2016/08/23 高すぎるROEと低すぎるROE(会員限定)

多くの日本企業が、伊藤レポートの求める「8%」のROE達成に四苦八苦する中、アジアに目を向けると、驚くほど高いROEの企業が少なくない。例えば、シンガポールの通信大手 スターハブのROEは何と200%超にも及ぶ。このほか、韓国SKグループの持ち株会社であるSKは約70%、中国のインターネット検索エンジン市場で8割のシェアを誇る百度(バイドゥ)や台湾の大立光電(ラーガン・プレシジョン)も40%超となっている。

ROE : Return On Equity(自己資本利益率)=当期純利益÷自己資本

もっとも、投資家にとっては必ずしも「ROEが高い=企業価値が高い」ということにはならない。有利子負債(銀行借り入れや社債)により調達した資金で自己株式を取得(株主還元)すれば(=レバレッジを高めれば)自己資本は減少し、ROEは上昇するものの(自己資本の減少によりROEの計算式(当期純利益/自己資本(株主資本))中の分母が小さくなるため。詳細はROIC参照)、投資家にとっての企業価値とはあくまで「将来キャッシュフローの現在価値」であり、将来キャッシュフローが変化しない限り、企業価値も変化しないからだ。したがって、レバレッジを高めてROEを上げても、投資家が企業価値を高く評価することはない。

レバレッジ : 社債や借入金など負債による資金調達を増やして、純資産と負債のバランスを変え、株主に帰属する利益を増やすこと。負債により調達した資金を設備や子会社などへ投資に回すことによって、負債コストの増加分以上に利益が増えれば、株主の取り分を増やすことができる。自己株式取得により純資産を減らすことでも、純資産と負債のバランスが変わるため同じ効果が得られる。

そもそも、キャッシュフローが不安定な企業はレバレッジを効かせること自体避けるべきだろう。有利子負債の返済に窮し、倒産するリスクが高まるからだ。スターハブは単体で利益の大半を稼ぐ一方、連結では利益の伴わないグループ会社を抱えていることから(ROEの分母となる)自己資本が小さく見えるとともに、連結でのレバレッジも高くなっており、これが200%という驚異的なROEにつながっているものと考えられるが、高収益の通信事業を営む同社のキャッシュフローは安定しているだけにリスクは低い。

海外では“高すぎるROE”に対し、投資家が「レバレッジを高めすぎていないか」「そのROEの水準は持続可能なのか」といった観点からチェックを行う。一方、日本では、“低すぎるROE”に対し、投資家は「株主資本コストを意識しているのか」、言い換えれば「株主を無視したモラルハザードが発生していないか」という観点からをチェックを行っている。また、海外企業の経営者は自社のROEの高さをアピールする一方で、日本企業の経営者は「ROEを高め過ぎることの弊害」を説明している。このように、ROEに対する投資家と経営者のスタンスは日本と海外で真逆となっている。投資家が、海外での使われ方の方が健全と考えているのは言うまでもない。

2016/08/23 新コーナーとして、「機関投資家への質問・疑問」および 「税務リスク相談室」をオープンしました。

新コーナーとして、「機関投資家への質問・疑問」および「税務リスク相談室」をオープンしました。

「機関投資家への質問・疑問」は、匿名で機関投資家に質問・疑問を投げかけることができるコーナーです。
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「税務リスク相談室」は、課税リスクのある事案、税務調査で問題となりそうな事案・実際に問題となっている事案について、我が国を代表する税理士である朝長英樹税理士に相談できるコーナーです。
詳細はこちらをご覧ください。

2016/08/22 【WEBセミナー】CG報告書6月提出企業のコーポレートガバナンス・コード対応分析

概略

【セミナー開催日】2016年8月18日(木)

3月決算会社の大部分は、昨年(2015年)12月にコーポレートガバナンス・コードに対応したコーポレートガバナンス報告書(CG報告書)を初めて提出しましたが、それから約半年を経て、コーポレートガバナンス・コードへの対応方針を示した後初めての定時株主総会を迎える中、各社がコーポレートガバナンス・コードへの対応をいかに進めたのか、非常に注目されるところです。特に、取締役会評価をはじめ、エクスプレインが多かった原則に対して各社がどのように対応したのか、他社の動向は気になるところでしょう、
本セミナーでは、コーポレートガバナンス・コード対応コンサルティングを多数手掛けて来た三菱UFJ信託銀行法人コンサルティング部 会社法務コンサルティング室室長の中川雅博様をお招きし、各コードへの対応状況のデータを集計・分析していただくとともに、特徴的な記載や対応、今後のプラクティスの参考になる事例などを紹介・解説していただきます。

【講師】三菱UFJ信託銀行
    法人コンサルティング部
    会社法務コンサルティング室室長
    中川 雅博 様

セミナー資料 CG報告書6月提出企業のコーポレートガバナンス・コード対応分析.pdf(301KB)

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セミナー動画

動画(1)株主総会シーズンの論点-CGコード対応
21848a

動画(2)株主総会シーズンの論点-ISSポリシー、投資家との対話
21848b

動画(3)2016年の株主総会レビュー-株主総会前夜、議決権行使結果、経営トップの選任議案
21848c

動画(4)2016年の株主総会レビュー-、社外役員の選任議案、役員報酬の関連議案、会社支配権の関連議案
21848d

動画(5)個別の関連トピックス、まとめ
21848e

本Webセミナーを閲覧して感じたことや気付いた点(学んだ点、疑問点、自社の課題など)を下の右側の「感想の登録」ボタンを押してください。マイ研修レポートの所感等記入欄の書き直しもこちらからどうぞ。

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2016/08/22 【WEBセミナー】CG報告書6月提出企業のコーポレートガバナンス・コード対応分析(会員限定)

概略

【セミナー開催日】2016年8月18日(木)

3月決算会社の大部分は、昨年(2015年)12月にコーポレートガバナンス・コードに対応したコーポレートガバナンス報告書(CG報告書)を初めて提出しましたが、それから約半年を経て、コーポレートガバナンス・コードへの対応方針を示した後初めての定時株主総会を迎える中、各社がコーポレートガバナンス・コードへの対応をいかに進めたのか、非常に注目されるところです。特に、取締役会評価をはじめ、エクスプレインが多かった原則に対して各社がどのように対応したのか、他社の動向は気になるところでしょう、
本セミナーでは、コーポレートガバナンス・コード対応コンサルティングを多数手掛けて来た三菱UFJ信託銀行法人コンサルティング部 会社法務コンサルティング室室長の中川雅博様をお招きし、各コードへの対応状況のデータを集計・分析していただくとともに、特徴的な記載や対応、今後のプラクティスの参考になる事例などを紹介・解説していただきます。

【講師】三菱UFJ信託銀行
    法人コンサルティング部
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動画(1)Ⅰコーポレートガバナンスを巡る動き、Ⅱ6月総会を終えてのCGコード対応状況
1.市場別の提出状況~

動画(2)Ⅱ6月総会を終えてのCGコード対応状況
7.エクスプレインが相対的に多い各項目の説明内容(1)初年度の説明内容~

動画(3)Ⅱ6月総会を終えてのCGコード対応状況
7.(6)補充原則4-10①指名・報酬等独立社外取締役の関与~

動画(4)Ⅱ6月総会を終えてのCGコード対応状況
7.(9)補充原則4-1②中期経営計画に対するコミットメント~

動画(5)Ⅱ6月総会を終えてのCGコード対応状況
8.開示11原則の記載事例~

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2016/08/22 【WEBセミナー】2016年6月株主総会分析

概略

【セミナー開催日】2016年8月18日(木)

3月期決算会社にとって今年(2016年)6月の株主総会は、コーポレートガバナンス・コードへの対応を前提とする初めての株主総会となりました。先に株主総会を迎えた12~2月決算会社では、取締役会の大幅なスリム化を図った事例、「モニタリング・ボード」を明確に志向した事例など、自律的にガバナンスを改善する動きが見られた一方、監査等委員会設置会社への移行にファンドが反対した事例や、経営トップの交替に社外取締役が反対した事例など、ガバナンスのあり方が問われる事例も発生しています。また、6月総会を前に、リストリクテッド・ストックに関する制度整備、全国株懇連合会による実質株主の総会出席に関するガイドラインの整備という、従来の報酬慣行、株主総会慣行に変化を迫る施策も打ち出されています。これらの動きが、スチュワードシップ責任を負う機関投資家の総会前の対話姿勢や議決権行使にどのように反映されたのか、それに対し上場会社はどのように対応し、どのような取組みを進めたのか、注目されるところです。
本セミナーでは、上場会社の株主総会を長年ウォッチし続け、詳細かつ的確な分析に定評のあるEY総合研究所・未来経営研究部部長の藤島裕三様をお招きし、総会前のエンゲージメントの状況や総会における注目テーマへの賛否状況、賛成率が低かった原因、株主からの質問内容など、2016年6月株主総会を巡る動向を詳しく解説していただきます。

【講師】EY総合研究所
    未来経営研究部 
    部長 主席研究員
    藤島 裕三 様

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動画(1)株主総会シーズンの論点-CGコード対応
21833a

動画(2)株主総会シーズンの論点-ISSポリシー、投資家との対話
21833b

動画(3)2016年の株主総会レビュー-株主総会前夜、議決権行使結果、経営トップの選任議案
21833c

動画(4)2016年の株主総会レビュー-、社外役員の選任議案、役員報酬の関連議案、会社支配権の関連議案
21833d

動画(5)個別の関連トピックス、まとめ
21833e

2016/08/22 【WEBセミナー】2016年6月株主総会分析(会員限定)

概略

【セミナー開催日】2016年8月18日(木)

3月期決算会社にとって今年(2016年)6月の株主総会は、コーポレートガバナンス・コードへの対応を前提とする初めての株主総会となりました。先に株主総会を迎えた12~2月決算会社では、取締役会の大幅なスリム化を図った事例、「モニタリング・ボード」を明確に志向した事例など、自律的にガバナンスを改善する動きが見られた一方、監査等委員会設置会社への移行にファンドが反対した事例や、経営トップの交替に社外取締役が反対した事例など、ガバナンスのあり方が問われる事例も発生しています。また、6月総会を前に、リストリクテッド・ストックに関する制度整備、全国株懇連合会による実質株主の総会出席に関するガイドラインの整備という、従来の報酬慣行、株主総会慣行に変化を迫る施策も打ち出されています。これらの動きが、スチュワードシップ責任を負う機関投資家の総会前の対話姿勢や議決権行使にどのように反映されたのか、それに対し上場会社はどのように対応し、どのような取組みを進めたのか、注目されるところです。
本セミナーでは、上場会社の株主総会を長年ウォッチし続け、詳細かつ的確な分析に定評のあるEY総合研究所・未来経営研究部部長の藤島裕三様をお招きし、総会前のエンゲージメントの状況や総会における注目テーマへの賛否状況、賛成率が低かった原因、株主からの質問内容など、2016年6月株主総会を巡る動向を詳しく解説していただきます。

【講師】EY総合研究所
    未来経営研究部 
    部長 主席研究員
    藤島 裕三 様

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動画(1)株主総会シーズンの論点-CGコード対応

動画(2)株主総会シーズンの論点-ISSポリシー、投資家との対話

動画(3)2016年の株主総会レビュー-株主総会前夜、議決権行使結果、経営トップの選任議案

動画(4)2016年の株主総会レビュー-、社外役員の選任議案、役員報酬の関連議案、会社支配権の関連議案

動画(5)個別の関連トピックス、まとめ

2016/08/22 上場会社の子会社で発見された固定資産を巡る不正

内部監査で従業員等による不正が発見されることは珍しくないが、なかでも多いのが固定資産を巡る不正だ。固定資産という形のあるものは横領の対象になりやすいうえ、取得金額も大きいため”不正経理”にも利用しやすいからだろう。

ある上場会社の子会社で実際に発見された固定資産を巡る不正を紹介しよう。

1.事実と異なる廃棄稟議書
固定資産を実査(現物調査)したところ、固定資産台帳に記載されている一部の器具・備品(PC3台)が存在しなかった。管理者に理由を確認すると、・・・

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2016/08/22 上場会社の子会社で発見された固定資産を巡る不正(会員限定)

内部監査で従業員等による不正が発見されることは珍しくないが、なかでも多いのが固定資産を巡る不正だ。固定資産という形のあるものは横領の対象になりやすいうえ、取得金額も大きいため”不正経理”にも利用しやすいからだろう。

ある上場会社の子会社で実際に発見された固定資産を巡る不正を紹介しよう。

1.事実と異なる廃棄稟議書
固定資産を実査(現物調査)したところ、固定資産台帳に記載されている一部の器具・備品(PC3台)が存在しなかった。固定資産の管理者に理由を確認すると、「ロケーションの変更の際に行方不明になった」とのことであった。

行方不明になっていた器具・備品は、その後「廃棄稟議」の承認を受け、廃棄処理されていた。当該稟議書の内容を確認したところ、廃棄理由は「動作不具合箇所が修理不能であり、稼動できないため」となっていた。実際はロケーション変更時に行方不明になっただけにもかかわらず、固定資産の管理責任を問われることを恐れた管理者が、行方不明になった事実を隠ぺいするため、虚偽の理由で廃棄申請をしたとのことであった。内部規程上、廃棄稟議の承認に際しては「産廃業者の廃棄証明や廃棄時の写真」が必要になるところ、それがないにもかかわらず廃棄稟議が承認されていた。

このような内部統制環境を放置すれば資産の横領という不正にも繋がりかねないため、親会社として厳しい姿勢で改善(廃棄稟議の承認ルールの徹底)を要求することになった。

2.税負担の軽減を狙った経理処理
(1)固定資産として減価償却すべきものを一時の費用に

稟議書を査閲していたところ、社屋内のレイアウト変更工事(3百万円)に関する稟議書が目に留まった。

当該工事に関する書類一式を見たところ、パーテーション16枚の設置工事に2百万円、机・椅子の取得に1百万円を支出したことになっているが、固定資産台帳にはこれらの記載がなかった。

経理担当者に確認したところ、パーテーション1枚当たりの金額が10万円以下であったため、税務上の「即時償却の特例」の適用対象となると判断し、消耗品費として全額を費用(損金)処理したとのことであった。

即時償却の特例 : 取得価額が10万円未満の固定資産は、減価償却せず全額を一括で費用(損金)処理してよいとする税務上の特例。

しかし、パーテーションは数枚が組み合わされてはじめて機能するものであるため、少額減価償却資産に該当するかどうかは、全パーテーションの金額で判断する必要がある(詳細は国税庁の質疑応答事例参照)。この点を経理担当者に問いただすと、当期においては利益が出ていたことから、税負担を抑えるために、本来は(建物付属設備として)資産に計上し、毎期減価償却すべきものを一時の費用(損金)として処理していたことが判明した。

(2)費用の前倒し計上
また、他の稟議書には、期末月の最終週に消耗工具器具備品費(350万円)および備品(150万円)の支出を諮るものがあった。消耗工具器具備品費(350万円)の内容は机、椅子、ロッカー、キャビネットの取得費であり、備品(150万円)の内容はブラインドおよびロールスクリーンの設置工事費であったが、消耗工具器具備品費については全額が経費(損金)に計上されており、備品については固定資産として、1か月分の減価償却費が計上されていた。

しかし、期末日までにキャビネット等の搬入およびブラインド等の据付工事が完了したかどうかを確かめるため、購入先からの納品書および工事業者からの工事完了報告書を査閲したところ、一部は翌期の納品となっており、工事の完了は翌期であった。要するに、これも上記(1)同様、費用(損金)を多く計上し、税負担を軽減するための工作であった。

これら2件については、税務調査により「費用の前倒し計上」との指摘を受け、追徴税額という想定外の税金を支払うことになる可能性がある。

3.使用見込のない固定資産の取扱
次は中国子会社での事例である。

現地では「ハイテク企業」として認定されれば、法人税上の優遇措置が受けられることになっているが、その条件の1つに、「総資産に占める有形固定資産の割合が10%以上」というものがある。

中国子会社は、この要件を満たすため、使用されていない機械装置(PC、サーバー等のシステム機器)を除却処理せず、帳簿に残していた(当該機器は倉庫の中や部屋の片隅に置かれており、使用されている形跡は全くなかった)。

確かに、法人税上の優遇措置を受けることを狙ったその行為に一定の経済合理性はある。しかし、本来であれば除却すべき固定資産をそのまま貸借対照表に計上しておけば、貸借対照表の実態を歪めることになる。これは、企業のコンプライアンス上、望ましくない。

これらの不正は一般的に見られるものである。自社や自社の子会社で同様の不正が行われていないか、一度チェックしておきたいところだ。

2016/08/19 機関投資家から「E」と「S」に関する質問が少ない理由

このところ多くのアセットマネジメント会社が、ESG(E=環境、S=社会、G=コーポレートガバナンス)をメインストリーム(主流)ファンドに統合することを試みている。アセットマネジメント会社は、自社のアナリストやファンドマネージャー(ポートフォリオマネージャー)が、ESGに関する情報を積極的に収集・分析していることを強調する。

ところが、企業のCSR担当者に話を聞くと、たいてい「アナリストやファンドマネージャーから“E”と“S”に関する取材を受けたことはない」という答えが返ってくる。アセットマネジメント会社が、直接CSR担当者に取材するのではなく、IR担当者に質問を投げかけているということも考えられるが、複数のCSR担当者に確認しても、「IR担当者からそのような質問を受けたことはほとんどない」という。このような話を聞くと、果たして日本でESG投資がどこまで進んでいるのか、疑念が沸いてくる。

こうした状況の背景にあると考えられるのが、・・・

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2016/08/19 機関投資家から「E」と「S」に関する質問が少ない理由(会員限定)

このところ多くのアセットマネジメント会社が、ESG(E=環境、S=社会、G=コーポレートガバナンス)をメインストリーム(主流)ファンドに統合することを試みている。アセットマネジメント会社は、自社のアナリストやファンドマネージャー(ポートフォリオマネージャー)が、ESGに関する情報を積極的に収集・分析していることを強調する。

ところが、企業のCSR担当者に話を聞くと、たいてい「アナリストやファンドマネージャーから“E”と“S”に関する取材を受けたことはない」という答えが返ってくる。アセットマネジメント会社が、直接CSR担当者に取材するのではなく、IR担当者に質問を投げかけているということも考えられるが、複数のCSR担当者に確認しても、「IR担当者からそのような質問を受けたことはほとんどない」という。このような話を聞くと、果たして日本でESG投資がどこまで進んでいるのか、疑念が沸いてくる。

こうした状況の背景にあると考えられるのが、アナリストやファンドマネージャーがESG、特にEとSに関するリサーチを始めてからまだ時間が経っていないことによる、彼らの知識不足だ。人によって違いはあるが、多くの場合、彼らはコーポレートガバナンス(G)について一定の知識はあるが、E(環境)およびS(社会)については、これまであまり取り組んで来なかったため、「現在勉強中」というのが実情だ。その結果、企業に対しては主にコーポレートガバナンス(G)に関する質問が集中することになる。

企業においても、コーポレートガバナンスに関する情報はIR部門に蓄積されているため、これに関する質問には、わざわざCSR部門が出て来なくてもIR部門のみで対応となっている。ただ、今後、アナリストやファンドマネージャーにおいてE(環境)およびS(社会)について理解が進んでくれば、いよいよCSR部門の出番となるはずだ。

仮に今後1~2年経っても、CSR担当者がアナリストやファンドマネージャーからE(環境)やS(社会)についての質問を全く受けないようであれば、その時はアセットマネジメント会社におけるESGの取組みが滞っていると考えざるを得ないが、現状は決して「滞っている」わけではない。この状況は早晩解消し、日本におけるESG投資も本格的に幕を開けることになろう。