2017/01/20 【特集】2017年度税制改正を踏まえたインセンティブ報酬設計のポイント(3・会員限定)

2.損金算入要件の変化

ここからは本題に入り、2017年度税制改正により、中長期のインセンティブ報酬における損金算入要件がどのように変化するのかを見ていきたい。

(1)大きな方向性
2017年度税制改正の大きな方向性として、多様化したインセンティブ報酬をいま一度、現行の役員給与税制の枠組みの中で整理し直すことが企図されていると考えられる。

役員給与を損金算入するためには、基本的に法人税法34条第1項に1号(定期同額給与)、2号(事前確定届出給与)、3号(利益連動給与)のいずれかの要件を満たすことが必要とされているが、退職給与と新株予約権(ストックオプション)については別途定めがあり、通常は損金算入できるというのがこれまでの役員給与税制の運用であった。しかしながら、2017年度税制改正大綱を踏まえると、退職給与や新株予約権(ストックオプション)も含め、役員報酬が株価や業績に連動するインセンティブ報酬である場合、今後は事前確定届出給与か利益連動給与の要件を満たさない限り、損金算入できなくなる。例えば、一部の企業が採用している業績や株価に連動した退職金も、今後は「利益連動給与」の要件を満たさないと損金算入できない。

定期同額給与 : 役員給与の支給時期が1か月以下の一定の期間ごとで、かつ、当該事業年度の各支給時期における支給額が同額であるもの
事前確定届出給与 : いつ、いくら(確定額)を支給する」旨を“事前に”確定した上で税務署に届け出をし、それに基づいて支給するもの
利益連動給与 : その事業年度の利益に関する指標に基づく「あらかじめ定められた方法」により決定されるもの

以下では、業績/株価条件のない株式報酬、業績/株価条件のある株式報酬という順でより具体的に損金算入の可否を整理するが、その概要は図表3のとおりとなっている。

図表3:税制改正大綱を踏まえた損金算入の類型
25838c

(2)業績/株価条件のない株式報酬は原則「事前確定届出給与」
業績/株価条件のない株式報酬としては、株式等を直接付与するビークルを想定すれば、図表3の通り、譲渡制限付株式、通常型/株式報酬型ストックオプション、株式(現金)交付信託・譲渡制限付株式ユニット(ただし、いずれも業績/株価条件がないプラン)が想定される。これらは今後、事前確定届出給与の枠組みにおいて損金算入の可否が判断されることになる。ポイントは5つある。


a)業績等に応じて譲渡制限が解除される数が変動する譲渡制限付株式は損金不算入に

譲渡制限付株式については、業績等によって譲渡制限が解除される数が変動する(業績が悪ければ会社が無償取得する)という設計になっている場合、事前確定届出給与の対象から除外すると大綱に明記されている。それが利益連動給与の要件を満たす設計となっている場合には損金算入できるのかについては大綱には明記されていないが、明記されていない以上、損金算入不可と考えられる。

b)ストックオプションも事前確定届出給与として整理
ストックオプション(通常型・株式報酬型)については、これまでは個人に給与所得等の課税事由が発生するもの(いわゆる税制非適格ストックオプション(⇔税制適格ストックオプション))は原則損金算入可能であったが、これからは事前確定届出給与としての要件を満たさない限り、損金算入できない。

税制適格ストックオプション : 税法が求める要件を満たすことで、権利行使によって株式を取得した時点で生じている含み益(権利行使時の株式の時価-株式の取得価格)への課税が、実際に株式を売却する時点まで繰り延べられる(=株式を購入しただけで課税されるという状況を避けられる)ストック・オプションのこと。具体的な要件としては、無償発行、権利行使期間が「株主総会での発行決議の2年後~10年後までの最大8年間」、行使価格が発行時の時価以上、権利行使金額が「年間1,200万円まで」などがある。

c)株式(現金)交付信託における現金支給部分の取扱い
株式(現金)交付信託のうち「株式で交付される部分」については、2017年度税制改正大綱で「所定の時期に確定した数の株式を交付する給与」(大綱より抜粋)は事前確定届出給与に該当する旨が明記されたことから、事前確定届出給与と整理される。一方、信託内で「現金」に換価されて役員に支給される部分については、「所定の時期に確定した数の株式を交付する給与」とはいい難く、ファントム・ストック(=現金報酬)と看做される可能性もある。この場合、損金算入のためには、事前確定届出給与ではなく、利益連動給与の要件を満たす必要があるだろう。

※上記については、2017年9月29日付けで経済産業省が『「攻めの経営」を促す役員報酬-企業の持続的成長のためのインセンティブプラン導入の手引-』を改定し、取扱いが明確になっている(Q16参照)。
具体的には、株式交付信託の一部を換金した場合であっても、「全体として株式を交付することが目的の給与であること」が株主総会議案において明らかにされ、かつ、「一定の割合の株式を源泉徴収等のために換金するものであること」が役員報酬規程等で予め明らかにされており、さらに、株式の換金が受益権確定の時期に近接した時点で行われていれば、(換金部分を含む)株式交付信託全体を事前確定届出給与として損金算入できることとされた。
これは、株式交付信託では、株式が交付された時点で役員に所得税が課されるものの、役員は株式が交付されてすぐに株式を売却するとは限らないため(インサイダー取引規制の問題のほか、株価が低迷していることもあろう)、納税資金を手当てする必要が生じることに配慮したものである。

d)事前確定の届出免除
これまでも事前確定の届出が免除されていた譲渡制限付株式と同様、ストックオプションについても事前確定の届出が免除される。一方、大綱に届出不要の旨の言及がない株式交付信託やRSUについては事前確定の届出を要するものと想定される。

e)損金算入金額
損金算入金額については必ずしも税制改正大綱に明記はないが、昨年度(2016年度税税制改正)で事前確定届出給与に該当することが明確化された譲渡制限付株式報酬の損金算入額が「株式を交付した時点の時価」とされているように、今回新たに事前確定届出給与に該当することとされた株式交付信託(業績/株価条件なし)、リストリクテッド・ストック・ユニット(RSU)、通常型/株式報酬型ストックオプションについても、事前に給付もしくは届け出た金額(例えばユニットやポイント、新株予約権を付与した時点での株式等の価値)が上限とされる可能性がある。すなわち、株式付与または譲渡制限解除までの待機期間の始点から終点にかけて株価が相当程度上昇したとしても、それに応じて際限なく損金算入できるとは考えにくい。

(3)業績/株価条件のある株式報酬は利益連動給与の要件を満たせば損金算入可
同様に、業績/株価条件のある株式報酬は、図表3の通り、パフォーマンスシェア(PS)、業績・株価条件付の株式報酬型ストックオプション、株式(現金)交付信託(業績/株価条件あり)、パフォーマンスシェアユニット(PSU)が主に想定される。これらはいずれも利益連動給与の要件を満たせば損金算入可、満たさない場合には損金算入不可という整理になると想定される。ただし、上記2(2)a)で述べたとおり、業績等に応じて譲渡制限が解除される数が変動する譲渡制限付株式は、利益連動給与には該当しないものと考えられる。

ここでのポイントは2つある。

まず、これまでストックオプションには、業績/株価に応じてストックオプションの付与数を変動させる設計のものや、付与したストックオプションについて業績/株価に応じて権利行使可能数を変動させる設計のものが見受けられた。これらは現行法人税法においては、「税制非適格ストックオプション」であれば損金算入が可能であったが、今後は利益連動給与の要件を満たさなければ損金算入不可となる。

次に株式(現金)交付信託(業績/株価条件あり)については、これまでは在任時に交付した場合、従来の(=2017年度税制改正前の)利益連動給与の要件を満たすことができず、損金算入不可とされてきた。しかし、次の(4)で述べるとおり、2017年度税制改正では、株式(現金)交付信託で用いられる「株価」や「複数年度の指標」が利益連動給与の算定指標に加えられており、利益連動給与の要件を満たすことで損金算入可となる。一方、退職金として支給される株式(現金)交付信託(業績/株価条件あり)については、従来は基本的に損金算入可とされてきたが、上記2(1)で述べたとおり、業績や株価に連動した退職金である以上、今後は「利益連動給与」の要件を満たさない限り損金算入できないことになる。

(4)利益連動給与の要件緩和等
上記の通り、多くのインセンティブ報酬が利益連動給与の要件を満たすことで損金算入可、という方向にシフトしていく。これを踏まえて、利益連動給与の要件もある程度緩和される。具体的には、利益連動給与の算定指標として、株価、売上高が追加され、また、複数年度の指標も可とされる。ただし、このうち「売上高」については、利益指標や株価指標と同時に用いられることが求められ、売上高のみを指標として算定される役員報酬は利益連動給与は認められないので留意が必要である(利益連動給与の拡充については、2016年12月14日のニュース「在任時支給の信託型株式報酬が損金に、利益連動型のRSは損金算入不可」も参照)。

なお、今回の改正は基本的には「2017年4月1日以後に支給又は交付に係る決議をする給与」から適用されることになるが、課税強化とも言える退職給与、譲渡制限付株式、ストックオプションに関する改正については猶予期間が設けられ、「2017年10月1日以後に支給又は交付に係る決議をする給与」から適用される。

おわりに ~制度設計における「損金性」の意味合い~

2017年度税制改正を踏まえて、中長期のインセンティブ報酬が損金性という観点からどのような影響を受けるかについて解説してきたが、最後に中長期のインセンティブ報酬の設計上のポイントに触れておきたい。

といっても、ポイントは1点に尽きる。すなわち、制度設計における「損金性」の優先順位や意味合いをはっきりさせる、ということである。中長期のインセンティブ報酬の目指すところは、株主等の視点に立てば「その会社の中長期的な成長の後押し」であり、経営陣の視点に立てば「経営戦略達成へ向けた経営陣のモチベーションの喚起」である。したがって、その制度設計においては、株主等の視点(コーポレートガバナンス)と経営陣の視点(人事報酬制度)の両者のバランスに配慮しながら、自社の中長期的な経営理念や事業戦略を表現していくことになる。経営理念や事業戦略と報酬制度をリンクさせるということに優先して損金性だけが検討される、あるいは損金算入ありきの設計が行われるといった状況は不健全と言えるだろう。

しかしながら、インセンティブ報酬制度について、例えば利益連動給与が損金算入要件の一つとして求めている「有価証券報告書で十分な開示」を行うだけで損金算入要件を満たせるという場合に、報酬(諮問)委員会がわざわざ開示を限定的に留めた上で損金算入を諦める、ということが委員会の判断として妥当なのかどうか、疑問の残るところである。他方で、相当程度独自のKPI(重要業績評価指標、Key Performance Indicator)を用いた評価を実施しており、その評価制度の差異化自体が競争力の源泉とまで言えるような場合には、広く開示に踏み込むことは事業上の機密保持という観点から憚られるかもしれない。日本企業における報酬(諮問)委員会の設置が著しく進み、今後、審議事項の広がり・深まりが予想される中で、各社の報酬委員会は、自社のあるべき報酬開示をどのようなものと考えるのか、また、どこまで損金性を考慮した利益連動給与の設計を行うのか、今後、開示を通じて明らかになってくるだろう。

欧米の報酬開示においては、損金性(tax deductibility)は「報酬の方針」(Compensation Philosophy)の一要素となっていることが多い。今後は日本企業においても、インセンティブ報酬制度を検討する上で押さえておきたい論点であるのは間違いないだろう。

2017/01/20 【特集】2017年度税制改正を踏まえたインセンティブ報酬設計のポイント(2・会員限定)

1.中長期のインセンティブ報酬の類型

本題に入る前に、まず中長期のインセンティブ報酬の類型を整理したい。

ひと昔前までは、中長期のインセンティブ報酬と言えば、通常型ストックオプションと株式報酬型ストックオプション(いわゆる「1円オプション」)が主な選択肢であり、その他に役員持株会等を通じて自社株を購入する「株式購入資金」(「自社株取得目的報酬」などとも呼ばれる)や、いわゆる「有償ストックオプション」と呼ばれるものなどが株式報酬の選択肢として存在した。加えてこの数年で、信託を介したプランや「特定譲渡制限付株式(リストリクテッド・ストック)」などが登場したことで選択肢が多様化しており、その全体像を理解するには、いくつかの“軸”を設けながら整理していく必要がある。

リストリクテッド・ストック : 一定期間の譲渡制限が付された株式報酬

図表1は、中長期のインセンティブ報酬を制度設計の観点から整理した見取り図である。タテ軸は、インセンティブ報酬の支給形態(株式で支給されるか、非株式で支給されるか)と支給のタイミング、ヨコ軸は、評価期間において報酬額が株価と連動するかどうか、また、追加的な業績/株価条件が付されるかどうかによって分類している。

図表1:制度整備の観点から見た中長期のインセンティブ報酬
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タテ軸を中心に各プラン(一般に「ビークル」と呼ばれる)を概観していきたい。

ビークル : 「乗り物」から派生し、「媒体」「媒介物」「器」といった意味を持つ。

株式で支給される中長期のインセンティブ報酬としては、主なものとして、譲渡制限付株式、株式購入資金、株式報酬型ストックオプション、通常型ストックオプション、株式交付信託などがあり、非株式で支給されるビークルとしては、株式報酬を現金で代替したファントムストック(自社株連動型報酬)やSAR(Stock Appreciation Right)に加えて、中長期の評価に基づいて現金賞与を支給する中期キャッシュプラン(「パフォーマンスキャッシュ」とも呼ばれる)、株式交付信託のうち株式に代えて現金を支給するもの(以下、株式に変えて現金を支給するケースも含め、株式交付信託を「株式(現金)交付信託」という)、などがある。

ファントムストック : 架空の株式(ファントム(架空の)ストック= Phantom Stock)を用いたインセンティブ報酬。架空の株式を付与し、一定期間経過後、その間における株価の上昇・下落を反映させた「株価×付与数」を現金で支給する。フルバリュー型(⇔値上がり益型(例:通常型ストックオプション))という点で、株式報酬型ストックオプションの代替措置と言える。資本構成や議決権に影響を与えたくないなど、資本政策上の観点から利用されることが多い。ただし、企業にとっては、ストックオプションと異なりキャッシュアウトが生じる分、負担が大きい。
SAR: ストックオプションと同様に株価に連動するものの、株式は介在しない現金によるインセンティブ報酬。付与時点からの株価の上昇分を会社が現金支給する。海外現地法人の幹部に対し、現地の証券税制の影響や事務負担を回避する観点から、通常型ストックオプションの代替措置として支給されるケースが多い。

株式で支給されるプランは「現物株式の取得時期」によってさらに分類が可能であり、当初より直接現物株式を付与されるものが譲渡制限付株式、現金報酬の手取り分から株式を取得するものが株式購入資金、新株予約権を介して現物株式を取得するものが通常型ストックオプションや株式報酬型ストックオプション、そしてユニット(単位)やポイントを介して株式が交付されるものが株式(現金)交付信託や譲渡制限付株式ユニット(Restricted Stock Unit =RSU)となる。

これらのビークルに追加的に業績条件や株価条件(TSRなど)を付すかという論点がヨコ軸である。

上記のうちタテ軸の「現物株式の取得時期」について、ここ数年導入企業が増加してきた株式(現金)交付信託と、2016年度税制改正により課税関係が明確化(2016年3月2日のニュース「パフォーマンス・シェアの性格を持つ株式報酬も損金算入される方向」参照)されたことで2016年より導入が始まった譲渡制限付株式を例にとって比較してみたい。株式(現金)交付信託は、当初から現物株式が付与されるわけではなく、はじめに役位別・個人別に一定のユニット(単位)やポイントが付与され、業績/株価条件がなければ、一定の待機期間の後に、ユニットやポイント数に応じた株式が交付される。業績/株価条件がある場合は、その達成度に応じてユニット/ポイント数が上下し(例:0~200%)、そのユニットやポイント数に応じた株式()が本人に交付される。

 上述のとおり、全ユニットやポイント数を株式で支給するのではなく、その一部を信託内であらかじめ現金に換価して本人に支給するといった設計も想定されているため、図表1ではカッコつきで「株式(現金)交付信託」と記載している。

なお、業績/株価条件のない株式(現金)交付信託は、グローバルでは譲渡制限付株式ユニット(Restricted Stock Unit=RSU)と呼ばれることが多く、業績/株価条件のある株式(現金)交付信託は、パフォーマンスシェアユニット(Performance Share Unit= PSU)と呼ばれることが多い。株式(現金)交付信託は文字通り信託を用いたプランではあるが、グローバルでの呼称からも分かるように、RSU、PSUの一類型と整理されよう。

RSU/PSUの仕組みを、当初から現物株式が付与される譲渡制限付株式(Restricted Stock=RS)、パフォーマンスシェア(Performance Share=PS)と比較しながら、時間軸に沿って表現したものが図表2である。譲渡制限付株式は当初から株式が付与されるのに対し、RSU/PSUでは待期期間/業績評価期間を経て株式が付与されるという点が両者の大きな違いである。

パフォーマンスシェア(Performance Share=PS) : 中長期的な“業績目標の達成度合い”に応じて交付される株式報酬

図表2:RSU/PSUの仕組み
25838b

ここまで、中長期のインセンティブ報酬の諸類型について、見取り図を示したうえで解説してきたが、図表における区分の軸である(1)株価と連動するか、(2)業績/株価条件が付されているか、(3)現物株式の取得時期が「先」か「後」か、という論点は、以下に述べる2017年度税制改正大綱の内容にも関連があるので、いま一度、図表1を頭に入れたうえで読み進められたい。

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2017/01/19 (新用語・難解用語)公共施設等運営権

国や地方公共団体などが有する公共施設等を「民間事業者」が運営して利用料金を収受する権利のこと。平成23年に実施されたPFI法(正式名称は「民間資金等の活用による公共施設等の整備等の促進に関する法律」。平成11年に創設)の改正により新たに導入された。民間事業者がサービスの内容・施設の利用料金を自らの判断で決定できることや、公共施設等の利用者から利用料金を“直接”徴収することなどが大きな特徴となっている。また、公共施設等運営権は「物権」として扱われるため、これに抵当権を設定し、金融機関や投資家から融資や投資を受けることもできる。ただし、運営等に要する費用(公共施設等運営権の対価として国・地方公共団体などに支払う費用、維持管理・運営等に要する費用など)は事業者が負担することになる。

「公共施設」というと、建設業をはじめとする一部の業種にしか関係がないイメージがあるかもしれない。しかし、公共施設等運営権は原則として既に整備されている公共施設を設定対象としており、また、民間事業者等が担う業務範囲を大きく拡大するものであるため、既存施設を生かした効率的な業務運営や新たな増収施策を策定できるような事業者であれば、建設業など特定業種に限られることなく、幅広い業種からの参入が予想されている。公共施設等運営権が設定可能な事業としては、水道施設や下水道、道路、鉄道、空港、港湾施設、熱供給施設などの典型的なインフラ系施設のほか、賃貸住宅、医療施設、社外福祉施設、駐車場、都市公園、中央卸売市場などがあり、建設業のみならず、製造業、不動産、商社、流通、施設運営といった業種の参入が想定される。企業が公共施設等運営事業に参入する動機としては、「新規事業の育成」や「本業との相乗効果」などがある。例えば、不動産業者が周辺で展開する施設運営や開発案件との相乗効果を狙って進出するケースや、機器メーカーが機器の納入を狙って進出するケースが考えられる。

上述のとおり、公共施設等運営権は平成23年のPFI法改正により創設されたものだが、これまで会計上の取扱いが明確でなかった。こうした中、・・・

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2017/01/19 (新用語・難解用語)公共施設等運営権(会員限定)

国や地方公共団体などが有する公共施設等を「民間事業者」が運営して利用料金を収受する権利のこと。平成23年に実施されたPFI法(正式名称は「民間資金等の活用による公共施設等の整備等の促進に関する法律」。平成11年に創設)の改正により新たに導入された。民間事業者がサービスの内容・施設の利用料金を自らの判断で決定できることや、公共施設等の利用者から利用料金を“直接”徴収することなどが大きな特徴となっている。また、公共施設等運営権は「物権」として扱われるため、これに抵当権を設定し、金融機関や投資家から融資や投資を受けることもできる。ただし、運営等に要する費用(公共施設等運営権の対価として国・地方公共団体などに支払う費用、維持管理・運営等に要する費用など)は事業者が負担することになる。

「公共施設」というと、建設業をはじめとする一部の業種にしか関係がないイメージがあるかもしれない。しかし、公共施設等運営権は原則として既に整備されている公共施設を設定対象としており、また、民間事業者等が担う業務範囲を大きく拡大するものであるため、既存施設を生かした効率的な業務運営や新たな増収施策を策定できるような事業者であれば、建設業など特定業種に限られることなく、幅広い業種からの参入が予想されている。公共施設等運営権が設定可能な事業としては、水道施設や下水道、道路、鉄道、空港、港湾施設、熱供給施設などの典型的なインフラ系施設のほか、賃貸住宅、医療施設、社外福祉施設、駐車場、都市公園、中央卸売市場などがあり、建設業のみならず、製造業、不動産、商社、流通、施設運営といった業種の参入が想定される。企業が公共施設等運営事業に参入する動機としては、「新規事業の育成」や「本業との相乗効果」などがある。例えば、不動産業者が周辺で展開する施設運営や開発案件との相乗効果を狙って進出するケースや、 機器メーカーが機器の納入を狙って進出するケースが考えられる。

上述のとおり、公共施設等運営権は平成23年のPFI法改正により創設されたものだが、これまで会計上の取扱いが明確でなかった。こうした中、企業会計基準委員会(ASBJ)は昨年(2016年)12月20日付で「実務対応報告 公共施設等運営権における運営権者の会計処理等に関する実務上の取扱い」の公開草案を決定し、現在パブリックコメントに付している。それによると、公共施設等運営権は対価の総額を「無形資産」として計上、運営権の設定期間を耐用年数とし、定額法や定率法などの減価償却方法により、取得原価を各事業年度に配分することとされた。公共施設等運営権に関する契約には、運営権の設定期間を延長できる条項が盛り込まれていることも多いが、この延長期間は基本的に耐用年数には含めない。なお、従来、公共施設等運営権の取得は「リース取引」に該当するのではないかとの見解も聞かれたが、実務対応報告ではリース取引には該当しないことが明記されている。

会計処理が明確になったことで、決算への影響も読みやすくなった。これにより、企業の公共施設等運営事業への参入が進む可能性もありそうだ。

2017/01/18 有償ストックオプション、費用計上が求められるのはいつから?

既に300社を超える企業が導入していると言われる「有償ストックオプション」だが(2016年10月19日のニュース「有償ストックオプション導入企業、2016年だけで既に100社超え」参照)、ついに・・・

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2017/01/18 有償ストックオプション、費用計上が求められるのはいつから?(会員限定)

既に300社を超える企業が導入していると言われる「有償ストックオプション」だが(2016年10月19日のニュース「有償ストックオプション導入企業、2016年だけで既に100社超え」参照)、ついに会計上も費用計上が求められることが確定的となった。

会計上、通常のストックオプション(無償で発行されるストックオプション)は役職員等への(労務提供の対価としての)「報酬」とされており、費用計上する必要があるが、有償ストックオプションは会社にとって「現金を対価として株式を発行する取引」であることから(すなわち労務提供の対価ではない)、費用に計上していない企業が多い。このように決算数値にマイナスの影響を与えないことが、企業が有償ストックオプションを採用する大きなインセンティブになってきた。

これに対し、会計基準を開発している企業会計基準委員会(ASBJ)は、有償ストックオプションについても、将来の労働サービスの提供に対する対価として費用計上することを求める方向で会計基準の見直しを進めてきたが(2016年8月30日のニュース「有償ストックオプション、駆け込み導入が相次ぐ可能性も」参照)、このほどその内容が固まった。

有償ストックオプションの会計処理は「実務対応報告 従業員等に対して権利確定条件付き有償新株予約権を付与する取引に関する取扱い」と題するペーパーにまとめられるが、当フォーラムが入手したその原案によると、有償ストックオプションも、通常のストックオプション(無償ストックオプション)の会計処理について定めた「企業会計基準第8号 ストック・オプション等に関する会計基準」に定めるストックオプションに該当すると整理され、会計処理や開示もこの企業会計基準第8号を踏襲する。すなわち、有償ストックオプションの公正な評価額(ブラック=ショールズ・モデルと呼ばれる複雑な計算式などを使って算定。外部の第三者である専門家に評価を依頼するのが通常)から役職員等が払い込んだ金額を差し引いた金額を、対象勤務期間などを基礎に合理的に按分し、当期において発生したと認められる金額を当期の費用に計上することになる。ただし、現行の企業会計基準第8号の内容を踏襲するといっても、上述のとおり、今回は有償ストックオプションのためだけに新たな実務対応報告が設けられる。したがって、当該実務対応報告が現行のストックオプションの会計処理(企業会計基準第8号)に影響を及ぼすことは一切ない。

ブラック=ショールズ・モデル : 株価、行使価格、期間、変動率、金利といった「契約条件」および「市場で入手できるデータ」だけでオプションの価値を計算できるモデル

有償ストックオプションを導入している企業、あるいはこれから導入しようという企業にとって最も気になるのは、この新しい会計処理が「いつから」適用されるのかという点だろう。原案によると、これは「実務対応報告の公表日以降」とされている。既に多くの企業が有償ストックオプションを導入していることを踏まえ、決算や実務への影響を回避しようという趣旨だろう。したがって、公表日より前に付与した有償ストックオプションについては、これまでどおりの会計処理(すなわち、費用計上なし)が認められることになる。ただし、この場合には、現在採用している会計処理の概要のほか、有償ストックオプションの内容、付与数、行使数・失効数などを有価証券報告書の【経理の状況】に注記することが求められる。

この「公表日」だが、ASBJは月2回会合を開いており、公開草案を取りまとめるまであと2~3回の会合を開催する可能性が高い。公開草案は2か月程度のパブリックコメントに付されることを考えると、公表日は早くても6月あたり、パブリックコメントにより多くの意見が集まるようであれば(検討・修正に時間を要するため)夏にずれ込む可能性もあろう。

2017/01/17 スチュワードシップ・セミナーのご案内

スチュワードシップ研究会は、2017年1月31日午後2時から日比谷で公開セミナーを開催いたします。

セミナーのパンフレットこちら

【タイトル】企業と投資家との「対話」の進展

【日時】2017年1月31日(火)午後2:00~4:30(受付開始1:30)

【会場】日比谷図書文化館コンベンションホール(日比谷公園内)

【プログラム】

Ⅰ.講演:「対話を巡る環境変化」
  スチュワードシップ研究会 代表理事 木村祐基

Ⅱ.パネルディスカッション:
「企業と投資家の「対話」の進展~この1年の環境変化を踏まえて~」

パネリスト:
 永池 正孝氏 全国株懇連合会理事長
        株式会社バンダイナムコホールディングス
        コーポレートコミュニケーション室シニアアドバイザー 
 菊池 徹 氏 東京海上ホールディングス株式会社
        法務部文書グループ グループリーダー
 今村 敏之氏 野村アセットマネジメント株式会社 
        責任投資調査部長
 近江 静子氏 アムンディ・ジャパン株式会社 
        運用本部 ESGリサーチ部長 
 吉田憲一郎氏 いちごアセットマネジメント株式会社 
        副社長/パートナー

モデレーター:
 木村 祐基  スチュワードシップ研究会 代表理事 

【申込み方法】
 セミナーに参加ご希望の方は、お名前、ご所属(会社名、部署、役職)、ご連絡先(電話番号およびメールアドレス)を明記のうえ、メールの件名に<1/31セミナー申込み>と記入して、1月25日までに、info@stewardship.or.jpまでお申し込みください。
 受付が完了した方にはメールでお知らせします。そのメールが参加証となりますので、印刷して当日受付にご提出ください。定員に達した場合は、その旨をスチュワードシップ研究会のウェブサイトでお知らせし、お申込みを締め切らせていただきますのでご了承ください。

 なお、「事前のご質問」をお受けいたします。ご質問がある方は、参加お申込みのメールに「事前質問」として、ご記入ください。パネルディスカッションの中で、できるだけ回答させていただきたいと思います。時間の制約などにより、全てのご質問にお答えできない場合は、ご了承ください。

【参加費】
参加費;1,000円(当日会場受付にてお支払いください)

2017/01/17 CGコードの“フルコンプライ”企業の割合が頭打ちに

コーポレートガバナンス・コード(以下、CGコード)の適用開始(2015年6月1日~)から早1年半が経過するなか、コードをフルコンプライ(コードのすべてを遵守していること)する企業の数が伸びていないことが分かった。

本則市場(東証一部・二部)のガバナンス報告書提出企業に占めるフルコンプライ企業数の比率は、・・・

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2017/01/17 CGコードの“フルコンプライ”企業の割合が頭打ちに(会員限定)

コーポレートガバナンス・コード(以下、CGコード)の適用開始(2015年6月1日~)から早1年半が経過するなか、コードをフルコンプライ(コードのすべてを遵守していること)する企業の数が伸びていないことが分かった。

本則市場(東証一部・二部)のガバナンス報告書提出企業に占めるフルコンプライ企業数の比率は、最新の調査結果(東京証券取引所が半年ごとに調査)によると半年前から微減となっている(下表の一番下の列の比率()の推移を参照)。フルコンプライ企業の比率が頭打ちになった感は否めない。

CGコードをフルコンプライしている企業数(カッコ内は対前回調査時比率)

  1回目の調査
(2015年12月末時点)
2回目の調査
(2016年7月末時点)
3回目の調査
(2016年12月末時点)
本則市場のガバナンス報告書提出企業数(A) 1,858社 2,262社 2,530社
Aのうち、コードをフルコンプライしている企業数(B) 216社 474社 504社
フルコンプライしている企業の全体に占める比率(B/A) 11.6% 21.0%(8.4%増) 19.9%(1.1%減)
 1回目および2回目の調査の時点では、「6月総会の会社から、定時株主総会終了後速やかに対応状況を開示(2015年は12月まで猶予)」という特殊事情があったため、決算期と定時株主総会の時期によっては、(CGコードに対応した)ガバナンス報告書を提出する必要がなかった企業もある。今回(3回目)の調査はすべての決算期の企業が揃った初の調査であり、従来の調査結果との「社数」比較にはそれほど意味がない(母数も増えているため)ことから、「比率」により比較する必要がある。

各原則(補充原則を含む。以下同)のコンプライ率の伸びも芳しくない。本則市場に上場している企業が3回目の調査でコンプライできていない原則の上位5つについて、過去の調査結果と比較すると次のとおり。

各原則(補充原則)を実施できている企業数の全体に占める比率

コード 内容 1回目の調査(2015年12月末時点) 2回目の調査(2016年7月末時点) 3回目の調査(2016年12月末時点)
補充原則1-2④ 議決権の電子行使のための環境整備(例:議決権電子行使プラットフォームの利用等)、招集通知の英訳 44.1% 44.2% 42.3%
補充原則4-11③ 取締役会による取締役会の実効性に関する分析・評価、結果の概要の開示 36.4% 55.0% 55.3%
補充原則4-2① 中長期的な業績と連動する報酬の割合、現金報酬と自社株報酬との割合の適切な設定 69.3% 70.2% 68.6%
補充原則3-1② 海外投資家等の比率等を踏まえた英語での情報の開示・提供の推進 74.2% 71.9% 70.0%
補充原則4-10① 指名・報酬等の検討における独立社外取締役の関与・助言(例:独立社外取締役を主な構成員とする任意の諮問委員会の設置) 70.6% 74.9% 74.3%

全体 : 本則市場におけるコード対応のガバナンス報告書提出企業数(上表のA)

これらのコンプライ率が低い補充原則は、補充原則4-11③の取締役会評価を除けば、「外国人投資家対策」「報酬」といったキーワードで括ることができる。補充原則1-2④における「招集通知の英訳」や補充原則3-1②における「英語での情報の開示・提供の推進」のような「外国人投資家対策」を実施しない理由として、「自社の株主における外国人投資家比率の低さ」を挙げる企業が多い。これらの補充原則を実施しないのは、エクスプレインもやむなしと説明しやすいからとも言える。また、補充原則4-2①や補充原則4-10①といった「報酬」関連のコードは、取締役個人の“実入り”に直結する問題であるだけに早急に結論を出す(コンプライする)ことができず、時間ばかりが経過してしまったという企業が少なくない。

エクスプレイン : コーポレート・ガバナンス報告書で、原則(補充原則)をコンプライ(遵守)できない理由を説明すること

「外国人投資家比率の低さ」と「英語による開示の充実」は、「鶏が先か卵が先か」の議論にも似ている。外国人投資家比率の低い企業であっても、英語での情報開示を進めることで、外国人投資家比率を少しずつでも上げることは可能だと考えられるからだ(招集通知の英訳の効果については、2015年11月11日のニュース「支持株主を拡大するための“攻めの対策”」を参照)。また、「報酬」の問題も、いつまでも放置するわけにはいかない。コードへの対応状況をもとにした投資家の企業選別はすでにスタートしている(『機関投資家が選んだ優れた「CG報告書」「統合報告書」』を参照」」以上、投資家から選ばれる上場企業になるためには、エクスプレインをコンプライに変えていく努力を惜しんではならない。

2017/01/16 連結納税が採用しやすく

グループ経営が当たり前になる中、企業グループ全体の法人税額を圧縮するために連結納税の導入を検討したことのある上場企業は少なくないだろう。特に近年はM&Aの活発化により子会社の数が増えたという企業グループは珍しくなく、連結納税を導入する経済的合理性は高まっている。

連結納税 : 100%の持株比率で結ばれた企業グループにおける親会社と子会社の所得金額と欠損金額を損益通算して「連結所得金額」を計算し、連結所得に対する法人税を親法人がまとめて納税する制度。親会社が黒字、子会社が赤字の場合、企業グループ全体の法人税額を減らす効果がある。

ただ、連結納税を導入するにあたってボトルネックとなってきたのが、・・・

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