2017/06/28 武田薬品工業株主総会が本日開催、株主が下した結論は?

武田薬品工業は本日(2017年6月28日)、2017年3月期の定時株主総会を開催した。同社の定時株主総会では、・・・

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2017/06/28 武田薬品工業株主総会が本日開催、株主が下した結論は?(会員限定)

武田薬品工業は本日(2017年6月28日)、2017年3月期の定時株主総会を開催した。同社の定時株主総会では、株主から相談役・顧問の設置に制限を課すための定款変更を行うよう提案(株主提案)がされており、その議案の成否が注目されていた。

武田薬品工業の株主15名が提案した議案の内容は次のとおり。

武田薬品工業における株主提案の定款変更議案
現行定款(2016年6月29日改正)の第16条の2(相談役・顧問等の設置及び選任)として下記の文言を新たに追加する。
「1.当会社は、原則として相談役又は顧問等当会社の業務一般又は特定の業務について代表取締役の諮問に応ずることを職務内容とする役職を置かない。新たにこれを設置しようとする場合には、相談役・顧問等の設置に関する議案を株主総会に付議し、株主総会に於ける事前の決議を要することとする。
2.当会社が、前項の株主総会の決議により相談役・顧問等を設置した場合には、相談役・顧問等を選任するためには具体的な相談役候補者名の議案を株主総会に付議し、株主総会に於ける事前の決議を要することとする。」

この株主提案に対して、取締役会は反対の意を表明していた(取締役会が株主提案に反対した理由は2017年6月19日のニュース「相談役の報酬額と職務内容」を参照)。一方、議決権行使助言会社最大手のISSは株主提案に賛成推奨をしていたため、機関投資家の判断が注目されていた。

ただでさえ相談役・顧問に厳しい目線が注がれる中でISSが賛成を推奨したことで議案が可決される可能性も指摘されていたが、結果は株主提案に対する反対が賛成を上回る結果となった(すなわち、定款は変更されず。株主総会の決議結果通知はこちら)。株主提案の否決の背景には、定款変更は3分の2以上の賛成が必要でありもともとハードルが高いことに加え、取締役会が公表した株主提案に反対するリリースが一定の効果を有したことが考えられる。なお、実際に各機関投資家がどのような投票をしたのかは、改訂スチュワードシップ・コードに基づき、各機関投資家が議決権行使結果の個別開示を実施するまでは明らかにはならない(開示までに1~3か月程度かかるものと思われる)。

武田薬品工業における株主提案は否決されたものの、今後は相談役・顧問制度の設置に歯止めをかける株主提案が他の上場企業でも増加することが見込まれる。ISSは今後も同様の株主提案には賛成推奨する可能性が高いからだ。特にROEが低く、機関投資家の比率が高い企業ほど賛成率は高まりやすいだろう。不祥事を起こした企業はも言わずもがなである。これらに該当する上場企業は注意が必要になる。

2017/06/27 買収防衛策の廃止は妥当だったか?

2017年5月29日のニュース「買収防衛策を廃止する企業が急増している理由」でお伝えしたように、今年になって買収防衛策を廃止する企業が急増している。廃止企業数は例年であれば20社に満たないところ、昨年は26社、今年は44社に達している。本稿では、そのうち象徴的な廃止事例を紹介しつつ、「廃止」という判断が妥当だったのか検証したい。・・・

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2017/06/27 買収防衛策の廃止は妥当だったか?(会員限定)

2017年5月29日のニュース「買収防衛策を廃止する企業が急増している理由」でお伝えしたように、今年になって買収防衛策を廃止する企業が急増している。廃止企業数は例年であれば20社に満たないところ、昨年は26社、今年は44社に達している。本稿では、そのうち象徴的な廃止事例を紹介しつつ、「廃止」という判断が妥当だったのか検証したい。

積水化学工業は2008年に買収防衛策を導入、以来3年ごとに継続議案を株主総会に上程してきた。同社においては、買収防衛策に対しては厳しいスタンスをとる外国人株主比率が40%に迫っており、高い反対率となることが予想されていたにもかかわらず、過去2回の賛成率はいずれも80%を超えている。これは、2014年8月8日のニュース「外国人株主比率が高いのに買収防衛策への賛成率も高い会社の特徴」でお伝えしたように、ROEが改善傾向にあること、そしてISSの賛成推奨を得ている(と推定される)ことがプラスに働いたことによるものと考えられる。

積水化学工業の買収防衛策

年度 2011 2014
賛成率 80.47% 81.08%

しかし今年は、「株主の皆様のご意見、さらに独立社外役員が過半数を占める当社の指名・報酬等諮問委員会の答申」を踏まえ、買収防衛策を継続せずに廃止する旨のリリース(当社株券等の大規模買付行為への対応策(買収防衛策)の非継続(廃止)について)を公表している。コーポレートガバナンス・コード導入、そしてスチュワードシップ・コード改訂(改訂スチュワードシップ・コードの詳細は「議決権行使結果個別開示、“穏便な”コンプライは認められず」参照)を背景に、ISSの賛成推奨を含め投資家の支持を得ることは難しいと判断したものとみられる。

カプコンも2008年に買収防衛策を導入、以来2年ごとに継続議案を上程してきたものの低賛成率に苦しみ、2014年にはとうとう初の否決事例として知られることになった。しかし、翌2015年に再導入を図った際には、買収防衛策の設計を株主重視に変更したことに加えて、ROE目標を伴った成長戦略を明示したことが功を奏して、ISSの賛成推奨を得るなどして高い賛成率を確保するに至った(2015年6月16日のニュース「カプコンの買収防衛策が今年は可決された理由」参照)。

カプコンの買収防衛策

年 度 2010 2012 2014 2015
賛成率 63.24% 58.92% 47.41% 74.77%

同社による買収防衛策非継続のリリース「当社株式等の大規模買付行為に関する対応策(買収防衛策)の非継続(廃止)について」では、よりダイレクトに廃止理由が説明されている。具体的には、「買収防衛策に対する海外機関投資家等の姿勢が一段と厳しくなっていることに加え、国内機関投資家もスチュワードシップ・コードの影響等により議決権行使基準を厳格化する傾向にあるなど、買収防衛策を取り巻く環境が変化していることを実感するとともに、多数の機関投資家等から現施策の継続について理解を得るのは容易ではないとの判断」に至ったという。2度目となる否決リスクは、今回の判断に少なからず影響したはずだ。

下表は、今年買収防衛策の継続を5~6月の株主総会で諮った企業のうち(既に臨時報告書によって賛成率を公表した企業に限る)賛成率が低かったところをピックアップしたもの。5社いずれも前回の更新時と比べて賛成率を落としている。このことは、積水化学工業やカプコンをはじめとする買収防衛策廃止企業の判断に妥当性があったことを裏付けているとも言えよう。

買収防衛策の低賛成率事例(5/26現在)

社 名 前回 今回
三井松島産業 75.66% 54.79%
セゾン情報システムズ 69.09% 64.64%
名村造船所 79.00% 68.20%
総合メディカル 76.02% 68.85%
日本バルカー工業 74.25% 69.92%

2017/06/26 収益認識に関する会計基準導入の副作用

2017年5月19日のニュース「収益認識会計は単体も連結と同じ基準に 事業計画見直しも」でお伝えしたとおり、来月(2017年7月)中にも公開草案が公表される予定の「収益認識に関する包括的な会計基準」は、連結財務諸表のみならず単体財務諸表にも適用される方向だが、これに伴い、・・・

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2017/06/26 収益認識に関する会計基準導入の副作用(会員限定)

2017年5月19日のニュース「収益認識会計は単体も連結と同じ基準に 事業計画見直しも」でお伝えしたとおり、来月(2017年7月)中にも公開草案が公表される予定の「収益認識に関する包括的な会計基準」は、連結財務諸表のみならず単体財務諸表にも適用される方向だが、これに伴い、医薬品、化粧品、既製服などのメーカーやその卸売業者、出版社などの税負担が一時的に増える可能性が出てきた。

これらの業界に共通するのが「返品」の多さだ。出版社の例を見てみよう。出版社が1冊千円の書籍を1万部発刊した場合、発刊と同時に1千万円(千円×1万部)の売上が立つ。発刊しただけで(売れてもいないのに)売上が立つのは、出版社と書店の間で卸売業を営む「出版取次業者」(トーハン日販が有名)が1千万円を出版社に支払うため。発刊した書籍は出版取次事業者を通じて書店に並び、売れ残ったものは出版社に返品されるが、この際、出版取次事業者は返品冊数に応じた販売代金の“返還”を出版社に求めることになる。例えば2千部が返品されたとすると、出版社は2百万円を出版取次事業者に返金しなければならない。

出版社がこの書籍を発刊してすぐに決算を迎えると、現在の会計基準では、1千万円の売上を立てたうえで、2百万円の「返品調整引当金」を計上することになっている。そして、税務上も、上記のような返品率の高い業種(上記に加え、農薬、蓄音機用レコード、磁気音声再生機用レコードまたはデジタル式の音声再生機用レコードの製造業 、これらの物品の卸売業が該当する。法人税法施行令99条参照)に限って、会計上も返品調整引当金を計上していることを条件(法人税法53条1項)に、その損金算入を認めてきた。会計上返品調整引当金を計上していることを条件にしているのは、企業が恣意的に課税所得を調整できないようにするため。すなわち、税務上損金にしたいのであれば、会計上も費用に計上して株主総会の承認を得る必要があるということだ(これを「損金経理要件」という)。

返品調整引当金 : 商品の返品による損失に備え計上する引当金。
損金経理要件 : 確定した決算において「費用」として処理しない限り、税法上も「損金」とは認めないということ。

ところが、「収益認識に関する包括的な会計基準」では、そもそも返品が見込まれる部分については収益を認識しない(=売上に計上しない)こととされる。返品される確率が高い部分まで含めて売上に計上すれば、企業の収益力を過大に見せることになりかねないからだ。返品が見込まれる部分を収益として認識しない以上、返品調整引当金も計上されないことになる。

会計上、返品調整引当金を計上しないとなれば、上述した「会計上返品調整引当金を計上していること」という返品調整引当金繰入額を損金算入する要件を満たしようがない。すなわち、「収益認識に関する包括的な会計基準」の導入後は、返品調整引当金への繰入額の損金算入ができなくなる可能性があるということだ。一方、法人税上の売上は、現状では返品が見込まれる部分を含め計上されるため、返品調整引当金への繰入額を損金に算入できなくなる分、企業にとっては一時的に税負担が増えることとなる(ただし、実際に返品があった際には、返品分相当額を損金に算入できるため、税負担が減る)。上記に挙げた業種に属する企業は注意が必要だ。

2017/06/23 懲罰的損害賠償制度の導入議論、再び活発化も(会員限定)

東芝は半導体子会社「東芝メモリ」売却の優先交渉先に“日米韓連合”を選定したという(東芝のリリースはこちら)。売却先は産業革新機構と日本政策投資銀行、米国の投資ファンドであるべインキャピタルのチームとなるが、“日米韓”と言われるのは、韓国企業のSKハイニックスがベインキャピタルに融資をするからだ。なお、SKハイニックスが出資ではなく融資になったのは、日本企業の知的財産流出への懸念も背景にあるとされている。これまで日本企業の知的財産が外国企業に流出してきた事件の記憶があるのだろう(2015年9月30日のニュース「新日鐵住金にも300億円、改正不正競争防止法の趣旨を裁判所が先取り」参照)。

知的財産の防御については政府の問題意識も高く、「日本では知的財産の権利者の保護が弱い」との問題意識の下、知財紛争機能を強化しようという動きが続いている(【特集】日本企業の思惑と逆行?「知的財産紛争処理システム」の行方 参照)。その一つが、特許侵害訴訟に「懲罰的損害賠償制度」を導入すべきとの意見だ。現在の日本の特許侵害訴訟では、「不法行為への賠償は、受けた損害を補填する原状回復である」という民法の填補賠償の原則(民法709条)に則り、特許侵害者は「特許権者が受けた損害額」を賠償する責任がある(すなわち、損害額を上回る賠償は不要)。一方、米国等では、裁判所の裁量で、損害の補填を上回る賠償を認める「懲罰的損害賠償」が導入されており、米国の多くの州では、填補賠償の3倍までの懲罰的賠償を許容している。自民党の一部議員は、この「懲罰的損害賠償制度」を日本に導入すべきと強く主張している(自民党「知財紛争処理システム検討会」の提言「イノベーション促進のための知財司法改革~「特許資産デフレ」からの脱却を目指して~」参照)。

一見すると企業にメリットのある主張に見えるが、企業側の反応はネガティブだ。これは、懲罰的損害賠償制度は、企業にとってデメリットが大きいと考えているからに他ならない。実際、懲罰的損害賠償制度を導入している米国では、高額な賠償金や和解金目当てに第三者から特許を買い集め、その特許権を行使して他社から高額な賠償金等を得ることを目的として活動するパテント・トロール(特許の怪物)が跋扈(ばっこ)しており、特許侵害訴訟の原告の大半がパテント・トロールによるものと言われている。このため、「日本に懲罰的損害賠償制度を導入することは、高額賠償を狙い企業の特許を食い物にするパテント・トロールを日本に呼び込むことを意味する」との指摘もある。ある上場企業の知財担当役員からは「イノベーションの結晶である特許が、ならず者の食い物にされることを助長するような政策が正しいのか」「懲罰的損害賠償制度の導入は、健全な産業の発展を目的とする特許法の理念に反する」という厳しい意見も聞かれる。

産業界を中心とした強い反対意見を受け、政府が先月(2017年5月)とりまとめた「知的財産推進計画2017」には、懲罰的損害賠償制度を導入する旨の記述は入らなかった。ただ、政府や特許庁などは「損害賠償額の適正化および知財価値の適正な評価」について検討することを確認しており、懲罰的損害賠償制度の導入議論が再び活発化する可能性は十分にある。知的財産を生命線とする企業はこの議論の行方に注目しておく必要があろう。何が動きがあり次第、続報したい。

2017/06/23 懲罰的損害賠償制度の導入議論、再び活発化も

東芝は半導体子会社「東芝メモリ」売却の優先交渉先に“日米韓連合”を選定したという(東芝のリリースはこちら)。売却先は産業革新機構と日本政策投資銀行、米国の投資ファンドであるべインキャピタルのチームとなるが、“日米韓”と言われるのは、韓国企業のSKハイニックスがベインキャピタルに融資をするからだ。なお、SKハイニックスが出資ではなく融資になったのは、日本企業の知的財産流出への懸念も背景にあるとされている。これまで日本企業の知的財産が外国企業に流出してきた事件の記憶があるのだろう(2015年9月30日のニュース「新日鐵住金にも300億円、改正不正競争防止法の趣旨を裁判所が先取り」参照)。

知的財産の防御については政府の問題意識も高く、「日本では知的財産の権利者の保護が弱い」との問題意識の下、知財紛争機能を強化しようという動きが続いている(【特集】日本企業の思惑と逆行?「知的財産紛争処理システム」の行方 参照)。その一つが、・・・

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2017/06/22 民法改正で定型約款の規定が新設、BtoC取引の約款はここに注意

テロ等準備罪成立を巡る与野党の攻防が話題になった第193回通常国会だが、その一方で、企業実務と密接に関する改正民法も成立(2017年6月2日に公布。施行日は2017年6月22日現在未定も、2020年中が有力)している。

今回改正されたのは、民法のうち「契約」に関する規定。主な改正点は次のとおりとなっている。・・・

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2017/06/22 民法改正で定型約款の規定が新設、BtoC取引の約款はここに注意(会員限定)

テロ等準備罪成立を巡る与野党の攻防が話題になった第193回通常国会だが、その一方で、企業実務と密接に関する改正民法も成立(2017年6月2日に公布。施行日は2017年6月22日現在未定も、2020年中が有力)している。

今回改正されたのは、民法のうち「契約」に関する規定。主な改正点は次のとおりとなっている。

(1)約款に関する規定の新設(後述)
(2)債権の消滅時効の期間の統一など、時効に関する規定の整備(職業別の短期消滅時効制度を廃止)
(3)法定利率を変動させる規定の新設(経済状況に応じて法定利率を機動的に変動できるようにする)
(4)保証人の保護を図るための保証債務に関する規定の整備(債権者に「主たる債務の履行状況に関する情報を保証人に提供する義務」を負わせたり、「事業のために負担した貸金等の債務を主たる債務」とする保証契約の締結に際して、保証人が公正証書で意思表示することを求めたりするなど、保証人の保護を図る)

短期消滅時効制度 : 権利関係の迅速な処理を目的として、一部の権利につき定められている消滅時効(一定の期間、権利が行使されないと、当該権利が消滅する制度)。一般的な消滅時効(債権であれば10年)よりも時効期間が短期間となっている。

このうち企業実務に深く関係するのが、(1)の約款に関する規定の新設だ。保険、クレジットカード、預金、旅行等々、大量の取引を捌くための画一的な契約と言える「約款」は企業実務において広く用いられているにもかかわらず、改正前の民法には約款に関する規定が存在しなかった。そこで、この実務と法律のかい離を埋めるために、約款に関する規定が民法に新設されるに至ったという経緯がある。

改正民法では「定型約款」という概念が導入されており(改正民法548条の2)、この定型約款に該当する約款は改正民法の規制や保護の対象となり、逆に該当しなければ対象外となる。例えば定型約款に該当する約款であれば、企業があらかじめその定型約款を契約の内容とする旨を消費者に表示しておくことで、企業にとっては「消費者は定型約款の個別の条項についても合意をしていた」とみなされる(すなわち消費者に「約款を読んでいないから合意していない」とは言わせない)というメリットがあり、消費者にとっても不当な約款や条項の不利益変更から守られるというメリットがある。

「定型約款」とは次の要件を満たす「定型取引」で用いられる約款を指す。

ある特定の者が不特定多数の者を相手方として行う取引であって、その内容の全部又は一部が画一的であることがその双方にとって合理的なもの

ここでポイントとなるのが、「不特定多数」という文言だ。BtoB取引(対事業者の取引)は、通常は不特定多数を相手にする取引ではない。その場合、「不特定多数」の要件を満たさず、定型取引には該当しない。取引先企業との間で「取引基本契約書」を締結する企業は少なくないが、取引基本契約書が前提とする取引は「不特定多数」の者を相手にするものではないため定型取引に該当しない。したがって、取引基本契約書は改正民法の定型約款の規定の適用対象外となる。すなわち、取引基本契約書の内容について法的に争いが生じた場合、当該条項が定める内容に応じて民法の(定型約款の規定以外の)他の規定や下請法などの他の法律が適用されるということだ。

もっとも、自社の約款が改正民法の定める「定型約款」に該当しないとしても、当該約款の効力が否定されるわけではない。そのような約款は単に民法上の定型約款の規定が適用されないというだけであり、仮に約款の効力を巡り裁判等になれば、従来から存在する約款法理に従って取り扱われることには何ら変わりはない。

約款法理 : 約款が規定する内容が合理的であれば、相手方は「約款を読んでいなかった」と主張しても、その約款の効力を否定することはできない(すなわち相手方は「約款」の規定する内容に拘束される)という考え方。約款について定める法律がない中で、判例や学説により積み上げられてきた考え方である。

一方、BtoC取引(対消費者取引)は「不特定多数」の要件を満たすのが通常であろう。これに加え、「その内容の全部又は一部が画一的であることがその双方にとって合理的」という要件も満たせば、当該BtoC取引は定型取引に該当することになり、そこで用いられる約款は改正民法上の「定型約款」に該当する。例えば、鉄道会社の約款、銀行や保険の約款、インターネット販売サイト上の利用規約などがこれに該当する。

そして、自社が運用している約款が定型約款に該当すれば、以下のような効果が生じる。まず、次の場合には、定型取引を行うことに合意した者が定型約款の「個別の条項」についても合意をしたものとみなされる(改正民法548条の2)。

・定型約款を契約の内容とする旨の合意をしたとき。
・定型約款を準備した者(定型約款準備者())があらかじめその定型約款を契約の内容とする旨を相手方に表示していたとき。
 鉄道の約款であれば鉄道会社、銀行取引の約款であれば銀行、保険取引の約款であれば保険会社といったように、定型約款を定めて相手方に表示する側を指す。

ただし、定型約款の条項のうち、「相手方の権利を制限し、または相手方の義務を加重する条項」で、社会通念等に照らして 民法上の信義則(「権利の行使および義務の履行は、信義に従い誠実に行わなければならない」とする原則。民法1条2項に規定する基本原則)に反して相手方(消費者等)の利益を一方的に害すると認められるものについては、合意をしなかったものとみなされるので注意したい。定型約款に該当する約款を運用している企業では、「相手方の権利を制限し、または相手方の義務を加重する条項」の洗い出しと、その条項が民法上の信義則に反して「相手方の利益を一方的に害すると認められるもの」でないか、確認を急ぐ必要がある。

また、約款の各条項の妥当性を確認する際に留意したいのが、法務省の法制審議会民法(債権関係)部会で改正民法に明記すべきかどうか議論の的になっていた「不当条項」(具体例は下記参照)の有無だ。結局、不当条項は改正民法に明記されなかったものの、もし約款の条項を巡り消費者等から訴訟を起こされた場合、それが不当条項と評価される内容であれば裁判上不利になる可能性が高い。すぐに改めるべきであろう。

不当条項の例
・一方の当事者のみに対し、任意に債務を履行しないことを無条件で許容する条項
・債務不履行に基づく損害賠償債務を全部免除する条項
・一方当事者の故意または重過失による債務不履行責任の一部を免除する条項
・無条件で裁判所への提訴を禁止する条項

改正民法では、約款変更時の同意についても規定が置かれた。具体的には、自社が運用している約款が定型約款に該当すれば、当該約款の変更にあたり、次の場合は個別の同意は不要とされている(改正民法548条の4第1項)。

(a) 当該変更が相手方の一般の利益に適合するとき。
(b) 定型約款の変更が、契約をした目的に反せず、かつ、変更の必要性、変更後の内容の相当性、改正民法548条の4の規定により定型約款の変更をすることがある旨の定めの有無及びその内容その他の変更に係る事情に照らして合理的なものであるとき。

上記(a)による定型約款の変更は即時に効力が生じるが、(b)による定型約款の変更は、「周知期間」が求められる。具体的には、企業(定型約款準備者)が定型約款を変更する場合には、「その効力発生時期」を定めるとともに、「定型約款を変更する旨」「変更後の定型約款の内容」「効力発生時期」をインターネットなどにより周知しなければならないとされており(改正民法548条の4第2項)、変更の効力発生までにこの周知をしなかった場合には、変更の効力自体が生じない(改正民法548条の4第3項)。企業においては、今後は約款の変更内容が上記の(a)か(b)のいずれのケースに該当するかを判断し、(b)であれば周知期間を踏まえて定款変更のスケジュールを検討する必要がある。この改正民法の考え方は消費者の立場に立ったものと言えるため、改正民法が施行前であっても参考にしたいところだ。