2016/02/29 2016年1月度チェックテスト第3問解答画面(正解)

正解です。
 M&Aが活発な米国で確立しているレブロン基準によると、会社が「売り」の状態にある場合、取締役は防衛策を講じてはならず、売却価格の最大化を図らなければならないとされています。これは「有利な買収提案を選ばなければならない」という至極当然な原理原則を定めたものです。日本では裁判例として同様のものが確立されているわけではありませんが、「特に有利な防衛策」が裁判で「何ら問題はない」と判断される可能性は極めて低いことから、問題文は間違いです。

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2016/02/05 シャープ買収に見るM&Aにおける社外取締役の役割(会員限定)

2016/02/29 2016年2月度チェックテスト第2問解答画面(不正解)

不正解です。
 ROSは「利益÷売上高×100」によって算出されます。増収減益は、この算式における分母の増加と分子の減少を意味するので、増収減益によりROSは“低下”します。問題文は「増収減益によりROSが“上昇”する」としている点で間違いです。

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2016/02/04 (新用語・難解用語)ROS(会員限定)

2016/02/29 2016年1月度チェックテスト第2問解答画面(正解)

正解です。
 ROSは「利益÷売上高×100」によって算出されます。増収減益は、この算式における分母の増加と分子の減少を意味するので、増収減益によりROSは“低下”します。以上より、問題文は「増収減益によりROSが“上昇”する」としている点で間違いです。

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2016/02/04 (新用語・難解用語)ROS(会員限定)

2016/02/29 2016年2月度チェックテスト

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【問題1】

英国産業連盟(CBI=Confederation of British Business)は、FTSE100企業の取締役会に占める女性比率を25%に引き上げることを目標とするよう提言している。


正しい
間違い
【問題2】

増収減益によりROSが上昇する。


正しい
間違い
【問題3】

会社が「売り」の状態にある場合、ホワイトナイトなど特定の者に特に有利な防衛策を講じても、何ら問題はない。


正しい
間違い
【問題4】

キャッシュリッチ、低ROE、低株価かつコーポレートガバナンス強化が遅れている企業は、アクティビストにとって格好のターゲットである。


正しい
間違い
【問題5】

複数の製商品をまとめて販売した際に、得意先からの要請により、販売した製商品の内訳の金額を変更して請求書を作成することは、販売額の合計金額を変えない限り、問題はない。


正しい
間違い
【問題6】

営業マンが交際費を使った際に、「1人当たり5千円以下の飲食費」に収めるために、参加者の数を水増しして経費精算をしてしまうと、「仮装・隠ぺい」行為として重加算税を課されかねない。


正しい
間違い
【問題7】

議決権行使助言会社大手の米グラス・ルイスの2016年版の議決権行使助言方針によると「過去5年平均のROEが5%を下回っており、かつ直近年度も5%を下回っている場合には経営トップの選任議案に反対を推奨する」としている。


正しい
間違い
【問題8】

マイナス金利の効果として、デット・ガバナンスの低下が懸念される。


正しい
間違い
【問題9】

政策保有株式の含み益が増加すればROEは落ち込む。


正しい
間違い
【問題10】

東証が初公表した企業価値向上表彰上位企業を、ROEを切り口として分析してみると、財務レバレッジを高めることで高ROEを達成した企業が大半であった。


正しい
間違い

2016/02/29 2016年2月度チェックテスト第1問解答画面(不正解)

不正解です。
 英国では「2015年中にFTSE100企業の取締役会に占める女性比率を25%にする」という目標を同年7月に前倒しで達成できており(以上より、問題文は間違いです)、今後は女性取締役比率の引上げを求める対象企業を拡大する方針です。もっとも一人で複数の企業の社外取締役を兼任する女性が多かったため、こうした数字は“見せかけ”のものに過ぎないとの指摘もあります。そこで、日本の経団連に相当する英国産業連盟(CBI=Confederation of British Business)は、社外取締役のように兼任ができない「業務執行役員」の女性比率25%を目標にすることを提言しています。

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2016/02/03 女性業務執行役員増加を求める声とともに浮上する人材育成問題(会員限定)

2016/02/29 2016年2月度チェックテスト第1問解答画面(正解)

正解です。
 リストリクテッド・ストックとは、一定期間の譲渡制限が付された株式報酬をいいます。リストリクテッド・ストックを使って実質的にパフォーマンス・シェアと同様の効果を持つ役員報酬を設計することができます。そのような役員報酬スキームが普及するかどうかは、当該スキームが税務上「事前確定届出給与」として取り扱われるかどうかにかかっています。税務上は、そのような株式報酬スキームは付与株式数自体が変動するわけではない(あくまで、「譲渡制限の解除ができなくなる」という位置付け)ことから、譲渡制限期間中における業績達成度合いなどの条件が株式付与時に“確定”している限り、「事前確定届出給与」として取り扱われる方向です(以上より、問題文は正しいです)。

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2016/03/02 パフォーマンス・シェアの性格を持つ株式報酬も損金算入される方向(会員限定)

2016/02/29 東証が企業価値向上表彰上位企業名を“初”公表、高ROSがROEに反映

一橋大学大学院商学研究科 准教授・日本IR協議会 客員研究員
円谷 昭一

 東京証券取引所(東証)は2月24日、今年度で4回目となる企業価値向上表彰を行ったが、今回初めて上位企業49社の個別企業名を公表した。

 企業価値向上表彰の審査プロセスは、まず第一次選抜で東証の全上場会社を対象にエクイティ・スプレッド(ROE-自己資本コスト率)の平均値および成長率が高い400社を選定する。第二次選抜ではこの400社に対して簡易アンケート調査が実施され、回答内容によってさらに上位50社が選ばれる。さらにこの50社に対して詳細アンケート調査が実施され、受賞対象となるファイナリスト数社が選ばれる。最後にこのファイナリスト企業の経営陣に対して選定委員がヒアリングを実施して表彰企業を決定するという流れとなっている。

 第3回までは最終的に表彰された企業名しか公表されていなかったが、今年は第二次審査(詳細アンケート調査)に進んだ49社の個別企業名が公表されている。市場関係者などからの公表要望を受けてのことだという。

 また、第一次選抜でのスクリーニング基準についても、前回まではROEが基準となっていたが、今回からエクイティ・スプレッドに変更されている。単にROEが単に高い企業が選ばれるのではなく、各社の自己資本コスト率の違いをスクリーニングに反映させることでより説得力のある選抜基準にしようというのが変更の趣旨である。

 企業名が公表された49社のROEの平均は20.57%であり、これは東証1・2部全上場会社平均の7.16%を大きく上回る。「純利益 ÷ 自己資本」により算出されるROEは下記の算式に分解できるが(これをデュポン式という)、この算式からも分かるように、財務レバレッジが大きくなればROEは高くなる。このため、マスコミ報道等では「財務レバレッジを効かせた企業が高ROEを達成している」と指摘されることもあるが、この49社についてはそうは言えない。・・・

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2016/02/29 東証が企業価値向上表彰上位企業名を“初”公表、高ROSがROEに反映(会員限定)

一橋大学大学院商学研究科 准教授・日本IR協議会 客員研究員
円谷 昭一

 東京証券取引所(東証)は2月24日、今年度で4回目となる企業価値向上表彰を行ったが、今回初めて上位企業49社の個別企業名を公表した。

 企業価値向上表彰の審査プロセスは、まず第一次選抜で東証の全上場会社を対象にエクイティ・スプレッド(ROE-自己資本コスト率)の平均値および成長率が高い400社を選定する。第二次選抜ではこの400社に対して簡易アンケート調査が実施され、回答内容によってさらに上位50社が選ばれる。さらにこの50社に対して詳細アンケート調査が実施され、受賞対象となるファイナリスト数社が選ばれる。最後にこのファイナリスト企業の経営陣に対して選定委員がヒアリングを実施して表彰企業を決定するという流れとなっている。

 第3回までは最終的に表彰された企業名しか公表されていなかったが、今年は第二次審査(詳細アンケート調査)に進んだ49社の個別企業名が公表されている。市場関係者などからの公表要望を受けてのことだという。

 また、第一次選抜でのスクリーニング基準についても、前回まではROEが基準となっていたが、今回からエクイティ・スプレッドに変更されている。単にROEが単に高い企業が選ばれるのではなく、各社の自己資本コスト率の違いをスクリーニングに反映させることでより説得力のある選抜基準にしようというのが変更の趣旨である。

 企業名が公表された49社のROEの平均は20.57%であり、これは東証1・2部全上場会社平均の7.16%を大きく上回る。「純利益 ÷ 自己資本」により算出されるROEは下記の算式に分解できるが(これをデュポン式という)、この算式からも分かるように、財務レバレッジが大きくなればROEは高くなる。このため、マスコミ報道等では「財務レバレッジを効かせた企業が高ROEを達成している」と指摘されることもあるが、この49社についてはそうは言えない。

財務レバレッジ : 自己資本に他人資本(負債)を加えてどれくらいの資産を有しているのか、すわなちいかに負債をうまく使って事業規模の拡大を図っているかを示す。

ROE=売上高利益率(ROS=純利益/売上)×総資産回転率(売上/資産)×財務レバレッジ(資産/自己資本)

 東証はROEを売上高利益率(ROS)、総資産回転率、財務レバレッジに分解した結果も公表している(こちらを参照)が、49社の財務レバレッジは平均で1.77であり、全上場会社の平均の2.02よりも逆に低い値となっている。これは、高ROE企業の方が自己資本が厚く、財務レバレッジを高めることで高ROEを達成しているとは言えないということを意味している。

 一方、総資産回転率を見ても49社と全上場会社では平均値に大きな差はない。すなわち、ROEの差に影響を与えているのはROSの水準ということになる。ROSでは全上場会社平均が4.41%であるのに対して、49社の平均は11.18%となっている。企業価値向上表彰では今年度から審査対象企業の時系列での分析結果も公表されているが、この傾向は時系列推移でも変わらない。

 また、前回(2014年度)と今回の結果を比較すると、「経営計画の策定の有無」「経営計画の公表の有無」「資本コストの認識水準」での変化が見て取れる。たとえば、簡易アンケートの中に資本コストの認識についての設問があるが、この設問において「資本コストを認識しており具体的数値を把握している」と回答した企業は、前回が48.3%であったのに対して今回は52.7%に上昇している。JPX日経400の算出開始、伊藤レポートやコーポレートガバナンス・コードの公表などと相まって、資本コストを認識した経営へと舵を切る上場会社が徐々に増えてきていることが背景にあると考えられる。

 ただ、「資本コストを認識しているが具体的な数字は把握していない」と答えた企業も前回の19.2%から今回は19.8%と微増している。自社の資本コストを認識しておくことは(その数字を公表するかどうかは別として)投資家との対話においても有益なのは間違いない。資本コストの算出それ自体はそれほど難しいことではないので、これまで具体的な数値を認識してこなかった会社は、まずは社内で自社の数値を把握しておきたいところだ。

2016/02/29 【2016年1月の課題】優秀な学生を確保するための採用活動:解答(会員限定)

採用活動(若年者雇用)を取り巻く状況

 採用活動について考える前に、若年者雇用を取り巻く状況を見ておきましょう。

(1)人口減少社会における現状と今後
 まずは、我が国では既に深刻な人口減少が始まっていることを認識しておく必要があります。15~64歳の「生産年齢人口」のピークは1995年の8,726万人です。それから19年後の2014年の生産年齢人口はピーク時から約1,000万人も減少しており、さらに2060年には4,418万人とピーク時の半分近くまで減ってしまうとの推計があります(総務省「人口推計」、国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口(2012年1月推計、出生中位[死亡中位]推計)」)。また、就業者数も、2030年には2014年に比べ790万人減少する可能性があるとされています(厚生労働省「雇用政策研究会報告書」(2015年12月)において、「経済成長と労働参加が適切に進まないケース」の数値)。

 人口に関する推計は余程のこと(例えば移民の受け入れなど)がない限り大きく変わることはありません。つまり、企業は人口減少、労働力不足が今後さらに加速していく中で採用活動を行なっていかなければならないということです。

図表1 就業者数の将来変化の推計(2014→2030年)
subject_answer_16020a

(2)新卒者の定着・離職状況
 一時期“七五三現象”と言われていた若年者の離職率は近年どうなっているでしょうか。厚生労働省の調査によると、2012年3月卒の新卒者における就職後3年以内の離職率は、中学卒で65.3%(2001年72.3%)、高校卒で40.0%(同48.9%)、大学卒で32.3%(同35.4%)でした。いずれも以前に比べると下がっていますが、いまだ大卒者は3人に1人が3年以内に離職しています。企業からすれば、せっかく採用した者が早期に離職するということは、採用活動に費やした長い時間と社員の労力が無駄になったということを意味しており、採用活動に携わった社員のモチベーションの低下を招く恐れもあります。

七五三現象 : 就職してから3年以内に中卒者の7割、高卒者の5割、大卒者の3割が離職する現象のことをいう。

 若年期における早期離職は、その後の不安定雇用や繰り返される離転職の契機となり、生涯にわたるキャリア形成ができにくくなるだけでなく、結婚・出産年齢の上昇などにもつながり、日本が直面している人口減少・少子化対策においても悪影響を与えることになります。最近は企業の平均勤続年数や新入社員の定着率などに注目する株主等のステークホルダーも出てきており、経営陣は企業の社会的責任という観点からも看過できない問題として認識する必要があります。

図表2 若年者の離職状況
subject_answer_16020b

 人口減少によって若年者を中心に人手不足が一層深刻化し、優秀な人材の争奪戦がさらに激化する中、経営陣は多くの労力とコストを割いて採用した新入社員が早期に離職しないようにしながら、自社の社員として戦力となる人材へと育成していかなければならないとの認識・危機感を持ち、これを社内で共有するよう努めることが求められます。これができなければ、最も重要な経営資源が「人材」である多くの日本企業では、(たとえ短期的には問題がなかったとしても)持続的な成長・発展にブレーキがかかることになるでしょう。

(3)経団連「採用選考に関する指針」の改定
 採用活動においては、守らなければならない法律や尊重すべきルールもあります。

 まず、新卒予定者に対する職場情報の提供の義務化などを盛り込んだ若者雇用促進法です(2015年10月1日施行済。ただし、職場情報の提供義務化は2016年3月1日施行予定)。同法は、雇用のミスマッチを軽減するため、新卒者等から企業情報の提供を求められた場合には、①募集・採用、②雇用管理、③職業能力の開発・向上――の3つの類型に関する情報を、①~③から最低1つずつ提供することを企業に義務付けています。

 もう1つは、経団連が2015年12月に改定した「採用選考に関する指針」です。経団連の指針というと、経団連に加盟していない企業は「ウチには関係ない」と思うかも知れませんが、その認識は改めるべきです(理由は後述)。

 かつての経団連のルール(採用選考に関する企業の倫理憲章)では、採用に関する広報活動(セミナー・会社説明会)の開始は「卒業・修了学年前年の12月1日以降」、選考活動(面接・試験)の開始は「卒業・修了学年の4月1日以降」とされていましたが、2013年4月、安倍総理は経済3団体(経団連、日本商工会議所、経済同友会)に対し採用選考活動時期の“後ろ倒し”を要請しました。これを受け、経団連は新たに「採用選考に関する指針」(2016年度入社分から適用)を策定し、広報活動は「卒業・修了前年度の3月1日以降」、選考活動は「卒業・修了年度の8月1日以降」と、広報活動、選考活動とも開始日を大幅に後ろ倒ししました。ところが、「学生の学習時間の確保」と「海外留学の促進」という政府の思惑とは裏腹に、採用活動はかえって長期化し、企業・学生双方に悪影響を与えたとの指摘が多数なされました。

図表3 2016年度入社の採用選考活動でみられた主な問題点

① 学生(特に理系院生)の学事日程・研究活動に多大な支障をきたした。
② 広報活動期間が5か月間の長期に及び、中だるみする学生が多く見られた。
③ 学生に酷暑の中での就職活動を強いることになった。
④ 学生の部活動に支障をきたした。
⑤ 大学教授等からの苦情が多く寄せられた。
⑥ 学校推薦の対応等、大学側の足並みが揃わず、企業の負担が高まった。
⑦ 経団連「採用選考に関する指針」を遵守した企業が不利益を被った。
⑧ 中堅・中小企業において内々定辞退者が多発し、採用選考活動が長期化した。
⑨採用担当者の業務量が増加しただけでなく、社員のワーク・ライフ・バランスにも支障が生じた。

 そこで経団連は再び「採用選考に関する指針」を改定(2017年度入社分から適用)、広報活動の開始時期は変更せず(卒業・修了前年度の3月1日以降)、選考活動の開始時期を「卒業・修了年度の6月1日以降」と、2か月前倒ししています。ただし、6月1日はまだ夏休み前であり授業などが行なわれていることから、同指針では、面接や試験の実施に際し、①余裕を持った事前連絡、②授業やゼミ、実験、教育実習などの時間と重ならないような日程設定、③土日・祝日、平日夕方以降の時間帯の活用――など、学事日程等に対する一層の配慮を求めています。また、留学経験者を対象に別途採用枠を設けるなどの措置を採っている場合には、自社のホームページ等で積極的に公表することも促しています。

図表4 経団連「採用選考に関する指針」(2015年12月改定)のポイント
subject_answer_16020c

 また、経団連の指針改定を受けて、2015年12月10日には、政府の取組みとして、内閣府、文部科学省、厚生労働省、経済産業省の各担当局長の連名で、約450の経済団体と業界団体の長に対し、同指針の内容を踏まえた採用活動を行なうよう要請する文書が出されています。したがって、経団連の会員企業でなくても、同指針に則った活動を行なうべきでしょう。同指針を順守することを決定した場合には、その旨を自社のホームページや採用関連資料に掲載するなどして、学生や学校関係者などにPRするよう努めることが望まれます。

人材不足時代における採用活動の方向性

 企業が継続して成長を続け、その果実を労働条件の向上などの形で社員に適正に分配し、それを受けて社員がさらに生産性や付加価値の向上に取り組むという「企業内での好循環」の実現は、自社の現在に目を向けるだけでなく、将来ビジョンを見据えた人材確保ができるかどうかにかかっています。

 仮に現状では優秀な人材のおかげで順調に成長していたとしても、その代わりとなる社員、後継者がいなければ、将来に対して大きな不安を抱き続けることになります。経営者は現状を意識しつつも、常にその先を考えていなければなりません。自分が役員でいる間だけ事業が順調にいったとしても、将来を担う人材の確保・育成を怠れば、経営者失格の誹りは免れないと肝に銘じておくべきです。

 こうした観点から、企業が採用活動を進める際のポイントを挙げてみましょう。

(1)採用したい人材像を具体化する
 自社の求める・自社に相応しい人材像を明確にすることはもちろんですが、今回の採用活動で特に採りたい人材は具体的にどういう人なのかを明らかにしておくことが肝要です。

 経団連の「2015年度新卒採用に関するアンケート調査結果」によれば、選考時に特に重視した要素(5つまで選択)は「コミュニケーション能力」が12年連続でダントツの1位(85.6%)で、以下「主体性」(60.1%)、「チャレンジ精神」(54.0%)が上位3つを占めており、この傾向に大きな変化はありません。これらの能力・要素はマストとして、それとは別に、今回の採用活動において採用すべき人材、すなわち、自社の将来ビジョンや現在の人材戦略に照らして、どのような得意分野・スキルを持っている人材を求めているのかを明らかにし、事前に応募してくる学生に周知できるとベターです。

 そして、そのような人材を採用するためには、実際の選考活動、特に面接の場面において、その時の面接官の好みや気分によって合否が左右されることのないよう、できるだけ客観的な採用基準を決め、これをすべての面接官や最終面接を行う役員が共有しておく必要があります。

図表5 選考時に特に重視した要素(5つまで選択)
subject_answer_16020d

(2)効果的な採用(募集)活動を考える
①採用(募集)の方法

 採用したい人材像を明確にしたものの、望むような人材からの応募が来ないといった声は多くの企業で聞かれます。ここで重要なのは、どのような採用(募集)活動を行なうのか、言い換えれば、どのような「方法」で行なうのかということです。

 自社ホームページにおける採用説明会への参加募集や、就職支援会社を活用した広告掲載などのほか、大学の学内セミナーへの参加、大学の就職課への訪問、特に理系学生の採用にあたっては、採用担当者が大学教授を直接訪問して学生の推薦を依頼することもあると思います。これは有効な方法であると思いますが、訪問の際には「なぜこの大学なのか、なぜこの教授に依頼しに来たのか」をしっかりと先方に伝えられるようにしておくことが最低限必要です。意外にこの点がおざなりになっているうえ、売手市場のときだけ依頼をしてくるような企業も少なくないとの話も聞きます。そのような企業に自分の愛弟子であるゼミ生を出したくないと言っている大学教授も実際に存在します。耳の痛い話かも知れませんが、企業は真摯に受け止め、誠実に対応しなければなりません。

②採用(募集)活動のタイミング
 応募者である学生が情報収集に動き出すタイミングを踏まえることも非常に重要です。

 転職者は、年(年度)初めである1月(4月)入社に向けて、その1~2か月前から動き出す傾向がありますが、新卒の場合、経団連の指針に則れば採用選考活動の開始時期は卒業・修了年度(4年制大学であれば4年生)の6月1日以降ですので、企業はそれに合わせて万全の準備をしておかなければなりません。特に今年は、広報活動開始から採用選考開始までの期間が2か月短縮されて3か月間(3~5月)しかありませんので、より効率的な広報・採用活動が必須となります。学生からの問い合わせ等にスムーズに対応することはもちろん、自社からの情報発信もさまざまなツールやチャンネルを活用して行うことを検討する必要があります。

③求人情報の内容
 仕事内容や勤務時間・場所、賃金、雇用形態などの労働条件に関する事項に加え、自社の将来ビジョンとその実現のために求めている人材像をできるだけ記すことが望ましいです。その際、できるだけ具体例を示すことで、求める人材とは異なる人材からの応募を減らすことや、逆に望ましい人材からの応募の誘因とすることが期待できます。採用側と応募側の認識・意識の「ズレ」をできるだけなくしておくことが肝要です。

 また、求人情報の内容を検討する際には、他社との差別化という視点も欠かせません。つまり、「我が社で働くとこんな良いことがありますよ」という自社のPRポイント、自社の強みが何なのかを改めて考えてみるということです。その際には、経営陣や採用担当だけでなく、広く従業員から意見を聞くとよいでしょう。従業員がどういった点に自社で働くことの魅力を感じているのかを知ることは、採用活動だけでなく、今後の自社の経営を考える際にも役立ちます。もしかしたら、経営陣や採用担当が当たり前と思っていても、実は従業員や他の企業から見ると魅力的に映る社風や社内制度・施策などが発見できるかもしれません。このようないわば“自社の棚卸し”を行ない、その結果を積極的にアピールしていくことは、採用活動において非常に有益です。

 その際、事実でないことを記載したり、誤解を招くような誇大表現を避けるべきであることは言うまでもありませんが、その一方で、自社の悪い点、ネガティブな情報はどのように扱えばよいでしょうか。優秀な人材の争奪戦の中、採用活動には効果的な自社のアピールが欠かせません。しかし、自社の良い点だけを伝えるだけではなく、自社の実情を率直に伝えることも重要です。なぜなら、入社前に良い情報だけを与えると、入社後にちょっとしたことで「こんな会社とは思わなかった」と落胆し、早期退職する若手社員が現れる危険性が高くなるからです。あらかじめネガティブな情報も伝えておくことで、このようなリスクを軽減することができます。また、例えば、面接の際にあえてネガティブな情報を伝え、それに対する反応を見ることで、その人材が自社に適しているか、そして本当に自社に入社したいのかを見極める際の参考にすることもできます。

(3)採用活動の重要性を社内で共有する
 採用担当者の準備は多岐にわたり、特に広報活動開始以降は説明会や面接の準備などで多忙を極め、社内の他部署への協力依頼が後手に回ったり、あるいは忘れてしまうことがあるかもしれません。しかし、せっかく学生から問い合わせがあったというのに、たまたま電話を受けた社員が採用活動内容を知らずに何も答えられなかったというのでは、自社に対する学生の第一印象はかなり悪くなります。最低限、どんな求人を出しているのか、また、採用選考活動開始後は、面接の場所や時間、募集職種などの基本的な質問に対しては担当部署以外の社員でも応対できるよう、社内体制を整えておくべきです。

 さらに、採用活動の重要性・意味合いを経営陣が社内に周知徹底することによって、採用活動は決して「一部の部署が行なっている毎年恒例の業務」ではなく、「同じ会社で働く未来の仲間を見つけるための全社的なプロジェクト」へと社員の意識を変えることができれば、その会社の採用活動はもとより、社員のモラルもレベルが1つ上がったと言えるでしょう。

 社員への周知のやり方としては、メールや社内報、イントラネットといった一般的な方法を活用するだけでなく、例えば朝礼や社員総会など多くの社員が顔を合わせる機会に、採用担当からではなく経営陣が自らの言葉で語りかけると、非常に効果的でしょう。

「マネジメントの個別化」の推進を

 このように時間や労力を費やして社員を採用しても、早期に辞められてしまっては元も子もありません。では、新入社員はじめとする若手社員を定着させるにはどうしたらよいでしょうか。
この問いに対する即効性のある答えはありませんが、1つのキーワードになるのが「マネジメントの個別化」です。

 かつてのように、会社に入れば誰もが管理職を目指す中、画一的なマネジメントをしておけば十分であった時代とは異なり、近年は若手社員の仕事やキャリアに対する意識はかなり多様化しています。このような若手社員に対して従来型の画一的なマネジメントを押し付ければ、「こんなはずではなかった」「こんな仕事をするために入社したのではない」と、あっさり会社を去ってしまう若手社員が続出することにもなりかねません。

 こうした事態を避けるため、経営陣としては、自らのキャリア形成に主体的に取り組む若手社員を支援する社内風土と仕組みをつくることが必須ですし、それにも増して、近年「メンター制度」を採用している企業の増加に象徴されるように、若手社員一人ひとりに合った社員教育、つまり「個別マネジメント」が求められていると言えるでしょう。

メンター制度 : 年齢や社歴の近い先輩社員が指導役となり、後輩社員の育成や悩みの相談に乗るという社員教育の仕組み。後輩社員にとっては、上司などに比べ先輩社員の方が接しやいため、精神的な安定を保ちながら(その結果、離職も防止)業務スキルを身に付けられる一方、先輩社員にとっても、マネジメントスキルを習得する訓練の機会となるというように、双方にメリットがある。

 若手社員に限らず、「会社(上司・先輩など)は自分のことをちゃんと気にかけてくれている」と実感している社員は多少のことで辞めたりしませんし、会社のために懸命に働いてくれるものです。上司と部下、先輩と後輩、同僚といった「人と人とのつながり」が、会社と社員との連帯感となり、会社の競争力の源泉となります。これが、我が国企業の人事・労務管理における要諦であり、こと採用活動においては、「この人となら一緒に働ける・働いてみたい」と思える人材を採用することが、実は最も重要で、かつ正確な選考基準だと言えるのではないでしょうか。

2016/02/29 【2016年2月の課題】マイナス金利への対応方針

2016年2月の課題

 年明け以降、株式市場は大きく下落し、為替も急速に円高に動くなど、企業活動の前提が大きく変化しています。
 さらに企業を戸惑わせることなったのが、日銀によるマイナス金利の導入です。
 こうした中、投資家から、貴社としてのマイナス金利への対応方針について質問を受けました。貴社はこの質問に対し、どのような点に留意し、どのような情報・回答を用意する必要があるでしょうか?

 貴方の考えを述べてください。

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