2016/06/17 社外役員引継ぎを株主総会前に行わない方がよい理由

2016年3月決算会社の株主総会が6月29日にピークを迎える(3月決算の東証全上場会社のうち32.2%に相当する759社がこの日に開催)。例年どおり、今年の株主総会でも多くの会社で新旧役員の交代が行われることになる。

会社法等の規定上、役員の任期は通常「株主総会が終了するとき」をもって終わるとされているため、新旧役員の任期が重複することはない。各社の慣例でも、旧役員は株主総会の日をもって“お役御免”となり、同日に送別会などが開かれて翌日からは出社しないというケースがよく見られる。そこで問題になるのが、「役員業務の引継ぎ」だ。

特に社外から新しい役員を迎える場合には引継ぎが必須となる。このため、旧役員の任期終了前の数日~1か月程度の間、新役員候補者に(会社との間で)「業務委託契約」や「顧問契約」等と締結した上で出社してもらい、引継ぎ業務を行っているという会社が少なくない。ただしこの場合、・・・

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2016/06/17 社外役員引継ぎを株主総会前に行わない方がよい理由(会員限定)

2016年3月決算会社の株主総会が6月29日にピークを迎える(3月決算の東証全上場会社のうち32.2%に相当する759社がこの日に開催)。例年どおり、今年の株主総会でも多くの会社で新旧役員の交代が行われることになる。

会社法等の規定上、役員の任期は通常「株主総会が終了するとき」をもって終わるとされているため、新旧役員の任期が重複することはない。各社の慣例でも、旧役員は株主総会の日をもって“お役御免”となり、同日に送別会などが開かれて翌日からは出社しないというケースがよく見られる。そこで問題になるのが、「役員業務の引継ぎ」だ。

特に社外から新しい役員を迎える場合には引継ぎが必須となる。このため、旧役員の任期終了前の数日~1か月程度の間、新役員候補者に(会社との間で)「業務委託契約」や「顧問契約」等と締結した上で出社してもらい、引継ぎ業務を行っているという会社が少なくない。ただしこの場合、会社法や証券取引所の有価証券上場規程に規定される「社外要件」に抵触する恐れがあるので注意する必要がある。

会社法や有価証券上場規程では、(独立)社外役員(社外取締役、社外監査役等)とは「過去10年間、その会社及び子会社等の役員等及び使用人でなかった者」とされている。これは、過去に取締役の管理下であった者は、社外役員として求められる客観的で独立した判断を行えなくなる可能性があるためだ。すなわち、役員就任以前に「取締役の指揮下」にいた者は社外性を失うと解釈されている。「指揮下にいた」かどうかの判定上、日数は関係ない。たとえ1日でもそのような状況にあれば、社外性を失うことになる。契約形態も問われない。名目・実質のいずれかにおいて指揮下に入っていれば、社外性を失うと考えられている。

会社法上、新役員候補者が社外役員候補者である場合には株主総会参考書類にその旨を記載しなければならない(会社法施行規則74条4項、同76条4項)。そして、監査役は株主総会議案について調査し、法令定款違反や著しく不当な事項を認めた場合には、その結果を株主総会に報告しなければならない(会社法384条)。ここでいう法令違反には、社外性がないのに「ある」と記載している場合も含まれると考えられる。そこで、新役員候補者が社外性を失っているにもかかわらず、“社外”役員候補者として株主総会参考書類に記載されていた場合、監査役は株主総会参考書類に虚偽記載があることを株主総会で報告しなければならないことになる。これは法令で定められた事項である以上、もし怠れば監査役は任務懈怠責任を問われかねない。

また、新役員の就任前に引継ぎを行う場合、「守秘義務」の問題も生じる。役員は業務上知り得た事項について守秘義務があるが、新役員候補者はあくまで「候補者」、言い換えれば「一般の人」にすぎず、守秘事項に該当する事項を(役員就任前に)知る権利を有していない。こうした中での引継ぎは、旧役員が自らの責任で守秘義務を順守しつつ行う必要があるが、現実には容易ではないだろうし、引継ぎが中途半端なものになる恐れもある 。

このような事態を避けるためには、役員の引継ぎは、新役員の就任後に旧役員が数日出社して行うのが最も安全であると考えられる。どうしても就任前の引継ぎが必要な場合には、名目・実質のいずれかにおいても「取締役の指揮下」に入っていないと言えるかどうか、また、守秘義務に抵触しいないかどうか、弁護士等に相談しておく必要があろう。

2016/06/16 (新用語・難解用語)ガバナンス・ロードショー

企業が、ガバナンスに対する考え方、取締役会の監督機能に対する考え方、それらと中長期的な価値創造のつながりなどについて、機関投資家にアピールするためのミーティング。シンプルに「ガバナンス・ミーティング」と呼ばれることもある。買収防衛策・・・

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2016/06/16 (新用語・難解用語)ガバナンス・ロードショー(会員限定)

企業が、ガバナンスに対する考え方、取締役会の監督機能に対する考え方、それらと中長期的な価値創造のつながりなどについて、機関投資家にアピールするためのミーティング。シンプルに「ガバナンス・ミーティング」と呼ばれることもある。買収防衛策の導入が相次いだ2006年辺りにもしばしば見られたが、コーポレートガバナンス・コードの導入により日本企業のガバナンス状況に対する海外機関投資家の関心が高まる中、同コードに対応したコーポレートガバナンス報告書の提出後、その内容を機関投資家にアピールしようと、ガバナンス・ロードショーを実施する企業が再び増えている。ちなみに、「ロードショー(road show)」と言われるのは、各地にある複数の機関投資家を一定期間内で一気に訪問するからである。

ガバナンス・ロードショーの対象となる機関投資家はこれまで日本企業が実施してきたIRロードショー(IRミーティング)の対象であるメインストリーム(主流)の中長期投資家であるが、IRロードショーでは経営戦略や財務パフォーマンスなどが主なテーマとなるのに対し、ガバナンス・ロードショーでは文字通り「ガバナンス」に関係するテーマにフォーカスするという点で両者は異なる。また、機関投資家側の担当者も、IRロードショーでは運用担当者 であるのに対し、ガバナンス・ロードショーでは、運用担当者が同席することもあるものの、議決権行使担当者、ESGの担当者などガバナンス関係の担当者が中心となる。

ガバナンス・ロードショーで企業から提供される情報は、中長期の機関投資家にとっては、その会社の株式を長く保有できるかどうかの重要な判断材料となる。それだけに機関投資家側も真剣であり、特に海外で開催されるガバナンス・ロードショーでは、事前に資料をしっかり読み込んだうえで、ミーティングの場でも、取締役会の実態等に関する踏み込んだ議論が展開されるケースが見られる。逆に言うと、企業にとっては、そこで自社のガバナンスをアピールできれば、自社を信頼し長期的に株式を保有してくれる優良な株主を増やすことができる。優良株主獲得策の1つとして、ガバナンス・ロードショーの実施は検討に値しよう。

2016/06/15 海外で過半数の株主の反対押し切り高額報酬支給、CGコードの牽制効かず

これまで日本企業における役員報酬のおよそ80%は固定報酬が占めてきたが、コーポレートガバナンス・コードが、役員報酬について「中長期的な会社の業績や潜在的リスクを反映させ、健全な企業家精神の発揮に資するようなインセンティブ」(原則4-2)、「中長期的な業績と連動する報酬の割合や、現金報酬と自社株報酬との割合を適切に設定すべき」(補充原則4-2①)などとしたことから、今後は業績連動型報酬の割合が高まっていくのは間違いない。業績連動型報酬の増加とともに、日本企業の役員報酬は欧米企業同様に高額化していく可能性があろう。

もっとも、欧米でも、高額な役員報酬が必ずしも株主に受け入れられているわけではない。2015年5月13日のニュース「役員報酬議案、海外では株主の反対が続出」でもお伝えしたとおり、4月後半から始まったイギリスの株主総会では、石油大手のBPや大手金融機関のHSBCなどで、役員報酬決議に多くの反対票が投じられている。また、フランスでも高額な役員報酬への関心が高まっており、・・・

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2016/06/15 海外で過半数の株主の反対押し切り高額報酬支給、CGコードの牽制効かず(会員限定)

これまで日本企業における役員報酬のおよそ80%は固定報酬が占めてきたが、コーポレートガバナンス・コードが、役員報酬について「中長期的な会社の業績や潜在的リスクを反映させ、健全な企業家精神の発揮に資するようなインセンティブ」(原則4-2)、「中長期的な業績と連動する報酬の割合や、現金報酬と自社株報酬との割合を適切に設定すべき」(補充原則4-2①)などとしたことから、今後は業績連動型報酬の割合が高まっていくのは間違いない。業績連動型報酬の増加とともに、日本企業の役員報酬は欧米企業同様に高額化していく可能性があろう。

もっとも、欧米でも、高額な役員報酬が必ずしも株主に受け入れられているわけではない。2015年5月13日のニュース「役員報酬議案、海外では株主の反対が続出」でもお伝えしたとおり、4月後半から始まったイギリスの株主総会では、石油大手のBPや大手金融機関のHSBCなどで、役員報酬決議に多くの反対票が投じられている。また、フランスでも高額な役員報酬への関心が高まっており、近く法改正が行われる方向となっている。そのきっかけとなったのが、日本でもおなじみのカルロス・ゴーン氏(フランスの大手自動車メーカー・ルノーのCEO)への報酬(720万ユーロ≒8億5,700万円)だ。

フランスにも「コーポレートガバナンス・コード(AFEP-MEDEF Code)」が存在しており、コードの1つに、「取締役会は固定報酬額のみならず変動報酬額も含めた全報酬額を株主総会に諮り、投票によって株主に賛否を表明させるべきである」というものがある。もし株主総会で否定的な意見を出された場合には、取締役会は、報酬委員会の助言を受け、その意見にどのように対処するのかを詳細に説明した文書を速やかに自社のウェブサイトで公表することが求められる。上記コードに則り、4月末に開催されたルノーの株主総会でもカルロス・ゴーン氏の報酬額720万ユーロ(固定報酬123万ユーロ、変動報酬178万ユーロ、ストックオプション等418万ユーロ)も株主総会に諮られたが、筆頭株主である仏政府をはじめ実に54%の株主が反対票を投じている。

ただ、「コンプライorエクスプレイン」という規律を採用するコーポレートガバナンス・コードには法的拘束力はない。フランスの商法では、株主総会で決定しなければならないのは「固定報酬総額」のみとなっており(フランス企業のCEOの報酬のうち固定報酬は3割程度)、変動報酬については取締役会が決定権を持ち、ストックオプションも株主総会特別決議により取締役会に決定権限を付与することができるなど、業績連動型報酬に対する取締役会の権限が強い。結局、ゴーン氏への報酬は、株主の反対にもかかわらず、そのまま満額が支払われている。この事態を受けフランス政府は、変動報酬やストックオプションなど業績連動部分についても法的拘束力のある株主総会の決議事項とする法改正を進めており、早晩法制化される見込みとなっている。

日本企業では、会社法の規定に則り、株主総会決議により報酬枠(役員報酬総額の限度額)を決め、各取締役への配分は取締役会の決定に委ねることが多い。この報酬枠には「業績連動型報酬」も含まれるため、仮に業績連動型報酬が大きくなり報酬枠を超える場合には、改めて株主総会の決議に付す必要がある。フランスと日本では事情が違うとはいえ、役員報酬改革に乗り出したばかりの日本企業にとって、欧州で広がる“高額役員報酬批判”の流れは気になるところだ。

2016/06/14 招集通知を最も早く開示した企業は?

6月株主総会シーズンの招集通知がほぼ出揃った。今年はコーポレートガバナンス・コード対応の一環として、招集通知の早期発送および発送前の電子的公表(補充原則1-2②)に取り組む企業が多く見られた。

そこで、TOPIX100採用銘柄のうち、今年3~6月に株主総会を開催する(した)98社を対象に、招集通知の発送日および開示日を分析した。・・・

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2016/06/14 招集通知を最も早く開示した企業は?(会員限定)

6月株主総会シーズンの招集通知がほぼ出揃った。今年はコーポレートガバナンス・コード対応の一環として、招集通知の早期発送および発送前の電子的公表(補充原則1-2②)に取り組む企業が多く見られた。

そこで、TOPIX100採用銘柄のうち、今年3~6月に株主総会を開催する(した)98社(*1)を対象に、招集通知の発送日および開示日(*2)を分析した。

*1 8月決算(11月総会)のファーストリテイリングと、統合直後で株主総会を開催しないコンコルディア・フィナンシャルグループを除く。
*2 東証ウェブサイトに掲載された日付ベース

まず全体の平均値を見てみよう。招集通知の発送日は株主総会開催日の「22.2日前」で、前年と全く同じ水準となっている。実務上の制約により「3週間前の発送が限界」との声もあり、特に時価総額の大きい企業では既に招集通知の発送早期化に向けた取り組みは一巡している可能性が高い。

一方で、招集通知の開示日(東証ウェブサイトでの開示)は招集通知の発送日の「5.4日前」で、前年の「3.5日前」からは約2日間早くなっている。発送前開示を実施した企業の数は前年の71社から93社に増加した。発送前開示の取り組みが広く進展した結果と言えよう。

TOPIX100採用銘柄のうち、株主総会の開催日から最も早く招集通知を開示した企業はNTTだった。「41日前」と、2位の第一生命保険に3日の差をつけている。両社が1位・2位を占めたのは、NTTは約89万人、第一生命は約84万人と、いずれも我が国では有数の株主数(すなわち個人株主の多さ)を誇っていることと無縁ではないだろう。上位のランキングは下記の表のとおりとなっている。

順位 社名 開示 発送前開示
1 日本電信電話(NTT) 41日前 18日前
2 第一生命保険 38日前 16日前
3 JXホールディングス 35日前 13日前
4 三井物産 34日前 13日前
5 丸紅 12日前
6 三菱商事 10日前
7 大和証券グループ本社 9日前

2016/06/13 能力不足による労働者派遣契約の中途解除は可能か

政府が今月(平成28年6月)2日に閣議決定した「ニッポン一億総活躍プラン」には、「同一労働同一賃金」の実現に向けた法改正を進めるとの方向性が打ち出されている(7ページ後半~)。正社員とパートタイム、派遣社員等との間で、「どのような待遇差が合理的であるか、または不合理であるか」を事例等で示すガイドラインを策定し、不合理な待遇差として是正すべきものを明らかにするという。さらに、この是正が円滑に行われるよう、不合理な待遇差に関する司法判断の根拠規定、非正規労働者と正規労働者との待遇差に関する事業者の説明義務などを整備するため、労働契約法、パートタイム労働法、労働者派遣法の一括改正を行う。同プランには「非正規という言葉を無くす決意で臨む」とあることからも、実現に向けた政府の決意は固く、今後、企業の人事・雇用戦略にも大きな影響が出る可能性がある。

同一労働同一賃金 : 職務内容が同一または同等の労働者に対しは 同一の賃金を支払うべきという考え方。

政府が同一労働同一賃金を志向するように、派遣社員等の中には正社員に勝るとも劣らない能力を持つ人材がいる一方で、当初期待していたよりも能力が低かったということもある。この場合、派遣先(労働者派遣の役務の提供を受ける側)が、期間満了前に派遣契約を中途解除したいと考えたとしても無理はないが、問題はそれが法的に許されるのかという点だ。この種の話はともすれば“派遣切り”“ブラック企業”といった企業の根幹を揺るがすレピュテーション問題に発展しかねないだけに、経営陣としても法的な取扱いは頭に入れておきたい。

まず前提として理解しておく必要があるのは、・・・

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2016/06/13 能力不足による労働者派遣契約の中途解除は可能か(会員限定)

政府が今月(平成28年6月)2日に閣議決定した「ニッポン一億総活躍プラン」には、「同一労働同一賃金」の実現に向けた法改正を進めるとの方向性が打ち出されている(7ページ後半~)。正社員とパートタイム、派遣社員等との間で、「どのような待遇差が合理的であるか、または不合理であるか」を事例等で示すガイドラインを策定し、不合理な待遇差として是正すべきものを明らかにするという。さらに、この是正が円滑に行われるよう、不合理な待遇差に関する司法判断の根拠規定、非正規労働者と正規労働者との待遇差に関する事業者の説明義務などを整備するため、労働契約法、パートタイム労働法、労働者派遣法の一括改正を行う。同プランには「非正規という言葉を無くす決意で臨む」とあることからも、実現に向けた政府の決意は固く、今後、企業の人事・雇用戦略にも大きな影響が出る可能性がある。

同一労働同一賃金 : 職務内容が同一または同等の労働者に対しは 同一の賃金を支払うべきという考え方。

政府が同一労働同一賃金を志向するように、派遣社員等の中には正社員に勝るとも劣らない能力を持つ人材がいる一方で、当初期待していたよりも能力が低かったということもある。この場合、派遣先(労働者派遣の役務の提供を受ける側)が、期間満了前に派遣契約を中途解除したいと考えたとしても無理はないが、問題はそれが法的に許されるのかという点だ。この種の話はともすれば“派遣切り”“ブラック企業”といった企業の根幹を揺るがすレピュテーション問題に発展しかねないだけに、経営陣としても法的な取扱いは頭に入れておきたい。

まず前提として理解しておく必要があるのは、「派遣労働者の雇い主は派遣元(派遣会社)であって派遣先ではない」ということである。つまり、派遣契約を中途解約することは「B to B」の問題であって、原則として行政機関(労働基準監督署)はこれに介入しない。労働者派遣法では、派遣労働者の国籍・信条・性別等を理由とする派遣契約解除を禁じ(第27条)、また、派遣先の都合による派遣契約の中途解除にあたっては、当該派遣労働者の新たな就業機会の確保、派遣元が支払うべき費用(休業手当等)の負担などの措置を講じなければならない旨を定めている(第29条の2)ものの、それ以上のことは制限していない。

これらを踏まえると、派遣契約の中途解除の可否は「会社間でどのように取り決めているか」次第と言えるわけだが、派遣会社が用意する契約書には、「派遣元の責めによらない中途解除にあたっては、休業手当や解雇予告手当、場合によっては残余期間の派遣料金を賠償する」といった条項が設けられているのが通常だ。したがって、結論としては、その派遣労働者が職場の風紀を乱したとか、企業イメージを著しく損ねたといったことでない限り、原則として派遣先側から派遣契約の中途解除はできない(中途解除するのであれば、最大で残余期間の派遣料金を全額補償しなければならない)と考えるべきだろう。

「期待していたよりも能力が低かった」という理由による派遣契約の中途解除は、労働者派遣法26条6項が禁じる「派遣労働者の特定」に類する行為と見られるリスクもある。派遣労働者に一定水準以上の職務遂行能力を求めるのであれば、それは派遣契約を締結する前に明確にしておくべきと言える。ただし、派遣契約には、「派遣労働者の業務処理能力が著しく低い」「就業規律等に従わない」といった場合、派遣先は派遣元に対し、派遣労働者の交替を求めることができるという条項が入っていることも多い。派遣先としては、契約解除の前に、まずは派遣元に派遣労働者の交替を求めるべきだろう。