2016/02/02 中国子会社が抱える財務リスク(会員限定)

 生産コストの引下げを狙った日本企業の中国進出はもはやひと昔前の話となり、最近ではむしろ人件費の高騰による競争力低下にあえぐ中国子会社を持つケースが少なくない。

 本業で稼げなくなった中国子会社が、財務面で稼ごうとしてリスクを抱えることになった実例を紹介しよう。

 ある上場会社(親会社)で、中国子会社の月次決算をモニターしていた海外事業部の従業員が、中国子会社のB/Sで「投資」勘定が急増していることに気付いた。中国子会社に報告を求めたところ、「投資リスクの少ない金融商品に投資している」とのことであったが、親会社は急遽、内部監査室による中国子会社への特命監査(特命監査については、2015年12月18日のニュース「監査の“エアポケット”への対処」参照)を実施することになった。その結果、中国子会社が親会社に無断でデフォルトリスクの高い理財商品に多額の投資を行っていたことが発覚した。中国子会社では、多額の投資に際しては親会社の承認が必要である旨の権限規程が定められてはいたものの、実際には遵守されていなかった。特命監査では、操業度の低下により計画通りの営業利益を稼げなくなった中国子会社の経営陣が、利益をひねり出そうとして理財商品に手を出したことがわかった。

理財商品 : 中国で販売されている高利回りの商品。元本は保証されておらず、元本償還が滞るリスクが高い。中国の不動産バブルの元凶とも言われている。

 もちろん、親会社は中国子会社の経営のすべてを現地に任せていたわけではない。親会社は中国子会社に日本人を1名出向させ、その者に経営の監視および親会社の意向の伝達、子会社の月次・年次レポートの作成などをさせていた。しかし、その日本人出向者は中国子会社では実権を握れておらず、事後承認を迫られるケースが少なくなかった。問題となった理財商品への投資は、その典型例であった。

 親会社の強い働きかけにより理財商品への投資契約を何とか解約させたものの、その理財商品は中国国内では比較的信用力が高いと評価されているらしく、実際に高い利回りで運用できていた実績があっただけに、中国子会社側にはわだかまりが残ることとなった。

 「リスクの高い理財商品への投資」は決してレアケースではない。中国に子会社や関連会社を有する上場会社の役員(子会社管理担当の取締役や監査役等)は、子会社等で理財商品への投資が行われていないか点検する必要がある。また、現時点で投資を行っていないからといって安心するのは早計だ。親会社の関与を経ずにそのようなリスクの高い投資が行われる可能性の有無と、どのような内部統制でそれを防止できるかについても、あわせて検討しておくべきだろう。

2016/02/01 営業秘密保護をめぐる2つ目の“ガイドライン”に企業から懸念の声

 昨年(2015年)は、日本の法制度が「営業秘密」の保護強化に向けて大きく舵を切った年だったと言える。おさらいすると、まず同年1月には、企業側から「『営業秘密』として保護されるための要件が厳しすぎる」(2015年5月26日のニュース「行政庁が作る「ガイドライン」の法的根拠」の2・3段落目参照)と長らく不評だった経済産業省の「営業秘密管理指針」が全面改訂され、保護を受けるためのハードルを大幅に引き下げる解釈が示された。そして、昨年の通常国会では不正競争防止法が改正され、刑事罰の重罰化や、転得者の処罰対象への追加、さらに、民事上の裁判における原告側の立証責任の緩和、といった大幅なルール変更がなされた(役員会Good&Bad発言集「リストラに伴う技術流出リスクへの対応」の「刑事上の措置」、2015年7月24日のニュース「訴訟増加も!営業秘密の不正使用、立証責任が転換」参照)。

転得者 : 三次取得者。二次取得者(例えば営業秘密を盗み出した者から当該営業秘密を購入した情報ブローカー)からさらに情報を購入した者を指す。

 改正不正競争防止法は本年(2016年)1月1日に施行されたばかりであり、企業が改正の効果の大きさを実感するのはもう少し先のことになろうが、新日鐵住金、東芝という日本有数の大手メーカーが“被害者”としてクローズアップされてからわずか数年で企業の財産である「営業秘密」の保護強化に向けた動きが一気に進んだこと自体は、企業にとって悪い話ではないだろう。

 こうした中、企業の間で新たな懸念として浮上しているのが、・・・

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2016/02/01 営業秘密保護をめぐる2つ目の“ガイドライン”に企業から懸念の声(会員限定)

 昨年(2015年)は、日本の法制度が「営業秘密」の保護強化に向けて大きく舵を切った年だったと言える。おさらいすると、まず同年1月には、企業側から「『営業秘密』として保護されるための要件が厳しすぎる」(2015年5月26日のニュース「行政庁が作る「ガイドライン」の法的根拠」の2・3段落目参照)と長らく不評だった経済産業省の「営業秘密管理指針」が全面改訂され、保護を受けるためのハードルを大幅に引き下げる解釈が示された。そして、昨年の通常国会では不正競争防止法が改正され、刑事罰の重罰化や、転得者の処罰対象への追加、さらに、民事上の裁判における原告側の立証責任の緩和、といった大幅なルール変更がなされた(役員会Good&Bad発言集「リストラに伴う技術流出リスクへの対応」の「刑事上の措置」、2015年7月24日のニュース「訴訟増加も!営業秘密の不正使用、立証責任が転換」参照)。

転得者 : 三次取得者。二次取得者(例えば営業秘密を盗み出した者から当該営業秘密を購入した情報ブローカー)からさらに情報を購入した者を指す。

 改正不正競争防止法は本年(2016年)1月1日に施行されたばかりであり、企業が改正の効果の大きさを実感するのはもう少し先のことになろうが、新日鐵住金、東芝という日本有数の大手メーカーが“被害者”としてクローズアップされてからわずか数年で企業の財産である「営業秘密」の保護強化に向けた動きが一気に進んだこと自体は、企業にとって悪い話ではないだろう。

 こうした中、企業の間で新たな懸念として浮上しているのが、経済産業省が昨年末に示した「秘密情報の保護ハンドブック~企業価値向上に向けて~(案)」(以下「ハンドブック案」)だ。

 ハンドブック案には、「秘密情報の分類」から「具体的な情報漏洩対策」まで、情報を保護するための様々な対応例が事細かに書かれており、さらに従業員の入社時・退職時の誓約書の書式のサンプルも掲載されるなど、非常に盛りだくさんの内容になっている。これだけ手厚いものを作成しようとしているというところからも、「営業秘密保護」に対する政府の思い入れが伝わってくるが、一方で、企業がこの「ハンドブック案」の内容を遂行するにはかなりの困難が伴う。

 元々このハンドブック案は、上述の「営業秘密管理指針」改訂で、「法的保護を受けられる最低限の水準」を引き下げた際に、「最低限の水準を超えた『ベスト・プラクティス』も示すべき」という意見があったことを受けて作成されたものであり、そこに書かれている内容はあくまで“理想”に過ぎないことから、「この内容を完璧に実行できなくても問題ない」という見方はできる。

 しかし、営業秘密を巡っては、企業は常に「被害者」となるわけではなく、「加害者」と疑われて紛争に巻き込まれることもあり得る(現にハンドブック案にも、「他社の秘密情報に係る紛争への備え」という章が設けられている)。そのリスクを踏まえれば、法令の水準を超えたレベルでコンプライアンスを徹底することを要求されている多くの企業にとって、単に「理想に過ぎない」という理由で、政府が示したハンドブックの内容をスルーすることはできない。最悪の場合、ここに書かれた対策を実行していなかったために紛争に巻き込まれ、取締役の責任が問われることもなりかねないからだ。

 そう考えると、このハンドブック案も、昨年1月に全面改訂された「営業秘密管理指針」と同様に、一種の“ガイドライン”としての性格を帯びてくることになる。そして、企業側のリソースにも限りがある中で、ここに書かれている“理想”にどこまで近付くことができるか、仮にこのとおりに対策を行うことができないとしても、その理由を合理的に説明することができるかといったことが今後企業に求められるようになっていく恐れがある。

 「秘密情報の保護ハンドブック」という新たな“ガイドライン”が企業の営業秘密対応にどのような影響を与えていくのか、当フォーラムでも引き続きウォッチしていきたい。

2016/01/31 【2015年12月の課題】報酬委員会設置時の留意点:解答(会員限定)

<解答者>
ウイリス・タワーズワトソン
経営者報酬部門 コンサルタント 伊藤 竜広
03-3581-6530
tatsuhiro.ito@willistowerswatson.com
reward
報酬委員会は「社長」or「取締役会」どちらの下に置くべき?

 「役員報酬」「経営者報酬」というと(本稿では「経営者報酬」に統一します)、従来は人事的な側面から語られることが多かったのですが、特に2015年6月からコーポレートガバナンス・コード(以下、「CGコード」)が施行されて以降は、ガバナンスの観点から注目を集めるようになりました。

 経営者報酬のあり方にはどの企業にも当てはまる「正解」があるわけではありません。業界及びその中での自社の位置づけ、ビジネスモデル、固有のカルチャー・・・等々、その企業の置かれた状況により正解は異なってきます。そのような中で、自社の経営者報酬制度の妥当性についてきちんと説明責任を果たすための仕組みが「報酬(諮問)委員会」です。CGコードでも任意の仕組みとしての「報酬(諮問)委員会」の設置が提案されています(補充原則4-10①)。

 指名委員会等設置会社であれば法定の報酬委員会が存在しますので、本稿では監査役(会)設置会社または監査等委員会設置会社における“任意の”報酬(諮問)委員会の設置にあたって、主にCGコードとの関連から検討すべき点について解説しますが、任意の報酬(諮問)委員会は法的な権限を持たないが故に、ガバナンス上の有効性を説明する上では、その位置づけを明確にしておくことが重要になります。

 しばしば見受けられるのが、報酬(諮問)委員会が「社長や代表取締役の諮問機関」とされているケースです。CGコードの補充原則4-10①では、任意の報酬(諮問)委員会は、「取締役会において社外取締役が過半数を占めない場合」に、「取締役会の機能の独立性・客観性と説明責任の強化のために資するもの」と整理されています。また、当該補充原則における「例えば、取締役会の下に(中略)任意の諮問委員会を設置することなどにより(中略)、指名・報酬などの特に重要な事項に関する検討に当たり独立社外取締役の適切な関与・助言を得るべきである。」という例示や、社長等による“お手盛り”を防止し、役員等の報酬決定プロセスを透明化するという報酬(諮問)委員会の役割に照らして考えれば、社長や代表取締役ではなく、「取締役会」の諮問機関として設置するべきでしょう。

構成メンバーはどうすべき?

 CGコードの補充原則4-10①に「例えば、取締役会の下に独立社外取締役を主要な構成員とする任意の諮問委員会を設置することなどにより、指名・報酬などの特に重要な事項に関する検討に当たり独立社外取締役の適切な関与・助言を得るべきである。」とあるように、同原則は、独立社外取締役の報酬(諮問)委員会への参画を念頭に置いています。これは、外部の視点を入れることで、報酬(諮問)委員会の客観性、透明性を担保するためです。報酬の決定において独立社外取締役を交えた委員会での議論というプロセスを経ることで、投資家への説明責任を果たす上でも、より説得力が増すことになります。かつては、任意の報酬(諮問)委員会のメンバーが経営トップ(会長や社長)と人事担当の取締役など、社内の取締役だけで占められているケースもありましたが、今や投資家がそれを許さなくなってきています。もし報酬(諮問)委員会のメンバーを担う独立社外取締役が足りない(後述するように、CGコードでは、報酬(諮問)委員会のメンバーとして2名以上の独立社外取締役を念頭に置いていると考えられます)というのであれば、報酬(諮問)委員会の設立よりも、独立社外取締役の選任の方が優先課題になります。

 報酬(諮問)委員会のメンバーとしては、独立社外取締役と同じく「独立社外役員」である社外監査役も考えられますが、報酬(諮問)委員会に参画することが監査役の職務としてそもそも相応しいのかという問題があります。監査役の第一義的な職責は「業務の適法性」を監査することにあるからです。また、報酬(諮問)委員会を取締役会の諮問機関と位置付けるならば、社内の業務執行の意思決定機関たる取締役会において議決権を有する人物こそ、報酬(諮問)委員会のメンバーとして相応しいと考えられますし、取締役は株主の代理人として実際に株式会社の経営を行い、株主に対して善管注意義務を負っているという点からも、メンバーになることが望ましいと言えるでしょう。実際、社外監査役が報酬(諮問)委員会のメンバーになっているケースは極めて少ないのが現状です。仮に社外監査役を活用するのであれば、議決権を持たないオブザーバーとして参画することはあり得るかもしれません。

 また、上述のとおり、CGコード上は独立社外取締役を「主要な構成員」とすることが明示されています。「主要な」の意味するところとしては、①メンバーの数的割合の問題、②委員長を社外取締役にするのかどうかという問題、の2つが考えられます。①、②いずれについても、コード上明示的な言及はありません。この点は企業の判断に委ねられることとなりますが、少なくとも複数名、即ち2名以上の独立社外取締役の参画が念頭に置かれているものと考えられます。

 一方、社内のメンバーについてはどうでしょうか。結論から言うと、最低でも1人は必要であると考えられます。詳しくは後述しますが、報酬(諮問)委員会においては業務執行を担う取締役の報酬をどうすべきかということが最も直接的な議論の対象となることを考えれば、業務執行サイドの意見も反映させるのは理にかなっています。例えば経営トップ(社長など)は、社内メンバーの人選としてあり得るでしょう。

「誰の」「どの」報酬を審議の対象とする?

 報酬(諮問)委員会に実効性を持たせるためには、報酬(諮問)委員会という会議体、いわば“ハコ”を設置するだけでは不十分で、その中身を充実させる必要があるのは言うまでもありません。

 では、報酬(諮問)委員会では具体的に何を審議するのか、つまり「誰の」「どの」報酬を審議の対象とするのでしょうか?

 まず「誰の」報酬を審議の対象とするかですが、CGコードの補充原則4-10①には「経営陣幹部」という言葉が出てきます。コードの趣旨を踏まえれば、審議の対象と「経営陣幹部」の範囲が整合していることが自然ですので、審議の対象は「経営陣幹部の報酬」ということになります。

 ただ、「経営陣幹部」の定義はCGコード上特にありませんので、「経営陣幹部」の範囲を各社で決める必要が出てきます。経営陣幹部に含まれる者としては、業務執行を担う取締役が真っ先に想起されますが、それだけに留まりません。多くの監査役(会)設置会社または監査等委員会設置会社において存在する執行役員、子会社役員、持株会社等において直接的に事業を担う傘下の事業会社役員、外国人役員、監督を担う役員(監査役や社外取締役)等々――これらの者を「経営陣幹部」に含めるのか否かを決める必要があります。どこまでを「経営陣幹部」と考えるかは会社によって異なります。

 次に、「どの」報酬を審議の対象とするかですが、外せないのは、「月々固定的に支給される基本報酬」「年度の業績に応じて現金で支給される業績連動賞与」「ストックオプション等に代表される長期インセンティブ報酬」といった「在任時報酬」です。一方、例えば取締役を退いた後に就任する「相談役」「顧問」といったポジションの報酬や退職慰労金など「退任後報酬」のほか、役員に対する何らかのベネフィット(例えば、社宅や住宅手当、ゴルフ会員権など)についても審議の対象とするかどうかは、議論のあるところでしょう。

 「在任時報酬」「退任後報酬」ともに制度のあり方は各社各様ですので、審議すべき事項は会社によって大きく異なっているのが実態です。緻密なフォーミュラ(公式)に基づく業績連動報酬を導入していたとしても、例えば経営努力に拠らない事象(急激な為替変動、地震等の天変地異など)やM&A、企業不祥事などが発生した場合には、その影響を報酬に反映させるべきなのか否かなど、報酬に関する意思決定において何らかの定性的な判断が必要になることもあります。

他社はどこまで開示している?

 報酬(諮問)委員会では、文字通り「報酬」というセンシティブな問題が議論されます。では、ここで議論された内容は、投資家をはじめとする外部への説明上、「何を」「どこまで」開示するべきでしょうか。

 CGコードでは情報開示の充実が謳われており、開示すべき事項として「取締役会が経営陣幹部・取締役の報酬を決定するに当たっての方針と手続」も挙げられています(原則3-1(ⅲ))。報酬(諮問)委員会は、この「手続」そのものに他なりませんので、企業による主体的な開示が望まれていると考えられます。といっても、ここまで述べてきた内容を事細かに開示する必要は必ずしもありません。開示項目として見られる実例は、①委員会そのものの有無、②委員会の位置付け、③構成メンバーの人数及び属性(社内/社外の別、取締役なのか監査役なのか、それとも社外の第三者なのか)、④審議の概要(例えば、報酬の基本方針や報酬水準、業績連動報酬の支給額の算定方法、個人別の支給額)、⑤年間の開催頻度、等です。もっとも、開示すべき内容は必ずしもこれらの項目に留まるわけではありません。また、それぞれの項目をどこまで詳らかに開示するかは、企業の判断に委ねられることになります。

事務局はどの部門が担うべき?

 上述のとおり報酬(諮問)委員会のメンバーは基本的に「取締役」が想定される中、委員会を円滑に運営していく上では、委員会回りの実務を直接担当する「事務局」も同時に設置すべきでしょう。

 誰が(どの部署が)事務局を担うのかは各社各様ですが、基本的には社内で経営者報酬を管轄する部署がその任にあたることになります。実例として良く見られるのは、秘書室(部)、人事部、経営企画室(部)といったところです。もっとも、経営者報酬は企業のトップシークレットの一つであるが故に、規模がそう大きくない企業の場合、人事担当のトップ(取締役または執行役員)が一人で担当し、細かい実務まで全てその人が握っているという極端なケースもあります。

 実務として想定されるのは、委員会のスケジュール管理、審議項目等に関する資料の作成、社内調整等ですが、その中身は会社法などの法律を含む各種規制、開示ルール、会計、税務等多岐に亘ります。そのため、必ずしも事務局の中だけで完結するとは限らず、時には法務部や経理部を巻き込んだ部門横断的な対応も必要となる点は留意が必要です。

 また、監査等委員会設置会社の場合、監査等委員会に報酬(諮問)委員会と同等の機能を持たせるか、それとも別個の会議体として報酬(諮問)委員会を設置するか、という論点があります。監査等委員会に報酬(諮問)委員会と同等の機能を持たせれば、同一の委員会で報酬についても審議出来ますので、メンバー参集の手間や事務局の事務負担はある程度軽減できるかもしれません。2015年5月1日に施行された改正会社法では、監査等委員会には監査等委員以外の取締役の報酬についての意見陳述権が与えられている(会社法342条の2 第4項、361条6項)ことを踏まえると、報酬に関する意見形成の場としての監査等委員会の活用には一定の意義がありそうです。

 一方で、例えば監査等委員以外の社外取締役がいる場合のその活用方法、業務執行サイドの取締役がメンバーに含まれないことの是非(監査等委員会は3名以上で、そのうち社外取締役が過半数であることが求められますが、実際には社外取締役だけで構成されていることもあります)、などの論点は一度議論しておきたいところです。

 任意の報酬(諮問)委員会自体は、CGコードの施行前から実例が存在しました。ただ、その委員会において中身のある議論が行われていたかと言えば必ずしもそうではなく、報告だけの“シャンシャン委員会”だったり、都合の悪い話は報酬(諮問)委員会の議題にかけないケースすらあったようです。経営者報酬がガバナンスの観点から語られるようになった今、役員は、報酬(諮問)委員会という“ハコ”の存在そのものがアピールとなり得た時代はもはや終わったということを肝に銘じておく必要があります。

2016/01/31 【2016年1月の課題】優秀な学生を確保するための採用活動

2016年1月の課題

 老舗の東証一部上場企業であるA社は、業績低迷期に採用を抑えていた影響で社員の平均年齢が高めとなっており、会社の将来のために、若い優秀な人材を確保することが重要な経営課題となっています。
 ただ、売手市場が伝えられる中、必ずしも人気企業とは言えないA社は採用活動で苦戦することが予想されます。
 経団連が2017年3月卒業予定の大学生の採用選考の開示時期をこれまでの8月から6月に前倒しする方針を表明したこともあり、人事担当取締役をはじめ、経営陣には早くも焦りの色が見え始めています。

 A社が優秀な学生を確保していくためには、どのような採用活動を展開するべきでしょうか。

 貴方の考えを述べてください。

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2016/01/31 2016年1月度チェックテスト

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【問題1】

収益性が低い事業に使われている不動産の売却により、ROEを向上させることができる。


正しい
間違い
【問題2】

企業風土は利益を直接生み出すものではないので、企業価値を左右する要素とは言えない。


正しい
間違い
【問題3】

日本のコーポレートガバナンス・コードは「Comply or Explain」という方針を採っているため、一部の上場会社のコードへの対応姿勢に見られる「Comply and Explain」はコードの趣旨に沿った対応とは言えず、投資家軽視の誹りを免れない。


正しい
間違い
【問題4】

業務に起因する精神疾患により労務の提供ができなくなった従業員は、休職制度の対象にはならない。


正しい
間違い
【問題5】

ISSの基準によると、監査等委員会への出席率が低い取締役(監査等委員)であっても、取締役会への出席率が75%基準を満たしていれば、改選時の選任議案に出席率を理由として反対推奨されることはない。


正しい
間違い
【問題6】

ROEは当期純利益を純資産で除して計算する。


正しい
間違い
【問題7】

国内機関投資家によるサステナブル投資額は急増している。


正しい
間違い
【問題8】

企業のガバナンスを強化するためには、取締役会の議長にはCEOが就任すべきではない。


正しい
間違い
【問題9】

東芝では、英国のコーポレートガバナンス・コードで「ガバナンスが実質的に機能するために必要とされる4つの大原則」のすべてを満たすガバナンス体制が構築されていたものの、不適切会計事件を未然に防ぐことができなかった。


正しい
間違い
【問題10】

「連結グループ収入1,000億円以上の多国籍企業グループ」は、税制改正で税務署に「国別報告書」の提出が必要になる見通しであるが、これにより日本に限らず日本以外の国から追徴課税をされるリスクが高まってしまう点が懸念される。


正しい
間違い

2016/01/31 2016年1月度チェックテスト第10問解答画面(不正解)

不正解です。
 昨年(2015年)10月に公表されたBEPS行動計画の最終報告書を受け、平成28年度税制改正法案が国会を通れば、「連結グループ収入1,000億円以上の多国籍企業グループ」は新たに移転価格税制に係る文書として「国別報告書」の提出が求められることになります。この「国別報告書」はBEPS行動計画に参画している国家間で共有され、その結果「自国の利益と税額が少ない」と感じた国が移転価格に関する税務調査を行い追徴課税をしてくるリスクが高まることになります(以上より、問題文は正しいです)。なお、BEPS行動計画は中国を含む参加国による国際的な合意であるにもかかわらず、中国はこれとは異なる中国独自のルールを課す旨のパブコメを募集中です。これによると、中国においては、連結グループ収入金額が1,000億円未満であっても「国別報告書」等の作成を求められるケースが出て来る可能性があります。中国独自のルールの成り行きが気になるところです。

こちらの記事で再確認!
2016/01/27 中国進出企業にリスク BEPS行動計画と違う独自路線志向する中国(会員限定)

2016/01/31 2016年1月度チェックテスト第10問解答画面(正解)

正解です。
 昨年(2015年)10月に公表されたBEPS行動計画の最終報告書を受け、平成28年度税制改正法案が国会を通れば、「連結グループ収入1,000億円以上の多国籍企業グループ」は新たに移転価格税制に係る文書として「国別報告書」の提出が求められることになります。この「国別報告書」はBEPS行動計画に参画している国家間で共有され、その結果「自国の利益と税額が少ない」と感じた国が移転価格に関する税務調査を行い追徴課税をしてくるリスクが高まることになります(以上より、問題文は正しいです)。なお、BEPS行動計画は中国を含む参加国による国際的な合意であるにもかかわらず、中国はこれとは異なる中国独自のルールを課す旨のパブコメを募集中です。これによると、中国においては、連結グループ収入金額が1,000億円未満であっても「国別報告書」等の作成を求められるケースが出て来る可能性があります。中国独自のルールの成り行きが気になるところです。

こちらの記事で再確認!
2016/01/27 中国進出企業にリスク BEPS行動計画と違う独自路線志向する中国(会員限定)

2016/01/31 2016年1月度チェックテスト第9問解答画面(正解)

正解です。
 日本のコーポレートガバナンス・コードが参考にした英国のコーポレートガバナンス・コードでは、ガバナンスが実質的に機能するための“必須4条件”として次の条件が掲げられています。
・チェアマン(取締役会議長)とCEOの分離
・強い監査委員会
・社内・社外取締役のバランス
・取締役会を自己評価する機能
 東芝ではいずれの条件も満たしていませんでした(以上より、問題文は「東芝は4つの大原則をすべて満たしていた」としている点で間違いです)。

こちらの記事で再確認!
2016/01/26 英国コーポレートガバナンス・コードにおける4つの必須条件(会員限定)

2016/01/31 2016年1月度チェックテスト第9問解答画面(不正解)

不正解です。
 日本のコーポレートガバナンス・コードが参考にした英国のコーポレートガバナンス・コードでは、ガバナンスが実質的に機能するための“必須4条件”として次の条件が掲げられています。
・チェアマン(取締役会議長)とCEOの分離
・強い監査委員会
・社内・社外取締役のバランス
・取締役会を自己評価する機能
 東芝ではいずれの条件も満たしていませんでした(以上より、問題文は「東芝は4つの大原則をすべて満たしていた」としている点で間違いです)。

こちらの記事で再確認!
2016/01/26 英国コーポレートガバナンス・コードにおける4つの必須条件(会員限定)