グループ経営が当たり前になる中、企業グループ全体の法人税額を圧縮するために連結納税の導入を検討したことのある上場企業は少なくないだろう。特に近年はM&Aの活発化により子会社の数が増えたという企業グループは珍しくなく、連結納税を導入する経済的合理性は高まっている。
連結納税 : 100%の持株比率で結ばれた企業グループにおける親会社と子会社の所得金額と欠損金額を損益通算して「連結所得金額」を計算し、連結所得に対する法人税を親法人がまとめて納税する制度。親会社が黒字、子会社が赤字の場合、企業グループ全体の法人税額を減らす効果がある。
ただ、連結納税を導入するにあたってボトルネックとなってきたのが、「自己創設のれん」に対する課税リスクだ。
自己創設のれんとは、企業を買収したり合併したりした際における「被買収企業等の株式の購入金額-当該企業の時価純資産価額(=資産の時価-負債の時価)」であり、“財務諸表には表れない企業の価値”と言える。
法人税法では、連結納税制度を採用する際、あるいは既に連結納税制度を採用している企業が新たに子会社を連結納税の対象に加える際には、原則として子会社の資産を時価評価し、その結果生じた評価益に対して法人税が課されることになっている。課税当局は従来からこの時価評価課税の対象には上述した「自己創設のれん」も含まれるとの見解を示しており、これがM&A等の結果「のれん」を抱える子会社を有する企業が連結納税を採用することを躊躇させてきた。一方、企業や日本公認会計士協会からは「自己創設のれんは時価課税の対象外とすべき」との要望がかねてから挙がっていた。
こうした中、この自己創設のれんに対する課税問題が2017年度税制改正により消滅することが当フォーラムの取材により判明した。
2017年度税制改正大綱には下記の記述が入っている(71ページ⑦参照)。
| ・・・連結納税の開始又は連結グループヘの加入に伴う資産の時価評価制度について、時価評価の対象となる資産から、帳簿価額が1,000万円未満の資産を除外する。 |
ここでポイントとなるのが「帳簿価額」という部分だ。現行の連結納税制度では、「評価差額(「資産の時価」と「帳簿価額」の差額)」が1,000万円未満の場合には時価評価の対象外とされているが、今回これが「帳簿価額」とされたことになる。
帳簿価額 : 会計帳簿に記載されている価額のこと。固定資産であれば、取得価額から減価償却累計額や減損損失累計額を控除した額となる。
自己創設のれんは、上記算式のとおり、M&A等の際に被買収企業の時価純資産を超えて支払った対価であり、M&A等の前に“資産”として認識されていたものではない。したがって、「帳簿価額」も存在しない。そもそも「帳簿価額」が存在しない以上、「時価評価」の対象にもなり得ないというわけだ。
企業に連結納税制度の導入を躊躇させてきた「自己創設のれん」に対する課税問題が解決したことで、まだ連結納税を導入していていない企業の経営陣は、一度その導入の是非を検討してみてもよいだろう。

