2018/08/03 同一労働同一賃金を巡る誤解(会員限定)

先日ある上場企業の役員から、「同一労働同一賃金が実施されたら、契約社員や派遣社員の待遇のあり方などを本格的に検討しなければならない」という話を聞いた。しかし、この発言には大きな誤解がある。

確かに、2018年6月29日に国会で成立した「働き方改革関連法」の柱の一つである同一労働同一賃金が大企業に適用されるのは「2020年4月1日~」からであり、まだ時間的猶予があるように見える。

しかし、実は「同一労働同一賃金」は現行の法令にも規定されている。現行法令上、「同一労働同一賃金」が規定されているのは、下記の「労働契約法20条」と「短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律(以下、パートタイム労働法)8条」だ。

現行の<労働契約法>
第20条(期間の定めがあることによる不合理な労働条件の禁止)
有期労働契約を締結している労働者の労働契約の内容である労働条件が、期間の定めがあることにより同一の使用者と期間の定めのない労働契約を締結している労働者の労働契約の内容である労働条件と相違する場合においては、当該労働条件の相違は、労働者の業務の内容及び当該業務に伴う責任の程度(以下この条において「職務の内容」という。)、当該職務の内容及び配置の変更の範囲その他の事情を考慮して、不合理と認められるものであってはならない。
現行の<パートタイム労働法>
第8条(短時間労働者の待遇の原則)
事業主が、その雇用する短時間労働者の待遇を、当該事業所に雇用される通常の労働者の待遇と相違するものとする場合においては、当該待遇の相違は、当該短時間労働者及び通常の労働者の業務の内容及び当該業務に伴う責任の程度(以下「職務の内容」という。)、当該職務の内容及び配置の変更の範囲その他の事情を考慮して、不合理と認められるものであってはならない。

2018年6月29日に成立した働き方改革関連法では、「労働契約法第20条」が削除され、下記の改正条文のとおり「パートタイム労働法第8条」に“統合”されている(下線が改正部分)。上記の現行パートタイム労働法第8条では「短時間労働者」についてしか規定されていないが、下記の改正パートタイム労働法第8条では新たに「有期雇用労働者」が加えられている。

改正後の<パートタイム労働法> ※大企業には「2020年4月1日~」適用
第八条(不合理な待遇の禁止)
事業主は、その雇用する短時間・有期雇用労働者の基本給、賞与その他の待遇のそれぞれについて、当該待遇に対応する通常の労働者の待遇との間において、当該短時間・有期雇用労働者及び通常の労働者の業務の内容及び当該業務に伴う責任の程度(以下「職務の内容」という。)、当該職務の内容及び配置の変更の範囲その他の事情のうち、当該待遇の性質及び当該待遇を行う目的に照らして適切と認められるものを考慮して、不合理と認められる相違を設けてはならない。

そして、新旧各条文の赤字の部分を比較すれば分かるとおり、同一労働同一賃金に反するかどうかの“判断基準”は変わってない。すなわち、現在でも、正社員等と短時間労働者・有期雇用労働者の間では法律上「同一労働同一賃金」が求められているということであり、「業務の内容及び当該業務に伴う責任の程度」や「当該職務の内容及び配置の変更の範囲その他の事情」を考慮して、不合理な待遇の格差が存在していれば、事業主である企業はコンプライアンス違反を犯した状態となっているということだ。

ただそうなると、なぜ既に法律上の規定がある短時間労働者・有期雇用労働者に関する同一賃金同一労働を「働き方改革関連法」の中で新たに立法化する必要があったのかという疑問が生じる。この点、当フォーラムが厚生労働省に取材したところ、これまで「業務の内容及び当該業務に伴う責任の程度」や「当該職務の内容及び配置の変更の範囲その他の事情」の詳細は裁判例等に委ねられており、明確な基準がなかったためだという。厚生労働省は2016年12月に、同一労働同一賃金に反する事例・反しない事例などをまとめた「同一労働同一賃金ガイドライン案」を公表しているが、本ガイドラインは公表から2年近く経った現在も「案」が付いたままとなっている。厚生労働省はこのガイドラインの根拠となる規定を「働き方改革関連法」の中で整備するほか()、条文中の「その他の事情」の詳細も現在検討中の省令等の中で示す方向だ。

いずれにせよ、現行の法律でも、正社員等と短時間労働者・有期雇用労働者の間では「同一労働同一賃金」が求められている以上、企業は「2020年4月1日~」の働き方改革関連法の適用開始を待たず、その実現に努めるべきだろう。

2018/08/02 監査法人を大手→中小に変更する上場企業増加の背景で起きていること

EUでは、2016年6月から上場企業等に対して、監査法人を一定期間(原則として最長10年)で交代させる「監査法人のローテーション」が義務化され、監査法人が交代してから再就任するまでは4年間のインターバルが必要とされている。一方、日本の公認会計士法では、公認会計士と監査クライアントの馴れ合いを防ぐ観点から「監査法人内」で公認会計士をローテーションさせる制度は設けているものの、監査法人自体のローテーションまでは求めていない。これに対して投資家から「日本でも監査法人のローテーション制度を導入すべき」との声が上がる中、有価証券報告書で「当該監査人がその企業の監査に従事してきた期間」を開示させる案が金融庁の「会計監査の在り方に関する懇談会」で示されるとともに、「日本再興戦略2016」にも盛り込まれたところだ。この開示制度は日本再興戦略2016の工程表で2016年度から2018年度にかけて導入されるとされていたものの未だ導入されていない(2018年6月に金融審議会ディスクロージャーワーキング・グループより「ディスクロージャーワーキング・グループ報告 -資本市場における好循環の実現に向けて-」が公表され、導入の道筋が整えられたところである)が、仮に導入された場合、「ガバナンスを強化する」といった理屈付けのため、「大監査法人から別の大監査法人に交代」あるいは「中小の監査法人から大監査法人に交代」するケースが多数を占めると予想されている(以上、2016年6月24日のニュース『「同一の監査人による監査期間」の開示が制度化された場合の企業への影響』参照)。

ところが、足元の動きを見ると、・・・

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2018/08/02 監査法人を大手→中小に変更する上場企業増加の背景で起きていること(会員限定)

EUでは、2016年6月から上場企業等に対して、監査法人を一定期間(原則として最長10年)で交代させる「監査法人のローテーション」が義務化され、監査法人が交代してから再就任するまでは4年間のインターバルが必要とされている。一方、日本の公認会計士法では、公認会計士と監査クライアントの馴れ合いを防ぐ観点から「監査法人内」で公認会計士をローテーションさせる制度は設けているものの、監査法人自体のローテーションまでは求めていない。これに対して投資家から「日本でも監査法人のローテーション制度を導入すべき」との声が上がる中、有価証券報告書で「当該監査人がその企業の監査に従事してきた期間」を開示させる案が金融庁の「会計監査の在り方に関する懇談会」で示されるとともに、「日本再興戦略2016」にも盛り込まれたところだ。この開示制度は日本再興戦略2016の工程表で2016年度から2018年度にかけて導入されるとされていたものの未だ導入されていない(2018年6月に金融審議会ディスクロージャーワーキング・グループより「ディスクロージャーワーキング・グループ報告 -資本市場における好循環の実現に向けて-」が公表され、導入の道筋が整えられたところである)が、仮に導入された場合、「ガバナンスを強化する」といった理屈付けのため、「大監査法人から別の大監査法人に交代」あるいは「中小の監査法人から大監査法人に交代」するケースが多数を占めると予想されている(以上、2016年6月24日のニュース『「同一の監査人による監査期間」の開示が制度化された場合の企業への影響』参照)。

ところが、足元の動きを見ると、この予想とは逆の現象が起きている。金融庁に設置された公認会計士・監査審査会(以下、監査審査会)が7月31日に公表した「平成30年度版モニタリングレポート」(69ページ参照)によると、2018 年6月期に監査法人(監査事務所を含む。以下同)を変更した上場企業は116件(前年同期は134件)あったが、このうち、大手から準大手への変更が23件(前年同期は16件)、大手から中小への変更が29件(前年同期は23件)と、いずれも前年同期より増加している(ちなみに、大手→大手は2018年6月期、前年同期とも27件)。逆に、中小から大手に変更した上場企業は前年同期が8件あったのに対し、2018年6月期は何とゼロ件だった。

監査法人を変更した企業は証券取引所の規則で求められる適時開示で変更理由を直ちに開示する必要があるが、大半は「任期満了」としか書いていない。しかし、実際の理由は別のところにあるのが通常だ。監査審査会によると、大手監査法人から監査法人を変えた理由として、「監査報酬」が28件とダントツで多く、これに「監査人選定に関する方針」(現在の監査法人の継続年数が長期化したため、新しい視点を取り込むためなど)が14件、「監査チームに対する不満」(不正対応や過年度決算訂正等に関する監査人の対応、監査チームの硬直的な対応、監査工数の増加、経験の浅いスタッフが多く関与しているなど)の12件が続く(上記レポートの71ページ参照)。

適時開示 : 投資家に投資判断材料の提供の機能を果たす制度として、金融商品取引法に基づく法定開示制度(有価証券届出書、有価証券報告書、四半期報告書など)と併存する制度。適時開示は証券取引所の規則により求められ、最新の重要な会社情報を迅速に投資家に提供するという点に特徴がある。株価は時々刻々と発生する各種の会社情報によって売買が大きな影響を受けるため、適時開示の重要性は高い。

一方、準大手監査法人及び中小監査法人から監査法人を変えたケースでは、上場企業側の業務の内容や規模の拡大、株主の異動や不正の発覚に伴う監査リスクの高まりを理由として監査法人が監査契約の更新を行わなかった「監査人からの辞任等」が8件と最も多く、「監査報酬」がこれに次ぐ7件となっている(上記レポートの72ページ参照)。

大手から準大手や中小に監査法人を変更するケースが増加していることと、大手からの変更理由のトップとして「監査報酬」がダントツで多かったこと、さらに中小から大手に変更した上場企業がゼロ件だったことから見えてくるのは、大手における特定の上場企業に対する監査報酬の引上げだ。逆に言うと、上場企業の会計不正が後を絶たない中、大手は監査上リスクのあるクライアント企業に対しては「より深度のある監査を行うため」といった理由で監査報酬の引上げを提案することで、監査クライアントを選別しているとの見方もできる。

これは、大手から大手への変更(27件)では、過半数の14件で監査報酬が減少している(上記レポートの75ぺージ参照)ことからも裏付けられる。つまり、監査上のリスクが低い優良企業であれば、大手も監査報酬を下げてでもクライアントにしたいということだろう。

もちろん、準大手や中小監査法人でも質の高い監査を実施しているところはたくさんあるが、大手監査法人が監査人であるということは大手監査法人が「監査上のリスク(会計不正のリスク)が低い」と認めた証しとの見方も可能なだけに、その分、投資家の信頼は受けやすいとは言えそうだ。

2018/08/01 2018年6月総会、役員報酬関連議案への賛成率が低かった企業は?

数ある株主総会議案の中でも、コーポレートガバナンスの観点から投資家の関心が高いのが役員報酬関連の議案だが、2018年6月の株主総会では「否決」事案も出ている。下表は賛成率が3分の2に達しなかった役員報酬関連議案(会社提案)をまとめたものである。・・・

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2018/08/01 2018年6月総会、役員報酬関連議案への賛成率が低かった企業は?(会員限定)

数ある株主総会議案の中でも、コーポレートガバナンスの観点から投資家の関心が高いのが役員報酬関連の議案だが、2018年6月の株主総会では「否決」事案も出ている。下表は賛成率が3分の2に達しなかった役員報酬関連議案(会社提案)をまとめたものである。

※なお、大戸屋ホールディングスでも譲渡制限付株式の導入議案の賛成率が63.24%にとどまっているが、創業家である大株主との関係悪化もあり、いずれの会社提案議案も賛成率が63~65%と低調だったことから、例外的な事例として下表からは除外している。

譲渡制限付株式 : 一定期間の譲渡制限が付された株式報酬。リストリクテッド・ストックとも呼ばれる。

社名 議案 備考 賛成率
テクノメディカ 退職慰労金打切り支給 ・監査等委員を含む取締役8名を対象
・金額は取締役会および監査等委員である取締役の協議に一任
39.60%
セイノーHD 退職慰労金贈呈 ・社内監査役1人を対象
・金額は監査役の協議に一任
59.07%
横河ブリッジHD 退職慰労金贈呈 ・社内監査役1人を対象
・金額は監査役の協議に一任
61.40%
テクノメディカ 退職慰労金贈呈 ・社内取締役1人を対象
・金額は取締役会に一任
62.22%
スタートトゥデイ ストックオプション発行 ・業務執行取締役を対象
・行使期間は発行日の翌日から20年間
希薄化率9.95%
63.11%
アーレスティ 譲渡制限付株式付与 ・社内取締役を対象
・譲渡制限期間1~5年
64.89%
セイノーHD 退職慰労金打切り支給 ・社内取締役6人、社内監査役1人を対象
・金額は同社所定の基準による範囲内
66.02%
新川 譲渡制限付株式付与 ・社内取締役を対象
・譲渡制限期間3~5年
ROE2.6%(5期平均はマイナス5.8%)
66.24%
ソフトバンクHD ストックオプション発行 ・取締役(「社外取締役を除く」のと一文なし)
・行使期間は発行日の翌日の3年後から4年間
66.52%

打切り支給 : 退職金制度の変更や役員への昇格、定年延長による雇用形態の変更などに伴い、「在職中」に退職金を支払うこと。
希薄化率 : 発行済株式数の増加率のこと。「新規発行株式数 / 既発行株式数」によって計算される。既存株主からすれば、希薄化により一株当たり株主価値が低下するのみならず、議決権比率が低下し、投資先企業への影響力も薄まることになる。そこで、例えばある大手機関投資家は、株式報酬制度の導入に関する議案への賛成の条件として、「希薄化率が10%未満」であることを挙げている。発行済み株式数のみならず、今後実際の株式に転換される可能性のあるストックオプションや転換社債などまで含めた株式数をベースに計算された希薄化を「完全希薄化(Fully Diluted)」という。
ROE : Return On Equity=自己資本利益率(当期純利益/株主資本)

テクノメディカの退職慰労金打切り支給議案は賛成率が4割に達せず、否決された。これは、対象に監査等委員である社外取締役が含まれていたことが原因と考えられる。監督サイドの役員への退職慰労金の支給は不適当との判断から、その打切り支給議案も反対されたということであろう。同社は社内取締役への退職慰労金贈呈議案も上程しており、こちらも反対票を少なからず集めたものの可決されている。「支給の根拠と金額が不透明」などとして批判されることも多い退職慰労金だが、社内取締役への支給であれば賛成する機関投資家がそれなりに存在することがうかがわれる(参考記事として2017年9月13日のニュース「“退任後給付スキーム”に復活の余地」参照)。

セイノーHDは社内監査役に対する退職慰労金贈呈を諮り、賛成率は6割弱と低かったものの可決された。テクノメディカと同様に対象者が社外役員であったならば、賛成率はさらに低くなっていたかもしれない。セイノーHDの退職慰労金打切り支給議案も社外役員は対象にしておらず、約3分の2の賛成率を確保している。同様に、横河ブリッジによる退職慰労金贈呈議案も社内監査役のみを対象としており、6割強の賛成率となっている。

ストックオプション発行議案への賛成率が低かったのが、スタートトゥデイとソフトバンクだ。スタートトゥデイのストックオプションは「付与日の翌日」から行使できるため長期インセンティブとして不適切と考えられること、また、ストックオプションの行使による希薄化率が発行済株式総数の約1割と高く、株主にとって不利益となりかねないことから、反対票を集めたものとみられる。ソフトバンクのストックオプション発行議案では、対象者が「取締役」としか書かれておらず、「社外取締役を除く」といった文言が付されていなかったため、一般にインセンティブ報酬を付与することは不適切とされている社外取締役も対象としていると理解されたのだろう。

譲渡制限付株式を付与する議案については、アーレスティと新川で低賛成率にとどまった。アーレスティは譲渡制限の期間が最短で1年となり得ることから、長期インセンティブとして不適切と判断された可能性がある。新川の譲渡制限付株式は特段制度設計の問題は見当たらないものの、近年の同社のROEが低水準で推移していることから、現在はインセンティブ報酬を新たに設定するタイミングとして問題ありとみなされたのかもしれない。

なお、昨年の株主総会で上程された類似議案の賛成率を見ると、テクノメディカが監査等委員を対象とした退職慰労金贈呈議案で賛成率76.09%、ソフトバンクが今年と同様のストックオプション発行議案で同82.54%を得ていた。いずれのケースも、今年は投資家の判断が格段に厳しくなっていることを示している。来年以降についても、役員報酬関連議案を見る投資家の目は益々厳しくなることが予想されよう。

2018/07/31 【失敗学第50回】省電舎ホールディングスの事例(会員限定)

概要

省エネコンサルティングや太陽光発電施設の施工販売を手がける省電舎ホールディングス(東証第2部)で工事進行基準の会計処理について不正や誤謬があり、過年度決算の訂正が必要となった(たとえば2016年3月期で242百万円の利益を過大計上)。

経緯

省電舎ホールディングスが、2018年7月に「第三者委員会の調査報告書」を公表するまでの経緯を時系列で示すと、次のとおり。

2018年
2月:省電舎ホールディングスは、外部からの指摘を受け不正会計の可能性を認識し、取締役会で社内調査委員会の設置を決議。
4月:省電舎ホールディングスは、社内調査委員会から不正会計の可能性につき報告を受けたことから、より客観的かつ公正な立場からの調査が必要と判断、第三者調査委員会の設置を決議し、社内調査委員会の調査を引き継がせる。
5月:省電舎ホールディングスは第三者委員会を設置するとともに、2018年3月期決算短信の開示を延期することを公表(リリースはこちら)。
5月:省電舎ホールディングスは「第三者委員会の調査報告書」を公表。

内容・原因・改善策

省電舎ホールディングスが、2018年7月に公表した「第三者委員会の調査報告書」によると、本件の問題点の主な内容(問題点は多岐にわたっており、ここに掲げたのは一部に過ぎない)とその原因、再発防止策は次のとおりである。

開発型の工事案件への工事進行基準の適用
内容 工事売上については、成果の確実性が認められる等限定的な場合に限り工事進行基準を採用することができるが、そのような要件を満たさない場合には工事完成基準を適用しなければならない。省電舎ホールディングスグループでは、要件を満たせば工事進行基準を採用する会計方針を採用していたが、開発型の案件(太陽光発電所を建設したうえで買主に販売する取引。開発できても販売できないリスクがあるため、成果の確実性に欠ける取引であり、工事進行基準を適用し得ない)のように成果の確実性が認められない工事についても工事進行基準を適用していた。その結果、販売先が決まっていない太陽光発電所を開発するだけで売上を計上していた。
原因 ・業績が厳しく、ライツオファリングや転換社債型新株予約権付社債による資金調達(2014年3月期)や2015年3月期の有価証券報告書に付された継続企業の前提に関する注記(いわゆるGC注記)の記載解消といった課題を解決するために、決算の黒字化による株価向上が必要であった(実際に2016年3月期にはGC注記の記載が解消された)。
・役職員にコンプライアンス意識が著しく欠如していた。
・代表取締役が不正を主導していた。
・内部監査や監査役による監査体制が構築されていなかった。
再発防止策 ・役員や従業員の意識改革
・経理部門の人員増

工事進行基準 : 工事契約に関して、工事収益総額、工事原価総額および決算日における工事進捗度を合理的に見積り、これに応じて当期の工事収益および工事原価を認識する方法
工事完成基準 : 工事契約に関して、工事が完成し、目的物の引渡しを行った時点で、工事収益および工事原価を認識する方法

系統連系日より前に工事が完了したとして売上を早期計上
内容 太陽光工事案件の工事検収書に実際の完了日(系統連系できたのは2015年4月)よりも早い日付(2015年3月31日)を工事完了日として記載していた。その結果、本来であれば2016年3月期の売上となるはずの工事売上が2015年3月期に計上されていた。

原因 省電舎ホールディングスグループでは、太陽光発電工事に係る業務フローを特段作成しておらず、何をもって工事完了日とするのかについての社内コンセンサスが得られていなかった。問題となった案件では、工事検収書の工事完了日が売上計上の根拠資料となっていたが、工事検収書の工事完了日は系統連系とは無関係の日が記載されており、売上の早期計上に利用されていた。
再発防止策 上記「開発型の工事案件への工事進行基準の適用」を参照

系統連系 : 太陽光発電設備と電力会社が自社の電線を連携させ、電力会社が受電できる状況にすること

工事進捗度の水増し
内容 省電舎ホールディングスでは、工事進行基準の進捗度の見積もりに際して原価比例法を採用している。そして、開発型では土地代やFITに係る権利の取得費を原価比例法における原価に含めている(土地代やFITに係る権利の取得費は開発を行うにあたっての前提として取得すべきものであって、その取得自体が工事の進捗度に影響を与えるものではなく、本来は原価比例法における原価を構成するものではない)。その結果、土地を取得しただけ進捗度が相当上昇し、それに伴い工事進行基準による売上が不適切に早期計上されていた。
また、省電舎ホールディングスでは、工事進行基準を適用する案件で、工事物品を仕入れただけで工事原価として処理していた案件もあった(すなわち未使用の工事物品は棚卸資産とすべきところ工事原価に入れていた)。その結果、当該案件では工事進捗度が不適切に上昇し、工事実態を適切に示さなくなり、売上の早期計上へとつながった。

原因 上記「開発型の工事案件への工事進行基準の適用」を参照
再発防止策 上記「開発型の工事案件への工事進行基準の適用」を参照

FIT : 再生可能エネルギー固定価格買取制度

<この失敗から学ぶべきこと>

FIT事業は東日本大震災後、代替エネルギーの確保を目的として急速に広まりました。市場が急拡大する際にひずみが生じるのはよくある話であり。FIT事業も例外ではありませんでした。国民負担の増加や未稼働案件の増加といった問題を抱えることとなります。急拡大する市場に乗り遅れまいと、FIT事業を手掛ける企業の数も急増するなかで内部統制が追い付かず、不適切会計となって事件化する例も散見されるようになりました。上場会社ではフィット(マザーズ)ピクセルカンパニーズ(JASDAQ)といった例があります。また、要件を満たしていないにもかかわらず優遇税制を受けていた不正節税事件も報道されています。需要拡大を見込んで参入した業者の倒産事件も目立っています。上場企業の役員としては、急成長する市場に参入する場合に、どのようなリスクが潜んでいるのか、自社の内部統制やガバナンスは成長スピードに追いついたものとなっているのか、事前に慎重な検討をしておくべきです。

2018/07/31 2018年7月度チェックテスト第10問解答画面(正解)

正解です。
政府は、ESG融資の拡大にあたり、金融機関への監督を通じてだけでなく、ESG投資(機関投資家→上場している地域金融機関)も通じてESG融資(上場している地域金融機関→中小企業)を広げていく方針です。

こちらの記事で再確認!
2018/07/27 気候変動対応、地銀やその融資先に強まるプレッシャー(会員限定)

2018/07/31 2018年7月度チェックテスト第10問解答画面(不正解)

不正解です。
政府は、ESG融資の拡大にあたり、金融機関への監督を通じてだけでなく、ESG投資(機関投資家→上場している地域金融機関)も通じてESG融資(上場している地域金融機関→中小企業)を広げていく方針です。

こちらの記事で再確認!
2018/07/27 気候変動対応、地銀やその融資先に強まるプレッシャー(会員限定)

2018/07/31 2018年7月度チェックテスト第9問解答画面(不正解)

不正解です。
ISSやグラスルイスが買収防衛策に対して厳しい基準を打ち出したこともあり、買収防衛策の導入(継続)議案に対する賛成率は大幅に低下しています。ROEが高い企業であっても買収防衛策の導入(継続)議案に対する賛成率は低く、もはや買収防衛策の導入(継続)議案が、高ROEも対話も通り越して反対票を投じる対象となりつつあることを示していると言えそうです。

こちらの記事で再確認!
2018/07/23 買収防衛策への賛成率が大幅に低下、その背景にあるものは?(会員限定)

2018/07/31 2018年7月度チェックテスト第9問解答画面(正解)

正解です。
ISSやグラスルイスが買収防衛策に対して厳しい基準を打ち出したこともあり、買収防衛策の導入(継続)議案に対する賛成率は大幅に低下しています。ROEが高い企業であっても買収防衛策の導入(継続)議案に対する賛成率は低く、もはや買収防衛策の導入(継続)議案が、高ROEも対話も通り越して反対票を投じる対象となりつつあることを示していると言えそうです。

こちらの記事で再確認!
2018/07/23 買収防衛策への賛成率が大幅に低下、その背景にあるものは?(会員限定)