2016/04/06 子会社の「のれん」、不要な減損に終止符も

マイナス金利の導入により手元資金が潤沢になった日本企業によるM&Aが活発化するというシナリオも考えられる(期待される)ところだが、 “失敗”も付きものなのがM&Aだ。巨額の資金を投じて買収した子会社の業績が上がらず、当該子会社の株式を会計上「減損」しなければならないことは珍しくない。

減損 : 固定資産の価格や収益性が著しく低下している場合に、固定資産の簿価を時価まで減額する処理のこと。

この場合に注意しなければならないのは、(M&Aにより取得した子会社に限った話ではないが)保有する子会社株式を減損処理した場合には、連結財務諸表上の「のれん」も合わせて減損することが求められている点だ(日本公認会計士協会の「連結財務諸表における資本連結手続に関する実務指針」32項)。子会社株式のみならず、関連会社()株式を減損処理した場合も同様の処理が求められる(同協会の「持分法会計に関する実務指針」9項なお書き)。

 自社との関係で、人事、技術、取引、資本等によって、支配とはいわないまでも、意思決定に重大な影響力をもつことができる会社。議決権の20%以上50%未満を所有している会社などが該当する。ケーススタディ「連結子会社の範囲を見直したい」の「「子会社」と「関連会社」の違いはどこにある?」や「SPCや組合を使った“連結外し”は事実上不可能」を参照。

のれん : 企業買収において被買収企業の実質価額(純資産額)と買収価額との間に差額がある場合、その差額を「のれん」という。ある企業を買収する場合には、被買収企業に何らかの超過収益力(技術力、販売網、優秀な人材等)となる要因があり、将来的にこの部分が利益に貢献すると考えて買収に至るのが通常であるため、のれんが発生するのが一般的。

要するに、子会社や関連会社の株式を減損した場合には企業グループとしての超過収益力(プレミアム)である「のれん」も毀損するのだから、その分は減損すべきというわけだが、子会社等の株式の減損処理に伴って“機械的に”連結グループの「のれん」を減損することに対しては疑問の声もある。というのも、・・・

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2016/04/06 子会社の「のれん」、不要な減損に終止符も(会員限定)

マイナス金利の導入により手元資金が潤沢になった日本企業によるM&Aが活発化するというシナリオも考えられる(期待される)ところだが、 “失敗”も付きものなのがM&Aだ。巨額の資金を投じて買収した子会社の業績が上がらず、当該子会社の株式を会計上「減損」しなければならないことは珍しくない。

減損 : 固定資産の価格や収益性が著しく低下している場合に、固定資産の簿価を時価まで減額する処理のこと。

この場合に注意しなければならないのは、(M&Aにより取得した子会社に限った話ではないが)保有する子会社株式を減損処理した場合には、連結財務諸表上の「のれん」も合わせて減損することが求められている点だ(日本公認会計士協会の「連結財務諸表における資本連結手続に関する実務指針」32項)。子会社株式のみならず、関連会社()株式を減損処理した場合も同様の処理が求められる(同協会の「持分法会計に関する実務指針」9項なお書き)。

 自社との関係で、人事、技術、取引、資本等によって、支配とはいわないまでも、意思決定に重大な影響力をもつことができる会社。議決権の20%以上50%未満を所有している会社などが該当する。ケーススタディ「連結子会社の範囲を見直したい」の「「子会社」と「関連会社」の違いはどこにある?」や「SPCや組合を使った“連結外し”は事実上不可能」を参照。

のれん : 企業買収において被買収企業の実質価額(純資産額)と買収価額との間に差額がある場合、その差額を「のれん」という。ある企業を買収する場合には、被買収企業に何らかの超過収益力(技術力、販売網、優秀な人材等)となる要因があり、将来的にこの部分が利益に貢献すると考えて買収に至るのが通常であるため、のれんが発生するのが一般的。

要するに、子会社や関連会社の株式を減損した場合には企業グループとしての超過収益力(プレミアム)である「のれん」も毀損するのだから、その分は減損すべきというわけだが、子会社等の株式の減損処理に伴って“機械的に”連結グループの「のれん」を減損することに対しては疑問の声もある。というのも、同じく日本公認会計士協会が出している「固定資産の減損に係る会計基準の適用指針」では、のれんの減損は、①減損の兆候の有無を確認し、②兆候がある場合には、減損損失の認識の判定を行い、③減損損失の測定を行う――というプロセスを経て行われるものだからだ。

株式市場が成熟していない新興国では、過剰(または過少)な流動性と投機筋の動きにより株価が乱高下することが多く、プレミアムが毀損してないにもかかわらず「株価が下落した」というだけで減損処理が求められることもある。上記「連結財務諸表における資本連結手続に関する実務指針」32項に従えば、このような場合にも、日本の親会社における連結財務諸表ではのれんを減損しなければならない。

こうした中、経団連や全国銀行協会は、財務会計基準機構(FASF)の基準諮問会議(会計基準の検討テーマなどを審議する機関)に対して、「資本連結手続実務指針32項等は削除すべき」旨を要望するとともに、企業会計基準委員会(ASBJ)に対しては、本件を会計基準改訂のテーマとして取り上げるよう依頼した。

現時点ではASBJが内部的に検討を行っている段階だが、仮に資本連結手続実務指針32項等が削除されれば、子会社や関連会社の株式の減損に伴う“機械的な”「のれん」の減損が不要となり、日本企業の積極的なM&Aを後押しすることになりそうだ。

2016/04/05 被買収企業の「雇用」を左右する買収価格

(2016年)4月2日、台湾の鴻海(ホンハイ)精密工業によるシャープの買収が正式に決まった。日本の大手電機メーカーが海外企業に買収されたのはこれが初めて()だ。一時はリストラの可能性も指摘されたが、鴻海側は日本国内の雇用は守る方針を示しており、今後2~4年で経営再建を目指すとしている。

 事業の一部売却であれば、東芝が先月(2016年3月)に白物家電を製造販売していた東芝ライフスタイルの株式を中国の美的集団に売却した例や、三洋電機が2011年に同じく白物家電を製造販売していた三洋アクアの株式を中国ハイアールに売却した例などがあるが、企業グループ丸ごとの被買収となると日本初である。

シャープの場合もそうだったように、「日本企業が買収される」という話になると、買収契約における「雇用」の扱いに注目が集まるもの。雇用の問題はいきおい感情論で語られがちだが、将来雇用を守れるかどうかの鍵を握るのが「買収価格」だ。買収価格は既存株主にとって重要なテーマであるだけでなく、従業員の雇用を中長期にわたって守る視点からも重要なテーマとなる。

買収価格によって・・・

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2016/04/05 被買収企業の「雇用」を左右する買収価格(会員限定)

(2016年)4月2日、台湾の鴻海(ホンハイ)精密工業によるシャープの買収が正式に決まった。日本の大手電機メーカーが海外企業に買収されたのはこれが初めて()だ。一時はリストラの可能性も指摘されたが、鴻海側は日本国内の雇用は守る方針を示しており、今後2~4年で経営再建を目指すとしている。

 事業の一部売却であれば、東芝が先月(2016年3月)に白物家電を製造販売していた東芝ライフスタイルの株式を中国の美的集団に売却した例や、三洋電機が2011年に同じく白物家電を製造販売していた三洋アクアの株式を中国ハイアールに売却した例などがあるが、企業グループ丸ごとの被買収となると日本初である。

シャープの場合もそうだったように、「日本企業が買収される」という話になると、買収契約における「雇用」の扱いに注目が集まるもの。雇用の問題はいきおい感情論で語られがちだが、将来雇用を守れるかどうかの鍵を握るのが「買収価格」だ。買収価格は既存株主にとって重要なテーマであるだけでなく、従業員の雇用を中長期にわたって守る視点からも重要なテーマとなる。

買収価格によって「のれん」の額が決まるが、買収後、被買収企業の経営が思い通りにいかず、業績が想定を下回る場合にはのれんの減損に追い込まれかねない。のれんを減損すれば「買収は失敗だった」と判断されるケースが多いため、買収企業の経営陣にとってのれんの減損リスクの低減は重要な課題となるが、そのリスクを左右するのが買収価格だ。

のれん :企業買収において被買収企業の実質価額(純資産額)と買収価額との間に差額がある場合、その差額を「のれん」という。ある企業を買収する場合には、被買収企業に何らかの超過収益力(技術力、販売網、優秀な人材等)となる要因があり、将来的にこの部分が利益に貢献すると考えられるため買収という判断に至るのが通常であるため、のれんが発生するのが一般的。
減損 : 固定資産の価格や収益性が著しく低下している場合に、固定資産の簿価を時価まで減額する処理のこと。

買収価格が高水準の場合にはのれんの額は大きくなり、被買収企業が相当な高業績を上げない限り、のれんの減損は免れない。この場合、一見すると減損を免れるために大胆なリストラが実施されやすいように見えるが、むしろ逆だろう。リストラのような短期的な施策による業績の押し上げ効果は限定的であり、中長期的な減損の回避にはつながらない。むしろ、被買収企業の従業員のモチベーションを高め、業績向上に邁進(まいしん)するよう促す方が合理的と言える。

反対に、買収価格が低水準の場合にはのれんの額は小さくなる。したがって、減損の回避という観点からは、被買収企業に求められる業績自体も低い水準で済むため、単なるリストラでも達成できてしまう可能性が高くなる。逆に言うと、買収企業の経営陣が被買収企業の従業員のリストラを決断する心理的なハードルは低い(=リストラを決断しやすい)ものとなろう。

このように、買収価格の高低は被買収企業における中長期的な雇用に重要な影響を及ぼす。鴻海の財務諸表は国際財務報告基準(IFRS)に準拠しているが、IFRSや米国の会計基準(US GAAP)ではのれんを償却しないことになっているため、減損以外でのれんが減価することはない。その分減損リスクは高く、経営陣は減損リスクに対して敏感にならざるを得ない。シャープのケースでは、当初買収価格は1株当たり118円とされたが、その後、足元の業績悪化等を織り込んだ結果、88円まで引き下げられて決着している。買収時点では「雇用を守る」との方針が示されているが、万が一、中長期的に経営再建が思うように進まない場合、この25%という買収価格の引き下げが雇用にどのような影響を与えることになるのか(業績達成のため従業員のリストラが決断されるのか)、注目される。

2016/04/04 集団的エンゲージメントに対する投資家の意識に変化

集団的エンゲージメント」については当フォーラムでも何度か取り上げてきたが、投資家フォーラムがその「規約」の中で「集団的エンゲージント(共同エンゲージメント)は行わない」旨を明らかにしているように(2015年6月9日のニュース「投資家フォーラムが本格始動、「共同エンゲージメント」は行わず」参照)、日本では集団的エンゲージメントは時期尚早と考えられてきた。その理由としては、大量保有報告書制度や公開買付制度という法規制上の問題が解決していないことや(詳細は「集団的エンゲージメント」参照 )、機関投資家の株式保有比率が英国の1980年代などと比べると低く、集団的エンゲージメントに踏み切っても実効性が低いこともあるが、何といっても機関投資家自身が集団的エンゲージメントを必要と考えていなかったことが大きい。

こうした中、・・・

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2016/04/04 集団的エンゲージメントに対する投資家の意識に変化(会員限定)

集団的エンゲージメント」については当フォーラムでも何度か取り上げてきたが、投資家フォーラムがその「規約」の中で「集団的エンゲージント(共同エンゲージメント)は行わない」旨を明らかにしているように(2015年6月9日のニュース「投資家フォーラムが本格始動、「共同エンゲージメント」は行わず」参照)、日本では集団的エンゲージメントは時期尚早と考えられてきた。その理由としては、大量保有報告書制度や公開買付制度という法規制上の問題が解決していないことや(詳細は「集団的エンゲージメント」参照 )、機関投資家の株式保有比率が英国の1980年代などと比べると低く、集団的エンゲージメントに踏み切っても実効性が低いこともあるが、何といっても機関投資家自身が集団的エンゲージメントを必要と考えていなかったことが大きい。

こうした中、日本投資顧問協会はスチュワードシップ・コードが制定されて以来2度目のアンケート調査を実施し、先月(2016年3月)結果を公表している。それによると、一昨年10月の調査時点では「スチュワードシップ・コードにおいて、英国同様の集団的エンゲージメントは日本においても必要な原則である」と考える投資家は43%に過ぎず、57%の投資家は不要と考えていた(4ページ⑫参照)のに対し、スチュワードシップ・コードが2年目を迎えた昨年10月の調査ではその比率が逆転し、必要と考える投資家が53%と、不要と考える投資家を上回った(5ページ⑥参照)。

もちろん、上述のとおり実際に集団的エンゲージメントを行うとなると超えるべきハードルは多い。しかし、スチュワードシップ・コードの受け入れから2年が経過し、エンゲージメントをはじめとする様々な活動を行う中で、投資家が集団的エンゲージメントの必要性を感じ始めていることの意味は大きい。日本の機関投資家それぞれの株式保有比率は低く、バラバラの対応ではその影響力は大きいとは言えない。したがって、まとまって行動することで、保有ウェイト比率だけでなく、その行動が周り企業に与える影響は大きくなると考えられる。実際、集団的エンゲージメントという手段を有しているという事実そのものが、企業に対して一定レベル規律を与える効果があるとの期待もある。

集団的エンゲージメントに対しては拒否反応を持つ企業も少なくないと思われるが、必ずしも企業にとってネガティブな話ばかりではない。まず、投資家はこの2年間の活動を通じて、お互いが話し合うことの重要性を感じている。経済産業省で開催されている経営者・投資家フォーラムが最もメジャーだが、その他にも様々なミーティングが行われるようになり、その意味を投資家は理解し始めている。これまで企業から見て投資家の意見が分かりにくかったのは、投資家のまとまりのなさにも一因があったと思われる。今後、多くの投資家が集まり話し合うことで投資家のコンセンサスが固まるようになれば、企業の対処の仕方もシンプルで済むことになる。

集団的エンゲージメントというと、投資家がまとまって何らかの要求を突き付けてくるというイメージを持つかもしれないが、多くの投資家は集団で議決権行使をすることよりも、自分たちの実力向上のために集まって勉強会の場を持つことに意義を感じている。英国の例を見ても、集団的エンゲージメントによって企業に要求を行うのは、ガバナンスの面で著しい問題があるなど特殊なケースに限られている。多くの企業にとっては、株主総会におけるまとまった反対票への懸念よりも、「投資家の意見が見えやすくなる」という効果の方が大きいと言えよう。

2016/04/01 子会社の監査役の会計監査は機能していますか?

“横浜マンション傾斜事件”では、当事者である旭化成建材のみならず、親会社の旭化成も矢面に立たされたように、子会社が不祥事を起こした場合には親会社も責任を問われかねない。それを未然に防ぐ役割を期待されるのが子会社の監査役だが、この役割を果たせていないことが多いのが現状だ。

会社法上、非公開会社(株式の譲渡制限を設けている会社)には、監査役や監査役会を設置しないという選択肢や、監査役を1人だけ置くという選択肢も認められている。また、監査役会を設置していない会社の監査役は、「社外性」も問われず、常勤である必要もない。このため、子会社が非公開会社の場合、親会社の経理部長や法務部長などの社員が「非常勤監査役」に就任していることが多い。常に子会社にいるわけではないうえ、親会社の社員としての業務も忙しいとなれば、必然的に子会社の監査役としての仕事は疎かになりがちだ。監査役による監査には、「取締役の業務遂行の適法性」を監査する業務監査と、会社法上の財務諸表である計算書類を監査する「会計監査」があるが、このうち会計監査の内容がずさんでミスが多いという例がしばしば見受けられる。

監査役監査の成果物としては、監査後の計算書類と監査結果(業務監査を含む)を記した監査報告書しかない。逆に言うと、第三者が監査役による監査結果を確かめるにはこれらの書類を見るしかないということだ。上述のとおり、このうち「監査後の計算書類」の記載内容に間違いがあるとなると、「一体何を監査したのか?」ということにもなりかねない。

よく見かける間違いとしては以下のようなものがある。・・・

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2016/04/01 子会社の監査役の会計監査は機能していますか?(会員限定)

“横浜マンション傾斜事件”では、当事者である旭化成建材のみならず、親会社の旭化成も矢面に立たされたように、子会社が不祥事を起こした場合には親会社も責任を問われかねない。それを未然に防ぐ役割を期待されるのが子会社の監査役だが、この役割を果たせていないことも多いのが現状だ。

会社法上、非公開会社(株式の譲渡制限を設けている会社)には、監査役や監査役会を設置しないという選択肢も認められている。また、監査役会を設置していない会社の監査役は、「社外性」も問われず、常勤である必要もない。このため、子会社が非公開会社の場合、親会社の経理部長や法務部長などの社員が「非常勤監査役」に就任していることが多い。常に子会社にいるわけではないうえ、親会社の社員としての業務も忙しいとなれば、必然的に子会社の監査役としての仕事は疎かになりがちだ。監査役による監査には、「取締役の業務遂行の適法性」を監査する業務監査と、会社法上の財務諸表である計算書類を監査する「会計監査」があるが、このうち会計監査の内容がずさんでミスが多いという例がしばしば見受けられる。

監査役監査の成果物としては、監査後の計算書類と監査結果(業務監査を含む)を記した監査報告書しかない。逆に言うと、第三者が監査役による監査結果を確かめるにはこれらの書類を見るしかないということだ。上述のとおり、このうち「監査後の計算書類」の記載内容に間違いがあるとなると、「一体何を監査したのか?」ということにもなりかねない。

よく見かける間違いとしては以下のようなものがある。

・消費税申告書を作成した結果、消費税の納税が必要になった場合には貸借対照表に「未払消費税」を計上し、還付金が発生すれば「未収消費税」を計上することになっている(ただし、金額的重要性がなければ独立掲記されない場合もある)が、これが「仮払消費税」「仮受消費税」のままになっていた(消費税の申告書を作成した結果、消費税の未払(未収)の額は確定しているにもかかわらず「仮払い」「仮受け」のままになっており、消費税申告書の作成に際し算定した未払(未収)消費税の額が貸借対照表に反映されていない)。

所有権移転外ファイナンス・リース契約に基づきリースしている資産を貸借対照表に資産計上しているにもかかわらず、資産計上したリース資産に対応するリース債務が計上されていなかった(リース債務は「未払費用」に含まれており、これをリース債務に振り替えて独立掲記するのを失念していたことが原因)。

・貸借対照表では「役員退職慰労引当金」と記載されているが、個別注記表では「役員退職慰労金」となっていた(勘定科目名の間違い)。

・平成20年に「棚卸資産の評価に関する会計基準」が施行され、既に低価法は廃止されているにもかかわらず(したがって、現在は原価法)、会計方針欄に「棚卸資産の評価方法として低価法を採用している」旨の記載があった。

・リース取引の会計方針が、平成19年に改正される前のリース取引に関する会計基準に従った記載のままとなっていた。


所有権移転外ファイナンス・リース : 満期まで解約が不能など、実質的には借り手が資産を購入し、代金を割賦で支払うに等しい「ファイナンス・リース」の1つ。ただ、「所有権移転外」という言葉のとおり、所有権は借り手には移転しないため、ファイナンスリースとオペレーティングリース(「物を貸して賃貸料をもらう」という元来のリース)の中間に位置付けられる。
個別注記表 : 会計処理等について補足的な情報を提供した一覧表のこと
低価法 : 取得原価と時価を比較し、どちらか低い方の価格で評価する方法
原価法 : 取得時の原価で評価する方法。ただし、期末における正味売却価額が取得原価よりも下落している場合には、強制的に正味売却価額まで貸借対照表価額を下げる。
平成19年に改正される前のリース取引に関する会計基準 : 一定の注記を条件に、通常の賃貸借取引と同様、リース料を費用計上するという会計処理が認められていた。

このような誤りは、一定の会計の素養がある者がある程度注意を払って監査を行えば容易に発見できるものだ。もちろん、計算書類を作成している経理担当者にも問題はあるかもしれないが、そういったことを是正するのが監査役の仕事である。何より、この程度の誤りすら見つけることのできない監査役が会計監査を適切に遂行できているはずがなく、ましてや子会社の経理不正を見つけることは期待できない。

子会社が会社法上の大会社に該当しなければ会計監査人(公認会計士・監査法人)の設置は任意とされており、会計監査人を設置していないケースが多い。会計監査人がいなければ、監査役が自ら会計監査をやるしかないのだが、そのような会社ではそもそも監査役が準拠している監査基準さえ不明確であることが多い。監査役が準拠すべき監査基準の一例として、日本監査役協会が出している「監査役監査基準」があるが、会計監査に関する記載を見れば分かるように、これは会計監査人がいることを前提として、「会計監査人が実施した監査の方法と結果の相当性についての意見表明」が中心の内容となっており、会計監査人がいない会社の監査役の参考にはならない。会計監査人のいない会社の監査役が参考にするのであれば、同協会から出されている「会計監査人非設置会社の監査役の会計監査マニュアル」の方が適している。

また、親会社の監査役が中心となって、子会社の監査役の会計監査能力を向上させるためのプログラムを提供するのも一案だ。グループ内での研修や討議、外部研修などを通じて子会社の監査役が育っていけば、その中から将来の親会社の監査役候補を選抜することもできる。

大会社 : 資本金5億円以上または負債総額200億円以上の株式会社

会計監査能力が向上すれば、業務監査の向上も期待できる。これは、取締役の不正が結果として会計面に反映されることは少なくないため。子会社の監査役による会計監査が機能すれば、グループ全体における監査の効率が高まるだけでなく、“グループ・ガバナンス”にも貢献するはずだ。

2016/04/01 役員報酬データバンク募集締め切りのお知らせ

役員報酬データバンクの募集は応募多数につき、2016年3月末をもって一旦締め切らせていただきました。

今後、また同様の調査を実施する可能性がございます。その際には本コーナーでお知らせさせていただきます。

ご参加いただいた会員の皆様には深く御礼申し上げます。誠にありがとうございました。

2016/03/31 (新用語・難解用語)地域統括会社

「地域統括会社」を保有する企業に衝撃が走る判決最近が出され、波紋を呼んでいる。

地域統括会社とは、日本の親会社が日本から海外の現地法人を管理することは効率的でないことから、日本の親会社の機能の一部を移管する形で、日本の親会社の子会社として海外に設立されるもの。地域統括会社の設立により、特定の地域(例えばアジア)にある複数の海外現地法人の業務の集約によるコスト削減(例えば経理、人事、法務などの管理業務、ITインフラ、コールセンターなどの機能を地域統括会社に集約)、意思決定の一本化・迅速化、流通経路の簡素化などが図られるなどのメリットがある。

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日本企業の活動のグローバル化に加え、平成22年度税制改正で地域統括会社を「タックスヘイブン対策税制」の適用対象から除外する途が開かれたことから、近年、地域統括会社の設立が相次いでいる。

タックスヘイブン対策税制とは、・・・

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