2015/12/16 健康管理とセクハラの境界線(会員限定)

 大手コンビニチェーンのローソンで、玉塚社長が自らCHO(チーフ・ヘルス・オフィサー=最高健康責任者)に就任し、「肥満の社員の割合を減らす」などの健康対策を打ち出したことが話題になっている。

 CHOとは、企業が社員の健康管理を組織的に行う上での最高責任者のこと。ロート製薬や大和証券グループ本社など、CHOを設置する企業は徐々に増えているが、ローソンのケースは、トップ自らが社員の健康管理を「経営責任」の1つとして明確に位置付けるものであり、同社の取組みが今後社員のパフォーマンス向上や、その結果としての企業価値向上につながっていくのか、注目される。

 ただし、肥満の従業員に対し「痩せるように」と指導することにはリスクがある。容姿を話題にすること自体がセクシャルハラスメントと受け止められかねないからだ(同性間であればパワーハラスメントに該当する恐れがある)。過去には、某ファッションブランドの日本法人において、「容姿に関する発言を含む嫌がらせ」があったとして、従業員と同法人の間で大きなトラブルになった例もある。従業員はこの事実を報道機関に公表、同法人はそのことを理由に従業員を解雇するに至った。解雇自体は裁判所に認められたものの(東京地裁 平成24年10月26日判決)、同法人のブランドイメージを大きく毀損したのは間違いない。

 このような事態を招かないためにも、従業員への(肥満に関する)健康指導は、会社(上司)の主観で行うのではなく、定期健康診断の結果に基づいて、平成20年4月から導入されている「特定健診(いわゆるメタボ検診)」および「特定保健指導(特定健診の結果を踏まえ、生活習慣を見直すサポートをするもの)」の受診を“事務的に”勧めるのがよいだろう。

 また、一次健診で「血圧」「血中脂質」「血糖」「肥満度」の4項目すべてについて「異常の所見あり」と診断された労働者(脳・心臓疾患の症状を現に有していない者に限る)は、労災保険の「二次健診給付」の現物給付(無料で受診可という意味)が受けられる。これを使えば本人にも会社にも経済的なコスト負担がないので、要件に該当しているのであれば、活用しない手はないだろう。

2015/12/15 繰延税金資産適用指針が月内決定、28年3月期の利益押し上げも

企業の業績への影響が大きいことから当フォーラムでも再三取り上げて来た「繰延税金資産の回収可能性に関する適用指針」が(2015年)12月25日に企業会計基準委員会(ASBJ)で正式決定される方向だ。

繰延税金資産の積増し額が大きければ、税引前利益から控除される「法人税等」の金額が減り、税引後の「当期純利益」は増えることになる(繰延税金資産の詳しい解説は【新用語・難解用語辞典】資産負債法参照)。繰延税金資産に関する現行の会計基準(日本公認会計士協会の監査委員会報告第66号「繰延税金資産の回収可能性の判断に関する監査上の取扱い」)では、繰延税金資産をどれくらい計上できるのかを、会社の業績の良し悪しによって5つに区分してきたが、今回公表される適用指針では、この計上基準をより柔軟にし、従来よりも繰延税金資産を計上しやすくしたという点が最大のポイントとなっている。具体的な内容は2015年6月1日のニュース「繰延税金資産の計上を巡る監査人との論争が減る?」でお伝えしたもの(今年5月に公表された公開草案)と基本的には変わりないが、一点、公開草案と大きく異なるのが、・・・

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2015/12/15 繰延税金資産適用指針が月内決定、28年3月期の利益押し上げも(会員限定)

企業の業績への影響が大きいことから当フォーラムでも再三取り上げて来た「繰延税金資産の回収可能性に関する適用指針」が(2015年)12月25日に企業会計基準委員会(ASBJ)で正式決定される方向だ。

繰延税金資産の積増し額が大きければ、税引前利益から控除される「法人税等」の金額が減り、税引後の「当期純利益」は増えることになる(繰延税金資産の詳しい解説は【新用語・難解用語辞典】資産負債法参照)。繰延税金資産に関する現行の会計基準(日本公認会計士協会の監査委員会報告第66号「繰延税金資産の回収可能性の判断に関する監査上の取扱い」)では、繰延税金資産をどれくらい計上できるのかを、会社の業績の良し悪しによって5つに区分してきたが、今回公表される適用指針では、この計上基準をより柔軟にし、従来よりも繰延税金資産を計上しやすくしたという点が最大のポイントとなっている。具体的な内容は2015年6月1日のニュース「繰延税金資産の計上を巡る監査人との論争が減る?」でお伝えしたもの(今年5月に公表された公開草案)と基本的には変わりないが、一点、公開草案と大きく異なるのが、今回の会計基準の変更に伴う「過去の決算への影響額」の取扱いだ。

平成24年3月期から導入された「会計上の変更及び誤謬の訂正に関する会計基準」では、当期において「会計基準等の改正に伴う会計方針の変更」があり、その会計基準等に経過的な取扱い(例えば「本会計基準は過年度に遡及しないこととする」)の定めがなければ、前年度以前の決算も遡って修正すること(これを「過年度遡及修正」という)を求めている。一方、「会計上の見積りの変更」であれば、過年度遡及修正をせずに、変更に伴う影響額を当期の損益として計上することになる。これは、会計上の見積もりの変更はあくまで「新たに入手可能になった情報」に基づくものであり、過去の期間の財務諸表に影響を与えるものではないとの考え方による。

会計上の見積りの変更 : 新たに入手可能となった情報に基づいて、過去に財務諸表を作成する際に行った会計上の見積りを変更すること。

会計基準等の改正に伴う会計方針の変更 : 会計基準等の改正に伴い強制的に行われる会計方針の変更のこと。正当な理由に基づき「認められた会計方針」から別の「認められた会計方針」に任意で行う会計方針の変更とは区別される。

今回の会計基準改正について企業側が望んでいたのは、「会計上の見積りの変更」として取り扱われる方である。というのも、仮に「会計方針の変更」として過年度遡及修正が求められることとなった場合、企業にとっては手間となるうえ、過去の損益への影響額(今回の会計基準見直しは、過去の利益を押し上げる可能性が高い)は“過去のもの”として永久に日の目を見ない(=今期の損益には計上せずに、資本の部の「利益剰余金」に直接反映させられる)ことになるからだ。これに対し、「会計上の見積りの変更」となれば、過去の損益への影響額を「当期の損益」として計上することができる。

この点について公開草案では、「会計方針の変更」として取り扱うこととし、過去の損益への影響額については(損益計上せずに)利益剰余金に計上することを求めていた。これは、今回の見直しでは、旧会計基準(日本公認会計士協会の監査委員会報告第66号「繰延税金資産の回収可能性の判断に関する監査上の取扱い」)に定められる繰延税金資産の計上額を算定するための会計処理の原則及び手続を“変更”する内容が含まれているとの理由からだ。これに対し企業側は、「これまでの監査上の取扱いの見直しを行ったものに過ぎないため、『会計上の見積りの変更』に該当し、その影響額は損益計算書に計上すべき」と主張していた(2015年4月13日のニュース「66号改訂、「会計上の見積りの変更」に該当なら利益の押し上げも」参照)。

結論として、企業会計基準委員会は、旧会計基準の取扱いを「より明確に定めたもの」については従来の考え方を改めるものではない(つまり、「会計方針の変更」ではなく「会計上の見積りの変更」に該当する)としたうえで、次に述べる3つのケースのように、会計処理が大きく異なっている場合に限り「会計方針の変更」に該当するとする方向に、方針を転換した。

(1)「分類2」に該当する企業において、スケジューリング不能な将来減算一時差異について(回収可能であることを合理的に説明できる場合には)回収可能性アリとする取扱い
(2)「分類3」に該当する企業において、おおむね5年を明らかに超える見積可能期間においてスケジューリングされた一時差異等に係る繰延税金資産について(回収可能であることを合理的に説明できる場合には)回収可能性アリとする取扱い
(3)「分類4」の要件に該当する企業において、将来一時差異等加減算前課税所得が生じることを合理的に説明できる場合には「分類2」に該当するものとする取扱い

スケジューリング : 一時差異が解消するタイミングのスケジュールを作成すること

上記3つのケース以外では、会計基準等の改正に伴う「会計方針の変更」とは取り扱わなくてよいことになり、過去の決算への影響額を「当期の損益」に計上することが可能になる。影響額がプラスであれば、新会計基準の適用初年度の利益が押し上げられることになる。新しい会計基準は平成29年3月期から適用されるが、平成28年3月期からの早期適用も認められる。平成28年3月期の決算を上方修正する企業が出て来る可能性もありそうだ。

2015/12/14 韓国で環境汚染賠償責任保険加入が義務付け 日本企業への影響は?

 社外取締役の選任ラッシュとともにD&O保険への加入や契約条件の見直し(保険金額の引上げなど)が相次ぎ、2015年は空前の“D&O保険ブーム”となった。

 役員のリスクを低減するD&O保険だが、他の保険商品同様、D&O保険にもいくつかの「免責事項」が設けられており、すべてのリスクをカバーできるわけではない。その1つが、環境汚染に起因して生じた損害賠償責任だ(【2015年5月の課題】「D&O保険」の「絶対に避けたい環境汚染関係の株主代表訴訟 」参照)。

 会社が環境汚染事故を引き起こし、それによって生じた損害を会社が第三者に賠償した場合、取締役の善管注意義務が問題とされ、株主代表訴訟により、当該賠償額について取締役が請求を受けるということがあり得る。仮に株主代表訴訟で取締役が敗訴したとしても、取締役への請求額はD&O保険では補償されない(ただし、一部の保険会社のD&O保険では、争訟費用等を支払い対象にしているものもある)。

 このようなリスクを低減するためには、環境汚染関連の損害賠償責任を補償する「環境汚染賠償責任保険」への加入を検討する必要がある。環境汚染賠償責任保険は・・・

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2015/12/14 韓国で環境汚染賠償責任保険加入が義務付け 日本企業への影響は?(会員限定)

 社外取締役の選任ラッシュとともにD&O保険への加入や契約条件の見直し(保険金額の引上げなど)が相次ぎ、2015年は空前の“D&O保険ブーム”となった。

 役員のリスクを低減するD&O保険だが、他の保険商品同様、D&O保険にもいくつかの「免責事項」が設けられており、すべてのリスクをカバーできるわけではない。その1つが、環境汚染に起因して生じた損害賠償責任だ(【2015年5月の課題】「D&O保険」の「絶対に避けたい環境汚染関係の株主代表訴訟」参照)。

 会社が環境汚染事故を引き起こし、それによって生じた損害を会社が第三者に賠償した場合、取締役の善管注意義務が問題とされ、株主代表訴訟により、当該賠償額について取締役が請求を受けるということがあり得る。仮に株主代表訴訟で取締役が敗訴したとしても、取締役への請求額はD&O保険では補償されない(ただし、一部の保険会社のD&O保険では、争訟費用等を支払い対象にしているものもある)。

 このようなリスクを低減するためには、環境汚染関連の損害賠償責任を補償する「環境汚染賠償責任保険」への加入を検討する必要がある。環境汚染賠償責任保険は「会社が負った損害賠償責任」を補償する保険であり、役員の損害賠償責任を補償するD&O保険とは補償対象が異なるが、会社に生じた損失が保険金でカバーされるとなれば、株主も代表訴訟にまでは踏み切らない可能性が高いからだ。

 この環境汚染賠償責任保険は日本ではまだあまり普及していないが、隣国の韓国では、まったく違う状況が生じている。韓国では、2014年12月に環境汚染の被害賠償責任と救済に関する法律が制定され、2016年1月1日から施行される。そして、ケミカル工場のような環境汚染を引き起こすリスクのある施設には、「2016年7月1日」から環境汚染賠償責任保険への加入が義務付けられる(また、台湾でも同様の動きがあるという情報がある)。

 これは「韓国における話」にとどまらない可能性がある。日本企業が現地にそのような工場を保有している場合には、保険への加入が義務付けられることになるからだ。また、例えば買収した韓国の工場から買収後に環境問題が発生するということもあり得る。M&Aにおける買主側のリスクをカバーする保険として「表明補償保険」というものがあるが(【2015年5月の課題】「D&O保険」の「M&Aにおいて高まる表明保証違反リスク」参照)、表明補償保険では「環境問題」は免責となっている。こうしたリスクをカバーするためには、環境汚染賠償責任保険への加入も検討に値しよう。実際、海外では企業を買収する際には、表明補償保険と環境汚染賠償責任保険をセットで検討するのが通常となっている。

 日本では過去に様々な環境問題が発生し、それに対し対策がとられてきたという歴史があり、今さら法律で保険への加入が義務付けられることはないだろう。こうした事情もあってか、日本企業における環境問題リスクへの感度は高いとは言えないが、保険加入が義務付けられる韓国をはじめとする海外に工場を展開する企業や海外の工場の買収を検討する企業は、自社を取り巻くリスクを再点検する必要がありそうだ。

2015/12/11 ついに日本でも株式報酬の支給が可能に!

 コーポレートガバナンス・コード(4-2、4-2①)が求める「中長期的な会社の業績や潜在的リスクを反映させた経営陣の報酬」の実現にあたり税務上の取扱いがネックとなってきたが、平成28年度税制改正議論の中でその一部が緩和されることが決まった。その内容は・・・

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2015/12/11 ついに日本でも株式報酬の支給が可能に!(会員限定)

 コーポレートガバナンス・コード(4-2、4-2①)が求める「中長期的な会社の業績や潜在的リスクを反映させた経営陣の報酬」の実現にあたり税務上の取扱いがネックとなってきたが、平成28年度税制改正議論の中でその一部が緩和されることが決まった。その内容はまだ新聞等でも報道されていないようだが、どこよりも早くお伝えしたい。

 2015年12月2日のニュース「日本で株式報酬を支給できない理由」でもお伝えしたとおり、日本の会社法では、株式の発行は金銭等の「払込み」があることを前提としているため、「株式をタダであげる(=払込みがゼロ)」ことになる欧米型の株式報酬(パフォーマンス・シェアリストリクテッド・ストック)は認められていない。そこで経済産業省は、金銭報酬債権の現物出資を活用した株式報酬、すなわち、(1)会社が役員に金銭報酬債権を付与、(2)役員が当該金銭報酬債権を「現物出資財産」として会社に払い込み、その対価として会社が役員に株式を発行する――というスキームを推進してきた。このように「金銭報酬債権」という債権を払い込む形をとることで、「払込みゼロはダメ」とする会社法上の問題点はクリアできることになる。

パフォーマンス・シェア : Performance Share=中長期的な“業績目標の達成度合い”に応じて交付される株式報酬
リストリクテッド・ストック : Restricted Stock=一定期間の譲渡制限が付された株式報酬

 ただ、金銭報酬債権の現物出資スキームを使って株式報酬を支給する場合、現行の税務では、まだ役員が実際に金銭を得たわけではない「金銭報酬債権の付与時」において、給与課税が行われる恐れがあった(役員が金銭を手にするのは、株式を売却した時である)。こうした中、税務上の取扱いを明確にするべく、経済産業省と財務省は交渉を行って来たが、役員に給与課税が行われるタイミングを「株式の譲渡制限が解除された時」とすることで合意した模様だ。給与課税の対象となるのは、「株式の譲渡制限が解除された時点」における株式の時価となる。

 また、会社側も同様に「株式の譲渡制限が解除された日の属する事業年度」において、役員に支給した株式報酬を損金に算入できる。ただし、損金算入額は「株式を交付した時点」の時価となる。つまり、給与課税の時期と損金算入の時期は同じだが、それぞれの金額は異なることになる。

 このほか、現行法人税法では、業績連動型の役員報酬を損金算入できるのは「有価証券報告書に記載された利益を基礎に算定されたもの」だけとされているが(2015年7月3日のニュース「業績連動型役員報酬導入のボトルネックが解消へ」参照)、平成28年度税制改正では現行法令を改正し、ROEROAをベースに算定された役員報酬にも損金算入の道が開かれることになった。税制改正の後押しを受け、上場会社で役員報酬改革が進展するのか、注目される。

ROE : Return On Equity (自己資本利益率=純利益 ÷ 自己資本)
ROA : (Return On Asset = 総資本利益率=純利益/総資産)

2015/12/10 (新用語・難解用語)倫理的消費

 生命倫理、環境倫理、社会倫理に基づいた商品・サービスの選択を通じて、環境問題や社会問題の積極的解決に寄与しようとする消費者の購買行動のこと。「エシカル(Ethical=倫理的な)消費」とも言われる。

 機関投資家が投資にあたってESG(環境、社会、ガバナンス)を考慮する「ESG投資」に注目が集まっているが、ESGのうち「環境(E)」や「社会(S)」を実現するためには、“消費者の力”は有効だろう。例えば消費者が「生産過程で環境破壊を伴う商品」や「原材料の採集や採掘などが児童労働に支えられている商品」などを買わないと宣言すれば、企業もそのような商品の生産や販売をやめるはずだからだ。

 ただ、現実には、消費者がそのような行動をとるとは限らない。環境先進国と言われるドイツの消費者へのアンケートで、84%が「倫理的消費を支持する」と回答したものの、同時に61%が「生活水準を侵害しなければ」と回答したというデータもある。つまり、消費者は倫理的消費の重要性は認識していても、それを実行するかどうかは別問題ということだ。企業としても、消費者(特に購買力が高い消費者)が望まない限り、儲からない商品やサービスを扱うことは基本的にはないだろう。

 そこで考えられるのが・・・

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2015/12/10 (新用語・難解用語)倫理的消費(会員限定)

 生命倫理、環境倫理、社会倫理に基づいた商品・サービスの選択を通じて、環境問題や社会問題の積極的解決に寄与しようとする消費者の購買行動のこと。「エシカル(Ethical=倫理的な)消費」とも言われる。

 機関投資家が投資にあたってESG(環境、社会、ガバナンス)を考慮する「ESG投資」に注目が集まっているが、ESGのうち「環境(E)」や「社会(S)」を実現するためには、“消費者の力”は有効だろう。例えば消費者が「生産過程で環境破壊を伴う商品」や「原材料の採集や採掘などが児童労働に支えられている商品」などを買わないと宣言すれば、企業もそのような商品の生産や販売をやめるはずだからだ。

 ただ、現実には、消費者がそのような行動をとるとは限らない。環境先進国と言われるドイツの消費者へのアンケートで、84%が「倫理的消費を支持する」と回答したものの、同時に61%が「生活水準を侵害しなければ」と回答したというデータもある。つまり、消費者は倫理的消費の重要性は認識していても、それを実行するかどうかは別問題ということだ。企業としても、消費者(特に購買力が高い消費者)が望まない限り、儲からない商品やサービスを扱うことは基本的にはないだろう。

 そこで考えられるのが「法規制」の導入だ。日本では、国などの公的機関に対し環境負荷低減に資する製品やサービスの調達の推進を求めるとともに、事業者にも製造する製品の環境負荷の把握に必要な情報の提供に努めるよう求める「グリーン購入法」が平成13年4月から施行されているほか、国際的には、発展途上国で作られた作物や製品を適正価格で継続的に取引することによって、生産者の持続的な生活向上を支える仕組みである「フェア・トレード(Fair Trade=公正貿易)」という考え方が存在しており、これを推進している日本企業も多い。ただ、現在のところ、倫理的消費に関する法規制は存在しない。

 こうした中、消費者庁は今年(平成27年)5月に「倫理的消費 調査研究会」を立ち上げ、ほぼ2か月に1回の割合で会合(全6回。最終会は平成28年2月)を開催している。ただし、同研究会は現時点ではあくまで倫理的消費について「調査研究を行う」ものに過ぎず、消費者庁も当フォーラムの取材に対し、「立法化について検討する段階ではない」と回答している。

 倫理的消費に関する法規制が導入されることは当面はなさそうだが、欧州に目を移すと、倫理的消費の専門家の中には、「今後25 年以内にすべての企業は法律によって彼らのエシカル位置(ethical position)を報告することが求められ、エシカルに認証された製品が市場を支配することになる」と予想する声もある。仮にこの予想通りとなれば、企業の売上や製品のラインナップにも大きな影響を与えることになるだろう。

 日本でもESG投資が本格化するのとともに、ESGを推進する効果を持つ倫理的消費が今後さらにクローズアップされる可能性もある。消費者向けの商品やサービスを扱う企業の役員は、少なくとも消費者庁の研究会における議論の動向はウォッチしておきたいところだ。

2015/12/09 利益や繰延税金資産に影響を与える税制改正の全容

 平成28年度税制改正大綱が明日(2015年12月10日)にも明らかにされるが、企業の営業利益・税引後利益や繰延税金資産の金額に影響を与える法人税や事業税の改正の全容が当フォーラムの調査で明らかになった。

税制改正大綱 : 来年度の税制改正の内容の大枠を示したもの。12月中旬に公表されるのが通例である。税制改正法案の成立はおよそ3か月後の3月末となる。

 今回の改正のポイントは、・・・

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