2025/06/04 東証要請への非対応企業が抱えるリスク(会員限定)

近年、資本効率が投資家の大きな関心事となる中、3月決算企業の2025年株主総会では「資本コスト」に関連する株主提案が相次いでいる。


資本コスト : 「資金提供者(債権者+株主)に対するリターン」のこと(なお、株主に対するリターンには、配当のほかキャピタルゲインも含まれる)。資金提供者に対するリターンが適切にできなければ、債権者は会社に資金の返還を求め、株主は株式を売却(=株価が下落する)せざるを得ない。したがって、会社にとって資本コストは「資金提供者に対するリターンの目標値」と言える。

“資本コスト元年”と言われる2024年は、東京証券取引所が2023年3月にプライムおよびスタンダード市場上場企業に向け「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応等に関するお願いについて」(以下、東証要請)を公表したことを契機に、企業、投資家ともに資本効率や株価水準への意識を一段と高める年となった。この傾向は今年(2025年)も続いており、「資本コスト」は投資家と上場企業の対話における最重要論点の一つとして定着した感がある。

当フォーラムが、東京証券取引所に上場する3月決算企業のうち株主提案を受けた企業を対象として、提案理由に「資本コスト」という文言が含まれているかどうかを調査したところ、2024年は29社、2025年は28社と、ほぼ同水準で推移していることが分かった(2025年分は5月末までに開示された企業の資料を基に集計。提案後に取り下げられた案件も含む)。

株主提案の提案理由に「資本コスト」という文言が含まれている企業
2024年3月決算企業 2025年3月決算企業
京成電鉄、サンテック、ダイドーリミテッド、三京化成、空港施設、日邦産業、遠藤照明、佐田建設、ヤマト、フクダ電子、わかもと製薬、天馬、大阪製鐵、戸田建設、リズム、京阪神ビルディング、文化シヤッター、KPPグループホールディングス、極東開発工業、日本化学産業、東洋証券、エスケー化研、ヨータイ、東亜道路工業、八十二銀行、豊田自動織機、淀川製鋼所、ハウス食品、リンナイ 中部水産、東京ラヂエーター製造、ウィザス、巴コーポレーション、中山製鋼所、JFEシステムズ、光世証券、日産東京販売ホールディングス、セコム、HSホールディングス、遠藤照明、佐田建設、鶴見製作所、ワコム、わかもと製薬、日本製紙、T&Dホールディングス、マースグループホールディングス、ホギメディカル、ナカノフドー建設、ヤクルト本社、浅香工業、愛知時計電機、八十二銀行、ニッタ、淀川製鋼所、リンナイ、豊田自動織機

2025年3月期の株主総会に向け上程された資本コストに関連する株主提案を内容ごとに類型化すると下表のとおり(赤字は「資本コスト」「東証要請」または類似用語)。

■東証要請の開示や実践を義務化(開示の充実や資本コスト経営の実践の義務化の視点)
企業名 株主提案の内容 株主提案理由の抜粋
東京ラヂエーター製造 定款変更(「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応」の開示の義務化) 重い腰を上げるかのように、当社は本年3月18日に「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応について」を開示しましたが、具体的な施策に欠ける稚拙な内容でした。産業構造の転換を踏まえ、多くの自動車部品会社が、需要減少が見込まれる製品分野を補う注力分野を明示し、具体的な予想数値を伴った戦略を既に公表していますが、当社は、EV化への対応、地域戦略、財務戦略などで、詳細な説明資料を開示していません。
(中略)
大きな変革期を迎える自動車部品業界にあって、当社は、現状についても将来についても、株主に対して十分な情報提供をしているとはいいがたい状況です。不十分な開示が株主に不安を与え、株価低迷の一因となっている現状を打破するため、詳細な経営計画の作成・開示、及びその進捗状況の丁寧な説明を求め、上記議案を提案いたします。
日産東京販売ホールディングス 定款変更(「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応」の開示の義務化) 当社が最後に資本コストを公表した2023年11月10日に、当社はエクイティスプレッドがプラスである、すなわち理論PBRが1倍を上回る旨を説明していますが、実際はPBR1倍を下回っています。そのため、当社が株主資本コストを実態よりも過小に想定していることが疑われます。加えて、当社は2019年3月期から2024年3月期にかけて、日産自動車株式会社が議決権の92%を保有する日産ネットワークホールディングス株式会社から、総額約70億円に及ぶ土地・建物の取得を行っており、その結果、当社の土地の貸借対照表残高は270億円を超えています。このような不透明な取引が、当社の株主資本コストを引き上げる要因となっていることが懸念されます。
セコム 定款変更(「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応」の精神に則った経営の実践) 当社は、東証要請に基づく開示状況は開示済となっておりますが、資本コストの比率や、バランスシートの効率性に関する分析、株主還元の金額規模を含む経営資源の配分方針の開示がありません。当社がセコムグループロードマップ2027で掲げたROE10%目標を達成し中長期的な企業価値を向上していくためには、バランスシートをベースとする資本コストや資本収益性を意識した経営を実践すべきです。弊社はポイントと事例に記載の項目において、3.バランスシートが効率的な状態になっているか点検しその改善計画の開示と実践、4.経営資源の適切な配分を意識した抜本的な取り組みとキャピタルアロケーション方針の開示は、当社にとって特に改善の必要性が高い項目であると考えます。当社がこの具体的な内容を開示することによって、東証要請の趣旨である中長期的な目線を持つ株主・投資者の期待に応えることができると考えます。
HSホールディングス 定款変更(「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応」の開示の義務化) 2025年4月23日現在、当社は「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応」を未だに公表していません。そして、議案「剰余金の処分の件」にて述べたとおり、当社のROEは10%を上回る水準を維持しているにもかかわらず、PBRは0.35倍と異常に低い水準で評価されています。そもそも当社は、中期経営計画を策定していないばかりか、業績予想や配当予想も一切開示していないため、株主が当社の今後の経営方針や資本政策を知るために必要な情報が決定的に不足しています。
(中略)
当社の株主価値向上及び株主総会における議論の活発化のため、定時株主総会における株主の権利行使期日前までに当社の最新の「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応」を明らかにしていただきたいと存じます。また、すみやかに「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応」を開示していただくことに期待します。
定款変更(資本コストを踏まえた関連当事者取引の情報開示) 当社が近年発表した投資案件は、すべてがMC社、税所篤氏又は服部純一氏との間の関連当事者取引であり、このこと自体が上場会社として極めて異常な事態といえます。提案株主は、特に(1)から(3)に挙げる関連当事者取引について、資本コストの観点から妥当性に疑義があると考えています。
鶴見製作所 定款変更(「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応」の開示の義務化) 東京証券取引所は2023年3月に上場会社に対し「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応」を要請し、2024年2月に公表した「投資者の視点を踏まえた『資本コストや株価を意識した経営』のポイントと事例」の中で「単に足元のPBRが1倍を超えているか、ROEが8%を超えているか、というだけではなく、資本収益性や市場評価に関して、投資者の視点を踏まえて多面的に分析・評価する」こと、「資本コストや株価を意識した経営の本質は、中長期的な企業価値向上に向けた経営資源の適切な配分を実現することであり、上記の分析・評価とあわせて、価値創造に向けて自社のバランスシートが効率的な状態となっているか点検する」ことを期待しています。当社は2025年3月24日付で「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応」のプレスリリースを発表しましたが、資本コストや収益性の開示はあるものの、特に経営資源の適切な配分に関しては具体性を欠くものと言わざるを得ません。従って、当社の東証要請への対応が形式面に留まらず実効性の高いものになるよう本議案を提案します。
ナカノフドー建設 定款変更(資本コストの開示) 当社は上場の意義が問われている。PBRの1倍割れだけでなく、当社コア事業である建設部門の事業価値(EV) がマイナスとなる水準まで株価が低迷する場面が頻出している。EVマイナスとは、プレミアムなしで当社が買収された場合、建設部門の事業がタダで手に入るうえに、お釣りが返ってくる異常なバリュエーションである。
背景にあるのは、過剰資本と資本コストをカバーできない資産の低い収益性にある。具体的には、・・・
(中略)
2023年に11月に開示した「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応について」において、当社は株主資本コストを約 5.1%と算定しているが、PBR がその後も大幅に 1 倍を下回っており、また、保有不動産の含み益を勘案した実質的なPBRはさらに低くなるため、同算定は非現実的である。当社が 2025 年 3 月に発表した成長戦略のリターンが資本コストを上回ることが不透明であることからも、株主から見た資本コスト(株主資本コスト)だけでなく、事業のハードルレートたる資本コスト(加重平均資本コスト、WACCを適切に把握、定期的に開示することは少数株主の利益に資する。
ヤクルト本社 定款変更(「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応」の開示の義務化) 当社は「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応」を発表し、資本コストや収益性の開示はしています。一方、当社の現行資本配分は、資本の6割しか事業に投下されておらずバランスシートが非効率な状態と言わざるを得ません。この様な当社の状況を鑑みると「経営資源の適切な配分を意識した抜本的な取組みを行う」点や「中長期的に目指す姿と紐づけて取組みを説明する」といった経営資源の適切な配分に関して、検討・開示が不十分です。従って、当社の東証要請への対応が形式面に留まらず実効性の高いものになるよう本議案を提案します。
ニッタ 定款変更(「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応」の開示の義務化) 当社は、東証要請に基づく開示状況は開示済となっており、中長期経営計画「SHIFT2030」フェーズ2おいて、事業ROICの定量目標や資本コスト7%を意識した投資判断など資本効率改善の取組みへの開示は評価できるものです。しかし、当社のPBRは0.6倍台と1倍を大きく下回って推移しており、これは当社の株価が清算価値より低く株式市場から評価されていることを意味します。東証要請では、「PBR1倍割れは、資本コストを上回る資本収益性を達成できていない、あるいは、成長性が投資者から十分に評価されていないことが示唆される1つの目安」とされ、東証要請に対応するために当社はさらなる取組みと実践が必要です。
当社は事業セグメントから得られる収益である営業利益だけではなく、持分法適用会社から得られる持分法投資利益が収益の柱となっており、投資家は持分法適用会社を含んで当社を評価します。しかし、当社の定量目標には当社全体の資本効率の指標であるROEの開示がなく、東証要請の趣旨である投資者の視点を踏まえた開示としては不十分です。また、当社はキャッシュ・アロケーションに関する項目の開示はあるものの、株主還元、成長投資資金、運転資金の具体的な金額規模の開示がなく、ポイントと事例に記載のあるバランスシートが効率的な状態になっているかという視点の開示が不十分であると考えます。当社がこれらの具体的な内容を開示することによって、東証要請に趣旨である中長期的な目線を持つ株主・投資者の期待に応えることができると考えます。
リンナイ 定款変更(「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応」の開示の義務化) 東証は2023年3月に上場会社に対し「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応」を要請し、その中で「単に足元のPBRが1倍を超えているか、ROEが8%を超えているか、というだけではなく、資本収益性や市場評価に関して、投資者の視点を踏まえて多面的に分析・評価する」こと、「資本コストや株価を意識した経営の本質は、中長期的な企業価値向上に向けた経営資源の適切な配分を実現することであり、上記の分析・評価とあわせて、価値創造に向けて自社のバランスシートが効率的な状態となっているか点検する」ことを期待しています。
現状、当社株主が託した資金は半分しか事業に投下されず、残りは地震等への備えとして現金等の不稼働資産に充てられています。結果、当社のROEは適正な資本政策下で2桁後半水準達成が容易に可能でありながら8%程度に留まっています。当社の東証要請への対応が形式面に留まらず実効性の高いものになるよう本議案を提案します。
豊田自動織機 定款変更(「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応」の開示の義務化) 当社においては、2024年5月に「企業価値向上の取り組み」を発表し、その中で公表された株主還元や政策保有株式売却の金額規模は、当社経営陣・取締役会による企業価値向上への取り組みが本気である事を印象付けるものでした。弊社は株主提案に込めた考えと大枠において整合的と考え、2024年の株主提案を撤回しました。一方、併せて2024年に弊社が当社取締役会に提案した下記3つの改善点については現状、対応が確認できていません。
1.資本コストや株価の「意識」を定量的に行う事。
東証要請において一番肝心な点は上場企業が自社の資本コストや株価を分析し見解を持つ事です。弊社が拝見する限り、貴社は現時点で自社の資本コストやあるべき株価水準を(少なくとも定量的には)明確にされておられません。
2.投資判断基準としての投下資本利益率(ROIC)を採用し、その目標をコミットする事。
原則として個別投資案件の評価・意思決定はROICが(加重平均)資本コストを超えるかどうかによって判断されるべきです。資本収益性が資本コストを満たさない投資は企業価値を棄損するものです。当社「企業価値向上の取り組み」はROE改善目標へのコミットを示しているものの、「R」の改善は既存事業が中心となってけん引すると理解しています。1.5兆円もの成長・基盤投資がそれぞれどの程度のリターンを生み出すのかは現時点で不透明感が強く、これらが資本コストを下回るものであれば長期的に企業価値の棄損につながる事を懸念します。
3.トップマネジメントによる株主・投資家との対話の機会を一層充実する事。
トップマネジメントと投資家・株主との対話は企業価値向上プロセスのエンジンであり、私共はこれを少なくとも四半期に1回程度の頻度を確保して頂くことを希望します。
上記はいずれも「ポイントと事例」に内包されております。定款の記載事項にふさわしく普遍的な内容とするため、要領は「ポイントと事例」の大半を網羅するものとしました。


PBR : Price Book-value Ratio=株価純資産倍率(株価÷1株当たり株主資本)。株価が1株当たり純資産(BPS:Book value Per Share)の何倍まで買われているか(=1株当たり純資産の何倍の値段が付いているか)を指す。PBRが1.0を大幅に下回る場合、投資家が企業の将来性に疑問を持っていたり、減損リスクのように潜在的な資産の含み損が多額にのぼる可能性が株価に織り込まれていたりすることを示唆する。
ROE : ROE(Return On Equity = 株主資本利益率)とは株主資本に対する当期純利益の割合であり、「当期純利益 ÷ 株主資本」により算出される。
キャピタルアロケーション : 調達した資金、事業活動を通じて得た資金をどこに投資するか、どのように使うかを判断すること
関連当事者取引 : 「関連当事者」とは、取締役や主要株主、親会社など会社と関係の深い個人や法人のことであり、「会社と関連当事者との取引」は有価証券報告書等で開示(これを「関連当事者取引注記」という)しなければならない。
EV : 「Enterprise Value」の略。一般に「株式時価総額+純有利子負債」によって算出される。
WACC : 「Weighted Average Cost of Capital=加重平均資本コスト」の略であり、要するに「資本コスト」である。WACCは文字通り負債コスト(金利)と株主資本コスト(配当+キャピタルゲイン)を加重平均して算定される。

■配当増額(資本構成の最適化の視点)
企業名 株主提案の内容 株主提案理由の抜粋
中部水産 定款変更(定款に「株主資本配当率(DOE)を3%とすることを追加」 僅かばかりの手数料のために循環取引に巻き込まれてしまった原因の一つは不必要なまでの金融資産を保有し、金払いがよかったことが原因の一つであったことが、調査報告に記されている。当社は資金の使い道に困り、2006年以降、既存の保有工場の転換による不動産賃貸だけではなく、新たに賃貸マンション、賃貸駐車場を購入するに至っている。伊藤レポートによれば、株主資本コストは最低でも7%であるとのことである。当社が行なってきているこれらのいわば不労所得を稼ぐための投資は資本コストを下回っていると想定される。株主は必要であれば、自ら、賃貸マンションの購入やREITなどで同様の投資を行うことができるから、余剰な資本は速やかに配当などにより、株主に返還すべきである。
中山製鋼所 剰余金処分(配当の増額) 資本効率の面でも、ROEは過去5年で平均6.1%であり、一般的な株主資本コストとされる8%を下回っており、資本効率及び株式市場からの評価が低い状況が長期にわたり続いています。
佐田建設 剰余金処分(配当の増額) 当社の中期経営計画どおり、PBR1倍を恒常的に達成するためには、市場評価を高め、過剰な自己資本を圧縮することが必要不可欠であるところ、そのためにはDOE8%の相当の配当の実施が必要です。当社の中期経営計画では、WACCを8.5%と公表していますが、ここから提案株主は当社の株主資本コストは8%台にあると推計しています。投資家の視点から見れば、株主資本コストは投資家が要求する収益率の最低ラインです。自社株買いによる株主還元を継続したうえで、少なくともDOE8%に相当する配当を実施しなければ、市場評価を高め、PBR1倍を恒常的に維持することはできません。
マースグループホールディングス 剰余金処分(配当の増額) 資本効率の面では、一般的な資本コストである8%に対し、当社のROEは過去5年平均で5.4%と低位で推移しています。直近の2023年度では10.2%でしたが、これは改札需要による一過性の押し上げであり、実力ベースでは十分な資本効率があるとは言えません。これは現行の配当性向30%以上を目処とする保守的な方針により、株主価値向上策が不十分なまま純資産が過剰に積み上がっていることに起因しています
浅香工業 剰余金処分(配当の増額) 東証から「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応等に関するお願いについて」が出されております。また、資本コストを上回る資本収益性を達成できていてもPBR1倍を割れているなど十分な水準に達していない場合には成長性が投資者から十分に評価されていないことが示唆されます。とあります。
愛知時計電機 剰余金処分(配当の増額) 資本効率の面では、一般的な株主資本コストとされる8%程度に対し、当社の資本効率はROE7%台と十分でない水準で推移しています。これは過去の過大な設備投資による規模拡張路線を行ったものの利益が十分に稼げていないこと、さらには現状の配当方針(配当性向 30~40%)が保守的であり、十分な株主価値向上策を行わないまま純資産を必要以上に抱えていることが要因です。この方針が継続されている以上、今後の企業価値向上は望めません。株主還元においては、中長期的な企業価値の向上に向けて、積極的な利益還元を行い、自己資本の過剰積み増しを行わずにコントロールしていく方針を明確にすることが望ましいと考えます。 そのため、当社の株価の評価の改善を図るためにも、株主への還元水準の引上げ、すなわち配当下限としての DOE5%の導入および配当性向 60%への見直しを念頭に、今期においても相当する金額を配当とすることを提案いたします。
淀川製鋼所 剰余金処分(配当の増額) 前号議案の提案理由で述べた通り、当社はこれ以上自己資本を積み上げる必要はなく、現行の株主還元方針では資本コストの低下、ROEの向上は見込めない。そのため、株主還元方針を現在の「年間配当金200円以上」「連結配当性向75%以上」から「連結配当性向100%、DOE6%」へ変更していただきたい。


DOE : 「DOE(Dividend On Equity ratio=株主資本(純資産)配当率」は、株主資本(株主からの出資金に、これまでの事業活動によって稼ぎ出した利益を加えたもの。貸借対照表の「資本の部」の合計)に対して会社がどの程度の配当を行っているかを示す指標であり、「配当総額/期末時点の資本の部の合計」により算出される。
循環取引 : 特定の関係者の間で利益を乗せて売買を繰り返す取引。経済的実態の伴わない取引であり、最終的には関係者の利益が乗った高値で買い戻す必要があるため、粉飾取引の一つに位置付けられている。

■自己株式取得(資本構成の最適化の視点)
企業名 株主提案の内容 株主提案理由の抜粋
遠藤照明 自己株式の取得 自己資本の充実は、財務の安定性を高めることをとおして企業価値の向上に資することは言うまでもないことです。しかしながら、内部留保を最優先する過度に保守的な資本政策をとり過大な自己資本を確保することは、加重平均資本コス卜(以下、「WACC」と言います。)の上昇により企業価値を引き下げる効果を持つのは、コーポレー卜ファイナンス理論の教示するところです。
(中略)
本提案は、適切な自己資本比率を維持しWACCを妥当な水準に保つことで、有効な財務リスク管理と中長期的な企業価値向上を両立することができるとの考えに基づいています。より具体的には、中長期的な自己資本比率の目標値を 50%において安定的に資本政策を運営することで中長期的な企業価値の向上を図ろうとするものです。単発の自己株式の取得ではなく、明確な資本政策にもとづく継続的な自己株式の取得が当社の中長期的な企業価値向上に資すると考えて、本件を提案します。
ワコム 自己株式の取得 2024年12月末時点において、当社の現預金同等物は182億円と、有利子負債の金額を上回る、いわゆる「ネットキャッシュ」の状況にあり、レバレッジが活用され資本効率を意識した経営を行うどころか、レバレッジが全く活用されていないために加重平均資本コストが株主資本コストと等しい、いわば逆ザヤの状況にあります。当社は、企業価値が過去3年で約6割減少するなど、大幅に企業価値が毀損した経営が継続しており、東京証券取引所の要請する「資本コストや株価を意識した経営」の要請に十分な配慮がされていない状況にあります。このような中、上記のような資本政策を継続していることは、最適資本構成の考え方を取締役会が十分に理解しておらず、資本効率の低迷を放置しており、このようなガバナンス体制や資本政策が、企業価値低迷の一因となっていることは明らかと言えます。
リンナイ 自己株式の取得 一に当社は余剰資金を有しています。無借金の当社は2024年12月末で政策保有株式含む金融資産を1,855億円、不稼働不動産を258億円(ショールーム用に2年前に購入した未だに不稼働の物件であり、消費者との接点強化には賛同だが、資本コストの観点からは正当化できない)保有しています。又、売上の8割が取替需要の当社は安定事業を有し、過去10年で平均500億円超の償却前利益(EBITDA)を稼いでいます。成長投資に必要な資金は将来キャッシュフローの範囲で調達可能です。
第二に当社の株価は割安です。当社のPBRは足元1倍程度で推移し成長企業である当社の無形の価値を株価は織り込んでいません。又、世界の主要な競合と比較し、PBR、PEREV/EBITDA(事業価値/償却前利益)といった何れの指標においても、遥かに低く評価されています。
弊社は、当社が不稼働資産を売却し自社株買いを実施する事で資本効率・一株当たり株主価値の向上を図る事が全株主の利益に資すると考えます。


ネットキャッシュ : 現預金−有利子負債
レバレッジ : 株主資本(自己資本)を1とした場合、その何倍の総資産を有しているかを示す数値。「総資産/株主資本」によって計算される。レバレッジ(=テコ)が大きい会社とは、借入金の大きい会社である。レバレッジが大きければ、株主資本よりも大きな取引を行うことができる。ただし、その反面、有利子負債が増加して、金利負担、返済負担が増加し、会社の収益性が下がったり、財務リスクを抱えたりする可能性がある。
EBITDA : EBITDA (Earnings Before Interest, Taxes, Depreciation, and Amortization 「エビーダ」「イービッダー」「イービットディーエー」などと呼ばれる)とは「現金ベースの利益概念」であり、支払利息、税金、有形固定資産の減価償却費、無形固定資産の償却費を差し引く前の利益を指す。損益計算書の営業利益(支払利息や税金が控除される前の利益)に有形固定資産の減価償却費および無形固定資産の償却費を足すことで算定が可能であるため、フリーキャッシュフロー(現金ベースの利益概念の一つで、営業活動によるキャッシュフローから投資活動によるキャッシュフローを控除して算定する)よりも簡易的に算定することができる点に特長がある。
PER : Price Earnings Ratio=株価収益率(株価/1株当たり純利益)
EV/EBITDA : EV(Enterprise Value=企業価値。株式時価総額+純有利子負債)をEBITDA(Earnings Before Interest, Taxes, Depreciation, and Amortization=利息・税金・減価償却前利益。営業利益+減価償却費+利息費用+税金により算出する。現金支出を伴わない減価償却費の影響を排除し真のキャッシュフローを把握するとともに、利息や税金の影響を排除し純粋な営業活動の収益力を把握する)で割った倍率のこと。企業がキャッシュを生み出す力を基に企業価値を評価するための指標であり、M&A(企業の買収・合併)や企業価値評価の際に広く用いられている。EV/EBITDAが高いほど、企業の収益力が高いと評価される。

■自己株式消却(資本構成の最適化の視点)
企業名 株主提案の内容 株主提案理由の抜粋
光世証券 定款変更(株主総会の普通決議をもって、自己株式の消却を行うことができるようにする) 当社は現状極めて高い資本コストで経営を行っており、株主還元の拡充及び資本効率の向上に向けた対策をほぼ提示していない現状において、喫緊に資本コストを下げる必要があります。
(中略)
改めまして、当社においては資本コストや株価を意識した経営の具体的な対策方針が示されていない中、上記提案が受け入れられない場合は当社としての対案の提示が出されるべきと考えます。
■剰余金の配当等の決定機関を株主総会に変更(資本構成の最適化の視点)
企業名 株主提案の内容 株主提案理由の抜粋
淀川製鋼所 定款変更(剰余金の配当等の決定機関を株主総会に変更) 当社の中期経営計画における株主還元方針は「年間配当金200円以上」「連結配当性向75%以上」だが、当社の自己資本比率は2024年12月末現在で、約72%と非常に高く、これ以上自己資本を増加させてもROEが低下するだけである。当社のPBRは過去25年間、解散価値である1倍を安定して上回った期間が一度もないが、これはROEが株主資本コストに満たないことが主因である。
■政策保有目的株式関連(資本効率の視点)
企業名 株主提案の内容 株主提案理由の抜粋
日本製紙 定款変更(政策保有株式の目的の検証と結果の開示) 2023年1月に東京証券取引所から公表された「市場区分の見直しに関するフォローアップ会議の論点整理」においては、資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた計画策定・開示が求められ、多くの上場会社が、政策保有株式の保有に関する見直し、縮減方針を開示しています。一方で、当社は、直近5年間、非上場株式を中心に政策保有株式の縮減を進めてきましたが、上場株式については遅々として縮減が進んでおらず、十分な進展があったとは言えません。そこで、当社の政策保有株式の縮減を速やかに実施するべく、本定時株主総会終結から1年の期間を定め、期限までに政策保有株式の全てを売却することを当社に義務付ける旨の規定を定款に設けることを提案します。
定款変更(政策保有株式の目的の検証と結果の開示) 政策保有株式の保有目的について、当社及び保有先企業のコーポレート・ガバナンスの観点からの適切さ、資本コストに見合った便益及びリスクの有無の検証を取締役会にて行い、その結果をコーポレート・ガバナンス報告書で開示することを提案します。
愛知時計電機 定款変更(政策保有株式の目的の検証と結果の開示) 東京証券取引所が公表している「コーポレートガバナンス・コード【原則1―4.政策保有株式】」においては、上場会社が政策保有株式として上場株式を保有する場合は、その保有目的の適切性や、保有に伴う便益及びリスクが資本コストに見合っているか等を精査し、検証結果を開示することが求められています。 政策保有株式の保有は、資本効率の悪化を招くだけでなく、安定株主の維持や恣意的な益出し手段として機能する可能性があります。また、当社が取引先企業の大株主として政策保有株式の保有を継続することにより、取引先企業の少数株主の利益を損なう利益相反の間題が発生し、相互にガバナンス上の懸念となる可能性があります。
そこで、政策保有株式の保有目的について、当社及び保有先企業のコーポレート・ガバナンスの観点からの適切さ、資本コストに見合った便益及びリスクの有無について、取締役会において検証を行い、その結果をコーポレート・ガバナンス報告書で開示することを提案します。
八十二銀行 定款変更(政策保有株式の目的の検証と結果及び純投投資目的変更に関する開示) 実際のところ、第141期(2023年4月1日~2024年3月31日)有価証券報告書によれば、当社は2024年3月末時点で約6386億円もの上場株式の政策保有株式を保有し、これは当社株の直近時価総額の約150%にも達する異常値である。このまま時価総額に対して不釣り合いに大きい政策保有株式を放置したままでは、株主資本コストに株主資本利益率(ROE)が劣後する非効率的な資本配分を是正できない。
■上場親会社のCMSに関連する株主提案(資本効率の視点)
企業名 株主提案の内容 株主提案理由の抜粋
JFEシステムズ 定款変更(CMSに加入しないことの義務付け) 2022年6月24日の株主総会で社長は当社の資本コスト(WACC)を 6%と説明しました。にもかかわらず、当社は親会社のキャッシュマネジメントシステム(CMS) に加入し、資本コストを下回る利率で資金を預け入れてきました。これは経済合理性に欠け、企業価値を毀損するおそれがあります。


CMS : キャッシュ・マネジメント・システムの略で、グループ内の資金を一元管理することにより、資金運用の効率化やコストの圧縮を図る仕組み

■役員選任(資本コストへの理解の視点)
企業名 株主提案の内容 株主提案理由の抜粋
ウィザス 取締役7名選任 現経営陣は当社の創業家が関わるガバナンス上の問題を長年放置し、資本コストや資本効率を無視した経営スタンスをとり、有効な成長戦略を示していません。
わかもと製薬 取締役1名選任 候補者は、投資家としての知見に加え、日本及び英国での起業経験を有し、国際的な視野と起業家精神を兼ね備えています。さらに、複数の海外ESG資格に裏打ちされた環境・社会問題への高い関心を背景に、ESGの観点から株主資本コストの低減を通じ、日本企業への株主価値向上の働きかけを積極的に行っています。
こうした資質を踏まえ、当社の更なる成長、株式市場における当社の評価改善に貢献するものと確信し、非常勤の取締役候補者としました。
T&Dホールディングス 取締役2名選任 株式リスクの削減との関係では、当社の統合報告書(2023年3月期)57頁に記載されているとおり、当社における株式運用を含む資産運用のリスク対リターン(ROR)は、本業である保険事業のRORより低いとされており、資本効率性が低いといえます。また、当社のEmbedded Value(EV)に対する資産運用の貢献度は、保険事業における損益の貢献度より低い上にボラティリティも高く、ボラティリティが高い株式運用を削減することは、資本コストの削減、ひいてはP/EV倍率の向上につながると考えられます。
ホギメディカル 取締役3名選任 当社は 2024 年7月に中期経営計画を発表しましたが、その中で掲げられた目標は 2027 年3月期においてもROE6%以上と、株主資本コストを有意に上回る水準ではありません。当社は主力である手術用キット製品事業において強固な経営基盤を有しているものの、ひっ迫する医療保険財政や過去の過大な設備投資に伴う稼働率低迷により、過去の経営の延長線上では上場企業としての責務を果たすことが困難です。


Embedded Value : Embedded Value(EV、エンベディッド・バリュー)とは、生命保険会社の企業価値を評価するための指標である。「修正純資産(Adjusted Net Asset Value): 企業の貸借対照表に基づく純資産の修正値」と「保有契約価値(Value of In-Force Business): 既存の保険契約から将来的に生じる利益の現在価値」を合計することにより算出される。EVは、生命保険会社の長期的な収益性を評価するために用いられ、法定会計基準では認識されにくい将来の利益を考慮することで、より包括的な企業価値の把握が可能になる。
P : 時価総額

このように資本コストは様々な議論の起点となりやすく、株主にとって便利なワードと言える。一方で、資本コストは取締役会が株主提案に反対する際の理由に用いることも可能だ。実際、下記の上場企業では、「資本コスト」を提案理由にしていない株主提案に対して取締役会が反対する理由の中で「資本コスト」というワードを使っている(株主提案の理由の中で資本コストというワードが用いられている企業を除く)。

株主提案の議案に対して取締役会が反対する理由に「資本コスト」というワードが含まれている企業
2025年3月決算企業
MCJ、大日本塗料、大阪製鐵、文化シヤッター、あすか製薬ホールディング、ホッカンホールディングス

例えばMCJでは、「総還元性向で50%程度以下を継続する場合、ネットキャッシュ残高がさらに積み上がり、ROEの希薄化が進む」ことを理由に配当の増額を求める株主提案議案に対して、取締役会が「当社は、重要視するKPIの1つに、資本コストを十分に上回る水準であるROE15%以上を掲げており、直近の実績としては、前中期経営計画期間である2023年3月期から2025年3月期において、継続してKPI目標を上回るだけでなく、ROE数値も15.3%から16.7%へと上昇しております。」との反対意見を述べている。


総還元性向 : 企業が利益をどの程度株主に還元しているかを示す指標。「総配分性向」「株主還元性向」とも言われる。「(配当金+自社株買いの金額)÷当期純利益」によって計算される。ちなみに、「配当性向」は当期純利益に占める「配当金」のみの割合を示す。自社株買いも株主還元の1つであるため、最近は配当性向とともに、総還元性向を開示する企業が多い

ただ、取締役会が株主提案への反対理由に「資本コスト」を用いるにあたっては、説得力の観点から、コーポレート・ガバナンスに関する報告書(CG報告書)で「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応について」(2023年3月31日公表)に基づく内容について開示(以下、東証要請に基づく開示)を行っている()ことが暗黙の前提条件となろう。実際、東証の『「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応」に関する開示企業一覧』(エクセルファイル)を確認すると、上表の6社はいずれも「要請に基づく開示状況」が「開示済み」となっている。本来、CG報告書における資本コスト関連の開示は企業(取締役会)と投資家との建設的な対話に用いられることを予定したものだが、株主総会における株主提案とそれに対する取締役会の反対理由という特殊な対話の起点にもなっていることが分かる。

* 東証のCG報告書の記載要領には、プライム市場またはスタンダード市場上場企業が「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応について」(2023年3月31日公表)に基づく内容についての記載要領が定められているが、これはあくまで「開示を行う場合」の記載要領である。プライム市場またはスタンダード市場上場企業には「開示を行わない」という選択肢も残されている。

もっとも、CG報告書における東証要請に基づく開示は、現時点では法的義務ではなく、あくまで任意とされている。このため、プライム市場上場企業に比べ、スタンダード市場上場企業では開示が進んでいないのが実情だ。東証の集計によると、2025年4月末時点で開示を行っている企業(「検討中」としているものを除く)は、プライム市場上場企業では87%に達しているのに対し、スタンダード市場上場企業では39%にとどまる。裏を返せば、プライム市場上場企業の13%、スタンダード市場上場企業の61%の企業が未だに東証要請に基づく開示を行っていないことになる。

こうした未開示の状態が、株主からの批判や株主提案を招くリスクになりつつある。そのリスクが顕在化したのが、スタンダード市場に上場するダイキアクシス(12月決算)だ。

同社はCG報告書において東証要請に基づく開示を行っていなかったところ、これにしびれを切らした個人株主が総会議案として提出したのが、「株式会社ダイキアクシス」の商号を「株式会社大亀・子亀商店」に改めるという異例の提案であり、その提案理由には以下のような主張が記されていた(原文をそのまま引用。文中には「8回目」とあるが、東証が2024年1月より毎月前月末分を公表している『「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応」に関する開示企業一覧』(エクセルのデータがダウンロードされます)の更新回数を指しているとすれば、2024年11月13日開示分は「11回目」となる)。

ダイキアクシスの株主提案議案の提案内容と提案理由
提案内容
定款1条にある「株式会社ダイキアクシス」の商号を改め「株式会社大亀・子亀商店」とする。

提案理由
現社長大亀裕貴氏は創業家出身の三代目である。創業家一族の資産管理会社は全体の約30.2%の株数を握り、親子で会長・社長に就任している。また東京証券取引所が2024年11月13日に、8回目となる「資本コストや株価を意識した経営に関する企業の開示をした。ダイキアクシスは検討中ともなってない。つまり、この企業は情報の不透明性・情報を適切に開示しない家族中心企業である。経営陣の意識は大亀家の存続が一番。資本市場への開示の重要性の理解はない。また、企業評価の向上を優先する姿勢すら欠如している。この会社こそ非上場会社のレッテルが一番似合う企業である。私は提言する。原点に帰り社名を変更し「株式会社大亀・子亀商店」に社名変更し再出発すべき企業である。

当該議案は2025年3月28日に開催された同社の株主総会で3.8%しか賛成票を集められず否決されたものの、同社は総会開催日から1週間後の2025年4月4日になって提出したCG報告書において、はじめて東証要請に基づく開示(下記参照)を行うに至った。

ダイキアクシスのCG報告書での開示
【資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応】
当社は、持続的成長と中長期的な企業価値の向上を実現するために、2025年から2027年の中期経営計画においてROEおよびROICの目標値を掲げ、資本コストを意識した経営を行うことを定めています。

財務戦略として、①成長分野への積極的なキャッシュアロケーションの実施②最適な財務レバレッジ水準の維持③株主還元の3つの基本方針を進めることでROICを高め、企業価値を増加させてまいります。

中期経営計画(2025-2027年)

ダイキアクシスの事例は、「資本コスト」を切り口とした株主からの圧力が契機となり、取締役会が東証要請に基づく開示をCG報告書で初めて行うに至った象徴的なケースと言える。本開示には「資本コストの率」や「最適と考える財務レバレッジ水準の具体的な値」が記載されておらず(中期経営計画には株主資本コストは7.1%と記載されている)、具体的な株主還元の方針やROE・ROICの目標値は中期経営計画を開かないと分からないなど要改善点は多い。しかし、株主提案が経営陣の姿勢に変化を促し、一定の成果を上げたとも評価できる。

この事例が示すように、いまだCG報告書で東証要請に基づく開示を行っていない上場企業は、株主総会での対立や批判を未然に防ぐ意味でも、早期に開示へ踏み切ることが望ましい。開示の遅れが、企業価値そのものに対する市場の不信や株主からの実質的なプレッシャーとして跳ね返るリスクは、既に現実のものとなっている。

2025/06/03 東証要請を受けた開示、新フォーマット未対応企業が3割超え

東証が2023年3月に「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応」を要請してから2年強、2024年1月に同対応をコーポレートガバナンス報告書(CG報告書)で開示している企業の一覧表の公表を開始してから1年半近くが経過した。最初に公表された一覧表では開示企業はプライム市場上場企業の49%(開示済み40%、検討中9%)に過ぎなかったが(2024年1月16日のニュース「株価を意識した経営の実現に向けた対応」の開示、プライムでも半数に届かず」参照)、2025年5月15日に更新された一覧表によると、開示企業はプライム市場上場企業の92%(開示済み88%、検討中4%)に達している。少なくともプライム市場上場企業にとっては、東証要請を受けた開示はもはや当然になったと言える。

ところで、上記東証の要請資料(2023年3月31日公表)に最近(2025年5月)新たな内容が追加されたことに気付いていない企業もあるようなので注意したい。追加されたのは・・・

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2025/06/03 東証要請を受けた開示、新フォーマット未対応企業が3割超え(会員限定)

東証が2023年3月に「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応」を要請してから2年強、2024年1月に同対応をコーポレートガバナンス報告書(CG報告書)で開示している企業の一覧表の公表を開始してから1年半近くが経過した。最初に公表された一覧表では開示企業はプライム市場上場企業の49%(開示済み40%、検討中9%)に過ぎなかったが(2024年1月16日のニュース「株価を意識した経営の実現に向けた対応」の開示、プライムでも半数に届かず」参照)、2025年5月15日に更新された一覧表によると、開示企業はプライム市場上場企業の92%(開示済み88%、検討中4%)に達している。少なくともプライム市場上場企業にとっては、東証要請を受けた開示はもはや当然になったと言える。

ところで、上記東証の要請資料(2023年3月31日公表)に最近(2025年5月)新たな内容が追加されたことに気付いていない企業もあるようなので注意したい。追加されたのは5ページの「開示の形式」だ。これは2025年5月、CG報告書に新たに「(3)資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応」欄が設けられたことを受けたもの(2025年5月改訂版・記載要領の4~5ページ参照)。そこで東証の要請資料では、「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応」をCG報告書の「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応」欄に記載することを求めている。

これまでは「(2)コードの各原則に基づく開示」において、「【資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応】」と標題を付けて開示することが求められていた。今後は新たな記載欄において、CGコード関係の開示とは別に開示することになる。なお、“もう一つの東証要請”である「株主との対話の実施状況等」に関する開示は、引き続き「(2)コードの各原則に基づく開示」において行うことになる。

2025年5月改訂版・CG報告書 記載要領
(3)資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応 ・プライム市場又はスタンダード市場の上場会社は、「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応について」(2023年3月31日公表)に基づく内容について、開示を行う場合には、以下の欄に記載してください。
・グロース市場の上場会社は、本欄の記載は不要です。
① 記載内容 ・今回記載する内容について、「取組みの開示(初回)・取組みの開示(アップデート)・検討状況の開示」から選択してください。
・「取組みの開示(初回)」又は「取組みの開示(アップデート)」を選択した場合は『開示済』、「検討状況の開示」を選択した場合は『検討中』として開示企業一覧表に掲載されます。
② 英文開示の有無 ・英文開示の有無について選択してください。
・開示企業一覧表の「英文開示」の欄に反映されます。
③ アップデート日付 ・「① 記載内容」で「取組みの開示(アップデート)」を選択した場合は、アップデート日付(下記「④ 該当項目に関する説明」欄の更新日)をプルダウンから入力してください。開示企業一覧表の「開示内容のアップデート日」の欄に反映されます。
※ 「④ 該当項目に関する説明」欄において他の書類を参照し、当該書類を更新した場合、報告書をアップデートのうえ、アップデートした日を入力してください。
④ 該当項目に関する説明 ・「① 記載内容」で「取組みの開示(初回)」又は「取組みの開示(アップデート)」を選択した場合は、具体的な取組み内容を、「検討状況の開示」を選択した場合は、検討プロセスや開示見込み時期を記載してください。
※ 経営戦略や経営計画、決算説明資料、アニュアルレポート、自社のウェブサイト等で開示を行っている場合には、本欄に開示を行っている旨とその閲覧方法(ウェブサイトのURLなど)を記載してください。

上記の記載要領によれば、開示企業一覧表は今後、新たな記載欄における開示内容をベースに作成されることになる。新記載欄が反映されたフォーマットがリリースされたのは5月26日以降であることから、当フォーラムが5月26日から30日までに更新されたプライム市場上場企業のCG報告書を確認したところ、75社中の50社が新フォーマットに沿って開示している一方、25社は従来通り「(2)コードの各原則に基づく開示」において開示していた。上場企業としては、せっかくの開示が正当に評価されるためにも、新フォーマットへの対応を怠りなく進めたい。

2025/06/02 【2025年6月の課題】経営幹部層のリーダーシップ開発

2025年6月の課題

人的資本経営が注目される中、取締役会にとって、経営幹部層のリーダーシップ開発をどのように進め、また監督するかは、持続的な価値創造を実現するうえで重要なテーマとなっています。他方で、社外役員を主とした指名委員会では社内の人材についての情報が限定的となり、経営幹部層の状況を十分に把握できていないケースも見受けられます。取締役会および指名委員会は、経営幹部層のリーダーシップ開発においてどのような役割分担の下、何を審議し、監督するべきか、対外的な説明責任も踏まえつつ考えてみてください。

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2025/05/30 2025年5月度チェックテスト

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【問題1】

上場企業では監査等委員会設置会社への移行がブームになっているが、このブームによりグローバル投資家から日本企業におけるガバナンス改革の本気度に疑問の目が向けられる恐れがある。

正しい
間違い
【問題2】

IFRS採用企業はM&Aの入札競争において優位に立ちやすい。

正しい
間違い
【問題3】

日本の会計基準では、(正の)のれんは、資産に計上し、5年以内のその効果の及ぶ期間にわたって、定額法その他の合理的な方法により規則的に償却する旨定められている。

正しい
間違い
【問題4】

会社の支配権に争いがある中で用いられる「主要目的ルール」とは、会社の定款に記載されている目的のうち主要なものを買収後に変更する予定の有無を問うルールである。

正しい
間違い
【問題5】

「敵対的買収者が被買収企業の株式の一定割合を取得した場合、既存株主は時価より安い価格で新株を購入できる」という権利(ライツ)を既存株主に与える手法をポイズンピルという。

正しい
間違い
【問題6】

経済産業省が2025年4月7日に公表した「企業の競争力強化のためのダイバーシティ経営(ダイバーシティレポート)」では、ダイバーシティは“社会的要請”ではなく“競争戦略” であると捉えられている。

正しい
間違い
【問題7】

フジテレビの経営改革案においては、人権方針策定に取締役会が実質的に関与していたものの、策定された人権方針が現場に浸透しなかったことが問題視された。


正しい
間違い
【問題8】

日本では、取締役全員の年齢を理由とした株主提案の事例はまだない。

正しい
間違い
【問題9】

自社の株式の投資単位が10万円を超える上場企業は株式併合を検討すべきである。

正しい
間違い
【問題10】

アクティビストのキャンペーンでは、「キャピタルアロケーション」は「資本をどの事業や資産に投下するのか」という意味に限定して用いられている。

正しい
間違い

2025/05/30 2025年5月度チェックテスト第10問解答画面(不正解)

不正解です。
アクティビストの公開キャンペーンの中で日本企業に対して多いかのが、「キャピタルアロケーション」です。キャピタルアロケーションをテーマとするキャンペーンは、①経営者が投資家から資本をどのように集めるかという「資本構成」に関するキャンペーン、②その資本をどの事業や資産に投下するのかという「事業」に関するキャンペーン、そして、③事業や資産から生み出されたキャッシュフローをどのように配分するかという「財務」に関するキャンペーンに大別されます(問題文は②に限定しているため間違いです)。

こちらの記事で再確認!
2025年5月28日 キャピタルアロケーションの考え方(会員限定)

2025/05/30 2025年5月度チェックテスト第10問解答画面(正解)

正解です。
アクティビストの公開キャンペーンの中で日本企業に対して多いのが、「キャピタルアロケーション」です。キャピタルアロケーションをテーマとするキャンペーンは、①経営者が投資家から資本をどのように集めるかという「資本構成」に関するキャンペーン、②その資本をどの事業や資産に投下するのかという「事業」に関するキャンペーン、そして、③事業や資産から生み出されたキャッシュフローをどのように配分するかという「財務」に関するキャンペーンに大別されます(問題文は②に限定しているため間違いです)。

こちらの記事で再確認!
2025年5月28日 キャピタルアロケーションの考え方(会員限定)

2025/05/30 2025年5月度チェックテスト第9問解答画面(不正解)

不正解です。
個人株主増加の観点から自社の株式の投資単位は10万円を超えない水準にすることが望まれます。自社の株式の投資単位が10万円を超える水準の上場企業では、株式分割を検討したいところです(問題文の「株式併合」を実施すると投資単位が増額してしまうため、問題文は間違いです)。

こちらの記事で再確認!
2025年5月22日 「投資単位10万円」に向けて上場会社が事前に整理しておくべきこと(会員限定)

2025/05/30 2025年5月度チェックテスト第9問解答画面(正解)

正解です。
個人株主増加の観点から自社の株式の投資単位は10万円を超えない水準にすることが望まれます。自社の株式の投資単位が10万円を超える水準の上場企業では、株式分割を検討したいところです(問題文の「株式併合」を実施すると投資単位が増額してしまうため、問題文は間違いです)。

こちらの記事で再確認!
2025年5月22日 「投資単位10万円」に向けて上場会社が事前に整理しておくべきこと(会員限定)

2025/05/30 2025年5月度チェックテスト第8問解答画面(不正解)

不正解です。
東証スタンダード市場に上場するオーネックスでは、代表取締役社長が75歳、最年少の取締役でも70歳と、取締役全員が70代となっており、そのことを理由に取締役の追加選任を求める株主提案が行われました。

こちらの記事で再確認!
2025年5月20日 経営陣全員が70代の上場会社に株主が異議(会員限定)