2016/10/03 取締役会評価を巡る日英のギャップ

取締役会の実効性評価を求めるコーポレートガバナンス・コードの補充原則4-11③をコンプライ(実施)する割合が上昇している。東証の調査(5ページ参照)によると同原則のコンプライ率は、昨年12月には36%だったが、今年7月においては55%となっている。もともと取締役会評価は日本企業には馴染みのないプラクティスで、必然的にエクスプレインが多く、またコンプライでも決して内実が伴ったものばかりではなかったのが実態だが、コード適用開始から1年以上が経過し、各社の検討及び取り組みが進んでいる。ただ、依然として企業からは、「取締役会評価では何をどこまでやればよいのかよく分からない」という声が聞こえる。その大きな原因となっているのが、補充原則4-11③には「各取締役の自己評価なども参考にしつつ、取締役会全体の実効性について評価・分析すべき」としか書いていないことにある。

これに対し、日本のコーポレートガバナンス・コードが手本にした英国のコーポレートガバナンス・コードでは、取締役会評価に関する詳細な内容が以下のように示されている(金融庁による英国・コーポレート・ガバナンス・コード(仮訳)15ページ下部~16ページ中段より抜粋。なお、番号は便宜上筆者が付したもの)。

①取締役会の評価に当たっては、取締役会のスキル、経験、独立性と会社に関する知識のバランス、性別を含む多様性、取締役会がどのように一体的に機能したかや、有効性に関連するその他の要素を考慮すべきである。
②各取締役が、有効に貢献を重ねているか、職務に対するコミットメントを明らかにしているか(取締役会・委員会の会合への出席その他の責務に対する時間的なコミットメントを含む)を示すことを目的とすべき。
③非業務執行取締役は、筆頭独立取締役のもと、業務執行取締役の見解を考慮しつつ、取締役会議長のパフォーマンスを評価する責務を負うべき。

日本企業においても、差し当たり上記①は取締役会評価の内容に盛り込んでおきたい。というのも、・・・

このコンテンツは会員限定です。会員登録(有料)すると続きをお読みいただけます。

続きはこちら
まだログインがお済みでない場合はログイン画面に遷移します。
会員登録はこちらから

2016/10/03 取締役会評価を巡る日英のギャップ(会員限定)

取締役会の実効性評価を求めるコーポレートガバナンス・コードの補充原則4-11③をコンプライ(実施)する割合が上昇している。東証の調査(5ページ参照)によると同原則のコンプライ率は、昨年12月には36%だったが、今年7月においては55%となっている。もともと取締役会評価は日本企業には馴染みのないプラクティスで、必然的にエクスプレインが多く、またコンプライでも決して内実が伴ったものばかりではなかったのが実態だが、コード適用開始から1年以上が経過し、各社の検討及び取り組みが進んでいる。ただ、依然として企業からは、「取締役会評価では何をどこまでやればよいのかよく分からない」という声が聞こえる。その大きな原因となっているのが、補充原則4-11③には「各取締役の自己評価なども参考にしつつ、取締役会全体の実効性について評価・分析すべき」としか書いていないことにある。

これに対し、日本のコーポレートガバナンス・コードが手本にした英国のコーポレートガバナンス・コードでは、取締役会評価に関する詳細な内容が以下のように示されている(金融庁による英国・コーポレート・ガバナンス・コード(仮訳)15ページ下部~16ページ中段より抜粋。なお、番号は便宜上筆者が付したもの)。

①取締役会の評価に当たっては、取締役会のスキル、経験、独立性と会社に関する知識のバランス、性別を含む多様性、取締役会がどのように一体的に機能したかや、有効性に関連するその他の要素を考慮すべきである。
②各取締役が、有効に貢献を重ねているか、職務に対するコミットメントを明らかにしているか(取締役会・委員会の会合への出席その他の責務に対する時間的なコミットメントを含む)を示すことを目的とすべき。
③非業務執行取締役は、筆頭独立取締役のもと、業務執行取締役の見解を考慮しつつ、取締役会議長のパフォーマンスを評価する責務を負うべき。

日本企業においても、差し当たり上記①は取締役会評価の内容に盛り込んでおきたい。というのも、コーポレートガバナンス・コードの基本原則4が取締役会に求めている役割・責務(戦略的な方向付け、リスクテイクを支える環境整備、実効性の高い監督)を実現するためには、取締役会が十分なスキル、経験、独立性、知識のバランス、多様性等を持っているかをチェックすることが有効だと考えられるからだ。これらに加え、「有効性に関連するその他の要素」としては、資料の配布時期や審議時間、適切な情報入手の体制などを加えればよいだろう。

一方、②取締役個人の評価、③取締役会議長の評価については、大部分の日本企業においては時期尚早ではないだろうか。英国のコーポレートガバナンス・コードが②③を取締役会評価に求めている前提として、同国企業の取締役会が「モニタリング・ボード」、すなわち「監督」に特化した機関であるということがある。この前提の下、取締役会メンバーには(執行との兼務はあっても、原則として)業務執行の「監督」に徹することが要求され、そのトップである取締役会議長には、企業の監督機能を最適化する重要なミッションが課せられている。

これに対し日本企業の取締役会の大部分は「マネジメント・ボード」、すなわち「業務執行におけるコンセンサスを形成する場」となっている。取締役会メンバーの8~9割は業務執行取締役で占められ、議長は業務執行の最高責任者である社長が務めるのが典型的なパターンである。その主なミッションが「マネジメント」にあるにもかかわらず「監督機能」に対するコミットメントを求めるのは酷であり、また、齟齬や矛盾も生じることになるだろう。結論として、日本企業においては①に焦点を絞ればよいと考えられる。

このように「マネジメント・ボード」が前提となっている日本企業においては、各社ごとに望ましいモニタリング機能が備わっているかどうかについて、その有効性を取締役会全体に対して検証、評価するプラクティスを構築することが望ましいだろう。評価の結果としてモニタリング機能の強化が課題に挙げられ、さらにその延長線上で、モニタリング・ボードへの移行が俎上のぼるかもしれない。上記②取締役個人、③取締役会議長の評価については、その過程で検討すればよいだろう。

2016/09/30 【2016年9月の課題】パッシブ投資家への対応

2016年9月の課題

GPIFによる国内株式への投資拡大や、日銀によるETF(上場投資信託)の大量購入などに伴い、株式市場における公的資金の存在感が大きくなっています。公的資金が株式を買う場合、その多くはインデックスファンドなどと呼ばれる「パッシブ投資」を行うことになります。

では、パッシブ投資を行う投資家(パッシブ投資家)はどのような特徴を持ち、これに対し企業はどのような対応をとればよいのでしょうか。

貴方の考えを述べてください。

このコンテンツは会員限定です。会員登録(有料)すると続きをお読みいただけます。

模範解答を見る
まだログインがお済みでない場合はログイン画面に遷移します。
会員登録はこちらから

2016/09/30 2016年9月度チェックテスト

解答をご覧になるには会員登録(※有料)が必要です。会員登録はこちら

結果がマイ研修レポートへ反映される期限は10月10日です。

【問題1】

EU域内における事業の年間売上高が3600万ユーロを超えれば、Modern Slavery Act 2015に基づく年次声明の公表が必要となる。


正しい
間違い
【問題2】

任意の指名委員会を透明性の高いものとするためには、委員長に自社の社長が就任すべきである。


正しい
間違い
【問題3】

総還元性向とは、企業が利益をどの程度株主に還元しているかを示す指標で、「(配当金+自社株買いの金額)÷当期純利益」によって計算される。


正しい
間違い
【問題4】

取締役が善管注意義務違反に問われるのは、取締役自身の業務執行に関する判断に誤りがあった場合に限られる。


正しい
間違い
【問題5】

我が国では、会社法上、リストリクテッド・ストックは労務出資の一形態として位置付けられている。


正しい
間違い
【問題6】

米国には「空売りのポジションを取った後に不正会計の存在を主張するレポートを公表する」という手法でキャピタルゲインを得ようとするファンドがあるが、現在のところ日本企業がターゲットとなったケースはない。


正しい
間違い
【問題7】

政府が予定している成年年齢を18歳に引き下げる民法改正案が実現すると、消費者被害の増加が懸念される。


正しい
間違い
【問題8】

ルノーの株主総会では、過半数の株主が反対票を投じたにもかかわらず予定通りの報酬額が役員に支払われた。


正しい
間違い
【問題9】

機関投資家が議決権行使に際してISSの基準よりも厳格なスタンスで臨むことはない。


正しい
間違い
【問題10】

繰延税金資産を積み増せば、税引後の「当期純利益」は減る。


正しい
間違い

2016/09/30 2016年9月度チェックテスト第10問解答画面(不正解)

不正解です。
繰延税金資産を積み増せば、税引前利益から控除される「法人税等」の金額が減り、税引後の「当期純利益」は増えることになります。問題文の『税引後の「当期純利益」は減る』は誤りです。

こちらの記事で再確認!
2016/09/29 新基準の適用で繰延税金資産増加企業は88社、最大152億円(会員限定)

2016/09/30 2016年9月度チェックテスト第10問解答画面(正解)

正解です。
繰延税金資産を積み増せば、税引前利益から控除される「法人税等」の金額が減り、税引後の「当期純利益」は増えることになります。問題文の『税引後の「当期純利益」は減る』は誤りです。

こちらの記事で再確認!
2016/09/29 新基準の適用で繰延税金資産増加企業は88社、最大152億円(会員限定)

2016/09/30 2016年9月度チェックテスト第9問解答画面(不正解)

不正解です。
国内外の機関投資家が議決権行使のスタンスを厳格化してます。2016年6月の株主総会シーズンでは、議決権行使厳格化の実例として、例えば以下のような議案に対し反対票が投じられたケースが見受けられました。
・独立社外取締役が2名いない経営トップの選任議案
・社外取締役が3分の1いない経営トップの選任議案
・在任期間が10年を超える社外取締役の選任議案
・剰余金処分の権限を取締役会に授権する定款変更議案
・非執行取締役を対象とするストックオプションの付与議案
いずれもISS基準よりも厳しいスタンスであり、上場会社としてはもはやISS基準さえ満たしておけば大丈夫とは言えないことを肝に銘じておくべきです。

こちらの記事で再確認!
2016/09/27 ISS等より厳しい議決権行使基準への対応策(会員限定)

2016/09/30 2016年9月度チェックテスト第9問解答画面(正解)

正解です。
国内外の機関投資家が議決権行使のスタンスを厳格化してます。2016年6月の株主総会シーズンでは、議決権行使厳格化の実例として、例えば以下のような議案に対し反対票が投じられたケースが見受けられました。
・独立社外取締役が2名いない経営トップの選任議案
・社外取締役が3分の1いない経営トップの選任議案
・在任期間が10年を超える社外取締役の選任議案
・剰余金処分の権限を取締役会に授権する定款変更議案
・非執行取締役を対象とするストックオプションの付与議案
いずれもISS基準よりも厳しいスタンスであり、上場会社としてはもはやISS基準さえ満たしておけば大丈夫とは言えないことを肝に銘じておくべきです。

こちらの記事で再確認!
2016/09/27 ISS等より厳しい議決権行使基準への対応策(会員限定)

2016/09/30 2016年9月度チェックテスト第8問解答画面(正解)

正解です。
2016年4月に開催されたルノーの株主総会で過半数の株主が反対票を投じたにもかかわらず、予定通りの報酬額が役員に支払われたことが話題になりました(問題文は正しいです)。このようにルノーで株主の意思が覆される事態になったのは、フランスの商法では取締役会に役員の変動報酬の決定権限がある(株主の投票結果には拘束されない)とされているのが原因でした。フランスでは、このルノーでの騒動が発端となり、役員報酬のうち業績連動部分まで含めて株主総会の決議事項とする商法改正案が可決されることになりました。

こちらの記事で再確認!
2016/09/23 役員報酬総額に対する規制の世界的トレンド(会員限定)

2016/09/30 2016年9月度チェックテスト第8問解答画面(不正解)

不正解です。
2016年4月に開催されたルノーの株主総会で過半数の株主が反対票を投じたにもかかわらず、予定通りの報酬額が役員に支払われたことが話題になりました(問題文は正しいです)。このようにルノーで株主の意思が覆される事態になったのは、フランスの商法では取締役会に役員の変動報酬の決定権限がある(株主の投票結果には拘束されない)とされているのが原因でした。フランスでは、このルノーでの騒動が発端となり、役員報酬のうち業績連動部分まで含めて株主総会の決議事項とする商法改正案が可決されることになりました。

こちらの記事で再確認!
2016/09/23 役員報酬総額に対する規制の世界的トレンド(会員限定)