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2016/10/30 【失敗学第29回】船井電機の事例(会員限定)
概要
船井電機(東証第一部)の米国連結子会社において不適切な会計処理が行われていた。
経緯
船井電機が、2016年10月に「社内調査委員会の調査報告書」を公表し、過去の財務報告の訂正を行うまでの経緯を時系列で示すと、次のとおり。
<2016年>
7月頃:船井電機の2017年3月期第1四半期の決算作業中に、100%連結子会社である P&F USA, Inc.(以下「PFU」)において費用の計上漏れがあったことが判明した。
8月4日:2017年3月期第1四半期の決算発表の延期をリリース。
8月10日:船井電機が8月9日付で財務局に申請した四半期報告書の提出期限延長について承認を受けたことをリリース。
9月14日:財務局より四半期報告書の提出期限延長(再延長)申請に係る承認を受けたことをリリース。
10月13日:船井電機が社内調査委員会の調査報告書をリリース。
10月17日:過年度の財務報告の訂正、内部統制報告書の訂正報告書、2017年3月期第1四半期の決算をリリース。
内容・原因・改善策
船井電機が2016年10月17日に公表した「社内調査委員会の調査報告書」によると、本件の問題点の内容とその原因、再発防止策は次のとおりである。
1 約1000万ドルの納税不足
| 内容 | ・PFU は、カナダの小売店向けに販売した際の Goods and Services Tax(GST)およびHarmonized Sales Tax(HST)の仕入税額控除を、小売店がカナダ国外で商品を受け取っていることを理由としてCRA(カナダ税務当局)に否認され、約500万ドルの納税が必要になった。 ・GSTおよびHSTの税率が変更(5%→13%)されたにもかかわらず、新税率の適用を失念し、顧客から旧税率分しか徴収できていなかった。また、旧税率のまま申告および納税を行っており、納税が約500万ドル不足していた。 ・CRAからの否認の指摘や税務調査の開始といった契機があったにもかかわらず、税務リスクの有無の検討や自主申告対応が遅れた。 |
| 原因 | ・税務担当の経理マネージャーは、CRAの税務調査が完了するまでは税債務の合理的な見積もりは不可能と安易に判断してしまった。 ・税務担当の経理マネージャーはカナダ税制に詳しくなく、税制の改正情報にも疎かった。 ・PFU内にカナダの税務の専門家がいないにもかかわらず、カナダ税務について外部の専門家に相談したり、カナダの法人税申告書の作成をカナダの会計事務所に依頼したりしていなかった。 ・PFUから本社への経営管理報告は売上、損益の実績が中心で、「現在において原因が既に発生している、もしくは将来発生の可能性のある事項で、経営に重要な影響を与える項目」を本社に報告するルートがなかった。 |
| 改善策 | ・2015年6月にカナダ税務の知識を有する会計担当者を配置し、また、同年10月には外部の税務専門家とのコンサルティング契約の締結を行った。 ・顧客から旧税率分しか徴収できていなかったHSTについて、顧客からの徴収を行う。 ・上長による日々の業務のモニタリングに加え、月次ベースでの経理・管理部門、その他の関連部門との全体会議を行い、関連部門からのチェック、情報共有化を行い、多方向からの管理を行う。また、社内規程を改定し、あらゆる税務調査に関する事項は、すべてPFUの社長およびCFOへの報告事項とする予定。 |
2 運送費の計上漏れ
| 内容 | ・PFUでは、取引先から運送費について約5.1百万ドルの請求漏れがある旨連絡を受け、検証作業が終了した分だけ支払い、支払った分だけを費用計上していた。その結果、未払い分の費用計上が漏れていた。 ・米国では、ある取引が終了してから取引の相手方の社内調査の結果発見された請求漏れ等について、費用等の再請求がなされることは実務的によく見られ、そのような場合には、請求を受けた相手方において、その再請求の内容が正しいかどうかを検証した上で、改めて当事者間で交渉の上、合意された金額で処理されることが多い。もし、決算作業中に金額を合意できなければ、PFUでは見積もり額を計上すべきであったが、経理担当者は見積もり計上をしなかった。 |
| 原因 | ・物流担当者が運送費の見積もり額を計上し、経理責任者に伝えていたが、経理責任者は2015年3月期および2016年3月期の決算に見積もり額を未払計上しなかった。 ・PFUは船井電機に債務の発生リスクを伝えていなかった。 |
| 改善策 | ・PFUでは、請求書未受領でも、費用が発生しているものは引当計上するという認識をしてもらうように、各従業員の理解を徹底させる。 ・PFUの経理は、決算月には請求書の有無にかかわらず実質的に債権債務が存在するかどうかについて各部門に対して確認するようにする。 |
再請求 : Post Audit や Royalty Auditと言われる。
3 販売協力金等の計上漏れ
| 内容 | ・販売協力金の計上漏れ(約5百万ドル)があった。 ・売上税納付遅れに伴う延滞税等の計上漏れがあった。 |
| 原因 | ・取引先小売店と合意した販売協力に関する情報が、営業部門から売掛金回収担当部門に網羅的に提供されていなかったため、販売協力金の見積もり計上が適正にできていなかった。 ・PFUでは販売協力金管理システムを用いていたが、入力漏れや入力間違いが多く、消込作業が滞っており、システムとして機能していなかった。 ・販売協力金管理システムの担当者は、システムが適切に機能していないことを認識していたものの、対応策を検討することはなかった。 |
| 改善策 | ・システムの改修を実施(販売促進費の明細を設け、消込作業を容易にした)。 ・PFUの経理は、販売協力金管理システムの残高と貸借対照表の残高が一致していることを確認するようにする。 |
4 売上税納付遅れに伴う延滞税の計上漏れ
| 内容 | ・売上税納付遅れに伴う延滞税(約14百万ドル)の計上漏れがあった。 |
| 原因 | ・米国では、エンドユーザーへの販売時に売上税を課税される。PFUでは、従来、米国の売上税課税の対象とならない小売業者と取引をしていたこともあり、2015年3月期より開始したエンドユーザーとの取引について売上税の納付が漏れてしまった。 ・経理マネージャーに売上税納付ならびに付帯する延滞税を未払計上するという基本的な会計知識がなかった。 |
| 改善策 | 今後は新規の案件がある場合には、経理・管理部門、その他の関連部門との全体会議を行い、関連部門からのチェック、情報共有化を行い、多方向からの管理を行うこととした。社内で検討した事項のリスク・問題点について、外部の専門家にも法的、会計的、税務的影響の事前確認を行うこととした。また、資産、負債で計上されている内容が適切なものか四半期毎に明細を確認する手続きを行う。 |
5 1~4に関する共通の原因と改善策
| 原因 | ・新事業を進めて行く中で、それぞれのビジネスに付随する経営管理上の想定される課題を事前に検討しその対応策を準備し実行すべきところ、それらが十分ではなかった。 ・船井電機から派遣されている経理担当者の業務範囲が、社内規程に定められていない経理外業務にも及んだ結果、業務が煩雑多忙を極め、本来の経理職務の対応が不十分となった。 ・特別な事象が発生した際の適正な会計処理を判断できる人材が不足していた。 ・PFUトップによる従業員への指導力・統制力不足があっただけでなく、船井電機の子会社に対するガバナンス体制も十分であったことから、PFUから船井電機に対する報告が適切に行われず、船井電機による課題の把握、改善が十分でなかった。 |
| 改善策 | ・2016年1月より米国CPA資格を有する者がPFUのCFOに就任し、また、同年4月よりPFU社長も交代し、更に、同年6月より船井電機からPFUに日本の公認会計士資格を有する者を追加派遣し、前任の経理担当者は経理専任として残し、経営体制の刷新・強化を図った(実施済み)。 ・問題があった子会社に対しては監査等委員会委員による定期監査を実施し、改善対策の進捗確認を行う。 ・子会社を管掌する本社役員は管理責任があることを再認識する。 ・船井電機の取締役会は、本件改善対策の進捗状況をPFUの社長および管掌する役員から3か月毎に確認する。 ・会計・税務に関しては、本社経理部・経営企画部による海外子会社等の日常的な管理・モニタリングの強化を図り、内部統制が機能していない予兆を感じたときに本社従業員が迅速にマネジメントに報告し、調査をする体制と不審な事実を放置しないという役職員の姿勢を含む健全な企業風土の更なる浸透に努める。現地に駐在する経理従業員は、レポートラインを本社経理部・経営企画部の所属として、会計処理に関わる業務プロセスの問題点を速やかに報告・連絡・相談できる体制とする。 |
<この失敗から学ぶべきこと>
海外子会社が抱えるリスクの1つに税務リスクがあります。税法は各国において異なり、かつ、改正頻度が高いことから、親会社からのモニタリングが不十分になりがちです。海外子会社の経理部は独自に現地の税務手続きへの対応を進め、改正があればタイムリーにキャッチアップしていかなければなりません。そのためには、現地の税法に詳しい人物を海外子会社の経理部に配置するとともに、現地の会計事務所とコンサルティング契約を締結する必要があります。船井電機の子会社PFUでは、税務担当の経理マネージャーがカナダ税制に疎く、社内にカナダの税務に詳しい専門家がいないにもかかわらず、外部の専門家を活用したり、カナダの法人税申告書の作成をカナダの会計事務所に依頼したりしていませんでした。また、PFUでは売上税納付遅れが生じ、延滞税(約14百万ドル)を負担させられることになりました。税務リスクは顕在化すると延滞税が課せられてしまい、余計な資金負担を強いられてしまいます。上場会社の経営陣は海外子会社の税務リスクについて定期的に点検すべきです。
また、船井電機からPFUに派遣されていた経理担当者は、PFUにおいて社内規程に定められていない経理外業務もこなさざるを得ない状況となり、業務が煩雑多忙を極め、本来の経理職務の対応が不十分となっていました。これが不適切な会計処理の見逃しにつながった可能性は否定できません。海外の連結子会社に派遣している経理担当者は連結財務報告の要となる重要なキーマンです。海外子会社の担当役員は、海外の連結子会社に派遣中の経理担当者に総務的な業務が集中して本業である経理業務がおろそかになっていないか、モニターしておきたいところです。
2016/10/29 【役員会 Good&Bad発言集】売上の平準化
大型機械装置の受注生産・販売を営む上場企業X社(3月決算)の取締役会で、中期経営計画を承認するための議論が行われています。社外取締役が投げかけた「中期経営計画では『売上の平準化』という言葉が繰り返し使われているが、これは何を意図しているのか」との質問をきっかけに、取締役間で次のようなやり取りが行われました。
取締役A・B・Cの発言のうち、誰の発言がGOOD発言でしょうか?
取締役A:「当社が売っているのは、ご承知のように1台当たりの価格が数十億円の大型機械装置です。これが3月に売れるか4月に売れるかで、年度の損益が大きく変動します。また、6月に売れるか7月に売れるかで、四半期の損益が大きく変動します。損益が大きく変動すると、当社の業績に対する投資家の信頼を裏切ることになりかねません。安定的な売上の確保は投資家の期待に沿う経営目標です。」
社外取締役B:「しかし、中期経営計画であまりに『売上の平準化』を強調すると、『売上の平準化』が目的化してしまい、粉飾を招く恐れがあるのではないでしょうか。」
取締役C:「粉飾のリスクは内部統制を充実させることで防げばよい話です。『売上の平準化』を経営目標に据えるのは、何も投資家のためだけではありません。当社では、売上が予算を下回ると、役員や従業員の賞与の額も売上高の減少に連動して少なくなるので、『売上の平準化』は安定的な賞与の実現のためにも必要です。」
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2016/10/29 【役員会 Good&Bad発言集】売上の平準化(会員限定)
<解説>
経営目標次第で異なる企業風土
経営目標は企業によって異なっており、具体的な数値であったり、理念的なものであったりと様々です。経営陣が定めた経営目標が社内に浸透するのに伴い、経営目標が従業員の行動に規律を与えたり制約したりするようになります。同業でも企業風土が異なる一因には、経営目標の違いもあります。
だからこそ、経営目標は“誤ったもの”であってはなりません。例えば「365日24時間、死ぬまで働け」といった経営目標を掲げると、長時間労働をいとわない企業風土が醸成されることでしょう。そして、その誤った経営目標が従業員のメンタルに悪影響を与え、最悪の場合、従業員の自殺という悲しい結末を招くことにもなりかねません。
経営陣としては経営目標が健全かどうかを検討しておくべきですが、仮に経営目標が一般常識からみて健全とは言えないものであったとしても、社内役員にとってはそれが当然のことになってしまい、どこがおかしいのかに気づきにくいものです。経営目標が健全かどうかをチェックする役割こそ、社外取締役が果たすべき責務と言えます。
「売上の平準化」という経営目標の是非
それでは、問題文にある「売上の平準化」という経営目標は健全と言えるのでしょうか。確かに、売上が平準化されれば、利益も平準化されることから、投資家に「安定した企業」であるとアピールできます。しかし、売上が大きく落ち込みそうになると、売上を平準化するために売上の前倒し計上を行う等不適切な会計処理を誘発するリスクもあります。
これが実際に起こってしまったのが、東証第一部に上場している長野計器の子会社フクダでした。長野計器が2016年10月に公表した「株式会社フクダによる不適切な会計処理に関する調査報告」によると、フクダの社長が掲げた「売上の平準化」という経営目標を達成するため、10年ほど前から管理職クラスが参加する生産会議で売上を前倒し計上する額を協議して決めていたことが発覚しました。調査報告書によると、生産会議のメンバーではないフクダの社長や多くの従業員も売上前倒しの事実を知っていたものの、いずれも「フクダの会計処理として誤ってはいるものの、実態のない全くの架空計上ではなく、実態のある数字を前倒しに計上しただけであって、それほど重大な不正ではない」と認識していたとのことです。経営者から誤ったメッセージが発信され続けた(*)結果、従業員の(不正への)意識も鈍化していったようです。
上記の調査報告書では、「経営効率及び安定化のため、工場の稼働率や売上・仕入を毎月同じ水準にすることは一定の意味がある。しかし、毎月の売上及び仕入れの数字を操作することにより、みせかけの平準化を図ることには、経済合理性は認めらない。むしろ、工場稼働率や資金繰り等の経営実態が見えにくくなり、管理会計上も大きな問題を生じる」と指摘されています。
さて、以上の解説をご覧いただければ、どれがGOOD発言か、もうお分かりですね。正解は以下のとおり。
<正解>
社外取締役B:「しかし、中期経営計画であまりに『売上の平準化』を強調すると、『売上の平準化』が目的化してしまい、粉飾を招く恐れがあるのではないでしょうか。」
(コメント:中期経営計画で「売上の平準化」を強調すると、中期経営計画の実行を担う現場では、「売上の平準化」自体が目的になってしまい、それを達成できなかった場合に粉飾決算が行われるリスクが高まることを指摘できている点はGOODです。「売上の平準化」という経営目標自体がそもそもX社の業態では達成困難であり、かつ、追求すべき目標でもないという点も指摘できていれば、なおGOODでした。)
(コメント:確かに投資家は「安定して利益を計上できる企業」を好む傾向にありますが、売上を意図的に平準化することまで求めているわけではありません。1台当たりの価格が数十億円の大型機械装置を販売しているX社のような企業では、売上や利益がぶれるのはむしろ当然のことであり、投資家もそれは承知しています。投資家の期待を誤解している点がBADです。)
(コメント:どれほど内部統制を充実させても、内部統制を支える「経営目標」「社風」「企業風土」といった内部統制環境に問題があれば、せっかく構築した内部統制が瓦解してしまう可能性があります。また、事業部の業績評価の指標を売上に完全連動させてしまうと、粉飾(売上の水増し)のリスクが高まります。1台当たりの価格が数十億円の大型機械装置を販売しているX社のような企業ではなおさらです。X社では、賞与支給時に参考にする業績指標として、受注残やキャッシュフロー等売上以外の要素の比重を高めることを検討すべきです。本発言は現行の賞与算定プロセスに改善の余地がないか検証することなく、「売上の平準化」という“誤った経営目標”を肯定している点がBADです。)
2016/10/28 取締役会での議論が「1回」でも善管注意義務は果たせるか
頻繁に経営判断を迫られる役員にとって「善管注意義務違反」は身近なリスクと言える。「経営判断の原則」では、(1)行為当時の状況に照らし、経営判断の前提となる事実認識の過程(情報収集とその分析・検討)に問題はなかったか、(2)事実認識に基づく意思決定の推論過程および内容において問題がなかったか、の2つの基準により、善管注意義務違反の有無を判定することになっているが、(1)や(2)の舞台となるのが、取締役会だ。そこで、この経営判断の原則を果たし、善管注意義務違反を問われないようにするには、取締役会での議論を何回くらい、またどのくらいの深度で行えばよいのか、といった疑問を持つ向きもある。特に、事業計画や予算など不確定要素が多いテーマについて意思決定するとなればなおさらだろう。
役員が善管注意義務違反に問われるか否かは、・・・
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2016/10/28 取締役会での議論が「1回」でも善管注意義務は果たせるか(会員限定)
頻繁に経営判断を迫られる役員にとって「善管注意義務違反」は身近なリスクと言える。「経営判断の原則」では、(1)行為当時の状況に照らし、経営判断の前提となる事実認識の過程(情報収集とその分析・検討)に問題はなかったか、(2)事実認識に基づく意思決定の推論過程および内容において問題がなかったか、の2つの基準により、善管注意義務違反の有無を判定することになっているが、(1)や(2)の舞台となるのが、取締役会だ。そこで、この経営判断の原則を果たし、善管注意義務違反を問われないようにするには、取締役会での議論を何回くらい、またどのくらいの深度で行えばよいのか、といった疑問を持つ向きもある。特に、事業計画や予算など不確定要素が多いテーマについて意思決定するとなればなおさらだろう。
役員が善管注意義務違反に問われるか否かは、当該会社の規模、事業内容、組織体制等によりケースバイケースであるため、取締役会でどの程度の回数や深度の議論を行えば善管注意義務が免責になるのかということを一概に言うのは難しい。裁判例によれば、一般的に、経営判断原則に則り善管注意義務違反に問われないようにするためには、「当該会社の属する業界における通常の経営者の有すべき知見及び経験」を基準として、当該行為を実行するにあたり、「その目的に社会的な非難を受ける可能性がないか」、その前提としての「事実調査に遺漏がなかったか」、「調査された事実の認識に重要かつ不注意な誤りがなかったか」、「その事実に基づく行為の選択決定に不合理がなかったか」などの観点から、当該行為を行うことが著しく不当とは言えないと評価されることが必要になると考えられている。
逆に言うと、取締役会の場における議論がたとえ1回限りであったとしても、上記の基準を満たしていれば善管注意義務違反には該当しないことになる。例えば、取締役会の場で、事業計画などの計画について、単なる策定にとどまらず当該計画に基づく行為の実行まで含めて決議する場合には、その前提としての事実調査に遺漏がないか否か、また、調査された事実の認識に誤りがないか否かといった点にまで留意して検討する必要があろう。
2016/10/27 サイバー攻撃対策の国家資格が登場
サイバー攻撃の対象は今や官公庁のみならず、企業等にも広がっている。先月(2016年9月)30日には、東急ハンズが「ハンズ・ギャラリー マーケット(手作り作品の通販サイト)」が第三者による不正アクセスを受け、顧客のクレジットカード情報を含む個人情報が流出した可能性があることをリリースしたばかり。また、7月には印刷通販大手のグラフィックが、同社の顧客情報データベースに不正アクセスされ、一部の個人情報が流出したことを公表している。
このようなシステムの脆弱性を突いたサーバーへの不正アクセスに加え、従来からある「標的型メール攻撃」も依然として減っていない。警察庁の調べによると、サイバー攻撃の代表例と言える標的型メール攻撃は、2014年の1,723件から2015年には3,828件と2倍以上に増加した。標的型メール攻撃については「不審なメールや添付ファイルは開かない」という基本的な対策が既にある程度浸透しているにもかかわらず、2016年上半期(1月から6月)には1,951件も発生している。
標的型メール攻撃 : あたかも正当な業務や依頼であるかのように見せかける件名や本文でメールを送りつけ、添付ファイルを開かせることでウイルスに感染させたり、特定のサイトに誘導することでウイルスを送りつけたりするタイプのサイバー攻撃。
サイバー攻撃による被害が後を絶たないことが示唆するように、これを自社の力だけで防ぐのは困難であり、適宜外部の専門家の活用も検討する必要がある。ただ、だからと言って外部の専門家に“丸投げ”するだけでは自社の事情を踏まえた的確な対策がとられないばかりか、コストだけがかさむといったことになりかねない。外部の専門家を適切に使いこなすためにも、情報セキュリティに精通した社内人材の育成は必須となる。
もっとも、いかにしてそのような人材を育成するべきか、頭を悩ませる企業は少なくない。こうした中、・・・
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2016/10/27 サイバー攻撃対策の国家資格が登場(会員限定)
サイバー攻撃の対象は今や官公庁のみならず、企業等にも広がっている。先月(2016年9月)30日には、東急ハンズが「ハンズ・ギャラリー マーケット(手作り作品の通販サイト)」が第三者による不正アクセスを受け、顧客のクレジットカード情報を含む個人情報が流出した可能性があることをリリースしたばかり。また、7月には印刷通販大手のグラフィックが、同社の顧客情報データベースに不正アクセスされ、一部の個人情報が流出したことを公表している。
このようなシステムの脆弱性を突いたサーバーへの不正アクセスに加え、従来からある「標的型メール攻撃」も依然として減っていない。警察庁の調べによると、サイバー攻撃の代表例と言える標的型メール攻撃は、2014年の1,723件から2015年には3,828件と2倍以上に増加した。標的型メール攻撃については「不審なメールや添付ファイルは開かない」という基本的な対策が既にある程度浸透しているにもかかわらず、2016年上半期(1月から6月)には1,951件も発生している。
標的型メール攻撃 : あたかも正当な業務や依頼であるかのように見せかける件名や本文でメールを送りつけ、添付ファイルを開かせることでウイルスに感染させたり、特定のサイトに誘導することでウイルスを送りつけたりするタイプのサイバー攻撃。
サイバー攻撃による被害が後を絶たないことが示唆するように、これを自社の力だけで防ぐのは困難であり、適宜外部の専門家の活用も検討する必要がある。ただ、だからと言って外部の専門家に“丸投げ”するだけでは自社の事情を踏まえた的確な対策がとられないばかりか、コストだけがかさむといったことになりかねない。外部の専門家を適切に使いこなすためにも、情報セキュリティに精通した社内人材の育成は必須となる。
もっとも、いかにしてそのような人材を育成するべきか、頭を悩ませる企業は少なくない。こうした中、経済産業省は今月(2016年10月)21日、サイバーセキュリティに関する知識・技能を備えた高度かつ実践的な人材の養成を目的とした新たな国家資格「情報処理安全確保支援士」(通称名は登録情報セキュリティスペシャリストまたは登録セキスペ)」の創設を公表している。情報処理安全確保支援士の第1回試験は来年(2017年)の4月に実施される。情報セキュリティの分野は日進月歩であり、資格を取得しても知識が陳腐化していくという問題はあるが、情報処理安全確保支援士の場合、合格後もサイバーセキュリティに関する最新の知識・技能を維持するための講習を毎年受講することが義務付けられており、継続的に知識をブラッシュアップすることできるという。
サイバー攻撃対策が重要な経営課題となる中、企業としては、情報セキュリティ管理の担当役員(CISO)はもちろん、情報セキュリティに携わる社員に資格取得を奨励、場合によっては義務付けるということも検討に値しよう。
CISO : Chief Information Security Officerの略
また、「情報処理安全確保支援士」を資格手当の対象とし、全社員に資格取得を奨励すれば、会社全体の情報セキュリティへの意識向上を図る効果も期待できそうだ。
2016/10/26 ここまで進む海外企業におけるLGBTへの取り組み
2016/10/26 ここまで進む海外企業におけるLGBTへの取り組み(会員限定)
日本企業でもLGBTへの対応を進めるところが増えているが、その際、大きな論点となるのが、年金や健康保険、そして福利厚生だろう。日本企業よりもLGBTへの対応が進んでいる英国大手企業の事例を紹介しよう。
LGBT : レズビアン(L)、ゲイ(G)、バイセクシュアル(B)、トランスジェンダー(T)を総称する造語。近年、ダイバーシティの文脈の中で、ビジネスシーンにおいても使われる機会が増えている。
日本では同性婚はいまだに認められていないが、英国では、2014年に同性婚が法律上認められている。また、同性婚の合法化に先立ち、2004年には「同性パートナー」に異性配偶者と同等の法令上の権利を認める「シビル・パートナー制度」が導入されるなど、LGBTに対する社会制度の整備は日本よりかなり先行していると言える。
こうした中、英国では、公的遺族年金については異性配偶者同様、同性パートナーにも受給権が認められている。一方、企業の遺族年金の需給については会社によって異なるのが現状となっている。ただ、英国では現在7割を超える企業が、シビル・パートナー制度導入以前に事実上の同性婚をしていたと認められる場合にはその期間も婚姻期間とみなし、企業の遺族年金額を算出するよう制度の改訂を進めているという。ちなみに、日本では公的遺族年金、企業の遺族年金ともに同性パートナーが受給することは認められていない。
遺族年金 : 従業員が死亡した際にその配偶者等が受給する年金。■
医療保険に関してはさらに先進的だ。例えば英大手銀行のロイズや米大手銀行メリルリンチの英国現地法人では、性転換に要する費用も企業の医療保険の対象としている。また、企業の医療保険の対象にホルモン治療、メンタルヘルスに関するカウンセリングなどを含めることを検討している企業もある。
このように、英国企業においては、年金や健康保険分野でLGBTへの対応が進んでいる一方で、福利厚生分野では、同性パートナーの権利をいまだ明確にできていない企業が少なくないようだ。その背景には、LGBTの従業員が、自分がLGBTであることを職場内に知られることを危惧し、福利厚生制度の利用を躊躇するといったこともある。こうした問題を解決するため、英国企業の中には、全従業員を対象にLGBTに関する講座(eラーニング)を受講させたり、LGBT関係のイベントに参加させたりするなど、LGBTに対する従業員の理解促進に取り組むところが増加している。
日本企業におけるLGBTへの対応はまだ始まったばかりであり、また、法制面の整備が追いついていない(例えば同性婚が合法化されていない)こともあり、今すぐ英国企業のようにはいかないだろうが、 “LGBTフレンドリー”な企業とのイメージは、消費者や取引先、さらに入社希望者等に「先進的な企業」「人道的な企業」といったポジティブな印象を与え、結果として売上のアップや入社希望者の増加等につながる可能性があると言われる。日本企業としても、海外の先進的な取組みを参考に、LGBT対応を進めていきたいところだ。
