2018/01/18 (新用語・難解用語)自営型テレワーク

注文者(企業等)から委託を受け、情報通信機器(インターネット等)を活用し、主に自宅または自宅に準じた自ら選択した場所において、成果物の作成や役務の提供を行う就労スタイルのこと。法人形態をとっている場合や他人を使用している場合などは、「自営型テレワーク」には含まれない。

政府が進める「働き方改革」の一環で、厚生労働省は昨年(2017年)10月から「柔軟な働き方に関する検討会」(座長:松村茂 東北芸術工科大学教授)と題した有識者会議を設け、新たな働き方として「雇用型テレワーク」「自営型(非雇用型)テレワーク」「副業・兼業」の3つを中心に検討を重ねて来た。このうち「雇用型テレワーク」(事業者と雇用契約を結んだ労働者が、情報通信技術を利用して行う事業場外(自宅等)勤務)と「副業・兼業」はイメージしやすいと思われる一方、「自営型テレワーク」はあまり耳慣れない言葉かもしれない。・・・

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2018/01/18 (新用語・難解用語)自営型テレワーク(会員限定)

注文者(企業等)から委託を受け、情報通信機器(インターネット等)を活用し、主に自宅または自宅に準じた自ら選択した場所において、成果物の作成や役務の提供を行う就労スタイルのこと。法人形態をとっている場合や他人を使用している場合などは、「自営型テレワーク」には含まれない。

政府が進める「働き方改革」の一環で、厚生労働省は昨年(2017年)10月から「柔軟な働き方に関する検討会」(座長:松村茂 東北芸術工科大学教授)と題した有識者会議を設け、新たな働き方として「雇用型テレワーク」「自営型(非雇用型)テレワーク」「副業・兼業」の3つを中心に検討を重ねて来た。このうち「雇用型テレワーク」(事業者と雇用契約を結んだ労働者が、情報通信技術を利用して行う事業場外(自宅等)勤務)と「副業・兼業」はイメージしやすいと思われる一方、「自営型テレワーク」はあまり耳慣れない言葉かもしれない。

柔軟な働き方に関する検討会は昨年12月25日に報告書を公表しているが、従来は検討会の資料でも「自営型(非雇用型)テレワーク」と表示されるなど雇用型テレワークの対局的な概念として位置付けられてきた。しかし報告書では「(非雇用型)」というカッコ書きがなくなり、「自営型テレワーク」と表示され、「雇用型テレワーク」とは “別物”として取り扱われている。

報告書で示された「自営型テレワークの適正な実施のためのガイドライン」では、現行の「在宅ワークの適正な実施のためのガイドライン」(平成22年3月30日付け)を見直して、知的財産権の所在に関して明示するべきこと、仲介事業者もガイドラインの適用対象とする(例えば、注文者と同様に仲介事業者にも、自営型テレワーカーに対し、注文する仕事の内容や報酬予定額、報酬の支払期日および支払方法、提案や企画・作品等に関する知的財産権の取扱いといった募集内容の明示を求める)ことなどが盛り込まれている。

仲介事業者 : ① 他者から業務の委託を受け、当該業務に関する仕事を自営型テレワーカーに注文する行為を業として行う者、② 自営型テレワーカーと注文者との間で、自営型テレワークの仕事のあっせんを業として行う者、③ インターネットを介して注文者と受注者が直接仕事の受発注を行うことができるサービス(いわゆる「クラウドソーシング」)を業として運営している者を指す。

自営型テレワーカーは雇用型テレワーカーと異なり事業者との間に雇用関係がないことから、(法文上は)労働時間規制がなく、身分保障(解雇制限等)の義務も課されず、社会保険への加入や通勤費、さらには年末調整事務といった負担も生じない。このため、企業にとっては「使い勝手が良い」ように見えるかも知れない。

ただ、過去の裁判例では、フリーランスカメラマンの死亡を業務上の災害と認めたケース(東京高判H14.7.11)や住宅設備機器の修理補修を請け負っていたカスタマーエンジニアを労働組合法上の労働者であると断じたケース(最三判H23.4.12)など、裁判所が個人事業主の労働者としての性格を是認した事案も見受けられるので、安直に考えるのは危険だろう。

また、自営型テレワークには、(1)会社への帰属意識が希薄になる、(2)ノウハウが社内に蓄積されない(むしろ社外に流出する危険性もある)、(3)後継者が育成できないといった、雇用関係がないが故のデメリットもあることも認識しておく必要がある。

なお、同じく厚生労働省の「雇用類似の働き方に関する検討会」(座長:鎌田耕一 東洋大学法学部教授)でも、労働者が多様な事情に応じた就業ができるよう、雇用対策法の改正(法律名の変更を含む)も視野に入れた議論が昨年10月からスタートしている。こちらの進捗状況も注視しておきたい。

2018/01/17 内部統制の欠陥が招いた子会社における横領

子会社の管理に頭を悩ませる上場会社は多い。子会社で起きた不正について親会社に批判が集まることも少なくないだけに、親会社の経営陣は子会社の内部統制に関心を持つ必要があることは言うまでもない。今回はある上場会社の子会社で発見された“内部統制の欠陥”が招いた横領について紹介しよう。

横領には現金のやり取りが絡むことが多い。そこで当該上場会社では子会社に小口現金は保有させず、「立替払い・後日精算(振込み)」を原則としていた。また、当該子会社の経理責任者は公認会計士の有資格者であり、売掛金の残高確認、棚卸資産及び固定資産の実地棚卸の際には部下の経理課員を現場に立ち会わせるなどの内部統制も積極的に導入していた。

このように当該子会社の内部統制は網羅的に構築されていると思われたが、意外なところに盲点があった。それは、・・・

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2018/01/17 内部統制の欠陥が招いた子会社における横領(会員限定)

子会社の管理に頭を悩ませる上場会社は多い。子会社で起きた不正について親会社に批判が集まることも少なくないだけに、親会社の経営陣は子会社の内部統制に関心を持つ必要があることは言うまでもない。今回はある上場会社の子会社で発見された“内部統制の欠陥”が招いた横領について紹介しよう。

横領には現金のやり取りが絡むことが多い。そこで当該上場会社では子会社に小口現金は保有させず、「立替払い・後日精算(振込み)」を原則としていた。また、当該子会社の経理責任者は公認会計士の有資格者であり、売掛金の残高確認、棚卸資産及び固定資産の実地棚卸の際には部下の経理課員を現場に立ち会わせるなどの内部統制も積極的に導入していた。

このように当該子会社の内部統制は網羅的に構築されていると思われたが、意外なところに盲点があった。それは、出張における新幹線回数券の管理であった。親会社はあらかじめ行先別に新幹線回数券をまとめて購入しており、子会社の役職員が出張に際し新幹線を利用する場合には、子会社の総務部が必要枚数を親会社に伝えて回数券を入手し、後日親会社からの請求に基づいて精算するという形をとっていた。

一方、子会社では、出張予定者が「新幹線回数券利用申込書」に必要枚数を記載して総務部に提出し、総務部が親会社から受け取った回数券を本人に渡した時点で旅費交通費として処理していた。そして、出張後には「出張報告書」により新幹線代以外の諸費用の立替精算が行われていた。

こうした中、親会社の社外監査役が監査の際に過去の「新幹線回数券利用申込書」をたまたま確認したところ、新幹線回数券1冊(6枚綴り)のうち4枚だけが出張に使用され、残り2枚は「申込者本人が管理」と摘要欄に記載されているものが数枚見つかった。ちなみに、このような記載のある新幹線回数券利用申込書の提出者はすべて同一人物であった。

そこで社外監査役が経理マネージャーに「未使用の新幹線回数券の管理はどうなっているか」と尋ねたところ、経理部・総務部には未使用の新幹線回数券を管理する仕組みはないとのことであった。すなわち、新幹線回数券の未使用分については、残高管理を行っていないどころか、存在することさえ把握していなかったのである。

社外監査役が未使用分について当該申込者に聞き取り調査をしたところ、以前から同様の手口で余計に新幹線回数券を入手し、金券ショップで換金していたことが判明した。つまり「横領」である。本人の話によると、「ある時、予定していた出張が中止となったにもかかわらず新幹線回数券の返却要請がなかったため、魔が差して横領してしまい、そこから年に数件、同様の手口で横領していた」とのことであった。

当該子会社の内部統制は新幹線回数券の利用申請、親会社からの入手、子会社における会計処理までは完璧だったが、未使用回数券が発生した場合の残高管理についての内部統制が存在しなかった。本件は金額的重要性が高くなかったため連結財務諸表への影響はなかったものの、横領の対象物や期間によっては、財務諸表に影響するばかりでなく、世間を騒がす”事件”に発展することもある。子会社、そして親会社自身にもこうした内部統制の”盲点”が存在しないか、監査役を中心に一度確認してみる必要があろう。

2018/01/16 世界的運用機関が日本企業500社に女性取締役の選任を要求も

2017年12月21日のニュース「グラスルイスが日本向け2018年版ガイドラインを公表」でお伝えしたとおり、議決権行使助言大手のグラスルイスが女性役員の選任に関する基準を改定することを公表している。具体的には、女性役員が1人もいない場合、経営トップなどの選任議案への反対または棄権を推奨する。もっとも、同基準は2019年から適用されるということで「1年間」の猶予があり、また初年度はTOPIX Core30TOPIX Large70の合計100社のみを対象にするなど、相当に弾力的な運用となっている。現状、東証一部上場企業における女性役員(取締役、監査役、執行役)の割合は約4%、平均人数は0.5人程度にとどまっており、拙速な基準強化は無理があるとの判断もあったのだろう。

経営トップ : 指名委員会等設置会社では指名委員会の委員長、その他の会社では会長または社長を指す。
TOPIX Core30 : 東証一部に上場する国内企業の普通株式のうち、時価総額と流動性の特に高い30銘柄を対象とした株価指数のこと。
TOPIX Large70 : 東証一部に上場する国内企業の普通株式のうち、「TOPIX Core30」に次いで、時価総額・流動性の高い70銘柄を対象とした株価指数のこと。

その一方で、グローバルな機関投資家においては、もっと早急な成果を期待する動きが見られる。ブラックロックやバンガードに次ぐ世界的な運用機関である・・・

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2018/01/16 世界的運用機関が日本企業500社に女性取締役の選任を要求も(会員限定)

2017年12月21日のニュース「グラスルイスが日本向け2018年版ガイドラインを公表」でお伝えしたとおり、議決権行使助言大手のグラスルイスが女性役員の選任に関する基準を改定することを公表している。具体的には、女性役員が1人もいない場合、経営トップなどの選任議案への反対または棄権を推奨する。もっとも、同基準は2019年から適用されるということで「1年間」の猶予があり、また初年度はTOPIX Core30TOPIX Large70の合計100社のみを対象にするなど、相当に弾力的な運用となっている。現状、東証一部上場企業における女性役員(取締役、監査役、執行役)の割合は約4%、平均人数は0.5人程度にとどまっており、拙速な基準強化は無理があるとの判断もあったのだろう。

経営トップ : 指名委員会等設置会社では指名委員会の委員長、その他の会社では会長または社長を指す。
TOPIX Core30 : 東証一部に上場する国内企業の普通株式のうち、時価総額と流動性の特に高い30銘柄を対象とした株価指数のこと。
TOPIX Large70 : 東証一部に上場する国内企業の普通株式のうち、「TOPIX Core30」に次いで、時価総額・流動性の高い70銘柄を対象とした株価指数のこと。

その一方で、グローバルな機関投資家においては、もっと早急な成果を期待する動きが見られる。ブラックロックやバンガードに次ぐ世界的な運用機関である米ステート・ストリート・グローバル・アドバイザーズ(以下、SSGA)は昨年(2017年)11月14日、ジェンダー・ダイバーシティーに関する指針の適用範囲を拡大し、日本とカナダの企業も対象にすると発表している。同指針は取締役会に女性役員または女性役員候補がいない場合、株主総会において役員選任に責任を持つ取締役の選任に反対するというもので、既に2017年から米、英、オーストラリアで適用されている。

SSGAは2018年から日本とカナダの1,200社以上に対して同指針を適用することを目指している。SSGAが日本のTOPIX500企業の55%が女性取締役を選任していないことを指摘していることを踏まえると(カナダについてはトロント証券取引所上場企業700社の40%が女性取締役を選任していない)、日本においては少なくともTOPIX500企業が適用対象とされること、また、グラスルイス基準における「女性役員」には取締役、監査役、執行役が該当する(執行役員は含まれない)のに対し、SSGAの指針における「女性役員」は「取締役」を指すことが推測される。すなわち、SSGAの指針は、適用開始がグラスルイスの基準強化に先立つこと1年、適用範囲は5倍、しかも取締役の選任が求められるという企業にとっては非常に厳しいものとなる。

SSGAは2016年、女性役員または女性役員候補のいない米、英、オーストラリアの約600社に対し、役員選任に責任を持つ取締役の選任に反対票を投じることを通告するレターをまず送付している。その後も「ジェンダー・ダイバーシティ向上への努力が見られなかった」約400社に対して、最終的に反対票を投じた模様だ。逆に言えば、SSGAとのエンゲージメントや投資家向けの情報開示において、「今後の女性役員選任に関する方針」を表明することなどによって、反対票を回避することは可能であろう。

SSGAは、「他の条件がすべて同じ場合、ジェンダー・ダイバーシティが高い企業ほど、長期的により好業績を上げることをデータが示している」としたうえで、「投資先企業がジェンダー・ダイバーシティの推進に率先して取り組むことで業績を向上させられるよう、協力と関与(エンゲージメント)を深める」としている。同様の考え方を持つ投資家も少なくないと思わる中、「女性役員の選任」は、長期的な投資パフォーマンスの向上という観点から、今後の対話や議決権行使の場面におけるメインテーマの一つとなっていきそうだ。

2018/01/15 事業報告等と有価証券報告書、一体化に向け前進

会計監査対応が上場企業の経理・開示担当部門の働き方改革を妨げていることは先月(2017年12月)25日のニュース「経理・開示担当部門の働き方改革を妨げる構造問題」でお伝えしたとおりだが、多岐にわたる開示書類の存在もその要因の1つと言える。上場企業は、証券取引所の規則に従って決算短信等を開示するとともに、会社法に基づいて事業報告および計算書類(以下「事業報告等」)を作成して株主に送付し、さらに金融商品取引法に基づいて有価証券報告書を作成・開示することも求められている。このうち決算短信は独自性が強く、財務諸表などの添付資料も随分と簡素化された(決算短信簡素化の詳細は2016年6月27日のニュース「決算短信・四半期決算短信改正が企業に与える具体的な影響」参照)。これに対して事業報告等と有価証券報告書は決算短信と比べボリュームが圧倒的に多く、作成に時間がかかるだけでなく、それぞれの規定ぶりやひな型の一部は共通しつつも細部に相違があることから、経理・開示担当部門は“類似しているものの微妙に異なる開示資料”を会社法用と金融商品取引法用に2つ作成しなければならない。このことが経理・開示担当部門に余計な負荷をかけているだけでなく、投資家にとっても利便性の低下につながっていることはこれまでも問題視されてきた。

この問題の解消を目的として・・・

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2018/01/15 事業報告等と有価証券報告書、一体化に向け前進(会員限定)

会計監査対応が上場企業の経理・開示担当部門の働き方改革を妨げていることは先月(2017年12月)25日のニュース「経理・開示担当部門の働き方改革を妨げる構造問題」でお伝えしたとおりだが、多岐にわたる開示書類の存在もその要因の1つと言える。上場企業は、証券取引所の規則に従って決算短信等を開示するとともに、会社法に基づいて事業報告および計算書類(以下「事業報告等」)を作成して株主に送付し、さらに金融商品取引法に基づいて有価証券報告書を作成・開示することも求められている。このうち決算短信は独自性が強く、財務諸表などの添付資料も随分と簡素化された(決算短信簡素化の詳細は2016年6月27日のニュース「決算短信・四半期決算短信改正が企業に与える具体的な影響」参照)。これに対して事業報告等と有価証券報告書は決算短信と比べボリュームが圧倒的に多く、作成に時間がかかるだけでなく、それぞれの規定ぶりやひな型の一部は共通しつつも細部に相違があることから、経理・開示担当部門は“類似しているものの微妙に異なる開示資料”を会社法用と金融商品取引法用に2つ作成しなければならない。このことが経理・開示担当部門に余計な負荷をかけているだけでなく、投資家にとっても利便性の低下につながっていることはこれまでも問題視されてきた。

この問題の解消を目的として内閣府に設置された日本経済再生本部が、昨年(2017年)末に金融庁、法務省、経産省と連名で公表した今後の方針と言えるのが「事業報告等と有価証券報告書の一体的開示のための取組について」だ(以下「本取組」)。本取組では、事業報告等と有価証券報告書間で違いが生じている項目(主なものは下表を参照)について、制度や省庁を横断して用語や開示内容の統一を図るとしている。

表1 本取組で「事業報告等」と「有価証券報告書」間の統一を図る事項のうち主なもの
事業報告等 有価証券報告書 統一される事項
「直前三事業年度の財産及び損益の状況」 【主要な経営指標等の推移】 「1株当たり当期純利益金額」と「1株当たり当期純利益」、「純資産額」と「純資産」、「総資産額」と「総資産」等の言い回しを統一
「重要な親会社及び子会社の状況」 【関係会社の状況】 有価証券報告書のひな型に従った記載共通化が可能であることを、制度所管官庁(金融庁)が妥当性を確認したひな型において明確化する。
「使用人の状況」 【従業員の状況】 法務省が、会社(以下、当該会社)が事業報告の「使用人の状況」を作成するにあたり、(1)「使用人」ではなく「従業員」という用語を用いることができること、(2)対象企業範囲は現行の事業報告における「企業集団(当該会社+子会社)」ではなく、有価証券報告書の【従業員の状況】と同じ「連結会社(当該会社+連結子会社)」(企業集団とは非連結子会社の分だけ異なる)とすることにより、有価証券報告書と共通の記載が可能であることを明確化する法令解釈を公表する。
「主要な営業所及び工場」の状況 【主要な設備の状況】 事業報告の「株式会社の現況に関する事項」における「主要な営業所及び工場」と有価証券報告書の【主要な設備の状況】における「主要な設備」とが重なる範囲で共通の記載が可能であることを、制度所管官庁(有価証券報告書は金融庁、事業報告は法務省)が妥当性を確認したひな型において明確化する。
「会社役員に関する事項」 【役員の状況】 事業報告の「会社役員に関する事項」における役員の「地位」「担当」と有価証券報告書の【役員の状況】における役員の「役名」「職名」の関係が必ずしも明確ではないので、明確にするよう法令解釈の公表を行う。
「会社役員の報酬等」 「役員の報酬等」 取締役および監査役の報酬総額について、事業報告では社外取締役および社外監査役の報酬をそれぞれ「含めて」記載することとされているが、有価証券報告書ではそれぞれ「除いて」記載することとされている。そこで、取締役および監査役の報酬総額について、有価証券報告書の記載を基礎として、社外役員の報酬総額を社外取締役の報酬総額と社外監査役の報酬総額とに区分して記載することで、共通の記載が可能であることを明確化する法令解釈の公表を行う。
「各会計監査人の報酬等の額」および「株式会社及びその子会社が支払うべき金銭その他の財産上の利益の合計額」 【監査公認会計士等に対する報酬の内容】 様式が異なるので、事業報告についても、有価証券報告書の様式に従って、株式会社および連結子会社の別に、監査証明業務および非監査業務それぞれに区分して報酬額を記載することで、共通の記載が可能であることを明確化する法令解釈の公表を行う。
計算書類の表示科目 財務諸表の表示科目 例えば、計算書類では「商品」、「製品」及び「半製品」を別個に記載する(すなわち、有価証券報告書のように「商品及び製品」といった科目名で記載できない)と解される余地がある。そこで、計算書類等規則では表示科目の名称や配列を規定しておらず、有価証券報告書に合わせて共通の記載が可能であることを明確化する法令解釈の公表を行う。

有価証券報告書のひな型 : 公益財団法人財務会計基準機構(FASF)が毎年公表する「有価証券報告書の作成要領」

また本取組では、これを機に、下表に掲げた「有価証券報告書の記載事項に関する企業の要望」についても対応を図るとしている。

表2 有価証券報告書の記載事項に関する企業の要望を実現するための取り組み
有価証券報告書の記載事項に関する企業の要望 今後の取り組み
【事業の内容】【関係会社の状況】【関連当事者の注記】間に内容の重複があるので整理して欲しい(関連当事者については下記のを参照)。 記載内容が重複する場合、一か所にまとめて記載した上で、他では記載を省略して「当該他の箇所を参照する」旨の記載を行うにとどめることできることを明確化した既存の規定(開示ガイドライン5-14など)の周知を図る。
グループ企業の【事業の内容】や「事業における位置付け」を示すのに「事業系統図」以外の記載を認めて欲しい。 有価証券報告書にあっては、系統図以外の図や表等の形式により、企業の実態に応じて投資家に対してより分かりやすく示すことが可能であることを明確化する法令解釈の公表を行う。
業種によっては【主要な設備の状況】の記載を不要にして欲しい。 【主要な設備の状況】を業種によって記載不要とはしないものの、業種特性に応じて柔軟に記載できることを明確化する。
 関連当事者とは取締役や主要株主、親会社など会社と関係の深い個人や法人のこと。詳細はケーススタディ「会社と関係が深い者との取引があった」の「関連当事者取引注記が必要になる取引とは?」参照。

本取組で注目すべきポイントは2つある。1つは、本取組は、事業報告等と有価証券報告書との完全統一を図るものではなく、統一が容易な箇所に限定されたものに過ぎないということである。例えば表1の一番上の行の事業報告の「直前三事業年度の財産及び損益の状況」と有価証券報告書の【主要な経営指標等の推移】間の統一は用語だけに留まっており、開示項目の差や対象事業年度の差(有価証券報告書の「主要な経営指標等の推移」の方が開示項目や開示対象となる事業年度が多い)を無くすというレベルの統一にまで踏み込んだものとはなっていない。事業報告等と有価証券報告書の開示項目の完全な一体化までの道のりはまだ遠いと言えよう。

もう1つは本取組の随所にある「制度所管官庁が妥当性を確認したひな型において明確化する」旨の記述だ(例えば表1の2行目「重要な親会社及び子会社の状況」【関係会社の状況】の統一される事項)。ここでいう「ひな型」とは、財務会計基準機構(FASF)ひな型を指している。上場企業の開示実務においては、今以上にひな型の存在感が増すことになりそうだ。

2018/01/12 管理会計を経営に活かすための3つの鍵

管理会計ラボ 公認会計士 梅澤真由美

企業の会計は、社外の株主や投資家が投資判断に利用する財務会計(制度会計)と、社内の役員や各部門が経営判断や営業活動などに利用する管理会計の2つに大きく分類される。いずれも経理部門が作成するのが一般的となっている。

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管理会計は、英語で「Management Accounting(=経営者のための会計)」と言うとおり、経営者等にとって有用な情報を会計面から定量的にまとめたものと言える。日本企業がコーポレートガバナンス改革を迫られる中、「経営の見える化」への要請を背景に、投資の意思決定などにおいて定量情報としての管理会計が必要とされる機会は近年格段に増えてきた。定量情報による投資の意思決定以外にも、予算や業績予想の策定、部門別の損益計算書、KPIによる業績等の管理なども管理会計の一般的な例として挙げられる。もっとも、こうした管理会計が実際の事業活動の役に立っているという実感を持っている上場企業は少ない。

KPI : 定量的に示される重要業績評価指標(Key Performance Indicators=KPI)のこと。KPIの例としては「新規顧客の獲得数」「従業員1人あたりの経費」「総資産額」などがある。(文責:上場会社役員ガバナンスフォーラム)

その大きな理由の一つとして、経理部門が制度会計のタイトな決算・開示スケジュールや会計基準の改正への対応などに時間をとられ、管理会計用の情報の収集と資料の作成に十分な時間を割けないということがある。経理部門のリソースの問題は一朝一夕に解決できるものではない。そこで、経理部門のリソース問題を抱えていたとしても始めることが比較的容易な“各事業部門の担当役員”の立場から管理会計を活用するための方策を提案したい。具体的には以下の3つである。・・・

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2018/01/12 管理会計を経営に活かすための3つの鍵(会員限定)

管理会計ラボ 公認会計士 梅澤真由美

企業の会計は、社外の株主や投資家が投資判断に利用する財務会計(制度会計)と、社内の役員や各部門が経営判断や営業活動などに利用する管理会計の2つに大きく分類される。いずれも経理部門が作成するのが一般的となっている。

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管理会計は、英語で「Management Accounting(=経営者のための会計)」と言うとおり、経営者等にとって有用な情報を会計面から定量的にまとめたものと言える。日本企業がコーポレートガバナンス改革を迫られる中、「経営の見える化」への要請を背景に、投資の意思決定などにおいて定量情報としての管理会計が必要とされる機会は近年格段に増えてきた。定量情報による投資の意思決定以外にも、予算や業績予想の策定、部門別の損益計算書、KPIによる業績等の管理なども管理会計の一般的な例として挙げられる。もっとも、こうした管理会計が実際の事業活動の役に立っているという実感を持っている上場企業は少ない。

KPI : 定量的に示される重要業績評価指標(Key Performance Indicators=KPI)のこと。KPIの例としては「新規顧客の獲得数」「従業員1人あたりの経費」「総資産額」などがある。(文責:上場会社役員ガバナンスフォーラム)

その大きな理由の一つとして、経理部門が制度会計のタイトな決算・開示スケジュールや会計基準の改正への対応などに時間をとられ、管理会計用の情報の収集と資料の作成に十分な時間を割けないということがある。経理部門のリソースの問題は一朝一夕に解決できるものではない。そこで、経理部門のリソース問題を抱えていたとしても始めることが比較的容易な“各事業部門の担当役員”の立場から管理会計を活用するための方策を提案したい。具体的には以下の3つである。

① 既存の年間イベントを各部門で有効活用する
多くの上場企業では、従来から実施している予算や業績予想の作成、月次決算分析などが目的を見失った“年中行事化”している。これらを自部門にとってより意味があるものにするためには、これらが自部門にとって何の役に立つのかを、各事業部門を所掌する役員がリーダーシップをとって改めて考えてみることが重要である。例えば、各部門の活動結果はすべて費用に集約されるということに気付けば、活動計画と連動させて予算を作成するようになるはずである。

② 管理会計の考え方を理解し、経営の意思決定に生かす
管理会計には、埋没原価差額原価など、役員が経営の意思決定をする上で押さえておくべき概念がいくつもある。これらの意味と適用場面を(非財務系役員を含む)役員自身が理解し、自社の意思決定に生かすことが重要である。

③ 重要な定量情報を明確にし、入手できる体制を構築する
例えば新たな事業に取り組むか否かの意思決定の場面において、どのような定量情報が重要なのかを明確にする。そして、それらを必要な時に入手できる社内体制(入手の進め方や役割分担)を整備しておくことが重要である。

埋没原価 : 例えば既に取得している固定資産の減価償却費や従業員への給与のように、既に発生しているか、どのオプションを採用しても発生する原価のこと。英語ではサンク・コスト(Sunk(沈む(sink)の過去分詞)Cost)と呼ばれる。埋没原価は必ず発生する費用である以上、経営の意思決定上、考慮するべきではない。
差額原価 : あるオプションを採用した場合に発生する原価と他のオプションを採用した場合に発生する原価との差額のこと。例えば既存のA事業の外注費が100で、これに代わる事業として検討しているB事業の外注費が80の場合、差額原価は20となる。差額原価は、埋没原価と異なり、どのオプションを選択するかによって変動するため、経営の意思決定上、考慮する必要がある。(文責:上場会社役員ガバナンスフォーラム)

上述のとおり管理会計を活用できていない上場企業は多いが、裏を返せば、こうした企業ほど管理会計の活用が業績改善につながる余地が大きいということでもある。上場企業の経営陣はこの点を認識し、是非管理会計を積極的に活用して欲しいものだ。