2018/02/16 連結納税導入を検討する際の新たな論点

平成14年度(2002年度)税制改正で連結納税制度が導入されてから約16年が経ち、上場企業の間でも同制度を導入する企業は着実に増えている。・・・

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2018/02/16 連結納税導入を検討する際の新たな論点(会員限定)

平成14年度(2002年度)税制改正で連結納税制度が導入されてから約16年が経ち、上場企業の間でも同制度を導入する企業は着実に増えている。既に約15%の上場企業が導入しているとのデータもある。

連結納税制度とは、簡単に言えば、100%の持株関係にある企業グループに属する各企業の所得金額(≒黒字)と欠損金額(≒赤字)を通算して「連結所得金額」を計算し、この連結所得に対する法人税を親会社がまとめて納税する仕組み。例えば親会社の所得金額が100、子会社の欠損金額は100である場合、連結納税制度を採用していなければ親会社は所得金額100に対する法人税を負担しなければならないが、連結納税制度を採用していれば、親会社の所得金額100は子会社の欠損金額100と相殺され、税負担はゼロとなる。

しかし、実際に連結納税制度を導入するのはそう簡単ではない。その手続きや計算方法は極めて難解でミスが起きやすく、経理・税務部門の事務負担は確実に増加することになるほか、連結納税開始時等においては、本来であれば所得と相殺できるはずの過去の欠損金の一部を切り捨てなければならなくなる(=所得と相殺できなくなる)ケースや、子会社の資産を時価評価して評価益を計上しなければならないケースがあることなどから(連結納税制度の詳細はこちらを参照)連結納税制度の導入に踏みきれない上場企業も多い。とはいえ、ROEの分子となる当期純利益を増やすことになる「税負担の軽減」というメリットと、同制度を導入する上場企業が増えているという状況を考えると、いずれは取締役会で導入の要否がテーマとなることもあろう。また、同業他社が連結納税制度を導入しているのに自社がしていないとなれば、株主が納得する理由を用意する必要がある。

ROE : Return On Equity=株主資本利益率(当期純利益/株主資本)

こうした中、平成30年度(2018年度)税制改正を受け、連結納税制度を採用する際にもう一つ検討しなければならない事項が増えることになるので注意したい。2017年11月27日のニュース「税負担に雲泥の差も!税金を意識した設備投資や賃金の検討が必須に」でもお伝えしたとおり、平成30年度税制改正では、賃上げ、設備投資に積極的な企業の実質的な税負担を25%にまで引き下げる“賃上げ・投資減税”が導入される(下表参照)。

実質的な税負担 : 現状、日本企業の実効税率(法人税、住民税、事業税といった企業の利益に課税される税の総合的な負担率)は29.97%とされている。

賃上げ・投資減税の概要
出典:経済産業省資料「平成30年度 経済産業関係 税制改正について」3ページに基づき作成
適用要件 一定以上の賃上げと国内設備投資を達成
①賃上げ率3%以上
②国内設備投資 ≧ 減価償却費の9割
税額控除割合
(法人税からの控除額/法人税額)
給与等支給額の前年度からの増加額の15%(※)(法人税額の20%を上限)
※人的投資に積極的な企業(教育訓練費を一定以上増加させた企業)は20%(法人税額の20%が上限となる点は変わらず)

その一方で、(1)大企業の所得金額が前事業年度の所得金額を上回ること、(2)その大企業の平均給与等支給額が、前事業年度以下であること、(3)その大企業の国内設備投資額が、当期の減価償却費の総額の1割以下に留まること、という3つの要件をすべて満たせない賃上げ・投資に消極的な大企業(資本金1億円超又は従業員千人超)に対しては下記の租税特別措置)を適用させないことにより法人税負担を重くする制度(賃上げ・投資減税を「飴」とすると「鞭」に例えられる内容の税制であることから、“ムチ税制”と呼ばれている)が導入される(経済産業省「平成30年度 経済産業関係 税制改正について」6ページ参照)。

租税特別措置 : 一定の条件を満たすことで税金が軽減される優遇措置のこと

 適用が停止されるのは以下の3つの税制である。
研究開発税制
地域未来投資促進税制
IoT投資減税

研究開発税制 : 複数の計算方法があるが、例えば、試験研究費の増減に応じて6~14%。増加率が高いほど控除率が高くなる)をその事業年度の法人税額から控除する。
地域未来投資促進税制 : 地域の強み(観光資源、特産物等)を活かした先進的な事業への設備投資を対象に平成29年度改正で創設された。①総投資額2,000万円以上、②投資額が前年度の減価償却費の10%超、③「対象事業の売上高伸び率 ≧ 過去5事業年度の対象事業に係る市場規模の伸び率+5%」かつ「対象事業の売上高伸び率(%)がゼロを上回る」ことを条件に、機械装置、器具備品には特別償却40%、税額控除 4%、建物・附属設備・構築物にはそれぞれ20%、 2%の税制優遇がある(税額控除は税額の20%が上限)。
IoT投資減税 : 一定のIoT投資(最低投資額5,000万円 )に対して、30%の特別償却または3%の税額控除(「平均給与等支給額の対前年度増加率≧3%」の場合は5%)を認める措置。正式名称は「コネクテッド・インダストリーズ税制」である。データ連携等による生産性向上に必要なシステムやセンサー・ロボット等が対象となる。同税制の適用を受けるためには、①データ連携、②セキュリティ対策の実施、③生産性向上(労働生産性:年平均伸率2%以上、投資利益率:年平均15%以上)等を盛り込んだ事業計画について主務大臣の認定を受ける必要がある。

そして、このムチ税制は、たとえ連結納税制度の適用を受ける連結グループ各社(親会社または子会社)が“個別に”上記要件を満たしていたとしても、連結納税制度の適用を受ける“連結グループ全体”で満たせなければ、連結グループ各社(親会社または子会社)に対する上記の租税特別措置の適用は停止されることが当フォーラムの取材により確認された(根拠条文は改正租税特別措置法68条の15の7第6項)。

2017年11月27日のニュース「税負担に雲泥の差も!税金を意識した設備投資や賃金の検討が必須に」でも指摘したとおり、賃上げ・投資減税及び“ムチ税制”の導入に伴い、上場企業にとって、税負担を睨みながらの賃上げや投資の検討は欠かせないものとなったが、さらに、連結納税制度を既に導入している企業グループはもちろん、これから導入を検討する企業グループにとっても、「連結ベース」で両税制のいずれが適用されるのかを検討したうえで、連結納税による税負担の増減も併せて考慮する必要がある。近年、税理士法人や会計ソフト会社も「連結納税導入セミナー」などと題したセミナーを増やしており、セミナー案内や営業活動を受けた上場企業も多いことと思われるが、その難解さゆえ、連結納税導入コンサルティングの質にはバラツキがあると言われる。まずは信頼できる税理士法人等を選択したうえで、CFOが中心となり自社グループにとってベストの賃上げ、投資方針を固める必要があろう。

2018/02/15 対話の重点項目を5つに分類 「投資家と企業の対話ガイドライン」の詳細

スチュワードシップ・コードおよびコーポレートガバナンス・コード双方の要請を受け近年活発に行われるようになった企業と機関投資家の「対話」だが、限られた対話時間の中で効果的な対話を実現するためにはどこに重点を置くべきかなど、企業・機関投資家のいずれも手探りの状況と言える。

こうした中、2017年12月5日のニュース「CGコード、5つのテーマについて“ガイドライン”作成へ」でもお伝えしていたとおり、本日(2018年2月15日)開催されたスチュワードシップ・コード及びコーポレートガバナンス・コードのフォローアップ会議で「投資家と企業の対話ガイドライン(案)」(以下、対話ガイドライン)が明らかにされた。

対話ガイドラインでは、投資家と企業が取り上げるべき対話のテーマを「経営環境の変化に対応した経営判断」「投資戦略・財務管理の方針」「CEOの選解任・取締役会の機能発揮等」「政策保有株式」「アセットオーナー」の5つに絞り込んだうえで、それぞれのテーマについて、具体的に何について議論すべきかを列挙している。随所に「~しているか」「~が行われているか」といった言い回しが出てくることからも分かるように、投資家が企業に取り組み状況などを確認すべき事項を挙げたものと言えそうだ。これは、例えば政策保有株式については、そもそも縮減することが前提となっている点(表中の赤字)からもうかがえる。

このように対話ガイドラインで具体的に議論すべき事項として列挙されている事項(下表の中心の列)を分析すると、それぞれについて企業が「対話に先立ち整備・運用しておくべきもの」浮かび上がってくる。それを当フォーラムで整理したのが下表の右側の列だ。投資家との対話に臨む企業は、自社に欠けているものがないか、事前に点検しておきたい。・・・

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2018/02/15 対話の重点項目を5つに分類 「投資家と企業の対話ガイドライン」の詳細(会員限定)

スチュワードシップ・コードおよびコーポレートガバナンス・コード双方の要請を受け近年活発に行われるようになった企業と機関投資家の「対話」だが、限られた対話時間の中で効果的な対話を実現するためにはどこに重点を置くべきかなど、企業・機関投資家のいずれも手探りの状況と言える。

こうした中、2017年12月5日のニュース「CGコード、5つのテーマについて“ガイドライン”作成へ」でもお伝えしていたとおり、本日(2018年2月15日)開催されたスチュワードシップ・コード及びコーポレートガバナンス・コードのフォローアップ会議で「投資家と企業の対話ガイドライン(案)」(以下、対話ガイドライン)が明らかにされた。

対話ガイドラインでは、投資家と企業が取り上げるべき対話のテーマを「経営環境の変化に対応した経営判断」「投資戦略・財務管理の方針」「CEOの選解任・取締役会の機能発揮等」「政策保有株式」「アセットオーナー」の5つに絞り込んだうえで、それぞれのテーマについて、具体的に何について議論すべきかを列挙している。随所に「~しているか」「~が行われているか」といった言い回しが出てくることからも分かるように、投資家が企業に取り組み状況などを確認すべき事項を挙げたものと言えそうだ。これは、例えば政策保有株式については、そもそも縮減することが前提となっている点(表中の赤字)からもうかがえる。

このように対話ガイドラインで具体的に議論すべき事項として列挙されている事項(下表の中心の列)を分析すると、それぞれについて企業が「対話に先立ち整備・運用しておくべきもの」浮かび上がってくる。それを当フォーラムで整理したのが下表の右側の列だ。投資家との対話に臨む企業は、自社に欠けているものがないか、事前に点検しておきたい。

対話のテーマ
(対話ガイドライン中、「1~5」で示された大テーマおよび【】で示された中テーマ)
具体的に議論すべき事項
(≒投資家から企業への確認事項)

(対話ガイドライン中、「〇-〇」という形で示された事項のうち
主なものの要約)
対話に先立ち整備・運用しておくべきもの
(左欄を踏まえ、当フォーラムが整理したもの)
1.経営環境の変化に対応した経営判断 経営戦略・経営計画を策定・公表しているか。また、経営戦略・経営計画は経営理念と整合的なものとなっているか。 経営理念と整合的な経営戦略・経営計画の策定
経営陣が、自社の資本コストを的確に把握しているか。また資本コストを意識した経営を行っているか。 ・資本コストの把握(*)
・投資の採算性計算における資本コストの利用(資本コストをハードルレートとして利用)
・資本コストを上回るために実践した(している)経営努力の整理

ハードルレート : 投資案の収益率についての足切り基準。収益率がハードルレートを下回る投資案は採用すべきではない。

* 生命保険協会の調査(19ページの図表20)によると、約10%の上場企業が自社の資本コストを把握していない。

事業ポートフォリオの見直し方針が明確に定められ、見直しのプロセスが実効的なものとして機能しているか。 事業ポートフォリオの見直し方針(投下資本利益率が資本コストを下回る不採算事業からの撤退方針)の策定、方針策定に社外取締役が関与する体制作り

投下資本利益率 : 投下した資本(資金)に対する利益の率。ROIC(Return on Invested Capital)ともいわれる。

2.投資戦略・財務管理の方針 設備投資・研究開発投資・人材投資等を、戦略的・計画的に行っているか。 ・投資戦略の策定と進捗状況の把握
・無形資産への投資の重要性の認識(無形資産への投資の重要性は伊藤レポート2.0でもテーマに挙げられている。2017年11月2日のニュース『「伊藤レポート2.0」の提言が上場企業に与える影響』を参照)
経営戦略や投資戦略を踏まえ、財務管理の方針を適切に策定・運用しているか。 ・財務管理の方針の策定と財務管理状況の把握(資本コストを下げる資本政策の実行、手元保有資金の残高の適正性の検証など)
・経営者の視点によるMD&Aの開示
3.CEOの選解任・取締役会の機能発揮等 CEOの選解任・育成等 CEOに求められる資質について、確立された考え方を有しているか。 自社の経営者あるいは経営層として求められる人材像・人材要件の定義(【2017年12月の課題】「後継者計画(サクセッション・プランニング)の設計と運用」参照)
客観性・適時性・透明性ある手続により、十分な時間と資源をかけて、資質を備えたCEOを選任しているか。独立した指名委員会を活用しているか。 CEO候補者から独立(*)した指名委員会(任意のものを含む)の設置、第三者評価の実施など(【2017年12月の課題】「後継者計画(サクセッション・プランニング)の設計と運用」参照)
* 例えば、「過半数が社外取締役」「委員長が社外取締役」など。
会社の業績等を評価して、CEOが十分機能していないと認められる場合に、CEOを解任するための客観性・適時性・透明性ある手続きを確立しているか。 ・CEOの目標と実績の比較、実績が目標を大きく下回る場合の解任プロセスを“平時”に明確化しておく。
・英国のように、取締役会議長にCEOを解任する権限を持たせるなど(2016年10月25日のニュース『英国企業における「取締役会議長」の重み」参照)
経営陣の報酬決定 経営陣の報酬制度は、持続的な成長と中長期的な企業価値の向上に向けた健全なインセンティブとして機能するよう設計されているか。独立した報酬委員会を活用しているか。また、報酬制度や具体的な報酬額の適切性をステークホルダーに分かりやすく説明しているか。 株式報酬など、中長期的な企業価値と連動した役員報酬制度の導入、CEO等から独立(*)した報酬委員会(任意のものを含む)の設置。役員報酬制度の詳細な開示(株式報酬がどのようにインセンティブとして機能しているのかが見えにくいため、役員報酬制度の設計について詳細な開示を求める投資家は多い(2018年1月23日のニュース「企業と機関投資家の対話の現状」参照))。
統合報告等で報酬制度を分かりやすく説明
* 例えば、「過半数が社外取締役」「委員長が社外取締役」など。
取締役会の構成等 取締役会の多様性を確保しているか。独立社外取締役の資質は適切か、また、人数は十分か。 ・女性取締役、外国人取締役の選任、若手人材の抜擢など(2016年3月25日のニュース『「ダイバーシティ」の議論に欠けている観点」参照)など。独立社外取締役は3人以上の選任を目指す(2017年11月17日のニュース「グローバル機関投資家の本音」参照)
・独立社外取締役の所属元との取引関係の開示
独立社外取締役は、経営陣に対し、経営課題に対応した適切な助言・監督を行っているか。 ・取締役会評価の対象に独立社外取締役も加える。
・独立社外取締役の助言・監督により経営判断を変更した事例の集積
・取締役会での議論の内容の開示
監査役等の選任・機能発揮 監査役等(監査役・監査委員・監査等委員)に、適切な知識・経験・能力を有する人材が選任されているか。 会計の素養のある人材は含まれているかなど、監査役等のバックグラウンドの検証
4.政策保有株式 政策保有株式の適否の検証等 政策保有株式それぞれの銘柄の保有目的をステークホルダーに分かりやすく説明しているか。 ・政策保有株式の「銘柄ごと」の保有目的
・政策保有株式の保有目的の十分な開示(2018年1月23日のニュース「企業と機関投資家の対話の現状」参照)
政策保有株式の保有に伴う便益が資本コストに見合っているかを具体的に勘案した上で、取締役会などで個別銘柄の保有の適否についての意思決定を行っているか。 ・政策保有株式の保有に伴う便益の見える化(含み損益の算定等可能な限り便益を数値化)
・政策保有株式の保有の適否の意思決定(取締役会規程を改正し、取締役会の年間スケジュールに組み込む)
政策保有株式に係る議決権の行使基準を策定し、分かりやすく開示しているか。また、策定した基準に基づいて、適切に議決権行使を行っているか。 ・政策保有株式に係る議決権の行使基準の策定
・同基準の開示
・議決権行使結果も開示議決権行使結果も開示
政策保有に関する方針の開示において、政策保有株式の縮減に関する方針・考え方を明確化し、そうした方針・考え方に沿って適切な対応がなされているか。 ・例えば取締役会で政策保有株式の縮減に関する方針・考え方を決議する。
・いったん決議した後は、取締役会で定期的に政策保有株式の縮減の状況を担当役員に報告させる。
政策保有株主との関係 自社の株式を政策保有株式として保有している企業(政策保有株主)から当該株式の売却等の申入れがあった場合、取引の縮減を示唆するなどして売却等を妨げていないか。 政策保有株主から株式の売却の申入れがあったときの対応方針の策定
政策保有株主との間で、取引の経済合理性を十分に検証しないまま取引を継続するなど、会社や株主共同の利益を害するような取引を行っていないか。 政策保有株主との取引状況、取引価格などの資料をまとめておく。
5.アセットオーナー 自社の企業年金がアセットオーナーとして期待される機能を発揮できるための取り組みを実施しているか。 ・アセットオーナーとして、企業年金の運用(運用機関に対するモニタリングなどのスチュワードシップ活動を含む)の専門性を高めるため、運用に当たる適切な資質を持った人材の計画的な登用・配置(外部の専門家の採用も含む)など、人事面や運営面における取り組みを行う。
・例えば、エーザイでは自社の企業年金がESG対応やスチュワードシップ・コード受け入れを表明できるよう後方支援を実施している(『年金情報』2018年1月8日号より)。

2018/02/14 消費税率アップで一部業界が苦境に

政府は、消費税率10%への引上げに伴う増収分2兆円を財源にした幼児教育無償化など「人づくり革命」を昨年(2017年)12月に公表した「新しい経済政策パッケージ」に盛り込むなど、消費税率のさらなる引上げを既定路線化しつつあるが、消費税率の引上げが一部の業界に重くのしかかっている。・・・

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2018/02/14 消費税率アップで一部業界が苦境に(会員限定)

政府は、消費税率10%への引上げに伴う増収分2兆円を財源にした幼児教育無償化など「人づくり革命」を昨年(2017年)12月に公表した「新しい経済政策パッケージ」に盛り込むなど、消費税率のさらなる引上げを既定路線化しつつあるが、消費税率の引上げが一部の業界に重くのしかかっている。

消費税は事業者にとってはあくまで「預り金」という位置付けであり、事業者が商品やサービスなどの販売により「受け取った消費税」は税務署に納める必要がある。ただ、事業者自身も他の事業者から商品やサービスなどを購入した際には、消費税を支払っている。そこで、この「支払った消費税」は「受け取った消費税」から控除して、その差額を税務署に納めればよいことになっている。もっとも、実際に「支払った消費税」と「受け取った消費税」を集計するのは手間がかかるため、現行の消費税法では、簡便的な計算方法により税務署に納める消費税を算出することを認めている。一般的に、モノやサービスの売買には消費税がかかるが(消費税がかかる売上を「課税売上」という)、その一方で、土地や株の売買など一部の取引は消費税が非課税とされている(非課税となる取引の一覧はこちらを参照)。簡単に言えば、「課税売上高が5億円以下の場合」又は「課税売上割合が95%以上の場合」には、「支払った消費税」(これを「仕入税額」という)を全額「受け取った消費税」から控除することが認められるが、「課税売上高が5億円を超える場合」又は「課税売上割合が95%に満たない場合」には、「課税売上げに対応する部分」のみ控除が認められる。具体的には、以下の方法によることになる(国税庁ウェブサイトより抜粋)。

(1)個別対応方式  
その課税期間中の課税仕入れ等に係る消費税額のすべてを、

イ 課税売上げにのみ要する課税仕入れ等に係るもの
ロ 非課税売上げにのみ要する課税仕入れ等に係るもの
ハ 課税売上げと非課税売上げに共通して要する課税仕入れ等に係るもの

に区分した上で、「イ+(ハ×課税売上割合)」を仕入税額控除額とする方法

(2)一括比例配分方式
「課税仕入れ等に係る消費税額 × 課税売上割合」を仕入税額控除額とする方法。
※一括比例配分方式 は、課税仕入れ等に係る消費税額が上記(1)のイ、ロ、ハのように区分されていない場合、又は(区分 されていても)納税者がこの方式を選択する場合に適用される。

この仕入税額の控除額計算を巡り、近年マンション販売業界で深刻な問題が発生している。

これまでマンション販売事業者は、販売用のマンションを取得した際に支払った消費税(仕入税額)の全額を、上記(1)の個別対応方式の「イ 課税売上げにのみ要する課税仕入れ等に係るもの」とし、100%仕入税額控除の対象としてきた。ところが近年、国税当局は、マンション販売事業者が販売用のマンションを取得した際に支払った消費税は「ハ 課税売上げと非課税売上げに共通して要する課税仕入れ等に係るもの」である(すなわち、「イ 課税売上げにのみ要する課税仕入れ等に係るもの」には該当しない)として、「課税売上割合」を乗じた分しか仕入税額控除額を認めないとの更正処分を下し、マンション販売事業者に対して相次いで追徴課税を行っている模様だ。

更正処分 : 法人税や消費税などの申告の内容に誤りがあり、納税額が過少となった場合、納税者自ら正しい申告に修正する手続きを「修正申告」というが、納税者が修正申告に応じない場合、税務署が職権によって納税額の修正を行うことになる。これが「更正処分」である。

国税当局がこのような更正処分を下している背景には、マンション販売事業者が将来の販売用に購入したマンションを、販売するまでの間、住宅として賃貸していることにあるようだ。上記「非課税となる取引の一覧」にもあるように、「住宅の貸付け」には消費税がかからない(上記(17)参照)。要するに、将来的に販売(これは消費税の課税売上となる)するとはいえ、それまでは賃貸しているのだから、マンション販売事業者がマンション購入時に支払った消費税(仕入税額)は「課税売上げと非課税売上げに共通して要する課税仕入れ等に係るもの」であり、上記の算式に基づき、「仕入税額×課税売上割合」によって計算されるべきというわけだ。

本件が問題化している理由として、マンション販売事業者の課税売上割合が非常に低いということがある(つまり、「仕入税額×課税売上割合」も非常に小さくなり、仕入税額の大部分が控除できなくなる)。というのも、マンション販売事業者は非課税資産である土地の販売や貸付(上記「非課税となる取引の一覧」の(1)参照)を多く行っているからだ。更正処分を受けたことによって多額の追徴課税を受けたマンション販売事業者の中には、事業の継続が困難となっている事業者も出てきている模様。また、まだ更正処分を受けていないマンション販売事業者も、従来のように100%仕入税額控除を行っていればそのうち更正処分を受けるのは目に見えている。更正処分を回避するには、マンションの賃貸をやめるしかないだろう。そうなれば売上の減少は避けられない。

昨年(2017年)7月 31 日付で東京国税局の更正処分を受けた東証一部に上場する株式会社ムゲンエステート(中古マンション買取・再販・賃貸)では、同日に更正処分を不服として国と争う意思を表明している(同社のリリースはこちら)。

今後も同様の更正処分が続けば、マンション販売事業者はもちろん、その周辺業界、さらは住宅業界の景況感にも悪影響が出る可能性もある。消費税率が10%になれば(2019年10月1日~)影響税額も大きくなるため、さらに問題は深刻化することになりそうだ。

2018/02/13 東栄リーファーのMBOに旧村上ファンドが注目した理由

周知のとおり、ジャスダックに上場する海運企業の東栄リーファーラインは2月7日、MBO(経営陣による買収)の実施を発表している。同社社長らが出資する会社がTOBを実施し、議決権の3分の1を下限として株式を取得する。買付期間は3月23日までで、買付価格は800円。既に主な大株主は賛成の意思表明をしている。全体の6割近くを占める個人株主次第という面はあるものの、本MBOは問題なく成立し、同社は流通株式数がジャスダックの基準(500単位未満)に到達しなくなり、上場廃止になるものと予想される。

東栄リーファーは昨年(2017年)11月にも買付価格600円でのMBOを発表したが、一部大株主の賛同を得られず、個人株主の支持も集めきれなかったため、失敗に終わっていた。反対した大株主はオフィスサポート(9.93%、第1位)とレノ(8.69%、第2位)で、いずれも旧村上ファンド代表の村上世彰氏が関与する投資ファンドである。東栄リーファーのリリースによると、レノらは「公開買付け公表後に当社の株主となった」模様であることから、MBOをチャンスと捉えて株式を大量購入するという「イベントドリブン型」の投資戦略(個別企業の重要な「イベント」を投資機会ととらえる(ヘッジファンドの)投資手法)をとっていた可能性が高い。

では、東栄リーファーのMBOはなぜ旧村上ファンドに目をつけられたのだろうか。イベントドリブン型の投資戦略のターゲットとなるのは、・・・

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2018/02/13 東栄リーファーのMBOに旧村上ファンドが注目した理由(会員限定)

周知のとおり、ジャスダックに上場する海運企業の東栄リーファーラインは2月7日、MBO(経営陣による買収)の実施を発表している。同社社長らが出資する会社がTOBを実施し、議決権の3分の1を下限として株式を取得する。買付期間は3月23日までで、買付価格は800円。既に主な大株主は賛成の意思表明をしている。全体の6割近くを占める個人株主次第という面はあるものの、本MBOは問題なく成立し、同社は流通株式数がジャスダックの基準(500単位未満)に到達しなくなり、上場廃止になるものと予想される。

東栄リーファーは昨年(2017年)11月にも買付価格600円でのMBOを発表したが、一部大株主の賛同を得られず、個人株主の支持も集めきれなかったため、失敗に終わっていた。反対した大株主はオフィスサポート(9.93%、第1位)とレノ(8.69%、第2位)で、いずれも旧村上ファンド代表の村上世彰氏が関与する投資ファンドである。東栄リーファーのリリースによると、レノらは「公開買付け公表後に当社の株主となった」模様であることから、MBOをチャンスと捉えて株式を大量購入するという「イベントドリブン型」の投資戦略(個別企業の重要な「イベント」を投資機会ととらえる(ヘッジファンドの)投資手法)をとっていた可能性が高い。

では、東栄リーファーのMBOはなぜ旧村上ファンドに目をつけられたのだろうか。イベントドリブン型の投資戦略のターゲットとなるのは、専ら設定される株式買付価格や株式交換比率が企業の本源的価値と比較して割安な場合である。下表は、2回のMBO価格の比較・分析を行なったものだ。

  1回目 2回目
MBO買付価格 600円 800円
発表時の株価 523円(2017/11/7) 640円(2018/1/7)
6か月間の平均株価 421円(2017/5/8~) 541円(2017/8/7~)
1株当たり純資産(BPS 866.59円(2017/3期) 866.59円(2017/3期)

BPS : Book-value Per Shareの略称で「自己資本 ÷ 発行済み株式数」により算出され、会社が解散した場合の1株当たりの価値を示す。「1株当たり純資産」という日本語訳からは、分子は「純資産」と思われがちだが、「自己資本」なので要注意。BPSが高いほど、その企業の安全性が安定性は高いことになる。

1回目のMBO価格は直前時価に対して約15%(600円÷523円)のプレミアムにとどまっており、一般的なM&Aにおける30%前後のプレミアムと比較して廉価である感は否めない。もっとも、過去6か月間の平均株価と比較すれば約43%(600円÷421円)であるため、東栄リーファーとしては、正当な買付価格として設定したつもりであったと考えられる。しかし、同価格はBPSの7割程度すなわち1株当たりの会社解散価値を大きく下回っていることから、広く株主の納得感を得られるまでには至らなかったのだろう。

これに対して2回目のプレミアムは直前時価と比べて25%、過去6か月間の平均株価との比較では48%となっており、1回目と2回目のMBOの間の株価上昇の影響を差し引いても十分な水準となっている。BPSには若干及ばないものの、株主に対する説明力は格段に上がったと言えよう。昨年11月頃から投資を始めたオフィスサポートとレノにとっては、平均買付価格が過去3か月間の平均株価である651円と同額としても、22%のプレミアムを手にしたことになる。

今回の事例に限らず、昨今の資本市場においてはイベントドリブン型のアクティビズムが目立ってきており、アクティビストの要求に答える形で買付価格を引き上げた事例も散見される(例えば、パナソニックによるパナホームの完全子会社化に対するオアシス・マネジメントの異議表明など)。企業側としてはアクティビストの介入を防ぐためにも、当初から株主に対する説明力が高い条件を提示することが得策と言えよう。

2018/02/13 研修管理者に朗報! 受講者全員の受講レポートの確認が容易になりました

上場会社役員ガバナンスフォーラムの研修管理者向けのマイページに企業内受講者(法人会員を指します)全員の「マイ研修レポート」「新任役員向けトレーニングプログラム受講レポート」を研修管理者が簡単に取得できる機能が追加されました。

法人会員の場合、人事部等の研修管理者が企業内受講者の「マイ研修レポート」「新任役員向けトレーニングプログラム受講レポート」を確認するためには、従来は各受講者がレポートを印刷する等して研修管理者に提出する必要がありましたが、新機能を利用することで研修管理者として指定された方がマイページから各受講者の「マイ研修レポート」「新任役員向けトレーニングプログラム受講レポート」を簡単に確認できるようになります。これにより研修管理者は社内における役員トレーニング等の進捗状況や効果を容易に管理・測定することができます。

■研修管理者の設定
本機能をご利用になりたい法人会員の研修管理者は、その旨をこちらのお問い合わせフォームからお申し付けください。上場会社役員ガバナンスフォーラム事務局による設定が完了し次第、本機能をご利用いただけます(追加料金は不要です)。

■研修管理者による「マイ研修レポート」「新任役員向けトレーニングプログラム受講レポート」の確認方法
法人会員の研修管理者のマイページには、下の画像における赤点線枠内にある「マイ研修レポート(管理者用)」が表示されます(新任役員向けトレーニングプログラムの研修管理者の場合、「新任役員向けトレーニングプログラム(管理者用)」が表示されます)。
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「マイ研修レポート(管理者用)」をクリックして、開いた画面の「ユーザー名」欄(下の画像における赤点線枠内)を変更することで、研修受講者それぞれのレポートをご覧いただけるようになっております(本機能をご利用いただけるのは管理者のみとなっております)。
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2018/02/09 金融庁、FDルール運営上の「考え方」を明らかに

【セミナー開催のお知らせ】
2018年3月7日(水)にセミナー「フェア・ディスクロージャー・ルールを踏まえ、上場企業が整備すべき情報統制」を開催しました。

周知のとおり、一部の上場企業が証券会社のアナリストのみに未公表の業績情報を提供していた問題の発生などを受けて金融商品取引法が改正され、いよいよ(2018年)4月1日からフェア・ディスクロージャー・ルール(以下、FDルール)がスタートする(FDルールのポイントや導入の経緯などは、2017年11月9日のニュース「企業のタイプによって変わる「重要情報」の範囲」、2017年3月9日のニュース「フェア・ディスクロ・ルール成立までに上場会社がやるべきこと」参照)。2018年6月株主総会に向け本格化する機関投資家との対話(エンゲージメント)では、上場企業側はFDルールを念頭に「情報の公平な開示」を心掛ける必要がある。

また、株主総会の場でもFDルールを意識せざるを得なくなる。上場企業の取締役は、これまでも株主総会の場で「インサイダー情報」を流出させることにならないよう言葉を選びながら発言をしてきたはずだが、2018年4月1日以降に開催される株主総会では、FDルール上の「重要情報」に該当しないかどうかも考慮して、不用意な発言をしないよう注意しなければならない。インサイダー規制の軽微基準に該当する場合であっても、それが公表されれば「有価証券の価額に重要な影響を及ぼす蓋然性」があればFDルール上は「重要情報」に該当するためだ(軽微基準とFDルールの関係は2016年11月28日のニュース「フェア・ディスクロ・ルールとインサイダー規制、対象情報の違いは?」の最終段落参照)。

重要情報 : FDルール上の「重要情報」とは「当該上場会社等の運営、業務または財産に関する公表されていない重要な情報であって、投資者の投資判断に重要な影響を及ぼすもの」をいう(金商法27条の36)。ちなみにインサイダー取引規制では「重要事実」との言い回しが使われており、FDルールの「重要情報」とは別の概念になる。
軽微基準 : 当該情報がインサイダー取引規制における「重要事実」に該当するかどうかを判定する基準であり、たとえば決算情報のうち売上高の予想値の場合、上下10%未満の変動率であれば、「重要事実」に該当しないことになる。

FDルールの施行を目前に控える中、今週火曜日(2018年2月6日)には、ようやくFDルールのガイドラインの“確定版”が金融庁より公表されている。本ガイドラインの公開草案は昨年中(2017年10月24日付)に公表されていたが、同公開草案では「何をもって重要情報とするのか」という“量的基準”は示されていなかった(2017年11月9日のニュース『企業のタイプによって変わる「重要情報」の範囲』を参照)。確定版と公開草案と比較してみると、・・・

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