2016/04/19 機関投資家に反対される監査等委員会設置会社移行の定款変更議案

2016年3月29日のニュース「監査等委員会設置会社への移行、「原則賛成」が見直される恐れも」では、オプトホールディングが監査等委員会設置会社に移行する定款変更議案が、大株主である米国運用会社RMBキャピタルに反対された件(結果は可決)をお伝えしたが、その後同社の臨時報告書が開示され、具体的な賛成率が明らかとなった。

RMBキャピタル : 2005年に創業したシカゴを拠点とする独立系の資産運用会社で、35億ドル超の資産を運用する。年金や大学基金、個人富裕層などを顧客に持ち、長期投資を志向する。グローバルの株式、債券等を中心に投資を行うが、野村証券出身の日本人をポートフォリオ・マネジャーに据え、日本株への投資を強化している。オプト社には2012年から「友好的な株主」として投資を行ってきた。2015年11月時点でRMBキャピタルのオプト社株式の保有比率は5%超。

臨時報告書によると同議案への賛成率は・・・

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2016/04/19 機関投資家に反対される監査等委員会設置会社移行の定款変更議案(会員限定)

2016年3月29日のニュース「監査等委員会設置会社への移行、「原則賛成」が見直される恐れも」では、オプトホールディングが監査等委員会設置会社に移行する定款変更議案が、大株主である米国運用会社RMBキャピタルに反対された件(結果は可決)をお伝えしたが、その後同社の臨時報告書が開示され、具体的な賛成率が明らかとなった。

RMBキャピタル : 2005年に創業したシカゴを拠点とする独立系の資産運用会社で、35億ドル超の資産を運用する。年金や大学基金、個人富裕層などを顧客に持ち、長期投資を志向する。グローバルの株式、債券等を中心に投資を行うが、野村証券出身の日本人をポートフォリオ・マネジャーに据え、日本株への投資を強化している。オプト社には2012年から「友好的な株主」として投資を行ってきた。2015年11月時点でRMBキャピタルのオプト社株式の保有比率は5%超。

臨時報告書によると同議案への賛成率は80.21%で、最も賛成率の高かった剰余金処分案の98.24%を大きく下回った。定款変更議案の可決要件は出席株主の「3分の2」であることから、本議案は一応問題なく成立したとは言えるものの、この賛成率の低さは、監査等委員会設置会社への移行を考える企業にとっては気になるところだろう。なお、監査等委員である取締役(3名)の選任議案は、賛成率が81.45~81.58%と低水準ではあるものの、可決要件である過半数の賛同は充たしたため、可決している。

賛成率「80.21%」の意味を検証するため、同社の株主構成を確認してみよう。有価証券報告書によると、外国人(個人以外)の株主は15.03%、金融機関の株主は4.40%となっている。大株主には取引先金融機関の名称が見られないため、金融機関の株主は大部分が機関投資家と考えられる。したがって、機関投資家である株主は「19%強」ということになる。このことから、本議案に対してはほぼ全ての機関投資家が反対に回ったと推定される。

この事実は、今後監査等委員会設置会社への移行を予定している上場会社にとって、少なからず影響を与えることになりそうだ。オプト社のケースでは機関投資家比率が20%に満たなかったため可決されたが、同比率が30%を超える企業の場合、否決リスクを現実のものとして意識せざるを得ない。仮に機関投資家がそこまでは多くなくても、大株主との間で何らかの不和を抱えていたりすると、その反対票と併せて否決となる可能性も考えられよう。

では、実際に直近の3月総会において監査等委員会設置会社に移行した企業はどうだったか調べてみると、TOPIX500採用銘柄で監査等委員会設置会社に移行した事例は8社あり、他の議案より目立って(監査等委員会設置会社への移行のための)定款変更議案の賛成率が低かったのは2社、SUMCO(88.31%)と電通(82.39%)だった。もっとも、両社の外国人株主比率はSUMCOが33.17%、電通が28.48%であることからすると、機関投資家の大部分が反対に回ったわけではない。

それでも一定割合の機関投資家が反対した背景として、独立役員の人数に注目すると興味深い示唆が得られる。SUMCOは移行前が6人だったが、移行後は4人と2名減少した。電通も移行前の5人から移行後は3人と、やはり2名減少している。他の6社は1名増加が2社、横ばいが3社、1名減少が1社であった。このように、機関投資家は、監査等委員会設置会社の“質”の判断基準として「独立役員の人数」を見ているという点、移行を考える企業は念頭に置いておきたいところだ。

2016/04/19 株式会社の機関設計

概略

本講義では、多岐にわたる株式会社の機関を総ざらいした後、機関設計に関する会社法上のルール、機関設計の類型を説明します。その上で、代表的な機関設計である監査役会設置会社、監査等委員会設置会社、指名委員会等設置会社を比較するとともに、監査役会設置会社が監査等委員会設置会社に移行するメリットについて解説します。

【講師】TMI総合法律事務所 水田 進 弁護士
【講義時間】14分18秒
【目次】
1 機関の種類
2 機関設計の視点
(1) 公開会社か非公開会社か
(2) 大会社か非大会社か
3 機関設計の基本原則
4 機関設計の類型
(1) 公開会社かつ大会社
(2) 公開会社かつ非大会社
(3) 非公開会社かつ大会社
(4) 非公開会社かつ非大会社
5 代表的な機関設計の比較

講義資料 株式会社の機関設計.pdf
講義

株式会社の機関設計

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2016/04/18 株主の59%が反対票 CEOの報酬議案を巡る“誤解”

英国の石油会社BPのCEOに対する巨額報酬に実に59%もの株主が反対票を投じたことが大きな話題となっている。同社は原油価格下落の影響から過去最大の赤字を計上しており、株価は1年間で25%下落している。「59%」という数字は、株主が損失を被る中でCEOが1,960万ドル(約21億4000万円)を受け取ることに対する株主の反発を反映したものと言えよう。また、同社は世界全体で4千人の従業員を削減することを明らかにしており、経営者と従業員の格差拡大という問題も背景にあるものとみられる。確かにこれらの事実だけをとらえると、強欲な経営者が株主や従業員を犠牲にして私腹を肥やしているように見える。しかし、よくよく中身を分析すると、必ずしもそうとは言えないことが分かる。

同社の年次報告書によると、CEOの前年の報酬は1,939万ドルであるため、15年の報酬は21万ドル増加したことになるが、その最大の要因は、・・・

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2016/04/18 株主の59%が反対票 CEOの報酬議案を巡る“誤解”(会員限定)

英国の石油会社BPのCEOに対する巨額報酬に実に59%もの株主が反対票を投じたことが大きな話題となっている。同社は原油価格下落の影響から過去最大の赤字を計上しており、株価は1年間で25%下落している。「59%」という数字は、株主が損失を被る中でCEOが1,960万ドル(約21億4000万円)を受け取ることに対する株主の反発を反映したものと言えよう。また、同社は世界全体で4千人の従業員を削減することを明らかにしており、経営者と従業員の格差拡大という問題も背景にあるものとみられる。確かにこれらの事実だけをとらえると、強欲な経営者が株主や従業員を犠牲にして私腹を肥やしているように見える。しかし、よくよく中身を分析すると、必ずしもそうとは言えないことが分かる。

同社の年次報告書によると、CEOの前年の報酬は1,639万ドルであるため、2015年の報酬は321万ドル(約20%)増加したことになるが、その最大の要因は、CEOが受け取る年金の評価額の洗替えだ。2015年は洗替えによる評価額の増加が651万ドルに達している。前年に比べると349万ドルの増加であるため、同社の役員報酬の増加はこれにより十分に説明できてしまう。洗替えは規制に基づくものであり、これ自体は経営者が強欲かどうかは関係ない。

年金の評価額の洗替え : 期末に役員退職慰労金(年金)の現在価値を評価し直すこと。

年金以外の項目についても見てみよう。株式報酬は減少しているものの減少率は7%(70万ドル)と小幅にとどまり、年次現金ボーナスに至っては38%(39万ドル)と大幅に増加している。業績が巨額の赤字を計上し、株価が大幅に下落していることを考慮すると「もらい過ぎ」に見える。

そこで報酬の根拠となる指標を見ると、同社の年次現金ボーナスの算定上、「営業キャッシュフロー」「損益」「純投資」「本社・機能の費用」「主要プロジェクトの進捗」の5つが業績に関連する指標として採用されている。このうち損益については、会計上の損益に対して「原油価格の変動を除く」などの修正を加えられているため、達成率は200%となっている。その他の項目も全て目標を上回っており、年次現金ボーナス全体の達成率は191%にも及ぶ。また、株式報酬については株式総利回り(株価変動+インカム・ゲイン(配当))が33.3%を占める最も重要な指標とされているが、自社の株式総利回りを絶対的水準とするのではなく、他社の水準と比較した「相対的水準」を基準にして、達成率をはじき出している。そのため、株価の絶対的水準こそ大きく下げているものの、達成率は35%と最低限の水準は保っており、その他の項目が概ね100%前後の達成率となっていることと相まって、株式報酬全体でも77.6%の達成率となっている。

同社が会計上の損益に修正を加えたり、株価の絶対的水準ではなく相対的水準を採用したりといった工夫をしている背景には、同社の事業特性があると考えられる。原油価格は経営者の能力・手腕ではコントロールできない。株式市場全体の変動もしかり。仮にこれらの影響を経営者報酬の算定において排除しなければ、例えば経営者による努力が不十分でも、原油価格が上がれば会計上の利益は膨らみ、株式市場が活況になれば同社の株価も上昇し、経営者報酬も増えることになる。このような場合にまで経営者の報酬を上げるのは株主の利益に合わないとの判断が、現在の同社の経営者報酬の算定方針につながっていると考えられる。

今回のBPの一件は、「会社が赤字で4千人もリストラするのにCEOの報酬が20%も上がっている」という表面的な部分だけに注目すれば、多くの株主が反対票を投じたことにも納得感があるが、「経営者のパフォーマンスをどのように図るべきか」という点について株主との間でしっかり意思疎通が図られていれば、賛否の比率は異なっていた可能性もあろう。

2016/04/15 理解していない取締役が多数 「監査役監査と内部監査」の違い

監査と名の付く主なものには「監査役監査」「内部監査」「会計監査」の3つがあるが(これらは総称して「三様監査」と呼ばれる)、会計監査はともかく、「監査役監査」と「内部監査」の違いを理解していない取締役が非常に多い。よくある誤解のパターンは、概ね以下の3つに集約される。

①監査役も自分の部下だと思っているパターン
②本来は内部監査の職務範囲なのに、これを監査役に依頼しているパターン
③内部監査の監査対象には社長も含まれると考えているパターン

確かに監査役監査と内部監査はよく似ていると言われるが、あくまで両者は全くの別もの。会計監査も含め、それぞれを違いを整理すれば下表のとおりとなる。・・・

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2016/04/15 理解していない取締役が多数 「監査役監査と内部監査」の違い(会員限定)

監査と名の付く主なものには「監査役監査」「内部監査」「会計監査」の3つがあるが(これらは総称して「三様監査」と呼ばれる)、会計監査はともかく、「監査役監査」と「内部監査」の違いを理解していない取締役が非常に多い。よくある誤解のパターンは、概ね以下の3つに集約される。

①監査役も自分の部下だと思っているパターン
②本来は内部監査の職務範囲なのに、これを監査役に依頼しているパターン
③内部監査の監査対象には社長も含まれると考えているパターン

確かに監査役監査と内部監査はよく似ていると言われるが、あくまで両者は全くの別もの。会計監査も含め、それぞれを違いを整理すれば下表のとおりとなる。

監査役監査 内部監査 会計監査
依頼人 株主 取締役 株主(監査役)
監査対象 取締役 従業員 取締役(財務諸表)

監査役監査と内部監査の最大の違いは、監査役監査が「株主の依頼により、取締役を監査する」ものであるのに対し、内部監査は「取締役(経営陣)の依頼により、従業員を監査する」ものであるという点にある。

ちなみに、会計監査は「会計の専門的知識が必要になる」という理由で監査役監査から分化したものであるため、「株主(厳密には監査役が起案し、株主が決定)の依頼により、(取締役の業務執行の結果を表した)財務諸表を監査する」ことが目的となる。この点は監査役および会計監査人の選任が株主総会の決議事項であることにも表れている(一方、内部監査人は「社内」で選定される)。

このように、監査役監査と内部監査では「依頼人」と「監査対象」が全く異なっているだけに、当然ながら監査の視点や指示体系も違えば、報酬の決められ方も違ってくる。

監査役は「株主」より依頼されて「取締役の業務執行」について監査するため、その視点は「適法性(法令や定款を遵守しているか)」と「妥当性(非効率な業務を行っていないか、会社に不合理な損失を与えていないか)」が主となる。

監査役監査の依頼者は株主である以上、本来なら監査役は監査に関する指示も株主から受けるべきだが、株主全員の意見を聞き監査を行うのは困難であるため、実務上は監査役が独自に監査方針を決定し、監査を実施している。そして、依頼者である株主には結果のみを報告することとなる。冒頭で述べたように、「監査役=部下」と思っている取締役が少なくないが、監査の実効性を担保するため、監査役は被監査対象である取締役(経営陣)からは独立した存在とされており、取締役の指示を受ける立場にはない。

同様に、監査役の報酬も決定権は株主にある。会社法上は監査役が自ら報酬額を設定して(株主承認の上)請求することになっているが、実際には取締役との事前交渉により監査役の報酬が決められているケースが多い。よくあるのが次の2パターンだ。

①報酬レンジを内規等で予め決めているパターン(大企業や、代々社内の人材が監査役に就任する会社に多い)
②同規模の他社との比較で決めるパターン(中堅以下の企業、社外の人材が監査役に就任する会社に多い)

また、「一番下の取締役と同程度」という暗黙の了解も存在しているようだが、他社と比較して高額or低額いずれの場合も株主からの批判の対象になりがちなため(低額の場合、「監査役を軽視している」と言われかねない)、一般的には他社との比較が最も重視されていると言えるだろう。なお、例えば「従業員の評価基準」を用いて監査役の評価を行うというやり方は監査役の独立性を侵害しかねないので要注意だ。現在そのような形で監査役の報酬を決めている会社は、すぐにやめるべきだろう。

一方、内部監査は「取締役(経営陣)」より依頼され「従業員の業務執行」について監査するものであるため、その視点は内部統制制度の一機能としての「モニタリング」、すなわち「決められた内部統制のルールに準拠できているか否か」という点が主となる。

内部監査の依頼者は経営陣(社長直下となっている場合が多い)なので、その指示は原則として経営陣から受け、結果の報告も経営陣に対して行うことになる。また、内部監査の実効性を担保するため、内部監査を担う部門(内部監査室等)は被監査部門から独立した存在とする必要がある。

したがって、内部監査部門の給与は原則として「内部監査部門内」での人事評価に基づき決められることが望ましく、例えば経理部長からの評価を受ける等、特定の部門から評価を受けるような体制は独立性を担保する上で好ましくない。

以上のとおり、監査役監査と内部監査は全く異なるものだが、内部監査が有効に機能しているか否かは監査役監査において「内部統制システムの構築・運用状況」を監査する上での重要な確認事項となるなど、両者は深く関わっている。また、内部監査で問題が発見された場合、それが監査役監査の範疇である「取締役の業務執行の適切性」の問題に直結することも多い。経営者不正は滅多に起こるものではないが、内部監査の依頼者は「経営陣」であるだけに、万が一内部監査において経営者不正が発見された場合には、これが監査役に伝達されない可能性もある。監査役はこの点も念頭に置いて監査計画を立案・実施する必要があるとともに、監査役と内部監査部門(さらに会計監査人も加わった三者)は定期的にコミュニケーションをとり、それぞれの監査で発見された問題点を共有することが、(それぞれが)より良い監査を実現することにつながるとともに、会社法が意図するガバナンスが有効に機能することになる(上述のとおり、内部監査の実施状況の確認は監査役の職務範囲であるため、監査役にとっては、内部監査部門とのコミュニケーションがとれなければ、そもそも監査にならないとも言える)。

このような役割分担や役割の違いを踏まえたコミュニケーションも、まずは取締役が監査役監査と内部監査の違いを認識していることが大前提となるということを、取締役諸氏は肝に銘じておきたい。

2016/04/14 (新用語・難解用語)景表法課徴金ガイドライン

2013年秋に相次いだホテルやレストランにおける不当表示の問題を受け、2014年の通常国会では、表示管理体制の設置義務付け(2014年10月17日のニュース「11月中に表示管理体制の整備を」参照)、同年秋の臨時国会では課徴金(課徴金対象期間における売上額の3%)の導入(2015年8月4日のニュース「元資料の間違いが原因でも「不当表示」に?」参照)を内容とする景品表示法の改正が行われたのは周知のとおり。

当時を振り返ると、冷凍された魚を「鮮魚」と表示したり、牛脂を注入した牛肉を「ビーフステーキ」と表示したりする事例が問題とされたが、企業側には、景表法違反とされるか否かのボーダーラインの分かりづらさを指摘する声とともに、課徴金が課された場合の影響の大きさへの懸念がある。

こうした中、消費者庁が、・・・

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2016/04/14 (新用語・難解用語)景表法課徴金ガイドライン(会員限定)

2013年秋に相次いだホテルやレストランにおける不当表示の問題を受け、2014年の通常国会では、表示管理体制の設置義務付け(2014年10月17日のニュース「11月中に表示管理体制の整備を」参照)、同年秋の臨時国会では課徴金(課徴金対象期間における売上額の3%)の導入(2015年8月4日のニュース「元資料の間違いが原因でも「不当表示」に?」参照)を内容とする景品表示法の改正が行われたのは周知のとおり。

当時を振り返ると、冷凍された魚を「鮮魚」と表示したり、牛脂を注入した牛肉を「ビーフステーキ」と表示したりする事例が問題とされたが、企業側には、景表法違反とされるか否かのボーダーラインの分かりづらさを指摘する声とともに、課徴金が課された場合の影響の大きさへの懸念がある。

こうした中、消費者庁が、課徴金納付命令の対象行為、課徴金の算定方法などをまとめたのが、「景表法課徴金ガイドライン」だ(2016年1月29日公表。正式名称は「不当景品類及び不当表示防止法第8条(課徴金納付命令の基本的要件)に関する考え方」)。

本ガイドラインでは、課徴金納付命令の対象となる行為の具体例として、例えば、全国に供給する商品や役務であっても、「北海道内で配布したチラシ」のみで不当表示を行っていた場合には、北海道内で販売する商品のみが課徴金の対象になることや(10ページ①)、「スーツ全品半額」と表示をしつつも実際には2万円未満のスーツは半額対象外であった場合(2万円以上のスーツは実際に半額で販売)には、「2万円未満のスーツ」のみが課徴金の対象になること(12ページ②)などが示されている。また、各業界において定めた公正競争規約に沿った表示であれば課徴金対象行為には該当しないことも明示されている。

また、改正景表法では、違反事業者が「不当表示であることを知らず、かつ、知らないことにつき相当の注意を怠った者でないと認められる」場合には課徴金を賦課しないことになっているが(同法8条1項ただし書)、ガイドラインでは、「表示管理責任者の設置」といった表示管理上の措置を講じていた場合には、「相当の注意を怠った者でない」と認められる旨も明示されている(17ページ 「1 相当の注意を怠つた者でないと認められる」)。

なお、このガイドラインは、課徴金対象行為についての「事業者」の予見可能性を確保する目的で公表されているものであり、景表法違反とされる「優良誤認表示」「有利誤認表示」に該当するか否かは、表示の受け手である一般消費者に「著しく優良」または「著しく有利」と誤認されるか否か、つまり、表示の誇張の程度が「社会一般で許容されている限度」を超えるか否かによるという点はこれまでと何ら変わらないということは認識しておきたい。

優良誤認表示 : 商品・サービスの品質を実際よりも優れていると偽って宣伝したり、競争業者が販売する商品・サービスよりも特に優れているわけではないのに、あたかも優れているかのように偽って宣伝したりする行為
有利誤認表示 : 商品・サービスの取引条件について、実際よりも有利であると偽って宣伝したり、競争業者が販売する商品・サービスよりも特に安いわけでもないのに、あたかも著しく安いかのように偽って宣伝したりする行為

2016/04/13 マイナス金利で退職給付債務の現在価値と将来価値に“逆転現象”

4月上旬からは監査法人の往査も始まるなど平成28年3月期決算作業が本格化しているが、今決算期における話題の1つとなっているのが、「マイナス金利」が退職給付債務に与える影響だ。

退職給付債務 : 退職一時金や、退職年金といった退職給付は、企業からすれば従業員に対する「負債」であり、従業員の勤務期間が長くなればなるほどその額は大きくなっていく。将来見込まれる退職給付の支払総額のうち、当会計期間までに発生していると認められるものを「退職給付債務」という。

具体的に見てみよう。退職給付債務を計算するには、原則として「割引計算」が必要になる。預金利率が1%の場合、現在の100円の1年後の経済的価値は(利息がつくため)101円になるが、割引計算とは、こうした現象を踏まえ、「将来に受け取れる価値を現在受け取るとしたらどの程度の価値を持つか」を計算するもの。例えば1年後に101円の退職金を支払う場合、当期末に計上する退職給付債務は「101円」ではなく、利息(割引率)1%を考慮した100円となる。

1年後の101円の現在価値はいくらか?
101÷(1+0.01)(利率1%で割引)=100円
預金利率1%の下では、「将来の101円」の現在価値は、割引計算の結果、100円となる。

退職給付債務の計算に用いられる割引率は、安全性の高い債券の利回り(国債、政府機関債または優良社債の利回りのいずれか)とされている。これは、その利回りこそが「純粋な時間的価値」を反映したものと考えられているためだ。国債の利回りを割引率として用いている会社を前提とすると、国債の利回り(割引率)の変動と退職給付債務の関係は以下のとおりとなる。

国債の利回りの低下(割引率の低下)→退職給付債務の増加(負債の増加)
国債の利回りの増加(割引率の増加)→退職給付債務の減少(負債の減少)

最近の国債の利回りは、財務省のウェブサイトで公表されている。下表はその抜粋だが、10年以下の国債の金利がマイナスとなっていることが確認できる。

国債金利情報 (平成28年3月) (単位 : %)
基準日 5年 6年 7年 8年 9年 10年 15年 20年
H28.3.17 -0.184 -0.184 -0.178 -0.144 -0.102 -0.054 0.157 0.429
H28.3.18 -0.22 -0.222 -0.22 -0.186 -0.144 -0.101 0.095 0.347
H28.3.22 -0.22 -0.221 -0.219 -0.189 -0.146 -0.1 0.086 0.342
H28.3.23 -0.236 -0.24 -0.235 -0.2 -0.158 -0.111 0.085 0.347
H28.3.24 -0.225 -0.236 -0.231 -0.194 -0.147 -0.094 0.124 0.397

上述のとおり、国債の利回りが低下すれば退職給付債務は増加することになる。国債の利回りがマイナス(マイナス1%と仮定)となった場合、退職給付債務の現在価値がどうなるのか見てみよう。・・・

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