2017/06/21 「働き方改革」としての四半期開示のあり方

政府や経済界は「働き方改革」に力を入れているが(働き方改革の詳細は【2017年2月の課題】働き方改革への対応参照)、ある上場企業のCFOが「最も働き方改革が必要な部門の一つ」と指摘するのが経理部門だ。

CFO以外の経営陣は意外と認識していないかもしれないが、経理部門の1年は激務とともに過ぎていく。もっともボリュームの大きい作業は年度決算であり、3月決算会社の場合、期末日より2~3週間前から棚卸の準備(棚卸のスケジュールについてはケーススタディ「棚卸を適正に行いたい」の「棚卸手続きの一般的な流れを確認」を参照)が始まり、4月中に連結決算を概ね終え、5月中旬までには決算短信を提出、その後、税務申告書の作成、招集通知の作成、有価証券報告書の作成と、6月の定時株主総会まで忙しい日々が続く。また、本決算と並行して毎月の月次決算もこなさなければならない。さらに経理部門を悩ますのが「四半期開示」だ。株主総会終了後、束の間の閑散期を経て、7月上旬からは第1四半期決算作業が8月上旬まで続き、10月上旬から11月上旬までは第2四半期決算作業、1月上旬から2月上旬までは第3四半期決算作業がある。昔を知るベテラン経理部員は「四半期開示を求められていなかった頃は繁閑のメリハリがあったが、昨今は忙しい日々が年中続く」と嘆く。四半期開示が上場企業の経理部門にとって大きな負担となっているのは間違いないだろう。

政府の未来投資会議が(2017年)6月9日に閣議決定した「未来投資戦略2017-Society 5.0の実現に向けた改革―」では、「企業の情報開示」がテーマの一つとなっており、その中には当然四半期開示も含まれる。四半期開示で問題となっているのは、・・・

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未来投資会議 : AI(人口知能)やIoT(Internet of Things=モノのインターネット:あらゆるモノがインターネットで接続される状態)などの第4次産業革命をはじめとする将来の成長に資する分野における大胆な投資を官民連携して進めるとともに、「未来への投資」の拡大に向けた成長戦略と構造改革を加速させるために首相官邸に設けられた会議体。「日本再興戦略2016」(2016年6月2日閣議決定)に盛り込まれた「第4次産業革命官民会議」の役割も果たしている。

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2017/06/21 「働き方改革」としての四半期開示のあり方(会員限定)

政府や経済界は「働き方改革」に力を入れているが(働き方改革の詳細は【2017年2月の課題】働き方改革への対応参照)、ある上場企業のCFOが「最も働き方改革が必要な部門の一つ」と指摘するのが経理部門だ。

CFO以外の経営陣は意外と認識していないかもしれないが、経理部門の1年は激務とともに過ぎていく。もっともボリュームの大きい作業は年度決算であり、3月決算会社の場合、期末日より2~3週間前から棚卸の準備(棚卸のスケジュールについてはケーススタディ「棚卸を適正に行いたい」の「棚卸手続きの一般的な流れを確認」を参照)が始まり、4月中に連結決算を概ね終え、5月中旬までには決算短信を提出、その後、税務申告書の作成、招集通知の作成、有価証券報告書の作成と、6月の定時株主総会まで忙しい日々が続く。また、本決算と並行して毎月の月次決算もこなさなければならない。さらに経理部門を悩ますのが「四半期開示」だ。株主総会終了後、束の間の閑散期を経て、7月上旬からは第1四半期決算作業が8月上旬まで続き、10月上旬から11月上旬までは第2四半期決算作業、1月上旬から2月上旬までは第3四半期決算作業がある。昔を知るベテラン経理部員は「四半期開示を求められていなかった頃は繁閑のメリハリがあったが、昨今は忙しい日々が年中続く」と嘆く。四半期開示が上場企業の経理部門にとって大きな負担となっているのは間違いないだろう。

政府の未来投資会議が(2017年)6月9日に閣議決定した「未来投資戦略2017-Society 5.0の実現に向けた改革―」では、「企業の情報開示」がテーマの一つとなっており、その中には当然四半期開示も含まれる(下表の赤字部分参照)。四半期開示で問題となっているのは、四半期決算短信と四半期報告書の内容の“重複”だ。また、両者の提出日が同日かほとんど変わらない会社も少なくない。そうなると両者を分けて開示することの意味合いが薄れてくる。こうした中、経理部門に大きな負担を課すことになる四半期開示を簡素化(あるいは廃止)すべきとの声は小さくない。実際に欧州には、中長期的な成長を重視する観点から四半期開示を義務化していない国もあることも、そういった声を後押ししている。

未来投資会議 : AI(人口知能)やIoT(Internet of Things=モノのインターネット:あらゆるモノがインターネットで接続される状態)などの第4次産業革命をはじめとする将来の成長に資する分野における大胆な投資を官民連携して進めるとともに、「未来への投資」の拡大に向けた成長戦略と構造改革を加速させるために首相官邸に設けられた会議体。「日本再興戦略2016」(2016年6月2日閣議決定)に盛り込まれた「第4次産業革命官民会議」の役割も果たしている。

未来投資戦略2017-Society 5.0の実現に向けた改革―」で示された「企業の情報開示」に関するテーマと検討内容、企業への影響】

テーマ 検討内容 予想される企業への影響 結論予定時期
事業報告等と
有価証券報告書の
一体的開示
事業報告等と有価証券報告書の一体的開示を可能とするため、異なる制度間で類似・関連する記載内容の共通化が可能な項目について、必要な制度的な手当て、法令解釈や共通化の方法の明確化・周知等。 事業報告の記載内容を有価証券報告書に利用したりその逆が行われたりし、開示の効率化が図られる予定。 2017年度中
上場企業の情報
開示の在り方
十分かつ公平な情報開示を確保するとともに、上場企業の経営戦略やガバナンス情報等をテーマとする上場企業と投資家の建設的な対話や、中長期的な企業価値向上・中長期投資促進に資する上場企業の情報の開示の在り方について総合的に検討。 2017年度中に順次取組を開始、その後も金融庁の金融審議会において検討を継続し、成案を得たものについて順次取組を開始
四半期開示 義務的開示の是非を検証しつつ、企業・投資家を含む幅広い関係者の意見を聞きながら、更なる重複開示の解消や効率化のための課題や方策等について検討。 四半期報告書または四半期決算短信の開示義務がなくなる可能性がある。 2018年春に一定の結論を出し、その後も検討を継続
株主総会の招集通知や
議決権行使プロセス全体
の電子化、株主総会
日程の後ろ倒し
国際的に見て合理的かつ適切な株主総会日程を設定するための環境整備を進め、対話型株主総会プロセスの実現を目指す。 招集通知の電子化が行われれば、印刷・郵送コストが削減される。また、株主総会の開催日を現在よりも後にすることが可能となる。 2019年度
前半以後

四半期開示の簡素化や会社法開示・金商法開示の共通化は、調整しなければならない法律や規程が多岐にわたり(会社法、会社法施行規則、会社計算規則、金融商品取引法、開示府令、財務諸表等規則、四半期財務諸表規則、連結財務諸表規則、四半期連結財務諸表規則、証券取引所の上場規則等)、また利害関係者の間で意見対立がある(事務負担が減る企業は歓迎する一方、投資家は開示の後退には通常は反対)ため一筋縄ではいかないことが予想され、実現を危ぶむ声も少なくない。こうした中、内閣府参与の原丈人氏は「企業関連制度改革・産業構造改革-長期投資と大胆な再編の促進作成した政策ロードマップ」会合(第5回:2017年3月10日開催)で四半期決算開示義務の廃止に向けたロードマップを示している。

第1弾 四半期決算短信における業績予想の様式を落とす制度改正を行う(注)。
(注)四半期決算短信から「業績予想の様式」を削除し、多様かつ柔軟な業績予想の開示が可能なことをこれまで以上に明確化した制度改正は2017年2月に実施済み。
第2弾 金融商品取引法(四半期報告書)と証券取引所(四半期決算短信)で異なる四半期決算の開示項目、様式を揃える。同時に、四半期決算を本決算のようにとらえている会社に対して、本決算ではなく、適宜開示としてとらえてもらうことにより、各社が今まで費やしてきた莫大な費用負担と人的負担を解消する(社員への報酬増、働き方改革にもつながる)。
第3弾 中長期事業(10年、20年)ビジョン、中期計画における企業理念の達成度の検証、非財務情報の拡充、Return on Company(社中(会社を構成する仲間)全体に対するリターンの総和)などの準備ができた段階で金融商品取引法を改正し、上場企業の四半期決算開示義務を廃止する

四半期決算開示義務の廃止に向けてステップを刻みつつ、冒頭で述べた働き方改革にも言及している点、興味深い。既に「第1弾」は実現しているが、果たして「四半期決算開示義務の廃止」まで辿り着くのか、注目される。

2017/06/20 ISSが賛成する株主提案議案と反対する会社提案議案

議決権行使助言会社最大手ISSによる賛否推奨は、機関投資家の議決権行使方針に大きな影響を与えることになる。本稿では、2017年6月総会においてISSが賛成している「株主提案議案」、反対している「会社提案議案」のうち注目されるものを整理したい。

まず株主提案の議案に賛成しているケースとしては、・・・

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2017/06/20 ISSが賛成する株主提案議案と反対する会社提案議案(会員限定)

議決権行使助言会社最大手ISSによる賛否推奨は、機関投資家の議決権行使方針に大きな影響を与えることになる。本稿では、2017年6月総会においてISSが賛成している「株主提案議案」、反対している「会社提案議案」のうち注目されるものを整理したい。

まず株主提案の議案に賛成しているケースとしては、既にお伝えした武田薬品工業のケースがある。2017年6月28日(水)に開催される同社の定時株主総会では、相談役などの役職の設置を相談役・顧問の設置に制限を課すための定款変更議案が15名の株主から提案されているが(2017年6月14日のニュース「相談役・顧問への風当たり強く・・・業務内容等の開示制度導入へ」参照)、同社がリリースで反論していることからもうかがえるように、ISSは「相談役の活動や報酬が開示されない」ことや、株主に責任を負わないことなどから、本株主提案議案に賛成を推奨している。

黒田電気は、大株主である株式会社レノ(いわゆる“村上ファンド”系とされる)から社外取締役(元通産省(当時)官僚で、現一橋大学商学部商学研究科大学院(ビジネススクール)客員教授の安延申氏)1名の選任議案の株主提案を受けているが(2017年6月2日のニュース「株主提案に反対する黒田電気経営陣が抱える2つの不安要素」参照)、ISSは、「社外取締役1名の選任のみであり、取締役会のコントロールまでは意図していない」とし、本提案への賛成を推奨している。これに対し黒田電気はISSの賛成推奨に対する自社の見解を公表、「ISS 社が自らの裁量によって当社の経営方針を推論し、当社が公表しているM&Aや経営戦略についての考え方を不正確に解釈して、請求人の主張の正当性を認めるという、恣意的とも言わざるを得ない評価手法によって、本提案への賛成推奨を結論付けてしまっている」とし、株主に慎重な議決権行使を呼び掛けている。なお、議決権行使助言会社準大手のグラスルイスは本株主提案に反対を推奨している。同社の株主総会は2017年6月29日(木)に開催される。

株式会社ストラテジックキャピタルが蝶理に対して行った3つの株主提案(①政策保有株の売却(定款変更)、②剰余金の配当等の決定権を取締役会から株主総会に移す(定款変更)、③増配)についても、ISSは株主利益につながるとして賛成を推奨していたが、2017年6月15日(木)に開催された同社の株主総会では、いずれも可決には至らなかった(①政策保有株の売却、②剰余金の配当等の決定権を取締役会から株主総会に移す、の2議案が否決、③増配は①②の定款変更が前提になることから決議の対象外)。

このほか、2017年6月23日(金)に開催されるみずほフィナンシャルグループの定時株主総会では、昨年の総会でISSが賛成推奨し48%の賛成を得た「配当決定機関の変更」(取締役会で配当額を決める事も可能だが、株主も配当に関する株主提案が可能で、どちらが望ましいかを株主が総会で決定できるようにすべき)、「役員報酬の個別開示」などが株主から提案されているが(同社の株主総会招集通知の3号議案5号議案参照)、ISSはこれらの株主提案に対しても賛成を推奨している。

一方、会社提案議案に対しISSが反対しているケースとしては、野村證券(株主総会開催日は2017年6月23日(金))、新日鐵住金(同6月27日(火))、日本信号(同6月23日(金))、日本コロムビア(同6月23日(金))などのケースがある。いずれの会社からもISSの反対推奨に反論するリリースが出されている。

会社提案議案に対しISSが反対しているケース

社名 議案(会社提案) 反対の主な理由 会社側の反論
新日鐵住金

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進藤孝生社長、宗岡正二会長の選任 ROE(株主資本利益率)が4.6%と低迷しており、過去5年平均でも4.2%と5%を下回る水準に留まっている。 新日本製鐵㈱(当時)と住友金属工業㈱(当時)が経営統合した2012年度において事業用資産の減損損失を計上し、また住友金属工業株式の売却に伴う投資有価証券売却損を計上するなど一過性の特別損失が発生したことから同期のROEは-5.9%となったが、その翌期以降の直近4期平均で見ると、ROEは6.7%、直近3期平均では5.8%となっている。また、半期単位でみれば、2016年度上期は0.8%、同下期は8.6%と、足下で大きく改善している。
三菱東京UFJ銀行相談役の永易克典氏の社外監査役選任 永易克典氏は借入先の一つである三菱東京UFJ銀行の相談役であり、独立性に欠ける。 ・国内の各上場金融商品取引所が定める独立役員の届出基準を満たしている。
・三菱東京UFJ銀行の相談役ではあるが、現在は、同銀行の会長、社長その他の業務執行者ではない。
・当社は同銀行に限らず複数の金融機関等から広く資金を調達しており、同銀行は当社の特定関係事業者ではない。
野村ホールディングス

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園マリ氏の社外取締役の選任 園マリ氏は野村ホールディングスの監査法人である新日本有限責任監査法人において勤務経験があったことから独立性に欠ける。 園氏は、新日本有限責任監査法人を退所後、8月で5年になる。同氏はその間、同監査法人の運営や財務方針には一切関与をしていない。また、新日本有限責任監査法人を退所後、その性質上非常に高度な独立性が求められる証券取引等監視委員会の委員として3年の任期を全うしており、社外取締役候補者としての独立性について疑義を持つ余地はない。
日本信号

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社外の補欠監査役選任(ガソリン計量機メーカー タツノ社長の龍野廣道氏) 補欠監査役候補者の龍野氏は、所属組織が日本信号の取引先かつ株主である、みずほフィナンシャルグループであり、ISS の定める独立性基準を満たしていない。 龍野氏が後にみずほフィナンシャルグループとなる日本興業銀行に勤務していたのは数年で、退行から既に30 年以上が経過している。過去の雇用者との間の利益相反を解消するのに十分な期間を経過していると考えており、独立性が疑われる要素はない。
日本コロムビア

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フェイスによる完全子会社化に向けた株式交換 本株式交換比率に付された、市場株価を前提としたプレミアムが、日本国内の事例における標準的な水準である25%~30%を下回っている。 本株式交換におけるプレミアムは、同種取引における標準的な水準と照らしても妥当なものである。
平澤創取締役会長および吉田眞市代表取締役社長の取締役選任 社外取締役が2名以上存在しない。 取締役会のメンバー9名のうち3名を独立役員(独立社外取締役1名、独立社外監査役2名)が占めており、取締役会における実効性の高い監督機能を実現できている(なお、本定時株主総会後は取締役が1名増員される予定だが、3/10を独立役員が占めるため、引き続き実効性の高い監督機能を実現)。

特定関係事業者 : 親会社や子会社のように一定の資本関係のある先や主要な取引先のように会社と結びつきの深い法人等(会社法施行規則2条3項19号)

既に株主総会を終えた蝶理以外の各社の株主総会は今週、来週に開催される。ISSが会社の見解と異なる賛否推奨を行った議案についてどのような結論が示されるのか、注目される。

2017/06/19 相談役の報酬額と職務内容(会員限定)

2017年6月28日(水)に開催予定の武田薬品工業の株主総会では、相談役・顧問などの役職を基本的に設置せず、もし設置する場合は候補者名を明らかにしたうえで株主総会に付議するよう定款を変更することを求める株主提案が決議に付されることになる(本株主提案については2017年6月14日のニュース「相談役・顧問への風当たり強く・・・業務内容等の開示制度導入へ」参照)。

15名の株主から出されたこの株主提案に対し、議決権行使助言最大手のISSは、相談役の活動や報酬が開示されず、株主にも責任を負わないことを問題視し、「賛成推奨」しているとされる。同社の株主に占める機関投資家の割合は5割を超えており(2017年3月末現在で国内33.4%、海外29.3%)、定款の変更に必要な特別決議の可決要件である3分の2には達しないとしても、相当に高い率の賛成票が投じられる可能性がある。個人株主(同27.9%)の動向次第では可決されることもあり得る。

このような状況の中、同社は自社ウェブサイトにおいて、「第141回定時株主総会に関連する事項について」と題するクリストフ・ウェバー社長名義のレターを公表した。このレターでは、上述した「相談役の活動や報酬が開示されない」というISSの賛成推奨理由に対応するかのように、株主総会終了後に相談役に就任する予定の長谷川閑史氏(現取締役会長)が相談役として果たすことになる役割および報酬が説明されている。

まず役割については、以下の①「経験や見識を基にしたアドバイス、社外ネットワークによる貢献」と、②「経済同友会等の任務」であり、実際には②が大部分であるとしている。

① あくまでも現役の経営陣からの求めに応じてという前提で、これまでの同氏の経験や見識を基にしたアドバイスを提供すること、また、その多岐にわたる社外ネットワークにより当社に引き続き貢献すること。
② 現在同氏が当社を代表して就任している経済同友会等の外部団体の役職のうち、より公共性・重要性が高いと判断されるものについて、その任期満了まで、引き続き当社を代表してその任務にあたること。

そして報酬については、「職務相応のもの」として以下のように説明している。

同氏の年間報酬額は、現在の約12%程度になります。
また、社用車や専任秘書はおかない予定です。

要するに、専ら会社を代表して(厳選された)外部団体の役職を務め、その職務に相応な報酬を得るということである。

2017年3月期における長谷川氏の年間報酬額は株主総会後に開示される有価証券報告書(有報)を待つ必要があるが、仮に2016年3月期の有報に記載された報酬額をベースに考えてみると、以下の金額となる。

   4億5千万円 × 12% = 5千4百万円

主に外部団体の役職を務めることによる年間報酬額としての「5千万円」という金額を株主がどう判断するのか、注目される。

2017/06/16 企業の将来を最も的確に予測できるのは誰か?

ポートフォリオマネージャー(ファンドマネージャー)やアナリストは、将来の有望企業の発掘に日夜努めているが、これが極めて難しい。何しろ企業自身も自社の将来を予想できていないことが多いのだから、それも当然だろう。では、誰が企業の将来を最も的確に予想できるのかと言えば、・・・

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2017/06/16 企業の将来を最も的確に予測できるのは誰か?(会員限定)

ポートフォリオマネージャー(ファンドマネージャー)やアナリストは、将来の有望企業の発掘に日夜努めているが、これが極めて難しい。何しろ企業自身も自社の将来を予想できていないことが多いのだから、それも当然だろう。では、誰が企業の将来を最も的確に予想できるのかと言えば、それは顧客である。企業の業績は、顧客がその企業の商品やサービスを評価し、購入してくれるかどうかにかかっているからだ。

一例として、ある小売企業のケースを考えてみよう。小売企業を担当するアナリストは、事業環境、競合の状況、財務情報などを調べ、将来の業績を予想しようとする。業績予想の中で一番重要なのは売上の予想だが、これが容易ではない。それは企業にとっても同じである。企業は当然ながら売上目標を立てるが、それが達成されるかどうかは分からない。将来の売上を決めるのは、やはり「顧客」である。

少し前の話だが、衣料品の小売チェーンを展開するある企業のマネジメント会議で、社長がマネジメントに対して「自社のスーツを着ている者はいるか?」と聞いた。結果は、何と誰もいなかったのである。マネジメントの立場にある彼らは、日頃からどんな衣料品が売れるかを考え抜いてきたが、彼らは同時に「消費者」としての顔も持つ。つまり、消費者としては自社の商品を評価せず、他社のスーツを買っていたということになる。さらに言えば、自分達が買いたくないものを消費者に売ろうとしていたのである。これでは売れるわけがない。彼らは「売り手の発想」に固執し「買い手の発想」に立つことはなかったのである。これは何も小売企業に限ったことではない。他の業態の企業であっても、こうした問題は潜在的に存在している。

実はアナリストの世界でも同じことが言える。アナリストには、投資顧問会社など運用会社で働くバイサイド・アナリストと、証券会社で働くセルサイド・アナリストがいる。バイサイド・アナリストは、セルサイド・アナリストにとって顧客となる。このバイサイド・アナリストがセルサイドに転職した場合、成功することが多い。自分が顧客であった際に、顧客がどのようなサービスを求めていたか知っているため、それを踏まえたサービスを顧客に提供できるからである。

バイサイド・アナリスト : 運用会社に所属するアナリストであり、そのレポートは、自社のファンドマネージャーの運用成績向上のために作成される。
セルサイド・アナリスト : 証券会社に所属しており(株式を売る側にいることからこう呼ばれる)、そのレポート(アナリスト・レポート)は、証券会社の顧客である個人投資家や機関投資家に提供され、投資家はこれを投資先の選定や売買のタイミングの判断に利用する。

このように、究極的にはその企業の商品やサービスを評価することができるのは顧客のみであり、彼らが最も的確に企業の将来を予想することができる。経営陣こそ、自分が顧客なら自社の商品やサービスを買うのか、自問すべきであろう。

2017/06/15 株主総会資料の電子提供制度、「招集の通知」は引き続き“紙”で(会員限定)

法務省は会社法の見直しの一環で上場会社における株主総会資料の電子提供制度を導入する方向で検討を進めているが(見直しの全体像は2017年4月27日のニュース「法務省、ガバナンスに関する会社法の見直しに着手」参照)、このほどその具体的な内容が判明した。

まず注目されるのが、電子提供(ウェブサイトに掲載)の対象範囲だ。本件は一般に「“株主総会招集通知”の電子化」を図るものと理解されてきたが、株主に紙ベースのものを一切送付しなくてもよくなるわけではないことが分かった。電子提供の対象とされるのは以下の書類となる(法務省・法制審議会会社法制(企業等統治関係)部会の資料「株主総会資料の電子提供制度に関する論点の検討」1ページ冒頭および(注)参照)。

・株主総会参考書類
・議決権行使書面
・計算書類および事業報告(監査役等の監査報告および会計監査人の会計監査報告を含む)、連結計算書類

紙ベースでの作成が求められる「株主総会の招集の通知」には、上記書類を掲載するウェブサイトのアドレスなど以下の事項を記載することになる(「株主総会資料の電子提供制度に関する論点の検討」4ページ参照)。

ア 株主総会の日時および場所
イ 株主総会の目的である事項があるときは、当該事項
ウ ウェブ掲載事項に係る情報を掲載するウェブサイトのアドレス
エ 株主総会に出席しない株主が書面によって議決権を行使できることを定めたときは、その旨および書面による議決権の行使の期限
オ 株主総会に出席しない株主が電磁的方法によって議決権を行使できることを定めたときは、その旨および電磁的方法による議決権の行使の期限
カ 株主総会の招集の決定において以下の事項を定めたとき(定款に当該事項についての定めがあるときを除く)は、その決定の内容
 (ア) 代理人による議決権の行使に関する事項
 (イ) 議決権の不統一行使の理由を通知する方法

上記記載事項のとおり、「株主総会の招集の通知」への記載事項は最低限のものにとどまっており、現行会社法で株主総会招集通知に記載しなければならないとされているもののほとんどはウェブサイトに掲載するだけでよい()ことになる。「株主総会の招集の通知」のページ数が大幅に削減されるため、上場会社にとって印刷・郵送コストが低下するのは間違いないが、ゼロになるわけではない。

 ウェブサイトに掲載するだけで株主に伝わったとみなされることになる。なお、現在でも上場会社の大半が招集通知の早期Web開示を行っている(招集通知の早期Web開示への取り組みは「総会集中率の3割切り、招集通知早期Web開示の9割越えが目前に」を参照)が、これは「株主に伝わったとみなす」ために行っているのではなく、少しでも早期に議案等の情報を機関投資家に伝達することを目的として行われている任意の取り組みに過ぎず、株主総会資料の電子提供制度とは異なる。

高齢者などインターネットの利用が困難な株主に配慮し、株主が請求すれば紙ベースの株主総会資料を提供する必要があるものの、この電子提供制度は利用が「強制」されるという点にも注意が必要だ。つまり、同制度の導入以降、企業は株主総会資料を(株主の請求があった場合を除き)紙ベースで提供することはできなくなる。これは、企業によって株主総会資料の提供方法が紙だったりウェブだったりすると、株主(特に複数の銘柄を保有する株主)がどちらの提供方法なのかをいちいち確認しなければならないことなどを考慮したもの。

「株主総会の招集の通知」はeメールで行うことも認められるが、この場合、現行会社法の下で株主総会招集通知および関連書類を電子提供する場合と同様に、「株主の個別の承諾」が必要となる。現在株主総会招集通知の電子提供が進まない理由はこの「個別承諾」にあるだけに、「株主総会の招集の通知」を含む“完全電子化”のハードルは高いと言えそうだ。

「株主総会の招集の通知」の発送期限は株主総会の日の「3週間前または4週間前まで」とすることが検討されている。現行の「2週間前まで」よりも1週間または2週間前倒しされることになる。株主が議決権行使に必要な検討時間を確保するのが主な狙い。そして、株主総会資料のウェブ掲載は「株主総会の招集の通知の発送時」から「株主総会の日以後3か月を経過する日」までの間行うことが提案されている。ウェブ掲載の開始時点を「株主総会の招集の通知の発送時」としたのは、株主が「株主総会の招集の通知」を受領して直ちにウェブサイトにアクセスしても株主総会関係書類を閲覧できるようにするため。一方、ウェブ掲載の終了時点を「株主総会の日以後3か月を経過する日まで」としたのは、株主総会資料が株主総会の決議の取消しを求める訴訟において証拠として使用される可能性があることを踏まえ、その出訴期限(株主総会等の決議の日から3か月以内(会社法第831条1項))と平仄をとったもの。

このように、株主総会資料は最大4か月程度ウェブサイトに掲載されることになるが、ウェブサイトゆえの問題が生じることも予想される。まず、ウェブサイトでは修正が容易だということだ。企業がこっそりと資料の一部を修正することもできてしまうかもしれない。そこで改正会社法では、修正した旨と修正事項をウェブサイトに掲載することを求める。監査役等の監査報告および会計監査人の会計監査報告についても修正を容認する方針だ。ただし、無制限に修正が認められるわけではない。修正が認められるかどうかは、修正する事項や修正の内容の重要性等により判断する。

また、サーバーのダウンにより掲載が中断されたり、サイバー攻撃を受け改ざんされたりすることもあり得る。しかし、このような場合に「常に適法な株主総会資料の提供がなかった」とするのは企業にとって酷であるうえ、株主も混乱させてしまうため、現行会社法上の電子公告制度(会社法940条3項)の救済規定と同様の規定を設ける方向。とはいえ、頻繁にサーバーがダウンする場合はもちろん、サイバー攻撃による改ざん被害を繰り返し受けるようだと、「この会社のセキュリティ対策はどうなっているのか?」との疑念を持たれることになりかねない。株主総会資料のウェブ掲載に向け、経営陣はサーバーおよび回線の増強やセキュリティ対策の強化も検討しておく必要がありそうだ。

現行会社法上の電子公告制度(会社法940条3項)の救済規定 : 電子公告期間中に公告の中断が生じた場合において、「公告の中断が生ずることにつき会社が善意でかつ重大な過失がない、または会社に正当な事由がある」「公告の中断が生じた時間の合計が公告期間の10分の1を超えない」「会社が公告の中断が生じたことを知った後速やかにその旨、公告の中断が生じた時間および公告の中断の内容を当該公告に付して公告した」のいずれにも該当するときは、その公告の中断は、当該公告の効力に影響を及ぼさないとする救済規定。

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

2017/06/15 株主総会資料の電子提供制度、「招集の通知」は引き続き“紙”で

法務省は会社法の見直しの一環で上場会社における株主総会資料の電子提供制度を導入する方向で検討を進めているが(見直しの全体像は2017年4月27日のニュース「法務省、ガバナンスに関する会社法の見直しに着手」参照)、このほどその具体的な内容が判明した。

まず注目されるのが、電子提供(ウェブサイトに掲載)の対象範囲だ。本件は一般に「“株主総会招集通知”の電子化」を図るものと理解されてきたが、株主に紙ベースのものを一切送付しなくてもよくなるわけではないことが分かった。・・・

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