2016/12/07 100%子会社化にハードル(会員限定)

会社法上、議決権の保有比率が「50%超」の株主は、株主総会の普通決議を単独で成立させることが可能とされている。このため、子会社の持分比率は50%超あれば十分にも見えるが、一方で、少数株主への配慮を不要とするため、100%子会社化にこだわる上場会社も少なくない。

こうした中、100%子会社化のハードルを上げかねない制度改正が実現する方向となっているので要注意だ。

100%子会社化を実現する手法としては、株式交換株式併合全部取得条項付種類株式のほか、平成27年5月1日から施行された改正会社法により認められた株式等売渡請求などがある。このうち株式交換については、法人税法上の組織再編税制の適用対象となっている。組織再編税制では、下表のような要件を満たさない限り、組織再編に伴う資産の移転に対し法人税がかかる仕組みとなっている。

株式交換 : 100%子会社化を図るための手法の一つ。子会社となる会社の株主が保有している(子会社となる会社の)株式を親会社となる会社が取得し、その代わりに子会社となる会社の株主に親会社となる会社の株式を割り当てる(割り当てる株式数は、株式交換契約によって決められた株式交換比率に基づく)。この結果、子会社の株主はすべて親会社となり(100%子会社化が実現)、子会社の元株主は親会社の株主となる。
株式併合 : 複数の株式を1株にまとめる(併合)することにより、発行済み株式数を減少させる手法のこと。例えば2:1の割合で株式を併合する場合、1株当たりの理論的な価値(株価)は2倍に調整されることから、株価を上げる要因の1つにもなり得る。ただし、株式併合は少数株主を締め出す結果を招くため、その実施にあたってはその理由を開示するとともに、株主総会の特別決議による承認を得る必要がある。
全部取得条項付種類株式 : 会社がその全部を取得することができる種類株式のこと。株式に全部取得条項を付すには、まず株主総会の特別決議により定款を変更し、その後、再び特別決議により全部取得条項を発動させる必要がある。会社は全株主から株式を取得、対価として新株を発行するが、新株の発行比率を極端な率とすることで少数株主には1株未満の端株が交付される。この端株に対して現金を交付することで、少数株主を排除する。
株式等売渡請求 : 「特別支配株主(議決権の90%以上を有する株主)」が、少数株主の有する株式等の全部を「少数株主の個別の承諾」なしに、金銭を対価として少数株主から直接取得することを可能にする手法。株主総会の特別決議は不要である。ただし、対象会社に対しては、少数株主に交付する金銭の額や算定方法など一定の事項を通知し、その承認を得なければならない。
組織再編税制 : 組織再編には資産の移転が伴う(例えばA社がB社を吸収合併した場合、B社の資産がA社に移転することになる)。資産の移転は基本的に課税対象(資産の取得価額よりも移転価額が高ければ、その差額が課税対象となる)とするのが税務の考え方だが、組織再編のたびに税金がかかるとなると、企業が必要な組織再編すら躊躇してしまう可能性があるため、法人税法では「組織再編税制」を制度を設け、100%グループ内の組織再編や、共同事業のための組織再編を行う場合には資産の移転に課税を行わないことにしている。

  企業グループ内の組織再編成 共同事業を営むための組織再編成



○ 100%関係の法人間で行う組織再編成
・100%関係の継続
○ 50%超関係の法人間で行う組織再編成
① 50%超関係の継続
② 主要な資産・負債の移転
③ 移転事業従業者の概ね80%が移転先事業に従事(株式交換・株式移転の場合は完全子法人の従業者の継続従事)
④ 移転事業の継続(株式交換・株式移転の場合は完全子法人の事業の継続)
① 事業の関連性があること
② (イ)事業規模(売上、従業員、資本金等)が概ね5倍以内 又は
(ロ)特定役員への就任(株式交換・株式移転の場合は完全子法人の特定役員の継続)
③ 左の②~④
④ 移転対価である株式の継続保有(株主)
⑤ 完全親子関係の継続(株式交換・株式移転のみ)

出典:財務省

一方、株式併合、全部取得条項付種類株式、株式等売渡請求については現在のところ組織再編税制の適用対象にはなっていないが、平成29年度税制改正により、これらにも組織再編税制が適用される方向であることが当フォーラムの取材で分かった。すなわち、これらの手法によって100%子会社化を図ろうとする場合、上の表に示した税制適格要件を満たさない限り、課税が行われるということだ。具体的には、子会社化される会社の資産を時価評価し、評価益が出た場合、当該評価益が課税対象となる。

この制度改正は、平成29年10月1日以降の組織再編から適用される模様。100%子会社化を検討する企業は、制度改正前に実行に移すことも検討に値しよう。

2016/12/06 MBO後の再上場増加に備え、プレミアム配分に“くさび”

上場企業の非上場化策であるMBO(マネジメント・バイアウト:経営陣による買収)は、この10年で100件以上行われているが、なかにはMBO後数年で再上場するケースが散見される。直近では2016年6月に上場したソラスト(前身は2012年に上場(東証2部)廃止となった日本医療事務センター)がそれにあたる。また、東京証券取引所から上場承認をもらっていたにもかかわらず上場予定日(2016年9月30日)の3週間前に上場延期を発表したオークネットも、2008年にMBOで上場(東証1部)廃止となったという社歴を有する。過去には、チムニー(2010年に上場廃止、2012年に再上場)、すかいらーく(2006年に上場廃止、2014年に再上場)、ツバキ・ナカシマ(2007年に上場廃止、2015年に再上場)などの例もあり、今後も再上場を前提としたMBOが増加するものと予想されている。こうしたなか東京証券取引所は、12月2日付で日本取引所自主規制法人との連名による「MBO後の再上場時における上場審査について」を公表、2017年1月1日までパブリック・コメントを求めている。

MBOといっても、実際のところ経営陣が提供する自己資金はバイアウトに必要な資金のごくわずかにとどまり、資金の大半を「バイアウト・ファンド」から提供を受けるのが通常だ。株価が低迷している企業の経営者にバイアウト・ファンドが「株価低迷に悩むくらいなら、いっそのこと非上場化しませんか」と話を持ち掛けるケースが多いと言われる。MBO時に、経営陣が「非上場化により経営の自由度を高めたい」と語るのをよく見かけるが、経営陣の裏にいるバイアウト・ファンドにとって関心があるのは「経営の自由度」などではなく、金銭的な“損得”のみである。バイアウト・ファンドにとって、MBOは「安く買って高く売る」というアービトラージ(裁定取引)の手段に過ぎない。

バイアウト・ファンドは「高く売る」ために、バイアウト後の数年間は、バイアウトした企業のコストカット、販路拡大、業態変更などの企業価値向上(バリューアップ)に集中する。その後、バイアウト・ファンドは「M&A」か「再上場」により買収資金の回収(これを「イグジット=出口)」という)を図ることになるが、MBOを実施する段階で経営陣が「買収資金のイグジットとして再上場を想定している」ことを公表するケースも少なくない。

また、バイアウト・ファンドは「安く買う」ために、・・・

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2016/12/06 MBO後の再上場増加に備え、プレミアム配分に“くさび”(会員限定)

上場企業の非上場化策であるMBO(マネジメント・バイアウト:経営陣による買収)は、この10年で100件以上行われているが、なかにはMBO後数年で再上場するケースが散見される。直近では2016年6月に上場したソラスト(前身は2012年に上場(東証2部)廃止となった日本医療事務センター)がそれにあたる。また、東京証券取引所から上場承認をもらっていたにもかかわらず上場予定日(2016年9月30日)の3週間前に上場延期を発表したオークネットも、2008年にMBOで上場(東証1部)廃止となったという社歴を有する。過去には、チムニー(2010年に上場廃止、2012年に再上場)、すかいらーく(2006年に上場廃止、2014年に再上場)、ツバキ・ナカシマ(2007年に上場廃止、2015年に再上場)などの例もあり、今後も再上場を前提としたMBOが増加するものと予想されている。こうしたなか東京証券取引所は、12月2日付で日本取引所自主規制法人との連名による「MBO後の再上場時における上場審査について」を公表、2017年1月1日までパブリック・コメントを求めている。

MBOといっても、実際のところ経営陣が提供する自己資金はバイアウトに必要な資金のごくわずかにとどまり、資金の大半を「バイアウト・ファンド」から提供を受けるのが通常だ。株価が低迷している企業の経営者にバイアウト・ファンドが「株価低迷に悩むくらいなら、いっそのこと非上場化しませんか」と話を持ち掛けるケースが多いと言われる。MBO時に、経営陣が「非上場化により経営の自由度を高めたい」と語るのをよく見かけるが、経営陣の裏にいるバイアウト・ファンドにとって関心があるのは「経営の自由度」などではなく、金銭的な“損得”のみである。バイアウト・ファンドにとって、MBOは「安く買って高く売る」というアービトラージ(裁定取引)の手段に過ぎない。

バイアウト・ファンドは「高く売る」ために、バイアウト後の数年間は、バイアウトした企業のコストカット、販路拡大、業態変更などの企業価値向上(バリューアップ)に集中する。その後、バイアウト・ファンドは「M&A」か「再上場」により買収資金の回収(これを「イグジット=出口)」という)を図ることになるが、MBOを実施する段階で経営陣が「買収資金のイグジットとして再上場を想定している」ことを公表するケースも少なくない。

また、バイアウト・ファンドは「安く買う」ために、株式の買取価格を少しでも安くしようとする。実際には上場会社の株式には時価があり、時価より低い価格で買い集めることができないため、MBO時においては、経営陣およびバイアウト・ファンドはプレミアム(バイアウトにより支配が一般投資家からファンドに移転することに対してファンドが一般投資家に支払うプレミアム)を支払わざるを得ないのだが、そのプレミアムの額を低く抑えることで「安く買う」ことになる。一方、一般投資家としてはプレミアムを1円でも高くして欲しいことから、買取価格の妥当性を巡って、経営陣およびバイアウト・ファンドと一般投資家の利害が対立し、訴訟にもつれ込むケースも少なくない。

また、一般投資家は、そもそもMBOが必要であったかどうかについて十分に検討するほどの情報を持たないことから、MBOに対して不信感を抱くケースも多い。

このようにMBO時には買取価格やMBOの必要性を巡り紆余曲折があったにもかかわらず、数年で証券市場に戻ってくる「再上場企業」を苦々しく思う市場関係者は少なくないのが現状だ。実際、東京証券取引所が2006年9月に設置した「上場制度整備懇談会」では、「経営陣と一般株主との間に情報の非対称性が存在するため、通常のTOBとは本質的に違う。MBOが安易に行われて、短い期間で再上場するような裁定取引に似た行為がたくさん行われるような市場になってはいけない」「例えば、再上場するにはMBO実施後3年程度は空けるとか、流動性が低いままの上場は認めないとか、売出しのみの上場は認めないというように、再上場に際して、一律に歯止めをかけることも考えられるのではないか」(以上、第43回の議事録より抜粋)など、MBO企業の再上場に対して厳しい意見が出ていた。しかし、結局のところ、「MBOも再上場もそれぞれ独立したものであり、それぞれがルールに則って行われているのであれば正当な行為である。組み合わせて考えるべきではない。それぞれ別個に考えて、ルールに弱い部分があれば直せば良いのではないか」「上場審査の段階で規制をかけるのではなく、コーポレート・ガバナンスやIRという自主的な方法の対応に任せるべきと考える。会社法の範疇であるMBOについて、会社法よりも厳しいルールで上場審査をすることには若干の違和感がある」(以上、第43回の議事録より抜粋)といった意見に押し切られる形で、上場制度整備懇談会としては「MBO企業の再上場に対する制度的・一律的な規制はかえって資本市場の活力をそぐことになりかねない」との結論に至った(後述のパブコメの2ページ目参照)。

こうした中で東京証券取引所がパブリック・コメントに付した「MBO後の再上場時における上場審査について」(以下、MBO後の再上場審査案)は、上場制度整備懇談会の結論を受け、MBO後の再上場時の審査方針について市場関係からの知見の提供を求めるものであり、今後MBOを計画する上場企業やバイアウト・ファンドに一定のプレッシャーを与えることになりそうだ。

MBO後の再上場審査案では、まず上場審査の視点として次の2点が掲げられている。

・MBOと再上場の関連性が高くないか
・プレミアム配分の適切性やMBO実施の合理性が低くないか

このうち「MBOと再上場の関連性」については、主導者(経営者・株主)の同一性・連続性、MBOから再上場までの期間の長短などを上場審査で確認するとしている。一方、「MBO実施の合理性」については、MBO時の事業計画と(MBO後の)当該計画の進捗との間のかい離があれば、そのかい離についての説明が十分に説得力のあるものかどうかを審査するとしている。

MBO後の再上場審査案では、上述の2点の視点を持ちつつ、再上場時のコーポレート・ガバナンスの体制や再上場に至るまでの経緯の説明・開示内容などを勘案し、総合的に再上場の可否を判断するとしている。

今回の東京証券取引所によるパブリック・コメントの募集は制度変更に伴うものではなく、あくまで今後の上場審査に活用することを目的としたものに過ぎない。すなわち、本来であればパブリック・コメントに付す必要性はない。それにもかかわらず、あえてパブリック・コメントを求めたのは、上述の通り「市場関係者」の知見の提供を受けることにより、結果としてMBOのスキームを組むバイアウト・ファンドに対して「プレミアム配分の適切性の確保」を促す効果を期待しているからだろう。MBO実施時に一般の投資家に適切にプレミアムを配分できていないのであれば、そのことは再上場時の上場審査において不利に働くことになる。東証が「MBO後の再上場時における上場審査方針」として「プレミアム配分の適切性」を明確に打ち出すことは、MBO時の買取価格が不当に低いものとならないよう“くさび”を打ち込むものと言え、今後のMBO時の買取価格の決定に対して牽制になることは間違いない。

2016/12/05 海外子会社を持つ企業の負担が大幅に増加も

海外子会社を持つ上場企業に大きな影響を与えかねない制度改正が平成29年度税制改正で実施される。新聞報道等でも五月雨式に情報が流れているが、・・・

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2016/12/05 海外子会社を持つ企業の負担が大幅に増加も(会員限定)

海外子会社を持つ上場企業に大きな影響を与えかねない制度改正が平成29年度税制改正で実施される。新聞報道等でも五月雨式に情報が流れているが、このほど、その全容が判明した。

今回大幅に改正されることとなるのが、「タックスヘイブン対策税制」だ。タックスヘイブン対策税制とは、税率の低い国(タックス・ヘイブン=軽課税国。ヘイブン(Haven)とは「避難所」という意味) に設立した子会社に各種権利の使用料等を支払うことなどにより、日本の親会社の課税所得を圧縮するとともに、(日本の親会社の)利益を軽課税国の子会社に留保するような行為を防ぐため、軽課税国にある子会社の所得を日本の親会社の所得とみなし、これを日本の親会社の所得に合算して課税する仕組み。

現行のタックスヘイブン対策税制は、基本的には海外子会社の税負担割合が所得の20%未満(=軽課税)となる場合に適用されるが、平成29年度税制改正では、この「20%」というボーダーラインは維持される(すなわち、税負担率割合が20%以上の海外子会社に対しては適用を免除)。これに対し、税負担割合が20%未満の場合には、企業の所得を「受動的所得(経済実体を伴わない所得)」と「能動的所得(実体ある事業から生まれた所得)」に区分し、このうち「受動的所得」のみを合算の対象にする。これは、経済実態を伴わない受動的所得は、より租税回避性が高いと考えられるため。ただし、「一見して明らかに受動的所得しか得ていない(経済実体のない)ペーパーカンパニー、事実上のキャッシュボックス、ブラックリスト国所在のもの」については、税負担率が何%あるかを問わず()、所得の全額が合算対象とされるので要注意だ(下図参照)。

 本ニュース掲載後の2016年12月8日に公表された平成29年度税制改正大綱(102ページ③参照)により、税負担率が「30%以上」であれば、ペーパーカンパニーや事実上のキャッシュボックスを含め、どのような会社であっても合算対象にならないこととされた。
出典:自民党税制調査会資料

出典:自民党税制調査会資料

この改正で税負担が増える企業はごく一部にとどまるものとみられるものの、多くの企業が事務負担の増加に頭を悩ませることになる可能性がある。

上述のとおり、「ペーパーカンパニー、事実上のキャッシュボックス、ブラックリスト国所在のもの」については、税負担率が何%であるかを問わず、所得の全額が合算対象とされる。裏を返せば、日本企業が合算課税を回避するためには、海外子会社が「ペーパーカンパニー、事実上のキャッシュボックス、ブラックリスト国所在のもの」に該当しないことを証明する必要が出てくるということだ。

このうち「ブラックリスト国所在のもの」に該当するかどうかは、OECD(経済協力開発機構)がリスト化した「租税回避防止対策に非協力的な軽課税国(=タックスヘイブン)」に設置された海外子会社のことを指すため、単にリストを確認するだけで済む。

「ペーパーカンパニー」に該当するかどうかの判定は、基本的には経済活動の実態があるかどうか、具体的には「実体基準(本店所在地国(=海外子会社を置いている国。以下同)に主たる事業に必要な事務所等を有しているか)」と「管理支配基準(本店所在地国において事業の管理、支配及び運営を自ら行っているか)」という二つの基準により判定する方向であることが当フォーラムの取材で判明している。各海外子会社についてこれを判定していくのは、(特に海外子会社の多い企業では)それなりの手間を要するだろう。

企業にとって最も負担が大きいと思われるのが、「事実上のキャッシュボックス」に該当するかどうかの判定だ。当フォーラムの取材によると、事実上のキャッシュボックスに該当するか否かは、基本的には貸借対照表(B/S)上の資産に占める受動的所得の割合が一定以上か否かで判定されることとなる方向(当該割合が一定以上あれば「キャッシュボックス」と認定される)。この割合は50%よりかなり低くなることが予想されるため、海外子会社が「事実上のキャッシュボックス」に該当するケースはほとんど発生しないだろう。しかしながら、それを証明するために、各外国関係会社についてB/S上の資産に占める受動的所得の割合を調査しなければならないとすれば、親会社である日本企業に膨大な事務負担が生じることになる。

こうした事態を避けるため、何らかの事務負担緩和策の導入が検討されている模様だが、今回の改正が想定する租税回避スキームとは無縁のメーカーなどからは、「単に事務負担が増加するだけ」といった不満の声も聞こえてくる。海外に子会社を展開する上場企業の役員としては、今回の税制改正に対応するための人員の確保なども検討しておく必要がありそうだ。

2016/12/02 (新用語・難解用語)クローバック

役員報酬改革が日本企業にとってテーマとなる中、最近聞かれるようになってきたのが「クローバック」という言葉だ。「取り戻す」と訳されるクローバック(claw back)は、役員報酬の文脈では「報酬の返還」を意味する。例えば、企業で何らかの不祥事が発生し、過去数年間分の財務諸表に修正が入った場合、修正前の財務諸表に基づき算定された年次賞与や権利が確定した中長期のインセンティブ報酬(権利行使可能となったストックオプションや、実際に株式が交付された株式交付信託、譲渡制限が解除されたリストリクテッド・ストック、実際に払い出された中長期のキャッシュプランなど)は、修正後の「正しい財務諸表」をベースに考えれば“払い過ぎ”ということになる。この払い過ぎていた部分(修正前の財務諸表に基づき計算された金額-修正後の財務諸表に基づき計算された金額)を企業が取り戻すことを一般に「クローバック」という。

日本企業でも、・・・

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2016/12/02 (新用語・難解用語)クローバック(会員限定)

役員報酬改革が日本企業にとってテーマとなる中、最近聞かれるようになってきたのが「クローバック」という言葉だ。「取り戻す」と訳されるクローバック(claw back)は、役員報酬の文脈では「報酬の返還」を意味する。例えば、企業で何らかの不祥事が発生し、過去数年間分の財務諸表に修正が入った場合、修正前の財務諸表に基づき算定された年次賞与や権利が確定した中長期のインセンティブ報酬(権利行使可能となったストックオプションや、実際に株式が交付された株式交付信託、譲渡制限が解除されたリストリクテッド・ストック、実際に払い出された中長期のキャッシュプランなど)は、修正後の「正しい財務諸表」をベースに考えれば“払い過ぎ”ということになる。この払い過ぎていた部分(修正前の財務諸表に基づき計算された金額-修正後の財務諸表に基づき計算された金額)を企業が取り戻すことを一般に「クローバック」という。

日本企業でも、不祥事があった場合には既に退任した元役員が過去の報酬を返上するということがあるが、これはあくまで元役員が“自主的に”返上しているに過ぎないため、クローバックには該当しない。クローバックとは、あくまで「制度」としての報酬返還の仕組みを指す。

ウイリス・タワーズワトソン 経営者報酬部門 コンサルタントの小川直人氏によると、欧米企業では、短期業績への過度な傾倒を抑制するために、年次賞与実額を全て現金で支給せずに一部を株式報酬の付与に置き換えて「繰り延べる」(“deferred bonus”)という考え方や、支払った報酬を「取り戻す(クローバック)」という考え方は一般的なものであるという。これらの仕組みは、これまで社内の制度として位置付けられて来たが、米国ではクローバックを「規制」として導入するという議論が進んでいる。

一方、日本企業の役員報酬は欧米企業と比べてかなり低く(下表のとおり、基本報酬は遜色ないが、年次インセンティブ(年次賞与)と中長期インセンティブ(株式報酬など)が圧倒的に低い)、多くの上場企業が中長期インセンティブを中心に役員報酬の増額を検討する中、「クローバック」はこの流れとも相反するようにも見える。

出典:ウイリス・タワーズワトソン

出典:ウイリス・タワーズワトソン

そう考えると、日本でクローバックが本格的にクローズアップされるのはもう少し先になりそうだが、グローバルな規制を受けている金融機関では以前から報酬の繰延べやクローバックが当然のごとく検討されている。また、上場企業がインセンティブ報酬を増額する場合に、報酬委員会の委員から「単純に報酬を増額するのではなく、何か問題が生じた場合に備えた事前の策を報酬委員会が持っておくべきではないか」といった意見が出て、海外企業の事例を参考にしながら、クローバックに類する考え方が導入された事例もあるという(小川氏)。

日本企業の中には、まだ役員報酬の水準が低いのにもかかわらず、欧米で問題になっているペイレシオ(役員の報酬が一般従業員の報酬の何倍かを示す比率)を気にするところが少なくないことからしても、日本でクローバックが議論される日もそう遠くないかもしれない。

<取材にご協力いただいたウイリス・タワーズワトソン 小川直人氏の連絡先>
ウイリス・タワーズワトソン
経営者報酬部門 コンサルタント 小川 直人
03-3581-6786
naoto.ogawa@willistowerswatson.com

2016/12/01 Facebookの投稿分析の問題点

SNS上のデータなどの「ビッグデータ」を分析し、自社のビジネスに活用する日本企業が増えているが、その活用度は、日本企業よりもアジア企業を含む海外企業の方が一歩先を行っているかもしれない。例えば、・・・

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2016/12/01 Facebookの投稿分析の問題点(会員限定)

SNS上のデータなどの「ビッグデータ」を分析し、自社のビジネスに活用する日本企業が増えているが、その活用度は、日本企業よりもアジア企業を含む海外企業の方が一歩先を行っているかもしれない。例えば、香港の信用情報会社であるLenddoが、顧客のクレジットスコア(信用度を得点化したもの)を判定するうえで、“Facebook上の友人”を分析しているのは有名な話だ。Lenddo以外にも、クレジット業界等においては、クレジット・スコアの低い顧客のFacebookやTwitterなどのSNSの投稿内容を分析し、審査の参考にしている企業が少なくない。

また、英国の大手損害保険会社アドミラルは、Facebookの投稿内容を分析して性格や運転の安全度を予測、若年ドライバー(17~21歳)の自動車保険料の算出に活用している。例えば、「Always」「Never」という言葉や「!」を多用する者は自信過剰で事故を起こすリスクが高く、逆に、言葉遣いが丁寧で箇条書きを多用している者は几帳面な性格でリスクが低いといった具合である。

いずれも「なるほど」と思わせる分析だが、その一方で、個人情報保護の観点から問題はないのか、疑念もわくところだ。たとえ各国の個人情報保護に関する法令をクリアしていたとしても、プライバシーに関わる情報を分析の対象とする以上、何らかのトラブルに発展する可能性は十分にある。

実際、上記のアドミラル社は、同社が開発したアプリを通じて顧客がFacebookにログインした場合に同社が顧客のFacebookにアクセスすることが可能になるという仕組みを導入しようとしていたが、これに対してFacebook社は「第三者によるアカウントへのアクセスは、プライバシー・ポリシー上、認められない」として、アドミラル社によるFacebookへのアクセスを拒否している。

結局、顧客が自らFacebookの投稿内容をアドミラル社に送るという形をとるということで両社は合意したようだが、果たして顧客が投稿内容を送ってくれるのかという疑問は残る。ビッグデータの活用拡大に水を差す可能性のある事例と言えるだろう。

また、ビッグデータの活用は、個人情報保護の問題以外にも、データを分析する上でのアルゴリズムの正確性や、SNSを利用していない顧客に及ぼす不利益など様々な問題をはらんでいる。活用にあたっては、こうしたリスク面についても十分に検討する必要があろう。

2016/11/30 2016年11月度チェックテスト

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【問題1】

リスク分担型企業年金を採用した場合、「確定給付型」の年金として会計処理をすればよい。


正しい
間違い
【問題2】

ISSは、新たに取締役の役職として相談役や顧問を規定する内容の定款変更議案に対しては原則として反対推奨する方針である。


正しい
間違い
【問題3】

役員持株会を活用した株式報酬が、インサイダー取引規制の適用を受けないためには、役員持株会による年間の株式買付け額を「1,200万円未満」に抑える必要がある。


正しい
間違い
【問題4】

スチュワードシップ・コードの原則5-3「機関投資家は、議決権の行使結果を、議案の主な種類ごとに整理・ 集計して公表すべきである」はコンプライ率が9割を超える。


正しい
間違い
【問題5】

東証に上場している監査等委員会設置会社のうち、社外取締役が4人以上いるところは2割強に止まっている。


正しい
間違い
【問題6】

英国では、FTSE100の構成企業を対象に、新たに「2020年中に経営幹部の女性占率33%以上」という目標を打ち出している。


正しい
間違い
【問題7】

「勤務間インターバル制度」を導入した会社では、遅くまで残業した従業員は、その翌日の要出社時刻が繰り下がるものの、それに応じて終業時刻も繰り下がるため、結局のところ1日の労働時間は変わらない。


正しい
間違い
【問題8】

リストリクテッド・ストックを「退職金」として支給されても、所得税法上「退職所得」にはならない。


正しい
間違い
【問題9】

フェア・ディスクロージャー・ルールとは、上場会社が外部に公表するディスクロージャー情報の内容は、誤りがなく、かつ、公正なものであるべきというルールのことである。


正しい
間違い
【問題10】

「スチュワードシップ・コード及びコーポレートガバナンス・コードのフォローアップ会議」より、機関投資家が投資先への議決権行使結果をアセットオーナーにのみ開示することを提案する意見書が公表された。


正しい
間違い