2019/05/15 経営陣幹部の解任基準の実効性

従来は経営陣幹部の「選任の方針と手続」や「選任についての説明」の開示を求めてきたコーポレートガバナンス・コード原則3-1(情報開示の充実)だが、昨年(2018年)6月1日からの改訂により、下記のように「解任」についても同様の開示を求めることとされたところだ。

改訂コーポレートガバナンス・コード3-1(抜粋:赤字が改訂部分)
(ⅳ)取締役会が経営陣幹部の選任と取締役・監査役候補の指名を行うに当た
っての方針と手続
(ⅴ)取締役会が上記(ⅳ)を踏まえて経営陣幹部の選任と取締役・監査役候
補の指名を行う際の、個々の選任・指名についての説明

原則3-1のコンプライ率は2018年12月末時点で「92.7%」と比較的高率となっているが(東証 コーポレートガバナンス・コードへの対応状況(2018年12月末日時点)5ページ参照)、コーポレートガバナンス・コードの改訂に先立つ2016年10月、ある東証一部上場会社の臨時株主総会で取締役が解任され、当該解任された取締役が原告となって会社に対し損害賠償を請求する訴訟が起きているので紹介したい。・・・

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2019/05/15 経営陣幹部の解任基準の実効性(会員限定)

従来は経営陣幹部の「選任の方針と手続」や「選任についての説明」の開示を求めてきたコーポレートガバナンス・コード原則3-1(情報開示の充実)だが、昨年(2018年)6月1日からの改訂により、下記のように「解任」についても同様の開示を求めることとされたところだ。

改訂コーポレートガバナンス・コード3-1(抜粋:赤字が改訂部分)
(ⅳ)取締役会が経営陣幹部の選任と取締役・監査役候補の指名を行うに当たっての方針と手続
(ⅴ)取締役会が上記(ⅳ)を踏まえて経営陣幹部の選任と取締役・監査役候補の指名を行う際の、個々の選任・指名についての説明

原則3-1のコンプライ率は2018年12月末時点で「92.7%」と比較的高率となっているが(東証 コーポレートガバナンス・コードへの対応状況(2018年12月末日時点)5ページ参照)、コーポレートガバナンス・コードの改訂に先立つ2016年10月、ある東証一部上場会社の臨時株主総会で取締役が解任され、当該解任された取締役が原告となって会社に対し損害賠償を請求する訴訟が起きているので紹介したい。

同取締役は、元々は別の上場会社の専務取締役だったが、同職からの退任後、2016年6月の定時株主総会により、本訴訟で被告となった東証一部上場会社の取締役に選任された。ところが、同取締役は、選任からわずか4か月後の2018年10月の臨時株主総会により取締役を解任されてしまう。臨時株主総会の招集通知書によると、解任の理由は、(1)被告会社に告知することなく他社の代表取締役に就任していた、(2)秘密保持誓約の締結拒否(取締役としての善管注意義務および忠実義務に違反)、(3)原告の合弁事業計画は被告会社の目指す戦略と乖離しているにもかかわらず、原告が高額な報酬を強硬に要求するなど信頼関係を構築できない状態に至ったこと、などにあるという。

忠実義務 : 取締役には、会社との委任関係に基づいて「善良な管理者の注意をもって職務を遂行する義務」すなわち「善管注意義務」(会社法330条、民法644条)と、「法令及び定款並びに株主総会の決議を遵守し、株式会社のため忠実にその職務を行なう義務」すなわち「忠実義務」(会社法355条、419条②)が求められる。両者の関係が良く分からないという声がしばしば聞かれるが、忠実義務に関する規定は、善管注意義務を一層明確にしたに過ぎないため、両者の内容は同質であると考えてよい。

これに対し原告である元取締役は、被告会社に対し「解任には正当な理由がない」と主張し、残存任期中の取締役報酬相当額の損害賠償を求め、東京地裁に訴訟を提起した。元取締役の主張は、会社法上、株主総会の決議による役員の解任に「正当な理由」がない場合には、解任された役員は会社に対して解任によって生じた損害の賠償を請求することができる(会社法339条)とされていることを根拠としている。

これに対し東京地裁は、被告会社は原告を取締役に選任することにより売上の飛躍的増加を期待し、それに応じた報酬額も設定したものの、原告は目標の売上を一方的かつ繰り返し下方修正したにもかかわらず、報酬の支払いにだけは固執したことにより両者の信頼関係が崩壊したと認定。また、原告が他社の代表取締役に就任していた件では、当該他社が被告会社と競合関係に当たらないことを被告会社に十分な説明していなかったことなどにより、原告および被告会社間の信頼関係はさらに悪化したと指摘している。

以上のような事情を踏まえ、東京地裁は原告について「信頼関係の崩壊・悪化に繋がる不誠実な職務執行を行った者であり、取締役としての職務遂行能力や適性に著しく欠けるところがあった」と判断、被告による原告の取締役解任には「正当な理由」があると結論付け、原告の請求を棄却する判決を下している(東京地裁平成30年11月29日判決、ただし、原告は控訴している)。

上述のとおり、原則3-1のコンプライ率は高率となっているが、本訴訟のようなトラブルを避けるためにも、実効的な解任基準を策定し、取締役との間で合意しておきたいところだ。

2019/05/14 個人情報保護法改正 課徴金導入・罰金引上げ&漏えい報告義務化の行方

2015年に施行された改正個人情報保護法の附則12条には、改正法施行後「3年ごと」に同法を見直すことが規定されているが、来年2020年の個人情報保護法改正に向け、この「3年ごと見直し」が、内閣府の外局である「個人情報保護委員会」 で検討されている。(2019年)4月25日には、同委員会からこれまでの検討状況を整理した「個人情報保護法 いわゆる3年ごと見直しに係る検討の中間整理」(以下、中間整理)が公表されている。

個人情報保護委員会:内閣府の外局として、内閣総理大臣が所轄する行政委員会。個人情報保護委員会には調査、監督権限が認められており、同委員会の命令違反には罰則が科される。個人情報保護法に基づき、2016年1月1日に設置された。

欧州では2018年5月に個人情報の利用を制限する「一般データ保護規則(General Data Protection Regulation =GDPR)」が施行され、大手IT企業のデータ収集手法に対する風当たりが強まっており、さらに(2019年)3月26日に欧州議会で可決された改正著作権指令案では、・・・

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2019/05/14 個人情報保護法改正 課徴金導入・罰金引上げ&漏えい報告義務化の行方(会員限定)

2015年に施行された改正個人情報保護法の附則12条には、改正法施行後「3年ごと」に同法を見直すことが規定されているが、来年2020年の個人情報保護法改正に向け、この「3年ごと見直し」が、内閣府の外局である「個人情報保護委員会」 で検討されている。(2019年)4月25日には、同委員会からこれまでの検討状況を整理した「個人情報保護法 いわゆる3年ごと見直しに係る検討の中間整理」(以下、中間整理)が公表されている。

個人情報保護委員会:内閣府の外局として、内閣総理大臣が所轄する行政委員会。個人情報保護委員会には調査、監督権限が認められており、同委員会の命令違反には罰則が科される。個人情報保護法に基づき、2016年1月1日に設置された。

欧州では2018年5月に個人情報の利用を制限する「一般データ保護規則(General Data Protection Regulation =GDPR)」が施行され、大手IT企業のデータ収集手法に対する風当たりが強まっており、さらに(2019年)3月26日に欧州議会で可決された改正著作権指令案では、FacebookやYouTubeなど対し、著作権侵害を自動検知する仕組みの導入が義務付けられるほか、インターネットの検索結果に表示されるコンテンツの一部について、著作権保有者が使用料を請求することが可能となる(ただし、ウィキペディアのような非営利サイトや教育に使用されるコンテンツは規制対象外)。改正案は2020年に施行され、EU加盟国は施行から2年以内の国内法への反映が義務付けられることになっている。

欧州議会:「欧州連合理事会」とともに両院制の立法府を形成するEUの組織。各加盟国から直接選挙で選ばれる。加盟国ごとの議員数の割り当ては人口比例となっている。なお、両院制をとっているものの、決定権は欧州連動理事会にある。

こうした中、日本の個人情報保護法の「3年ごとの見直し」により欧州のGDPR(一般データ保護規則)並みの厳しい規律が設けることになるか、企業の注目を集めている。仮にそうなれば、企業のコンプライアンスコストが上昇するとともに、個人データを活用したビジネスの委縮にもつながることなる。

中間整理の中でも企業の関心が高い「課徴金導入・罰金引上げ」および「漏えい報告の義務化」の内容をチェックしてみよう。

■課徴金の導入・罰金の引上げ
今回の個人情報保護法改正議論の中では、同法違反に対する「課徴金の導入・罰金の引上げ」が検討されている。

現在、日本の個人情報保護法には、法令違反に対する課徴金は導入されていない。罰金は設けられてはいるが、金額は最高でも50万円に過ぎない。これに対しGDPR違反に対しては、「2000万ユーロと全世界売上高の4%」の高い方を上限とする途方もない金額の制裁金が科される可能性がある。

最高でも50万円:個人情報保護法の罰則は、以下の3類型となっている。
① 個人情報データベース等不正提供罪:1年以下の懲役又は50万円以下の罰金
② 個人情報保護委員会の命令への違反:6か月以下の懲役又は30万円以下の罰金
③ 虚偽の報告・資料提出・立入検査拒否:30万円以下の罰金

日本の個人情報保護法改正議論においても、GDPR並みの金額の課徴金や罰金を設けるべきという意見も一部にはある。しかし中間整理では、「不適正な個人情報の取扱いがあった場合、捕捉された案件に関しては、委員会による指導等により違法状態が是正されているのが実態であり、勧告・命令や罰則の適用事例は存在しない」「産業界からは、事業者は個人情報保護法を遵守しており、ペナルティ引上げに慎重であるべきとの意見があった」として、課徴金の導入・罰金の引上げについては謙抑的な書きぶりに終始している(中間整理46ページ参照)。

今回の個人情報保護法の改正で、課徴金の導入や罰金の大幅な金額の増額が行われることはなさそうだ。

■漏えい報告の義務化
個人情報保護法の改正議論では、「漏えい報告の義務化」についても検討が行われている。

日本の個人情報保護法では、個人情報の漏えい事案が発覚した場合に速やかに漏えい報告を行うよう「努める」とされているが、GDPRでは、個人データ侵害を認識した時点から72時間以内に当局に対して通知することが「義務化」されている。

そこで日本の個人情報保護法でも、欧州と同様に漏えい報告を「義務化」すべきとの意見もある。この点について中間報告では、「我が国では、法的な義務ではないにもかかわらず、漏えい報告について、多くの企業で適切に対応されている」と現行の努力義務の扱いを評価しつつも、「漏えい報告は法令上の義務ではないため、積極的に対応しない事業者も一部に存在している」「事業者側から見ても、漏えい報告について、一定の軽減措置を設けることを前提に、法令上明確に位置づけた方が、企業側が報告の要否に迷わないとも考えられる」として、漏えい報告を「義務化」する可能性も示唆している(中間報告23ページ参照)。

今後の議論次第では、一定の場合(例えば大規模な漏えい事案)は漏えい報告が「義務化」されることもありうる。そうなれば事業者は、個人データの漏えいが生じた場合に備え、個人情報保護についての社内規程の整備・変更等が必要になるだろう。

2019/05/13 「女性役員比率」「社外取締役比率」とROEの相関性

役員に占める女性比率の向上を目指す民間団体である「30%クラブ」は(2019年)5月1日、日本での活動をスタートした。2010年に英国で30%クラブが立ち上がった当初は12.6%にとどまっていたFTSE100企業の女性役員比率は2018年には30%にまで向上したが、そこに至るまでの同クラブの貢献度は高い。30%クラブはこれまで、英国のほか米国、カナダ、香港、マレーシアなど世界13カ国・地域で活動を展開してきたが、このほど「30%クラブ・ジャパン」を立ち上げている(30%クラブ・ジャパンのリリースはこちら)。

FTSE:ロンドン証券取引所に上場する時価総額上位100銘柄で構成される株価指数である「FTSE100」のほか、FTSE100に次ぎ時価総額が大きい250銘柄で構成される「FTSE250」、FTSE100とFTSE250の両指数の銘柄で構成される「FTSE350」、小型株で構成される「FTSE SmallCap Index」、FTSE350とFTSE SmallCapの両指数の銘柄で構成される「FTSE All Shares」、ロンドン証券取引所の新興市場(AIM)の銘柄で構成される「FTSE AIM」がある。

30%クラブジャパンの創立メンバーには、日本の上場企業のほか、外資系金融機関、大学、在日英国商工会議所などのトップ30名が名を連ねており、内閣府男女共同参画局局長や経済産業省大臣官房審議官官(経済社会政策担当)など政府関係者も賛同している。日本の上場企業は以下の13社で、TOPIX500に入っていない上場企業は現状、参加していない。なお、参加資格は「常時301人以上の従業員を持つ上場企業」とされている。

味の素、アステラス製薬、MS&ADインシュアランスグループHD、資生堂、SOMPO HD、大和証券グループ本社、東京海上HD、日立製作所、りそなHD(以上TOPIX100)、電通、日立ハイテクノロジーズ、丸井グループ(TOPIX Mid400)

上記リリースによると、30%クラブ・ジャパンは、TOPIX100構成企業の取締役会に占める女性比率を現状の7.8%から2020年には10%、2030年には30%に引き上げるという数値目標を掲げている。TOPIX100における平均的な取締役会の規模は10人強であるため、今のところ女性取締役は1社あたり1人いるかいないかというのが実態だ。すなわち、30%クラブ・ジャパンのビジョンはこれを2年後には1人、10年後には3人まで引き上げようということだと考えられる。

30%クラブが女性役員比率の向上を目指すのは、それが企業にメリットがあるからに他ならない。30%クラブ・ジャパンのリリースの1ページ目には、「様々な調査結果は、企業トップの多様性と、企業の利益率や中長期的株価パフォーマンスとの間に正の相関関係があることを示唆しています」と明記されている。ここでいう「企業トップ」とは役員を示しているもの思われる。そこで当フォーラムでも、東証一部上場企業(金融業を除く)をサンプルとして、女性役員比率とROEの関係を分析してみた。・・・

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2019/05/13 「女性役員比率」「社外取締役比率」とROEの相関性(会員限定)

役員に占める女性比率の向上を目指す民間団体である「30%クラブ」は(2019年)5月1日、日本での活動をスタートした。2010年に英国で30%クラブが立ち上がった当初は12.6%にとどまっていたFTSE100企業の女性役員比率は2018年には30%にまで向上したが、そこに至るまでの同クラブの貢献度は高い。30%クラブはこれまで、英国のほか米国、カナダ、香港、マレーシアなど世界13カ国・地域で活動を展開してきたが、このほど「30%クラブ・ジャパン」を立ち上げている(30%クラブ・ジャパンのリリースはこちら)。

FTSE:ロンドン証券取引所に上場する時価総額上位100銘柄で構成される株価指数である「FTSE100」のほか、FTSE100に次ぎ時価総額が大きい250銘柄で構成される「FTSE250」、FTSE100とFTSE250の両指数の銘柄で構成される「FTSE350」、小型株で構成される「FTSE SmallCap Index」、FTSE350とFTSE SmallCapの両指数の銘柄で構成される「FTSE All Shares」、ロンドン証券取引所の新興市場(AIM)の銘柄で構成される「FTSE AIM」がある。

30%クラブジャパンの創立メンバーには、日本の上場企業のほか、外資系金融機関、大学、在日英国商工会議所などのトップ30名が名を連ねており、内閣府男女共同参画局局長や経済産業省大臣官房審議官官(経済社会政策担当)など政府関係者も賛同している。日本の上場企業は以下の13社で、TOPIX500に入っていない上場企業は現状、参加していない。なお、参加資格は「常時301人以上の従業員を持つ上場企業」とされている。

味の素、アステラス製薬、MS&ADインシュアランスグループHD、資生堂、SOMPO HD、大和証券グループ本社、東京海上HD、日立製作所、りそなHD(以上TOPIX100)、電通、日立ハイテクノロジーズ、丸井グループ(TOPIX Mid400)

上記リリースによると、30%クラブ・ジャパンは、TOPIX100構成企業の取締役会に占める女性比率を現状の7.8%から2020年には10%、2030年には30%に引き上げるという数値目標を掲げている。TOPIX100における平均的な取締役会の規模は10人強であるため、今のところ女性取締役は1社あたり1人いるかいないかというのが実態だ。すなわち、30%クラブ・ジャパンのビジョンはこれを2年後には1人、10年後には3人まで引き上げようということだと考えられる。

30%クラブが女性役員比率の向上を目指すのは、それが企業にメリットがあるからに他ならない。30%クラブ・ジャパンのリリースの1ページ目には、「様々な調査結果は、企業トップの多様性と、企業の利益率や中長期的株価パフォーマンスとの間に正の相関関係があることを示唆しています」と明記されている。ここでいう「企業トップ」とは役員を示しているもの思われる。そこで当フォーラムでも、東証一部上場企業(金融業を除く)をサンプルとして、女性役員比率とROEの関係を分析してみた。なお、女性役員比率は2018年末時点の取締役および監査役の合計人数に女性が占める割合、ROEは2018年12月末までに到来した決算期のデータ(赤字企業を除く)である。

女性役員比率 平均ROE
0% 9.91%
1%以上5%未満 8.70%
5%以上10%未満 10.35%
10%以上15%未満 11.79%
15%以上20%未満 12.12%
20%以上30%未満 12.10%
30%以上 12.46%

上表を見ると、女性役員比率の各レンジのROEには明確と言えるほどの差はないものの、両者は概ね相関しているようにも見える。ただ、0%のカテゴリーの社数が全体の60%に達しており、相関性を測るには分散度合いが十分とは言えないだろう。

もっとも、「多様性」とはジェンダーに限定されるものではなく、むしろ現在の日本企業にまず期待されるのは「社外性」ではないかと思われる。そこで当フォーラムは、同様に社外取締役の比率についてもROEとの相関関係を分析してみた。

社外取締役比率 平均ROE
0% 6.18%
1%以上10%未満 8.22%
10%以上20%未満 9.82%
20%以上30%未満 10.05%
30%以上40%未満 10.76%
40%以上50%未満 11.30%
50%以上 12.11%

結果は、女性役員比率と比較して、より高い相関関係が認められた。数年前までは、「社外取締役を増員するのは業績不振や不祥事が発生しコーポレートガバナンスの強化を迫られる局面であることが少なくないため、必ずしも社外取締役の増員が業績等の好パフォーマンスにつながるわけではない」というのが常識だった。しかし、上記の結果を見ると、社外取締役の選任がミニマム・リクワイヤメントとなった昨今においては、社外取締役比率とパフォーマンスの相関性が正当に現れてきたと言えそうだ。

2019/05/10 CEOの圧力に屈しない内部監査部門を構築する方法

コーポレートガバナンス・コードの導入以来、「攻めのガバナンス」という言葉が盛んに使われているが、その裏で改めてその重要性が認識されているのが「守りのガバナンス」の要となる三様監査(内部監査、監査役等監査外部監査)の一翼を担う内部監査だ。

攻めのガバナンス : 経営陣に積極的なリスクテイクを促すガバナンス
守りのガバナンス : 不祥事の防止や発見を主眼に置いたガバナンス
監査役等監査 : 監査役(会)設置会社における監査役の監査、監査等委員会設置会社における監査等委員会の監査、指名委員会等設置会社における監査委員会の監査を指す。
外部監査 : 監査法人による会社法監査や金商法監査を指す。

2019年4月24日に公表された「スチュワードシップ・コード及びコーポレートガバナンス・コードのフォローアップ会議」の意見書(4)「コーポレートガバナンス改革の更なる推進に向けた検討の方向性」には、内部監査について次のような意見が記載されている(4ページ参照)。

・・・内部監査部門については、CEO等のみの指揮命令下となっているケースが大半を占め、経営陣幹部による不正事案等が発生した際に独立した機能が十分に発揮されていないとの指摘がある。
内部監査が一定の独立性をもって有効に機能するよう、独立社外取締役を含む取締役会・監査委員会や監査役会などに対しても直接報告が行われる仕組みの確立を促すことが重要である。・・・

上記意見は内部監査部門をCEOの指揮命令下に置くこと自体を否定しているようにも見えるが、必ずしもそうではない。・・・

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2019/05/10 CEOの圧力に屈しない内部監査部門を構築する方法(会員限定)

コーポレートガバナンス・コードの導入以来、「攻めのガバナンス」という言葉が盛んに使われているが、その裏で改めてその重要性が認識されているのが「守りのガバナンス」の要となる三様監査(内部監査、監査役等監査外部監査)の一翼を担う内部監査だ。

攻めのガバナンス : 経営陣に積極的なリスクテイクを促すガバナンス
守りのガバナンス : 不祥事の防止や発見を主眼に置いたガバナンス
監査役等監査 : 監査役(会)設置会社における監査役の監査、監査等委員会設置会社における監査等委員会の監査、指名委員会等設置会社における監査委員会の監査を指す。
外部監査 : 監査法人による会社法監査や金商法監査を指す。

2019年4月24日に公表された「スチュワードシップ・コード及びコーポレートガバナンス・コードのフォローアップ会議」の意見書(4)「コーポレートガバナンス改革の更なる推進に向けた検討の方向性」には、内部監査について次のような意見が記載されている(4ページ参照)。

・・・内部監査部門については、CEO等のみの指揮命令下となっているケースが大半を占め、経営陣幹部による不正事案等が発生した際に独立した機能が十分に発揮されていないとの指摘がある。
内部監査が一定の独立性をもって有効に機能するよう、独立社外取締役を含む取締役会・監査委員会や監査役会などに対しても直接報告が行われる仕組みの確立を促すことが重要である。・・・

上記意見は内部監査部門をCEOの指揮命令下に置くこと自体を否定しているようにも見えるが、必ずしもそうではない。大半の上場会社が内部監査部門を「CEO直轄」としていることが示すように、内部監査部門が「CEOの業務執行の一環」として内部監査を実施することで、人事権を背景とした一定の強制力が生まれ、監査の実施やフォローアップが円滑になるというメリットもあるからだ。逆に、例えば内部監査部門を「(独立社外取締役を含む)取締役会」や執行役、「監査役会(監査等委員会設置会社においては監査等委員会、指名委員会等設置会社においては監査委員会。以下「監査役会等」という)」の指揮命令下に置いたとすると、内部監査部門がこれらの“スタッフ”的な位置付けになってしまい、上述したような強制力は弱まる恐れがある。また、監査役会等の指揮命令下に入るとなれば、三様監査の一角を担うはずの内部監査が監査役等監査の一部となってしまい、監査の多様性は失われることになる。

もっとも、内部監査部門を(監査役会等の傘下に置くことはNGだが)CEOではなく別の取締役や執行役の指揮命令下に置くかどうかは、会社の考え方次第と言える。内部監査部門を「CEO直轄」とすることによるデメリットもあるからだ。例えばエーザイでは、内部監査部門はCEOではなく内部統制担当執行役の指揮命令下に置かれている(下表参照)。

執行役 : 指名委員会等設置会社において、取締役会決議によって委任された事項について会社業務を実行する役職。取締会決議により選任・解任される(登記も必要)。執行役が2人以上いる場合は会社を代表する代表執行役を選ぶ。取締役と同様、会社に対して善管注意義務および忠実義務を負い、株主代表訴訟の対象にもなる。「執行役員」も会社業務の実行に対して権限と責任を持つが、会社法上に定義はなく、あくまで重要な使用人に過ぎない点、執行役とは異なる。

内部監査部門を「CEO直轄」とすることによるデメリットとして、内部監査の結果、CEOを含む「経営陣幹部による不正」が発覚した場合、CEOが監査結果を揉み消す、あるいは不適切なほどに軽い処分とするといったことが考えられる。例えば、オーナー系の上場会社で内部監査によりオーナー自身やその家族の不正が見つかったものの、報告を受けたオーナー兼CEOが不問に付したり、内部監査担当者が忖度して見て見ぬふりをしたりするようなケースである。

上記意見が提案している「独立社外取締役を含む取締役会・監査委員会や監査役会などに対しても直接報告が行われる仕組みの確立」(意見の後段部分)は、まさにこのような事態を念頭に置いたものと言える。要するに、内部監査部門がCEOの指揮命令下にあることでCEOから圧力を受け、内部監査の結果が揉み消されたり、うやむやな処分で幕引きが図られそうになっても、「独立社外取締役を含む取締役会・監査委員会や監査役会」がそれをさせないよう目を光らせておく仕組みを導入すべきというわけだ。

上述のエーザイのほか、いくつかの上場会社は既にこの意見に近い仕組みを導入している。下表は、東京証券取引所の第7回企業価値向上表彰で大賞を受賞したダイキン工業、優秀賞を受賞したアサヒグループホールディングス、日本電産、ユニ・チャームの4社、および日本IR協議会のIR優良企業賞(2018年)を受賞したエーザイの有価証券報告書の【コーポレート・ガバナンスの状況】から、内部監査のレポートライン(内部監査報告書の報告経路や内部監査結果の情報共有)に関する記述を抜粋したものである。

会社名等 【コーポレート・ガバナンスの状況】からの抜粋
ダイキン工業の有価証券報告書(2018年3月期版) 監査役は、監査役室(人員2名)に指示し、執行役員へのヒアリングを適宜実施することで、経営執行状況の把握に努めている。同時に、内部統制状況把握のために、必要に応じ内部監査に同行するなど定期的に内部監査室と情報交換をしている。
アサヒグループホールディングスの有価証券報告書(2018年12月期版) ・当社又はグループ会社の内部監査を担当する部門は当社の監査役に対し、グループ会社の内部監査結果を遅滞なく報告する。
・監査役、内部監査部門及び会計監査人は、各々定期的または必要に応じて報告会の開催、監査報告書写しの送付などの情報交換を行い、連携を図っております。
日本電産の有価証券報告書(2018年3月期版) ・当社経営管理監査部は、定期的に当社監査役に対する報告会を実施し、当社グループにおける内部監査の結果を報告しております。
・当社コンプライアンス室は、当社グループの役職員からの内部通報の状況について、定期的に当社監査役に対して報告しております。
・当社では、社長直属の経営管理監査部が監査計画に基づいて内部監査を実施しております。監査役はその内部監査報告書を情報システムを通じて常時閲覧可能であり、内部監査部門である経営管理監査部等の関係部署から報告を受け、必要に応じて意見交換、情報共有または実地監査を行っております。
・当社では、社長直属の経営管理監査部が監査計画に基づいて内部監査を実施しておりますが、社外監査役はその内部監査報告書を情報システムを通じて常時閲覧可能であり、内部監査部門である経営管理監査部等の関係部署から報告を受け、必要に応じて意見交換、情報共有または実地監査を行っております。
ユニ・チャームの有価証券報告書(2018年3月期版) ・会計監査人及び内部監査部門から監査等委員会への報告に関する体制を整備します。
・当社は、内部監査部門として、代表取締役社長執行役員直轄の経営監査部(6名)を設置しております。経営監査部は執行部門に対して内部監査を実施し、指摘事項とその改善案を記載した内部監査報告書を作成し、代表取締役社長執行役員及び監査等委員会に報告するとともに、被監査部門に提出します。不備事項が指摘された場合は、改善計画が立案・実行され、経営監査部がその改善結果を監視する体制をとっております。
エーザイの有価証券報告書(2018年3月期版) ・当社は、内部統制担当執行役のもとに設置したコーポレートIA部が各リージョンの内部監査部門と協力しながら、日本、米国、欧州、中国、アジア等をカバーするグローバルな内部監査を実施しています。
・内部監査は、コーポレートIA部および各リージョンの内部監査部門が、被監査組織とは、独立的、客観的な立場で実施しています。なお、すべての内部監査の結果を取締役会、執行役会、監査委員会へ定期的に報告しています。

「内部監査部門が内部監査結果について監査役と定期的に情報交換する」旨の記載は多くの上場会社の有価証券報告書で目にするため、ここではそれ以外の取り組みに注目したい。

エーザイでは、上述のとおり内部監査部門はCEOではなく内部統制担当執行役の指揮命令下に置かれ、「すべての内部監査の結果を取締役会、執行役会、監査委員会へ定期的に報告」する仕組みが採用されている。このように、内部監査のレポートラインからCEOを“外す”取り組みは、上記意見が提案する「独立社外取締役を含む取締役会・監査委員会や監査役会などに対しても直接報告が行われる仕組み」の一つの答えと言える。

また、日本電産の「(社外)監査役はその内部監査報告書を情報システムを通じて常時閲覧可能」とする取り組み(表中の赤字参照)にも注目したい。内部監査部門が監査役会等に「必要に応じて」報告するだけでは、「(内部監査部門が)必要がないと判断したため報告しなかった」という事態を招きかねない。「(社外)監査役が常時閲覧可能」という状態は内部監査部門に緊張感をもたらし、内部監査部門が「忖度」しにくい環境を作り出す。そうなれば、CEOも「揉み消し」等をしづらくなるだろう。

内部監査部門をCEOの指揮命令下に置いている大半の上場会社が「CEOの圧力を受けない内部監査部門」を構築するうえで、上記事例は大いに参考にしたいところだ。

2019/05/09 日邦産業が買収防衛策を“再導入”

ジャスダックに上場する日邦産業は4月23日、「当社株式等の大規模買付行為に関する対応策(買収防衛策)の導入について」と題するリリースを公表した。題名から分かるように、本リリースは買収防衛策の導入を知らせるものだが、同社の場合、今回が「再導入」となる。再導入は極めて珍しいケースであり注目される。

本リリースの4~5頁には次のような趣旨の記載が見られる。

・2007年6月の株主総会で導入した買収防衛策を2009年6月に廃止したが、経営陣の賛同を得ず一方的に大規模買付行為を強行する動きが引き続き見られる
・2007年施行の金商法で、大量保有報告制度の厳格化など関連規制は強化されたが、TOB前の情報提供と検討時間の確保、市場内での買集め行為は制限できていない
・2018年策定の新ビジョンの下、新たな成長領域で顧客固有のニーズに応える商材を開発するため、顧客と緊密に連携し、技術等に関わる機密情報の交換を行った結果、かつて以上に顧客の機密情報を保有するに至り、情報流出の恐れが高まっている

大量保有報告制度 : 市場の透明性・公正性を高め、投資者保護を図ることを目的として、株券等の大量保有者に対し「大量保有報告書(or変更報告書)」の提出を義務付ける金融商品取引法上の制度。具体的には、①保有割合が5%超となった場合、②その後、保有割合が1%以上増減するなど重要な変更があった場合、それぞれ提出事由が生じた日から5営業日以内に「大量保有報告書(or変更報告書)」の提出が求められる(②の場合に提出するのは「変更報告書」。

以上を理由に、同社は改めて買収防衛策の必要性を検討、「当社グループの企業価値及び株主協働の利益に対する明白な侵害を防止するため」再導入を決定したとしている。新旧の同社防衛策を比較したのが下表だが、・・・

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2019/05/09 日邦産業が買収防衛策を“再導入”(会員限定)

ジャスダックに上場する日邦産業は4月23日、「当社株式等の大規模買付行為に関する対応策(買収防衛策)の導入について」と題するリリースを公表した。題名から分かるように、本リリースは買収防衛策の導入を知らせるものだが、同社の場合、今回が「再導入」となる。再導入は極めて珍しいケースであり注目される。

本リリースの4~5頁には次のような趣旨の記載が見られる。

・2007年6月の株主総会で導入した買収防衛策を2009年6月に廃止したが、経営陣の賛同を得ず一方的に大規模買付行為を強行する動きが引き続き見られる
・2007年施行の金商法で、大量保有報告制度の厳格化など関連規制は強化されたが、TOB前の情報提供と検討時間の確保、市場内での買集め行為は制限できていない
・2018年策定の新ビジョンの下、新たな成長領域で顧客固有のニーズに応える商材を開発するため、顧客と緊密に連携し、技術等に関わる機密情報の交換を行った結果、かつて以上に顧客の機密情報を保有するに至り、情報流出の恐れが高まっている

大量保有報告制度 : 市場の透明性・公正性を高め、投資者保護を図ることを目的として、株券等の大量保有者に対し「大量保有報告書(or変更報告書)」の提出を義務付ける金融商品取引法上の制度。具体的には、①保有割合が5%超となった場合、②その後、保有割合が1%以上増減するなど重要な変更があった場合、それぞれ提出事由が生じた日から5営業日以内に「大量保有報告書(or変更報告書)」の提出が求められる(②の場合に提出するのは「変更報告書」。

以上を理由に、同社は改めて買収防衛策の必要性を検討、「当社グループの企業価値及び株主協働の利益に対する明白な侵害を防止するため」再導入を決定したとしている。新旧の同社防衛策を比較したのが下表だが、独立委員会および株主意思確認総会の設置によりプロセスの透明性は増した一方、買収防衛策の対象となる買付けで「その他の取得」が強調され、発動要件に「不十分な買付条件」など5項目が加わるなど、より実効性を高めたものとなっている。「転ばぬ先の杖」ではなく、「今そこにある危機」に対応したものと言えよう。

  2007年導入プラン 2019年再導入プラン
対象となる買付け 20%以上の買付け等 20%以上の買付けその他の取得
取締役会評価期間 現金60日、その他90日 現金60日、その他90日
独立委員会 なし(外部専門家の助言) 社外取締役(監査等委員)2名、社外有識者1名
対抗措置の発動要件 東京高裁四類型強圧的二段階買収 東京高裁四類型、強圧的二段階買収、他5項目
株主意思確認総会 なし 取締役会の判断で開催

その他の取得 : 売買その他の契約に基づく株式等の引渡請求権を有すること及び金融商品取引法施行令第14条の6(株券等の引渡請求権を有する者に準ずる者)に規定される各取引を行うことを指す。
東京高裁四類型 : 2005年に起こったライブドアによるニッポン放送の買収を巡る訴訟で東京高裁が示した「企業価値を損なうような敵対的買収者」に対し買収防衛策(敵対的買収の対抗手段としての新株予約権の発行)の発動が認められる4つのケースのこと。具体的には、(1)株式を高値で対象企業に買い取らせる場合(グリーンメーラー=乗っ取り屋)、(2)焦土化経営が目的の場合、(3)対象会社の資産を債務弁済原資として流用する場合、(4)会社資産の売却益による高値売り抜けを目的とした場合、である。
強圧的二段階買収 : 最初の買付けで全株式の買付けを勧誘することなく、二段階目の買付条件を不利に設定するか明確にしないことにより、事実上、株主に最初の買付けへの応募を強要すること。

このような実戦的な買収防衛策を再導入した背景には、同社の大株主の存在が推定される。リリースの別紙1には大株主の保有状況の一覧が掲載されているが、筆頭株主となっているフリージア マクロス株式会社(持株比率9.45%)の代表取締役会長は2017年、東証二部上場の電子部品商社であるソレキアに対して敵対的TOBを実施、ホワイトナイトとして名乗りを上げた富士通とのビッド合戦に勝利、議決権の約40%(共同保有を含む)を確保したうえで、直後に開催した臨時株主総会において、自らを取締役として送り込むことに成功している。

ホワイトナイト : 敵対的買収を仕掛けられた際に、当該買収者に対抗して、友好的な買収を提案してくれる会社等のこと。白馬の騎士(ホワイトナイト)に例えてこう呼ばれる。通常は、敵対的買収者よりも高い価格で株式を買い取るか、第三者割当増資を引き受けることになる。

日邦産業が提出した直近の第二四半期報告書を見ても、昨年9月末の段階で「フリージア マクロス株式会社」の名前は「大株主の状況」にない。それほど急激なペースで株式を買い進めたということになる。こうした状況を踏まえ、危機感を抱いた同社経営陣が防衛策の再導入に踏み切ったと考えられる。買収防衛策の再導入を受け、今後フリージア マクロスが株式をさらに買い増すのか、あるいは敵対的TOBに踏み切るのか、注目される。