2017/08/31 2017年8月度チェックテスト第1問解答画面(正解)

正解です。
取締役総数に占める独立取締役の比率を少なくとも3分の1以上にするには、独立取締役を増員する方法だけでなく、総取締役数を減員する方法もあります。問題文は「独立取締役の増員は不可避」(=独立取締役を増員するしか方法はない)としており、誤りです。

こちらの記事で再確認!
2017/08/03 独立社外取締役、焦点は「人数」から「比率」へ(会員限定)

2017/08/30 【失敗学第39回】神栄の事例(会員限定)

概要

兵庫県神戸市を地盤として繊維、食品などの商品開発や輸出入事業を展開する神栄株式会社(東京証券取引所市場第一部上場)で、100%連結子会社(中国)の神栄(上海)貿易有限公司が売掛金の滞留の事実を隠ぺいするために架空取引を行っていたことが発覚し、過年度の財務報告の訂正が必要になった。

経緯

神栄が、2017年8月に過年度の財務報告の修正を公表するまでの経緯を時系列で示すと、次のとおり。

2014年
10月:神栄の上海子会社(神栄(上海)貿易有限公司:以下、「神栄(上海)」)の董事長兼総経理であったXが、既存取引先のA社(香港)代表者Pに取引拡大を持ち掛け、神栄(上海)のA社に対する売上が増加。

2015年
3月:神栄(上海)においてA社向け売掛金の回収遅延が生じ、A社向け売掛金の残高が与信枠を超過した。
5月:Xは、神栄(上海)からA社へ出荷するもののうち一部について、Pが実質的に運営しているとみられるB社とC社(いずれも香港)に出荷したことにする(迂回出荷)ことで、各社に対する債権額が与信枠を超過しないようにコントロールして、売掛金の滞留の事実が神栄に発覚しないよう隠ぺいを図った。
7月:神栄の繊維本部長のYがXの不正を認識するも、YはXを咎めなかった(YはXに是正指示を出さず、Xの不正を許容した)。
10月:神栄(上海)でC社向け債権も与信枠を超過したことから、Xは神栄(上海)がC社から架空の仕入れを行ったことにしてC社向けの架空債務を計上し、その架空債務と債権を相殺することで与信枠超過を回避した。
11月:Xは神栄(上海)における債権滞留の事実を隠ぺいするため、Pと共謀し、C社と代表者を同じくするE社(日本)より神栄ライフテックスが仕入れ、A社・B社・C社に販売する商流を作り、神栄ライフテックスが先に支払った仕入代金をA社に還流させ、A社から神栄(上海)への支払いに充当した。
12月:A社・B社・C社のいずれも与信枠を超過したことから、Yの指示により、Xは神栄に対して提出する報告資料中の得意先別債権残高の改ざんを開始。

2017年
6月24日:神栄の他の事業本部の本部長が、神栄(上海)に出張した際に、神栄(上海)では特定の取引先に対する債権未回収高が多額に上った結果、資金繰りがひっ迫し仕入先への支払いも滞っているとの情報を入手した。
6月29日:神栄が調査チームを神栄(上海)に送り、Xを追及したところ、Xは不正取引の事実を認めた。
7月10日:神栄が社内調査委員会を設置する。
7月20日:神栄は、神栄(上海)で不正取引が行われており過年度決算の訂正が必要になったことにつきリリースを公表。
8月10日:社内調査委員会の調査が終了。
8月14日:神栄は、調査報告書および役員の処分を公表するとともに、2017年3月期の連結売上高を584百万円取り消すなど過年度の財務報告の訂正を実施。

内容・原因・改善策

神栄が、2017年8月に公表した「社内調査委員会の報告書」によると、本件の問題点の主な内容とその原因、再発防止策は次のとおりである。

架空取引

内容 神栄(上海)の董事長兼総経理であった日本人駐在員Xが、A社向け売掛金の回収が滞っていることを隠ぺいするために、実態のない不正取引等を繰り返していた(上記の「経緯」を参照)。
原因 ・神栄(上海)の業績回復のためには、A社との取引継続が必要であった。
・神栄の繊維本部長のYは、Xの不正を認識したにもかかわらず、是正指示を出さなかった。
・XやYは、A社代表のPを過度に信頼していた。
・神栄(上海)では内部けん制が効いていなかった。
対応策 (管理体制の強化)
・海外の事業所の規模に応じ、日本人駐在員の複数化や現地スタッフの育成による役員および管理職への登用を進め、内部けん制機能を高める。
・海外の事業所においても、取締役会(董事会)を定期的に開催し、非常勤取締役(董事および監事)による牽制を強化する。
・海外事業所における事業所長決裁権限の与信枠申請については、親会社総務・審査部におけるモニタリングを強化し、必要に応じて申請内容の確認を行うことにより、牽制機能を働かせる。
・海外事業所でも債権債務の個別管理システムを導入し、親会社総務・審査部における与信枠および滞留債権の管理を強化する。

(監査の充実)
親会社による監査役監査、会計士監査および内部監査の各監査の連携を強化し、特に牽制機能が十分でない事業所については、毎期いずれかの往査を必ず実施する。
・海外事業所のリスクや問題点について、親会社の内部監査部門が会計監査人(監査法人)と意見交換・協議を行い、これに基づき内部監査をより強化・徹底する。

(資金繰り管理の強化)
海外事業所の資金繰りや貸借対照表の状況について、親会社経理・財務部において定期的に確認を行い、通例でない動きがある場合は、実地調査を行い、究明する。

(グループ間取引に対する管理の強化)
グループ内の各社間の取引において債権回収の遅延が発生した場合は、親会社経理・財務部に報告することを義務付け、報告を受けた同部は、その実態について調査・究明を行う。

(コンプライアンス意識の向上)
・役員や管理職の登用にあたっては、コンプライアンス意識をはじめとする人物評価を慎重に行うとともに、登用時および登用後も継続して、会社法や金融商品取引法等における役員の基本的義務や責任等を習得する機会を設けるなど、コンプライアンス研修を強化し、更なる意識向上を図る。
・その他の従業員についても、コンプライアンスガイドブックの配付や外部講師による定期的なコンプライアンス研修を強化し、コンプライアンスを重視する企業風土を醸成する。

(職務分掌の徹底)
・原則として、決裁権限を有する BU長のみが担当する取引は行わない。
・やむを得ずBU長のみが担当する取引を行う必要がある場合は、担当本部長および企画管理本部長が協議のうえ、許可するとともに、当該取引を重点的に監査(内部監査)する。

(モニタリング等による確認)
・各種申請において、BU長決裁案件をBU長自らが起案し、又は本部長決裁以上の案件を BU長単独で起案する場合は、当該申請を所管する企画管理本部が、決裁後のモニタリングまたは承認手続の過程において、厳格に内容の確認を行う。また、手続きに問題がないかを内部監査で確認する。

BU : BU:ビジネスユニット

得意先別残高を示す親会社向け報告資料の偽造

内容 親会社に対して神栄(上海)のP社向け債権残高が膨らんでいる事実を隠ぺいするため、Xは得意先別残高を示す親会社向け報告資料を偽造していた。
原因 神栄(上海)決算の売掛金明細における各社への債権残高と親会社総務・審査部に報告された債権残高の内容に齟齬があったにもかかわらず、決算・監査資料を突合しなかったため、虚偽報告が露見しなかった。
対応策 海外事業所に対する内部監査の際に、当該事業所の決算・監査資料の内容を精査するとともに他の資料との突合を行う。
<この失敗から学ぶべきこと>

海外子会社を起点とした決算訂正事例として、以前に船井電機の事例を紹介しました(失敗学第29回)が、船井電機では従業員のミスが原因であったのに対し、今回の神栄の事例は不正が原因でした。

神栄の海外子会社では現地化を進めた結果、上海子会社では日本人駐在員が1人(X)だけとなり、X自らが営業および管理を行う状況のなか、現地スタッフ管理職による相互けん制も働かず、不正の遠因となりました。海外子会社には複数の日本人駐在員を配置するのは、けん制だけでなく、次世代育成のためにも必須と言えます。

神栄では、約2年間、監査役監査、会計士監査および内部監査のいずれも神栄(上海)に対する往査を行っていませんでした。各監査の監査計画担当者や責任者は、「日本人駐在員が1人で、かつ、内部けん制も期待できない海外子会社は不正リスクが高い」ことに配慮して監査計画を立案していれば、より高頻度の往査が実施され、不正を早期に発覚できていたかもしれません。「日本人駐在員が1人で、かつ、内部けん制も期待できない海外子会社」を有する上場企業では、三様監査の頻度が十分かどうかを検討しておきましょう。

2017/08/30 事業の売却に伴う税金が先送りも

東芝の半導体メモリー事業の売却交渉が続いているが、このような価値の高い事業を売却した場合、多額の売却益が生じ、・・・

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2017/08/30 事業の売却に伴う税金が先送りも(会員限定)

東芝の半導体メモリー事業の売却交渉が続いているが、このような価値の高い事業を売却した場合、多額の売却益が生じ、その売却益に対し税金(法人税)がかかることも考えられる。

こうした事業の売却に伴い生じる税金を「繰り延べる」措置が現在政府内で検討されていることが当フォーラムの取材で分かった。

一定の条件を満たすことで税金が軽減される優遇措置である「租税特別措置法」には、土地や建物などを買換えた場合(売却+購入)に、売却時に生じる売却益への課税を繰り延べる「買換え特例」という制度が設けられている。ここでいう「繰り延べる」とは、売却益の80%を圧縮するとともに(すなわち、売却益は本来の金額の20%となる)、当該売却益の80%分だけ買換え資産の取得価額を減らすというもの。売却益は本来の額の20%となればその分法人税の負担は減ることになるが、買換え資産の取得価額も小さくなるため、将来買換え資産を売却した場合には、その分売却益(売却額-取得価額)は大きくなる。すなわち、資産の売却時にかかる税金が将来(=買換え資産の売却時)に“先送り”されることになる。買換え特例で、「課税を“繰り延べる”」という表現が使われているのはそのためだ(詳細は財務省の解説参照)。

現行の買換え特例は土地や建物などの売買を対象としているが、政府は平成30年度税制改正で、「事業」の売買を対象とすることを検討する方向。もしこれが実現すれば、ある事業を売却したことにより売却益が生じても、その相当部分が“圧縮”されることになる。ただし、「買換え特例」という以上は、事業を売却するだけでなく、別の事業を買って来る必要がある。あくまで「事業の売却+別事業の購入」がセットになって、はじめて買換え特例の適用対象になるということだ。

また、事業の売買について買換え特例の適用を受けるためには、事業の売却と別事業の購入を含む一連の事業再編計画について産業競争力強化法に基づき国の認定を受けることが求められる方向。当フォーラムの取材によると、平成30年度税制改正では自社株対価TOBが行われた場合におけるTOBに応じた株主への課税の繰り延べも検討される模様。これら二つの税制改正が実現すれば、日本企業の事業再編を後押しする可能性があろう。

産業競争力強化法 : 日本経済の3つの歪みとされる「過剰規制」「過小投資」「過当競争」を是正するため、収益力の飛躍的な向上に向けた事業再編などの企業の取り組みを後押しする法律。

2017/08/29 全株懇、株主総会資料の電子提供義務付けを提言

現在、法務省の法制審議会会社法制(企業統治等関係)部会は会社法の見直しの一環で上場会社における株主総会資料の電子提供制度(以下、「新たな電子提供制度」)を導入する方向で検討を進めているが(会社法見直しの全体像は2017年4月27日のニュース「法務省、ガバナンスに関する会社法の見直しに着手」参照)、こうした中、上場会社の株主総会実務に強い影響力を持つ全国株懇連合会(以下「全株懇」)は昨日(2017年8月28日)、制度のあり方や導入後の利用を円滑にするための環境整備などを提言する「株主総会プロセスの電子化について ~株式実務からの一考察~」と題する提案書を公表した。

提言(73ページ~)の中で最初に出てくるのが、・・・

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2017/08/29 全株懇、株主総会資料の電子提供義務付けを提言(会員限定)

現在、法務省の法制審議会会社法制(企業統治等関係)部会は会社法の見直しの一環で上場会社における株主総会資料の電子提供制度(以下、「新たな電子提供制度」)を導入する方向で検討を進めているが(会社法見直しの全体像は2017年4月27日のニュース「法務省、ガバナンスに関する会社法の見直しに着手」参照)、こうした中、上場会社の株主総会実務に強い影響力を持つ全国株懇連合会(以下「全株懇」)は昨日(2017年8月28日)、制度のあり方や導入後の利用を円滑にするための環境整備などを提言する「株主総会プロセスの電子化について ~株式実務からの一考察~」と題する提案書を公表した。

提言(73ページ~)の中で最初に出てくるのが、新たな電子提供制度の「法的位置付け」だ。新たな電子提供制度については、各上場会社が置かれた状況に応じて選択できるよう「任意」とすべきとの意見もあるが(例えば経済産業省が事務局となる電子化促進研究会の報告書。38ページ(1)参照)、仮に任意となった場合、新たな電子提供制度の利用が低調となりかねないことや、新たな電子提供制度を利用する会社と利用しない会社が並存し株主に混乱を招きかねないことなどから、全株懇はあくまで「上場会社を対象に、法律で義務付けるかたちで制度設計を行うこと」を提言している(73ページ(1)参照」)。

ただし全株懇は、上場会社に新たな電子提供制度の利用を法律で義務付ける場合には、「実務に一定の配慮を行うこと」が条件になるとしている。

まずはウェブサイトへの掲載の中断リスク()に備えたルール作りだ。

 新たな電子提供制度に対しては、システム障害等で株主総会情報がウェブサイトに掲載されない状態が継続した場合、株主総会決議が取り消されるのではないかとの懸念がある。

現行会社法上の電子公告制度においては、システム障害等により公告の内容がウェブサイトに掲載されない状態になった場合であっても、会社が善意でかつ重大な過失がなく、公告の中断が生じた時間の合計が公告期間の十分の一を超えないなど一定の要件を満たせば公告の中断は公告の効力に影響を及ぼさないこととされている(会社法940条3項)。全株懇では、新たな電子提供制度についてもこのようなウェブサイトへの掲載の中断に関する規定(セーフハーバー・ルール)を設けることが望ましいとしている。一例として、議決権を有するすべての株主に対し、(新たな電子提供制度に加え)会社の判断で株主に株主総会情報を記載した書面一式を送付する「フルセットデリバリー」を実施した場合は、株主総会情報の提供が実質的になされていることから、ウェブサイトへの掲載に中断があっても株主総会決議の取消事由に該当しないとする案を挙げている。

また、株主に対しフルセットデリバリーを行いたい、あるいは配当金や株主優待といった株式事務に関する書類などを同封して株主に送付したいという企業のニーズも予想されることから、アクセス通知に同封する書類について法律による制限を行わないことを提言している。新たな電子提供制度が参考にする米国の「Notice&Access制度」では、アクセス通知とともに行う書面による情報提供に制限が設けられているだけに、これと異なる全株懇の意見は注目されよう。

Notice&Access制度 : 委任状説明書等(上場会社等の株主総会に提出される議案内容を説明する書類)をウェブサイトに開示し、その旨を株主総会開催日前に株主に通知することにより、委任状説明書等を電子的に交付することについて、個々の株主の同意を得ることを不要とする制度。

このほか、会社の実務対応への配慮から、アクセス通知の発送期限を現行法上の招集通知の発送期限より前にしないことや、株主総会決議取消訴訟の提訴期間が3か月である(会社法831条1項)ことを踏まえ、株主総会情報のウェブサイトへの掲載期間はアクセス通知発送日から総会日後3か月が経過する日までとすべきとしている。
(以上、74~76ページ参照)

新たな電子提供制度では、株主総会情報を引き続き書面で受領することを希望する株主への対応が企業の懸念の一つとなっているが、全株懇は、このような株主からの書面請求権を法律上保障すべきとする一方で、企業に生じる負担を抑える方策を提言している。具体的には、書面請求権を付与するのは議決権行使が可能な基準日において株主名簿に登録されている株主に限定するとともに、書面請求の期限は基準日までとすべきとしている。また、書面請求権の対象となる情報は「事業報告の一部のほか、貸借対照表と損益計算書、監査報告、株主総会参考書類の議案部分」等(すなわち、ウェブ開示制度()の対象となる事項を除いた部分)に限るとした。

 定款の定めがあることを前提に、招集通知関連書類の一部または全部をウェブサイトに掲載し、かつそのURLを株主に通知することをもって株主に提供したものとみなすことで書面による提供を省略することができるとする制度。

さらに、書面請求株主を減少させる方策として、例えば5年間にわたり一度も議決権行使の実績がない場合には、行使済の書面請求権の効力が将来に向かって解除されるといった立法上の手当てを講じることが考えられるとした。このほか、新たな電子提供制度の導入により何らかの義務が課されたりシステム開発が必要になるといった可能性を踏まえ、実施までに周知等のための十分な期間を設けることを提言している。
(以上、76~79ページ

新たな電子提供制度が導入された場合、ウェブ開示制度(上記の囲み参照)をはじめとする既存制度との関係がどうなるのかも気になるところだ。全株懇は、書面による提供を省略することが“できる”とするウェブ開示制度は、利用が義務付けられる新たな電子提供制度とは相容れないため(上場会社については)廃止すべきとした。ただし、非上場会社については、定款の定めは不要とした上で存続させることを提案している。

また、現行会社法上、招集通知発出後における株主総会参考書類や事業報告、計算書類、連結計算書類の修正事項を自社のウェブサイトに掲載することによって株主に周知することが可能となっているが(いわゆるウェブ修正制度)、新たな電子提供制度においては株主総会情報のすべてがウェブサイトに掲載されるため、ウェブ修正が可能な書類を限定する必要性も乏しいことから、現行のウェブ修正制度は利用可能な情報を拡充することなどの見直しを検討することを提言している。

このほか、株主から事前に個別承諾を得ることで議決権行使書面を含む株主総会関連書類を電磁的方法(電子メール)により提供できることとする現行の「招集通知電子提供制度」ついては、個別の事前承諾への対応等の煩雑さから制度の利用が9.3%にとどまっている(平成28年全株懇調査)ことや、採用した場合でも、併せて議決権行使書面を郵送している会社が多いという実情を踏まえ、新たな電子提供制度が導入された場合には廃止を含めて制度のあり方を再検討するべきとした。

さらに全株懇は、新たな電子提供制度の趣旨が、情報提供の早期化による株主等との対話期間を確保することにあることを踏まえ、現行会社法上「株主総会の日の8週間前まで」(会社法303条2項、305条1項)とされる株主提案権の行使期限の早期化も提言している。具体的には、株主提案権の行使期限を前年の定時株主総会開催日の1年後の応当日を本年の定時株主総会の開催予定日としてその「10~12週間前」とする立法的な措置も検討されるべきとした。
(以上、80~82ページ

このほか全株懇は、株主総会プロセスの電子化を全体として推進するためには、招集手続の電子化だけではなく、議決権行使プロセスもあわせて電子化を進めていく必要があるとし、東証の関係会社である株式会社ICJが運営する機関投資家向け議決権電子行使プラットフォームの一層の利用促進や、個人株主についても電子投票の利用促進を図るための個人株主向け議決権行使プラットフォームの導入の検討も提言している(83~85ページ)。

冒頭で述べたとおり、全株懇は、株主総会をはじめとする株式実務の領域で各種モデルや事務取扱指針を制定するなど、実務面での影響力は大きいだけに、法制審議会会社法制(企業統治等関係)部会の審議でも今回の提言が参考にされる可能性は十分にありそうだ。

2017/08/28 他社の経営者トップである社外取締役に対するグローバル投資家の意見

上場会社に「社外取締役がいるか?」ということが論点になっていた時期は既に過去のものとなりつつある。東証「コーポレートガバナンス白書2017」(74ページ)によると、2016年3月末時点で、東証上場会社のうち96%が社外取締役を、89%が独立社外取締役を選任している(独立社外取締役の定義は2014年12月26日のニュース『「社外取締役」と「独立社外取締役」の違い、明確に説明できますか?』参照)。また、2名以上の独立社外取締役を選任している東証上場会社は60%と、複数選任もだいぶ進展してきている。その背景には、「独立社外取締役を少なくとも2名以上選任すべき」とするコーポレートガバナンス・コード原則4-8に対応するため社外取締役を選任した会社、あるいは監査役会設置会社から監査等委員会設置会社に移行して従来の社外監査役を社外取締役に横滑りさせた会社が相当数あったということがある。

こうした中、資本市場の関心は「社外取締役がいるかどうか」ではなく「何人(何割)いるのか?」、さらには「誰なのか?」へと移っている。東証のコーポレートガバナンス白書2017(80ページ)で独立社外取締役の属性を見ると、もっとも多いのは「他の会社の出身者」で、全体の59%と大部分を占めている。これに続く弁護士は16%、公認会計士は9%に過ぎない(下表参照)。ここでいう「他の会社の出身者」は「現在及び過去に他の会社に一度でも勤務経験がある場合をいう」と定義されているが、この中には他社の経営トップ経験者が相当数含まれる。実際、多くの上場会社では、他社の経営トップ経験者が社外取締役の人選におけるファーストチョイスになっている。

30018a

もっとも、他社の経営トップ経験者というだけで社外取締役としての資質を満たすとは限らないだろう。この点について、あるグローバル投資家は次のように指摘する。

○日本企業の経営者が社外取締役に適任かは疑問。経営手腕は優れているが(well management)、財務手腕(balance-sheet management)に欠けている。・・・

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2017/08/28 他社の経営者トップである社外取締役に対するグローバル投資家の意見(会員限定)

上場会社に「社外取締役がいるか?」ということが論点になっていた時期は既に過去のものとなりつつある。東証「コーポレートガバナンス白書2017」(74ページ)によると、2016年3月末時点で、東証上場会社のうち96%が社外取締役を、89%が独立社外取締役を選任している(独立社外取締役の定義は2014年12月26日のニュース『「社外取締役」と「独立社外取締役」の違い、明確に説明できますか?』参照)。また、2名以上の独立社外取締役を選任している東証上場会社は60%と、複数選任もだいぶ進展してきている。その背景には、「独立社外取締役を少なくとも2名以上選任すべき」とするコーポレートガバナンス・コード原則4-8に対応するため社外取締役を選任した会社、あるいは監査役会設置会社から監査等委員会設置会社に移行して従来の社外監査役を社外取締役に横滑りさせた会社が相当数あったということがある。

こうした中、資本市場の関心は「社外取締役がいるかどうか」ではなく「何人(何割)いるのか?」、さらには「誰なのか?」へと移っている。東証のコーポレートガバナンス白書2017(80ページ)で独立社外取締役の属性を見ると、もっとも多いのは「他の会社の出身者」で、全体の59%と大部分を占めている。これに続く弁護士は16%、公認会計士は9%に過ぎない(下表参照)。ここでいう「他の会社の出身者」は「現在及び過去に他の会社に一度でも勤務経験がある場合をいう」と定義されているが、この中には他社の経営トップ経験者が相当数含まれる。実際、多くの上場会社では、他社の経営トップ経験者が社外取締役の人選におけるファーストチョイスになっている。

30018a

もっとも、他社の経営トップ経験者というだけで社外取締役としての資質を満たすとは限らないだろう。この点について、あるグローバル投資家は次のように指摘する。

○日本企業の経営者が社外取締役に適任かは疑問。経営手腕は優れているが(well management)、財務手腕(balance-sheet management)に欠けている。
○単に「経営者」であれば良しとするのではなく、個人の資質に拠るべき(resource based)。“総花的”な経営管理者(general manager)が社外取締役として適任だとは思えない。
○取締役会に多様性をもたらすために必要な資質としては、まず資産配分(capital allocation)のスキルが考えられるが、人事(human resource)などのスキルを持った人材も有用だろう。

日本企業の取締役会に対してはかねてから「モノカルチャー(単一的文化)」だという批判がある。具体的には、「終身雇用と年功序列の下でゼネラリストとして勤め上げてきた60歳前後の男性」ばかりの多様性が欠けた取締役会で、過去の成功体験から脱した経営革新ができるのか、といったものだ。仮に社外取締役として選任した「他社の経営トップ経験者」の資質が同じようなものであるとすれば、上記のグローバル投資家の指摘にも合理性がある。

このように、社外取締役の選任において、投資家は「経営トップ経験者」であれば無批判に賛同するということではない。選任理由について投資家に説得力のある説明ができるよう、他社の経営トップ経験者を社外取締役に選任する際にも、得意分野を把握したうえで、自社に必要な人材かどうかを見極める努力が求められる。

2017/08/27 【役員会 Good&Bad発言集】企業買収時の判断(のれん)

東証一部に上場しているサービス業のX社では、好調な業績を背景に預金残高がかつてない水準に積み上がっており、株主から「有望な投資先がないのであれば株主に還元すべき」との声が上がっています。そのような中、X社の連結グループとは事業領域を異にするものの利益を安定的に計上しているS社(非上場)の買収話が持ち上がりました。

X社の取締役会では、S社の事業計画や株価算定書などをもとに、S社を買収するかどうかを議論している最中です。買収価額として提示されている金額でS社を買収すると多額の“のれん”が発生することになるため、X社の取締役会では議論が長引いています。S社買収を巡り役員A・B・Cが下記の発言をしました。誰の発言がGood発言でしょうか?

監査役A:「皆さんはこの株価算定書を“正”としてS社買収の可否を議論していますが、株価算定書が株価の算定にあたり前提にしている事業計画、割引率などについても議論の対象にすべきではないでしょうか。」

取締役B:「我々は企業評価のプロではないからこそ、プロの第三者機関に株価を算定してもらい、買収の是非を判断しているのです。プロが算定した株価の妥当性について、素人の我々が検証する必要はないでしょう。」

取締役C:「わが社の貸借対照表にこれだけ高額の『のれん』が計上されると、株主への説明に苦慮することになるのは目に見えています。これを機に、わが社が採用する会計基準をIFRSに変更してはどうでしょうか。IFRSを採用すればのれんを償却しなくて済むので、株主に対するのれんについての説明責任を回避できるからです。」

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