した点は注目に値する。
もっとも、「モデル就業規則」は単なる“例”に過ぎず、これと同じでなければならないという縛りは一切ない。実務上は各社の実情に応じて就業規則が作成されており、モデル就業規則が改訂されたからといって、副業を原則OKとする企業が直ちに急増するということにはならないだろう。モデル就業規則が改定されたにもかかわらず、いまだ従業員の副業解禁を躊躇している企業が少なくないのは、副業を認めると、企業は以下のようなリスクにさらされるからだ(副業・兼業の促進に関するガイドラインの「1 副業・兼業の現状」の(2))。
① 自社での業務がおろそかになるリスク
② 情報漏洩のリスク
③ 競業・利益相反になるリスク
④ 副業に係る就業時間や健康管理の取扱いのルール違反を犯すリスク
このうち④は、そもそも労働基準法の現在の解釈によると「ルール違反をしないための管理が極めて困難」になる(その理由については後述)ということに端を発している。この点について詳しく説明しよう。まず、労働基準法は38条で次のように定めている。
同法38条について、厚生労働省が公表している昭和23年5月14日 基発第769号(局長通達)では『「事業場を異にする場合」とは事業主を異にする場合をも含む。』とされている。この解釈に基づき、従業員が複数の会社(事業主)で労働する場合は、労働基準法上、労働時間を通算(以下、「通算」とは各事業主における労働時間の通算を意味することとする)するという実務が行われている。
労働基準法では、労働時間が「原則として1日8時間or週40時間」を超えると残業代(法定割増賃金)の支払いが必要になるとしているが、「通算」が必要だとすると、事業主Aの下で雇用契約に基づき働いていた労働者が、その後、別の事業主Bとも雇用契約を締結した場合、割増賃金の支払い義務者は果たして誰になるのかという問題が生じる。例えばAの所定労働時間が1日5時間であり、Bの所定労働時間が1日4時間であったとしよう。両者の所定労働時間を足すと9時間となり、「1日8時間」という上限を1時間超えてしまうが、この場合、AとBのどちらが割増賃金を支払うのかが問題になる。
結論から言えば、・・・
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