2019/06/14 KAMを早期適用すべき? 3月決算企業の経営判断、期限迫る(会員限定)

上場企業では、2021年3月期決算の有価証券報告書の監査から、会計監査人(公認会計士。以下、監査人)が会計監査において「特に重要と判断した事項」であるKAM(Key Audit Matters(監査上の主要な検討事項)の略)の記載が始まる(2018年7月19日のニュース「KAMの導入が確定、企業の監査対応はどう変わる?」を参照)。ただし、KAMは「それ以前の決算に係る財務諸表の監査」から記載することを妨げないこととされており(2018年7月5日公表の「監査基準の改訂について」の三 実施時期等の1)、3月決算企業であれば現在進行中の「2020年3月期」からの早期適用も認められる。

KAMはブラックボックス化した会計監査の透明化を図るために導入される制度であり、投資家はKAMの記載を待ち望んでいる。特に東証一部上場企業については、2020年3月期決算の監査からの記載が期待されている(企業会計審議会「監査基準の改訂について(公開草案)」に対する「コメントの概要及びコメントに対する考え方」№61、62)。東証一部上場企業を中心に、今6月の定時株主総会では、株主から「KAMを早期適用するのか」「早期適用しないのはなぜか」といった質問が出る可能性もあろう。上場企業の経営陣は、こうした質問に備え、KAMを早期適用するかどうかを決定しておく必要がある。

では、いつまでにそれを決定しなければいけないのだろうか。もし早期適用するのであれば、監査人との契約時点ではKAMを早期適用するかどうか、検討を終えていなければならない。なぜなら、2019年2月27日に改正された日本公認会計士協会 監査基準委員会報告書210「監査業務の契約条件の合意」のA25項には、「監査人が、法令により又は任意で、監査報告書において監査上の主要な検討事項を報告する場合は、一般に公正妥当と認められる監査の基準に従って監査上の主要な検討事項を報告する旨を監査契約書に記載することとなる。」とあるからだ。すなわち、KAMを早期適用するのであれば、監査契約書にその旨を明記しておかなければならない。監査契約は毎年7月頃(3月期決算企業の場合)を目途に締結されるのが通常。そうなると、2020年3月決算の上場企業にとって、KAMを早期適用するかどうかを決定するまでに残された時間はあと1か月程度ということになる。

もっとも、このスケジュールはかなりタイトであり、監査契約締結前までに早期適用するかどうか方針を決定することが難しいという企業もあろう。その場合、とりあえず監査契約書にKAMの早期適用を条件として盛り込んでおき、実際にKAMを適用するかどうかは2020年3月期の終盤で最終判断する旨、監査人と合意しておけば、KAMを早期適用するケースとしないケースの両方に対応できる。早期適用企業の趨勢を見極めながら対応方針を決めることも可能になろう。ちなみに、四半期レビュー報告書ではKAMの記載は求められていないため、早期適用企業かどうかが四半期レビュー報告書から明らかになることもない。

上記手法は、日本監査役協会の会計委員会が(2019年)6月11日に公表した「監査上の主要な検討事項(KAM)に関するQ&A集・前編」でも、「一旦早期適用を前提に監査契約を締結し、監査手続を進め、期末に適用の是非を判断することで関係者の了解を得ておく」として紹介されている(Q&A集のQ2-1のAを参照)。また、同Q&Aでは、下記①②をおおむね 2019年7月までに実施することとしていることを推奨している。

① 2019年3月期決算結果を基に、適用した場合の監査報告書がどのようになるのかトライアルを実施する。具体的には、監査人が監査役等と協議し、また執行側から事情聴取を行った上で、試験的にKAMを選定するとともに、記載内容を確定し、監査役等及び執行側に報告する。
②トライアルの結果を基に、実務上の課題点の洗い出しを行い、対応方針を決定する。

最終的に2020年3月期ではKAMを早期適用しないという結論になったとしても、2020年3月期において、(強制適用となる)2021年3月期の予行演習しておくことは決して無駄にはならないはずだ。

2019/06/13 子会社は増やすべきか、減らすべきか

日本企業が海外での事業展開を強化する中、上場企業の海外子会社の数は増加傾向にある一方、国内子会社の数は減少傾向にある。全体としては、・・・

このコンテンツは会員限定です。会員登録(有料)すると続きをお読みいただけます。

続きはこちら
まだログインがお済みでない場合はログイン画面に遷移します。
会員登録はこちらから

2019/06/13 子会社は増やすべきか、減らすべきか(会員限定)

日本企業が海外での事業展開を強化する中、上場企業の海外子会社の数は増加傾向にある一方、国内子会社の数は減少傾向にある。全体としては、「子会社の数を減らす」というのが、上場企業におけるトレンドと言える。実際、吸収合併等により子会社数を半減させたり、基本的に新たな子会社を作らない方針を示したりしている上場企業もある。

上場企業が子会社数を減らす理由の一つとして、ガバナンスの問題がある。積極的なM&Aや分社化の結果、子会社の数が増えすぎ、子会社を含めた「グループ・ガバナンス」が難しくなってきたという声は多くの上場企業から聞かれる。

“多過ぎる子会社”が招くリスクとしてまず挙げられるのが「不正」だ。一般的に子会社は管理部門の人数が少なく、人事異動も少ないため、不正が発生するリスクは親会社より高いと言われる。しかし子会社の数、言い換えれば「リスク管理をしなければならない会社の数」が多すぎれば、親会社の目が十分に行き届かないという状況になりかねない。

また、意思決定の重層化という問題もある。持株会社制を採用し、その傘下に各事業部門を別法人化として置いている企業グループでは、持株会社と各事業会社にそれぞれ経営会議と取締役会が存在するため、結果として意思決定が4層構造となり、意思決定に長い時間がかかっているというケースも見受けられる。事業環境の変化が激しく、技術の発展スピードも速い昨今、意思決定の遅れは致命傷になりかねない。

逆に、各地域・国にローカライズした事業展開が求められる場合には、各地域・国ごとに子会社を設立して権限を委譲し、意思決定を迅速化するということも考えられる。ただ、この場合には、各子会社が“一国一城”化し、情報が親会社に上がってこないという状況が生じる可能性がある。このような場合には、「子会社⇒親会社」というレポーティングではなく、各子会社を例えば「開発」「生産」「販売」といった機能別に横串で刺し、各機能のトップ(例えば生産本部長)を通じて親会社に情報を上げさせるということが考えられる。

いずれにせよ、グループ・ガバナンスに投資家等の注目も集まる中、今後子会社を残す、あるいは新設等する場合には、その理由を明確にして持っておく必要があろう。例えば上述したように、事業内容が極めてローカルに根差したものであるためであり、地域ごとに全く異なった規制が存在するなど、各地域・国にローカライズした事業展開が求められる場合や、多角的に事業を展開する場合などが考えられる。

こうした理由がない限り、グループ・ガバナンス強化の名の下、子会社の削減が進むことになりそうだ。

2019/06/12 特許法改正による「査証制度」導入の企業への影響

(2019年)5月10日、改正特許法が成立し、特許訴訟に「査証制度」が導入されることとなった。同法は5月17日に公布されており、1年以内に施行される予定だ。

査証制度とは、「特許権の侵害の可能性がある場合、中立的な技術専門家が被疑侵害者の工場等に立ち入り、特許権の侵害立証に必要な調査を行い、裁判所に報告書を提出する制度」のこと。知的財産(以下、知財)は「無体物」であるため、知財訴訟において、原告が、被疑侵害者が知財権を侵害していることを立証するのは一般的には難しいと言われる。商標権や一般に販売されているBtoC製品の特許などであれば侵害の立証は比較的容易だが、製造方法やBtoB製品の特許などは一見して侵害されているかどうかが分からないため、侵害の立証には困難を伴う。

無体物 : 有形的存在でないもの

こうした中、今回特許法の改正で「査証制度」が導入され、特許権侵害の可能性がある場合には、裁判所の判断により、中立的な第三者が被疑侵害者の工場に立ち入って調査を実施したうえで報告書を作成し、訴訟の原告はその報告書の内容を侵害立証に活用できるようにした。

この説明からは、特許権侵害を侵害された企業にとってメリットがありそうに見える査証制度だが、・・・

このコンテンツは会員限定です。会員登録(有料)すると続きをお読みいただけます。

続きはこちら
まだログインがお済みでない場合はログイン画面に遷移します。
会員登録はこちらから

2019/06/12 特許法改正による「査証制度」導入の企業への影響(会員限定)

(2019年)5月10日、改正特許法が成立し、特許訴訟に「査証制度」が導入されることとなった。同法は5月17日に公布されており、1年以内に施行される予定だ。

査証制度とは、「特許権の侵害の可能性がある場合、中立的な技術専門家が被疑侵害者の工場等に立ち入り、特許権の侵害立証に必要な調査を行い、裁判所に報告書を提出する制度」のこと。知的財産(以下、知財)は「無体物」であるため、知財訴訟において、原告が、被疑侵害者が知財権を侵害していることを立証するのは一般的には難しいと言われる。商標権や一般に販売されているBtoC製品の特許などであれば侵害の立証は比較的容易だが、製造方法やBtoB製品の特許などは一見して侵害されているかどうかが分からないため、侵害の立証には困難を伴う。

無体物 : 有形的存在でないもの

こうした中、今回特許法の改正で「査証制度」が導入され、特許権侵害の可能性がある場合には、裁判所の判断により、中立的な第三者が被疑侵害者の工場に立ち入って調査を実施したうえで報告書を作成し、訴訟の原告はその報告書の内容を侵害立証に活用できるようにした。

この説明からは、特許権侵害を侵害された企業にとってメリットがありそうに見える査証制度だが、実際にはそうとは言えないので要注意だ。
 
まず、自社が原告になったケースを考えてみよう。査証制度が証拠収集に柔軟に使える仕組みかというと、残念ながらそうではない。その一番の理由は、裁判所が「査証」を認める条件が厳格に規定されているからだ。具体的には、(1)証拠収集において「査証」を使う必要性が認められ、(2)被疑侵害者が特許権を侵害したと認められる蓋然性が高く、(3)他の手段では証拠収集を行うことができず、(4)「査証」による被疑侵害者の負担が不相当に高くない場合、に限るとされている。

そもそも日本企業相手の知財訴訟では、日本に工場等が所在していなければ査証の仕組みを使うことができない。また、被疑侵害者は裁判所の命令に応じて誠実に証拠を出すのが通常であり、査証を使うことが想定される場面は少ない。仮に原告が査証を使いたいと思ったとしても、上述の4つの厳格な要件をクリアする必要があることから、査証が認めるケースはほとんどないものと考えられる。実際、特許庁の報告書「実効的な権利保護に向けた知財紛争処理システムの在り方」(10ページ (a)発令要件参照)でも、本制度は「伝家の宝刀」とされ、実際に使われることはほぼ想定されていない。通常の訴訟における“武器”として本制度を使うことは期待しないほうがよさそうだ。

次に、訴えられる側である「被疑侵害者」になったケースを考えてみよう。上述のとおり査証の要件は厳格であるため、通常の知財訴訟で査証が認められ、工場に入られるケースは稀であろう。ただし、パテント・トロール(知財マフィア)や、極めてアグレッシブな外国の権利者が、知財訴訟において本制度の活用を考えないとは言い切れない。その場合、被疑侵害者にとって特に懸念されるのが、査証によって工場の営業秘密が漏れることだ。この点、査証を実施するのは裁判所が任命した中立な第三者であり、また、査証報告書では侵害立証に必要ではない営業秘密に関する記載は黒塗りにされ原告は見ることができないなど、営業秘密が漏れない仕組みが制度に組み込まれている。しかし、是が非でも営業秘密を窃取したいと目論む者は、査証の仕組みを使い、あらゆる手段を講じて攻勢に出る可能性がある。要するに、被疑侵害者の立場になった場合には、企業の重大な営業秘密を窃取されるという最悪の事態を招かないよう、査証の仕組みが使われることは防ぐべきであり、この点を踏まえた訴訟戦術を検討する必要があろう。

以上のとおり、査証制度は使い勝手が悪いうえに、営業秘密を窃取したいパテント・トロール(知財マフィア)に“チャンス”を与えるという、日本企業にとってはメリットよりデメリットが大きい仕組みであるとの指摘が多いのが現状だ。査証制度が結果的に国益を害するようなことにならないよう、適切に運用されることが望まれる。

2019/06/11 子会社役員人事の決定プロセス

このところ一般株主との間で利益相反が生じやすい「上場子会社」のガバナンスに焦点が当たっているが(2019年5月7日のニュース「グループ・ガバナンス実務指針案、上場子会社の扱いに“特段の配慮”」参照)、当然ながら未上場の100%子会社にもガバナンス上のリスクがないわけではない。例えば100%子会社で不祥事が起きた場合、当該子会社の完全なる支配株主である親会社は、自社の株主をはじめとするステークホルダーから厳しく監督責任を問われることになるだろう。

一般株主: 「支配株主」以外の株主のこと。「支配株主」とは、議決権の50%超を有している者や議決権の40%以上を有している者で、かつ、取締役の過半数を派遣していたり重要な財務および事業の方針の決定を支配する契約書が存在していたりする者を指す(東証 有価証券上場規程施行規則3条の2)。上場会社の支配株主自体も上場しているケースを「親子上場」という。

利益相反: 例えば親会社の要請を受け、上場子会社のサービスを親会社にだけ一般価格よりも割安の価格で提供した場合、親会社はコストダウンを図ることができる一方で、子会社の収益機会はその分損なわれ、ひいては子会社の一般株主の配当減や株価下落につながることになる。

こうした事態を招かないようにするために親会社(以下、100%親会社のことを指す)が関与する必要があるのが、・・・

このコンテンツは会員限定です。会員登録(有料)すると続きをお読みいただけます。

続きはこちら
まだログインがお済みでない場合はログイン画面に遷移します。
会員登録はこちらから

2019/06/11 子会社役員人事の決定プロセス(会員限定)

このところ一般株主との間で利益相反が生じやすい「上場子会社」のガバナンスに焦点が当たっているが(2019年5月7日のニュース「グループ・ガバナンス実務指針案、上場子会社の扱いに“特段の配慮”」参照)、当然ながら未上場の100%子会社にもガバナンス上のリスクがないわけではない。例えば100%子会社で不祥事が起きた場合、当該子会社の完全なる支配株主である親会社は、自社の株主をはじめとするステークホルダーから厳しく監督責任を問われることになるだろう。

一般株主: 「支配株主」以外の株主のこと。「支配株主」とは、議決権の50%超を有している者や議決権の40%以上を有している者で、かつ、取締役の過半数を派遣していたり重要な財務および事業の方針の決定を支配する契約書が存在していたりする者を指す(東証 有価証券上場規程施行規則3条の2)。上場会社の支配株主自体も上場しているケースを「親子上場」という。

利益相反: 例えば親会社の要請を受け、上場子会社のサービスを親会社にだけ一般価格よりも割安の価格で提供した場合、親会社はコストダウンを図ることができる一方で、子会社の収益機会はその分損なわれ、ひいては子会社の一般株主の配当減や株価下落につながることになる。

こうした事態を招かないようにするために親会社(以下、100%親会社のことを指す)が関与する必要があるのが、子会社(以下、100%子会社のことを指す)の役員人事だ。

子会社の株式を100%保有する親会社は、言うまでもなく株主総会の決議事項である子会社経営陣(取締役)を選任する権限を有している。とはいえ、特に子会社が多い企業グループでは、子会社の役員人事のすべてに親会社が関与するのは不可能だろう。そこで親会社は、子会社の重要度やその役員の地位を踏まえ、メリハリをもった関与の仕方を検討する必要がある。

例えばある企業グループでは、主要な子会社の社長の選任については、持株会社である親会社の指名委員会に諮ったうえで、さらに親会社の取締役会でも決議している。社長以外の代表権保有者(会長、副社長等)については指名委員会には諮らず、取締役会で決議するのみとし、代表権を持たない他役員に至っては、取締役会への付議も行わず、企業グループ内の人事担当間での情報共有にとどめているという。また、別の企業グループでも、主要子会社の代表取締役の選任は持株会社である親会社の指名委員会の審議対象としているが、代表取締役以外の役員人事については、子会社が親会社に提案し、承諾を受けるという形をとっている。このように役位に応じて親会社の関与度合いを変えるというやり方は、子会社の多い企業グループなどにおいては現実的な対応と言えそうだ。

ただし、なかには自社(=持株会社である親会社)および主要子会社の執行役員以上全員の選任を自社の指名委員会に諮っているという企業グループもある。そこには、親会社の指名委員会が主要子会社を含めより多くの人材を見ることもサクセッション・プラン(後継者計画)の一環であるとの考えがある。

一方、子会社により主体性を持たせているケースもある。ある企業グループでは、主要子会社の役員人事は基本的に主要子会社が決めたうえで、これを親会社の指名委員会(社外取締役のみで構成)に申請し、承認を受けるというスタイルをとっている。主要子会社以外の子会社の役員となると、(親会社の指名委員会ではなく)親会社に直接申請し、親会社の役員が承認しているという。

ここまで紹介したケースは、いずれかの場面で親会社の指名委員会による関与が見られるが、実は指名委員会が主要子会社の社長・CEO等の選任を審議対象としているケースは少数派であり、指名委員会が関与しないケースの方が多いのが現状となっている。例えばある企業グループでは、主要子会社の社長人事は親会社が一元的にコントロールしつつ、役員人事は親会社への報告と親会社の本部長による承認にとどめている。

また、規模や事業内容等により子会社を“格付け”し、主要子会社の社長人事については、親会社主導のもと親会社の社長が決裁するという企業グループもある。社長以外の人事は子会社が提案し、親会社が決裁するという。すなわち、主要子会社の社長は、自分以外の役員の人事について、(親会社に)提案はできるものの決定権は持っていないということになる(通常は提案のとおりに決定されるの)。これに対し、主要子会社以外の規模の大きくない子会社の役員人事については子会社で決裁し、親会社には報告するにとどめている。

このほか、子会社ではなく「役員」自体を格付けし、一定のランク以上の役員の選任については親会社の承認を必要とし、それ以外の役員と海外子会社の役員については、親会社の人事担当役員が承認しているという企業グループもある。ただし、この企業グループでは、国内の子会社社長については親会社の社長が決定しているという。

このように、子会社役員の選任プロセスには企業グループによって様々なパターンがあるが、共通するのは、子会社の重要性や役員の地位(代表取締役か否か等)に応じ、親会社やその指名委員会が関与の度合いを変えているということだ。ここで一つ論点となるのは、親会社の指名委員会が主要子会社の社長・CEO等の人事に関与するかどうかということだろう。

周知のとおり、昨年(2018年)6月1日から施行されている改訂コーポレートガバナンス・コード補充原則4-10①は、監査役会設置会社または監査等委員会設置会社に対しても、独立社外取締役を主要な構成員とする任意の指名委員会・報酬委員会の設置を慫慂しているが、100%子会社は企業グループの一員として一体的に運営された方が企業グループ全体の価値向上につながりやすいという観点からすれば、親会社の指名委員会は、少なくとも主要な子会社の経営トップは審議対象とするべきと言えそうだ。

慫慂:勧めること

2019/06/10 キャリアパスとしての内部監査経験

事業部門や管理部門から独立した立場で経営者・取締役会・監査役等に対して内部統制システムが有効に機能していることを評価するという、コーポレートガバナンスやリスクマネジメント等の観点から重要な役割を担う内部監査部門だが、もう一つ内部監査部門が果たし得る重要な機能が、・・・

このコンテンツは会員限定です。会員登録(有料)すると続きをお読みいただけます。

続きはこちら
まだログインがお済みでない場合はログイン画面に遷移します。
会員登録はこちらから

2019/06/10 キャリアパスとしての内部監査経験(会員限定)

事業部門や管理部門から独立した立場で経営者・取締役会・監査役等に対して内部統制システムが有効に機能していることを評価するという、コーポレートガバナンスやリスクマネジメント等の観点から重要な役割を担う内部監査部門だが、もう一つ内部監査部門が果たし得る重要な機能が、将来の幹部候補の育成だ。

内部監査部門では、企業が抱える事業リスクを包括的に把握し、その改善に向けた取り組みを主導するという経験を積むことができるため、将来の経営幹部を育成(場合によっては選抜)する場として同部門はうってつけと言える。

実際、ある日本企業では、国内外の子会社の社長候補や事業部門長候補を、キャリアパスの一環として内部監査部門に置いているという。この企業では、内部監査部門は自社グループが直面する経営課題が集まる“一大情報源”であることに加え、経営トップの考えに直接触れる機会も多いため、幹部候補が非常に有益な経験を積める場と捉えている。また、内部監査には経営者を対象とした 経営監査も含まれることから、例えば営業出身の人員が内部監査部門で経験を積むことにより、経営的な視点を身に付けられるという。

日本企業の中には内部監査部門を幹部候補育成の場と捉えているところはまだ少ないが、欧米企業では、内部監査部門は「経営課題をトップダウンで改善し経営目標を達成するために不可欠な機能」として認識され、社内での位置付けも高いため、幹部候補育成の場として優秀な人材が送り込まれることが一般的となっている。特にファイナンス領域における幹部候補育成の場として活用されるケースが多く、2~4年の内部監査部門での経験を経て、ファイナンス領域の幹部に就任するパターンがしばしば見受けられる。また、ファイナンス部門以外でも、内部監査部門出身者がCOO(Chief Operating Officer)やCIO(Chief Information Officer)に就任するケースもある。このように、欧米企業では内部監査部門が幹部人材の登竜門となっている一方、逆に、事業部門の幹部に内部監査部門のトップを経験させ、再び事業側に戻すというパターンもある。いずれにせよ、そこには経営の素養を身に付けさせようという意図がある。

CEOを含む経営陣の後継者計画(サクセッション・プラン)は企業の将来を左右する重要な経営課題だが、そもそも候補者となる人材の層が薄ければ、優秀な経営陣を選ぶことも難しい。事業部門にいるだけでは経営の視点を身に付けることは容易ではないだけに、経営陣候補の育成・選抜に内部監査部門を活用することは、日本企業でももっと検討されるべきだろう。また、事業部門から内部監査部門に異動となった社員がその人事的意図を理解できるよう、現経営陣は、内部監査部門の重要性、社内的な位置付けの高さを社内に向け発信する必要がありそうだ。

2019/06/07 「飲酒」もNG? 広がるダインベストメントの対象

ESG投資が活発化する中、ダインベストメント(投資の取りやめ)の対象となるテーマ・企業は、化石燃料、海洋プラスチックゴミ、個人情報流出、肥満等の健康被害、ファストファッションと広がりを見せているが(2019年3月14日『「ストロー」の次のターゲット』参照)、新たに・・・

ESG投資 : ESGとは、「Environmental(環境)」「Social(社会)」「Governance(企業統治)」の頭文字を組み合わせたもので、近年、特にグローバル機関投資家の間で、企業の投資価値を測る評価項目としての地位を確立しつつある。ESG投資とは文字通り「Environmental(環境)」「Social(社会)」「Governance(企業統治)」に優れた企業に投資することをいう。

このコンテンツは会員限定です。会員登録(有料)すると続きをお読みいただけます。

続きはこちら
まだログインがお済みでない場合はログイン画面に遷移します。
会員登録はこちらから