世界最大の資産運用会社であるブラックロックの日本法人「ブラックロック・ジャパン」は、優れたコーポレートガバナンスを有する日本企業を厳選して投資する投資信託「ブラックロック・ガバナンス・フォーカス・ファンド」を開発した(ブラックロック・ジャパンのリリースはこちら)。ファンド設定日は9月18日で、信託期間(投資信託を運用する期間)は2028年2月25日までの10年間弱で、SMBC日興証券を窓口として販売される(販売用資料はこちら)。
本投資信託は、「コーポレートガバナンス」をテーマにしているという点で、ESG投資の一種であるポジティブ・スクリーニング(各業界においてESGが優れた企業を選別して投資する戦略)と呼ばれる手法によるものと言える。ESG投資の大部分はネガティブ・スクリーニング(ESGの観点などから問題のある企業を投資対象から外す投資戦略)やエンゲージメント(対話を通じ、投資先企業にESGに関する問題の解決を求める手法)が占めており、ポジティブ・スクリーニングは小規模にとどまっている。ブラックロックにとっても、コーポレートガバナンスにフォーカスした投資は今回がグローバルを含むグループ初の試みだという。
ESG投資 : ESGに優れた企業を選定して投資すること。
具体的な銘柄選別のプロセスは、以下の3段階となっている。
① スチュワードシップ担当チーム(インベストメント・スチュワードシップ部)による対話を通じた調査により、投資ユニバース(投資対象とする銘柄群)である東証一部上場企業約2,100銘柄の中から、コーポレートガバナンスに優れた220〜250銘柄を抽出する。
② 日本株式アナリストチームによる長期ファンダメンタルズ分析(投下資本に対する現金収益率などを重視)により、①で抽出した220〜250銘柄から約50銘柄まで投資対象を絞り込む。
③ ファンドマネジャーが、独自のツールに基づくリスク管理の観点から、持続的な成長が期待できる15〜30銘柄を厳選し、魅力的なポートフォリオを構築する。
ファンダメンタルズ : 売上高や利益などの業績や、資産・負債などの財務状況等、株式の本質的価値を決める指標
上記の銘柄選別プロセスにおける最大の特徴は何と言っても①、スチュワードシップを担当するインベストメント・スチュワードシップ部による一次スクリーニングであろう。同部は株主総会における議決権行使に向けた対話などを中心にスチュワードシップ活動を担当し、通常は投資の意思決定プロセスに関与することはない。しかし、本投資信託においては銘柄選別に主体的に関わることから、必然的に投資の意思決定およびその結果としての株価形成にも一定の影響を及ぼし得ることになる。今後①のような銘柄選別プロセスが一般化した場合、上場企業にとっては、機関投資家とのエンゲージメントへの対応やコーポレートガバナンスはじめとするESG情報の開示の重要性が格段に高まることが予想される。
ブラックロックとSMBC日興証券による販売用資料には、19銘柄から構成されるモデルポートフォリオが紹介されている。これによると、TOPIX全体と比較してROEは13.5%と4ポイント高く、PBRは1.9倍と0.6ポイント上回っている。ブラックロックが期待する「ガバナンスの向上により、キャッシュを有効活用し、収益性を引き上げること」が、一定程度は実現できている数値と言える。
ROE : Return On Equity=株主資本利益率(当期純利益/株主資本)
PBR : Price Book-value Ratio=株価純資産倍率(株価 ÷1株当たり株主資本)。株価が1株当たり純資産(BPS:Book value Per Share)の何倍まで買われているか(=1株当たり純資産の何倍の値段が付いているか)を指す。PBRが1.0を大幅に下回る場合、投資家が企業の将来性に疑問を持っていたり、減損リスクのように潜在的な資産の含み損が多額にのぼる可能性が株価に織り込まれていたりすることを示唆する。
さらに販売資料では、モデルポートフォリオ19銘柄のうち10銘柄の社名を開示している。各社のROE、PBRのほか、独立社外取締役の人数/比率を一覧にしたのが下表だ。PBRこそバラツキが見られるものの、いずれも独立社外取締役が3人以上かつ15%以上で、ROEは2桁となっている点、注目されよう。
| 銘柄コード |
企業名 |
独立取締役
人数/比率
|
自己資本利益率
(ROE)
|
株価純資産倍率
(PBR)
|
| 2502 |
アサヒグループホールディングス |
3人/30.0% |
14.23% |
1.98倍 |
| 4063 |
信越化学工業 |
4人/18.2% |
11.87% |
1.78倍 |
| 4543 |
テルモ |
4人/38.0% |
17.53% |
3.72倍 |
| 6367 |
ダイキン工業 |
3人/30.0% |
15.70% |
3.04倍 |
| 6501 |
日立製作所 |
8人/66.7% |
11.62% |
1.01倍 |
| 7267 |
本田技研工業 |
5人/35.7% |
13.91% |
0.69倍 |
| 7453 |
良品計画 |
3人/33.3% |
18.65% |
4.71倍 |
| 8001 |
伊藤忠商事 |
3人/37.5% |
15.79% |
1.11倍 |
| 8058 |
三菱商事 |
5人/38.5% |
10.93% |
0.91倍 |
| 8308 |
りそなホールディングス |
6人/60.0% |
11.77% |
0.66倍 |