2018/06/30 2018年6月度チェックテスト第3問解答画面(不正解)

不正解です。
役員の相互就任関係にある先の出身者が社外役員に就任した上場会社は、コーポレートガバナンス報告書で当該社外役員が「相互就任の関係にある先の出身者」であることを開示しなければなりません。問題文の「開示する必要はないが、投資家との対話の観点からは開示する方が望ましい」は誤りです。

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2018/06/08 株式の持ち合いに代わる策(会員限定)

2018/06/30 2018年6月度チェックテスト第3問解答画面(正解)

正解です。
役員の相互就任関係にある先の出身者が社外役員に就任した上場会社は、コーポレートガバナンス報告書で当該社外役員が「相互就任の関係にある先の出身者」であることを開示しなければなりません。問題文の「開示する必要はないが、投資家との対話の観点からは開示する方が望ましい」は誤りです。

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2018/06/08 株式の持ち合いに代わる策(会員限定)

2018/06/30 2018年6月度チェックテスト第2問解答画面(正解)

正解です。
分配可能額を算定するための計算シートのチェックにあたっては、作成担当者以外の第三者が計算ロジック通りに算定されているかをチェックすることはもちろん必要ですが、通常は表計算ソフトに計算式が組み込まれている以上、当初設定した計算式が正しく、かつ、計算式がいじられていなければ、作成担当者以外の第三者が計算ロジック通りに算定されているかをチェックしても、数値の入力ミスを除き特段エラーは発見されないのが通常です。むしろ、ロジックに間違いはないか、法令改正によりロジックに変更はないのかといった視点からのチェックが欠かせません。監査役等が別の計算シートをイチから作成し、計算ロジックそのものをダブルチェックする等の仕組みづくりも重要となります(問題文は正しいです)。

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2018/05/10 違法配当を未然に防ぐことができなかった上場会社の内部統制(会員限定)

2018/06/30 2018年6月度チェックテスト第2問解答画面(不正解)

不正解です。
分配可能額を算定するための計算シートのチェックにあたっては、作成担当者以外の第三者が計算ロジック通りに算定されているかをチェックすることはもちろん必要ですが、通常は表計算ソフトに計算式が組み込まれている以上、当初設定した計算式が正しく、かつ、計算式がいじられていなければ、作成担当者以外の第三者が計算ロジック通りに算定されているかをチェックしても、数値の入力ミスを除き特段エラーは発見されないのが通常です。むしろ、ロジックに間違いはないか、法令改正によりロジックに変更はないのかといった視点からのチェックが欠かせません。監査役等が別の計算シートをイチから作成し、計算ロジックそのものをダブルチェックする等の仕組みづくりも重要となります(問題文は正しいです)。

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2018/05/10 違法配当を未然に防ぐことができなかった上場会社の内部統制(会員限定)

2018/06/30 2018年6月度チェックテスト第1問解答画面(不正解)

不正解です。
改訂後のコードに基づくコーポレートガバナンス報告書の記載要領では、問題文のとおり任意の指名委員会・報酬委員会の「委員の氏名」を記載することが例示されました(問題文は正しいです)。委員の氏名の記載により、各委員会の構成メンバー(例えば独立社外取締役の割合)、各委員の兼務状況などが明白になることが期待されます。

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2018/06/01 1/3以上の社外取選任のための取組方針は開示対象外、委員は氏名を記載(会員限定)

2018/06/30 2018年6月度チェックテスト

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【問題1】

2018年6月1日に改訂されたコーポレートガバナンス・コードに基づくコーポレートガバナンス報告書の記載要領では、任意の指名委員会・報酬委員会の「委員の氏名」を記載することが例示された。


正しい
間違い
【問題2】

分配可能額を算定するための計算シートのチェックにあたっては、作成担当者以外の第三者が計算式のロジック通りに算定されているかをチェックするだけでは不十分である。


正しい
間違い
【問題3】

役員の相互就任関係にある先の出身者が社外役員に就任した上場会社は、コーポレートガバナンス報告書で当該社外役員が「相互就任の関係にある先の出身者」であることを開示する必要はないが、投資家との対話の観点からは開示する方が望ましい。


正しい
間違い
【問題4】

欧州では、かねてから1人の女性が複数の会社の社外取締役を兼任する「黄金のスカート(golden skirt)」現象が問題視されている。


正しい
間違い
【問題5】

我が国の上場会社のうち、株主総会招集通知において選任予定の「社外」役員の「能力」(法務・リスク管理、人事・人材開発、財務・会計・資本政策、監査、企業経営・経営戦略、研究開発、環境、社会、内部統制・ガバナンスなど)を開示する会社はあっても、社長など「社内」役員の「能力」を開示する会社はない。


正しい
間違い
【問題6】

政策保有株式を持ち合いしている企業は、改訂コーポレートガバナンス・コードに対する自社の取り組みのみならず、持ち合い先の開示にも留意しなければならない。


正しい
間違い
【問題7】

リースは借手の固定資産税負担が免除されるため、借手にとっては固定資産税の分だけコストを圧縮できるメリットがある。


正しい
間違い
【問題8】

政府は、上場企業のガバナンスを「守り」から「攻め」へ、さらには「グループ」にまで広げるよう政策を展開している。


正しい
間違い
【問題9】

金融審議会ディスクロージャーワーキング・グループは、四半期開示はショートターミズムを助長するため、中長期的な対話においては不要であると結論付ける報告書を公表した。


正しい
間違い
【問題10】

金融審議会ディスクロージャーワーキング・グループが2018年6月28日に公表した報告書は、上場企業に有価証券報告書の【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】において、「取締役・経営陣が企業の目的と経営戦略、ビジネスモデルについて積極的に自らコミットしてその見解を示すこと」「投資家が適切に理解することができるよう経営戦略の実施状況や今後の課題もしっかりと示しながら、MD&AやKPI、リスク情報とも関連付けて、より具体的で充実した説明をすること」を求めている。


正しい
間違い

2018/06/30 2018年6月度チェックテスト第1問解答画面(正解)

正解です。
改訂後のコードに基づくコーポレートガバナンス報告書の記載要領では、問題文のとおり任意の指名委員会・報酬委員会の「委員の氏名」を記載することが例示されました(問題文は正しいです)。委員の氏名の記載により、各委員会の構成メンバー(例えば独立社外取締役の割合)、各委員の兼務状況などが明白になることが期待されます。

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2018/06/01 1/3以上の社外取選任のための取組方針は開示対象外、委員は氏名を記載(会員限定)

2018/06/30 【2018年5月の課題】改訂コーポレートガバナンス・コードへの対応:解答(会員限定)

まずは「対応時期」と「対応のレベル感」を決める

東証は2018年3月30日付で「フォローアップ会議の提言を踏まえたコーポレートガバナンス・コードの改訂について」を公表のうえ、パブリックコメントを実施(~4月29日)、6月1日にパブリックコメントに対する回答を示すとともに、改訂コーポレートガバナンス・コード(以下、CGコード)の運用を開始しました。内容はフォローアップ会議が3月13日付で公表していたものとほぼ同一となっています(第3章 適切な情報開示と透明性の確保」の【基本原則3】の「考え方」の中の文章にESG等に関する記述が追加されたのみ。2018年5月30日のニュース「改訂CGコード、パブコメ後の修正点は?」参照)。

今回の改訂を受けて、上場会社各社は改訂CGコードに基づくコーポレートガバナンス報告書(以下、CG報告書)を2018年12月末日までに提出しなければなりません。2015年6月のCGコード導入時には、3月決算会社以外は「1年以内に開催される株主総会」の後にCGコードに基づくCG報告書を提出すればよかったのですが、今回の改訂では、決算期に関わらず一律「2018年12月末日まで」の提出が求められます。

既に改訂CGコードに対応した上場会社も出て来ていますが(2018年6月13日のニュース「Jフロント・リテイリングが改訂CGコード原則1-4をコンプライ」、2018年6月18日のニュース「補充原則1-4①、取引先の開示内容をチェックする必要」参照)、大部分の上場会社はこれから各改訂CGコードに対する自社の対応方針を詰めることになると思われます。CGコードへの対応にあたりまず意思決定すべきは、対応時期と対応のレベル感です。例えば3月期決算会社の場合、①6月株主総会を踏まえて提出するCG報告書で対応するのか、②今回改訂された14の各原則への対応のレベル感、を早急に検討する必要があります。これらは対応に要する負担感や自社が何を重視するのか(“ガバナンス優良企業”としてのレピュテーション、対応のスピード・・・etc.)によって自ずと決まってくるでしょう(表1参照)。

表1 「自社が重視するもの」に応じた対応(開示)時期と対応レベルのマトリックス
  対応時期
6月総会を踏まえて開示 12月末までに開示
対応のレベル感 改訂された14原則全てについて対応 “ガバナンス優良企業”というレピュテーションを重視 腰を据えて全ての改訂原則にじっくり取り組むことを重視
「開示すべき原則」とエクスプレインする原則だけ抽出して対応 負担を抑えつつスピード感を持った対応を重視 最低限の内容で無理のない時期に対応することを重視

なお、3月決算会社が12月末までに開示することを決めた場合、6月株主総会後に提出するCG報告書に「改訂された原則には対応しておりません」といった記載をしておくことが望まれます(2018年5月8日のニュース「CGコード改訂前後のCG報告書、読み手の混乱を避けるための工夫」参照)。

改訂CGコードの全体像と“ミニマムな対応”

一口に改訂CGコードと言っても、対応の負担感は各改訂原則によって異なります。負担感に大きく影響するのが「開示」が求められるのかどうかという点です。

今回新たに開示が求められることとなったのは、新設されたものでは原則2-6(企業年金のアセットオーナーとしての機能発揮)、改訂されたものでは原則1-4(政策保有株式)と原則3-1(情報開示の充実)の3つにとどまります。一方、これまで「少なくとも3分の1以上の独立社外取締役を選任することが必要と考える上場会社は、・・・そのための取組み方針」の開示が求められていた原則4-8(独立社外取締役の有効な活用)は、十分な人数の独立社外取締役の選任が強く推奨されたことにと伴い、開示項目から外れています(CGコードの改訂に伴う開示項目の追加・廃止については2018年6月1日のニュース「1/3以上の社外取選任のための取組方針は開示対象外、委員は氏名を記載」参照)。

補充原則4-10①(任意の指名/報酬委員会の設置)では、任意の指名/報酬委員会の設置が“例示”ではなくなる一方(「例えば」という文言が削除)、「独立した」との要件が追加されています。したがって、独立した任意の指名/報酬委員会を設置していない上場会社は、本原則についてエクスプレインする必要があります(2018年4月5日のニュース『任意の諮問委員会、設置しなければ「エクスプレイン」必要に』、2018年5月29日のニュース『改訂CGコードが意図する「独立した」委員会』参照)。

以上を踏まえると、上記表1で示した『「開示すべき原則」とエクスプレインする原則だけ抽出して対応』を選択する場合においては、開示が求められる原則1-4、2-6、3-1に加えて、独立した任意の指名/報酬委員会を設置の有無が外形的に見えやすい補充原則4-10①の4つの原則について「コンプライorエクスプレイン」を検討することが“ミニマム”な対応と言えそうです。

表2 各改訂原則の改訂内容・開示内容の概要
コード番号 コードのタイトル(補充原則については、内容を踏まえ当フォーラムが作成) 改訂or新設 開示
※有:○
※今回の改訂により開示対象ではなくなったもの:×
開示内容or改訂内容
原則1-4 政策保有株式 改訂 従来から開示が求められていた「政策保有に関する方針」の具体例として「政策保有株式の縮減に関する方針・考え方など」示したほか、個別の政策保有株式について、保有の適否を検証するとともに「検証の内容」を開示することを求めた。
補充原則1-4① 政策保有株式の売却妨げの防止 新設   取引縮減を示唆することなどにより、政策保有されている自社の株式の売却を妨げるべきでないとした。
補充原則1-4② 政策保有株主との取引の検証 新設   政策保有株主との間で、取引の経済合理性を十分に検証しないまま取引を継続するべきでないとした。
原則2-6 企業年金のアセットオーナーとしての機能発揮 新設 運用に当たる適切な資質を持った人材の計画的な登用・配置などの人事面や運営面における取組みの内容を開示すべきとした。
原則3-1 情報開示の充実 改訂 経営陣幹部の「解任」に関する方針・手続き・説明も開示対象とした。
補充原則3-1① 付加価値の高い開示の推奨 改訂   本原則の対象には「法令に基づく開示」が含まれることを明記した。
補充原則4-1③ 取締役会によるCEO等の後継者の計画の適切な監督 改訂   取締役会が計画の策定・運用に主体的に関与することや、後継者候補の育成に十分な時間と資源をかけるべき旨を追加した。
補充原則4-2① 経営陣の報酬を決定する際のスタンス 改訂   取締役会に対し、客観性・透明性ある手続による報酬制度の設計、報酬額の決定を求めた。
補充原則4-3② 客観性・適時性・透明性あるCEOの「選任」手続 新設   客観性・適時性・透明性ある手続に加え、「十分な時間と資源」をかけて「資質を備えた」CEOを選任すべきとした。
補充原則4-3③ 客観性・適時性・透明性あるCEOの「解任」手続 新設   「会社の業績等の適切な評価を踏まえ、CEOがその機能を十分発揮していないと認められる場合」にCEOを解任する客観性・適時性・透明性ある手続を確立すべきとした。
原則4-8 独立社外取締役の有効な活用 改訂 × 「少なくとも3分の1以上の独立社外取締役を選任することが必要と考える上場会社は、・・・そのための取組み方針」の開示を不要とした。
補充原則4-10① 任意の指名/報酬委員会の設置 改訂   「独立した」任意の指名/報酬委員会の設置を求めた。
原則4-11 取締役会・監査役会の実効性確保のための前提条件 改訂   多様性に「ジェンダー」と「国際性」を追加するとともに、監査役について「適切な経験・能力及び必要な財務・会計・法務に関する知識を有する者が選任されるべき」との文言を追加した。
原則5-2 経営戦略や経営計画の策定・公表 改訂   自社の資本コストを的確に把握することを求めるとともに、「経営資源の配分等」の具体例として、事業ポートフォリオの見直し、設備投資・研究開発投資・人材投資等を挙げた。

以下では、旧原則と改訂原則を対照表で示したうえで、改訂原則のポイントを解説するとともに、パブリックコメントに対する東証の回答から目立った記述をピックアップします。また、「コンプライ&エクスプレイン」を標榜し全ての改訂原則について開示を行ったJ.フロントリテイリング、開示が求められる3つの改訂原則については全て対応したアサヒグループホールディングスの開示事例を中心に、改訂原則1-4(政策保有株式)についてはカゴメおよび三菱商事の開示事例(カゴメの開示事例は新設された補充原則1-4①(政策保有株式の売却妨げの防止)でも紹介)、新設された原則2-6(企業年金のアセットオーナーとしての機能発揮)については三菱商事、SOMPOホールディングス、安川電機、本多通信工業の開示事例を紹介するほか、改訂CGコード施行前の開示事例の中から改訂原則に対応するうえで参考になりそうな開示事例も紹介します。

各改訂原則別の「改訂のポイント」「パブコメへの回答」「開示事例」
原則1-4 政策保有株式① ※「縮減に関する方針」や「検証の内容」の開示に関する部分
旧原則 改訂原則
上場会社がいわゆる政策保有株式として上場株式を保有する場合には、政策保有に関する方針を開示すべきである。また、毎年、取締役会で主要な政策保有についてそのリターンとリスクなどを踏まえた中長期的な経済合理性や将来の見通しを検証し、これを反映した保有のねらい・合理性について具体的な説明を行うべきである。 上場会社が政策保有株式として上場株式を保有する場合には、政策保有株式の縮減に関する方針・考え方など、政策保有に関する方針を開示すべきである。また、毎年、取締役会で、個別の政策保有株式について、保有目的が適切か、保有に伴う便益やリスクが資本コストに見合っているか等を具体的に精査し、保有の適否を検証するとともに、そうした検証の内容について開示すべきである。

【改訂のポイント】
「政策保有に関する方針」の具体的内容として、「縮減に関する方針・考え方」が例示された。これは、改訂原則が政策保有株式を積極的に減らすよう求めていることを示している。

また、取締役会は、「個別の」政策保有株式を対象に、「目的が適切か」「資本コストに見合っているか」などを「具体的に精査」し、保有の適否を検証したうえで、「検証の内容を開示」すべきとされた。この点は新たな開示事項となる。なお、「個別の政策保有株式」それぞれの検証結果まで開示する必要はない(下記の「パブコメに対する回答」および2018年5月23日のニュース『政策保有株式、「精査・検証結果」を個別企業ごとに開示する必要は?』参照)。

【パブコメに対する回答】
本改訂により上場会社は必ずしも政策保有株式の一律の縮減が求められるものではないが、検証の結果として縮減されることが期待されている(58ページ参照)。この検証は、個別銘柄について「取締役会」自らが実際に行うことが求められる(取締役会が行わない場合はエクスプレイン。53ページ参照)。

開示すべき検証結果としては、検証における着眼点や基準、検証において行われた議論、得られた結論などがある(54ページ参照)。ただし、必ずしも「個別の銘柄」ごとに保有の適否を含む検証の結果を開示することを求めるものではない(54ページ参照)。

【開示事例】
企業名 開示内容
アサヒグループホールディングス 当社は、『中期経営方針』において、「持続的成長を目指した“企業価値向上経営”の深化」のための重点課題の一つとして設定した、「資本コストを踏まえた資産・資本効率の向上」に鑑みて、当社の持続的な成長と中長期的な企業価値の向上に資すると認められない株式保有は行わないこととします。
当社は、取締役会で毎年、政策保有株式について検証を行ないます。当社の持続的な成長と中期的な企業価値の向上に資すると認められない株式がある場合は、その検証の結果を開示するとともに、株主として相手先企業との必要十分な対話を行ないます。対話の実施によっても、改善が認められない株式については、適宜・適切に売却します。これらの取組みにより、政策保有株式の縮減が十分に進行していくと考えます。 
J.フロントリテイリング 政策保有株式に関する方針については、方針書「第2章 株主との関係 3政策保有株式」をご覧ください。
上記方針を踏まえ、2017年8月の取締役会において、グループにおける個別の銘柄の保有目的や配当収益その他の経済合理性について定性面と定量面から、また保有を継続することに係るリスクについてそれぞれ検証することで政策保有株の削減を進め、2017年度においては12銘柄を全数売却、2銘柄を一部売却(売却金額約13.2億円)しました。その結果、2018年2月末時点で当社グループが保有する政策保有株式は48銘柄(財政状態計算書計上額63億円)となりました。
カゴメ (1)政策保有に関する方針
当社は、持続的な成長と社会的価値、経済的価値を高めるため、業務提携、原材料の安定調達など経営戦略の一環として、また、取引先との良好な関係を構築し、事業の円滑な推進を図るために必要と判断する企業の株式を保有しています。当社は、直近事業年度末の状況に照らし、保有の意義が希薄と考えられる政策保有株式については、できる限り速やかに処分・縮減していく基本方針のもと、毎年、取締役会で個別の政策保有株式について、政策保有の意義、経済合理性等を検証し、保有継続の可否および保有株式数を見直します。なお、経済合理性の検証の際は、直近事業年度末における各政策保有株式の金額を基準として、これに対する、発行会社が同事業年度において当社利益に寄与した金額の割合を算出し、その割合が当社の単体5年平均ROAの概ね2倍を下回る場合には、売却検討対象とします。また、簿価から30%以上時価下落した銘柄及び、当社との年間取引高が1億円未満である銘柄についても、売却検討対象とします。その上で、得意先企業のうちこれらの基準のいずれかに抵触した銘柄については、毎年、取締役会で売却の是否に関する審議を行い、売却する銘柄を決定します。見直しの結果、2018年度に一部保有株式を売却いたしました。
三菱商事 三菱商事では、事業機会の創出や取引・協業関係の構築・維持・強化のための手段の一つとして、関係会社以外の株式・持分を「一般投資株式」(注1)として取得・保有する場合があり、いわゆる政策保有株式はこの「一般投資株式」に含まれます。
(注1)「一般投資株式」には上場株式、非上場株式の両方が含まれ、またその全てが連結貸借対照表の「その他の投資」に含まれます。
「一般投資株式」を取得する際には、社内規程に基づき、取得意義や経済合理性の観点を踏まえ取得是非を判断すると共に、取得後は定期的に保有方針を見直しています。また、「一般投資株式」のうち主要な上場株式については、全社経営の観点でも保有意義の確認を行い、後述のとおり、取締役会で定期的にその検証を行っています。上記の枠組みに加え、成長投資への積極的な入替方針もあり、「一般投資株式」のうちの上場株式を2017年度中に約0.1兆円(連結・時価ベース)売却しています。
[取締役会での検証内容]
連結ベースで保有する「一般投資株式」のうち、主要な上場株式銘柄(注2)において、個別銘柄毎に経済合理性、保有意義の観点から保有方針を見直した結果について、毎年、取締役会で検証しています。
(注2) 検証対象は、2018年3月末基準の保有時価合計約0.7兆円(取得価額約0.3兆円)で、当社が連結ベースで保有する上場株式の時価合計の約8割を占めています。
2018年3月末での検証結果は以下のとおりです。
・経済合理性は、個別銘柄毎に、取得価額に対する当社の目標資本コストに比べ、配当金・関連取引利益などの関連収益が上回っているか否かを検証していますが、検証対象の大宗が資本コストよりも関連収益が上回っていることが確認されました。
・上記に加え保有意義についても確認し、このうち継続して保有するとした銘柄については、投資先との取引関係の維持・強化や共同事業を推進することなどを保有目的としていることが確認されました。
・併せて、所期の目的や保有意義が希薄化してきたことなどから、今後、保有意義を見極めたうえで売却を検討していく銘柄も確認されました。

アサヒグループホールディングスは改訂原則1-4を「エクスプレイン」している。上記のとおり、同社は「当社の持続的な成長と中期的な企業価値の向上に資すると認められない株式がある場合は、その検証の結果を開示する」としているものの、現時点ではその開示の準備が整っていないためとみられる。

一方、J.フロントリテイリングは同原則をコンプライしている。上記【パブコメに対する回答】では、開示すべき検証結果の一つとして「得られた結論」が例示されているが、同社が開示している「2017年度においては12銘柄を全数売却、2銘柄を一部売却(売却金額約13.2億円)しました」という部分はまさにこの「得られた結論」に該当する。なお、J.フロントリテイリングの開示にある「方針書」とは、CG報告書の末尾に付された「コーポレートガバナンス方針書」を指している。政策保有株式の保有合理性の検証については、「第2章 株主との関係 3政策保有株式」の中で下記のように記載している。

(2)政策保有株式の保有合理性の検証
当社は、当社グループが保有する政策保有株式の保有合理性について、お客様企業・お取引先様企業との円滑かつ良好な取引関係の維持・サプライチェーンの確保など事業戦略に係る定性的な観点のほか、配当収益その他の経済合理性等の定量的な観点も踏まえて、毎年取締役会において検証します。

カゴメは、①直近事業年度末における各政策保有株式の金額を基準として、発行会社が同事業年度において当社利益に寄与した金額の割合を算出し、その割合が当社の単体5年平均ROAの概ね2倍を下回る場合には、売却検討対象とする、②簿価から30%以上時価下落した銘柄及び、当社との年間取引高が1億円未満である銘柄についても売却検討対象とする――など、経済合理性の検証のための詳細な基準を示しており、既に2018年度に一部保有株式を売却したという。J.フロントリテイリング同様、質の高い「コンプライ」と言えよう。

カゴメ同様、三菱商事も個別銘柄毎に「取得価額に対する当社の目標資本コストに比べ、配当金・関連取引利益などの関連収益が上回っているか否か」という観点から「経済合理性」を検証しているが、「検証対象の大宗が資本コストよりも関連収益が上回っていることが確認された」としている。ただし、経済合理性に加え「保有意義」についても確認したところ、保有意義等が希薄化してきたことなどから、「今後、保有意義を見極めたうえで売却を検討していく銘柄」も確認されたという。「検証対象の大宗が資本コストよりも関連収益が上回っている」「“今後”、保有意義を見極めたうえで売却を検討していく」といった表現からは、一見同社が政策保有株式の早期売却にはあまり積極的ではないようにも見えるが、2017年度中には政策保有株式が含まれる「一般投資株式」を約0.1兆円(連結・時価ベース)売却したという。いずれにせよ、改訂原則が求める「検証の内容」が開示されており、十分「コンプライ」に値しよう。

このほか、改訂CGコード施行前の開示では、「政策保有先の取引収益合計が資本コストを上回っており、個別には、約○割が基準を満たしている」といった開示例も見受けられた。これも「検証の内容」の開示に該当すると言えそうだ。

原則1-4 政策保有② ※「議決権の行使」に関する部分
旧原則 改訂原則
上場会社は、政策保有株式に係る議決権の行使について、適切な対応を確保するための基準を策定・開示べきである。 上場会社は、政策保有株式に係る議決権の行使について、適切な対応を確保するための具体的な基準を策定・開示し、その基準に沿った対応を行うべきである。

【改訂のポイント】
改訂原則では、「具体的な」議決権行使基準を策定・開示することと、その「基準に沿った対応」の実施が求められている。問題はどこまで「具体的」である必要があるのかという点だが、この点について、改訂CGコードと同時に金融庁から公表された「投資家と企業の対話ガイドライン」は「適切な基準」としか言っていない(4ページの4-1参照)。機関投資家が策定・公表しているような、いわゆる議決権行使ガイドラインに匹敵するほど詳しいものでまでは要求されていないと考えてよさそうだが、改訂原則に「具体的な」という文言が入った以上、一定の具体性を持った基準を策定すべきであり、少なくとも「総合的に勘案」といった表現でお茶を濁すことは通用しないだろう。

【パブコメに対する回答】
議決権行使の基準の内容の明確性が乏しい場合があることを問題視し、内容をより充実させた上で開示を求めるべきとの指摘があることを紹介している(60ページ参照)。

【開示事例】
企業名 開示内容
アサヒグループホールディングス 保有株式の議決権の行使については、対象となる議案につき、当社の持続的な成長と中長期的な企業価値の向上に資するものであるか否か、投資先の株主共同の利益に資するものであるか否かなどを総合的に判断し、適切に行使しています。これらの取組みにより、保有株式の議決権の行使について、適切な対応を確保することができると考えます。
J.フロントリテイリング 当社は当事業年度から、政策保有株式に係る議決権の行使の基となる指針を設定し、グループ全体としての考え方に沿った対応を行っています。
カゴメ 政策保有株式の議決権の行使については、適切なコーポレート・ガバナンス体制の強化や株主価値の向上に資するものか否か、また、当社への影響等の観点を踏まえ、総合的に賛否を判断し、適切に行使します。必要に応じて、提案の内容等について発行会社と対話していきます。
三菱商事 三菱商事では、事業機会の創出や取引・協業関係の構築・維持・強化を図るとともに、三菱商事及び投資先企業の中長期的な価値向上の観点から、投資先企業との様々なチャネルを通じた対話・コミュニケーションを重視しており、議決権行使もその重要な手段の一つと考えています。このため、投資先企業に対する議決権の行使にあたっては、剰余金処分や取締役・監査役の選任、役員報酬改定などの各議案の賛否を判断する際の検討事項等について定めた社内規程に基づき各管理担当部局が各社の経営状況(業績、資本効率等)等を定量・定性の両面から検討の上、各議案について適切に議決権を行使することとしています。

機関投資家並みに具体的な議決権行使基準の伴った開示こそ見当たらないが、各社工夫の凝らされた開示内容と言える。なお、J.フロントリテイリングの開示で言及している「指針」(コーポレートガバナンス方針書)では、政策保有株式の議決権行使について、下記のような方針を示している。

(3)政策保有株式に係る議決権行使方針
政策保有株式に係る議決権の行使に際しては、保有先の持続的成長・中長期的な企業価値の向上に寄与するものであるかどうか、当社グループの持続的成長・中長期的な企業価値の向上に寄与するものであるかどうかの両観点から判断します。特に、コーポレートガバナンス体制に係る議案(役員選任)、株主還元に係る議案(剰余金処分)、株主価値に影響を与える議案(買収防衛策導入)など、コーポレートガバナンス強化の上で重要度が高いと考える議案については、議決権行使の判断となる指針を定め、当社グループ全体として、当指針に沿った対応を行います。なお、必要な場合にあっては、議決権の行使に際して、保有先企業との対話を実施します。

ちなみに、改訂CGコードの適用開始前の開示では、議決権行使基準を開示している事例は見当たらなかったが、重要視する議案を挙げている開示例は散見された。例えば以下のようなものが典型である。「重要度が高いと考える議案」を例示している上記J.フロントリテイリングの「政策保有株式に係る議決権行使方針」とも共通するものがある。

(1)重要な資産の譲渡
(2)合併または完全子会社等による株式の異動
(3)債務超過等、業績不振企業が実施する役員退職慰労金の支給
(4)有利発行による第三者割当増資
(5)敵対的買収防衛策の導入
(6)一定期間連続での業績赤字
(7)コーポレートガバナンスの整備状況

有利発行 : 例えば1株当たりの時価が千円のところ5百円で新株を発行するというように、新株や新株予約権の引受人にとって“有利な”価格(無償や時価未満)で新株を発行することをいう。

また、「反対する可能性がある場合」として、以下のような状況を挙げる開示例も少なからずあった。
・企業の不祥事および反社会的行為が発生している場合
・配当金が内部留保に対して著しく低い場合
・議案の内容が、企業価値向上、コーポレートガバナンス向上に反すると思われる場合

補充原則1-4① 政策保有株式の売却妨げの防止
旧原則 改訂原則
(新設) 上場会社は、自社の株式を政策保有株式として保有している会社(政策保有株主)からその株式の売却等の意向が示された場合には、取引の縮減を示唆することなどにより、売却等を妨げるべきではない。

【改訂のポイント】
自社が保有している他社株式のことではなく、自社株式を政策保有している他社が自社株式を売却することを妨げるべきではない、との内容である。「売却することを妨げる」方法の具体例として、「取引の縮減を示唆すること」が示されている。本原則は、投資家が企業に対して「政策投資を解消せよ」と求めた場合、企業が「相手先が了解してくれないので難しい」などと政策保有株式の売却に後ろ向きな返答をすることを封じようとするものである。

【パブコメに対する回答】
必ずしも資本提携などの合意や契約を禁止するものではなく、あくまでも売却等を妨げるような対応をとるべきではないことを明確化した、と説明されている(61~62ページ参照)。

【開示事例】
企業名 開示内容
J.フロントリテイリング 当社の株式を保有する政策保有株主から売却の意向が示された場合、取引の縮減を示唆する等の売却を妨げることは一切行っておらず、適切に売却等に対応しています。
カゴメ 当社は、当社の株式を政策保有株式として保有している会社(政策保有株主)から当該株式の売却等の意向が示された場合には、無条件でこれを承諾します。また、その場合において、当社が当該政策保有株主である会社の株式を政策保有株式として保有しているときは、できる限り速やかにこれを処分します。

補充原則1-4①は開示を求める原則ではないが、今後、J.フロントリテイリングやカゴメのような開示を行う企業は少なからず出てくることが予想される。ここまで明確に書きにくいという場合には、「相互に必要な対話を尽くすことで、双方における政策保有の縮減につなげている」といった方針を示すことも考えられるだろう。

参考記事:2018年6月18日のニュース「補充原則1-4①、取引先の開示内容をチェックする必要

補充原則1-4② 政策保有株主との取引の検証
旧原則 改訂原則
(新設) 上場会社は、政策保有株主との間で、取引の経済合理性を十分に検証しないまま取引を継続するなど、会社や株主共同の利益を害するような取引を行うべきではない。

【改訂のポイント】
政策保有関係のある他社との取引は、会社や株主の利益を害するものであってはならない、とする新たな原則。本原則の趣旨が守られているかどうかは、取締役会が毎年検証を行って確認することが考えられる。

【パブコメに対する回答】
取引の経済合理性の検証にあたっては、政策保有株主でない他の取引先との取引条件などと比較して、なぜ政策保有株主である取引先と行なっている取引が合理的と認められるのか等の観点が重要としている(62~63ページ)。

【開示事例】
補充原則1-4②は開示が求められる原則ではないが、J.フロントリテイリングは上記原則1-4 (政策保有株式)と本原則の開示を共通化している(一つの開示にしている)。

改訂CGコードの適用開始前の開示例を見ると、取引の経済合理性の検証に言及した事例として、「配当や取引関係の維持・強化等によって得られる利益とリスク・資本コスト等を総合的に勘案する」というもの、「リスクとリターンを踏まえた経済合理性と事業の戦略、取引関係の維持・強化によって得られる効果等を検証する」というものなどがあった。いずれにせよ、取締役会で毎年検証を実施することと、企業価値向上の観点から保有および取引の可否を判断することが重要だと言える。

原則2-6 企業年金のアセットオーナーとしての機能発揮
旧原則 改訂原則
(新設) 上場会社は、企業年金の積立金の運用が、従業員の安定的な資産形成に加えて自らの財政状態にも影響を与えることを踏まえ、企業年金が運用(運用機関に対するモニタリングなどのスチュワードシップ活動を含む)の専門性を高めてアセットオーナーとして期待される機能を発揮できるよう、運用に当たる適切な資質を持った人材の計画的な登用・配置などの人事面や運営面における取組みを行うとともに、そうした取組みの内容を開示すべきである。
その際、上場会社は、企業年金の受益者と会社との間に生じ得る利益相反が適切に管理されるようにすべきである。

【改訂のポイント】
企業年金がアセットオーナーとしての機能を発揮できるよう、母体企業として「人事面や運用面」に取り組むことを求める新たな原則。コーポレートガバナンスそのものに関する内容とは言い難く、むしろスチュワードシップの問題であるという意味で、相当に“異色”な原則と言える。改訂原則は「取り組みの内容」について「開示すべき」としていることから、CG報告書の開示事項としての対応が必要となる。

もっとも、母体企業による企業年金への干渉(例えば、母体企業の取引先に企業年金の運用委託機関が投資しているケースにおいて、取引先の議案に反対の意向を示している運用委託先を解約するよう指示するケース)が問題視され、これを踏まえて本原則の後段に「その際、上場会社は、企業年金の受益者と会社との間に生じ得る利益相反が適切に管理されるようにすべきである。」との一文が盛り込まれる中(2018年3月15日のニュース「続報・CGコード改訂 企業年金への関与を求める原則に込められた“警告”」参照)、積極的に取り組む旨を強調し過ぎると、企業年金の独立性に問題が呈される恐れがないとも言えない。その意味では、開示は「人事/運用面で適切に取組む」といった趣旨の記述で足りるとも言えそうだ。なお、「投資家と企業の対話ガイドライン」では外部の専門家の採用を例示している(4ページ 5-1参照)。

【パブコメに対する回答】
本原則における「企業年金」とは基本的に確定給付年金および厚生年金基金を想定しているものの(年金の種類についてはケーススタディ「【人事・労務】退職金を廃止・減額したい」の「廃止の対象となる退職金は?」の図参照)、確定拠出年金もその運用が従業員の資産形成に影響を与えることは確定給付年金と同様であるため、運用機関や運用商品の選定、従業員に対する資産運用に関する教育の実施などの場面で適切な取り組みが期待されるとしている(69~70ページ参照)。

【開示事例】
企業名 開示内容
アサヒグループホールディングス 当社グループは、受益者への年金給付を将来に亘り確実に行うため、リスクを勘案しつつ、必要とされる総合収益を長期的に確保することを目的に運用しており、運用機関から意見を聴取した上で、中長期的観点から政策的資産構成割合を策定しています。当社グループは、年金資産の運用状況を定期的にモニタリングし、必要に応じて策定済みの政策的資産構成割合を見直していく。また、運用機関に対しては、運用実績などの定量面のみならず、投資方針、運用プロセス、コンプライアンス等定性評価を加えた総合的な評価を行う。当社財務部門が各社の運用状況を確認し、各社に助言・提案する体制としています。(原文ママ)
J.フロントリテイリング グループの主要事業会社である大丸松坂屋百貨店の年金制度は、将来の給付原資を安定的に確保するという資産運用の目的から、長期的に運用収益を確保すべく、適切に分散した資産配分による運用を行っています。運用委託機関及びファンドの選定にあたっては、「資産運用方針」を定め、「経営内容及び社会的評価」をはじめ「運用の経験と実績」「法令順守体制」等について、定評のある評価機関の評価に基づき厳正な審査を行っています。また、当該機関が行う議決権行使等についても、適正な取組みとなっているかモニタリングをします。担当者の人選は、慎重に行っており、特に運用執行理事の交代に当たっては、就任時には企業年金連合会が主催する「新任運用執行理事研修」や年金業務幹事金融機関の就任時研修、に加え、投資機関各社が実施する各種セミナーに出席させるなどして必要な業務知識を習得させています。
安川電機 当社は、安川電機企業年金基金を通じて、以下のとおり企業年金の積立金の運用を行っています。
・企業年金基金に対して、会社からは企業年金の運用に適切な資質をもった人材を代議員として選出しています。
・企業年金の運用に関して、受益者の利益の最大化および利益相反取引の適切な管理を目的に、資産運用委員会での意見を踏まえて、代議員会で決定しています。
・そのほか、運用コンサルタントと連繋し、適切な運用を図るとともに、企業年金の運用に携わる人材の専門性を高めています。
本多通信工業 確定拠出型企業年金制度であり、企業年金の積立金の運用はなく財政状況への影響はないため、対象外。
三菱商事 年金運用体制として、三菱商事企業年金基金の職員を兼務する形で三菱商事財務部内に年金運用担当を配置しており、財務・金融部局での市場や投資の経験を有する人材を活用して、運用を行う体制としています。また、積立金の運用を安全・効率的に行うことをはじめとした運用の基本方針・運用指針を作成しており、それらを運用受託機関に対して交付した上、運用受託機関のモニタリングを随時行っています。なお、同基金では、自己又は基金以外の第三者の利益を図る目的をもって、積立金の管理及び運用の適正を害する行為をしてはならない旨、規約で定めている他、業務を執行する理事を4名、同基金の業務を監査する監事を2名選任し、任期を定めて一定周期でローテーションを実施しています。
SOMPOホールディングス 損害保険ジャパン日本興亜(株)や損保ジャパン日本興亜ひまわり生命保険(株)をはじめとする当社の主要国内子会社では、企業会計における将来リスクの軽減および経済合理性ならびに従業員一人ひとりのライフプランに応じた自由な資産形成を支援するため、確定拠出型年金制度を採用しています。当社の子会社である損保ジャパン日本興亜DC証券(株)を、その高い専門性から、運営管理機関として採用し、制度導入各社の従業員に対し、eラーニングを活用した加入者教育の徹底やマッチング拠出制度の利用推奨等の働きかけを行っています。

原則2-6については、改訂CGコード施行後、早々に対応した企業が多い。
原則2-6では「運用に当たる適切な資質を持った人材の計画的な登用・配置などの人事面や運営面における取組みを行うとともに、そうした取組みの内容を開示」することを求めているが、同原則通りの開示を行ったのが安川電機だ。同社は、「会社からは企業年金の運用に適切な資質をもった人材を代議員として選出」「企業年金の運用に関して、受益者の利益の最大化および利益相反取引の適切な管理を目的に、資産運用委員会での意見を踏まえて、代議員会で決定」「運用コンサルタントと連繋し、適切な運用を図る」と、人事・運営面について的確に方針を示している。アサヒグループホールディングスは「財務部門が各社の運用状況を確認」、三菱商事は「財務部内に年金運用担当を配置しており、財務・金融部局での市場や投資の経験を有する人材を活用して、運用を行う体制としています」とするなど、自前の人材が運営に当たっていることがうかがえる。

確定拠出年金を採用する本多通信工業、SOMPOホールディングスでは開示の濃度が異なる。本多通信工業では、上記【パブコメに対する回答】にあるように、原則2-6における「企業年金」とは基本的に確定給付年金および厚生年金基金を想定していることを踏まえ「開示対象外」とした一方、SOMPOホールディングスでは、eラーニングを活用した加入者教育の徹底等について言及している。この点、【パブコメに対する回答】では、「確定拠出年金もその運用が従業員の資産形成に影響を与えることは確定給付年金と同様であるため、運用機関や運用商品の選定、従業員に対する資産運用に関する教育の実施などの場面で適切な取り組みが期待される」としていることを踏まえると、確定拠出年金を採用する企業も、SOMPOホールディングスのように、何らかの取り組みを行っている場合にはそれを開示した方がベターと言える。もっとも、本多通信工業のように「対象外」とする開示でも「コンプライ」とはなる。

このほか、原則2-6に関する開示において参考になるのが、スチュワードシップ・コードを受け入れている一部の企業年金基金が開示している対応方針だ。これらの企業年金が示している「委任するに必要とされる能力を高めるよう、誠意尽力いたします」「運用受託機関のスチュワードシップ活動を評価する実力を備えるよう努めます」といった対応方針をベースに、その独立性を損なわない範囲で、母体企業が後押しするという体裁をとるのが開示の基本スタンスとなろう。

原則3-1 情報開示の充実
旧原則 改訂原則
(ⅲ)取締役会が経営陣幹部の選任と取締役・監査役候補の指名を行うに当たっての方針と手続
(ⅳ)取締役会が上記(ⅲ)を踏まえて経営陣幹部の選任と取締役・監査役候補の指名を行う際の、個々の選任・指名についての説明
(ⅲ)取締役会が経営陣幹部の選解任と取締役・監査役候補の指名を行うに当たっての方針と手続
(ⅳ)取締役会が上記(ⅲ)を踏まえて経営陣幹部の選解任と取締役・監査役候補の指名を行う際の、個々の選解任・指名についての説明

【改訂のポイント】
旧原則が開示を求めていた経営陣幹部の選任に関する(ⅲ)方針・手続と(ⅳ)説明について、改訂原則ではその対象を「解任」にまで広げるよう求めている。

企業にとって気になるのは、本原則は開示対象となっていることから、経営陣幹部の「解任」について具体的に明文化された基準が必要なのかという点だろう。この点、「投資家と企業の対話ガイドライン」では「客観性・適時性・透明性ある手続」を求めるにとどまっている(2ページ 3-4参照)。内部的に解任基準を定めたとしても、これを開示するのは困難と思われる。特に業績に関する明確な数値基準などを示すのは企業にとってハードルが高いだろう。このため、「取締役会で定めた解任基準に基づき、指名委員会で審議する」といった、プロセスを中心とした抽象的な開示のみを行う企業が相次ぐことも予想される。

【パブコメに対する回答】
補充原則4-3②・③(いずれも新設)において、CEOの選解任に関する客観性・適時性・透明性ある手続の確立が求められたことに伴い、本原則でこうした手続が開示すべき事項の対象になったと説明されている(18~19ページ)。

【開示事例】
企業名 開示内容
アサヒグループホールディングス 取締役会は、実効的なコーポレートガバナンスを実現し、当社の持続的な成長と中長期的な企業価値の向上に資する人物を、取締役・監査役候補者並びにCEO以下の経営陣として選任します。
取締役・監査役候補者の指名及びCEO以下の経営陣の選任及び解任は、指名委員会にて審議し、取締役会の決議により決定します。取締役・監査役候補者の指名とCEO以下の経営陣の選任及び解任についての考え方は、以下のとおりです。
・当社の取締役・監査役並びにCEO以下の経営陣として、国際性やジェンダーなどを含む多様性を確保しつつ、相応しい豊富な経験、高い見識、高度な専門性を有する人物を指名します。
・事前に指名委員会にて審議し、適切であるとの評価を得た上で、監査役については監査役会の同意を得て、それぞれ取締役候補者、監査役候補者又はCEO以下の経営陣を指名します。
・代表取締役などの業務執行取締役(CEO以下の経営陣)について、その業績につき毎年定期的に指名委員会にて審議し、取締役会にて定めた解任基準に該当するとの審議結果であった場合は、指名委員会における審議結果を取締役会にて検証の上、基準に該当する場合は、取締役候補者として指名せず、また、代表取締役・業務執行取締役(CEO以下の経営陣)としての役職を解任します。
J.フロントリテイリング 当社及び主要事業会社の取締役・執行役・執行役員の指名・選任の方針については、方針書「第4章取締役会等の役割・責務4 取締役・執行役の人事・報酬等(1)取締役・執行役の指名・選任手続、開示」をご覧ください。取締役選任・解任に関する議案については、指名委員会での決議後、株主総会において決議します。当社の代表執行役社長・執行役、主要事業会社の代表取締役・取締役・執行役員の選任・解任と職務の委嘱・解嘱については、指名委員会の審議結果を取締役会に答申し決議します。
また、3委員会の各委員長及び各委員の選定及び解職についても、指名委員会の審議結果を取締役会に答申し決議します。

本原則に対応した上場会社はごく少数にとどまっている。アサヒグループホールディングス、J.フロントリテイリングも、ともに経営陣幹部の解任については明確な基準は示さず、解任プロセスを中心とした記述にとどまっている。

改訂CGコード施行前において見られた明文化された「選任」基準の事例としては、
(1)全社的観点から物事を判断できること
(2)当会社の業務に関し専門知識を有すること
(3)経営判断能力および経営執行能力に優れていること
(4)指導力、決断力、先見性および企画力に優れていること
(5)取締役としてふさわしい人格識見を有すること
といったものがある。選任基準の裏返しとして、これらに欠格事由が生じた場合は解任を検討する、という解任基準も考えられる。また、再任時には、選任基準に加えて「取締役任期中の実績・経営への寄与等を勘案する」とした開示例もあり、これも裏返せば解任基準として活用できよう。

補充原則3-1① 付加価値の高い開示の推奨
旧原則 改訂原則
上記の情報の開示に当たって、取締役会は、ひな型的な記述や具体性を欠く記述を避け、利用者にとって付加価値の高い記載となるようにすべきである。 上記の情報の開示(法令に基づく開示を含む)に当たって、取締役会は、ひな型的な記述や具体性を欠く記述を避け、利用者にとって付加価値の高い記載となるようにすべきである。

【改訂のポイント】
CG報告書と同じく「法令に基づく開示」においても、ひな型的な記述などを避けるべきという趣旨の原則である。具体的には、有価証券報告書、株主総会招集通知が想定さている(2018年3月23日のニュース「CGコード改訂で大幅見直しの政策保有株式、開示府令も見直しへ」の最終段落参照)。企業としては、これを機会に両者の記載内容を見直し、ひな形的な記述がないか確認しておく必要がある。

【パブコメに対する回答】
なし

【開示事例】
企業名 開示内容
J.フロントリテイリング 当社の情報開示についての考え方は、方針書「第1章総則 3コーポレートガバナンスに関する基本的な考え方(3)情報開示」及び「第3章情報開示 1株主・投資家との建設的な対話(1)IR活動方針」をご覧ください。

ここでJ.フロントリテイリングが引用している方針書「第1章総則 3コーポレートガバナンスに関する基本的な考え方(3)情報開示」及び「第3章情報開示 1株主・投資家との建設的な対話(1)IR活動方針」の内容は下記のとおり。赤字部分の記述からは、「ひな型的な記述」にとどまらない積極的な開示をしようという同社の姿勢が見て取れる。

第1章総則 3コーポレートガバナンスに関する基本的な考え方 (3)情報開示
株主・投資家の皆様との建設的な対話を促進することは、当社グループの持続的成長と中長期的な企業価値の向上に資するものであると考えます。当社は、建設的な対話の前提となる適時・適切な情報開示を重視し、これらの情報開示を通じてステークホルダーの皆様との信頼関係の維持・発展に取り組んでいます。
当社は、金融商品取引法等の法令及び当社株式を上場している金融商品取引所が定める適時開示規則に従い、当社グループの重要情報を適時・適切に開示します。また、法令や適時開示規則に該当しない場合であっても、株主・投資家をはじめとするステークホルダーの皆様に有用と考えられる情報については、社会から求められる企業活動の重要な情報として認識し、当社グループについての理解をより深めていただくためにも、公平かつ迅速に適切な方法により積極的に開示します。
第3章情報開示 1株主・投資家との建設的な対話 (1)IR活動方針
当社は、「公正で信頼される企業として、広く社会への貢献を通じてグループの発展を目指します。」という基本理念のもと、株主・投資家をはじめとするステークホルダーの皆様との信頼関係を維持・発展させるため、当社に関する重要な情報を正確にわかりやすく、公平かつ適時・適切に開示することにより、経営の透明性を高めるとともに、当社についての理解を深めていただくことを目的にIR活動を推進します。
補充原則4-1③ 取締役会によるCEO等の後継者の計画の適切な監督
旧原則 改訂原則
取締役会は、会社の目指すところ(経営理念等)や具体的な経営戦略を踏まえ、最高経営責任者等の後継者計画(プランニング)について適切に監督を行うべきである。 取締役会は、会社の目指すところ(経営理念等)や具体的な経営戦略を踏まえ、最高経営責任者(CEO)等の後継者計画(プランニング)の策定・運用に主体的に関与するとともに、後継者候補の育成が十分な時間と資源をかけて計画的に行われていくよう、適切に監督を行うべきである。

【改訂のポイント】
取締役会による後継者計画の監督について、「主体的に関与」「十分な時間と資源をかけて計画的に」などの記述が追加され、表現が強められた。もっとも、後継者候補の育成は業務執行マターであるため、取締役会はあくまでもそのプロセスチェックなど文字通り監督に徹することになる。また、後継者の決定の際には任意の指名委員会を関与させることで、「適切に監督」を行っていることについて説得力も増すだろう。

【パブコメに対する回答】
後継者計画は必ずしも文書の形式で策定することは求められていないが、計画の重要な部分については文書にすることなどは、後継者計画の実効性を高める観点からは適切と考えられるものとしている(20ぺージ参照)。また、補充原則4-1③の後継者計画の対象は、「最高経営責任者(CEO)等」とされているが、会社の状況に応じて、COOなども対象に含まれ得るとし、さらに、それぞれの会社の判断の下で、後継者計画の対象を取締役会全体に広げて運用することも考えられるとしている(21ページ~22ページ参照)。

【開示事例】
企業名 開示内容
J.フロントリテイリング ・・・当社は、後継者(次期経営陣幹部)計画の策定・実施を経営戦略上の特に重要な項目として位置付けています。
後継者候補の選定に際しては、社内データをもとに第三者機関による診断を踏まえて作成した各後継候補者の評価内容について、社外取締役が過半数を占める指名委員会・報酬委員会において審議を重ねることで、選定プロセスを明確化し、透明性・客観性を確保しています。後継者の決定に際しては、取締役会は指名委員会からの答申内容に基づき、基本理念・グループビジョンの実現を見据え、監督の役割を果たします。後継者に求められる資質については、方針書記載の「JFRグループ 経営人材のあるべき姿」において、「戦略思考」「変革のリーダーシップ」「成果を出すことへの執着心」「組織開発力」「人材育成力」の5項目を役員に求められる資質として、必要な価値観・能力・行動特性を明確にしています。指名委員会でこれらを共有化することで、評価・育成指標の共有化をはかり、中立的育成・選抜に努めています。・・・なお、後継者計画は、当社を取り巻く環境や置かれた状況の変化、掲げた戦略の進捗等を勘案した内容となるよう計画的かつ継続的に指名委員会の中で議論を重ねていきます。
また、経営陣幹部については、最高経営責任者の場合と同様、指名委員会の審議を受け決定します。

方針書記載の「JFRグループ 経営人材のあるべき姿」とは下記のとおり。

【JFRグループ 経営人財のあるべき姿】
① 戦略思考
市場・顧客の変化を能動的に分析し、これを多角的に活用することで課題の本質を洞察し、中長期的視点で戦略を打ち出し目的達成に向けて先見的かつ革新的な独自解決策を考察する。
② 変革のリーダーシップ
先例や過去事例にとらわれることなく挑戦心を持って新しい取組みを実行し、リスクを恐れず、組織に健全な危機感を醸成しながら変革のステップを推進する。
③ 成果を出すことへの執着心
高い目標に対する使命感と挑戦心とを持って、達成するまで諦めず成果が出るまでやり抜く。
④ 組織開発力
組織目標の達成に向けてビジョン・戦略をメンバーに浸透させ、組織の諸要素(業務・仕組み・文化風土・人財)に働きかけて組織に内在するエネルギーや主体性を最大限に高め、成果につなげる。
⑤ 人財育成力
「人は仕事を通じて成長する」という人財育成の考え方のもと、課題付与・成果の振り返り評価・育成プランの策定の一連のプロセスを通じて、メンバーの成長力を最大限に高める。

J.フロントリテイリングの開示では、後継者に求められる資質から後継者候補の選定方法、指名委員会の関与まで詳細に記載されている。レベルの高い「コンプライ」と言えそうだ。

改訂CGコード施行前の開示例を見ると、後継者計画の適切な監督について最もシンプルに表現した事例として、「取締役会は、代表取締役CEOの後継者育成計画につき監督機能を担う」といったものが見られたが、これだけでは改訂原則の「主体的に関与」「後継者候補の育成が十分な時間と資源をかけて計画的に行われていくよう、適切に監督」といった要求に応えているとは言えないだろう。このほか、後継者計画の概要を示している事例として「後継者計画では、CEOに求められる資質として、真摯さ(Integrity)、先見性(Foresight)、洞察力(Insight)など、7つの項目を定めている」というもの、役員トレーニングに絡めた事例として「後継者育成計画のため全役員が対象の研修を実施しており、経営者に求められる役割責任や経営知識、戦略策定・実行に資する考え方やフレームワークを中心に、当年度は戦略、マーケティング、リーダーシップを題材とした」といったものがあったが、新原則では、このような後継者計画の内容や実施状況について取締役会が主体的かつ適切に監督することが求められることになる。

補充原則4-2① 経営陣の報酬を決定する際のスタンス
旧原則 改訂原則
経営陣の報酬は、持続的な成長に向けた健全なインセンティブの一つとして機能するよう、中長期的な業績と連動する報酬の割合や、現金報酬と自社株報酬との割合を適切に設定すべきである。 取締役会は、経営陣の報酬が持続的な成長に向けた健全なインセンティブとして機能するよう、客観性・透明性ある手続に従い、報酬制度を設計し、具体的な報酬額を決定すべきである。その際、中長期的な業績と連動する報酬の割合や、現金報酬と自社株報酬との割合を適切に設定すべきである。

【改訂のポイント】
改訂原則によって、経営陣の報酬を決定するのは「取締役会」であることが明確化された。その責任を果たすため取締役会は、「客観性・透明性ある手続」により「報酬制度を設計」し、「具体的な報酬額を決定」する必要がある。この「手続」には、やはり任意の報酬委員会が関与させることが説明力を生むだろう。

【パブコメに対する回答】
具体的な報酬額の決定を取締役会から代表取締役などに再一任する、といった実務を否定するものではない(当フォーラム注:ただしこの場合、「取締役会」が報酬額を決定しているわけではないため、「エクスプレイン」になる可能性がある)。そのような対応が行われる場合でも、十分な客観性・透明性が確保されるよう、取締役会の責任の下で、上場会社ごとに手続上の工夫がなされることが重要である(23ページ参照)。

【開示事例】
企業名 開示内容
J.フロントリテイリング 取締役・執行役・執行役員の報酬決定方針・手続
当社はグループビジョンの実現に向けた中期経営計画の着実な遂行をはかるため、2017年度に役員向け株式対価報酬制度の導入を含む新たな「役員報酬ポリシー」を策定し、報酬委員会において決議し、その運用を開始しました。詳細は、当社ウェブサイトの次のページをご覧ください。
(https://www.j-front-retailing.com/_data/news/170410_NewOfficerRemuneration_J.pdf)

J.フロントリテイリングは本原則の開示を、今回は改訂の対象外だった原則3-1(情報開示の充実)(iii)および原則4-2(取締役会の役割・責務(2))と共通化している。

原則3-1(情報開示の充実)(iii) : 取締役会が経営陣幹部・取締役の報酬を決定するに当たっての方針と手続について、主体的な情報発信を求める原則
原則4-2(取締役会の役割・責務(2)) : 経営陣の報酬について、中長期的な会社の業績や潜在的リスクを反映させ、健全な企業家精神の発揮に資するようなインセンティブ付けを行うべきとすることなどを盛り込んだ原則

上記開示の中で引用されている同社の新たな「役員報酬ポリシー」を見ると、「2.新たな「役員報酬ポリシー」の内容」の中の「(2) 役員報酬の基本方針」の一つとして、「⑤報酬の決定プロセスは透明性・客観性の高いものであること」を盛り込んだうえで、「(5)決定プロセス」として「報酬の水準及び報酬額の妥当性と決定プロセスの透明性を担保するため、具体的な報酬 支給額については独立社外取締役が過半数を占め、かつ、委員長を独立社外取締役とする 報酬委員会の決議により決定」するとしている。

同委員会は「年に4回以上」開催するという。また、「社外からの客観的視点及び役員報酬制度に関する専門的知見を導入するため、外部の報酬コンサルタントを起用し、その支援を受け、外部データ、経済環境、業界動向及び 経営状況等を考慮し、報酬水準及び報酬制度等について検討」するとしている。改訂原則で追加された「客観性・透明性ある手続に従い、報酬制度を設計し、具体的な報酬額を決定すべき」という要求を十分に満たす開示と言えそうだ。

改訂CGコードが施行される前の開示例には、取締役会が経営陣の報酬決定に関与することを示す事例としては、「代表取締役が取締役会から一任を受けた上で、個別報酬額の原案を作成し、独立社外取締役の了承を得た後、最終的に取締役会で決定するプロセスとしている」というものがあった。この場合、最終的に報酬額を決定しているのは「取締役会」であり、また、「報酬額の決定を代表取締役などに再一任する場合でも、十分な客観性・透明性が確保されるよう、取締役会の責任の下で、上場会社ごとに手続上の工夫がなされることが重要」とする上記【パブコメに対する回答】が求める対応にも沿ったものであり、従来の実務を維持しつつ、コンプライできる可能性もある。

このほか、改訂CGコードが施行される前の開示例では、経営陣の報酬決定に報酬委員会が絡む事例として、「報酬制度の妥当性・透明性・公正性を確保するため、社外取締役を含む○名以上の取締役による報酬委員会を設置している」といったものや、「報酬委員会は、業界の国内外企業と報酬水準を分析比較し、金額など報酬環境の様々な分析を踏まえ、取締役会に役員報酬制度および各取締役の個別報酬額を提案する」といったものがあったが、これらの記述からは、改訂原則が求める「取締役会が報酬制度を設計し、具体的な報酬額を決定」しているかどうかが分からない。改訂原則に対応していることを示すためには、上記に加え、「報酬委員会が報酬制度の設計、具体的な報酬額の決定を適切に監督している」といった開示を行うことが必要になろう。

補充原則4-3② 客観性・適時性・透明性あるCEOの「選任」手続
旧原則 改訂原則
(新設) 取締役会は、CEOの選解任は、会社における最も重要な戦略的意思決定であることを踏まえ、客観性・適時性・透明性ある手続に従い、十分な時間と資源をかけて、資質を備えたCEOを選任すべきである。

【改訂のポイント】
新設された本原則は、「CEOの選解任」を「最も重要な戦略的意思決定」であると位置付けたうえで、取締役会は「客観性・適時性・透明性ある手続」によってCEOを選任するべきとしている。「投資家と企業の対話ガイドライン」では、こうした手続を実効的なものとするために、「独立した指名委員会」の活用を求めている(2ページ 3-2参照)。

【パブコメに対する回答】
客観性・適時性・透明性ある手続きによるCEOの選解任に当たっては、CEOに求められる資質についての考え方が明らかになっていることが必要であるとしている(14ページ参照)。また、本原則にいう「客観性・適時性・透明性ある手続」とはどの程度のものを想定しているかといったコメントに対しては、「社内論理のみが優先される不透明な手続によることがない」「『適時性』には、状況に応じて機動的に新たなCEOを選任するとの趣旨が含まれるものと考える」などと回答したほか、「CEOの選解任プロセスの独立性・客観性を強化する上では、指名委員会の設置・活用を更に進めていくことが重要となる」というフォローアップ会議の提言を紹介している(16ページ参照)。

【開示事例】
J.フロントリテイリングは、本原則と上記補充原則4-1③(取締役会によるCEO等の後継者の計画の適切な監督)の開示を共通化している(一つの開示にしている)。これは、同社が後継者計画とCEOの選任は連動すると考えていることを示しているものと思われる。

改訂CGコード施行前の開示例を見ると、指名委員会による関与を示した事例として、「社長CEOは後継者候補を選定し、指名委員会での審議を踏まえ、取締役会が社長後継者を決定する」といったものがあった。さらに具体性を伴った事例としては、「当社は取締役候補者の指名にあたり、委員の半数以上が独立社外取締役で構成される指名報酬委員会が選任基準を満たすことを確認した上で、取締役会が取締役候補者を指名する」というものがあった。

補充原則4-3③ 客観性・適時性・透明性あるCEOの「解任」手続
旧原則 改訂原則
(新設) 取締役会は、会社の業績等の適切な評価を踏まえ、CEOがその機能を十分発揮していないと認められる場合に、CEOを解任するための客観性・適時性・透明性ある手続を確立すべきである。

【改訂のポイント】
補充原則4-3②で示したCEOの「選任」に加え、本原則ではCEOの「解任」においても、取締役会が「客観性・適時性・透明性ある手続」を確立するべきとしている。解任手続きにおいても、やはり任意の指名委員会を関与させることが、投資家に対し説得力を持つことになろう。

【パブコメに対する回答】
本原則でいう「適時性」には、業績などの評価や経営環境の変化などを踏まえた「機動的」なCEOの解任を行うことが可能であるとの趣旨が含まれるとし、解任手続きが「硬直的な運用」にならないよう注意を促している(17ページ参照)。

【開示事例】
企業名 開示内容
J.フロントリテイリング 最高経営責任者の解職については、設定した目標や期待した成果と取組みの結果(毎期の業績、戦略の遂行状況等)に加え、指名委員会で決議した後継者計画により選定された後継者候補の成果発揮等の状況を踏まえ、指名委員会が審議、決議した答申内容を取締役会で決定することとしています。

J.フロントリテイリングの開示では、「後継者計画により選定された後継者候補の成果発揮等の状況を踏まえ」という記述が注目される。たとえ業績不振等により現在の最高経営責任者(CEO)を解任したいと考えても、その後継者がいなければ解任することはできない。CEOの「選任」のみならず、実は「解任」も後継者計画と関連性が深いということを前提とした記述には納得感がある。

改訂CGコード施行前の開示例では、「経営陣幹部の選任や解任の基準や手続については、社内規程に定める」としたもののほか、解任手続に経営会議が関与する事例として、「解任の際はその事由を踏まえて経営会議において検討し、その結果を以って取締役会に諮る」としたものや、指名委員会が関与する事例として、「取締役の選任および解任議案は、取締役会で定めた選解任基準に基づき代表取締役が作成し、指名報酬委員会への諮問を経て取締役会が決定する」としたものがある。

原則4-8 独立社外取締役の有効な活用
旧原則 改訂原則
独立社外取締役は会社の持続的な成長と中長期的な企業価値の向上に寄与するように役割・責務を果たすべきであり、上場会社はそのような資質を十分に備えた独立社外取締役を少なくとも2名以上選任すべきである。
また、業種・規模・事業特性・機関設計・会社をとりまく環境等を総合的に勘案して、自主的な判断により、少なくとも3分の1以上の独立社外取締役を選任することが必要と考える上場会社は、上記にかかわらず、そのための取組み方針を開示すべきである。
独立社外取締役は会社の持続的な成長と中長期的な企業価値の向上に寄与するように役割・責務を果たすべきであり、上場会社はそのような資質を十分に備えた独立社外取締役を少なくとも2名以上選任すべきである。
また、業種・規模・事業特性・機関設計・会社をとりまく環境等を総合的に勘案して、少なくとも3分の1以上の独立社外取締役を選任することが必要と考える上場会社は、十分な人数の独立社外取締役を選任すべきである。

【改訂のポイント】
本改訂原則は、独立社外取締役が3分の1以上必要と考える場合は「十分な人数」を選任すべきとするものであり、旧原則のように「方針の開示」は求めていない。「自主的な判断により」という文言が削除されるとともに、「取組みの方針を開示すべき」が「十分な人数の独立社外取締役を選任すべき」へと表現が強められたものの、上場会社にとっては、「必要と考える」場合という前提が従来通りである以上、実質的には大きな変化はないとも言える。むしろ、「必要と考える」ならば開示が求められていた「取り組み方針」の開示が不要になる分、上場会社の負担が減ったと見る向きもあるが、下記の【パブコメに対する回答】のとおり、「独立社外取締役3分の1以上」実現への期待は大きい。

【パブコメに対する回答】
改訂原則の後段(「また・・・」以降)の対象となるのは「少なくとも3分の1以上の独立社外取締役を選任することが必要と考える」上場会社であり、そうでない上場会社についてまで「コンプライ・オア・エクスプレイン」を求めるものではないとしつつも、投資家と企業の対話ガイドライン3-8(4ページ参照)の「独立社外取締役が十分な人数選任されているか」という記述の趣旨を踏まえ、投資家と上場会社との間で建設的な対話が行われることが期待されるとしている(41ページ参照)。

【開示事例】
企業名 開示内容
J.フロントリテイリング 指名委員会等設置会社の新たなコーポレートガバナンス体制における基本的な考え方である監督と執行の分離、取締役会論議の実効性確保、及び、透明性・客観性の維持・向上の観点に基づき、独立社外取締役が3分の1以上、かつ独立社外取締役と執行を担わない社内出身の非業務執行取締役との割合が過半数となるよう構成しています。なお、当社グループ各事業での豊富な業務経験に基づく社内情報に精通した社内非業務執行取締役3名は、取締役会議長や監査委員会委員長または監査委員として、また社外における豊富な経営経験や各専門分野における高い見識を有する独立社外取締役5名は指名委員会・報酬委員会の委員長もしくは3委員会の委員として、独立かつ客観的な経営の監督の実効性を確保すべくその役割を果たします。

J.フロントリテイリングの場合、「独立社外取締役3分の1以上」をクリアしたうえで、「社内非業務執行取締役」を活用している点、注目される。社内事情に精通していなければ取締役会議長を担うのは難しいとの声も聞かれる中、社内事情に精通し、かつ経営の執行から離れ監督機能を発揮することに専念できる「社内非業務執行取締役」を取締役会議長や監査委員会委員長等に起用するという手法は、“日本型モデル”として普及することも考えられる。

補充原則4-10① 任意の指名/報酬委員会の設置
旧原則 改訂原則
上場会社が監査役会設置会社または監査等委員会設置会社であって、独立社外取締役が取締役会の過半数に達していない場合には、経営陣幹部・取締役の指名・報酬などに係る取締役会の機能の独立性・客観性と説明責任を強化するため、例えば、取締役会の下に独立社外取締役を主要な構成員とする任意の諮問委員会を設置することなどにより、指名・報酬などの特に重要な事項に関する検討に当たり独立社外取締役の適切な関与・助言を得るべきである。 上場会社が監査役会設置会社または監査等委員会設置会社であって、独立社外取締役が取締役会の過半数に達していない場合には、経営陣幹部・取締役の指名・報酬などに係る取締役会の機能の独立性・客観性と説明責任を強化するため、取締役会の下に独立社外取締役を主要な構成員とする任意の指名委員会・報酬委員会など、独立した諮問委員会を設置することにより、指名・報酬などの特に重要な事項に関する検討に当たり独立社外取締役の適切な関与・助言を得るべきである。

【改訂のポイント】
今回の改訂で「例えば」という文言が削除されたことにより、任意の諮問委員会が単なる例示ではなく、「必要なもの」として位置付けられた。したがって、任意の諮問委員会が設置されていない場合、「エクスプレイン」が必要になる。また、諮問委員会に「独立した」という限定が付けられている点にも注意したい(「独立した」に関する東証のコメントは下記参照)。

【パブコメに対する回答】
本原則をコンプライするためには、コードが求める「独立した諮問委員会」を設置することが必要としたうえで(30ページ参照)、独立した社外取締役が諮問委員会の主要な構成員であることが必要である旨明示された。ここでいう「主要な」の意義については、本原則の対象が「監査役会設置会社または監査等委員会設置会社であって、独立社外取締役が取締役会の過半数に達していない場合」とされている趣旨も踏まえ、「個々の上場会社において、指名・報酬などの特に重要な事項について、実効的に独立社外取締役の適切な関与・助言を得られるかとの観点から、独立社外取締役の人数や割合、委員長の属性等を合理的に判断すべき」としている(30~31ページ参照)。この記述からは、構成メンバーの過半数を独立社外取締役が占め、委員長も独立社外取締役が務めている状況が望ましいことが示唆されていると考えられよう(2018年5月29日のニュース『改訂CGコードが意図する「独立した」委員会』参照)。

また、形式的に諮問委員会を設置するのみでは本原則への対応としては不十分としており、「実効的に独立社外取締役の関与・助言が得られるよう、それぞれの諮問委員会の具体的な役割を明確化するなど、個々の上場会社において工夫がなされることが重要」としている(29ページ参照)。

【開示事例】
CGコードについてコンプライ&エクスプレインを標榜するJ.フロントリテイリングは2017年度から指名委員会等設置会社に移行しており、本原則の対象外であるが、取締役会議長・代表執行役社長・社外取締役の全員で構成され、取締役会評価の結果を踏まえた取締役会の実効性向上のための諸課題や機関設計のあり方などについて建設的な議論、意見交換を行う「ガバナンス委員会」を毎月開催している旨を開示している。今後はグループ会社のガバナンスや持株会社の役割等についての議論、意見交換を実施していくという。

改訂CGコード施行前の開示例では、「平成○年○月に当社は、取締役や執行役員など重要な使用人の報酬決定および候補者選任プロセスの透明化を図るため、委員の半数以上が独立社外取締役で構成される報酬指名諮問委員会を設置した」といった形で“半数以上”を独立社外取締役が占める諮問委員会を設置した事実を開示した事例のほか、より独立性に重きを置いた事例として、「報酬および指名委員会は、すべての社外取締役とCEOが指名する取締役1名の合計○名で構成され、委員長(議長)は社外取締役の中から選定している」といったものがあった。

原則4-11 取締役会・監査役会の実効性確保のための前提条件
旧原則 改訂原則
取締役会は、その役割・責務を実効的に果たすための知識・経験・能力を全体としてバランス良く備え、多様性と適正規模を両立させる形で構成されるべきである。また、監査役には、財務・会計に関する適切な知見を有している者が1名以上選任されるべきである。
取締役会は、取締役会全体としての実効性に関する分析・評価を行うことなどにより、その機能の向上を図るべきである。
取締役会は、その役割・責務を実効的に果たすための知識・経験・能力を全体としてバランス良く備え、ジェンダーや国際性の面を含む多様性と適正規模を両立させる形で構成されるべきである。また、監査役には、適切な経験・ 能力及び必要な財務・会計、法務に関する知識を有する者が選任されるべきであり、 特に、財務・会計に関する十分な知見を有している者が1名以上選任されるべきである。
取締役会は、取締役会全体としての実効性に関する分析・評価を行うことなどにより、その機能の向上を図るべきである。

【改訂のポイント】
取締役会が備えるべき多様性として、「ジェンダー」と「国際性」が求められることになった。既に女性や外国人の取締役がいれば本原則は当然に「コンプライ」となるが、企業にとってハードルが高いのは「国際際」の方だろう。仮に外国人がいない場合でも、長い海外駐在経験を有するなど「国際性」に富んだ取締役がいれば「エクスプレイン」にはならないという解釈は成り立ち得るが、無理をせず「今後の選任を検討する」旨のエクスプレインをすることも一案であるし、あるいはドメスティックな事業を展開している企業であれば「自社の売上の大部分は国内売上が占めているため、外国人取締役を選任する必要性はないと考えている」とのエクスプレインも納得があろう(下記の「パブコメに対する回答」参照)。

また、監査役“全般”に対し「財務・会計・法務に関する知識」が必要とされた。これは従来から求められていた(ただし、今回「特に、」が追加され、「適切」が「十分」に変更)「特に、財務・会計に関する十分な知見を有している者1名」とは別枠である点、注意したい。

【パブコメに対する回答】
「国際性」については、すべての上場会社に対して外国人取締役の選任を求めるものではないとした。一方、例えば幅広く国際的に事業を展開している上場会社などにおいては、外国人取締役の選任が必要な場合もあり得るとしている(35ページ参照)。

【開示事例】
企業名 開示内容
J.フロントリテイリング 当社の取締役会の構成につきましては、本報告書第Ⅱ章 2.業務執行、監査・監督、指名、報酬決定等の機能に係る事項(現状のコーポレートガバナンス体制の概要)の記載をご覧ください。

「本報告書第Ⅱ章 2.業務執行、監査・監督、指名、報酬決定等の機能に係る事項(現状のコーポレートガバナンス体制の概要)」のうち、多様性等に関する部分は下記のとおり。

当社の取締役会は、定款に定める15名以内の適切な員数で構成します。現在は取締役13名(うち女性取締役2名を含む独立社外取締役5名)で、任期は1年です。監督と執行の分離、取締役会の議論の実効性向上の観点から、独立社外取締役が3分の1以上、かつ独立社外取締役と執行を担わない社内出身の非業務執行取締役との割合が過半数で構成しています。取締役会議長については、監督と執行の分離、取締役会の円滑な運営の観点から、社内出身の非業務執行取締役とします。
なお、取締役候補者の指名に際しては、取締役会全体としての知識・経験・能力のバランスに配慮の上、その多様性を確保します。

現状、J.フロントリテイリングの取締役には外国人は見当たらないが、本原則をコンプライしている。これは、社外取締役の橘・フクシマ・咲江氏が海外企業の取締役を経験するなど国際経験が豊富であることを根拠としているものと思われる(同氏の経歴は同社の第11期定時株主総会招集通知6ページ参照)。同社は2015年には上海新世界大丸百貨をオープンするなど、海外の成長市場への進出を重点施策に位置付けている。2017年度からは会計基準もIFRSに移行しており、今後同社のグローバル化が加速する可能性もある。それが今後の取締役会の構成にどのような影響を与えていくのか、注目される。

改訂CGコード施行前の開示例を見ると、取締役会の多様性に関す事例としては、「取締役・執行役員の多様性を確保するため、女性や外国人の登用に努めている(現在、取締役○名のうち○名が女性、執行役員○名のうち○名が女性で○名が外国人)」といった形で、取締役のみならず執行役員まで実際の選任状況を示したもの、「女性や外国人等の多様な視点が事業推進や経営監督に資するとの認識から、取締役会が多様な人材により構成されるように努める」といった“姿勢”を示したものがあった。

監査役については、「候補者の指名に際しては、財務・会計・法務等の専門的な知見、当社事業に関する知識および企業経営に関する視点のバランス等を考慮し、総合的に検討する」と、改訂原則で求められた「財務・会計・法務」に既に言及していたものがあった。

原則5-2 経営戦略や経営計画の策定・公表
旧原則 改訂原則
経営戦略や経営計画の策定・公表に当たっては、収益計画や資本政策の基本的な方針を示すとともに、収益力・資本効率等に関する目標を提示し、その実現のために、経営資源の配分等に関し具体的に何を実行するのかについて、株主に分かりやすい言葉・論理で明確に説明を行うべきである。 経営戦略や経営計画の策定・公表に当たっては、自社の資本コストを的確に把握した上で、収益計画や資本政策の基本的な方針を示すとともに、収益力・資本効率等に関する目標を提示し、その実現のために、事業ポートフォリオの見直しや、設備投資・研究開発投資・人材投資等を含む経営資源の配分等に関し具体的に何を実行するのかについて、株主に分かりやすい言葉・論理で明確に説明を行うべきである。

【改訂のポイント】
本原則をコンプライするためには、「自社の資本コスト」を的確に把握することが前提とされた。この場合、精緻な算定が必要なのかどうかについては、企業のみならず投資家においても議論が分れるところだろう。もちろんCAPM(資本資産評価モデル)を用いた計算の詳細を示してもよいが、伊藤レポートで提示されたROE水準「8%」を自社の資本コストとして用いるのも一つの考え方だろう。なお、「投資家と企業の対話ガイドライン」は、「事業のリスクなどを適切に反映」した資本コストであることを求めている(1ページ 1-2参照)。

CAPM : Capital Asset Pricing Model=資本資産評価モデル)とは株主資本コストの算出方法で、次の算式による。→<算式>株主資本コスト=リスクフリー・レート(RFR)+β×マーケット・リスクプレミアム(RFRとは、リスクを取らずに得られるリターンで、国債利回りを用いるのが通常。マーケット・リスクプレミアムとは、リスク・テイクによる超過的な期待収益率のこと。超過的な期待収益率は、TOPIXなどをベースに計算される。基本的には、TOPIXなどに基づく期待収益率(Rm=requiredmarket rate of return)とRFRの差が「超過的な期待収益率」となる。ただし、株価がTOPIXと同様の動きをする企業もあれば乖離している企業もある。そこで、各社の「超過的な期待収益率」は、株価のTOPIXなどに対する“感応度”を考慮して調整する。この感応度のことを「ベータ(β)」という。βは、株式市場全体の動きに対して大きく反応する場合には高く、あまり反応しない場合には低くなる。
ROE : Return On Equity=株主資本利益率(当期純利益/株主資本)

また、本原則では、「事業ポートフォリオの見直し」「設備投資・研究開発投資・人材投資“等”を含む」経営資源の配分等に関し具体的に何を実行するのか株主に説明することを求めているが、「・・・人材投資“等”」とあるように、これらはあくまで例示であるため、実施していないからといって即エクスプレインが求められるわけではない。

【パブコメに対する回答】
本原則では、資本コストの数値自体の開示ではなく、自社の資本コストについての考え方や経営における活用状況などを分かりやすく説明することが求められるとしている(9ページ参照)。また、企業等の間には、本原則にいう「資本コスト」が「株主資本コスト」と「加重平均資本コスト(WACC)」のどちらを指すのかという疑問があるが、この点について東証は、「適用の場面に応じて株主資本コストやWACC(加重平均資本コスト)が用いられることが多いものと感がられる」としている(同じく9ページ参照)。

株主資本コスト : 経営陣(取締役)の使命は、基本的に「株主から預かった資金(株主資本)を元手に展開する事業から獲得するキャッシュ・フローが“株主の期待利回り”を上回ること」にあり、ここでいう“株主の期待利回り”を「株主資本コスト」という。
加重平均資本コスト(WACC) : 銀行等(債権者)が企業に対し要求する期待利回りが「有利子負債コスト(金利)」であるが、株主と債権者では資金提供リスク(将来獲得できるキャッシュ・フローの不確実性)が異なるため、両者が要求する期待利回りも異なる(通常は株主のリスク(不確実性)の方が高いとされている)。そこで企業全体としての資金調達コストは、両者の期待利回り(「株主資本コスト」と「有利子負債コスト(金利)」)を資金提供額に応じて加重平均することにより算定する。この資金調達コストが「加重平均資本コスト(英語ではWeighted Average Cost of Capital=WACC」であり(通称はワック)、これを上回るキャッシュ・フローの獲得こそが、投資家が経営陣(取締役)に求めているものと言える。加重平均資本コスト(WACC)は資金提供者が要求する最低限の期待利回り(期待収益率)であるため、「ハードル・レート」とも呼ばれる。

【開示事例】
企業名 開示内容
J.フロントリテイリング 資本政策に関する方針については、方針書「第2章株主との関係2 資本政策」をご覧ください。
上記の方針を踏まえ、2017年度については次のとおり各施策を実施し、年度のROEは7.5%となりました。
・戦略投資の実施
当社グループの経常的な設備投資は、減価償却費の範囲内に収めることを基本的な考え方としています。2017年度は、経常投資に加え、戦略投資を積極的に実施した結果、総額270億21百万円の設備投資となりました。2017年度に完成した主要設備は、「GINZA SIX関連工事」や「上野フロンティアタワー関連工事」、「渋谷パルコの再開発事業に伴う資産の取得」などです。
また、一定金額以上の新規投資案件については、その損益計画の精査や投資計画の定量面の妥当性等を財務視点で検証する「投資計画検討委員会」を、既存事業の中で低収益・低成長の会社・部門について、投資回収の観点から財務視点での再生・撤退計画を立案する「再生計画検討委員会」をそれぞれ設置し、投下資本収益性の向上を目的とする財務戦略を遂行するための体制を整備し、その活用をはかっています。
・株主還元の充実
2018年2月期は普通配当前年比5円増配に設立10周年記念配当2円を加えた1株当たり年間35円の剰余金配当を実施しました。2019年2月期は8年連続増配となる普通配当2円増配、年間35円の剰余金配当を予定しています。
・自己資本の拡充
2018年2月末有利子負債総額は、約1,842億円(2017年2月末比約217億円減)となりました。有利子負債親会社所有者持分倍率(D/Eレシオ)は0.47倍、親会社所有者持分比率は38.7%(2017年2月末比2.0ポイント増)となりました。
・ 事業ポートフォリオと投資計画
当社は本中期経営計画期間の5年間で、営業キャッシュフロー2,600億円以上をめざし、2,000億円を既存事業の革新と事業ポートフォリオの変革に向けた設備投資、及び成長投資に振り向けます。なお、中期経営計画における事業ポートフォリオの考え方は、これまでグループ営業利益の9割近くを占めていた百貨店事業とパルコ事業のシェアを7割程度にする一方、不動産事業の強化及び新規事業領域の拡大によりそのシェアを伸ばすこととしています。

J.フロントリテイリングは、本原則に関する開示を「資本政策の基本方針」と題し、今回は改訂の対象外であった原則1-3(資本政策の基本的な方針)と共通のものとしている。ここで引用している方針書「第2章 株主との関係 2 資本政策」は下記のとおり。

2 資本政策
(1)資本政策の基本方針
当社は、フリー・キャッシュフローの増大とROEの向上が持続的な成長と中長期的な企業価値を高めることにつながるものと考えています。その実現に向けて、「戦略投資の実施」「株主還元の充実」及びリスクへの備えを考慮した「自己資本の拡充」のバランスを取った資本政策を推進します。
また、有利子負債による調達はフリー・キャッシュフロー創出力と有利子負債残高を勘案して行うことを基本とし、資金効率と資本コストを意識した最適な資本・負債構成を目指します。
フリー・キャッシュフロー、ROEの向上には、収益を伴った売上拡大を実現する「事業戦略」及び投下資本収益性を向上させる「財務戦略(資本政策を含みます。)」が重要です。併せて、基幹事業の強化、事業領域の拡大・新規事業の積極展開等に経営資源を重点配分することにより、営業利益の最大化と営業利益率を持続的に向上させていくことが重要であると考えています。
(2)株主還元方針
当社は、健全な財務体質の維持・向上をはかりつつ、利益水準、今後の設備投資、フリー・キャッシュフローの動向等を勘案し、安定的な配当を心がけ連結配当性向30%以上を目処に適切な利益還元を行うことを基本方針とします。また、資本効率の向上及び機動的な資本政策の遂行などを目的として自己株式の取得も適宜検討します。
(3)株主の利益を害する可能性のある資本政策実行時における株主の権利の尊重
MBO、大規模第三者割当増資その他の支配権の異動や大規模な希釈化をもたらす資本政策を実行する場合には、当社は、既存の株主の皆様の権利を不当に害することのないよう、当社株主と利益相反が生じるおそれがない高い独立性を有している社外取締役を含む取締役会においてその必要性・合理性を慎重に検討するほか、株主の皆様に十分な説明を行うとともに必要かつ適正な手続を確保します。
(4)当社の支配に関する基本方針
当社は、当社の財務及び事業の方針の決定を支配する者は、当社グループの財務及び事業の内容や当社グループの企業価値の源泉を十分に理解し、当社グループの企業価値を継続的かつ持続的に確保し、これを向上していくことを可能とする者でなければならないと考えています。
当社は、当社グループの企業価値を毀損する当社株式の大量取得行為を行う者が出現した場合の具体的な取組み、いわゆる買収防衛策について特にこれを定めていません。
しかしながら、このような大量取得者が出現した場合には、当社グループの企業価値の毀損を防止するため、当社社内取締役から独立した立場にある社外取締役及び有識者をメンバーとする独立委員会を設置し、その勧告意見を踏まえた上で、必要かつ相当な対応を講じることにより、当社グループの企業価値を確保する所存です。

J.フロントリテイリングの開示には、今回の改訂で本原則に追加された「資本コスト」という文言は出てこないが、上記「パブコメに対する回答」のとおり、本原則では資本コストの数値自体の開示は求められていないうえ、同社は2017年度のROE(7.5%)を示している。また、上記「改訂のポイント」で述べたとり、経営資源の配分等として例示された「設備投資・研究開発投資・人材投資」はあくまで例示に過ぎないため、これらすべてについて開示が求められるわけではない。同社はROEに加え、事業ポートフォリオの見直しや投資計画等について言及しており、十分「コンプライ」に値する開示内容と言えよう。

CGコード施行前の開示を見ると、資本コストを意識した記載として、「当社は株主資本コストを上回る資本効率を達成するため、その実現に向けて経営計画を策定し、財務目標を定め、具体的な施策を公表・説明する」といった形で「株主資本コスト」という文言を使用したものや、具体的な数値を伴った開示として、「当社のビジネスモデルを踏まえて、想定するROEは最低限○%以上とし、更なる向上を目指す」というものがあった。

事業ポートフォリオ戦略などに関しては、「市況の影響を受けにくい事業ポートフォリオの構築を重要な方針として、安定収益型事業の徹底的強化・拡大および成長に向けた、次代の中核事業育成に取り組む」といったものが見られた。

2018/06/29 【役員会 Good&Bad発言集】政策保有株式(会員限定)

<解説>
政策保有株式の解消に向けガバナンスコードが改訂

政策保有株式は、企業間の提携を強化させる効果があると指摘されることもありますが、実際にはその「効果」を定量的に検証することは困難であり、その一方で政策保有に伴い資金が固定化され資本効率が悪化したり、相互保有している先が与党株主として機能することで経営陣の企業経営に対する規律に緩みが生じたりといった問題があることが指摘されています(政策保有株式の問題点については【2017年10月の課題】政策保有株式が抱える問題点と対応策 を参照)。

そのため、2018年6月1日に施行された改訂コーポレートガバナンス・コードでは、政策保有株式に関する原則1-4が大幅に見直されました。

※赤字が改訂部分
【原則1-4.いわゆる政策保有株式】
上場会社がいわゆる政策保有株式として上場株式を保有する場合には、政策保有株式の縮減に関する方針・考え方など、政策保有に関する方針を開示すべきである。また、毎年、取締役会で主要な個別の政策保有株式についてそのリターンとリスクなどを踏まえた中長期的な経済合理性や将来の見通しを検証し、これを反映した保有の ねらい・合理性について具体的な説明を行うべきである。保有目的が適切か、保有に伴う便益やリスクが資本コストに見合っているか等を具体的に精査し、保有の適否を検証するとともに、そうした検証の内容について開示すべきである。
上場会社は、政策保有株式に係る議決権の行使について、適切な対応を確保するための具体的な基準を策定・開示し、その基準に沿った対応を行うべきである。

上場会社は、2018年12月末日までに改定後のコードに対応したコーポレート・ガバナンス報告書を証券取引所に提出する必要があります(政策保有株式に関するコーポレート・ガバナンス報告書の記載内容については2018年4月4日「政策保有株式開示、何を書く?」を参照)。なお、後段の「政策保有株式に係る議決権の行使」については、個別企業ごとの開示までは求められていません(議決権行使結果の個別企業ごとの開示については2018年5月23日のニュース『政策保有株式、「精査・検証結果」を個別企業ごとに開示する必要は?』を参照)ので、上場会社にとっては一安心と言えます。

改訂コーポレートガバナンス・コードでは、取引の縮減を示唆することなどにより、政策保有株式の売却等を妨げる行為を禁じている点にも留意が必要です。

補充原則1-4①
上場会社は、自社の株式を政策保有株式として保有している会社(政策保有株主)からその株式の売却等の意向が示された場合には、取引の縮減を示唆することなどにより、売却等を妨げるべきではない。

これにより、上場会社は「政策保有株式の持ち合いを解消すると、自社の売上に悪影響が生じる」という“言い訳”が使えなくなりました(補充原則1-4①への対応については2018年6月18日のニュース「補充原則1-4①、取引先の開示内容をチェックする必要」を参照)。

有報の開示を充実させ政策保有株式の解消を図る動き

上場会社が政策保有株式についての開示をしなければならないのは、何もコーポレート・ガバナンス報告書だけではありません。有価証券報告書でも政策保有株式についての開示が必要になります。具体的には、上場会社は有価証券報告書の【コーポレート・ガバナンスの状況】に、政策保有株式(保有目的が純投資以外の上場株式)のうち資本金の1%超の銘柄(当該銘柄が30銘柄未満の場合は、保有額上位30銘柄)につき、銘柄名、銘柄ごとの保有株式数・貸借対照表計上額・保有目的を記載することとされています。この「株式保有の状況」の開示は単体ベースで記載するのが原則ですが、例外的に提出会社が持株会社の場合は、一定の要件に該当する連結子会社が保有する株式の状況も開示する必要があります。また、保有目的の記載にあたっては、例えば「政策投資目的」といった純投資以外の目的であることを示す程度の記載ではなく、「どういった政策投資の目的であるのかを具体的に記載することが適切」とされています。

ところが、有価証券報告書における政策保有株式に係る開示の現状はどうかと言うと、「保有目的の説明がボイラープレートな記述(定型的かつ抽象的な記述)にとどまっており、開示から合理性・効果を検証できない」と改善を求める声が多々あるのも事実です。そこで、上場企業の開示について包括的な見直しを検討してきた金融審議会ディスクロージャーワーキング・グループ(以下、ディスクロージャーWG)では政策保有株式の開示の見直しも主なテーマに掲げて検討を重ね、先日(2018年6月28日)、報告書「金融審議会ディスクロージャーワーキング・グループ報告-資本市場における好循環の実現に向けて-」を公表したところです(同報告における政策保有株式の取り扱いについては2018年6月27日のニュース「経営戦略や政策保有株式等、更なる拡充が求められる有報開示」)。ディスクロージャーWGでは、投資家からは「政策保有株式が中長期的な企業価値向上につながる可能性が必ずしも高くない一方で、少数株主軽視や資本コストに対する意識の低さにつながるリスクが高いことから、保有の目的、効果、合理性等について詳細に開示して欲しい」といった要望も出されていたことから、同報告では、次の結論が示されています。

・政策保有株式の保有意義・効果について様々な見方がある中、資本コストをかけリスクをとって株式を保有する以上、政策保有に関する方針、目的や効果は具体的かつ十分に説明されるべき。
・政策保有株式の保有について、その合理性を検証する方法や取締役会等における議論の状況について開示を求めるべき。
・個別の政策保有株式の保有目的・効果について、提出会社の戦略、事業内容及びセグメントと関連付け、定量的な効果(記載できない場合には、その旨と保有の合理性の検証方法)も含めてより具体的に記載することを求めるべき。
・開示基準に満たない銘柄も含め、売却したり、買い増した政策保有株式について、減少・増加の銘柄数、売却・買い増した株式それぞれの合計金額、買い増しの理由等の記載を求める。
・開示対象となる銘柄数を増やすべきであるとの意見を踏まえ、開示対象を拡大する。
・政策保有目的と思われる株式保有が純投資に区分されているケースがあるとの指摘があることから、純投資と政策投資の区分の基準や考え方の明確な説明を求める。

これらすべてが有価証券報告書の記載内容を定める開示府令の改正につながるかどうかは不明ですが、仮に一部が任意開示となった場合であっても、実務上のベストプラクティスから導き出したプリンシプル・ベースのガイダンスが策定される予定(2018年6月15日のニュース『金融庁、開示府令改正とセットで「任意開示」のガイダンス策定へ』を参照)であり、開示の充実に向けて参考になることが期待されます。これらは政策保有株式に係る開示を充実させることで、結果的に政策保有株式の解消を促す動きと評価することもできます。

上場会社としてはまずは政策保有株式を減らすことを考え、どうしても残さざるを得ない銘柄については効果を検証し、開示に備えるべきです。

さて、以上の解説をご覧いただければ、どれがGOOD発言か、もうお分かりですね。正解は以下のとおり。

<正解>
GOOD発言はこちら

取締役A:「政策保有株式を持ち続けることの効果の検証は難しいのではないでしょうか?投資家への説明責任を果たせないのであれば、政策保有株式は売却すべきと考えます。」
コメント:取締役会で政策保有株式の売却を提案しても、営業担当取締役などから売却へ反対される可能性があり、議論が膠着する恐れがあります。そこで、取締役Aのように「投資家への説明責任を果たせるのか」という問題提起をして、間接的に政策保有株式の売却を促すのは、議論の進め方としては有効と言えます。

BAD発言はこちら
取締役B:「政策保有株式を子会社に売却してはいかがでしょうか。単体では売却益を計上できますし、有価証券報告書における政策保有株式の開示も不要になります。」
コメント:有価証券報告書の【コーポレート・ガバナンスの状況】における政策保有株式の開示は、ホールディングスのような持株会社でなければ、単体ベースで行われます。X社は持株会社ではないので、開示ルール上は子会社が保有している政策保有株式まで開示する必要はありません。しかし、だからと言って、子会社に株式を移転することを提案するBの発言は、投資家を欺こうとするものでありBad発言と言わざるを得ません。
取締役C:「わが社が持っている政策保有株式のことだけではなく、わが社の株式を持ってもらっている取引先のことも考えておかなければなりません。取引先が一斉に売り出すと、わが社の株式の株価が暴落してしまいます。それは他の株主にとっても望ましいことではありません。もし、わが社の株式を売却しようとする取引先が出てきたら、『売り場の棚を減らさざるをえない』と強い態度で翻意を促すべきです。」
コメント:取締役Cは取引停止をちらつかせながら自社の株式を売却しないよう交渉することを提案しています。これは恫喝に等しく、コーポレートガバナンス・コードの補充原則1-4①「上場会社は、自社の株式を政策保有株式として保有している会社(政策保有株主)からその株式の売却等の意向が示された場合には、取引の縮減を示唆することなどにより、売却等を妨げるべきではない。」で禁じられています(コンプライしなければエクスプレインが必要)。取締役Cの発言はコーポレートガバナンス・コードに反する発言であり、Bad発言です。

2018/06/29 【役員会 Good&Bad発言集】政策保有株式

流通業のX社では、食品メーカー、アパレル、建設業、金融機関など相当の数の取引先の株式を政策保有しています。X社ではそのうち一部(X社が有する30銘柄)を有価証券報告書で政策保有株式として開示していますが、最近では機関投資家から政策保有株式を売却することを検討するよう要請を受ける機会が増えています。X社の経営陣もようやく重い腰を上げ、取締役会で政策保有株式の取り扱いを検討することになりました。政策保有株式の取り扱いについての取締役A・B・Cの次の発言のうち、誰の発言がGood発言でしょうか?

取締役A:「政策保有株式を持ち続けることの効果の検証は難しいのではないでしょうか?投資家への説明責任を果たせないのであれば、政策保有株式は売却すべきと考えます。」

取締役B:「政策保有株式を子会社に売却してはいかがでしょうか。単体では売却益を計上できますし、有価証券報告書における政策保有株式の開示も不要になります。」

取締役C:「わが社が持っている政策保有株式のことだけではなく、わが社の株式を持ってもらっている取引先のことも考えておかなければなりません。取引先が一斉に売り出すと、わが社の株式の株価が暴落してしまいます。それは他の株主にとっても望ましいことではありません。もし、わが社の株式を売却しようとする取引先が出てきたら、『売り場の棚を減らさざるをえない』と強い態度で翻意を促すべきです。」

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