2019/07/08 速報・2019年6月株主総会 取締役選任議案が2件否決(会員限定)

2019年6月の株主総会における議決権行使結果を開示する臨時報告書が出揃った。会社提案で否決になった議案は2件、いずれもLIXILグループの取締役選任議案だった。賛成率が44.4%と44.9%だった両議案を含め、賛成率が60%未満にとどまった議案を種類別に分類したのが下表である。

議案の種類 議案数 割合
取締役選任 25 61%
監査役(含む補欠)選任 8 20%
買収防衛策 7 17%
退職慰労金贈呈 1 2%
合計 41 100%

取締役選任議案が圧倒的に多いが、そのほとんどは、LIXILグループはじめ大株主が関与した経営権争いが絡んでいる。同様のケースと判断される監査役選任議案を含め、一般的な議案に絞って、賛成率が60%未満にとどまった議案を企業別にまとめたのが下表である。

社名 議案 備考 賛成率
前田建設工業 買収防衛策 53.7%
小森コーポレーション 買収防衛策 54.4%
カチタス 監査役 社外、35%株主関係者 54.7%
住友不動産 買収防衛策 55,2%
カチタス 監査役(補欠) 社外、35%株主関係者 55.5%
稲畑産業 買収防衛策 56.4%
マツモトキヨシHD 取締役 社外、出席率70% 57.0%
日本トムソン 買収防衛策 57.8%
アイダエンジニアリング 買収防衛策 58.1%
江崎グリコ 監査役 社外、5%株主関係者社外、5%株主関係者 58.7%
アニコムHD 取締役 社外、出席率64% 58.7%
乾汽船 買収防衛策 58.7%
アルコニックス 退職慰労金 社外、金額一任 58.9%
住友ベークライト 取締役 社外、22%株主関係者 59.7%

最も賛成率が低かった前田建設工業をはじめ、全体の半分超を買収防衛策が占めている。否決こそなかったものの、いかに投資家の反対票が集まりやすい議案であるかを示している。なお、乾汽船は2010年に防衛策を廃止したが、今回の株主総会で再導入を図った珍しいケースとなっている(他に日邦産業も再導入。2019年5月9日のニュース「日邦産業が買収防衛策を“再導入”」参照)。

役員選任議案に関しては、大株主の関係者(役職員または出身者)である候補者、および取締役会の出席率が低い再任候補者に対して、多くの反対票が集まっている。また社外取締役を対象とした役員退職慰労金についても、金額開示が伴わないこともあって低賛成率となった。これらの議案は従前から投資家に批判されてきたもので、否決リスクが小さくないことが改めて確認されたと言えよう(これに関する記事として、2017年9月13日のニュース「“退任後給付スキーム”に復活の余地」参照)。

2019/07/08 【2019年6月の課題】社外取締役の在任期間(会員限定)

機関投資家が定める基準

社外取締役の適切な在任期間を検討するうえでまず確認しなければならないのが、機関投資家の議決権行使基準です。

必ずしも全ての機関投資家が社内取締役の在任期間に関する基準を置いているわけではありませんが、主要機関投資家の場合、社外取締役の在任期間や再任回数について基準を定めているケースが多く、近年は新設するケースも増えているようです。

これまで在任期間等に関する基準を定めない機関投資家が少なくなかった背景には、かつては社外取締役が1人もいない上場企業が珍しくなかった中、企業がせっかく連れてきた候補者の選任(再任)に否定的な判断を示すと、社外取締役を置こう(増やそう)という企業のモチベーションを下げてしまうのではないかといった懸念があったものと推測されます。しかし、会社法の改正やコーポレートガバナンス・コードの導入で社外取締役の選任が実質的に義務化されたこと、また、10年以上にわたって再任され続け「独立性」が薄れている社外取締役がいる上場企業が決して珍しくなくなってきた()ことなどから、在任期間等に関する基準を定める、あるいは厳格化する動きが出てきたものと考えられます。

経済産業省に設置されたコーポレート・ガバナンス・システム研究会(以下、CGS研究会)のアンケート(平成29年度)結果によると、在任期間が4年を超える社外取締役がいる上場企業は473社あり、そのうち延べ100社の社外取締役の在任期間が10年を超えていました(「平成29年度コーポレートガバナンスに関するアンケート調査」(回答数:941社)の7ページの25番参照)。

機関投資家の議決権行使基準を見ると、下表のとおり、社外取締役の在任期間が「10年」もしくは「12年」以上(超)となる場合、その再任議案に反対することとしているケースが多くなっています。英国のコーポレートガバナンス・コードでも「9年以上」の在任期間で社外取締役の独立性が毀損されるとしているように、グローバルには、「10年前後」という在任期間を上限とすることは、機関投資家のコンセンサスになっていると言えるでしょう。

なお、「10年」という期間は一般的にな区切りがよいこと、「12年」という期間は、監査役の法定任期が4年とされていることが影響している(すなわち、4年の倍数とした)ものと思われます。三菱UFJ信託銀行のように「20年」という例もありますが、これに抵触する事例は極めてレアケースであるものと推察されます。

<社外取締役の任期(在任期間の上限)に関する反対基準の例>
10年以上 JPモルガン・アセット・マネジメント、朝日ライフアセットマネジメント
10年超 東京海上アセットマネジメント、インベスコ・アセットマネジメント
12年以上 大和証券投資信託委託、第一生命保険
20年以上 三菱UFJ信託銀行

「あるべき」任期

では、上場企業の社外取締役の任期は何年が望ましいと言えるのでしょうか。

一橋大学・商学研究科の円谷昭一准教授によると、上場会社の社外取締役の在任年数(2013年3月期に在任しており、2014年3月期に退任した社外取締役を調査対象としたもの)の平均は「3.8年」で、最多は「1年」でした。1年と聞くと、多くの方が「短い」との印象を受けると思いますが、その背景としては、上場子会社やグループ会社あるいは新興企業などにおいて、親会社や大株主から派遣される社外取締役が少なからず存在するということが指摘されています。このような社外取締役は母体企業の従業員であることが多く、人事異動などによって社外取締役としての職も解かれるケースが頻繁に生じるため、必然的に在任期間も短くなるわけです。

日経225採用銘柄に限定すると、社外取締役の平均在任期間は「5.1年」で、最多は「4年」でした。上述の全上場企業を対象とした調査結果と比較すれば長期間とはなっているものの、平均的な水準が4~5年ということについて、依然として「短い」との印象を持つ向きも少なくないのではないでしょうか。これには、日本の上場企業の社外取締役は他の上場企業の経営トップを退任した後に招聘されるケースが少なくないため、就任した際には既に相当な高齢に達しており、長期間にわたる任務には耐えかねるという実態が影響しているものと推察されます。

米国企業における社外取締役の平均在任期間は「8.25年」となっています。3年の中期経営計画をフルに2回経験できる年数と考えると、8年という在任期間は一つの目安となりそうです。

参考文献:「コーポレート・ガバナンス『本当にそうなのか?』大量データからみる真実」(一橋大学・商学研究科 円谷昭一准教授 編著)

上場企業における任期基準の実例

以上を踏まえたうえで、実際に上場企業が社外取締役(社外役員)の独立性基準において定めている任期(在任期間、再任回数)に関する事例を見てみましょう。以下の企業が全てではありませんが、代表的な事例として参考にしてください。

<社外役員の独立性基準において定められている任期の例>
8年(取締役・監査役とも) 三菱重工業、三菱商事
取締役10年、監査役12年 アサヒグループホールディングス、塩野義製薬

公表されている事例の多くにおいては、社外監査役の任期を2期(8年)として社外取締役もこれに揃えるか、社外監査役を3期(12年)とする一方で社外取締役は少し短く(10年)しておくかの二択となっているようです。上述のとおり、機関投資家の議決権行使基準が短いもので10年とされていること、上場企業として望ましい年数の目安の一つが8年であることなどを勘案すると、いずれも妥当な年数と言えそうです。

ただし、上記企業のように任期を独立性基準として“公表”するべきかどうかについては慎重に検討するべきでしょう。社外取締役の独立性が厳しく問われ、また、人数も「複数」から「取締役会の3分の1」を求める流れが加速する中(2018年11月14日のニュース「社外取締役に対して吹き始めた逆風」参照)、現任者の任期が迫っているからといって適切な後継者がすぐに見つかるとは限りません。継続的に社外取締役を確保することのできるサクセッションプランの確立を待って、「社内規定」から「公表基準」へと格上げすることが望ましいと考えられます。

2019/07/05 金融商品時価の「レベル別開示」義務化、1年遅れに 自社への影響精査を

企業会計基準委員会(ASBJ)は2019年7月4日、企業会計基準第30号「時価の算定に関する会計基準」(以下、時価算定基準)を公表した(時価算定基準の詳細は2019年2月20日のニュース『金融商品の時価の「レベル別開示」義務化で上場会社への影響は?』を参照)。「2021年」4月1日以後に開始する連結会計年度および事業年度の期首から「レベル別開示」が義務付けられることになる。

レベル別開示:金融商品の「時価」を「算定日において市場参加者間で秩序ある取引が行われると想定した場合の、当該取引における資産の売却によって受け取る価格又は負債の移転のために支払う価格」(いわゆる“出口価格”)と定義したうえで、金融商品の時価を算定する際に使われるインプット(=時価の算定式に入力する数値)の影響度(重要度)のレベルに応じて、時価を「レベル1の時価」「レベル2の時価」「レベル3の時価」の3つに分類し、各レベル別の開示を求めること。

公開草案では、「2020年」4月1日以後に開始する連結会計年度および事業年度の期首からの適用義務化が提案されていたが、「システムの開発やプロセスの整備及び運用までを含めると十分な準備期間が必要であるとの意見や、具体的な実務の運用を検討するためにより時間を要するとの意見が寄せられた」ことから、適用義務化を1年遅らせ、「2021年」4月1日以後開始する連結会計年度および事業年度の期首からとした(2020年4月1日以後開始する連結会計年度および事業年度の期首からの早期適用も可。また、さらに1年早い「2020年3月31日以後終了する」連結会計年度および事業年度の連結財務諸表および個別財務諸表からの早期適用も可)。企業側の声に配慮した格好。時価算定基準の導入に伴い、金融商品の時価を算定する日本独自の基準であった実務対応報告第25号「金融資産の時価の算定に関する実務上の取扱い」は、時価算定基準の適用義務付けと同時に廃止される。我が国でも、金融商品について、国際会計基準審議会(IASB)および米国財務会計基準審議会(FASB)とほぼ同じ内容の時価(公正価値)に関する詳細なガイダンスが定められたことになる。

時価算定基準を公開草案と比較してみると・・・

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2019/07/05 金融商品時価の「レベル別開示」義務化、1年遅れに 自社への影響精査を(会員限定)

企業会計基準委員会(ASBJ)は2019年7月4日、企業会計基準第30号「時価の算定に関する会計基準」(以下、時価算定基準)を公表した(時価算定基準の詳細は2019年2月20日のニュース『金融商品の時価の「レベル別開示」義務化で上場会社への影響は?』を参照)。「2021年」4月1日以後に開始する連結会計年度および事業年度の期首から「レベル別開示」が義務付けられることになる。

レベル別開示:金融商品の「時価」を「算定日において市場参加者間で秩序ある取引が行われると想定した場合の、当該取引における資産の売却によって受け取る価格又は負債の移転のために支払う価格」(いわゆる“出口価格”)と定義したうえで、金融商品の時価を算定する際に使われるインプット(=時価の算定式に入力する数値)の影響度(重要度)のレベルに応じて、時価を「レベル1の時価」「レベル2の時価」「レベル3の時価」の3つに分類し、各レベル別の開示を求めること。

公開草案では、「2020年」4月1日以後に開始する連結会計年度および事業年度の期首からの適用義務化が提案されていたが、「システムの開発やプロセスの整備及び運用までを含めると十分な準備期間が必要であるとの意見や、具体的な実務の運用を検討するためにより時間を要するとの意見が寄せられた」ことから、適用義務化を1年遅らせ、「2021年」4月1日以後開始する連結会計年度および事業年度の期首からとした(2020年4月1日以後開始する連結会計年度および事業年度の期首からの早期適用も可。また、さらに1年早い「2020年3月31日以後終了する」連結会計年度および事業年度の連結財務諸表および個別財務諸表からの早期適用も可)。企業側の声に配慮した格好。時価算定基準の導入に伴い、金融商品の時価を算定する日本独自の基準であった実務対応報告第25号「金融資産の時価の算定に関する実務上の取扱い」は、時価算定基準の適用義務付けと同時に廃止される。我が国でも、金融商品について、国際会計基準審議会(IASB)および米国財務会計基準審議会(FASB)とほぼ同じ内容の時価(公正価値)に関する詳細なガイダンスが定められたことになる。

時価算定基準を公開草案と比較してみると、適用義務化が1年延びたこと以外、重要な変更はない。すなわち、企業は金融商品の時価について、公開草案で示されていたとおりの「レベル別開示」が求められることになる。 これに伴いASBJは、下表のとおり「レベル別開示」の具体的な開示例を示している(ただし、注釈は当フォーラムによるもの)。

レベル別開示:金融商品の「時価」を「算定日において市場参加者間で秩序ある取引が行われると想定した場合の、当該取引における資産の売却によって受け取る価格又は負債の移転のために支払う価格」(いわゆる“出口価格”)と定義したうえで、金融商品の時価を算定する際に使われるインプット(=時価の算定式に入力する数値)の影響度(重要度)のレベルに応じて、時価を「レベル1の時価」「レベル2の時価」「レベル3の時価」の3つに分類し、各レベル別の開示を求めること。

3.金融商品の時価のレベルごとの内訳等に関する事項
金融商品の時価を、時価の算定に用いたインプットの観察可能性及び重要性に応じて、以下の3つのレベルに分類しております。
レベル 1の時価 :同一の資産又は負債の活発な市場における(無調整の)相場価格により算定した時価
レベル 2の時価 :レベル 1 のインプット以外の直接又は間接的に観察可能なインプットを用いて算定した時価
レベル 3の時価 :重要な観察できないインプットを使用して算定した時価
時価の算定に重要な影響を与えるインプットを複数使用している場合には、それらのインプットがそれぞれ属するレベルのうち、時価の算定における優先順位が最も低いレベルに時価を分類しております。

(1) 時価をもって連結貸借対照表計上額とする金融資産及び金融負債

(単位:百万円)
区分 時価
レベル1 レベル2 レベル3 合計
有価証券及び投資有価証券
 その他有価証券
  株式 XXX XXX
  国債・地方債等 XXX XXX XXX
  社債 XXX XXX
デリバティブ取引
 通貨関連 XXX XXX
 金利関連 XXX XXX
資産計 XXX XXX XXX
デリバティブ取引
 通貨関連 XXX XXX
 金利関連 XXX XXX
負債計 XXX XXX

(2) 時価をもって連結貸借対照表計上額としない金融資産及び金融負債

(単位:百万円)
区分 時価
レベル1 レベル2 レベル3 合計
受取手形及び売掛金 XXX XXX
有価証券及び投資有価証券
 満期保有目的の債券
  国債・地方債等 XXX XXX XXX
  社債 XXX XXX
  その他 XXX XXX
長期貸付金 XXX XXX XXX
デリバティブ取引
 通貨関連 XXX XXX
 金利関連 XXX XXX
資産計 XXX XXX XXX XXX
支払手形及び買掛金 XXX XXX
短期借入金 XXX XXX
社債 XXX XXX
長期借入金 XXX XXX
リース債務 XXX XXX
デリバティブ取引
 通貨関連 XXX XXX
 金利関連 XXX XXX
負債計 XXX XXX

インプット:時価の算定式に入力する数値

レベル 1: 例えば「上場株式の時価」

レベル 2: 例えば「金利スワップ(固定金利と変動金利をスワップ(交換)するデリバティブ契約)の時価」や「為替予約(金融機関との間で、将来、外国通貨を一定の為替レートで購入または売却することを予約する契約)の時価」

レベル 3:例えばインプットに「ボラティリティ(変動率。「株価のボラティリティが高い」とは、株価が乱高下することを意味する)が用いられており、その重要性が高い場合」が用いられており、その重要性が高い場合

上記開示例と2019年2月20日のニュース『金融商品の時価の「レベル別開示」義務化で上場会社への影響は?』でお伝えしたIFRS任意適用会社の開示例(ツバキ・ナカシマの2017年12月期の事例)を比べると、ツバキ・ナカシマが設けていた「帳簿価格欄」が上記開示例では設けられていないことに気付く。この点、ASBJが示した開示例では、帳簿価額は「レベル別開示」より前の箇所(2.金融商品の時価等に関する事項)において、「結貸借対照表計上額連と時価との差額」として開示される(開示例の4ページを参照)。同様の開示は、時価算定基準の適用導入に伴い廃止されることとなる「金融資産の時価の算定に関する実務上の取扱い」でも行われており、時価算定基準導入後も当該開示は継続される。上記の開示例は、「2.金融商品の時価等に関する事項」で開示している時価を「レベルごと」に開示したものという位置付けとなる。

結貸借対照表計上額:時価評価される投資有価証券などを除くと、ここでは「帳簿価額」のことを指す。

上表の下には、「時価の算定に用いた評価技法及びインプットの説明」が記載されている(青字がレベル1、赤字がレベル3、黒字が全体の説明またはレベル2の説明)。

区分 時価の算定に用いた評価技法及びインプットの説明
有価証券及び投資有価証券 上場株式、国債、地方債及び社債は相場価格を用いて評価しております。上場株式及び国債は活発な市場で取引されているため、その時価をレベル 1 の時価に分類しております。一方で、当社が保有している地方債及び社債は、市場での取引頻度が低く、活発な市場における相場価格とは認められないため、その時価をレベル 2 の時価に分類しております。
デリバティブ取引 金利スワップ及び為替予約の時価は、金利や為替レート等の観察可能なインプットを用いて割引現在価値法により算定しており、レベル 2 の時価に分類しております。
受取手形及び売掛金 これらの時価は、一定の期間ごとに区分した債権ごとに、債権額と満期までの期間及び信用リスクを加味した利率を基に割引現在価値法により算定しており、レベル 2 の時価に分類しております。
長期貸付金 長期貸付金の時価は、一定の期間ごとに分類し、与信管理上の信用リスク区分ごとに、その将来キャッシュ・フローと国債の利回り等適切な指標に信用スプレッドを上乗せした利率を基に割引現在価値法により算定しており、レベル 2 の時価に分類しております。また、貸倒懸念債権の時価は、同様の割引率による見積キャッシュ・フローの割引現在価値、又は、担保及び保証による回収見込額等を基に割引現在価値法により算定しており、時価に対して観察できないインプットによる影響額が重要な場合はレベル 3 の時価、そうでない場合はレベル 2 の時価に分類しております。
支払手形及び買掛金、並びに短期借入金 これらの時価は、一定の期間ごとに区分した債務ごとに、その将来キャッシュ・フローと、返済期日までの期間及び信用リスクを加味した利率を基に割引現在価値法により算定しており、レベル 2 の時価に分類しております。
社債 当社の発行する社債の時価は、元利金の合計額と、当該社債の残存期間及び信用リスクを加味した利率を基に割引現在価値法により算定しており、レベル 2 の時価に分類しております。
長期借入金及びリース債務 これらの時価は、元利金の合計額と、当該債務の残存期間及び信用リスクを加味した利率を基に、割引現在価値法により算定しており、レベル 2 の時価に分類しております。

経理担当役員としては、遅くとも原則適用がスタートする前に、上記開示例と説明を見ながら、金融商品の種類による「レベル」や「インプット」の違いを理解し、自社の開示への影響を精査しておく必要がある

このほか、日本公認会計士協会の会計制度委員会報告第14号「金融商品会計に関する実務指針」も同日(2019年7月4日)改正され、その他有価証券の期末の貸借対照表価額として「期末前1か月の市場価格の平均に基づいて算定された価額」を用いることができる旨の規定が削除された(こちらを参照)。これは、当該規定が時価算定基準の時価の定義を満たさないことが理由。会計制度委員会報告第4号「外貨建取引等の会計処理に関する実務指針」において外貨⇒円への換算を「時価として期末前1か月の市場価格の平均に基づいて算定された価額を用いる」ことができるとしていた取扱いも同様に削除されている。こういった“できる規定”に沿った会計処理をしてきた企業は、時価算定基準の適用後は“できる規定”を使うことができなくなり、時価算定基準に則って「算定日(期末日)における時価」を用いる必要がある点にも留意したい。

その他有価証券:売買目的有価証券(時価の変動により利益を得ることを目的として保有する有価証券)、満期保有目的債券(満期まで所有する意図を持って保有する社債など)、子会社株式および関連会社株式以外の有価証券のこと。

時価算定基準の時価の定義:算定日において市場参加者間で秩序ある取引が行われると想定した場合の、当該取引における資産の売却によって受け取る価格又は負債の移転のために支払う価格(いわゆる出口価格)

2019/07/04 社員寮のメリットとデメリット

1990年以降、バブル崩壊・景気低迷を受けて社員寮は縮小傾向にあったが、昨今の売り手市場を反映してか、このところ一部企業では社員寮を見直す動きがある。

ただし、社員寮を持つことにはメリットもあればデメリットもあるので注意したい。まずメリットとしては・・・

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2019/07/04 社員寮のメリットとデメリット(会員限定)

1990年以降、バブル崩壊・景気低迷を受けて社員寮は縮小傾向にあったが、昨今の売り手市場を反映してか、このところ一部企業では社員寮を見直す動きがある。

ただし、社員寮を持つことにはメリットもあればデメリットもあるので注意したい。まずメリットとしては以下のようなものがある。

(1) 賃金の一部を補填する性格がある
(2) セキュリティ面で安心感を与えられる
(3) 緊急事態(例えば急病や負傷)の際には寮生同士が助け合える
(4) 新卒(特に地方在住の学生)の採用活動において有利な材料となる
(5) 会社への帰属意識を高められる

その一方で、次のようなデメリットも挙げられる。
  
(1) 維持コストがかかる
(2) 私生活への干渉が、寮生にとっては煩わしく、会社にとっては負担となることがある
(3) 寮内の人間関係が仕事に持ち込まれることがある(これはメリットになる場合もある)
(4) 退寮に際してトラブル(後述)が生じる場合がある
(5) 入寮できる者とできない者との間で不公平感が生じる
(6) 廃止するのが難しい
 
社員寮を自社で所有している場合、他の用途に転用して有効活用したくてもなかなかできないという点で、特に(6)のデメリットについて会社はもどかしさを感じるだろう。

仮に社員寮を廃止することとなった場合、寮生には退寮してもらうしかないが、それは「労働条件の不利益変更」に他ならない。したがって、寮生を説得して退寮に同意してもらう(同意書等の書面に残す)必要があるほか、代替措置(例えば明け渡しの猶予、引越し費用の会社負担、当面の住宅手当支給など)を用意する必要もあろう。これらに応じない寮生に対しては、就業規則を変更し、労働条件の不利益変更に踏み切るしかないが、労働契約法上、「使用者は、労働者と合意することなく、就業規則を変更することにより、労働者の不利益に労働契約の内容である労働条件を変更することはできない」のが原則であり(同法9条)、変更する場合には、それが「労働者の受ける不利益の程度、労働条件の変更の必要性、変更後の就業規則の内容の相当性、労働組合等との交渉の状況その他の就業規則の変更に係る事情に照らして合理的なものである」必要がある(同法10条)。万が一訴訟に発展した場合に裁判所がどう判断するかというリスクは残る。

すべての福利厚生制度に共通する話だが、制度や設備を廃止するのは、導入するよりも労力・費用・時間を要する。社員寮を持つかどうかは、「採用活動に有利」といったメリットのみならず、デメリットも勘案したうえで慎重に判断したいところだ。

2019/07/03 取締役への委任事項の決議

会社法上、取締役会は取締役(指名委員会等設置会社の場合は「執行役」)に対し業務の執行を委任することになるが、それが何であるのかが法定されているわけではない。そこで、通常は取締役への委任事項を取締役会で決議することになる(取締役会で職務権限規程等の社内ルールの制定・改定の承認や各取締役の管掌についての決議を行うことで委任する事項を特定する場合もある)。

もっとも、取締役への委任内容が毎年変わるというわけでもないだろう。そこで、委任内容が前年と同一である場合であっても毎年取締役会で決議をしなければならないのかという疑問が当フォーラムの会員企業から寄せられている。

結論から言えば、・・・

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2019/07/03 取締役への委任事項の決議(会員限定)

会社法上、取締役会は取締役(指名委員会等設置会社の場合は「執行役」)に対し業務の執行を委任することになるが、それが何であるのかが法定されているわけではない。そこで、通常は取締役への委任事項を取締役会で決議することになる(取締役会で職務権限規程等の社内ルールの制定・改定の承認や各取締役の管掌についての決議を行うことで委任する事項を特定する場合もある)。

もっとも、取締役への委任内容が毎年変わるというわけでもないだろう。そこで、委任内容が前年と同一である場合であっても毎年取締役会で決議をしなければならないのかという疑問が当フォーラムの会員企業から寄せられている。

結論から言えば、一般的に取締役会決議の効力に期限はないため、委任内容が前年と同一である場合、取締役会決議をしなかったとしても当該年度の取締役(または執行役)に業務執行決定権限がないということにはならない。すなわち、委任内容が変わらないのであれば、法的には毎年取締役会で決議をする必要はない。実際、委任内容に変更がない場合には取締役会決議をしていない企業も見受けられる。

もちろん、毎年決議することとしても構わない。特に指名委員会等設置会社では、取締役会から執行役に対し業務執行の決定権限が大幅に委譲されている(会社法416条4項本文)うえ()、執行役の任期も1年と短い(同402条7項)ことから、委任内容に変更がなかったとしても、年度毎に各執行役の業務執行決定権限および取締役会の監督対象を明確にしておくという意味で、毎年取締役会決議をしている会社もある。

 監査役会設置会社、監査等委員会設置会社では、「重要な財産の処分及び譲受け」「多額の借財」「支店その他の重要な組織の設置、変更及び廃止」「業務の適正を確保するための体制の整備」などのほか、重要な業務執行の決定については取締役に委任できない(会社法362条4項)。また、指名委員会等設置会社では、株主総会に提出する議案(取締役の選解任等に関するものを除く)の内容の決定」「執行役の選解任」などを執行役に委任できない(会社法416条4項各号)。

業務の適正を確保するための体制の整備 : いわゆる「内部統制システムの整備」を指す。

このような意義を踏まえると、従来毎年決議してきたのであれば、あえてこれをやめる必要はないとも言える。ただし、毎年決議をとるのが面倒で、役員も毎年委任内容を決議するという形で確認しなくても特に問題はないということであれば、上述のとおり委任内容に変更がない年は決議をしないというやり方に変更しても法的には何ら問題はない。

2019/07/02 ノンコア事業の売却における経営陣の視点

「VAIO」というと未だに「ソニーのパソコン」と思っている人も少なくないだろう。確かに現在もソニーの公式オンラインストアでも販売されているが、今や「VAIO株式会社」というソニーから売却されて設立(カーブアウト)された企業の商品である。2014年に投資ファンドに売却する形でカーブアウトされてから約5年、現在の株主構成は投資ファンド(VJホールディングス2株式会社 )93.6%、ソニー4.9%、経営陣 1.5%となっている。過去3期(2016年5月期~2018年5月期)の業績を見ると、売上は198億7百万円⇒188億6千9百21万円⇒214億8千8百万円、当期純利益は6千4百万円⇒1億8千5百万円⇒4億8千2百万円で推移している。VAIO事業がソニーに属していた頃と比べれば、従業員数は1/5以下に、販売台数は1/20以下に減少したとはいえ、黒字転換を果たしたことと、最近のソニーの好調な業績を踏まえれば、本カーブアウトは成功だったとの見方はできるだろう。

カーブアウト : 企業が事業の一部を新たな企業として独立させること。「カーブアウト(Carve out)」とは「切り出す」という意味。

コーポレートガバナンス・コードが、「事業ポートフォリオ」の見直しについて、具体的に何を実行するのか、株主に分かりやすい言葉・論理で明確に説明するよう経営陣に求めているように(原則5-2.経営戦略や経営計画の策定・公表)、今後日本企業においても、事業ポートフォリオの見直しは益々重要な経営課題となっていくことは間違いない。その過程では、カーブアウトの事例も増加していくはずだ。かつて経営危機に直面した欧米のコングロマリット企業では、・・・

コングロマリット : コングロマリット(conglomerate)とは、異なる分野の事業を複数同時進行で営む企業(「複合企業」とも呼ばれる)のことを指す。原子力、航空機エンジン、医療機器、家電製品、金融事業などを行うGE(ゼネラル・エレクトリック)社は世界最大のコングロマリットとされる。また、それぞれ銀行、証券、保険などの業務を行う子会社を持株会社の傘下に持つ金融グループもコングロマリット(金融コングロマリット)の1つである。コングロマリットには、経営資源を複数の事業に分散して投下することでリスクを低減するというメリットがある一方で、好調な事業と不振な事業が共存する場合、不振事業に足を引っ張られる形で、好調な事業の業績等が当該企業の株価に十分反映されず、株価が割安(ディスカウント)になりかねないというデメリットがある。このデメリットを「コングロマリット・ディスカウント」という。

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2019/07/02 ノンコア事業の売却における経営陣の視点(会員限定)

「VAIO」というと未だに「ソニーのパソコン」と思っている人も少なくないだろう。確かに現在もソニーの公式オンラインストアでも販売されているが、今や「VAIO株式会社」というソニーから売却されて設立(カーブアウト)された企業の商品である。2014年に投資ファンドに売却する形でカーブアウトされてから約5年、現在の株主構成は投資ファンド(VJホールディングス2株式会社)93.6%、ソニー4.9%、経営陣 1.5%となっている。過去3期(2016年5月期~2018年5月期)の業績を見ると、売上は198億7百万円⇒188億6千9百21万円⇒214億8千8百万円、当期純利益は6千4百万円⇒1億8千5百万円⇒4億8千2百万円で推移している。VAIO事業がソニーに属していた頃と比べれば、従業員数は1/5以下に、販売台数は1/20以下に減少したとはいえ、黒字転換を果たしたことと、最近のソニーの好調な業績を踏まえれば、本カーブアウトは成功だったとの見方はできるだろう。

カーブアウト : 企業が事業の一部を新たな企業として独立させること。「カーブアウト(Carve out)」とは「切り出す」という意味。

コーポレートガバナンス・コードが、「事業ポートフォリオ」の見直しについて、具体的に何を実行するのか、株主に分かりやすい言葉・論理で明確に説明するよう経営陣に求めているように(原則5-2.経営戦略や経営計画の策定・公表)、今後日本企業においても、事業ポートフォリオの見直しは益々重要な経営課題となっていくことは間違いない。その過程では、カーブアウトの事例も増加していくはずだ。かつて経営危機に直面した欧米のコングロマリット企業では、事業ポートフォリオを抜本的に見直し、20年かけて全てのノンコア事業を売却、現在はコア事業に経営資源を集中しているという。

コングロマリット : コングロマリット(conglomerate)とは、異なる分野の事業を複数同時進行で営む企業(「複合企業」とも呼ばれる)のことを指す。原子力、航空機エンジン、医療機器、家電製品、金融事業などを行うGE(ゼネラル・エレクトリック)社は世界最大のコングロマリットとされる。また、それぞれ銀行、証券、保険などの業務を行う子会社を持株会社の傘下に持つ金融グループもコングロマリット(金融コングロマリット)の1つである。コングロマリットには、経営資源を複数の事業に分散して投下することでリスクを低減するというメリットがある一方で、好調な事業と不振な事業が共存する場合、不振事業に足を引っ張られる形で、好調な事業の業績等が当該企業の株価に十分反映されず、株価が割安(ディスカウント)になりかねないというデメリットがある。このデメリットを「コングロマリット・ディスカウント」という。

カーブアウトに向けてまず検討する必要があるのが、カーブアウトの対象事業の絞り込みだ。ある日本企業では、自社の得意な分野は何かという視点から、事業を「安定成長事業」「成長促進事業」「収益改善事業」の3つに分類し、売却対象事業の絞り込みを行っているという。もっとも、一度参入した事業から撤退するのは容易なことではない。別の日本企業では、事業の先行きに懸念が出てきたところで何段階かのマイルストーンを設け、一定の猶予・検討期間を経たうえで撤退するか否かを決定しているという。

また、成熟した事業を売却するという選択肢もあり得る。業界が成熟した場合、競争優位の源泉が低コストオペレーションにシフトするのが通常だが、低コストオペレーションを行わない企業は事業を売却するという決断を下すことも考えられる。

なかには、たとえ現状は黒字であっても、ノンコア事業については売却の検討対象とし、実際に売却を実行している日本企業もある。この企業の場合、主に(1)自社で当該事業を伸ばせるのか、あるいは他社に売却した方が伸ばせるか、(2)売却後も従業員を大事にしてもらえるか―――という視点から売却の是非を判断しているという。

上記(2)にあるように、カーブアウトにあたっては、雇用の継続や従業員のモチベーションの維持も重要な課題となる。もちろん企業は、従業員の雇用のみならず、株主価値の向上も視野に入れ最適な意思決定をする必要があるが、特にカーブアウトされた事業に属する従業員は「自分達は売られた」といった感情を抱きがちなだけに、従業員の“心のケア”は必須となる。

実際にカーブアウトを行ったある日本企業では、社内に向けては「売却した」「切り出した」といった表現ではなく、「外部資本を導入した」という前向きな表現を使うよう心掛けたという。このほか、カーブアウト実行時に、親会社の経営トップが「当グループでは当該事業を成長させることが難しかったので、知見のある会社に事業譲渡することにした」といったメッセージを発した企業や、カーブアウトにより親会社にキャッシュが入ることで財務状況の改善に貢献することを強調したという企業もある。

また、冒頭で紹介したVAIOのように、これまで築き上げたブランドの存在が従業員の心の支えになることも多いようだ。ブランドをもう一度輝かせたいという思いを従業員が共有できるかどうかは、カーブアウトした事業の再生の成否の鍵を握ることになる。

一方で、カーブアウトの成功要因の一つに大胆なコストカットを挙げる日本企業もある。この企業は、カーブアウト時に「採算が取れるであろう水準」まで大幅に人員を削減し、ターゲットとするマーケットの見直しも行った。また、別の日本企業は、「親会社から完全に独立したこと」を成功要因に挙げる。将来的に親会社に買い戻される可能性が残っていたり、親会社のサポートを受けられたりすると、どこかに“甘え”が生まれかねない。成功には「企業として存続できなくなるかもしれない」という危機感が必要というわけだ。

経営陣が従業員の雇用を守りたいと考えるのは当然だろう。しかし、だからと言って不採算事業を抱え続ければ、当該事業の赤字が拡大して売却自体が困難になり、結局はさらに大幅な人員削減を行わなければならなくなる可能性もある。

欧米企業でも、カーブアウトにあたっては、従業員の雇用継続等の問題は意識されているもの、早期の事業売却が結果的に従業員にとっても良い影響をもたらすことが多く、売却せざるを得ない状況になるまで売却を先延ばしにすることは、株主のみならず、従業員にとっても不幸な結果を招くとの意見がある。また、経営陣がコア事業に集中するとの意思決定をした場合、長期的には、非コア事業への投資が削られ、当該事業の競争力が低下するため、従業員にとってもグループに留まることは良い選択とは言えないだろう。長期間に亘って投資が行われない事業に属する従業員は不満を抱え込むことにもつながる。実際、シナジーがある企業に事業を売却することで従業員の雇用が維持された事例や、収益力があるうちに事業を売却することで、より良い企業に高値で売却できたうえに、売却後、新しいオーナーによる当該事業への投資額が2~3倍となるなど、事業売却が自社のみならず、従業員にも良い影響を与えている事例もある。

経営陣にとって事業売却は難しい判断だが、当該事業のポテンシャルを活かすためにも、感情的な判断は排除して早目に決断を下し、当該事業の“ベストオーナー”を見つけることが経営陣の責任と言えよう。