2018/04/13 海外の“モノ言う株主”の迫力(会員限定)

ある日本の中堅企業では、いわゆる“モノ言う株主”に突如5%を超える株式を保有されるとともに、潤沢なキャッシュの有効活用について経営陣の考え方を問われたという。結局その企業は増配を決めたが、以前であれば“ハゲタカ”などと批判を浴びかねなかったこうした投資家に対しては、現在ではむしろ経営陣に圧力をかけることで企業を良い方向に導く役割さえ期待されている。

物言う株主の一つとして世界的に著名なのが、アクティビスト投資家エドワード・ブランソン氏率いる米投資会社シェルボーン・インベスターズだ。ブランソン氏は相当数の株式を取得後、取締役を送り込んで経営陣を退陣に追い込み、コスト削減の断行、株主への増配等を要求することで知られる。例えば、ロンドンに本社を置くF&C アセットマネジメント(現在はカナダのモントリオール銀行の100%子会社)に対しては、かつて約20%の株式を取得後、取締役会議長を退陣に追い込み、コスト削減と投資戦略の刷新を行った。また、ロンドン証券取引所に上場する投資信託であるエレクトラ・プライベート・エクイティに対しても約30%の株式を取得後、フランンソン氏が推薦した人物を取締役会に送り込むとともに、自らCEOに就任し、コスト削減策を断行した実績がある。

そのシェルボーン・インベスターズがこのほど、英国の大手銀行バークレイズの株式を5.16%取得したことが明らかになっている。取引額は5億8,000万ポンド(日本円で約887億)に上るが、同行の時価総額は340億ポンドと巨大であり、シェルボーン・インベスターズがこれまでのように取締役を送り込み戦略変更を迫るのには5%余りの議決権では困難であり、同行の他の有力株主であるフィデリティ、インベスコなどの支持を取り付ける必要がある。ちなみに、シェルボーン・インベスターズを率いるブランソン氏はこれまで、政治や規制動向に敏感な銀行業界への投資経験はない。それだけに、今回の投資は同氏にとっても大きなチャレンジと言える。

とはいえ、バークレイズ銀行は2015年に現在のジェス・ステイリーCEOが就任して以来、アフリカ事業や欧州でのリール銀行事業の売却、支店閉鎖を通じたコスト削減策を推進するとともに、投資銀行部門の業績回復に取り組み、さらに2月の決算発表の場では増配を打ち出したものの、昨期は19億ポンドの純損失を出し、株価もストックス欧州600指数に採用されている銀行株が7.5%上昇する中で12%以上下落しており、投資家の不満は大きい。投資家の間では、市場のボラティリティ低下や金融危機後の規制強化により低迷が続く投資銀行部門を縮小し、より収益性の高いリテール銀行事業やクレジットカード事業に資本を集中すべきとの声も根強い。ブランソン氏は他の物言う株主と異なり、メディアの力を利用せず、手の内を明かさないことでも有名だが、同氏も同様の戦略を持っているとみられる。

ストックス欧州600指数 : イギリス、フランス、ドイツ、イタリア、スイスなどヨーロッパ17か国における証券取引所上場の上位600銘柄により構成される株価指数
ボラティリティ : 変動率。「株価のボラティリティが高い」とは、株価が乱高下することを意味する。

わずか5%の議決権を保有したアクティビスト投資家が他の既存株主も巻き込み巨大銀行の経営方針の大転換を実現することになるのか、日本の資本市場および日本企業の近未来を占う意味でも、その動向が注目される。

2018/04/12 オープンイノベーションを阻害する要因

技術やアイデアを有するが資金力や信用力に乏しいベンチャー企業と、資金力や信用力はあっても研究開発に遅れを取ったり組織が硬直化して新規性に富んだアイデアを生み出すことができなくなったりしている大企業が協業すれば、自社に欠落したものを相互補完でき、Win-Winの関係を築くことが可能となる。こうした「大企業がベンチャー企業との連携を行うことでイノベーションを創出する取り組み」をオープンイノベーションという。

オープンイノベーションは、大企業とベンチャー企業の双方に恩恵をもたらし、社会全体を活性化させる可能性を有する有意義な取り組みである。例えば、P&Gではクローズドイノベーションには限界があるとして、オープンイノベーションを促進させ、プロダクト開発の50%を社外の知見を取り込んで行うことを目標としている。以前と比べると、ビジネスコンテストやコーポレートアクセラレーターの仕組みが充実してきたことに伴いオープンイノベーションの手法も多様化しており、大企業側にとってのオプションが増えたのは間違いない。しかし、NEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)がまとめたオープンイノベーション白書によると、「3年前、10年前と比べて、外部連携が活発化している企業は半数に達しない」「オープンイノベーションの推進奨励に留まり、スローガン先行の企業が多い可能性がある」との調査結果が示されている(オープンイノベーション白書(概要版)15ページ)。

クローズドイノベーション : 社内の研究開発部門だけでイノベーションを起こすこと

オープンイノベーションを阻害する要因はさまざまであるが、ベンチャー企業側からよく指摘されるのが・・・

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2018/04/12 オープンイノベーションを阻害する要因(会員限定)

技術やアイデアを有するが資金力や信用力に乏しいベンチャー企業と、資金力や信用力はあっても研究開発に遅れを取ったり組織が硬直化して新規性に富んだアイデアを生み出すことができなくなったりしている大企業が協業すれば、自社に欠落したものを相互補完でき、Win-Winの関係を築くことが可能となる。こうした「大企業がベンチャー企業との連携を行うことでイノベーションを創出する取り組み」をオープンイノベーションという。

オープンイノベーションは、大企業とベンチャー企業の双方に恩恵をもたらし、社会全体を活性化させる可能性を有する有意義な取り組みである。例えば、P&Gではクローズドイノベーションには限界があるとして、オープンイノベーションを促進させ、プロダクト開発の50%を社外の知見を取り込んで行うことを目標としている。以前と比べると、ビジネスコンテストやコーポレートアクセラレーターの仕組みが充実してきたことに伴いオープンイノベーションの手法も多様化しており、大企業側にとってのオプションが増えたのは間違いない。しかし、NEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)がまとめたオープンイノベーション白書によると、「3年前、10年前と比べて、外部連携が活発化している企業は半数に達しない」「オープンイノベーションの推進奨励に留まり、スローガン先行の企業が多い可能性がある」との調査結果が示されている(オープンイノベーション白書(概要版)15ページ)。

クローズドイノベーション : 社内の研究開発部門だけでイノベーションを起こすこと

オープンイノベーションを阻害する要因はさまざまであるが、ベンチャー企業側からよく指摘されるのが大企業側にある“囲い込み癖”だ。ある非上場のAIベンダーの社長は「大手企業から共同開発の提案を受け、最終的には出資まで打診されることが幾度かあった。いずれのケースでも現場の担当者レベルでは『出資後も自主性を尊重する』と言ってくれるが、具体的な出資割合等の詰めに入る段階になると本社レベルから横槍が入り、『出資後は競合する可能性のある他社への技術提供はNG』と告げられ、出資受け入れを諦めた」と嘆く。

AIベンダー : AI(人工知能)の技術を用いてソリューションを提供する企業

このような大企業とベンチャー企業の関係破断はオープンイノベーションに対する考え方のズレに起因するものと言える。特許庁の「オープンイノベーションのための知財ベストプラクティス集」(15ページ)によると、大企業とベンチャー企業のオープンイノベーションの類型として次の3類型があるとしている。

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先のAIベンダーは共生型(C類型)を志向していたものの、大企業側が“囲い込み癖”を発揮しコミット型(B類型)を無理強いしようとしたことが交渉決裂の要因となった。

また、「オープンイノベーションのための知財ベストプラクティス集」(26ページ)には、知財・法務部がオープンイノベーションを阻害するケースとして「知財・法務部が最終段階になって出てきてリスクをくまなく調査。調査に数カ月を要してスピードダウン」「契約の際にも、リスクを避けるために自社だけに有利なものを提示」といった例が挙げられている。これは、上述したAIベンダーの社長が「どうしても囲い込みたいのであれば、AIの分野では当社の技術だけを使ってくれることを保証して欲しいが、大企業側がそのような義務を負うことは絶対にしない」とこぼしていたことと符合する。

オープンイノベーションの重要性を理解しつつも、社内での取り組みに不足を感じている上場企業の経営陣は、そもそも自分達がベンチャー企業側のニーズを理解しているかを自問すべきであろう。そのうえで、知財・法務部に対してオープンイノベーションへの協力を促せば、今以上にオープンイノベーションが活性化することは間違いない。

2018/04/11 機関投資家が語る「集団的エンゲージメント」が普及するために必要なこと

2017年11月8日 のニュース『集団的エンゲージメントを支援する「機関投資家協働対話プログラム』が始動」でもお伝えしたとおり、昨年10月には企業年金連合会と大手金融機関4社が連携して一般社団法人機関投資家協働対話フォーラムが設立され、集団的エンゲージメント(なお、機関投資家協働対話フォーラムでは、集団的エンゲージメントではなく「協働エンゲージメント」(=企業との協働対話)という言葉を使っている)を開始したほか、今年には生命保険会社10社が投資先企業との対話強化のために連携するという。このように、スチュワードシップ・コードを生み出した英国では既に普及している集団的エンゲージメントが日本でも本格化する兆しはあるものの、同時に大きな課題も認識され始めている。

集団的エンゲージメントは機関投資家の視点から様々なメリットが語られることが多い。機関投資家が最も期待する効果は、・・・

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2018/04/11 機関投資家が語る「集団的エンゲージメント」が普及するために必要なこと(会員限定)

2017年11月8日 のニュース『集団的エンゲージメントを支援する「機関投資家協働対話プログラム』が始動」でもお伝えしたとおり、昨年10月には企業年金連合会と大手金融機関4社が連携して一般社団法人機関投資家協働対話フォーラムが設立され、集団的エンゲージメント(なお、機関投資家協働対話フォーラムでは、集団的エンゲージメントではなく「協働エンゲージメント」(=企業との協働対話)という言葉を使っている)を開始したほか、今年には生命保険会社10社が投資先企業との対話強化のために連携するという。このように、スチュワードシップ・コードを生み出した英国では既に普及している集団的エンゲージメントが日本でも本格化する兆しはあるものの、同時に大きな課題も認識され始めている。

集団的エンゲージメントは機関投資家の視点から様々なメリットが語られることが多い。機関投資家が最も期待する効果は、アセットオーナー(年金や保険会社)やアセットマネージャー(運用会社)を問わず、少数株主である機関投資家の意見を吸い上げてもらうことができるという点である。少数株主単独で投資先企業に意見することは難しいからだ。また、集団的エンゲージメントの場で出た意見は、集団的エンゲージメントに参加したすべての機関投資家が一つの“アイデア”として共有することもできる。さらには、機関投資家が集団で議論することによって、投資先企業の企業価値向上に向けた新たな提案が出てくる可能性もある。もちろん、こうした提案は投資先企業にとってもメリットになる。

ただ、実際に集団的エンゲージメントを行うとなると、金融商品取引法上の大量保有報告制度や公開買付制度により、集団的エンゲージメントを行う他の投資家と保有割合の合算が求められ、単独でエンゲージメントを行う限りは不要な開示が求められることになるのではないかといった点が気になり、なかなか実行に移せないという状況もあるようだ(集団的エンゲージメントの法的問題については、(新用語・難解用語)集団的エンゲージメント、 2017年5月30日のニュース『「集団的エンゲージメント」明記で今後の機関投資家の動きは?』参照)。

大量保有報告制度 : 市場の透明性・公正性を高め、投資者保護を図ることを目的として、株券等の大量保有者に対し「大量保有報告書(or変更報告書)」の提出を義務付ける金融商品取引法上の制度。具体的には、①保有割合が5%超となった場合、②その後、保有割合が1%以上増減するなど重要な変更があった場合、それぞれ提出事由が生じた日から5営業日以内に「大量保有報告書(or変更報告書)」の提出が求められる(②の場合に提出するのは「変更報告書」)。

ある機関投資家は「我々はこうした法的問題の専門家ではないため、集団的エンゲージメントを実行するには法律の専門家や規制当局等のサポートが必要」と語る。また、機関投資家の間では“集団的エンゲージメントに関するガイドライン”が策定されることを期待する声も聞かれる。最近になって、集団的エンゲージメントの法的な論点に関する法律専門家の論文も散見されるようになったが(例えば商事法務No.2158(2018年2月15日)p15~21)、法的な問題についての議論が尽くされない限り、機関投資家が積極的に集団的エンゲージメントに取り組むのは困難と言えそうだ。

2018/04/10 同種の追徴課税で東証一部上場企業2社が異なる対応

2018年2月14日のニュース「消費税率アップで一部業界が苦境に」でお伝えしたとおり、ここ最近・・・

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2018/04/10 同種の追徴課税で東証一部上場企業2社が異なる対応(会員限定)

2018年2月14日のニュース「消費税率アップで一部業界が苦境に」でお伝えしたとおり、ここ最近マンション販売事業者が相次いで消費税の追徴課税を受けている。今のところマスコミ報道も見当たらないが、その数は既に数十件に上っているとみられる。その対象は東証一部に上場する大手企業にも及んでいる。例えば上記2018年2月14日のニュースでも紹介したムゲンエステートのほか、積水ハウスも追徴課税を受けている。

両社の追徴課税の内容はほぼ同じと思われるが、その後の両社の対応は異なる。ムゲンエステートは自社の税務処理等に誤りはないとの考えを示したうえで、追徴課税を不服として税務当局(国)と争う意思を表明、既に東京地方裁判所に訴訟を提起したことが確認されている。一方、積水ハウスは「当局からの指摘事項については、その一部に見解の相違もありました」としながらも、既に追徴税額の納付を終えており、税務当局と争うつもりはない模様だ(同社のリリースはこちら )。両社の対応が異なる背景には、ムゲンエステート社の追徴税額が約6億39百万円であるのに対し、積水ハウスの追徴税額は1億4千2百万円と金額が異なることもあるのだろう(ムゲンエステートは、税務当局(国)との裁判の結論が出るまでの間、当局の見解に従った税務処理等を行うこととしている)。

2015年11月25日のニュース「追徴課税に対する取締役の責任」でお伝えしたとおり、過去の裁判例では、追徴課税を受けたことについて取締役(あるいは監査役)の責任が認定されたケースは多くない。とはいえ、追徴課税が生じると、ROEの分子となる当期純利益が減ることになり、ROEの低下につながる。その意味では、株主価値を毀損しているのは間違いないだけに、上場企業の役員としては、追徴課税を受けないようにするように細心の注意を払うのはもちろんのこと、仮に不当と思われる追徴課税を受けた場合には、(追徴課税の額にもよるが)株主価値を守るために訴訟等(税金について争う場合、訴訟の前に国税不服審判所に不服申し立てを行う必要がある)も検討する必要があろう。

ROE : Return On Equity=株主資本利益率(当期純利益/株主資本)

日本企業は裁判で争うこと自体が自社のレピュテーションの毀損につながると考える傾向が強い。特に相手が“お上(ここでは税務当局=国)”となると腰が引けがちだが、難解な税法について税務当局との間で解釈・見解の相違が生じることは決して珍しいことではない。また、多額の追徴課税を受けた上場企業が、株主から「どうしてこのようなことが起こったのか?」「税務当局と見解が異なるというなら、なぜ争わないのか?」と問われないとも限らない。上場企業が多額の追徴課税を受けた場合には、少なくとも、追徴税額、訴訟期間・費用等を考慮して訴訟等に踏み切るかどうかを検討した痕跡は残しておきたいところだ。

2018/04/09 (新用語・難解用語)カスタマーハラスメント

顧客の中には不当な要求をしてくる者もおり、企業としては対応に苦慮することもあるだろう。もちろん、商談における正当な要求や、自社に非のある正当なクレームであれば貴重な意見として真摯に受け止め、今後の商品やサービスの品質向上に役立てるべきだが、“迷惑行為”と言えるほどの悪質なクレームとなれば話は別だ。

厚生労働省から(2018年)3月30日に公表された・・・

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2018/04/09 (新用語・難解用語)カスタマーハラスメント(会員限定)

顧客の中には不当な要求をしてくる者もおり、企業としては対応に苦慮することもあるだろう。もちろん、商談における正当な要求や、自社に非のある正当なクレームであれば貴重な意見として真摯に受け止め、今後の商品やサービスの品質向上に役立てるべきだが、“迷惑行為”と言えるほどの悪質なクレームとなれば話は別だ。

厚生労働省から(2018年)3月30日に公表された「職場のパワーハラスメント防止対策についての検討会報告書」には、「カスタマーハラスメント」や「クレーマーハラスメント」といった新用語により、これらを社会的な問題としてとらえる機運を醸成していくことが必要という意見も示されており、国も問題視していることがうかがえる(26ページ参照)。

ただ現状、こういった行為は厳密には「パワーハラスメント」に該当するわけではない。厚生労働省が2012年3月にとりまとめた「職場のパワーハラスメントの予防・解決に向けた提言」によると、「パワーハラスメント」とは「同じ職場で働く者に対して、職務上の地位や人間関係などの職場内での優位性を背景に、業務の適正な範囲を超えて、精神的・身体的苦痛を与える又は職場環境を悪化させる行為」と定義されている。この定義によれば、顧客は「同じ職場で働く者」ではないため、パワーハラスメントの行為者にはならないことになる。その一方で、同省が昨年(2017年)9月に作成した「職場におけるハラスメント対策マニュアル」には「取引先、顧客‥などもセクシュアルハラスメントの行為者になり得る」とあり(9ページ参照)、セクハラに関しては、顧客から性的な言動により嫌がらせを受けたケースも含まれるとされている。

もっとも、用語の定義はどうであれ、労働契約法上、使用者には労働者への安全配慮義務があるため、経営陣は顧客や取引先など外部の者からの著しい迷惑行為から自社の従業員を守る(心の健康も含め身体等の安全に配慮する)ことを考える必要がある。事業主が労働者の安全に配慮するための対応が求められるという点では、顧客や取引先からの迷惑行為(パワハラ)も職場内のパワハラと類似性があると言える(したがって、以下では「パワハラ」という表現を使う)。

安全配慮義務 : 労働者が安全に仕事できるよう配慮すべき会社の義務(労働契約法5条)

一般的なパワハラへの対処の方法としては、
①経営トップが、職場のパワーハラスメントを根絶する方針を明確に示す
②ルールを決める(就業規則等に関係規定を追加、予防・解決方針の作成等)
③従業員アンケート等による実態の把握
④教育・研修の実施
⑤組織の方針や取組みの周知・啓蒙
といったことが挙げられるが、顧客等からのパワハラに対し同様の対応をとるのは現実には困難だろう。そもそも顧客等は自社の就業規則等の適用範囲外であるうえ、また、顧客等に対して迷惑行為をやめるよう求めることは、その後の取引関係へ影響を考えれば容易ではない。

このように、顧客等からのパワハラは自社による対応が困難なだけに、問題が深刻化しやすい。顧客等と自社の板挟みとなる格好の被害者のメンタル面へのダメージは大きくなりやすく、最悪の場合、自殺といった結末を迎えることにもなりかねない。こうした事態を避けるため、取り急ぎ配置転換による対応などを検討すべきだろう。

自社の従業員が顧客や取引先に対するパワハラの被害者となることもあれば加害者となることもある。自社の従業員が加害者となった場合、表立っては声を上げにいくい取引先の被害者がSNS等で自社の悪評を流布することも十分考えられる。「カスタマーハラスメント」「クレーマーハラスメント」といった用語が流行の兆しを見せる中(政府側にも、“抑止力”を高める観点からその意欲が見られる)、自社の従業員が加害者にも被害者にもならないようにするためには、上場企業各社の経営陣が、自社の従業員に対し取引先等へのパワハラ行為をしないよう周知・啓発していくことも重要と言えそうだ。

2018/04/06 ガバナンス優良企業で、取締役報酬額改定議案に低賛成率

資生堂の第118回(2017年12月期)株主総会が3月27日に開催され、その議決権行使結果に関わる臨時報告書が翌28日に開示されている。同社はコーポレートガバナンス優良企業としてのレピュテーションが高いことで知られるが、今回の臨時報告書において目を引くのが、第4号議案「取締役の報酬額改定の件」の低賛成率である。事前行使における賛成率は他議案が96~99%のところ当該議案は・・・

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