2016/08/29 社外取に付与も リストリクテッド・ストックの導入事例

「攻めの経営」を促す役員報酬として鳴り物入りで導入されたリストリクテッド・ストック(譲渡制限付株式報酬)だが(2016年3月2日のニュース「パフォーマンス・シェアの性格を持つ株式報酬も損金算入される方向」他参照)、上場企業での導入はあまり進んでいない。その大きな原因になっていたとみられるのが「開示」だ。リストリクテッド・ストックを付与した場合、「企業内容等の開示に関する内閣府令」により、第三者割当の一種として、付与内容の詳細を「第三者割当の場合の特記事項」に記載しなければならなかった(特に企業が嫌がっていたのは、割当予定先である役員等の一人ひとりの金銭債権額の開示により、「現物出資される金銭債権(報酬)の額」や「各人の差」が露わになってしまうことや割当予定先である役員等の住所が開示されてしまうことであった)。ただ、リストリクテッド・ストックはあくまで役員等に対する報酬の一種であることから、上記内閣府令は8月19日付で改正され、ストックオプションと同様にリストリクテッド・ストックも「第三者割当」の定義から除外されている。付与内容の開示が不要となったことで、今後リストリクテッド・ストックの導入を検討する企業は増えていくだろう。

リストリクテッド・ストック : 一定期間の譲渡制限が付された株式報酬
第三者割当 : 株主であるか否かを問わず、「特定の第三者」に対して新株を割り当てる方法による増資のこと。「特定の第三者」は、親会社、金融機関、業務提携先、自社の従業員などの“縁故者”である場合が多い。このため「縁故募集」とも言われる。経営状態が悪く、公募増資ができない場合の会社再建に利用されることも少なくない。また、業務提携先との資本提携や関係強化にも利用される。払込金額は時価より多少低めとなるのが一般的。
住所の開示 : 割当予定先が個人の場合、住所は市町村(政令指定都市にあっては区)程度の記載で差し支えない(市区町村より下の住所は開示しなくてよい)とされているが、実際には市区町村名の開示すら嫌がる者も少なくない。

検討にあたって参考になるのが、既にリストリクテッド・ストックを導入した企業の事例だ。同じリストリクテッド・ストックであっても、その内容は各社によって微妙に異なる。適時開示された各社のリストリクテッド・ストックの内容は下表のとおりだ。・・・

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2016/08/29 社外取に付与も リストリクテッド・ストックの導入事例(会員限定)

「攻めの経営」を促す役員報酬として鳴り物入りで導入されたリストリクテッド・ストック(譲渡制限付株式報酬)だが(2016年3月2日のニュース「パフォーマンス・シェアの性格を持つ株式報酬も損金算入される方向」他参照)、上場企業での導入はあまり進んでいない。その大きな原因になっていたとみられるのが「開示」だ。リストリクテッド・ストックを付与した場合、「企業内容等の開示に関する内閣府令」により、第三者割当の一種として、付与内容の詳細を「第三者割当の場合の特記事項」に記載しなければならなかった(特に企業が嫌がっていたのは、割当予定先である役員等の一人ひとりの金銭債権額の開示により、「現物出資される金銭債権(報酬)の額」や「各人の差」が露わになってしまうことや割当予定先である役員等の住所が開示されてしまうことであった)。ただ、リストリクテッド・ストックはあくまで役員等に対する報酬の一種であることから、上記内閣府令は8月19日付で改正され、ストックオプションと同様にリストリクテッド・ストックも「第三者割当」の定義から除外されている。付与内容の開示が不要となったことで、今後リストリクテッド・ストックの導入を検討する企業は増えていくだろう。

リストリクテッド・ストック : 一定期間の譲渡制限が付された株式報酬
第三者割当 : 株主であるか否かを問わず、「特定の第三者」に対して新株を割り当てる方法による増資のこと。「特定の第三者」は、親会社、金融機関、業務提携先、自社の従業員などの“縁故者”である場合が多い。このため「縁故募集」とも言われる。経営状態が悪く、公募増資ができない場合の会社再建に利用されることも少なくない。また、業務提携先との資本提携や関係強化にも利用される。払込金額は時価より多少低めとなるのが一般的。
住所の開示 : 割当予定先が個人の場合、住所は市町村(政令指定都市にあっては区)程度の記載で差し支えない(区より下の住所は開示しな
くてよい)とされているが、実際には市区町村名の開示すら嫌がる者も少なくない。

検討にあたって参考になるのが、既にリストリクテッド・ストックを導入した企業の事例だ。同じリストリクテッド・ストックであっても、その内容は各社によって微妙に異なる。適時開示された各社のリストリクテッド・ストックの内容は下表のとおりだ。

  横河電機 三菱地所 ネクストジェン フォーバル 市川工業
①割当対象者 社外取締役以外の取締役 取締役及び執行役(社外取締役を除く) 取締役(監査等委員、社外取締役除く) 取締役(監査等委員、代表取締役会長を除く) 取締役(独立社外取締役2名を含みその他の社外取締役を除く)、執行役員
②譲渡制限
期間
1〜5年 3年 3年 10年 2年
③業績条件を
付しているか
④業績条件の
内容
ROE、中長期経営計画の達成度 3年間の株主総利回りの目標の達成

①の割当対象者でまず目に付くのは、市川工業が「独立社外取締役」も割当対象としている点だ。社外取締役にインセンティブ報酬を付与することについては賛否があるだけに(2015年3月9日のニュース「社外取締役に対するインセンティブ報酬付与の是非」参照)、市光工業の決断は注目に値する。

②の譲渡制限期間については、「1年~10年」と幅が出た。譲渡制限期間があまりに長いと中途での退職等が気になるところだが、10年に設定したフォーバルは、譲渡対象制限期間内に対象者が任期満了等により退職した場合には以下の対応をとることとしている。

対象取締役が、当社または当社の子会社の取締役、執行役員または使用人のいずれの地位からも、定年その他正当な理由により退任または退職した場合若しくは死亡により退任または退職した場合は、払込期日を含む月から当該退任または退職した日を含む月までの月数を60で除した数(ただし、計算の結果1を超える場合には1とする。)に、割当株式数を乗じた数(ただし、計算の結果1株未満の端数が生ずる場合には、これを切り捨てる。)について、譲渡制限を解除する。

これを算式で表すと以下のとおりとなる。
22054

ポイントは分母が「60」となっている点。これは、払込期日を含む月から当該退任または退職した日を含む月までの月数が60、つまり5年勤務していれば、割り当てられた株式すべての譲渡制限が解除されることを意味している。

ここで気になるのは法人税法上の取り扱いだ。法人税法上、役員報酬を損金算入するためには、役員報酬が「定期同額給与」「事前確定届出給与」「利益連動給与」のいずれかに該当する必要があるが、平成28年度税制改正では、リストリクテッド・ストックは「事前確定届出給与」として損金算入されるとされたところ(2015年12月22日のニュース「パフォーマンス・シェア、日本では普及しない恐れ」参照)。退職時期によって手にする報酬額が異なるとなれば、報酬が「事前に確定している」とは言えないため、損金不算入となる恐れがあるようにも見える。ただ、法人税法では、「事前確定届出給与」となるリストリクテッド・ストックに該当するための要件の1つとして、「役員等に付与した株式を”没収”する理由を定めていること」を挙げている(法人税法施行令111条の2第2項二号。正確には「法人がその株式を無償で取得することとなる事由が定められていること」と規定されている)。具体的な理由としては、①譲渡制限期間内の所定の期間勤務を継続しないこと、②勤務実績が良好でないこと、③法人の業績があらかじめ定めた基準に達しないことーーなどが列挙されている。フォーバルが譲渡制限の解除理由に挙げる「定年その他正当な理由により退任または退職した場合若しくは死亡により退任または退職した場合は」ケースは①の「譲渡制限期間内の所定の期間勤務を継続しないこと」に該当する可能性がありそうだ(その場合、同社のリストリクテッド・ストックは損金算入される)。

定期同額給与 : 役員給与の支給時期が1か月以下の一定の期間ごとで、かつ、当該事業年度の各支給時期における支給額が同額であるもの
事前確定届出給与 : いつ、いくら(確定額)を支給する」旨を“事前に”確定した上で税務署に届け出をし、それに基づいて支給するもの
利益連動給与 : その事業年度の利益に関する指標に基づく「あらかじめ定められた方法」により決定されるもの

③の譲渡制限の解除の要件として業績条件を付したのが横河電機と三菱地所の2社だけにとどまった点も目に付く。業績動向によって報酬額が異なるとなれば、やはり「事前確定届出給与」とは言えないようにも見えるが、業績条件は上述の③「法人の業績があらかじめ定めた基準に達しないこと」という解除要件に該当するため、税務上も「事前確定届出給与」として取り扱われることになる。リストリクテッド・ストックに業績要件を入れることを見送った企業は、業績条件を例えば利益連動賞与など他の役員報酬に課すなどして、各報酬の棲み分けを図ったということも考えらる。

今後リストリクテッド・ストックの導入が本格化するとともに、事例も積み上がっていくことになる。どのようなタイプのリストリクテッド・ストックが日本企業のスタンダードとなるのか、注目される。

2016/08/26 経産省・長期投資(ESG・無形資産)研究会の趣旨は?

経済産業省にまた新たにガバナンス関係の研究会が立ちあがった。

同省は先月(2016年7月)1日から「CGS研究会」(コーポレート・ガバナンス・システム研究会)をスタートさせたところだが(2016年6月29日のニュース「経産省がガバナンスの新研究会立ち上げ、議論の方向性は?」参照)、8月24日には「持続的成長に向けた長期投資(ESG・無形資産投資)研究会」(座長、伊藤邦夫一橋大学大学院商学研究科特任教授)を設置し、第1回目の研究会を今週水曜日(8月24日)に開催している。

本研究会では、「日本再興戦略2016」に盛り込まれた「投資の最適化等を促す政策対応」について年度内に結論を出す旨の方針(147ページ下から4行目以降参照)を受け、下記の事項を議論のテーマにするという。

・持続的な価値創造につながる投資(無形資産等)のあり方
・企業における長期投資の判断、評価(ESG 投資等)のあり方。価値創造につながる投資(無形資産等)促進に向けた課題や方策
・投資家が、中長期的な企業価値を判断する視点や評価のあり方。そのために必要な情報や対話のあり方。そのような長期投資を促進するための課題や方策
・企業と投資家の行動や対話やコミュニケーションのあり方
・上記を踏まえた環境整備等、政策対応の方向性等

一見しただけではどのような趣旨の研究会なのか見えにくいかも知れないが、「長期投資(ESG・無形資産)研究会」という名称からも分かるように、一言で言うと、国内外の機関投資家から日本企業への長期投資を促していくというのが本研究会の最大の目的ということになる。

無形資産 : 人材や研究開発、知識・ノウハウ、ブランド等

最近は日本企業も財務面だけではなくESGの観点からも評価・格付けされるようになっているが(2016年8月5日のニュース「自社の「ESG格付け」を知ってますか?」参照)、その評価は高いとは言えないのが現状だ。こうした中、本研究会では、企業がESG投資のあり方や、「無形資産投資」と「有形資産投資」の配分・投資戦略などを検討する上で参考になるよう、・・・

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2016/08/26 経産省・長期投資(ESG・無形資産)研究会の趣旨は?(会員限定)

経済産業省にまた新たにガバナンス関係の研究会が立ちあがった。

同省は先月(2016年7月)1日から「CGS研究会」(コーポレート・ガバナンス・システム研究会)をスタートさせたところだが(2016年6月29日のニュース「経産省がガバナンスの新研究会立ち上げ、議論の方向性は?」参照)、8月24日には「持続的成長に向けた長期投資(ESG・無形資産投資)研究会」(座長、伊藤邦夫一橋大学大学院商学研究科特任教授)を設置し、第1回目の研究会を今週水曜日(8月24日)に開催している。

本研究会では、「日本再興戦略2016」に盛り込まれた「投資の最適化等を促す政策対応」について年度内に結論を出す旨の方針(147ページ下から4行目以降参照)を受け、下記の事項を議論のテーマにするという。

・持続的な価値創造につながる投資(無形資産等)のあり方
・企業における長期投資の判断、評価(ESG 投資等)のあり方。価値創造につながる投資(無形資産等)促進に向けた課題や方策
・投資家が、中長期的な企業価値を判断する視点や評価のあり方。そのために必要な情報や対話のあり方。そのような長期投資を促進するための課題や方策
・企業と投資家の行動や対話やコミュニケーションのあり方
・上記を踏まえた環境整備等、政策対応の方向性等

一見しただけではどのような趣旨の研究会なのか見えにくいかも知れないが、「長期投資(ESG・無形資産)研究会」という名称からも分かるように、一言で言うと、国内外の機関投資家から日本企業への長期投資を促していくというのが本研究会の最大の目的ということになる。

無形資産 : 人材や研究開発、知識・ノウハウ、ブランド等

最近は日本企業も財務面だけではなくESGの観点からも評価・格付けされるようになっているが(2016年8月5日のニュース「自社の「ESG格付け」を知ってますか?」参照)、その評価は高いとは言えないのが現状だ。こうした中、本研究会では、企業がESGへの取組みや、「無形資産投資」と「有形資産投資」の配分・投資戦略などを検討する上で参考になるよう、これらに関する投資家の目線が整理されるという。本研究会は年度末にも議論をとりまとめたアウトプットを出すことになるが、その主な内容は、「投資家が評価するESGへの取組み・無形資産投資とはどのようなものか」といったものになるとみられる。もっとも、機関投資家がこれらを評価するためには、企業からの(財務情報以外の)情報提供が欠かせない。研究会の委員にIIRC(国際統合報告評議会=International Integrated Reporting Council)の理事である小林いずみ氏が入っていることからも分かるように、統合報告のあり方も議論の対象となろう。

IIRC : 国際的に合意された統合報告のフレームワークを構築するため、2010年8月に設立された英国を拠点とする民間の非営利法人。規制当局、投資家、企業、会計の専門家、NGOにより構成される国際的な連合組織である。また、IFAC(国際会計士連盟)、IASB(国際会計基準審議会)などとも協力関係にある。

なお、アウトプットの形式は、「報告書」ではなく「ガイドライン」という形になる可能性もある模様(現時点では未定)。本研究会では「伊藤レポート」を主導した伊藤教授を座長に据えていることから、企業側からは「伊藤レポートの実質的な改訂では?」といった声も聞こえてくるが、伊藤レポートとは関係ないことが当フォーラムの取材で確認されている。

2016/08/25 (新用語・難解用語)コングロマリット・ディスカウント

コングロマリット(conglomerate)とは、異なる分野の事業を複数同時進行で営む企業(「複合企業」とも呼ばれる)のことを指す。原子力、航空機エンジン、医療機器、家電製品、金融事業などを行うGE(ゼネラル・エレクトリック)社は世界最大のコングロマリットとされる。また、それぞれ銀行、証券、保険などの業務を行う子会社を持株会社の傘下に持つ金融グループもコングロマリット(金融コングロマリット)の1つである。

コングロマリットには、経営資源を複数の事業に分散して投下することでリスクを低減するというメリットがある一方で、好調な事業と不振な事業が共存する場合、不振事業に足を引っ張られる形で、好調な事業の業績等が当該企業の株価に十分反映されず、株価が割安(ディスカウント)になりかねないというデメリットがある。このデメリットの方が「コングロマリット・ディスカウント」である。

コングロマリット・ディスカウントを解消したいというニーズは企業側にも株主側にもある。具体的な手法としては、下図のように、好調な事業(青色の四角部分)と不振な事業(ピンク色の四角部分)を切り離して別会社とする、あるいは親子関係を解消することが考えられるが、この場合にネックとなるのが税負担だ。

図1:GOOD事業とBAD事業の会社分割
21928_1
図2:子会社株式の現物配当
21928_2

組織再編には資産の移転が伴う。例えば図1では、元々あった会社(GOOD事業とBAD事業を持つ会社)が、新たに設立されたBAD会社に対しBAD事業を移転したことになる。法人税法では、こうした資産の移転は基本的に課税対象(資産の取得価額よりも移転価額が高ければ、その差額が課税対象となる)とするという考え方をとっている。ただ、組織再編のたびに税金がかかるとなると、企業が必要な組織再編を躊躇してしまう可能性があることから、法人税法では「組織再編税制」という制度を設け、100%グループ内の組織再編や、共同事業を行うための組織再編であれば、資産の移転に課税を行わないことにしている。

ただ、上図の組織再編は、組織再編後に会社同士の資本関係がなくなるため「100%グループ内の組織再編」にも該当しなければ、元々異なる分野の事業を行っている以上「共同事業を行うための組織再編」にも該当しえない。つまり、現状では課税が避けられないということだ。

こうした中、これから政府内で始まる平成29年度税制改正を巡る議論では、・・・

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2016/08/25 (新用語・難解用語)コングロマリット・ディスカウント(会員限定)

コングロマリット(conglomerate)とは、異なる分野の事業を複数同時進行で営む企業(「複合企業」とも呼ばれる)のことを指す。原子力、航空機エンジン、医療機器、家電製品、金融事業などを行うGE(ゼネラル・エレクトリック)社は世界最大のコングロマリットとされる。また、それぞれ銀行、証券、保険などの業務を行う子会社を持株会社の傘下に持つ金融グループもコングロマリット(金融コングロマリット)の1つである。

コングロマリットには、経営資源を複数の事業に分散して投下することでリスクを低減するというメリットがある一方で、好調な事業と不振な事業が共存する場合、不振事業に足を引っ張られる形で、好調な事業の業績等が当該企業の株価に十分反映されず、株価が割安(ディスカウント)になりかねないというデメリットがある。このデメリットの方が「コングロマリット・ディスカウント」である。

コングロマリット・ディスカウントを解消したいというニーズは企業側にも株主側にもある。具体的な手法としては、下図のように、好調な事業(青色の四角部分)と不振な事業(ピンク色の四角部分)を切り離して別会社とする、あるいは親子関係を解消することが考えられるが、この場合にネックとなるのが税負担だ。

図1:GOOD事業とBAD事業の会社分割
21928_1
図2:子会社株式の現物配当
21928_2

組織再編には資産の移転が伴う。例えば図1では、元々あった会社(GOOD事業とBAD事業を持つ会社)が、新たに設立されたBAD会社に対しBAD事業を移転したことになる。法人税法では、こうした資産の移転は基本的に課税対象(資産の取得価額よりも移転価額が高ければ、その差額が課税対象となる)とするという考え方をとっている。ただ、組織再編のたびに税金がかかるとなると、企業が必要な組織再編を躊躇してしまう可能性があることから、法人税法では「組織再編税制」という制度を設け、100%グループ内の組織再編や、共同事業を行うための組織再編であれば、資産の移転に課税を行わないことにしている。

しかしながら、上図の組織再編は、組織再編後に会社同士の資本関係がなくなるため「100%グループ内の組織再編」にも該当しなければ、元々異なる分野の事業を行っている以上「共同事業を行うための組織再編」にも該当しえない。つまり、現状では課税が避けられないということだ。

こうした中、これから政府内で始まる平成29年度税制改正を巡る議論では、上図のような組織再編に対し課税を行わないこととする新たな制度として「スピンオフ税制」の創設が検討されることが当フォーラムの取材で判明している。

スピンオフ : 企業や組織の一部を分離し、別個の独立した企業や組織とすること。

上図のような組織再編は、会社側から見れば資産の「譲渡」に該当するとしても、株主の立場から見れば、持分に変化はない(図1のケースでは、株主Aと株主Bは引き続きGOOD事業(社)、BAD事業(社)に持分を有しており、図2のケースでも、両社の関係が縦の関係(親子関係)から横の関係(兄弟関係)に変わっただけで、持分は変わっていない)。この点からすると、これらの組織再編に課税を行わないとすることは理にかっているとも言える。

コングロマリット・ディスカウントに悩む企業としては、スピンオフ税制の導入議論の行方には注目しておきたい。なお、同税制が実現するか否かは、12月半ば頃に公表される平成29年度税制改正大綱で確定する。当フォーラムでは、何か動きがあり次第、続報したい。

2016/08/24 M&Aをした場合のD&O保険の引継ぎ

M&Aを経営戦略の柱に据える企業も多いが、M&Aにはどうしてもリスクが伴う。例えば被買収企業において、買収前に不祥事が発生していた(しかし発覚しなかった)ような場合だ。被買収企業の過去の不祥事によって買収企業にも損失が生じた場合、買収企業の役員が善管注意義務違反等により株主から責任を追及される可能性がある。

では、このような被買収企業の過去の不祥事をD&O保険でカバーすることは可能だろうか?買収により子会社化するケースと吸収合併するケースそれぞれについて見てみよう。

まず買収により子会社化するケースだが、買収企業をA社、被買収企業をB社とすると、通常、B社を買収した時点でB社はA社のD&O保険の対象に追加されることになる(コスト削減から、それまでB社が加入していたD&O保険は「解約する」のが一般的)。このような場合、買収前のB社において生じた事由による損害賠償責任をA社のD&O保険の補償範囲とするには、保険会社との交渉による“個別対応”が必要になる。追加保険料の支払いは必要になるものの、これを補償対象としている保険会社は存在している。ただ、このような対応が可能であることを知らない保険代理店も多く、“補償漏れ”が生じている企業も少なくないようなので要注意だ。

もっとも、・・・

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2016/08/24 M&Aをした場合のD&O保険の引継ぎ(会員限定)

M&Aを経営戦略の柱に据える企業も多いが、M&Aにはどうしてもリスクが伴う。例えば被買収企業において、買収前に不祥事が発生していた(しかし発覚しなかった)ような場合だ。被買収企業の過去の不祥事によって買収企業にも損失が生じた場合、買収企業の役員が善管注意義務違反等により株主から責任を追及される可能性がある。

では、このような被買収企業の過去の不祥事をD&O保険でカバーすることは可能だろうか?買収により子会社化するケースと吸収合併するケースそれぞれについて見てみよう。

まず買収により子会社化するケースだが、買収企業をA社、被買収企業をB社とすると、通常、B社を買収した時点でB社はA社のD&O保険の対象に追加されることになる(コスト削減から、それまでB社が加入していたD&O保険は「解約する」のが一般的)。このような場合、買収前のB社において生じた事由による損害賠償責任をA社のD&O保険の補償範囲とするには、保険会社との交渉による“個別対応”が必要になる。追加保険料の支払いは必要になるものの、これを補償対象としている保険会社は存在している。ただ、このような対応が可能であることを知らない保険代理店も多く、“補償漏れ”が生じている企業も少なくないようなので要注意だ。

もっとも、買収時点で既にB社に不祥事が発生している場合や、B社が今後不祥事につながりかねない問題を抱えているような場合には、保険会社がこうした個別対応を拒否する可能性もある。

次に吸収合併(A社がB社を合併したとする)のケースでは、B社は合併により消滅するため、B社のD&O保険は解約されるのが通常だ。ただし、B社が消滅したからと言って、B社の元役員のリスクがなくなるわけではない。取締役の会社に対する損害賠償責任は、損害発生のときから10年間とされているため(民法167条1項)、この期間を考慮して、消滅から10年間分の補償を一括で購入することもできる。また、B社の過去(合併前)の不祥事によってA社に損失が生じ、A社の役員が善管注意義務等で損害賠償責任追及された場合、これはA社のD&O保険でカバーされることになる。

2016/08/24 マイ研修レポートをリリースしました。

上場会社役員ガバナンスフォーラムでは、ニュース等の閲覧履歴やチェックテストの成績等を月次で管理できる「マイ研修レポート」(サンプルはこちら)をリリースしました。

■役員トレーニングに最適!
上場会社役員ガバナンスフォーラムの会員向けコンテンツは、コーポレートガバナンス・コードの原則4-14で上場会社に求められる「個々の取締役・監査役に適合したトレーニングの機会の提供」に最適のコンテンツです。そのコンテンツを閲覧した履歴が記録される「マイ研修レポート」をご利用いただくことで、トレーニング内容の記録および可視化が容易となります。また、ユーザー(会員)ごとにチェックテストの結果が保持されるため、トレーニング効果も測定できます。「マイ研修レポート」は、(ブラウザの印刷機能を用いて)プリントアウトすることで、社内手続き上必要となる閲覧証明書等としてもご利用できます。

■「マイ研修レポート」の出力方法
「マイ研修レポート」は、各会員様のマイページよりご覧いただけます。会員様であれば無料でご利用いただけます。
myreport

■「マイ研修レポート」の記載内容
「マイ研修レポート」には、下記の項目が記載されます。

・「ニュース」(新用語・難解用語も含む)の閲覧履歴
・「役員と会社の失敗学」の閲覧履歴
・「今月の課題」の閲覧履歴
・「役員会Good&Bad発言集」の閲覧履歴
・「Webセミナー」の閲覧履歴
・チェックテストの成績
・ケーススタディの閲覧履歴
・ケーススタディのミニテストの成績

■「マイ研修レポート」の生成タイミングと保存期間
「マイ研修レポート」は、会員のコンテンツ閲覧履歴等を反映して、ひと月を単位として自動で生成されます。「マイ研修レポート」のデータは対象月から1年間保持されるため、過去のレポートもマイページでご確認いただけます(対象月から1年を過ぎると消去されます)。

■「マイ研修レポート」への反映タイミング
下記の項目は、月末近くにアップされるコンテンツの閲覧可能期間を確保するため、翌月10日までに閲覧する分が当月分の閲覧履歴に反映されます(当月分翌月10日締め)。
・「ニュース」(新用語・難解用語も含む)の閲覧履歴
・「役員と会社の失敗学」の閲覧履歴
・「今月の課題」の閲覧履歴
・「役員会Good&Bad発言集」の閲覧履歴
・チェックテストの成績

下記の項目は、当月分のレポートに当月中の閲覧履歴およびテストの成績のみが反映されます(当月分当月末日締め)。
・「Webセミナー」の閲覧履歴(所感登録により「閲覧」と判定されます)
・ケーススタディの閲覧履歴(所感登録により「閲覧」と判定されます)
・ケーススタディのミニテストの成績

チェックテストおよびケーススタディのミニテストは、カンニング防止のため、仮に同一問題を解き直したとしても、初めて解いた際の結果のみレポートに反映される仕組みになっています。

■「マイ研修レポート」の仕様について
・プレリリース時の仕様は、予告なく変更される可能性がございます。
・マイ研修レポートのデータは、対象月の1年後には消去されます。また、当フォーラムは、対象月から1年を経過するまでデータを保持し続けることを保証しておりません。マイ研修レポートは入力後に印刷しておくことをお勧めします。

2016/08/23 高すぎるROEと低すぎるROE

多くの日本企業が、伊藤レポートの求める「8%」のROE達成に四苦八苦する中、アジアに目を向けると、驚くほど高いROEの企業が少なくない。例えば、シンガポールの通信大手 スターハブのROEは何と200%超にも及ぶ。このほか、韓国SKグループの持ち株会社であるSKは約70%、中国のインターネット検索エンジン市場で8割のシェアを誇る百度(バイドゥ)や台湾の大立光電(ラーガン・プレシジョン)も40%超となっている。

ROE : Return On Equity(自己資本利益率)=当期純利益÷自己資本

もっとも、投資家にとっては必ずしも「ROEが高い=企業価値が高い」ということにはならない。・・・

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