2017/10/25 デンソーの最高裁判決がもたらした教訓(会員限定)

日本企業の海外展開において不確定要素となっていた裁判がようやく決着を見た。

2017年6月8日のニュース「海外展開する日本企業に朗報」でお伝えしていた自動車部品大手のデンソーの税務訴訟の最高裁判決()が10月24日に下され、高裁(名古屋)で敗れていた同社が国に逆転勝訴している。総額で約73億円(一次訴訟12億円、二次訴訟62億円 : 訴訟が2つに分かれている理由は「海外展開する日本企業に朗報」の下から2段落目参照)の税額を争う大型訴訟であるうえ、海外展開する日本企業への影響も大きいことから全国紙をはじめ報道機関各社が一斉に報じたため、既にニュース自体は目にしたという会員の方も多いだろう。本稿ではそれより一歩踏み込んで、今回の最高裁判決がもたらした教訓を簡潔に整理しておきたい。

 最高裁判決の原文はこちら
(専門的であるため、税務を所掌する役員等以外は必ずしも読む必要はありません)

本訴訟の全体像は「海外展開する日本企業に朗報」「地域統括会社」で詳しく解説しているが、一言で言えば、デンソーがシンガポールに設立した地域統括会社の「主たる業務」が「株式保有業」に当たるのどうかが争われたのが本訴訟である。

日本企業が海外展開する際、海外現地法人をとりまとめる地域統括会社(例えば「アセアン地域統括会社」など)を設立するケースは多い。本来、海外法人である地域統括会社の所得が日本企業(親会社)の所得となることはないが、税率の低い国(軽課税国)に設立した子会社に所得を集中させ日本の親会社の課税所得を圧縮するという税金逃れを防止するため、税法上、単に株式を保有する業務(以下「株式保有業」)を営むだけの地域統括会社を軽課税国に設立した場合には、その所得が日本の親会社の所得に合算されることになっている(これをタックスヘイブン対策税制という)。ちなみに、デンソーの地域統括会社は、軽課税国として知られるシンガポールにあった。

タックスヘイブン対策税制 : 軽課税国にある子会社の所得金額を日本の親会社の所得とみなして法人税を課税する仕組み。ヘイブン(Haven)とは「避難所」という意味。

デンソーの裁判では、「地域統括会社の主たる事業は株式保有業なのか?」を検証することに多くの時間が費やされている。今回の最高裁判決では「株式保有業ではない」との結論を出したからこそ、デンソーの勝訴となったわけである(高裁では「株式保有業」(デンソー敗訴)、地裁では「株式保有業ではない」(デンソー勝訴)との判断が示されている)。

主たる事業が「株式保有業」に該当するかどうかについて、最高裁が示した判定基準は「収入」「所得」「事業活動の状況」の三つ。これらを“総合勘案”して「株式保有業」に該当するかどうかを判断することになる。デンソーの地域統括会社の場合、所得の90%程度を傘下の子会社からの配当が占めていた。これだけ見ると、「主たる事業=株式保有業」と言われても致し方ないようにも見える。しかし「収入」については、約85%が傘下の子会社に対する「物流改善業務」によるものだった。また「事業活動の状況」を見ると、参加の子会社に対する財務、人事、材料調達、技術提供、情報システムや物流の改善といった“株式保有業以外の業務”が実際に行われており、現地従業員の多くがこれらの業務に従事し、保有有形固定資産の大半がこれらの業務に使われていた。こうした事情を踏まえ最高裁は、「所得に占める配当の割合は高いものの、主たる事業は株式保有業ではない」と判断、デンソーに勝訴をもたらしている。

この最高裁判決から得られる教訓は、軽課税国の地域統括会社においては、地域統括会社の「収入」「所得」「事業活動の状況」の三点について、税務署に「株式保有業を営んでいる」と言われないだけの材料を揃えておくべきだということに尽きる。デンソーの場合、三つのうち二つをクリアしていたことが今回の勝訴につながったと言える。仮に「収入」の約85%を占めていた「物流改善業務」について傘下の子会社から対価を得ていなかったとしたら、収入の大部分を配当が構成することになり、裁判所の判断も変わっていたかもしれない。また、実際に“株式保有業以外の業務”を行い、その業務に現地従業員を従事させたり、保有固定資産を使うことも重要になる。

第二次訴訟では地裁、高裁ともデンソーが勝訴しているが、今回、同じ内容で争われている第一次訴訟の最高裁でデンソーが勝訴したことから、第二次訴訟についても、デンソーが勝訴した高裁判決が確定することになろう。地域統括会社を活用して海外展開する日本企業が課税を受けないための基準を明確に示したという点で、今回の最高裁判決の意義は大きいと言えそうだ。

2017/10/24 金融庁・フォローアップ会議が再開 CGコード改訂のテーマは?

(2017年)10月18日、金融庁の「スチュワードシップ・コード及びコーポレートガバナンス・コードのフォローアップ会議」が約1年ぶりに開催された。開催通知によれば、議題は「コーポレートガバナンス改革の進捗状況等」とされているが、出席メンバーなどからはコーポレートガバナンス・コードの改訂に向けた要望がいくつか出されている。

まず注目したいのが・・・

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2017/10/24 金融庁・フォローアップ会議が再開 CGコード改訂のテーマは?(会員限定)

(2017年)10月18日、金融庁の「スチュワードシップ・コード及びコーポレートガバナンス・コードのフォローアップ会議」が約1年ぶりに開催された。開催通知によれば、議題は「コーポレートガバナンス改革の進捗状況等」とされているが、出席メンバーなどからはコーポレートガバナンス・コードの改訂に向けた要望がいくつか出されている。

まず注目したいのが事務局説明資料だ。ここでは、「コーポレートガバナンス改革を巡る指摘」(7ページ~)として、次の5項目が挙げられている。これらの項目はコーポレートガバナンス・コード改訂の対象となる可能性もある。

<コーポレートガバナンス改革を巡る指摘>
(フォローアップ会議(第11回)資料2 事務局説明資料より)
(1) 投資と内部留保
 □ 現預金の形での内部留保が増加
 □ 設備・人材・研究開発投資の水準に課題
(2) 経営環境の変化に対応した経営判断
 □ 経営環境の変化に応じた事業選択などの果断な経営判断が行われていない
 □ 経営者の資本コストに対する意識を高めていく必要
(3) CEO・取締役会
 □ CEOの育成・選任に向けた取組みが不十分
 □ 社外取締役の実効的な機能発揮を促していく必要
(4) 政策保有株式
 □ 政策保有株式の縮減が進んでいない
(5) アセットオーナー
 □ 企業年金によるスチュワードシップ・コードの受入れが少ない

また、ICGN(International Corporate Governance Network=国際コーポレートガバナンス・ネットワーク)のワリング氏のプレゼンテーション資料には、「独立取締役の人数を3分の1以上もしくは最低3名とすべき」(5ページ)、「証券取引所の『独立性基準』をコードに盛り込むべき」(8ページ)、「取締役会評価は3年に1度は外部機関によることが重要」(12ページ)、「政策保有株式の削減に期限を決めて取り組んで欲しい」(17ページ)などの要望が盛り込まれている。

さらに経営共創基盤の冨山氏の意見書では、今回のフォローアップ会議で“必ず議論すべき”論点として、次の3点が挙げられている。

<今回のフォローアップ会議で必ず議論すべき論点>
(フォローアップ会議(第11回)参考資料 意見(冨山メンバー)より)
・取締役会、特に社外取締役が果たすべき大きな役割として、機能不全の現経営者の解任、後継経営者の指名及び前段階の候補選抜・育成について、その客観性、透明性、的確性を持続的に担保するために積極的、主体的に関与すべきことを明確化すること。
・いわゆるOBガバナンスの弊害の排除について、ガバナンスコードにおいても明確に位置付けること。
・社内・常勤の監査役あるいは監査委員について、出世競争に敗れた人材の処遇ポストではなく、しかるべき専門性(知識、経験の両面で)を持った人材のプロモーションゴールとして位置付けること(非常勤の社外監査役、社外監査委員と比べ社内情報へのアクセス能力が格段に高い内部・常勤者は、監査役、監査委員の本分である適法性に関わる事項のモニタリングにおいて有利な立場にあり重要であるが、そこでは会計や法務、コンプライアンス、リスク管理と言った、一朝一夕ではけっして身に付かない極めて高度に専門的な知識、豊富な経験が必須である。しかしそうした能力を持っていない人材がこのポストを担っているケースが非常に多く、これは守りのガバナンスの実効性において由々しき大問題である)。

「いわゆるOBガバナンスの弊害」とは、かつての経営者が相談役や顧問として会社に残り、トップ人事や重大な意思決定に介入するなど影響力を行使し、コーポレートガバナンスを歪めることを指すものと思われる。来年(2018年)1月からは、証券取引所の「コーポレート・ガバナンス報告書」に相談役・顧問制度に関する記載欄が設けられ、相談役・顧問の業務内容等の任意開示がスタートする予定だが、冨山メンバーは、さらにコーポレートガバナンス・コードでも相談役・顧問制度について規定することを求めている。相談役・顧問制度を「コンプライ・オア・エクスプレイン」の規律の対象とすることで、開示の実効性を一層高める狙いがあるとみられる。

以上のとおり、再開されたフォローアップ会議では、コーポレートガバナンス・コードの改訂について具体的な提案がなされている。実際にコーポレートガバナンス・コードの改訂が行われるのかは現時点では明らかでないが、今年は既にスチュワードシップ・コードが改訂されており、次はコーポレートガバナンス・コードの改訂が来ると予想する関係者は少なくない。フォローアップ会議においてメンバーの意見が一致すれば、一気に動き出す可能性もある。引き続きフォローアップ会議の動向をウォッチしていきたい。

2017/10/23 来年4月から精神障害者が障害者雇用率計算の対象に 企業の対応は?

現行「2.0%」(50人に1人)とされている民間企業の障害者の法定雇用率(*1)は、来年(2018年)4月1日からは「2.2%」(45.45人に1人)、次いで3年以内に「2.3%」(43.48人に1人)へと引き上げられる(平成29年6月30日政令第175号)。これによって障害者雇用率が法定雇用率を満たさなくなった場合には、下記の「障害者雇用納付金」(*2)が課されることになる。

*1 障害者の雇用の促進等に関する法律(障害者雇用促進法)により、従業員を50人以上抱える事業主が義務付けられている身体障害者・知的障害者の雇用率(常用雇用労働者(週20時間以上の短時間労働者は0.5人として算入)に占める身体障害者・知的障害者の率)
*2 常用雇用労働者(週20時間以上の短時間労働者は0.5人として算入)が200人を超える事業主は未達成1人あたり月額5万円、100人を超え200人以下の事業主は未達成1人あたり月額4万円、100人以下の事業主は対象外。

今般の障害者法定雇用率改定の背景には、障害者雇用率の算定上の分子を構成する「身体障害者+知的障害者」に、来年(2018年)4月からは「精神障害者」が加えられるということがある。また、来年4月からは、これまで身体障害者および知的障害者について求められてきた「合理的配慮の提供義務」(障害者を採用したら施設の整備や援助を行う者の配置等の措置を講じなければならないこと)が精神障害者にも求められることになる(2015年10月施行の改正障害者雇用促進法36条の3)。

精神障害者 : 「精神障害者保健福祉手帳の交付を受けている者」あるいは精神障害者保健福祉手帳の交付を受けていない者で「統合失調症、そううつ病(そう病及びうつ病を含む)又はてんかんにかかつている者」を指す。いずれも、「症状が安定」し、かつ「就労が可能」な状態にあることが条件となる(障害者雇用促進法施行規則(厚生労働省令)一条の四)。

もっとも、精神障害者の雇用が・・・

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2017/10/23 来年4月から精神障害者が障害者雇用率計算の対象に 企業の対応は?(会員限定)

現行「2.0%」(50人に1人)とされている民間企業の障害者の法定雇用率(*1)は、来年(2018年)4月1日からは「2.2%」(45.45人に1人)、次いで3年以内に「2.3%」(43.48人に1人)へと引き上げられる(平成29年6月30日政令第175号)。これによって障害者雇用率が法定雇用率を満たさなくなった場合には、下記の「障害者雇用納付金」(*2)が課されることになる。

*1 障害者の雇用の促進等に関する法律(障害者雇用促進法)により、従業員を50人以上抱える事業主が義務付けられている身体障害者・知的障害者の雇用率(常用雇用労働者(週20時間以上の短時間労働者は0.5人として算入)に占める身体障害者・知的障害者の率)
*2 常用雇用労働者(週20時間以上の短時間労働者は0.5人として算入)が200人を超える事業主は未達成1人あたり月額5万円、100人を超え200人以下の事業主は未達成1人あたり月額4万円、100人以下の事業主は対象外。

今般の障害者法定雇用率改定の背景には、障害者雇用率の算定上の分子を構成する「身体障害者+知的障害者」に、来年(2018年)4月からは「精神障害者」が加えられるということがある。また、来年4月からは、これまで身体障害者および知的障害者について求められてきた「合理的配慮の提供義務」(障害者を採用したら施設の整備や援助を行う者の配置等の措置を講じなければならないこと。2015年10月施行の改正障害者雇用促進法36条の3)が精神障害者にも求められることになる。

精神障害者 : 「精神障害者保健福祉手帳の交付を受けている者」あるいは精神障害者保健福祉手帳の交付を受けていない者で「統合失調症、そううつ病(そう病及びうつ病を含む)又はてんかんにかかつている者」を指す。いずれも、「症状が安定」し、かつ「就労が可能」な状態にあることが条件となる(障害者雇用促進法施行規則(厚生労働省令)1条の4)。

もっとも、精神障害者の雇用が義務化されるわけではない。したがって、身体障害者や知的障害者の雇用数をもって障害者雇用率を達成できているのであれば、(障害者雇用率を満たすという意味では)別途精神障害者を雇う必要はない。

上述のとおり障害者雇用納付金は高額ではないため、障害者を雇用するよりも障害者雇用納付金を払うことを選択する上場企業も少なくないという。特に精神障害者の雇用はハードルが高いとされるが、逆に言うと、精神障害者を雇用し、活躍の場を与えるということは、企業の懐の深さを示すことにもつながる。外部から精神障害を採用することが難しい場合でも、既存社員で精神障害を発症した者を継続雇用すれば、結果として障害者雇用率のアップにもつながる(ただし、障害者雇用促進法上の「精神障害者」となるためには「症状が安定」し、かつ「就労が可能」な状態にあることが必要になる。したがって、精神疾患に罹っても、治療によって症状が快方に向かっているなら、「症状が安定」していないため、「精神障害者」に該当しない(要するに、「これ以上は(現代の医学では)治療の効果が見込めない」状態になければ「精神障害者」には該当しない)。また、インターネット上には「うつ病で休職中の社員に障害者手帳を取得させ雇用率を達成する」といった記述が散見されるが、休職中ということは「就労可能」ではないので、やはり障害者雇用促進法に言う「精神障害者」には該当しない)。

精神障害者 : 「精神障害者保健福祉手帳の交付を受けている者」あるいは精神障害者保健福祉手帳の交付を受けていない者で「統合失調症、そううつ病(そう病及びうつ病を含む)又はてんかんにかかつている者」を指す。いずれも、「症状が安定」し、かつ「就労が可能」な状態にあることが条件となる(障害者雇用促進法施行規則(厚生労働省令)1条の4)。

厳しいプレッシャーに晒される現代社会において、社員が精神疾患を患うケースも増える中、精神障害者の雇用は、経営陣としても一度は議論しておくべきテーマと言えそうだ。

2017/10/20 下請企業が自社の売上債権を譲渡した場合の対応

上場企業など大企業が順守しなければならない法律の一つに独占禁止法や下請法があるが、これらに新たなルールが加わることになりそうだ。・・・

下請法 : 下請代金の支払い遅延禁止、下請け代金の減額の禁止、買いたたきの禁止など、親事業者と下請事業者の取引に関するルールを定めた法律。正式名称は「下請代金支払遅延等防止法」である。

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2017/10/20 下請企業が自社の売上債権を譲渡した場合の対応(会員限定)

上場企業など大企業が順守しなければならない法律の一つに独占禁止法や下請法があるが、これらに新たなルールが加わることになりそうだ。

下請法 : 下請取引の公正化・下請事業者の利益保護のため、下請代金の支払い遅延禁止、下請け代金の減額の禁止、買いたたきの禁止など、親事業者と下請事業者の取引に関するルールを定めた法律。正式名称は「下請代金支払遅延等防止法」である。

企業間の取引では、代金の支払いが商品の納入から数か月先となることも珍しくない。その結果、商品を納入した中小企業が当面の資金繰りに窮することもある。そこで中小企業(債権者)からは、売上債権を金融機関に譲渡し(売上債権を担保に)金融機関から融資を受けたいというニーズも聞かれる。

ただ、この場合ネックとなってきたのが、当該売上債権に付された「譲渡制限特約」だ。譲渡制限特約とは、債権の譲渡を禁止あるいは制限する旨の債権者・債務者間の取り決めのこと。この譲渡制限特約があるため、中小企業(債権者)は売上債権の譲渡ができなかった。

こうしたなか今年(2017年)6月2日に公布された改正民法では、債権譲渡を活用した中小企業等の資金調達を容易にするため、譲渡制限特約が付されている債権であっても譲渡の効力は妨げられない(債権の譲渡は有効)とする規定が設けられている(改正民法466条)。また、弁済の相手方を固定したいと考える債務者(取引先企業)にも配慮し、譲渡制限特約が付された債権が譲渡された場合であっても、債務者は基本的にこれまでどおり元々の債権者に対し債務を弁済すればよい(売上債権を譲り受けた者(金融機関等)に対して弁済する必要はない)こととされた。

もっとも、たとえ民法上は債権譲渡が有効に成立しているとしても、債務者(取引先企業)は、債権者(中小企業等)が譲渡制限特約に違反したことを理由に、債権者との取引をやめてしまうかもしれない。この点について法務省は、改正民法では、弁済の相手方を固定したいという債務者の期待は保護されており、債権が譲渡されても債務者にとって特段の不利益はないため、債権者が債権を譲渡したとしても契約違反(譲渡制限特約違反)にはならないとしたうえで、契約の解除を行うことは極めて合理性に乏しく、権利濫用等に該当し得るとしている。

それでも仕入先(中小企業等)には、「債権を譲渡すれば取引先企業から切られてしまうのではないか」との不安は残る。こうしたなか政府は、例えば、資金調達を目的とした譲渡制限特約付き債権の譲渡を原因とした取引の取りやめを禁止することを独占禁止法ガイドラインや下請法の改正により明確化する案が浮上している(なお、売上債権を譲り受ける金融機関にも、債務者から「金融機関が債権者に譲渡制限特約を勧めたのではないか」と思われかねいとの懸念がある。この点については、譲渡制限特約付き債権を担保として取得することはコンプライアンス上の問題がないとの指針を示す案が出ている).

上場企業が下請企業との関係において順守すべきルールに関わるものだけに、具体的な動きがあり次第、続報したい。

2017/10/19 ESG対応に悩む企業が利用したい“官製”プラットフォーム

ESGに優れた企業に投資する「ESG投資」の存在感が増す中、ESGへの取り組みやESG情報の開示が不十分な上場企業の株価は、ESG投資家による長期的な株式の保有が期待できない分、収益力や財務内容が同程度の同業他社と比べて低い水準となる可能性がある。また、短期保有目的の株主比率が高まれば、長期的視野に立った経営の推進にも支障をきたすことになりかねない。

ESG : ESGとは、Environmental(環境)」「Social(社会)」「Governance(企業統治)」の頭文字を組み合わせたもので、近年、特にグローバル機関投資家の間で、企業の投資価値を測る評価項目としての地位を確立しつつある。

こうした中、ESG部門を設け、専任の担当者を置く上場企業も出てきているが、運用会社でさえESG担当者の育成・採用に苦慮していることからも分かるように、「ESG担当」という肩書に見合った知識や対応能力を持った人材、特にE(環境)とS(社会)の専門家と言える人材は明らかに不足している。人的リソースが十分でない中堅上場企業等では、環境報告書、CSR報告書など、ESG関連のレポートの作成やESG投資家との対話に苦慮しているところも少なくないのが現状だろう。

こうした企業に利用を推奨したいのが・・・

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2017/10/19 ESG対応に悩む企業が利用したい“官製”プラットフォーム(会員限定)

ESGに優れた企業に投資する「ESG投資」の存在感が増す中、ESGへの取り組みやESG情報の開示が不十分な上場企業の株価は、ESG投資家による長期的な株式の保有が期待できない分、収益力や財務内容が同程度の同業他社と比べて低い水準となる可能性がある。また、短期保有目的の株主比率が高まれば、長期的視野に立った経営の推進にも支障をきたすことになりかねない。

ESG : ESGとは、Environmental(環境)」「Social(社会)」「Governance(企業統治)」の頭文字を組み合わせたもので、近年、特にグローバル機関投資家の間で、企業の投資価値を測る評価項目としての地位を確立しつつある。

こうした中、ESG部門を設け、専任の担当者を置く上場企業も出てきているが、運用会社でさえESG担当者の育成・採用に苦慮していることからも分かるように、「ESG担当」という肩書に見合った知識や対応能力を持った人材、特にE(環境)とS(社会)の専門家と言える人材は明らかに不足している。人的リソースが十分でない中堅上場企業等では、環境報告書、CSR報告書など、ESG関連のレポートの作成やESG投資家との対話に苦慮しているところも少なくないのが現状だろう。

こうした企業に利用を推奨したいのが、環境省が設けた「企業と投資家等のためのESG対話プラットフォーム」(以下、「ESG対話プラットフォーム」)だ。これは、同省が上場企業とESG投資家を結ぶコミュニケーションの場を提供するために運営している利用者限定型のウェブサービス(利用は無料だが事前登録が必要。登録はこちらから)であり、「低炭素・脱炭素活動を含む持続可能な取組を行う企業へ適切な資金が流れる社会経済を目指し、環境の情報開示と企業と投資家等の対話を支援すること」(ESG対話プラットフォームのウェブサイトより)を目的とするもの。同省は現在の取り組みを実証事業と位置付け、2021年からの本格運用を目指しているが、プラットフォームが立ち上がった2013年には企業64社、運用会社13社にとどまっていた登録社数は、2016年には企業255社、運用会社159社と大幅に伸びている。

ESG対話プラットフォームには、「データベース機能」と「直接対話機能」の2つの機能がある。「データベース機能」とは、自社のESGへの取り組み状況を開示したい企業が、自社のESGレポートへのリンクを登録することができる機能である(環境省主催ということで「E(環境)」と「S(社会)」関係のレポートしか登録できないようにも思えるが、「G(ガバナンス)」関係のレポート(例えばコーポレート・ガバナンスに関する報告書のドラフトなど)の登録も可能となっている)。ESG対話プラットフォームにはESG投資家も登録しており、プラットフォーム上、企業からはESG投資家が一覧できる一方、ESG投資家からは登録した上場企業が一覧できる。相互に相手を探しやすい構造となっているわけだ。「直接対話機能」とは、文字通り上場企業とESG投資家が(ESG対話プラットフォームを媒介にして)ESGに関する対話を行うことができる仕組み。ここでいう「直接対話」は、プラットフォーム上に登録済みの企業またはESG投資家の中から自社がコミュニケーションをとりたい相手を選択し、コメントを送受信することにより行われる。

ESG対話プラットフォームを活用するメリットとしては、まず、証券会社を介さずとも、自社株式を中長期保有してくれる可能性のあるESG投資家にアクセスできるということが挙げられる。

単にESG投資家にアクセスするだけでなく、ESG投資家から自社のESGレポートの改善点やESG投資家が本当に知りたいことを聞き出し、レポートの内容をブラッシュアップするという使い方も考えられる。コメントの送受信は送信者と受信者の間のクローズドな環境で行われる(送受信者以外はコメントのやり取りを閲覧できない)ため、作成途中のレポートを限定されたESG投資家との間だけで共有することができる。

さらに、直接対話機能を使ってESG投資家とコミュニケーションを取ることにより、企業の”ESG対話力”の向上にもつながるはずだ。

ESG関連レポートの作成に悩む企業の中には、外部の作成コンサルタントの利用を検討するところもあるが、当然ながら費用もかかる。まずはコストのかからない“官製”のESG対話プラットフォームの活用をしてみてもよいだろう。

2017/10/18 経産省・役員報酬Q&Aの改定点

役員報酬改革を検討する企業にとって、いまや欠かせないアイテムとなっているのが、経済産業省が作成している『「攻めの経営」を促す役員報酬-企業の持続的成長のためのインセンティブプラン導入の手引-』だ。この手引きは税制改正等の都度改定されているが、平成29年度税制改正項目の一部が(2017年)10月1日から施行されたことなどを受け、先月末に再びその一部が改定されている。

改定点は上記最新版と前の版との比較により把握することができる。手引の中でも最も参照頻度が高いと思われる「Ⅱ.株式報酬、業績連動報酬に関するQ&A」の主な改訂箇所は以下のとおりだ。

なかには旧版とニュアンスが変わっている・・・

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