2019/05/20 個人データの消去“義務化”も 企業側は強い懸念示す

2019年5月14日のニュース「個人情報保護法改正 課徴金導入・罰金引上げ&漏えい報告義務化の行方」では、来年2020年に実施されることになっている個人情報保護法の改正により、欧州の「一般データ保護規則(General Data Protection Regulation =GDPR)」並みの「課徴金導入・罰金引上げ」および「漏えい報告の義務化」が行われることになるのかどうかについてお伝えしたが、これらと同様に、仮にGDPRの規制が導入された場合、企業にとって大きな負担となる可能性があるのが・・・

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2019/05/20 個人データの消去“義務化”も 企業側は強い懸念示す(会員限定)

2019年5月14日のニュース「個人情報保護法改正 課徴金導入・罰金引上げ&漏えい報告義務化の行方」では、来年2020年に実施されることになっている個人情報保護法の改正により、欧州の「一般データ保護規則(General Data Protection Regulation =GDPR)」並みの「課徴金導入・罰金引上げ」および「漏えい報告の義務化」が行われることになるのかどうかについてお伝えしたが、これらと同様に、仮にGDPRの規制が導入された場合、企業にとって大きな負担となる可能性があるのが「データポータビリティ権」と「利用停止権・消去権(忘れられる権利)」だ。それぞれ具体的に見てみよう。

■データポータビリティ権
日本の個人情報保護法では、個人情報取扱事業者は、本人からの請求があれば、本人が識別される個人データを、「書面」により本人に開示しなければならないことになっている(この権利を「開示請求権」という)。

一方、GDPRにおける開示請求権は日本の個人情報保護法よりも進んでおり、「データポータビリティ権」として以下の権利が認められている。

①自らの個人データを、機械可読性のある形式で取り戻す権利
②技術的に可能な場合には、自らの個人データを、ある管理者から別の管理者に直接的に移行させる権利

機械可読性:コンピューターにより文書構造が認識できること。機械可読性に配慮した文書(例えばXML(Extensible Markup Language=拡張可能なマークアップ言語)により作成された文書)はインターネットで検索されやすく、それゆえ流通しやすい。文書流通がインターネットを中心とするようになり、機械可読性を高めた文書の重要性が増してきている。

①で、事業者に対し電磁的形式(=機械可読性のある形式)により本人に個人データを提供することが求められているのは、本人が取り戻した個人データを他の用途で利用できるようにするためであり、この点、「書面」による個人データの提供が求められる日本の個人情報保護法上の開示請求権とは大きく異なっている。②は、「技術的に可能な場合」という条件付きで、事業者間での個人データの直接移行(例えば、携帯電話会社をA社からB社に乗り換える場合に、A社からB社に個人データを直接移行する)を求めるものである。

上記①②に関し、「個人情報保護委員会」 が(2019年)4月25日に公表した「個人情報保護法 いわゆる3年ごと見直しに係る検討の中間整理」(以下、中間整理)では、「個人情報保護法における開示の際の電磁的形式による提供の明確化についても、今後、利用者の利便性も考慮しつつ、検討していく必要がある」との考えが示されていることから(中間整理17ページ下部参照)、①については何らかの法改正が行われる可能性が高い。電磁的形式による個人データの提供が原則とされた場合、企業には、法改正を踏まえた社内規定、個人へのデータ提供プロセスやこれに関連する内部統制の整備が求められることになるだろう。

個人情報保護委員会:内閣府の外局として、内閣総理大臣が所轄する行政委員会。個人情報保護委員会には調査、監督権限が認められており、同委員会の命令違反には罰則が科される。個人情報保護法に基づき、2016年1月1日に設置された。

■利用停止権・消去権(忘れられる権利)
日本の個人情報保護法では、事業者が本人から個人データの利用停止・消去の請求を受けた場合には、事業者はそれらの請求に対応しなければならないことになっている。ただし、同法上、事業者に対応が義務付けられているのは、例えば事業者が本人の同意なく保有個人データを目的外利用している場合等、法律に違反している場合に限られている。

一方で、GDPRでは、本人の請求に基づき事業者に個人データを消去させる権利(GDPRでは「忘れられる権利」と称される)をより幅広く認めている点に大きな特徴がある。例えば、個人データを保有する必要性がなくなった場合や、個人データを利用することについて本人が同意を撤回した場合等においては、事業者は当該個人データを消去する義務を負うことが明確化されている。これに対し日本の個人情報保護法では、利用する必要がなくなった個人データを遅滞なく消去するよう“努力”しなければならないこととされているものの、法律上の義務とはなっていない。

こうしたなか中間整理では、個人データの利用停止権・消去権について、「消費者側からの根強い要望に対して、個人の権利を保護していく観点からどのようにすれば一定の対応が可能か、企業側の実態も踏まえつつ具体的に検討していく必要がある」との考えが示されている(中間報告19ページ冒頭参照)。慎重な書きぶりとはいえ、何らかの形で個人の権利を拡充する方向で法改正が行われる可能性が高い。

個人データの利用停止権・消去権のうち、企業にとって特に影響が大きいのは消去権の方だろう。消去権が行使された場合、多大な努力によって獲得したノウハウ(例えば特定の属性の個人の購買行動パターンなど)が、企業から不可逆的に流出することとなる。また、企業内に点在する個人データを集約して消去するためには相当の工数を要し、実務上の負担も大きい。このため企業側からは、消去権がGDPR並みに拡充されることに対し強い懸念が示されている。企業にとっては、注意を要する改正事項と言えよう。

2019/05/19 【2019年5月の課題】執筆陣の入れ替えに伴うお休みのお知らせ

2019年5月の課題

2019年5月の「今月の課題」は執筆陣の入れ替えに伴い、お休みさせていただきます。2019年6月の課題は2019年6月1日に掲載する予定です(回答は2019年7月10日頃を予定)。

上場会社役員ガバナンスフォーラムでは、今後も会員の皆様のお役に立つ情報の提供に努めてまいります。何卒ご理解のほどよろしくお願い申し上げます。

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2019/05/17 機関投資家と温度差も 上場企業が選んだESG活動の主要テーマ

ESG投資の活発化によりESGへの取組みは今や時価総額が小さい企業にとっても不可避となりつつある。もっとも、何をESG活動の主要テーマとするかは各社でバラツキが見られる。年金積立金管理運用独立行政法人(以下、GPIF)が(2019年)5月16日に公表した調査結果(第4回 機関投資家のスチュワードシップ活動に関する上場企業向けアンケート集計結果)によると、各社がESG活動において重点を置いているとしたテーマは下表のとおりとなっている(GPIFが設定したテーマの中から、各社が最大5つを選択。同集計結果の18ページ参照。表中の順位の「前回」は昨年同時期に公表された第3回調査結果の順位)。

ESG投資:ESGとは、「Environmental(環境)」「Social(社会)」「Governance(企業統治)」の頭文字を組み合わせたもので、近年、特にグローバル機関投資家の間で、企業の投資価値を測る評価項目としての地位を確立しつつある。ESG投資とは文字通り「Environmental(環境)」「Social(社会)」「Governance(企業統治)」に優れた企業に投資することをいう。

順位 主要テーマ 比率
今回 前回 今回 前回
1 1 コーポレートガバナンス 71.2% 67.4%
2 3 気候変動 45.5% 36.3%
3 2 ダイバーシティ 41.6% 43.0%
4 4 人権と地域社会 34.4% 33.8%
5 5 健康と安全 33.3% 32.5%

「コーポレートガバナンス」が2位以下を大きく引き離して1位となっているのをはじめ、上位にはESGの“王道”と言えるテーマが並んでいる。投資家から「ESGへの取り組みが遅れている」といった評価を受けないようにするためにも、上位のテーマでは他社に後れを取らないようにしたいところだ。

一方、重点を置く企業が「少ない」テーマは下表のとおり(「その他」の回答を除く)。

順位 主要テーマ 比率
今回 前回 今回 前回
20 21 不祥事 3.1% 2.3%
21 20 腐敗防止 2.5% 3.7%
22 22 少数株主保護(政策保有等) 1.0% 0.8%
23 23 紛争鉱物 0.7% 0.6%
23 24 税の透明性 0.7% 0.5%

注目すべきは、・・・

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2019/05/17 機関投資家と温度差も 上場企業が選んだESG活動の主要テーマ(会員限定)

ESG投資の活発化によりESGへの取組みは今や時価総額が小さい企業にとっても不可避となりつつある。もっとも、何をESG活動の主要テーマとするかは各社でバラツキが見られる。年金積立金管理運用独立行政法人(以下、GPIF)が(2019年)5月16日に公表した調査結果(第4回 機関投資家のスチュワードシップ活動に関する上場企業向けアンケート集計結果)によると、各社がESG活動において重点を置いているとしたテーマは下表のとおりとなっている(GPIFが設定したテーマの中から、各社が最大5つを選択。同集計結果の18ページ参照。表中の順位の「前回」は昨年同時期に公表された第3回調査結果の順位)。

ESG投資:ESGとは、「Environmental(環境)」「Social(社会)」「Governance(企業統治)」の頭文字を組み合わせたもので、近年、特にグローバル機関投資家の間で、企業の投資価値を測る評価項目としての地位を確立しつつある。ESG投資とは文字通り「Environmental(環境)」「Social(社会)」「Governance(企業統治)」に優れた企業に投資することをいう。

順位 主要テーマ 比率
今回 前回 今回 前回
1 1 コーポレートガバナンス 71.2% 67.4%
2 3 気候変動 45.5% 36.3%
3 2 ダイバーシティ 41.6% 43.0%
4 4 人権と地域社会 34.4% 33.8%
5 5 健康と安全 33.3% 32.5%

「コーポレートガバナンス」が2位以下を大きく引き離して1位となっているのをはじめ、上位にはESGの“王道”と言えるテーマが並んでいる。投資家から「ESGへの取り組みが遅れている」といった評価を受けないようにするためにも、上位のテーマでは他社に後れを取らないようにしたいところだ。

一方、重点を置く企業が「少ない」テーマは下表のとおり(「その他」の回答を除く)。

順位 主要テーマ 比率
今回 前回 今回 前回
20 21 不祥事 3.1% 2.3%
21 20 腐敗防止 2.5% 3.7%
22 22 少数株主保護(政策保有等) 1.0% 0.8%
23 23 紛争鉱物 0.7% 0.6%
23 24 税の透明性 0.7% 0.5%

注目すべきは、「少数株主保護(政策保有等)」を挙げた企業の少なさだろう。2018年6月に改訂されたコーポレートガバナンス・コードでは「政策株式の保有目的が適切か、保有に伴う便益やリスクが資本コストに見合っているかなどを具体的に精査し、保有の適否を検証するとともに、そうした検証の内容についてコーポレート・ガバナンス報告書で開示すべき」とされただけでなく、今年(2019年)1月に施行された改正開示府令では、「2019年3月31日以後に終了する事業年度」の有価証券報告書から、政策保有株式保有の合理性の検証方法等の開示が求められるとともに、個別開示の対象となる銘柄数が30銘柄から60銘柄に拡大されたのは周知のとおり(【2018年11月の課題】新たな有報における「役員報酬」と「政策保有株式」の記載事項を参照)。また、上場子会社の少数株主保護をメインテーマとして、2019年6月には「グループ・ガバナンス・システムに関する実務指針」が とりまとめられる見込みとなっている(2019年5月7日のニュース「グループ・ガバナンス実務指針案、上場子会社の扱いに“特段の配慮”」を参照)。このような動きは機関投資家の要望を受けたものであるだけに、「少数株主保護(政策保有等)」への関心を巡っては、上場企業と機関投資家の間に少なからず温度差が生じているとの見方もできそうだ。

また、節税に取り組んだ結果としての実効税率の低さを投資家にアピールすることが珍しくない海外の多国籍企業にとってはホット・イシューになっている「税の透明性」が最下位に位置付けられているのは、節税に対する日本の上場企業の姿勢(節税=悪いこと)を象徴しているとも言えそうだ(税の透明性についは(新用語・難解用語)アグレッシブ・タックスプランニング(新用語・難解用語)所得に関する税務情報レポートを参照)。

実効税率:法人税、住民税、事業税といった企業の利益に課税される税の総合的な負担率

2019/05/16 明確な算定式がない役員報酬の開示と今後の方向性

業績連動報酬が急速に普及する中、さすがに「固定報酬」のみしか支給していないという上場企業は見受けられない。しかし、固定報酬以外には年度末に「賞与」に相当する報酬を支払っているのみ、という上場企業はある。この上場企業における「賞与」は、一応は業績等(当期純利益の増減、配当の増減など)を見て、報酬総額を調整しながら最終的には社長が決めているが、金額をはじき出す算定式(公式=フォーミュラ)があるわけではない。言い換えれば、必ずしも報酬額と業績等が明確にリンクしているわけではない。

周知のとおり、2019年3月決算の有価証券報告書から適用される改正開示府令には業績連動報酬に関する開示項目が多数追加され、その中には「業績連動報酬にかかる指標(KPI)、KPIの選定理由、⽀給額の決定⽅法」というものがある(詳細は【2019年3月の課題】補充原則4-10①をエクスプレインした企業における報酬委員会に関する開示 における表の最上段「報酬プログラム(報酬の決定に関する⽅針)」参照)。算定式がない上場企業にとって、この開示要請に対応するのは容易ではない。

こうした企業の開示方法として考えられるのは、・・・

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2019/05/16 明確な算定式がない役員報酬の開示と今後の方向性(会員限定)

業績連動報酬が急速に普及する中、さすがに「固定報酬」のみしか支給していないという上場企業は見受けられない。しかし、固定報酬以外には年度末に「賞与」に相当する報酬を支払っているのみ、という上場企業はある。この上場企業における「賞与」は、一応は業績等(当期純利益の増減、配当の増減など)を見て、報酬総額を調整しながら最終的には社長が決めているが、金額をはじき出す算定式(公式=フォーミュラ)があるわけではない。言い換えれば、必ずしも報酬額と業績等が明確にリンクしているわけではない。

周知のとおり、2019年3月決算の有価証券報告書から適用される改正開示府令には業績連動報酬に関する開示項目が多数追加され、その中には「業績連動報酬にかかる指標(KPI)、KPIの選定理由、⽀給額の決定⽅法」というものがある(詳細は【2019年3月の課題】補充原則4-10①をエクスプレインした企業における報酬委員会に関する開示 における表の最上段「報酬プログラム(報酬の決定に関する⽅針)」参照)。算定式がない上場企業にとって、この開示要請に対応するのは容易ではない。

こうした企業の開示方法として考えられるのは、報酬総額の原資を決める際に“判断材料”として使った業績の状況、例えば売上高、営業利益、経常利益、ROEROICなどを、前期および当期分を比較する形で並べ、「当期の数値および前期からの変動を踏まえ総合的に判断した」といった形で今回はやり過ごすということだ。決してベストの形ではないが、改正開示府令の施行日が2019年1月末であり、対応に十分な時間がなかったことを踏まえれば、投資家等もある程度理解してくれるだろう。

ROE : Return On Equity=株主資本利益率(利益/株主資本)。実務上、ROEの利益には「当期純利益」を使うことが多い。これは、株主資本に対応するのは、株主資本に帰属する当期純利益であるとの考え方による。

もっとも、「業績連動報酬」と言っても、業績関連指標との関連性が強ければ強いほど良いというわけではない。確かに近年は、業績関連指標にリンクしたフォーミュラを持つ業績連動報酬を導入している上場企業は多いが、例えば銀行などの金融機関の場合、利益との連動性が高いフォーミュラは必ずしも好ましいものとは言えない。なぜなら、金融機関の利益は、不良債権をどの程度処理するのか、減損損失をどの程度を認識するのかなど、経営陣が能動的にリスクをとるかどうかによりある程度コントロールできるからだ。したがって、業績連動報酬と利益との連動性が高い場合、例えば現経営陣が不良債権処理や減損損失の計上を先送りするといった行動に走りかねない。これは何も金融機関に限った話ではない。一般の事業会社の経営陣にあっても減損損失を先送りしようというインセンティブが働きやすくなるのはもちろん、例えば投資家から「ROE」を業績連動報酬のKPIにすべきと指摘されたことを受け、単年度のROEが業績連動報酬にダイレクトに反映されるようなフォーミュラを設定した場合、経営陣はROEの低下につながるようなこと(例えば当期純利益が減少するようなこと)は避けようと考え、積極果敢な経営姿勢が失われる可能性がある。特に自分の任期が残り少ない経営陣は、そのような行動に走る可能性が高まる。

KPI : 定量的に示される重要業績評価指標(Key Performance Indicators=KPI)のこと。KPIの例としては「新規顧客の獲得数」「従業員1人あたりの経費」「総資産額」などがある。

結論として、「業績連動報酬」といっても、業績関連のKPIのみならず、むしろバランス・スコアカードのように、定性的なものを含む様々なKPIを考慮し、一定の“幅”をもって算出されるべきと言える。そう考えると、業績連動報酬の開示の仕方にも幅があってしかるべきであり、改正開示府令の内容通りの開示ができない企業があったとしてもそれはやむを得ないところだろう。もちろん、社長が密室で鉛筆を舐めるような形の報酬報酬プロセスには問題があるが、業績以外の “のりしろ” (例えば定性評価等)の部分があったとしても、それが報酬委員会(任意の報酬諮問委員会を含む)の審議を経て認められている限り、何ら引け目を感じる必要はない。むしろ“のりしろ”部分を開示しないという「不作為」の方が問題と言えそうだ。

2019/05/15 経営陣幹部の解任基準の実効性

従来は経営陣幹部の「選任の方針と手続」や「選任についての説明」の開示を求めてきたコーポレートガバナンス・コード原則3-1(情報開示の充実)だが、昨年(2018年)6月1日からの改訂により、下記のように「解任」についても同様の開示を求めることとされたところだ。

改訂コーポレートガバナンス・コード3-1(抜粋:赤字が改訂部分)
(ⅳ)取締役会が経営陣幹部の選任と取締役・監査役候補の指名を行うに当た
っての方針と手続
(ⅴ)取締役会が上記(ⅳ)を踏まえて経営陣幹部の選任と取締役・監査役候
補の指名を行う際の、個々の選任・指名についての説明

原則3-1のコンプライ率は2018年12月末時点で「92.7%」と比較的高率となっているが(東証 コーポレートガバナンス・コードへの対応状況(2018年12月末日時点)5ページ参照)、コーポレートガバナンス・コードの改訂に先立つ2016年10月、ある東証一部上場会社の臨時株主総会で取締役が解任され、当該解任された取締役が原告となって会社に対し損害賠償を請求する訴訟が起きているので紹介したい。・・・

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2019/05/15 経営陣幹部の解任基準の実効性(会員限定)

従来は経営陣幹部の「選任の方針と手続」や「選任についての説明」の開示を求めてきたコーポレートガバナンス・コード原則3-1(情報開示の充実)だが、昨年(2018年)6月1日からの改訂により、下記のように「解任」についても同様の開示を求めることとされたところだ。

改訂コーポレートガバナンス・コード3-1(抜粋:赤字が改訂部分)
(ⅳ)取締役会が経営陣幹部の選任と取締役・監査役候補の指名を行うに当たっての方針と手続
(ⅴ)取締役会が上記(ⅳ)を踏まえて経営陣幹部の選任と取締役・監査役候補の指名を行う際の、個々の選任・指名についての説明

原則3-1のコンプライ率は2018年12月末時点で「92.7%」と比較的高率となっているが(東証 コーポレートガバナンス・コードへの対応状況(2018年12月末日時点)5ページ参照)、コーポレートガバナンス・コードの改訂に先立つ2016年10月、ある東証一部上場会社の臨時株主総会で取締役が解任され、当該解任された取締役が原告となって会社に対し損害賠償を請求する訴訟が起きているので紹介したい。

同取締役は、元々は別の上場会社の専務取締役だったが、同職からの退任後、2016年6月の定時株主総会により、本訴訟で被告となった東証一部上場会社の取締役に選任された。ところが、同取締役は、選任からわずか4か月後の2018年10月の臨時株主総会により取締役を解任されてしまう。臨時株主総会の招集通知書によると、解任の理由は、(1)被告会社に告知することなく他社の代表取締役に就任していた、(2)秘密保持誓約の締結拒否(取締役としての善管注意義務および忠実義務に違反)、(3)原告の合弁事業計画は被告会社の目指す戦略と乖離しているにもかかわらず、原告が高額な報酬を強硬に要求するなど信頼関係を構築できない状態に至ったこと、などにあるという。

忠実義務 : 取締役には、会社との委任関係に基づいて「善良な管理者の注意をもって職務を遂行する義務」すなわち「善管注意義務」(会社法330条、民法644条)と、「法令及び定款並びに株主総会の決議を遵守し、株式会社のため忠実にその職務を行なう義務」すなわち「忠実義務」(会社法355条、419条②)が求められる。両者の関係が良く分からないという声がしばしば聞かれるが、忠実義務に関する規定は、善管注意義務を一層明確にしたに過ぎないため、両者の内容は同質であると考えてよい。

これに対し原告である元取締役は、被告会社に対し「解任には正当な理由がない」と主張し、残存任期中の取締役報酬相当額の損害賠償を求め、東京地裁に訴訟を提起した。元取締役の主張は、会社法上、株主総会の決議による役員の解任に「正当な理由」がない場合には、解任された役員は会社に対して解任によって生じた損害の賠償を請求することができる(会社法339条)とされていることを根拠としている。

これに対し東京地裁は、被告会社は原告を取締役に選任することにより売上の飛躍的増加を期待し、それに応じた報酬額も設定したものの、原告は目標の売上を一方的かつ繰り返し下方修正したにもかかわらず、報酬の支払いにだけは固執したことにより両者の信頼関係が崩壊したと認定。また、原告が他社の代表取締役に就任していた件では、当該他社が被告会社と競合関係に当たらないことを被告会社に十分な説明していなかったことなどにより、原告および被告会社間の信頼関係はさらに悪化したと指摘している。

以上のような事情を踏まえ、東京地裁は原告について「信頼関係の崩壊・悪化に繋がる不誠実な職務執行を行った者であり、取締役としての職務遂行能力や適性に著しく欠けるところがあった」と判断、被告による原告の取締役解任には「正当な理由」があると結論付け、原告の請求を棄却する判決を下している(東京地裁平成30年11月29日判決、ただし、原告は控訴している)。

上述のとおり、原則3-1のコンプライ率は高率となっているが、本訴訟のようなトラブルを避けるためにも、実効的な解任基準を策定し、取締役との間で合意しておきたいところだ。

2019/05/14 個人情報保護法改正 課徴金導入・罰金引上げ&漏えい報告義務化の行方

2015年に施行された改正個人情報保護法の附則12条には、改正法施行後「3年ごと」に同法を見直すことが規定されているが、来年2020年の個人情報保護法改正に向け、この「3年ごと見直し」が、内閣府の外局である「個人情報保護委員会」 で検討されている。(2019年)4月25日には、同委員会からこれまでの検討状況を整理した「個人情報保護法 いわゆる3年ごと見直しに係る検討の中間整理」(以下、中間整理)が公表されている。

個人情報保護委員会:内閣府の外局として、内閣総理大臣が所轄する行政委員会。個人情報保護委員会には調査、監督権限が認められており、同委員会の命令違反には罰則が科される。個人情報保護法に基づき、2016年1月1日に設置された。

欧州では2018年5月に個人情報の利用を制限する「一般データ保護規則(General Data Protection Regulation =GDPR)」が施行され、大手IT企業のデータ収集手法に対する風当たりが強まっており、さらに(2019年)3月26日に欧州議会で可決された改正著作権指令案では、・・・

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