2017/04/10 監査法人のガバナンス・コード導入が企業に与える影響

株式会社イグニス 取締役監査等委員長
日本公認会計士協会 組織内会計士協議会 委員
公認会計士 大杉 泉

金融庁は(2017年)3月31日、監査法人のガバナンス・コード(正式名称は「監査法人の組織的な運営に関する原則」)を公表している。同コードは、近年大型の会計不祥事が頻発していることを背景に、大手監査法人のガバナンスやマネジメントを強化することを目的として「監査法人としてあるべき組織的運営の原則」を定めたものであり、①監査法人が果たすべき役割、②組織体制、③業務運営、④透明性の確保の4項目5原則(②組織体制のみ2つの原則がある)と各原則を履行するための合計22の指針が定められている。同コードの導入により、今後は監査法人にも一般企業に近い透明性のあるガバナンス体制が求められることになる。また、監査法人が同コードを踏まえて監査のやり方などを変えれば、当然その影響は企業にも及ぶことになる。具体的にどのような影響が考えられるのか見てみよう。・・・

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2017/04/10 監査法人のガバナンス・コード導入が企業に与える影響(会員限定)

株式会社イグニス 取締役監査等委員長 
日本公認会計士協会 組織内会計士協議会 委員
公認会計士 大杉 泉

金融庁は(2017年)3月31日、監査法人のガバナンス・コード(正式名称は「監査法人の組織的な運営に関する原則」)を公表している。同コードは、近年大型の会計不祥事が頻発していることを背景に、大手監査法人のガバナンスやマネジメントを強化することを目的として「監査法人としてあるべき組織的運営の原則」を定めたものであり、①監査法人が果たすべき役割、②組織体制、③業務運営、④透明性の確保の4項目5原則(②組織体制のみ2つの原則がある)と各原則を履行するための合計22の指針が定められている。同コードの導入により、今後は監査法人にも一般企業に近い透明性のあるガバナンス体制が求められることになる。また、監査法人が同コードを踏まえて監査のやり方などを変えれば、当然その影響は企業にも及ぶことになる。具体的にどのような影響が考えられるのか見てみよう。

まず、監査法人のガバナンス・コードが導入されることによるポジティブな影響としては、企業の財務情報への信頼性の向上が挙げられる。監査の品質と企業の財務情報の信頼性は比例すると考えられるからだ。相次ぐ会計不正により投資家が疑心暗鬼になる中、財務情報に対する投資家からの信頼の向上は、中長期的な企業価値の向上にも寄与することになろう。

また、監査法人のガバナンス・コードは、監査法人に対し上場会社との対話を促しているが(指針4—4等)、この結果、会社側における監査役監査や内部監査の品質が向上することが考えられる。監査法人による監査・レビューの結果の報告など、定時・定型的なコミュニケーションの機会は従来から存在するものの、今後は任意のコミュニケーションの回数が増加していくだろう。また、単に回数が増えるだけでなく、その内容も単なる「報告」から活発な「議論」へと変化していくことが予想される。上述のとおり、監査法人のガバナンス・コードの目的は監査法人側の品質向上だが、対話の増加により、これまで潜在していた監査法人と監査役、内部監査等との情報ギャップが減少し、不祥事防止に向け、監査法人と監査役、内部監査等とのより有機的な連携が可能になるだろう。

指針4-4
監査法人は、被監査会社のCEO・CFO 等の経営陣幹部及び監査役等との間で監査上のリスク等について率直かつ深度ある意見交換を尽くすとともに、監査の現場における被監査会社との間での十分な意見交換や議論に留意すべきである。

このほか、監査法人との契約更新を検討するうえでの“材料”が増えるという点も企業にはメリットと言える。監査法人は、コードへの取組み状況(原則のコンプライ状況や、会計監査の品質の向上に向けた取組み)を「透明性報告書」といった形で自法人のホームページ等に開示しなければならないが(指針5‐1)、コードへの取組み状況は「監査の品質」への向き合い方そのものであることから、監査契約を更新すべきかどうかの判断材料の一つとして是非活用すべきだ。周知のとおり、2015年5月1日に施行された改正会社法により、監査役設置会社においては、株主総会に提出する監査法人(会計監査人)の選解任に関する議案の内容は監査役会が決定することになったため(会社法344条1項、3項。改正前は取締役会が決定)、コードへの取組み状況は監査役が確認する必要がある。その際には、現在監査契約を締結している監査法人のみならず、他の監査法人の取組み状況も横並びで確認することをお勧めしたい。品質管理体制やガバナンスの体制は監査法人によって異なるため、他法人と比較することにより、現在の監査法人の弱い部分やコード対応への遅れがないか確認することができるからである。

一方、監査法人のガバナンス・コードの導入によって企業にもたらされるネガティブな影響としては、「監査報酬の増額」が考えられる。なぜなら、コードが求めているのは従来から求められてきた監査品質の担保のみならず、ガバナンス体制、人員の育成等多岐にわたるからだ。このような体制整備には当然ながらコストがかかり、監査法人がその実質的な負担を企業側に求める可能性は十分にある。これ以外にもITの有効活用・整備が求められているが(指針2—2)、この指針への対応として監査報酬の増額を求められることも予想される。

もっとも、日本の監査報酬額は海外と比較し安価であり、これが監査法人側の経営を圧迫しているという意見もある。一般的に監査報酬は「単価×監査時間」により計算されるが、コーポレートガバナンス・コード補充原則 3-2②が取締役会及び監査役会に「高品質な監査を可能とする十分な監査時間の確保」への対応を求められていることを受け、ただでさえ監査法人側は監査時間数の増加を要求する傾向にある。企業(特に監査役)は、日本公認会計士協会が集計している監査実施状況調査で同業種同規模の会社の監査時間数・監査報酬平均額と比較するといった方法で、監査報酬額が実際に受けている監査サービスに見合ったものになっているか、検証する必要があろう。

2017/04/07 子会社との取引価格、“経済合理性”欠けば課税も

多くの上場企業が企業グループを形成する中、親会社と子会社など、グループ内の企業同士での取引は頻繁に発生しうるが、そこに潜むのが課税リスクだ。

例えば、親会社が子会社に対し・・・

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2017/04/07 子会社との取引価格、“経済合理性”欠けば課税も(会員限定)

多くの上場企業が企業グループを形成する中、親会社と子会社など、グループ内の企業同士での取引は頻繁に発生しうるが、そこに潜むのが課税リスクだ。

例えば、親会社が子会社に対し、通常の取引価格をはるかに超える時間単価で業務を外注したとしよう。この場合、法人税の計算上は通常の取引価格を超える分だけ親会社の経費(損金)が増え、これに伴い親会社の法人税は減少することになる。こうした場合、税務当局は「通常の取引価格を超える分は、親会社から子会社に対する寄附金である」との課税処分を下すことが多い(この場合、子会社には同じ金額の「受贈益」が計上される。この点については後述)。法人税法では寄附金の損金算入を制限()しているため、この課税処分によって親会社の法人税負担は増加することになる。

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これまで行われたきた上記のような寄附金課税に加え、最近税務当局が寄附金課税とは異なる手法で課税処分を下す事例が発生していることが当フォーラムの調査により確認されているので要注意だ。具体的には、法人税法に規定される「同族会社」の行為計算否認規定(法人税法132条)を使ったものである。

通常、同族会社は株主の意向次第で経済合理性がない取引(例えば相場と異なる価格での取引)が行われやすい。そこで法人税法では、このような行為等を容認すると法人税の負担が不当に減少すると認められる場合には、その行為等を否認(認めないこと、承認しないこと)し、税務署長が正しいと考えるやり方で法人税を計算することにしている。「同族会社」というと上場企業は関係ないように見えるが、法人税法上の同族会社とは、簡潔に言えば「3人以下の株主により、実質的にその会社の株式の50%超を所有されている会社」であり、例えば持株会社の子会社は「同族会社」に該当する。最近は持株会社形態をとっている企業グループが多いが、持株会社の傘下にあるグループの中核会社、そして当該中核会社の50%超子会社はともに同族会社であり、両社間の取引は「同族会社間の取引」に該当することになる。

これまで寄附金課税の対象となってきた取引について同族会社の行為計算否認規定が適用されるきっかけとなったのが、約1,200億円もの法人税の課税が争われたIBMの税務訴訟だ。この税務訴訟ではIBMが勝訴したものの、これまで行為計算否認規定の解釈の通説となってきた「正当な理由や事業目的があれば行為計算否認規定は適用されない」という考え方が否定され、「正当な理由や事業目的」があるかどうかは関係なく、「独立当事者間の通常の取引と異なっている」など「経済的合理性を欠く」場合には行為計算否認規定が適用されるという新たな解釈が裁判所から示された(IBMの裁判の詳細は2016年2月24日のニュース「IBM判決で企業グループの税務リスク上昇も」参照)。

今回当フォーラムが確認した事案は、親会社が子会社に対し通常の取引価格を超える時間単価で業務を外注したことは、「経済人の行為としては不自然かつ不合理」などとして行為計算否認規定が適用されたものであり、適用の根拠はIBM判決の内容(「独立当事者間の通常の取引と異なっている」など「経済的合理性を欠く」場合には行為計算否認規定が適用される)と全くと言っていいほど同じものとなっている。IBMの裁判が最高裁で確定した2016年2月18日からまだ1年余りしか経っていないが、当フォーラムが上記のニュース記事で予想していたとおり、「今後はIBM判決を根拠に否認を行う」という税務当局の姿勢が今回の事案で改めて確認されたことになる。

もちろん、これまでどおり寄附金課税も企業にとってはリスクだが、税務当局としては寄附金課税をしても損金算入枠(上記の算式参照)の範囲内であれば損金として認めざるを得ない。また、100%の資本関係にある会社間では、グループ法人税制の適用により寄附を受けた側(今回の事案では、相場より高額の外注費で業務を受注した子会社)の受贈益が益金不算入となる(つまり、グループ全体で見れば±ゼロ)。これに対し、行為計算否認規定を適用できれば単純に相場を上回る部分の(親会社における)損金算入を否認できる。最高裁の“お墨付き”を得たこのロジックにより税務当局がさらに課税処分を積極化することも十分考えられるだけに、上場企業グループにあっても、グループ間取引価格の適正性には注意を払う必要があろう。

グループ法人税制 : 100%の支配関係で結ばれた法人のグループに適用されるもので、当該グループ内の法人間で行われた資産や株式の売却損益を計上しないこととするほか、寄附金を全額損金不算入・益金を全額益金不算入とするもの。
益金不算入 : 法人税の課税対象所得を増やす益金(≒利益)に算入しないこと

2017/04/06 透明性報告書を公表しない監査法人への対応

2015年5月1日に施行された改正会社法により、会計監査人の選任権限が取締役会から監査役会に移行(会社法344条1項、3項)して以来、もうすぐ2年が経過しようとしている。

この改正が行われる前から、監査役および監査役会には、会計監査人からその職務遂行の適正確保体制に関する事項の通知(会社計算規則131条)を受けたうえで、当該体制が十分なものかどうかを評価して監査報告書に記載すること(会社計算規則128条2項2号および127条4号)が求められているが、改正会社法の施行を機に、会計監査人の評価が場当たり的なものとならないよう、監査役会が「会計監査人の評価基準」を整備した上場企業は少なくない。改正会社法の施行後、上場企業はコーポレートガバナンス・コードでも「外部会計監査人候補を適切に選定し外部会計監査人を適切に評価するための基準の策定」を行うことを求められた(コードの補充原則3-2①(ⅰ))こともあり、本則市場の上場企業のほとんど(95.3%:「東証上場会社コーポレート・ガバナンス白書2017」57ページのコラム③を参照)で「会計監査人の評価基準」が策定されている状況だ。

監査役会が会計監査人を評価する際には、この評価基準に基づきつつ、上記の「職務遂行の適正確保体制に関する事項の通知」に加え、今後は「透明性報告書」も考慮することになる。透明性報告書とは、・・・

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2017/04/06 透明性報告書を公表しない監査法人への対応(会員限定)

2015年5月1日に施行された改正会社法により、会計監査人の選任権限が取締役会から監査役会に移行(会社法344条1項、3項)して以来、もうすぐ2年が経過しようとしている。

この改正が行われる前から、監査役および監査役会には、会計監査人からその職務遂行の適正確保体制に関する事項の通知(会社計算規則131条)を受けたうえで、当該体制が十分なものかどうかを評価して監査報告書に記載すること(会社計算規則128条2項2号および127条4号)が求められているが、改正会社法の施行を機に、会計監査人の評価が場当たり的なものとならないよう、監査役会が「会計監査人の評価基準」を整備した上場企業は少なくない。改正会社法の施行後、上場企業はコーポレートガバナンス・コードでも「外部会計監査人候補を適切に選定し外部会計監査人を適切に評価するための基準の策定」を行うことを求められた(コードの補充原則3-2①(ⅰ))こともあり、本則市場の上場企業のほとんど(95.3%:「東証上場会社コーポレート・ガバナンス白書2017」57ページのコラム③を参照)で「会計監査人の評価基準」が策定されている状況だ。

監査役会が会計監査人を評価する際には、この評価基準に基づきつつ、上記の「職務遂行の適正確保体制に関する事項の通知」に加え、今後は「透明性報告書」も考慮することになる。透明性報告書とは、監査法人のガバナンス・コード()で大手監査法人が新たに作成・公表することを求められている報告書である(下記の監査法人のガバナンス・コード原則5を参照)。

 監査法人のガバナンス・コードに関する有識者検討会が3月31日に公表した「監査法人の組織的な運営に関する原則」のこと。コーポレートガバナンス・コードが上場企業に適用されるのに対し、監査法人のガバナンス・コードは文字通り監査法人に適用される。もっとも、監査法人のガバナンス・コードは「大手上場企業等の監査を担い、多くの構成員から成る大手監査法人における組織的な運営の姿を念頭に策定」(監査法人のガバナンス・コードの前文より抜粋)されており、すべての監査法人に適用されることまでは想定されていない(つまり、中小監査法人には適用されない)。監査法人のガバナンス・コードは、コーポレートガバナンス・コードと同様、コンプライ・オア・エクスプレイン(原則を実施するか、実施しない場合には、その理由を説明する)の手法を採用している。
監査法人のガバナンス・コード原則5
監査法人は、被監査会社、株主、その他の資本市場の参加者等が評価できるよう、本原則の適用の状況や、会計監査の品質の向上に向けた取組みについて、一般に閲覧可能な文書、例えば「透明性報告書」といった形で、わかりやすく説明すべきである。

大手監査法人は、この透明性報告書において、次に掲げる事項をわかりやすく説明しなければならない(監査法人のガバナンス・コード指針5-1および5-2)。

・監査法人のガバナンス・コードの適用の状況
・会計監査の品質の向上に向けた取組み
・会計監査の品質の持続的な向上に向けた、自ら及び法人の構成員がそれぞれの役割を主体的に果たすためのトップの姿勢
・法人の構成員が共通に保持すべき価値観及びそれを実践するための考え方や行動の指針
・法人の業務における非監査業務(グループ内を含む)の位置づけについての考え方
・経営機関の構成や役割
・監督・評価機関の構成や役割
・監督・評価機関の構成員に選任された独立性を有する第三者の選任理由、役割及び貢献
・監督・評価機関を含め、監査法人が行った、監査品質の向上に向けた取組みの実効性の評価

このように大手監査法人が監査法人のガバナンス・コードのコンプライを通じて透明性報告書の公表を迫られているのに対し、上述のとおり中小監査法人は監査法人のガバナンス・コードが適用されないことから透明性報告書の公表を求められているわけではない。このため、中小監査法人の会計監査を受けている上場企業の監査役は、透明性報告書なしで監査法人を評価しなければならない可能性がある。実際、大手監査法人の中にはガバナンス・コードの確定版が公表される前に同コードに対応した透明性報告書を開示したところがある一方で()、中堅以下の監査法人の多くは「まずは他の監査法人の様子見」という状況だ。

 大手監査法人は従来から「監査品質に関する報告書」「事業報告」といった透明性報告書に類似した報告書を作成しサイト上で公表しているため、監査法人のガバナンス・コード原則5をコンプライするのにそれほどの手間はかからないことも背景にあると思われる。

こうした中、透明性報告書を公表しない中小監査法人に会計監査を委嘱している上場企業では、「監査法人のガバナンス」が十分であるかどうかを判断するための情報が相対的に不足することになる。場合によっては、なぜ透明性報告書を公表していない中小監査法人に会計監査を委嘱し続けるのか、投資家にその理由を問われる可能性もあろう。

ただ、中小監査法人にとってもガバナンスの向上は必須の課題であり、ガバナンスの状況を説明するツールとして透明性報告書を任意で活用することは十分に考えられる。このことは、監査法人のガバナンス・コード案に関するパブリックコメントで寄せられた「本原則は、大手監査法人を念頭に策定されており、大手監査法人以外の監査法人においては、本原則の適用の有無をもって監査品質の高低を判断すべきものではないと考える」との意見に対し、金融庁が「本原則は、大手監査法人における組織的な運営の姿を念頭に策定されていますが、それ以外の監査法人において自発的に適用されることも妨げるものではない」「本原則は、被監査会社、株主、その他の資本市場の参加者等において、組織としての監査の品質の確保に向けた取組状況の評価が円滑に行われるための一助となる」との考え方を示していることからも裏付けられる(監査法人ガバナンス・コードの主なパブリックコメントの概要及びそれに対する回答より抜粋)。

透明性報告書を公表しない監査法人に会計監査を委嘱している上場企業の監査役は、「中小監査法人だから仕方ない」と諦める前に、「透明性報告書を今後公表する意向があるのかどうか」「透明性報告書を広く公表しないとしても、同様の報告書を監査役会に提出することは可能か」「透明性報告書と同様の報告書を監査役会に提出できない場合であっても、上表の枠内の項目の一部の情報だけでも提供できないか」を監査法人に問い合わせてみるべきだろう。

2017/04/05 確定申告期限の延長特例改正で定款変更は必要?

3月決算会社の2017年株主総会では、株主総会を7月などに開催できるよう定款を変更する企業がどれくらい出てくるのか、注目されるところだ。

こうした中、・・・

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2017/04/05 確定申告期限の延長特例改正で定款変更は必要?(会員限定)

3月決算会社の2017年株主総会では、株主総会を7月などに開催できるよう定款を変更する企業がどれくらい出てくるのか、注目されるところだ。

こうした中、平成29年度税制改正では、株主総会を後ろ倒しするのにボトルネックとなっていた法人税の確定申告期限に関する規定が大幅に見直されている。その一つは、法人税の確定申告期限を最大で「4か月」延長するものだが(2017年1月31日のニュース「株主総会の7月開催を検討する会社が増加傾向も、残されたボトルネック」参照)これまでどおり6月に株主総会を開催する3月決算会社が「1か月」だけ確定申告期限の延長を受けるケースに関する規定も見直されている。具体的には、従来は1か月の確定申告期限の延長を受けるためには「会計監査人の監査を受けなければならないことより決算が確定しないため、確定申告期限(決算日の翌日から2か月以内)まで確定申告書を提出することができない常況にある」ことが求められていたが、今後は「“定款の定め”により、決算日の翌日から2月以内に定時総会が招集されない常況にあると認められる」ことが必要とされる(改正法人税法75条の2第1項)。

これに伴い上場企業からは、「これまでどおり6月に株主総会を開催し、1か月の確定申告期限延長を受ける場合でも定款を変えないといけないのか?」との疑問が寄せられているが、結論から言うと、定款を変更する必要はない。会社法上、株主が議決権を行使することができるのは「基準日から3か月以内」とされているが(会社法124条2項)、現状ほとんどの3月決算上場会社は、決算日の3月31日を基準日とし、その翌日から3か月以内に定時株主総会を開催する旨(あるいは6月に定時株主総会を開催する旨)を定款に規定しているはずだ。この定款の定めがあること自体、上記「“定款の定め”により、決算日の翌日から2月以内に定時総会が招集されない常況にある」ことを示しており、平成29年度税制改正により新たに定められた(1か月の確定申告期限延長を受けるための)上記規定の要件を満たしている。

基準日 : その日において株主名簿に名前が載っていれば、株主総会での議決権行使や配当を受ける権利を享受できる日のこと。定時株主総会の基準日を定款に記載しなければ、毎年、基準日を公告しなければならない。その手間を避けるために、定款に基準日を記載するのが通常である。

一方、もし株主総会の開催日を7月以降に変更するのであれば、会社法上はもちろん、法人税法上も定款変更が必要になる。上述のとおり、会社法上、株主が議決権を行使することができるのは「基準日から3か月以内」とされているため、3月決算会社が株主総会を7月に開催するためには、定款を変更し、基準日を1か月後ろにズラす(さらに定時株主総会の招集月を「6月」と明記している場合には招集月もズラす)必要があるのは言うまでもない。また、改正法人税法では、最大4か月申告期限の延長を受けるための要件として、「当該内国法人が会計監査人を置いている場合で、かつ、当該定款等の定めにより当該事業年度以後の各事業年度終了の日の翌日から三月以内に当該各事業年度の決算についての定時総会が招集されない常況にあると認められる場合」にあることを求めているため(法人税法75条の2第1項一号)、定款上も株主総会が決算期末(事業年度終了の日)から3か月以内に「開催されない」ことが明らか(常況)でなければ、法人税の確定申告期限の延長も認められないので注意したい。

2017/04/04 (新用語・難解用語)カマスの実験

新年度となり、新入社員を迎え入れた上場企業も多いことだろう。またこの時期、転職の挨拶メールも少なからず届く。コーポレートガバナンス・コードが「攻めのガバナンス」を促している(コーポレートガバナンス・コード原案序文 本コード(原案)の目的「7」参照)ことからも分かるように、近年の日本企業はリスクや責任を負うことを過度に恐れるあまり「チャレンジしない」体質に陥りがちだが、これを変える可能性を持つのが新入社員や転職組だ。

先日、近年業績が伸び悩んでいるある東証一部上場企業の中堅社員から、「ウチの会社では何か新しいことを提案すると、いつも失敗するリスクから話が始まる」という悩みを聞いた。挙句の果てには、担当役員から「失敗したら君が責任をとれるのか?」と問われ、それ以上話を進める気力が失せてしまったという。これは担当役員個人のキャラクターというよりも、その企業の社風、あるいは企業風土の問題と言える。すなわち、その担当役員もさらにその上から「責任を問われる」立場にあり、また、若手社員の頃から同様に上から詰められた経験があるため、チャレンジすることに腰が引けてしまっているのだろう。「言い出しっぺが損をする」「出る杭は打たれる」といった表現は言い古されたものではあるが、現実問題として、新しいことにチャレンジする際にこうした“見えない壁”が厳然と存在している上場企業は少なくない。

その結果として起こる現象が、・・・

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2017/04/04 (新用語・難解用語)カマスの実験(会員限定)

新年度となり、新入社員を迎え入れた上場企業も多いことだろう。またこの時期、転職の挨拶メールも少なからず届く。コーポレートガバナンス・コードが「攻めのガバナンス」を促している(コーポレートガバナンス・コード原案序文 本コード(原案)の目的「7」参照)ことからも分かるように、近年の日本企業はリスクや責任を負うことを過度に恐れるあまり「チャレンジしない」体質に陥りがちだが、これを変える可能性を持つのが新入社員や転職組だ。

先日、近年業績が伸び悩んでいるある東証一部上場企業の中堅社員から、「ウチの会社では何か新しいことを提案すると、いつも失敗するリスクから話が始まる」という悩みを聞いた。挙句の果てには、担当役員から「失敗したら君が責任をとれるのか?」と問われ、それ以上話を進める気力が失せてしまったという。これは担当役員個人のキャラクターというよりも、その企業の社風、あるいは企業風土の問題と言える。すなわち、その担当役員もさらにその上から「責任を問われる」立場にあり、また、若手社員の頃から同様に上から詰められた経験があるため、チャレンジすることに腰が引けてしまっているのだろう。「言い出しっぺが損をする」「出る杭は打たれる」といった表現は言い古されたものではあるが、現実問題として、新しいことにチャレンジする際にこうした“見えない壁”が厳然と存在している上場企業は少なくない。

その結果として起こる現象が、無気力社員の増加だ。どうせ新しいことを提案しても聞いてもらえないどころか自分の立場が危うくなるくらいなら、何も言わず大過なく過ごそうと考えるのは人間、特に会社員の心理としてはやむを得ないところだろう。

実はこうした心理は人間を含む動物全般に共通するものであり、それは科学的にも証明されている。有名なのが「カマスの実験」だ。これは、水槽の中にカマスの目には見えない透明な仕切りを置いたうえで、仕切りの一方にカマス、もう一方にカマスの餌となる小魚を入れ、カマスの行動を観察するもの。水槽に入れられたカマスは当初は小魚を食べようとして何度も透明な仕切りに激突するが、やがてそれが叶わないことを悟り、小魚を追うことを諦めるという。そして驚くべきは、仕切りを取り除いた後も、カマスは小魚を追わなくなるそうだ。この現象は、カマスが「いくら(餌をとろうと)頑張っても無駄」ということを“学習”したことを意味する(これを心理学では「学習性無力感」と呼ぶ)。

上述した上場企業のケースも、この「カマスの実験」で起きていることと本質的には変わらない。「言い出しっぺが損をする」「出る杭は打たれる」という“透明な仕切り”が社員のやる気を消失させ、またそういう社員が増殖することで「チャレンジできない企業」が作られていく。

もっとも、カマスの実験には続きがある。仕切りが取り払われた水槽に海から捕獲してきたばかりの新しいカマスを入れると、当然ながら勢いよく小魚を食べ始める。それを見た古い(透明な仕切りの実験を経験した)カマスは次第に息を吹き返し、小魚を追うようになるという。

この新しいカマスに相当するのが、新入社員や転職組だ。彼らが新しいカマスと同様に既存の社員に刺激を与えれば、組織の活性化につながる可能性がある。そのためには、経営陣がリーダーシップをとり、新入社員や転職組の提案を採用したり、思い切って大きな仕事を任せたりすることを全社的に推進する必要があろう。それと同時に、自分がリスクを負いたくないがために新入社員や転職組の提案やアイデアを「前例がない」などとして否定したり彼らを排除したりするような既存社員がいないか、目を光らせておきたい。そのような社員こそ、会社を衰退させる元凶である可能性が高いので、場合によっては人事的な対応も視野に入れる必要があろう。