2018/07/31 2018年7月度チェックテスト第1問解答画面(不正解)

不正解です。
改訂ガバナンスコード原則2-6の「企業年金」とは、原則にある「自らの財政状態にも影響を与える」との記述からも分かるように、企業が年金資産を一括して運用・管理企業が運用する確定給付年金や厚生年金基金を指しています。もっとも、東証は「確定拠出年金もその運用が従業員の資産形成に影響を与えることは確定給付年金と同様であるため、運用機関や運用商品の選定、従業員に対する資産運用に関する教育の実施などの場面で適切な取り組みが期待される」としており、確定拠出年金制度採用企業も改訂ガバナンスコード原則2-6に積極的な取り組みを行うことが望ましいと言えます。

こちらの記事で再確認!
2018/07/04 年金母体企業に機能発揮求める原則2-6、確定拠出年金導入企業の対応(会員限定)

2018/07/27 気候変動対応、地銀やその融資先に強まるプレッシャー

広島県などに甚大な被害をもたらした西日本豪雨や連日の異常な高気温などから、2018年の夏は誰もが地球温暖化を“差し迫った危機”として意識しているのではないだろうか。人類が豊かに生存し続けるためのベースとなる地球環境は、もはや限界(プラネタリー・バウンダリー=地球の限界)に達したとも言われている。

地球温暖化への危機感はまずグローバル機関投資家の間で共有され(2018年3月9日のニュース「グローバル機関投資家の新たな関心事」参照)、ESGに優れた企業を選定して投資するESG投資を通じて日本企業にも影響を及ぼしているが(2018年6月22日のニュース「気候変動対策、グローバル機関投資家の高評価を受けた日本企業は?」参照)、地球温暖化対策(気候変動対策)を実際に講じている日本企業は、上場企業でもまだまだ少ないのが現状であり、中小企業となればなおさらだろう。こうした中、政府は、大手金融機関のみならず地銀など地方金融機関も巻き込み、大手企業から中小企業まで気候変動対策に取り組むよう促す方針だ。

ESG : ESGとは、「Environmental(環境)」「Social(社会)」「Governance(企業統治)」の頭文字を組み合わせたもので、近年、特にグローバル機関投資家の間で、企業の投資価値を測る評価項目としての地位を確立しつつある。

環境庁に設置されたESG金融懇談会は、直接金融市場(証券市場を通じた金融)におけるESG投資のみならず、間接金融市場(銀行融資を通じた金融)にも“ESG融資”を通じて企業の環境行動を促すための施策を検討するべく今年1月から議論を重ねて来たが、本日(7月27日)、これまでの議論を踏まえた「提言~ ESG金融大国を目指して」を公表した。同懇談会で、ESG投資のみならず “ESG融資”もテーマとされた背景には、環境金融に取り組んでいる銀行が一部にとどまっているという現状がある。また、同懇談会の開催趣旨には、「今後、特に地域において環境金融が広がることにより、環境と経済の両方の観点から地域の持続可能性が高まっていくことが期待される」とあり、地銀をはじめとする地方金融機関にも“ESG融資”の担い手となることを求めていくことが示唆されていた。環境省は「会合でのご議論については、今後の環境省における環境金融施策に、可能な限り反映させていく予定」と明言しているだけに、直接金融と間接金融の双方がESG(とりわけE(環境))の要素を取り込むとともに国に対しても必要な施策を講ずるよう求めた今回の提言には重みがある。

提言ではまず、直接金融市場におけるESG投資の加速化策として、金融安定理事会(FSB=Financial Stability Board)が2015年12月に設置した気候変動関連財務情報開示タスクフォース(TCFD=Task Force on Climate-related Financial Disclosures)が2017年6月に公表した「気候変動関連財務情報の任意の開示の枠組みに関する最終報告書」(Recommendations of the Task Force on Climate-related Financial Disclosures 以下、TCFD報告書)を踏まえた情報開示の促進を挙げている(提言の4ページ参照)。TCFD報告書は、企業に対し、・・・

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2018/07/27 気候変動対応、地銀やその融資先に強まるプレッシャー(会員限定)

広島県などに甚大な被害をもたらした西日本豪雨や連日の異常な高気温などから、2018年の夏は誰もが地球温暖化を“差し迫った危機”として意識しているのではないだろうか。人類が豊かに生存し続けるためのベースとなる地球環境は、もはや限界(プラネタリー・バウンダリー=地球の限界)に達したとも言われている。

地球温暖化への危機感はまずグローバル機関投資家の間で共有され(2018年3月9日のニュース「グローバル機関投資家の新たな関心事」参照)、ESGに優れた企業を選定して投資するESG投資を通じて日本企業にも影響を及ぼしているが(2018年6月22日のニュース「気候変動対策、グローバル機関投資家の高評価を受けた日本企業は?」参照)、地球温暖化対策(気候変動対策)を実際に講じている日本企業は、上場企業でもまだまだ少ないのが現状であり、中小企業となればなおさらだろう。こうした中、政府は、大手金融機関のみならず地銀など地方金融機関も巻き込み、大手企業から中小企業まで気候変動対策に取り組むよう促す方針だ。

ESG : ESGとは、「Environmental(環境)」「Social(社会)」「Governance(企業統治)」の頭文字を組み合わせたもので、近年、特にグローバル機関投資家の間で、企業の投資価値を測る評価項目としての地位を確立しつつある。

環境省に設置されたESG金融懇談会は、直接金融市場(証券市場を通じた金融)におけるESG投資のみならず、間接金融市場(銀行融資を通じた金融)にも“ESG融資”を通じて企業の環境行動を促すための施策を検討するべく今年1月から議論を重ねて来たが、本日(7月27日)、これまでの議論を踏まえた「提言~ ESG金融大国を目指して」を公表した。同懇談会で、ESG投資のみならず “ESG融資”もテーマとされた背景には、環境金融に取り組んでいる銀行が一部にとどまっているという現状がある。また、同懇談会の開催趣旨には、「今後、特に地域において環境金融が広がることにより、環境と経済の両方の観点から地域の持続可能性が高まっていくことが期待される」とあり、地銀をはじめとする地方金融機関にも“ESG融資”の担い手となることを求めていくことが示唆されていた。環境省は「会合でのご議論については、今後の環境省における環境金融施策に、可能な限り反映させていく予定」と明言しているだけに、直接金融と間接金融の双方がESG(とりわけE(環境))の要素を取り込むとともに国に対しても必要な施策を講ずるよう求めた今回の提言には重みがある。

提言ではまず、直接金融市場におけるESG投資の加速化策として、金融安定理事会(FSB=Financial Stability Board)が2015年12月に設置した気候変動関連財務情報開示タスクフォース(TCFD=Task Force on Climate-related Financial Disclosures)が2017年6月に公表した「気候変動関連財務情報の任意の開示の枠組みに関する最終報告書」(Recommendations of the Task Force on Climate-related Financial Disclosures 以下、TCFD報告書)を踏まえた情報開示の促進を挙げている(提言の4ページ参照)。TCFD報告書は、企業に対し、気候変動に適切に対応するためのガバナンス体制を整備し、その体制の下で、どのような事業戦略を立て、いかにリスクと機会を評価・管理し、さらにさまざまなシナリオのもとでの組織のレジリエンス(気候変動に対する企業の適応力)や具体的な指標・目標の自主的な開示を求めている。今年6月1日から施行された改訂コーポレートガバナンス・コードでは、「第3章 適切な情報開示と透明性の確保」の【基本原則3】にESG情報の開示に関する記載が盛り込まれたところだが(2018年6月1日のニュース「1/3以上の社外取選任のための取組方針は開示対象外、委員は氏名を記載」参照)、今回のESG金融懇談会の提言を受け、今後上場企業は、ESG情報の開示においてTCFD報告書の内容を意識する必要があろう。また、提言では「国は、TCFDに基づく情報開示がインベストメントチェーンにおける対話の中で有効に活用されるよう、企業が気候関連のリスクと機会を財務的に把握し情報開示するあり方を示すことで、国際的なフレームワークづくりに積極的に関与していくとともに、企業による世界への情報発信を促すべき」としている。

金融安定理事会 : 金融システムの脆弱性への対応や金融システムの安定を担う金融当局間の協調を促進するための国際組織で、2009年4月に設立された。主要25か国・地域の中央銀行、金融監督当局、財務省、IMF(国際通貨基金)、世界銀行、BIS(国際決済銀行)、OECD(経済協力開発機構)等の代表が参加している。

一方、間接金融によるESG 融資の促進策では、大手金融機関のみならず地銀など地域金融機関もESG融資における「貸し手」になることを期待するとともに、「借り手」を大企業だけでなく中小企業にも拡大することを提案している点、注目される。その中でも上場している地域金融機関に対しては、「その株主である機関投資家が、ESG要素をしっかりと意識して地域金融機関と対話していくことは、SDGsの具現化に向けた地域金融機関の行動を促す」(提言の3ページ参照)という具体なESG融資普及策が示されている。これは要するに、ESG投資(機関投資家→上場している地域金融機関)を通じてESG融資(上場している地域金融機関→中小企業)を広げていこうということであり、地域金融機関には強いプレッシャーとなりそうだ(SDGsに関する参考記事としては、2018年3月7日のニュース「多くの上場企業が誤解するSDGsへの対応」、2018年5月28日掲載の(新用語・難解用語)「社会的インパクト投資」、2017年8月21日のニュース「上場企業の間で徐々に対応が進むSDGs」参照)。

SDGs : 「Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標)」の略で、「エスディージーズ」と読む。「人間、地球及び繁栄」のための行動計画として国連が掲げる世界共通の目標であり、17の目標と169のターゲットからなる。2015年9月に開催された「国連持続可能な開発サミット」において150を超える加盟国首脳の参加のもとで採択され、2016年から2030年までの15年間での達成を目指している。

ESG投・融資の普及は、天然資源の採掘・伐採など環境破壊を前提とせざるをえないビジネスがメインとなっている企業やCO2排出量の削減に消極的な企業にとっては資金の供給減を絶たれることを意味する。こうした企業の経営陣は、地球温暖化阻止に向けた全社的取り組みやビジネスモデルの転換が日本でももはや喫緊の課題となっていることを認識する必要がある。

2018/07/26 役員報酬の根拠となるKPIを巡る投資家と経営陣の“好み”の違い

近年、業績や株価などによって変動するインセンティブ報酬を導入する企業が相次いでいるが、インセンティブ報酬制度を設計する際にしばしば議論になるのが、報酬額の根拠として何をKPIに選定するのかという点だ。KPIが議論の対象になる要因の一つとして、経営陣が好むKPIと投資家が好むKPIが必ずしも一致しないということがある。分かり易い例を挙げると、投資家にとっては自らの利益に直結する「株価」に役員報酬が連動しているのが最も好ましい一方、経営陣から見れば、株価は自身の頑張りと連動するとは限らない(例えば、自社の業績は好調であるにもかかわらず、低迷する株式市場に足を引っ張られて自社の株価も伸びないケース)。経営陣にとっては、自身の頑張りと成果との因果関係が明確な「売上」のような指標の方が好ましいということになる。すなわち、経営陣がコントロールしやすい指標の方が経営陣にとって納得感があり、インセンティブ効果も高まると言える。

KPI : 定量的に示される重要業績評価指標(Key Performance Indicators=KPI)のこと。KPIの例としては「新規顧客の獲得数」「従業員1人あたりの経費」「総資産額」などがある。

もっとも、経営陣の論理だけを押し通せば投資家は納得せず、逆に投資家の論理だけを尊重すれば経営陣にとってのインセンティブ効果は失われる。結論として、経営陣の視点と投資家の視点それぞれに配慮したKPIを複数選定し、両者のバランスを図る必要がある。ただし、選定するKPIの数があまり多くなると、経営陣・投資家双方にとって分かりにくいものとなってしまうため、KPIは厳選する必要がある。これは、強いメッセージを発信したい時に言葉を厳選して簡潔に表現するのと同じことである。

例えば・・・

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2018/07/26 役員報酬の根拠となるKPIを巡る投資家と経営陣の“好み”の違い(会員限定)

近年、業績や株価などによって変動するインセンティブ報酬を導入する企業が相次いでいるが、インセンティブ報酬制度を設計する際にしばしば議論になるのが、報酬額の根拠として何をKPIに選定するのかという点だ。KPIが議論の対象になる要因の一つとして、経営陣が好むKPIと投資家が好むKPIが必ずしも一致しないということがある。分かり易い例を挙げると、投資家にとっては自らの利益に直結する「株価」に役員報酬が連動しているのが最も好ましい一方、経営陣から見れば、株価は自身の頑張りと連動するとは限らない(例えば、自社の業績は好調であるにもかかわらず、低迷する株式市場に足を引っ張られて自社の株価も伸びないケース)。経営陣にとっては、自身の頑張りと成果との因果関係が明確な「売上」のような指標の方が好ましいということになる。すなわち、経営陣がコントロールしやすい指標の方が経営陣にとって納得感があり、インセンティブ効果も高まると言える。

KPI : 定量的に示される重要業績評価指標(Key Performance Indicators=KPI)のこと。KPIの例としては「新規顧客の獲得数」「従業員1人あたりの経費」「総資産額」などがある。

もっとも、経営陣の論理だけを押し通せば投資家は納得せず、逆に投資家の論理だけを尊重すれば経営陣にとってのインセンティブ効果は失われる。結論として、経営陣の視点と投資家の視点それぞれに配慮したKPIを複数選定し、両者のバランスを図る必要がある。ただし、選定するKPIの数があまり多くなると、経営陣・投資家双方にとって分かりにくいものとなってしまうため、KPIは厳選する必要がある。これは、強いメッセージを発信したい時に言葉を厳選して簡潔に表現するのと同じことである。

例えば損益計算書のトップにある「売上高」をKPIに採用するのであれば、投資家が「経営陣として責任を持つべき」と考えるボトムの「当期純利益」も採用し、さらに投資家に配慮して「株価」や「ROE」も採用するというのがよくあるパターンと言える。また、単純に「ROE」を採用するのではなく、「当期純利益/自己資本」により算出されるROEを「(純利益率=純利益/売上)×(総資産回転率=売上/資産)×(財務レバレッジ=資産/自己資本)」に分解し(分解式の意味は(新用語・難解用語)「デュポン式」参照)、このうち売上高など経営陣にとって分かりやすい要素の入った指標(例えば総資産回転率)を採用することもある。さらに、各KPIをそれぞれバラバラに評価し、各要素ごとの金額を合算して報酬額を算出するケースもあれば、それぞれの要素への評価を掛け合わせて算出した係数を基に報酬額を算出するケースもある。様々な要素を考慮していることを投資家にアピールするために後者の手法が採用されることもある。

ROE : Return On Equity=自己資本利益率(当期純利益/株主資本)

ここで注意したいのは、上述のとおり、インセンティブ報酬は経営陣が自分でコントロールできない要素が入れば入るほど納得感がなくなるという点。例えば減損損失が報酬額に影響するとなれば、インセンティブ効果は大きく損なわれる。なぜなら減損損失は投資意思決定から相当程度の年数が経過してから計上されるものであるため、前任者の投資意思決定の失敗に起因するのが通常である。前任者の尻拭いをさせられる評価方法では経営陣の納得感を得にくいであろう。そこで、減損損失の影響を受ける「当期純利益」(日本の会計基準上、減損損失は「特別損失」に計上される)をKPIに採用するのであれば、減損損失(特別損失)の影響を受けない「営業利益」もあわせて採用するというパターンが見受けられる。ちなみに、IFRS(国際会計基準)では、減損損失は営業利益を減らすことになる。そこで、減損損失のような非経常項目を除いた“コア営業利益”をKPIに採用しているIFRS適用企業もある。また、為替の変動も同様だ。為替はマクロ経済の動きや通貨需給の変動などいずれもコントロール不能な外的要因で変動するものであり、それが報酬額に影響するとなれば、インセンティブ効果は大きく損なわれる。インセンティブ報酬制度の設計上、為替変動の影響をどう考えるかは報酬委員会(任意のものも含む)でもよく議論になるところだが、報酬委員会が客観性を担保することを前提に、為替変動による影響を排除して事後的に支給額を調整する余地を設けておくというという手法がとられるケースが見受けられるほか(2018年6月28日のニュース「インセンティブ報酬の事後調整」参照)、最初から為替変動による業績の変動を排除するよう報酬の計算式を組んでおけば、法人税法上も「業績連動給与」として損金算入することが可能となろう。

減損損失 : 固定資産による将来の現金回収見込額が簿価を下回った場合に、下回った分だけ計上する損失のこと。

また、各部門の担当取締役について、例えば自分の所管する部門の営業利益などをKPIとすることも考えられる。これは“役員寄り”の発想と言えるが、各部門が営業利益を上げることが会社全体の業績を押し上げ、巡り巡って企業価値を向上させるというのであれば、投資家も納得してくれるはずだ。ただし、こうした場合であっても、各役員は会社全体の業績に関するKPIによっても評価を受ける必要があろう。

ここまで経営陣と投資家それぞれに配慮したKPIを複数選定するケースについて解説してきたが、あえて“投資家寄り”のKPIを採用することもある。例えば、企業のサイズのわりに高い報酬を支払うケースだ。このような場合、経営陣の納得感よりも、株主が好む指標(例えば当期純利益と株価のみ)をKPIに採用している企業も見受けられる。要するに、規模が小さいのに高い報酬払っているのだから、評価は株主寄りにしようということである。逆もまたしかりで、役員報酬が管理職の給与の延長線上にあるという程度の水準にとどまる場合、「株価」などよりも「売上」「営業利益」など、経営陣にとって身近な営業と関係の深い指標をKPIに採用するのが自然だろう(ただし、そもそもこのような低水準の報酬が投資家に問題視される可能性はある。この点については2018年5月11日のニュース『投資家目線の「望ましい経営者報酬」』参照)。

2018/07/25 人事考課における心理的傾向とその補正方法

壮大な事業計画も、詰まるところ、その達成は従業員一人ひとりの頑張りにかかっている部分が大きい。そして、従業員の頑張りを支える重要な要素が「人事考課」だ。人事考課が公平かつ透明なものでなければ従業員はやる気を失い、最悪の場合、会社を辞めてしまうことにもなりかねない。特に売手市場の昨今はそのリスクが高まっていると言える。また、経営陣のサクセッションプラン(後継者計画)も、そのベースとなるのは従業員時代の人事考課であり、ここで適正な評価が行わなければ、将来の後継者となり得る優秀な従業員の人材プールを作ることもできないだろう。

ただ、実際に各社で行われている人事考課は、考課者(一般的には直属の上司)の力量、端的に言えば心理や性格、思考パターンに大きく左右されることが多い。考課者が陥りやすい“問題のある人事考課”の傾向としては、以下のようなものがある。

(1) 寛大化傾向
 部下をひいき目に見て、全体的に評価が甘くなる。
 例:「自分の部下だから優秀なはずだ」
(2) 中心化傾向(中央値に集中した人事評価)
 部下を観察できていないため(または部下の反感を恐れて)無難な評価にしておく。
 例:「みんな真面目にやっている」
(3) 厳格化傾向
 部下を頼りない存在と見たり、自身の若い頃と比較したりして、厳しく評価する。
 例:「自分の若い頃はこのくらいやって当然だった」
(4) 対比誤差
 考課者自身・・・

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2018/07/25 人事考課における心理的傾向とその補正方法(会員限定)

壮大な事業計画も、詰まるところ、その達成は従業員一人ひとりの頑張りにかかっている部分が大きい。そして、従業員の頑張りを支える重要な要素が「人事考課」だ。人事考課が公平かつ透明なものでなければ従業員はやる気を失い、最悪の場合、会社を辞めてしまうことにもなりかねない。特に売手市場の昨今はそのリスクが高まっていると言える。また、経営陣のサクセッションプラン(後継者計画)も、そのベースとなるのは従業員時代の人事考課であり、ここで適正な評価が行わなければ、将来の後継者となり得る優秀な従業員の人材プールを作ることもできないだろう。

ただ、実際に各社で行われている人事考課は、考課者(一般的には直属の上司)の力量、端的に言えば心理や性格、思考パターンに大きく左右されることが多い。考課者が陥りやすい“問題のある人事考課”の傾向としては、以下のようなものがある。

(1) 寛大化傾向
 部下をひいき目に見て、全体的に評価が甘くなる。
 例:「自分の部下だから優秀なはずだ」
(2) 中心化傾向(中央値に集中した人事評価)
 部下を観察できていないため(または部下の反感を恐れて)無難な評価にしておく。
 例:「みんな真面目にやっている」
(3) 厳格化傾向
 部下を頼りない存在と見たり、自身の若い頃と比較したりして、厳しく評価する。
 例:「自分の若い頃はこのくらいやって当然だった」
(4) 対比誤差
 考課者自身との対比によって評価してしまう。
 例:「数字が苦手な上司が数字に強い部下を高評価」
(5) ハロー効果
 ある特定の要素から形成される先入観によって全体を評価してしまう。ハローとは「後光が指す」の後光を意味する。例えば超高学歴というだけで「仕事の能力も高いだろう」と思い込んだり、逆に、転職回数が多いからといって「辛抱できないタイプ」と決めつけたりすることを指す。
 例:「高校野球で甲子園に出場した経験があるのだから、仕事にも一生懸命取り組むはずだ、」
(6) 論理的誤謬
 事実を見ずに考課者が自ら作った論理によって評価してしまう。
 例:「サラ金から多額の借金をしているから仕事もずさんだ」
(7) 期末効果(近時点効果)
 直近の行動や成果をもって評価期間全体の評価にしてしまう。
 例:「最近の大失敗により以前の成功事例も台無し」

また、これらに加えて「逆算化傾向」(賞与支給額や昇格等を念頭においた評価)を問題視する人事の専門家もいるが、そもそも人事考課の大きな役割が従業員の処遇の決定であることを考えれば、むしろ「逆算」は必要と言えよう。

では、上記(1)~(7)の傾向を補正するための方策としてはどのようなものがあるのだろうか。

(1) 寛大化傾向、(2) 中心化傾向、(3) 厳格化傾向については、「相対評価」を導入すれば容易に解決する。すなわち、部下全員を“順位付け”することである。ただ、相対評価には、評価の“甘辛”を補正しやすいというメリットがある反面、「被考課者の能力開発に活用しにくい」というデメリットもあることに留意する必要がある。人事考課には、そのような考課結果をもたらした原因(知識不足、経験不足、周囲とのコミュニケーション不足等々)を探し、その解消に努めさせることで、被考課者の能力開発につなげるという役割もあるが、考課結果が「周囲との比較」だけによるものとなると、周囲から自分が劣っていることは分かっても、具体的にどこが悪かったのかが見えにくくなりかねない。相対評価を行う場合でも、同時に被考課者個人にフォーカスした評価も行い、その結果を本人にフィードバックすることは、自己啓発を促すうえで必須となる。

(4)対比誤差、(5)ハロー効果、(6) 論理的誤謬については、「考課表」を“評価項目ごと”に記入するようにすることで一定程度は改善されよう。(7)期末効果(近時点効果)についても、考課表の形式を工夫して、例えば月別に評価したものを集計するようなものにすれば、考課者の負担は重くなるものの、効果を薄めることは可能だ。

もっとも、これらの方策を講じたとしても、やはり考課者の癖がある程度出てしまうことは避けられない。「人が人を評価する」以上、いくら補正しようとしても、自ずと限界はある。したがって、少なくとも考課者自身は、上述したような心理的傾向があることを自覚したうえで人事考課に臨まなければならない。また、考課者教育(考課者の能力を高めるための教育)も必要になろう。経営陣としては、サクセッションプランの重要性が叫ばれている今こそ、そのベースとなる人事考課を点検しておきたいところだ。

2018/07/24 機関投資家協働対話フォーラムが不祥事発生企業にレターを送付

投資先企業との対話強化のために企業年金連合会と大手金融機関が連携して昨年(2017年)10月に設立された一般社団法人機関投資家協働対話フォーラム(機関投資家協働対話フォーラムについては2017年11月8日のニュース『集団的エンゲージメントを支援する「機関投資家協働対話プログラム」が始動』参照)は(2018年)7月19日、不祥事を起こした企業の代表取締役社長、社外取締役・社外監査役宛てに・・・

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2018/07/24 機関投資家協働対話フォーラムが不祥事発生企業にレターを送付(会員限定)

投資先企業との対話強化のために企業年金連合会と大手金融機関が連携して昨年(2017年)10月に設立された一般社団法人機関投資家協働対話フォーラム(機関投資家協働対話フォーラムについては2017年11月8日のニュース『集団的エンゲージメントを支援する「機関投資家協働対話プログラム」が始動』参照)は(2018年)7月19日、不祥事を起こした企業の代表取締役社長、社外取締役・社外監査役宛てに「不祥事発生企業への情報開示と社外役員との協働対話のお願い」をテーマとしたレターの送付を開始したことを公表した。

機関投資家協働対話フォーラムは、信託銀行等のパッシブ運用を行う運用機関による集団的エンゲージメントを行うためのプラットフォームであるだけに、レターではまず、不祥事が発生した場合におけるパッシブ運用機関としての自らのスタンスを明確にしている。具体的には、①不祥事が表面化し、株価が下落しても基本的に株式を保有し続ける“日本株式会社”のユニバーサル・オーナーという観点から、“超長期”の投資のスタンスで、企業の持続的な成長を支援する立場である、②企業価値が毀損されるおそれがある場合における投資家の対応について規定したスチュワードシップ・コード指針4-1(下記参照)に則り、不祥事が発生した企業に十分な説明を求めるとともに、投資家が懸念する課題を伝えて課題認識を共有化し、改革を促し、企業価値の再生を支える役割が求められている――と、“企業を支える立場”を強調している。

パッシブ運用 : 東証のTOPIXのような株価指数(インデックス)の値動きに連動する運用成果を目指し、株価指数を構成する銘柄をポートフォリオに組み入れるなどして、運用会社は定性的な判断を入れずに機械的に投資判断を行う運用手法のこと。パッシブとは「消極的な」という意味である。パッシブ運用に対し、銘柄を選別し、魅力のある銘柄を購入する一方で、見劣りする銘柄を売却するなどして利益を得ようとする投資手法がアクティブ運用である。
ユニバーサル・オーナー : 投資額が大きく、資本市場全体に幅広く分散して運用する長期投資家のこと。

スチュワードシップ・コード指針4-1
機関投資家は、中長期的視点から投資先企業の企業価値及び資本効率を高め、その持続的成長を促すことを目的とした対話を、投資先企業との間で建設的に行うことを通じて、当該企業と認識の共有を図るよう努めるべきである。なお、投資先企業の状況や当該企業との対話の内容等を踏まえ、当該企業の企業価値が毀損されるおそれがあると考えられる場合には、より十分な説明を求めるなど、投資先企業と更なる認識の共有を図るとともに、問題の改善に努めるべきである。

今回のレターの送付は、機関投資家協働対話フォーラム単独ではなく、同フォーラムが主宰する複数の機関投資家による企業との協働対話の具体的な手法としての「機関投資家協働対話プログラム」に参加する企業年金連合会、三井住友アセットマネジメント、三井住友信託銀行、三菱 UFJ 信託銀行、りそな銀行の連名により行われているが、これら5社の機関投資家は不祥事発生企業に対し、徹底した実態調査と原因究明、背景にある問題の把握と改革、実効的な再発防止策を実施することで、企業価値の再生に取り組むことを求めている。

機関投資家が不祥事を招く原因との一つして見ているのが「企業体質・風土」だ。機関投資家は、不祥事問題を解決し損なわれた企業価値を再生するためには、徹底的な事実関係の調査と原因の究明のみならず「企業体質・風土からの改革」が必要であり、そのためには、社外目線からのコーポレートガバナンス改革が欠かせないとの考えを示している。レターの送付先に代表取締役社長のみならず、社外取締役・社外監査役が加えられているのもこのためだ。

また機関投資家は、不祥事発生企業に対する依頼事項として、「情報開示」と「社外取締役・社外監査役との協働対話の実施」を挙げる。具体的な内容は、それぞれ下表のとおり。

「情報開示」に関する依頼事項 (1)不祥事となった事案を含め、懸念のある全ての事案についての事実関係と根本的な要因、実効性のある再発防止策、さらには業績への影響についての迅速かつ適切な情報開示。また、これらの情報は、第三者委員会の調査によるところも大きいので、同委員会の活動に対する全面的なサポートと、同委員会からの報告の後、迅速かつ適切な情報開示を求める。
(2)不祥事発生後に最初に迎える株主総会での社外役員選任議案についての情報開示。不祥事発生企業の社外役員には、高いレベルの専門的なスキル、豊かな経験、高い見識、強い意欲はもちろんのこと、コーポレートガバナンス改革の推進にふさわしいスキルセットが求められることから、不祥事発生後に最初に迎える株主総会では、社外役員の選任議案は重要な議案である。今回レターを送付した対象企業では、候補者選定の背景が必ずしも十分に説明されていなかったため、社外役員の役割と指名に関する考え方を、株主総会前に株主に向けて説明して欲しい。
社外取締役・社外監査役との協働対話の実施 日本取引所自主規制法人「上場会社における不祥事対応のプリンシプル」「上場会社における不祥事予防のプリンシプル」等をベースに、会社が今回の問題に着実に取り組んでいるかどうか、第三者委員会の活動を会社がサポートし、同委員会からの報告・提言に会社が適切に取り組んでいるかどうかをモニタリングして欲しい。そして、会社のコーポレートガバナンスの課題を見出し、改革を促進して欲しい。

本レターに「社外役員の皆様の活動が社内で支障なく推進されるように、株主が応援していることを示したい」との一文が盛り込まれていることからも、機関投資家が不祥事の要因となる「企業体質・風土からの改革」において、社外取締役・社外監査役が果たす役割をいかに重視しているかがうかがえる。

今回のレターの送付対象となった企業は、重大な不祥事が発生しその対応が現在進行形である企業に限定されているため、直近で不祥事が発生していない多くの企業には本レターが届くことはない。ただ、機関投資家協働対話フォーラムは、本レターを「万一不祥事が発生した時の企業価値再生に向けた取組みの参考に供してもらいたい」としており、今回レターの内容を公表した理由もそこにある。特に各社の社外取締役・社外監査役は、企業不祥事に対する投資家の目線や企業不祥事が発生した場合に自らに期待される役割を理解するうえでも、本レターには目を通しておきたいところだ。