2016/04/13 マイナス金利で退職給付債務の現在価値と将来価値に“逆転現象”(会員限定)

4月上旬からは監査法人の往査も始まるなど平成28年3月期決算作業が本格化しているが、今決算期における話題の1つとなっているのが、「マイナス金利」が退職給付債務に与える影響だ。

退職給付債務 : 退職一時金や、退職年金といった退職給付のうち給付額が確定したものは、企業からすれば従業員に対する「負債」であり、従業員の勤務期間が長くなればなるほどその額は大きくなっていく。将来見込まれる退職給付の支払総額のうち、当会計期間までに発生していると認められるものを「退職給付債務」という。

具体的に見てみよう。退職給付債務を計算するには、原則として「割引計算」が必要になる。預金利率が1%の場合、現在の100円の1年後の経済的価値は(利息がつくため)101円になるが、割引計算とは、こうした現象を踏まえ、「将来に受け取れる価値を現在受け取るとしたらどの程度の価値を持つか」を計算するもの。例えば1年後に101円の退職金を支払う場合、当期末に計上する退職給付債務は「101円」ではなく、利息(割引率)1%を考慮した100円となる。

1年後の101円の現在価値はいくらか?
101÷(1+0.01)(利率1%で割引)=100円
預金利率1%の下では、「将来の101円」の現在価値は、割引計算の結果、100円となる。

退職給付債務の計算に用いられる割引率は、安全性の高い債券の利回り(国債、政府機関債または優良社債の利回りのいずれか)とされている。これは、その利回りこそが「純粋な時間的価値」を反映したものと考えられているためだ。国債の利回りを割引率として用いている会社を前提とすると、国債の利回り(割引率)の変動と退職給付債務の関係は以下のとおりとなる。

国債の利回りの低下(割引率の低下)→退職給付債務の増加(負債の増加)
国債の利回りの増加(割引率の増加)→退職給付債務の減少(負債の減少)

最近の国債の利回りは、財務省のウェブサイトで公表されている。下表はその抜粋だが、10年以下の国債の金利がマイナスとなっていることが確認できる。

国債金利情報 (平成28年3月) (単位 : %)
基準日 5年 6年 7年 8年 9年 10年 15年 20年
H28.3.17 -0.184 -0.184 -0.178 -0.144 -0.102 -0.054 0.157 0.429
H28.3.18 -0.22 -0.222 -0.22 -0.186 -0.144 -0.101 0.095 0.347
H28.3.22 -0.22 -0.221 -0.219 -0.189 -0.146 -0.1 0.086 0.342
H28.3.23 -0.236 -0.24 -0.235 -0.2 -0.158 -0.111 0.085 0.347
H28.3.24 -0.225 -0.236 -0.231 -0.194 -0.147 -0.094 0.124 0.397

上述のとおり、国債の利回りが低下すれば退職給付債務は増加することになる。国債の利回りがマイナス(マイナス1%と仮定)となった場合、退職給付債務の現在価値がどうなるのか見てみよう。

1年後に支払われる101円の退職金の現在価値はいくらか?
101÷(1-0.01)(利率マイナス1%で割引)=102円
1年後の101円の退職金の現在価値は割引(割増)計算の結果102円となる。

このように、(1年後に支払われる)101円の退職金の現在価値が102円となり、現在価値と将来価値の“逆転現象”が起きている。「将来価値<現在価値」となっている以上、もはや割引計算ではなく“割増計算”と呼ぶべきだろう。

マイナスの割引率を用いて計算すると・・・
バランスシートに計上する負債 > 将来支払われる金額

ただ、将来支払われる金額より多い負債が計上することが果たして適切なのかという点については議論がある。この点について企業会計基準委員会(ASBJ)は、「国債の利回りがマイナスとなった場合、割引率はゼロを下限とする方法と、マイナスの割引率をそのまま使用する方法の両方あり得る」としながらも、どちらの方法が正しいかの見解は示していない。

上述のとおり、国債の利回りが割引率として使用されるのは、その利回りが「純粋な時間的価値」を反映したものと考えられているため。市中銀行の預金利率までもがマイナスとなれば話は別だが、そうなっていない現在、マイナスの利回りが純粋な時間的価値を反映したものと言えるのかは疑問がある。マイナスの割引率を使うことで「将来支払われる金額より多い負債」がバランスシートに計上されてしまうこと自体がその証左だろう。

なお、割引率の変動により退職給付債務の現在価値が増減したからといって、将来支払われる退職金の額(上記例で言えば101円)が変わるわけではない。つまり、割引率が変更されれば各年度の退職給付債務の計算上の数値には影響するが、これはあくまで「会計」の話であり、退職金制度を変更しない限り、最終的に支払われる退職金の額には影響しないということだ。

一方、マイナス金利により「年金資産」の運用利回りが低下する恐れは十分にある。年金資産が減少すれば、年金掛金の増額を強いられるなど会社負担が増し、キャッシュ・フローに悪影響を及ぼす。企業にとってはこちらの影響の方が深刻と言えそうだ。

2016/04/12 「株主総会の後ろ倒し」実現へ――企業の本音は?

株主との建設的な対話等を充実させるための方策の1つとしての「株主総会の後ろ倒し(3月決算会社であれば「7月」開催)を実現するための法整備が、金融庁や経済産業省を中心に進められている。

3月決算会社を例にとると、現状、多くの3月決算会社は、定時株主総会の「基準日」を毎年3月31日とし、毎年6月に招集する旨を定款で規定しているのが一般的だ。もっとも、会社法上、定時株主総会は「事業年度の終了後の一定の時期」に開催すればよいとされているため(会社法296条1項)、仮に定款で基準日をもっと遅い日に定め、7月以降に定時株主総会を開催したとしても法令違反になるわけではない。

基準日 : その日において株主名簿に名前が載っていれば、株主総会での議決権行使や配当を受ける権利を享受できる日のこと。基準日における株主(基準日株主)による権利行使は「基準日から三箇月以内」に限定されている(会社法124条2項)。毎事業年度末から3か月以内に株主総会を開催しているのはこのためである。

このように、会社法上は株主総会を後ろ倒しすることが可能とはいえ、実際にこれを実施するには様々な問題をクリアする必要がある。まず、有価証券報告書と事業報告の「大株主の状況」等の記載時点だ。両者とも決算日(事業年度末=基準日)の状況を記載することになっているが、仮に株主総会を後ろ倒しした場合には、基準日も後ろ倒しせざるを得ない。つまり、企業は「大株主の状況」等を記載するためと、後ろ倒しされた株主総会で議決権を行使できる株主を特定するために、株主の確定を2回行う必要が生じる。そこで金融庁の金融審議会「ディスクロージャーワーキング・グループ」は、明日(2016年4月13日)にも取りまとめる報告書で、「大株主の状況」等の記載時点を従来の「決算日」から「議決権行使基準日」へと見直すことにより、株主確定の事務負担を増加させないようにする旨が盛り込まれる。有価証券報告書については開示府令の様式、事業報告については会社法施行規則122条の改正も視野に入ってくることになる。

もう1つの問題が・・・

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2016/04/12 「株主総会の後ろ倒し」実現へ――企業の本音は?(会員限定)

株主との建設的な対話等を充実させるための方策の1つとしての「株主総会の後ろ倒し(3月決算会社であれば「7月」開催)を実現するための法整備が、金融庁や経済産業省を中心に進められている。

3月決算会社を例にとると、現状、多くの3月決算会社は、定時株主総会の「基準日」を毎年3月31日とし、毎年6月に招集する旨を定款で規定しているのが一般的だ。もっとも、会社法上、定時株主総会は「事業年度の終了後の一定の時期」に開催すればよいとされているため(会社法296条1項)、仮に定款で基準日をもっと遅い日に定め、7月以降に定時株主総会を開催したとしても法令違反になるわけではない。

基準日 : その日において株主名簿に名前が載っていれば、株主総会での議決権行使や配当を受ける権利を享受できる日のこと。基準日における株主(基準日株主)による権利行使は「基準日から三箇月以内」に限定されている(会社法124条2項)。毎事業年度末から3か月以内に株主総会を開催しているのはこのためである。

このように、会社法上は株主総会を後ろ倒しすることが可能とはいえ、実際にこれを実施するには様々な問題をクリアする必要がある。まず、有価証券報告書と事業報告の「大株主の状況」等の記載時点だ。両者とも決算日(事業年度末=基準日)の状況を記載することになっているが、仮に株主総会を後ろ倒しした場合には、基準日も後ろ倒しせざるを得ない。つまり、企業は「大株主の状況」等を記載するためと、後ろ倒しされた株主総会で議決権を行使できる株主を特定するために、株主の確定を2回行う必要が生じる。そこで金融庁の金融審議会「ディスクロージャーワーキング・グループ」は、明日(2016年4月13日)にも取りまとめる報告書で、「大株主の状況」等の記載時点を従来の「決算日」から「議決権行使基準日」へと見直すことにより、株主確定の事務負担を増加させないようにする旨が盛り込まれる。有価証券報告書については開示府令の様式、事業報告については会社法施行規則122条の改正も視野に入ってくることになる。

もう1つの問題が税務上の取扱いだ。法人税の確定申告の提出期限は「事業年度終了の日の翌日から2か月以内」とされ、監査に時間がかかる上場会社の場合はこれを「3か月以内」に延長することが認められているが、仮に3月決算法人が7月以降に株主総会を開催した場合には、株主に計算書類の報告をする前に確定申告を行うという“逆転現象”が生じることになる。この点について経済産業省は国税庁と調整のうえで、同省の「持続的成長に向けた企業と投資家の対話促進研究会」が昨年(2015年)4月に取りまとめた報告書に、「株主との対話促進のための株主総会関連の日程の適切な設定が要請される上場会社等において、基準日を決算日以降の日に設定することによる株主総会時期の見直しが行われた場合には、法人税法上の税務申告期限も延長できる」旨が明記されている。当フォーラムの取材によると、経済産業省は現在、本件について国税庁に正式な文書を公表してもらうよう調整を行っている模様。

このように「7月株主総会」の実現に向け金融庁や経済産業省の準備は着々と進んでいるが、実際に株主総会を後ろ倒しする企業がどの程度出てくるかはまったくの未知数と言える。確かに投資家にとっては、有価証券報告書の中身や株主総会議案の十分な検討時間の確保を通じた対話の促進、株主総会の開催日の集中緩和などのメリットがあるが、企業側にメリットが見られない中、これまでの「決算日の株主に対して計算書類の報告をする」という実務慣行を変えて基準日を変更しようと考える企業は少ないだろう。また、株主総会を後ろ倒しすれば、時期的に四半期決算実務と重なってしまうという問題もある。

東証一部上場のある食品メーカーでは、株主総会の7月開催を取締役会に提案したものの、実現までには至っていないという。取締役からすると、現在の株主総会スケジュールに何ら問題がない中、①自社にメリットがない、②自社の投資家からの要望は聞こえて来ない、③他社も実施していない―といった状況下で株主総会を後ろ倒しにする価値を見出せないというのが本音のようだ。

2016/04/11 相談役や顧問等の報酬への開示圧力強まる

現在、金融庁において月1回のペースで開催されている「スチュワードシップ・コード及びコーポレートガバナンス・コードのフォローアップ会議」が(平成28 年)2月18 日にまとめた意見書「会社の持続的成長と中長期的な企業価値の向上に向けた取締役会のあり方」では、CEOの選解任について「社内論理のみが優先される不透明なプロセスによることなく、客観性・適時性・透明性を確保するような手続が求められる」(3ページ(1))という記述が入ったが、その背景にあるのが、前任のCEOや相談役等のOBが事実上次期CEOを決める“OBガバナンス”への批判だ(2016年2月19日のニュース「“OBガバナンス”排除の鍵を握る指名委員会」参照)。

そして、OBガバナンスへの批判は、CEOの「指名」の問題だけでなく、OB自身の「報酬」へと展開しつつある。一口に「OB」と言っても、その名称は相談役、顧問、社友と色々ある。こうした立場にあるOBは相当な数の上場企業において存在しており、なかには無報酬の場合もあるが、報酬が支払われているケースも多いとみられる。そして、相談役や顧問への報酬は役員報酬には当たらないがゆえに総会議案になることもなければ、金額が開示されることもない。このため、どれくらいの金額が支払われているのかはもちろん、報酬額の決定の方法(例えば、業績連動の要素はあるのかなど)も投資家からは見えない。

よくあるのが、役員を辞めて・・・

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2016/04/11 相談役や顧問等の報酬への開示圧力強まる(会員限定)

現在、金融庁において月1回のペースで開催されている「スチュワードシップ・コード及びコーポレートガバナンス・コードのフォローアップ会議」が(平成28 年)2月18 日にまとめた意見書「会社の持続的成長と中長期的な企業価値の向上に向けた取締役会のあり方」では、CEOの選解任について「社内論理のみが優先される不透明なプロセスによることなく、客観性・適時性・透明性を確保するような手続が求められる」(3ページ(1))という記述が入ったが、その背景にあるのが、前任のCEOや相談役等のOBが事実上次期CEOを決める“OBガバナンス”への批判だ(2016年2月19日のニュース「“OBガバナンス”排除の鍵を握る指名委員会」参照)。

そして、OBガバナンスへの批判は、CEOの「指名」の問題だけでなく、OB自身の「報酬」へと展開しつつある。一口に「OB」と言っても、その名称は相談役、顧問、社友と色々ある。こうした立場にあるOBは相当な数の上場企業において存在しており、なかには無報酬の場合もあるが、報酬が支払われているケースも多いとみられる。そして、相談役や顧問への報酬は役員報酬には当たらないがゆえに総会議案になることもなければ、金額が開示されることもない。このため、どれくらいの金額が支払われているのかはもちろん、報酬額の決定の方法(例えば、業績連動の要素はあるのかなど)も投資家からは見えない。

よくあるのが、役員を辞めてすぐに報酬がゼロになると翌年の住民税の負担が厳しいため、徐々にフェードアウトしていくような形で報酬を支払っていくパターンだが、相談役や顧問等への報酬体系は会社によって様々であり、報酬を支払う年数や相談役・顧問としての定年を定めているところもあれば、終身払い続けるところもあるという(ウイリス・タワーズワトソンの経営者報酬部門でコンサルタントを務める小川直人氏)。また、相談役や顧問のための部屋や車が用意されていたり、秘書がいたりすることも珍しくない。

日本企業のトップは欧米企業のトップと比べて報酬水準が低いと言われるが、欧米企業のトップは「指名」に関するリスク(=選解任のリスク)が高く、単年度では多額の報酬をもらっていたとしても生涯そこに椅子があるわけではない。そう考えると、内規や慣例で社長や会長は相談役や顧問になり、場合によっては長年その地位と報酬が保証される日本企業のトップの“生涯報酬”は必ずしも低いとは言えないのではないかとの見方もある。

相談役や顧問を置くことは、現社長にとっては「何かあればすぐに経験者に相談できる」という良い面もあるが、海外投資家からすると、顧問や相談役への報酬は極めて「不透明」なものに映っているのは間違いない。また、本体の役員が退任後に子会社の役員に就くことも少なくないが、この場合も報酬額は表に出て来にくい。今後、役員退任後の報酬への開示圧力が強まることになりそうだ。

2016/04/08 60歳を超えた従業員のワークライフバランス

この時期、新入社員らしき若者の姿を街でよく見かける。少子高齢化が進む中、日本企業にとっては若手人材の確保が大きな課題となる一方で、高齢の従業員をいかに活用していくのかにも知恵を絞る必要がある。

定年に達した人が希望する場合には65歳まで雇用を続けるという「継続雇用制度」の導入を企業に義務付ける改正高年齢者雇用安定法が2013年4月1日に施行されて以来、60歳を過ぎても企業に籍を置く従業員は増えているが、「60歳を超えたら自由に生きたい」という本音を持つ向きも多いのではないだろうか。なかには惜しまれながら退職を選択する優秀な従業員もいる。企業にとって高齢従業員の継続雇用は、高度なスキルと経験を有した熟練ワーカーを維持するということだけでなく、 若年従業員のメンターを確保できるというメリットもある。優秀な高齢従業員を確保するためには、会社が従業員の要望を聞く耳を持ち、個々の従業員に合った働き方をカスタマイズしていくことも必要だろう。

米国には定年制度は存在しないが、公的年金の支給が開始される65歳(受給額を減額することで62歳から受給可)を前に、例えば「プロジェクト単位」で任務を付与したり、一定期間をかけて段階的に引退する「段階的リタイアメント」が活用されている。実際、今年(2016年)から連邦職員向けに段階的リタイアメントプログラムがスタートしており、こうした動きが今後民間企業にも広がることが期待されている。

例えば・・・

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2016/04/08 60歳を超えた従業員のワークライフバランス(会員限定)

この時期、新入社員らしき若者の姿を街でよく見かける。少子高齢化が進む中、日本企業にとっては若手人材の確保が大きな課題となる一方で、高齢の従業員をいかに活用していくのかにも知恵を絞る必要がある。

定年に達した人が希望する場合には65歳まで雇用を続けるという「継続雇用制度」の導入を企業に義務付ける改正高年齢者雇用安定法が2013年4月1日に施行されて以来、60歳を過ぎても企業に籍を置く従業員は増えているが、「60歳を超えたら自由に生きたい」という本音を持つ向きも多いのではないだろうか。なかには惜しまれながら退職を選択する優秀な従業員もいる。企業にとって高齢従業員の継続雇用は、高度なスキルと経験を有した熟練ワーカーを維持するということだけでなく、 若年従業員のメンターを確保できるというメリットもある。優秀な高齢従業員を確保するためには、会社が従業員の要望を聞く耳を持ち、個々の従業員に合った働き方をカスタマイズしていくことも必要だろう。

米国には定年制度は存在しないが、公的年金の支給が開始される65歳(受給額を減額することで62歳から受給可)を前に、例えば「プロジェクト単位」で任務を付与したり、一定期間をかけて段階的に引退する「段階的リタイアメント」が活用されている。実際、今年(2016年)から連邦職員向けに段階的リタイアメントプログラムがスタートしており、こうした動きが今後民間企業にも広がることが期待されている。

例えば米国の国立衛生研究所(National Institute of Health)では、1年間の“お試し引退期間”を設けている。これは文字通り引退生活を1年間試してみることができる仕組みで、そのまま引退することも、逆にこの期間中に「退職しない」と決断した場合には職場復帰し、引退前と同様のポジションに戻ることが可能となっている(ただし、復帰した場合には、育成や指導といったメンター的な役割が増加することになっている)。“お試し引退期間”中に、「完全に引退するのではなく、一定程度は職場や同僚との関係を維持することでワークライフバランスを図りたい」と思い直す優秀な人材もいるはずだ。また、パートタイムや契約社員として勤務しながら同研究所の退職年金の受給を受けるというように、「引退」と「現職」の中間的な立場でいることもできる。

継続雇用制度の多様化は企業にとってはコストや手間の増加につながる可能性があるが、高齢の従業員が長年にわたって培ったスキルや経験を企業に留め、後任へと引き継いでいくことが企業の競争力維持と向上につながる。そのためには、高齢の従業員が企業に残ることを選択しやすいよう、「高齢従業員のワークライフバランス」に配慮した斬新な継続雇用制度を導入することも一考に値しよう。

2016/04/07 (新用語・難解用語)PEGレシオ

株式に関する最もメジャーな投資尺度と言えば「PER」であろう。PERは「株価収益率=Price Earnings Ratio」の略であり、「株価÷1株当たり純利益」によって算出される。この算式のうち「1株当たり純利益」は一般に「EPS=Earnings Per Share」と呼ばれ、「当期純利益÷期末の発行済み株式数」によって計算される。例えば前期の1株当たり利益(EPS)が50円、現在の株価が1000円であれば、PERは20倍(=1000÷50)となる。仮に同業種の平均PERが30倍だった場合、証券アナリストのレポートに、「同業種平均のPER30倍の水準まで株価が上昇する可能性がある」「適正株価はPERが30倍となる1500円である」といった記載がされることが多い。

もっとも、このように自社のPERを同業種平均、あるいは市場平均などと比較し、低ければ「(株価は)割安」、高ければ「(株価は)割高」と必ずしも言えるわけではない。たとえPERが同じ企業であっても、成長率が異なれば割安か割高の判断も違ってくるはずだからだ(PERが同じ企業は2つあり、一方は高成長率、もう一方が低成長率だった場合、どちらに投資したいと考えるだろうか?)。

そこで、EPSの成長率を考慮したうえでPERを分析するための指標が「PEG(ペグ)レシオ」だ(以下、単に「PEG」という)。PEGとは「Price Earinng Growth ratio」の略であり、「PER(株価収益率)÷EG(EPSの成長率)」によって算出される。EGはEPSの成長率であるため、PERをEGで割った数字であるPEGが大きいということは、成長性が低いということを意味する。

例えば同業種でPERが10倍のA社と50倍のB社があったとしよう。・・・

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2016/04/07 (新用語・難解用語)PEGレシオ(会員限定)

株式に関する最もメジャーな投資尺度と言えば「PER」であろう。PERは「株価収益率=Price Earnings Ratio」の略であり、「株価÷1株当たり純利益」によって算出される。この算式のうち「1株当たり純利益」は一般に「EPS=Earnings Per Share」と呼ばれ、「当期純利益÷期末の発行済み株式数」によって計算される。例えば前期の1株当たり利益(EPS)が50円、現在の株価が1000円であれば、PERは20倍(=1000÷50)となる。仮に同業種の平均PERが30倍だった場合、証券アナリストのレポートに、「同業種平均のPER30倍の水準まで株価が上昇する可能性がある」「適正株価はPERが30倍となる1500円である」といった記載がされることが多い。

もっとも、このように自社のPERを同業種平均、あるいは市場平均などと比較し、低ければ「(株価は)割安」、高ければ「(株価は)割高」と必ずしも言えるわけではない。たとえPERが同じ企業であっても、成長率が異なれば割安か割高の判断も違ってくるはずだからだ(PERが同じ企業は2つあり、一方は高成長率、もう一方が低成長率だった場合、どちらに投資したいと考えるだろうか?)。

そこで、EPSの成長率を考慮したうえでPERを分析するための指標が「PEG(ペグ)レシオ」だ(以下、単に「PEG」という)。PEGとは「Price Earinng Growth ratio」の略であり、「PER(株価収益率)÷EG(EPSの成長率)」によって算出される。EGはEPSの成長率であるため、PERをEGで割った数字であるPEGが大きいということは、成長性が低いということを意味する。

例えば同業種でPERが10倍のA社と50倍のB社があったとしよう。同業種平均のPERが30倍だったとすると、PERだけを見ればA社は「割安」、B社は「割高」に思える。しかし、A社のEGが2%、B社のEGが20%だったとすると、A社のPEGは5倍、B社のPEGは1.5倍となる。EPSの成長性を示すEGを考慮すると、投資対象としての魅力は、一見PERが低く割安に見えるA社株式よりもB社株式の方が高いことになる。

PEGレシオの適正値は「1~2倍」とされており、これを前提に逆算すれば、自社がどれくらいのEG(EPSの成長率)を目指すべきかが見えて来る。上述のとおり、「PEG=PER÷EG」であるため、これを変形すれば「EG=PER÷PEG」となる。例えPERが30倍の企業がPEG「1」を目指そうとすれば、毎期30%(=30÷1)のEPS成長率が求められるわけだ。

PEGは成長株投資に用いるのが一般的であるため、低成長の企業にはあまり用いられないが、最近はPEGの構成要素であるEG(EPSの成長率)の中長期的(3~5年)の目標値を開示する上場企業も増えている。高PERの成長企業が自社の株式の割安感を投資家に伝えるうえで有効と言えそうだ。

2016/04/07 セミナー「指名(諮問)委員会とサクセッションプラン」および「監査等委員会設置会社への移行事例と運営について」を2016年4月7日(木)に開催しました。

本セミナーはすでに開催済みですが、会員の方向けにWEBセミナーを配信中です。
WEBセミナー:指名(諮問)委員会とサクセッションプラン
WEBセミナー:監査等委員会設置会社への移行事例と運営について

上場会社役員ガバナンスフォーラムでは、2016年4月7日(木)の14時30分~17時40分に下記のセミナーを開催します。

セミナーのパンフレットこちら

時 間 テーマ 講 師
第一部
14:30

16:00
~投資家が納得する役員の選び方とは?~
指名(諮問)委員会とサクセッションプラン
ウイリス・タワーズワトソン
タレント・リワード セグメント
組織人事部門 シニアコンサルタント
河原 索 様
(かわはら さく)
第二部
16:10

17:40
~移行に伴う課題やその解決方法を
ケーススタディで学ぶ~
監査等委員会設置会社への移行事例と運営について
三菱UFJ信託銀行
法人コンサルティング部
会社法務コンサルティング室 主席法務コンサルタント 
下山 祐樹 様
(しもやま ゆうき)

■第一部の詳細

セミナー
の内容
指名委員会は指名委員会等設置会社には当然設置されていますが、コーポレートガバナンス・コードでは、監査役会設置会社や監査等委員会設置会社であっても、「独立社外取締役が取締役会の過半数に達していない場合」には、経営陣幹部・取締役の指名に係る取締役会の機能の独立性・客観性と説明責任を強化するため、取締役会の下に独立社外取締役を主要な構成員とする任意の諮問委員会を設置し、指名について独立社外取締役の適切な関与・助言を得るべきとしています(補充原則4-10①)。本セミナーでは、組織人事や経営者報酬に関する世界的なコンサルティング会社であるウイリス・タワーズワトソンの組織人事部門でコンサルタントを務め、多くの企業で指名(諮問)委員会の運営をサポートしてきた河原索様をお招きし、指名(諮問)委員会のメンバー構成、審議すべき内容など、指名委員会の実像を解説していただくとともに、投資家が納得する経営陣幹部候補の選抜、育成、モニタリングおよび指名とはどのようなものなのかという、役員の皆様にとっての最大の関心事についても考え方を示していただきます。
講師の
ご紹介
河原 索(かわはら さく)様
ウイリス・タワーズワトソン 組織人事部門 シニアコンサルタント
ウイリス・タワーズワトソンでは15年以上のコンサルティング経験を持ち、国内外の数多くの企業に対し、グループ・グローバルでの人事制度設計、組織変革、M&A後の組織・人事統合、経営者育成等のコンサルティングを提供。
国際基督教大学(ICU)教養学部社会科学科卒、慶應義塾大学大学院経営管理研究科修了。
共著「攻めのガバナンス 経営者報酬・指名の戦略的改革」(東洋経済新報社、2015年9月)

■第二部の詳細

セミナー
の内容
昨年(2015年)5月1日に施行された改正会社法により新たに認められた機関設計である「監査等委員会設置会社」に移行する事例が相次いでいるのは周知のとおりです。昨年7月14日時点では全上場企業で158社だった監査等委員会設置会社は、今年中に400社に到達すると予想する向きもあります。監査等委員会設置会社の増加に伴い、監査等委員会設置会社への移行事例に関するケーススタディも蓄積されてきました。本セミナーでは、監査等委員会設置会社への移行コンサルティングを数多く手掛けて来た三菱UFJ信託銀行様をお招きし、監査等委員会設置会社に移行する際の課題、移行してから生じた問題点、それらの解決方法などを、事例に基づき解説していただきます。今後、監査等委員会設置会社への移行を検討する企業はもちろん、既に監査等委員会設置会社となった企業にとっても、今後の運営において参考になるお話が聞けることと思います。
講師の
ご紹介
下山 祐樹(しもやま ゆうき)様
三菱UFJ信託銀行 法人コンサルティング部 会社法務コンサルティング室
主席法務コンサルタント
1984年早稲田大学大学院法学研究科修了(法学修士)
2004年~2006年国士舘大学非常勤講師(会社法)、2003年~2011年東京株式懇話会常任幹事・全国株懇連合会理事。
〔主要著書・論文等〕
『監査等委員会設置会社の活用戦略』(共著)(商事法務 2015年)
「株主総会の決議取消しについての実務対応」(『旬刊商事法務』2006号2013年)、「少数株主権等の行使について―少数株主権等の行使の実務と個別株主通知の実態の考察」(資料版/商事法務2014年6月号No.363)、「監査等委員会設置会社への移行判断における検討事項」(旬刊商事法務2054号2014年)、等。

なお、セミナー参加費につきましては、上場会社役員ガバナンスフォーラムの会員のみ無料、それ以外の方は2万円(税込 ※)となっております。
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<セミナー概要>

  • 第一部 指名(諮問)委員会とサクセッションプラン
  • 第二部 監査等委員会設置会社への移行事例と運営について
  • 【日時】2016年4月7日(木)14時30分~17時40分
  • 【場所】六本木ヒルズ森タワー23階 TMI総合法律事務所セミナールーム
  • 【受付】六本木ヒルズ森タワー1階ロビー 14時より
  • 【講師】第一部 ウイリス・タワーズワトソン
            タレント・リワード セグメント
            組織人事部門 シニアコンサルタント
            河原 索 様
        第二部 三菱UFJ信託銀行
            法人コンサルティング部
            会社法務コンサルティング室 主席法務コンサルタント 
            下山 祐樹 様
  • 【セミナー参加費】当フォーラム会員は無料、それ以外の方は2万円(税込)

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