2015/11/13 TPPは独禁法リスクに直面した企業の対応を変えるか?

 難航していたTPP協定(環太平洋パートナーシップ協定)締結協議が大筋合意に達してから約1か月経ち、長い間ベールに包まれていた協定内容の概要がようやく先日(平成27年11月5日)公表された(環太平洋パートナーシップ協定(TPP協定)の全章概要)。巷のTPPに関する話題は、農産品や工業製品の関税撤廃や、著作権に関する新たなルール(保護期間の延長、著作権者の告訴がなくても違反があれば取り締まれるようになる)の導入等、一部のテーマに集中しがちだが、全30章にわたる協定の中には、日本企業の経営に影響を及ぼす内容が含まれているのでチェックしておきたい。その一つが、・・・

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2015/11/13 TPPは独禁法リスクに直面した企業の対応を変えるか?(会員限定)

 難航していたTPP協定(環太平洋パートナーシップ協定)締結協議が大筋合意に達してから約1か月経ち、長い間ベールに包まれていた協定内容の概要がようやく先日(平成27年11月5日)公表された(環太平洋パートナーシップ協定(TPP協定)の全章概要)。巷のTPPに関する話題は、農産品や工業製品の関税撤廃や、著作権に関する新たなルール(保護期間の延長、著作権者の告訴がなくても違反があれば取り締まれるようになる)の導入等、一部のテーマに集中しがちだが、全30章にわたる協定の中には、日本企業の経営に影響を及ぼす内容が含まれているのでチェックしておきたい。その一つが、「競争政策」の章に盛り込まれた「競争当局に対し、違反の疑いについて、当該競争当局とその執行の活動の対象となるものとの間の合意により自主的に解決する権限を与えること」との一節だ。

 我が国において競争政策を所管しているのは公正取引委員会(以下、「公取委」)であり、公取委は独占禁止法の執行を通じて、公正かつ自由な競争を促進するという役割を担っている。公共入札を巡る談合に対して厳しい処分を下したり、大型企業再編に際して問題解消のために必要な措置(例えば、大手小売業同士の合併により寡占状態となる地域における店舗の一部売却)を取るように命じたりするなど、近年は、公取委の活動が新聞の見出しを飾ることも珍しくない。

 しかし、そのような華やかな成果の裏で、公取委の法執行手続に関するルールは、ここ数年の間に大きな紆余曲折を辿ってきた。

 元々、公取委が企業の行為を独占禁止法違反と認定した場合の処分は、「審判」という裁判に準じた手続を“事前に”経た上で行うのが原則だった。しかし、「違反行為を早期にやめさせるべき」という意見を背景として平成17年には法改正が行われ、公取委は、違法行為を認定後、直ちに処分を行うことができるようになった。この結果、処分を受けた企業は、“処分後に”公取委が行う審判手続で争い、そこで主張が認められなければさらに裁判所で争って勝たない限り処分を覆すことができない、という立場に置かれることになってしまった。

 当然ながら企業としては面白くない。平成17年の法改正からさほど時間が経たないうちに、産業界を中心にこのルールに対する批判が相次ぐようになる。そして、平成25年の法改正(平成27年4月施行)によって、今度は公取委自身が審判手続を行うことが認められなくなり、処分に不服がある企業は、直ちに裁判所で公取委の判断の妥当性を争うことができるようになったのである。

 このような微妙なタイミングで、冒頭で紹介した「競争当局に対する自主的解決権限の付与」という項目がTPP協定に盛り込まれた。平成25年の法改正により、処分を行っても、裁判所で取り消されるリスクが従来よりも高まっている公取委にとって、あえて「処分」を行わずに、企業の“自主的な解決”によって問題を解消させることができるこのルールは非常に魅力的なものに映るはずだ。

 一方の企業側にとっても、公取委の処分により一度でも「違法」というレッテルを張られることは極力避けたいところであり、また、汚名を晴らすために裁判所で争えば多くの時間と費用を要することになることを考えれば、処分を受けることなく“自主的”に問題解消措置を取る機会が与えられる、というこのルールは悪い話ではないだろう。

 政府は、この合意項目を「法律改正の検討を要する事項」としており、既に同種のルールが導入されているEU等での制度設計も参考にしながら、国内での法制化を検討していくことになる。早ければ2016年の通常国会に独占禁止法改正案が提出されることになりそうだ。

 一方的に行われることが多い「行政処分」や「行政指導」に慣れ親しんだ日本人や日本企業にとって、「規制官庁との『合意』により、規制を受ける者が自主的に問題を解消する」というルールは斬新であるがゆえ、今後の検討も一筋縄では進まないかもしれない。しかし、このルールは、これまで公取委に対して「言われるがまま従う」か「処分を争って徹底的に対立する」かという“極端な対応”に終始することが多かった企業側が、独禁法リスクに直面した際の対応を見直す大きな転機となる可能性を秘めるだけに、制度化に向けた今後の動向が注目される。

2015/11/12 (新用語・難解用語)整理解雇の4要素

 経営上の事情(経営不振、事業の縮小など)により従業員を解雇(これを「整理解雇」という)せざるを得ない場合に、その正当性(「不当解雇」に該当するか否か)を判断するための基準。具体的には、(1)人員整理の必要性、(2)解雇回避努力義務の履行、(3)被解雇者選定の合理性、(4)解雇手続の妥当性、の4つを指す。

 「整理解雇の4“要件”」という言葉を耳にしたことがあるかもしれないが、最近は“要素”が使われることが多くなった。これは、1つでも“要件”が欠けると整理解雇が認められないとういうわけではなく、あくまでこれらを判断の“要素”として総合的に整理解雇の正当性を見極める、というのが近年の裁判の傾向だからだ。

 “整理解雇”の4要素という言葉からは、4要素は「整理解雇」の場面のみで使われるようにも見えるが、必ずしもそうではない。例えば・・・

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2015/11/12 (新用語・難解用語)整理解雇の4要素(会員限定)

 経営上の事情(経営不振、事業の縮小など)により従業員を解雇(これを「整理解雇」という)せざるを得ない場合に、その正当性(「不当解雇」に該当するか否か)を判断するための基準。具体的には、(1)人員整理の必要性、(2)解雇回避努力義務の履行、(3)被解雇者選定の合理性、(4)解雇手続の妥当性、の4つを指す。

 「整理解雇の4“要件”」という言葉を耳にしたことがあるかもしれないが、最近は“要素”が使われることが多くなった。これは、1つでも“要件”が欠けると整理解雇が認められないとういうわけではなく、あくまでこれらを判断の“要素”として総合的に整理解雇の正当性を見極める、というのが近年の裁判の傾向だからだ。

 “整理解雇”の4要素という言葉からは、4要素は「整理解雇」の場面のみで使われるようにも見えるが、必ずしもそうではない。例えば「内定の取消し」だ。内定とは「解約権を留保された雇用契約」であるが、会社が一方的に解約権を行使することの合理性や相当性は「整理解雇の4要素」により判断されるべきとした判例(東京地判H9.10.31がある。

 また、「労働条件の不利益変更」の場面でも4要素が用いられることがしばしばある。4要素が用いられなかった事例として、経営上必要な労働条件変更を前提とする新たな雇用契約の締結に応じなかった従業員の解雇を「変更解約告知」(新たな労働条件による労働契約再締結の申し入れを伴った解雇)という新たな解雇の類型として整理したうえで、その正当性を、(1)労働条件の変更が必要不可欠、(2)その必要性が労働者の受ける不利益を上回る、(3)新契約締結の申込みの必要性が、解雇を正当化するに足りるやむを得ないものである、(4)解雇回避努力が十分に尽くされている―――という基準を満たす場合に認めるとした裁判例(東京地決H7.4.13)もあるが、この1例を除き、他の類似事案(東京地決H10.1.7、大阪地判H10.8.31等)においては「整理解雇の4要素」によって労働条件変更の正当性を判断する傾向が見られる。

 労働条件の不利益変更自体は「雇用を継続する」ことを意味するのに、ここで「整理解雇の4要素」を持ち出すのは矛盾しているように感じられるかもしれない。しかし、労働者はこれに応じなかった場合には解雇されることになる(すなわち労働者にとっては「低下後の労働条件を受け容れる」か「解雇される」かの二者択一になる)。そこで、「解雇」の合理性・相当性を検討しなければならないというわけだ。

 このように、整理解雇の4要素は「解雇」の場面のみで用いられるわけではない点、覚えておきたい。

2015/11/11 支持株主を拡大するための“攻めの対策”

 日本企業の株主総会では、外国人投資家は議決権行使助言会社の助言に従って議案への賛否を決めることが多い。それゆえ、企業としてはハンドリングがしやすいと言えるが(2015年11月9日のニュース「新たな“安定株主”」参照)、形式的に賛成してくれるということは、裏を返せば、「形式的に反対されるリスク」もあるという見方もできる。実体が理解されないまま形式的な基準だけで反対を受けることは、企業としてはもっとも避けたいところだろう。

 このような事態を回避するために有効なのが、・・・

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2015/11/11 支持株主を拡大するための“攻めの対策”(会員限定)

 日本企業の株主総会では、外国人投資家は議決権行使助言会社の助言に従って議案への賛否を決めることが多い。それゆえ、企業としてはハンドリングがしやすいと言えるが(2015年11月9日のニュース「新たな“安定株主”」参照)、形式的に賛成してくれるということは、裏を返せば、「形式的に反対されるリスク」もあるという見方もできる。実体が理解されないまま形式的な基準だけで反対を受けることは、企業としてはもっとも避けたいところだろう。

 このような事態を回避するために有効なのが、招集通知の充実だ。現状、多くの日本企業の招集通知は、それだけで投資家が議案への賛否を判断を行うには不十分なものとなっている(このため、機関投資家はコーポレートガバナンス報告書など様々な資料を参考にして議決権行使を行っている)。海外では、機関投資家は必ずしも議決権助言会社の助言に従っただけの投票はしていないだけに、日本企業は外国人機関投資家の議決権行使基準を理解したうえで、賛否の判断に必要な情報を招集通知において開示することが求められる。

 招集通知の内容が充実していれば、反対票が多くなると予想される場合にも、スムーズに議案の内容を説明できるはずだ。また、開示内容が不十分であることに起因して議決権行使助言会社が重要な論点を見落とし、不適切な助言が行われる可能性も低下する。

 もう一つ、外国人投資家対策という意味で欠かせないのが「英訳」である。英語での開示資料が不足していれば、外国人投資家は議決権行使助言会社の基準に従った形式的な判断をせざるを得なくなるおそれがある。

 招集通知の内容の充実と英訳には手間とコストがかかるが、それは自社を理解した支持株主を拡大するという点で、企業自身のためにもなる。一見地味に見えるかもしれないが、個別の株主対策を行う際にまず行うべき“攻めの対策”であり、効率的な投資と言えよう。

2015/11/10 ビッグデータ活用のボトルネック「著作権法」に改正の動き

 デジタル・ネットワーク技術の発展は日進月歩であり、ベンチャー企業のみならず、伝統企業でも従来のビジネスモデルとこれらの技術を組み合わせた新しいサービスを顧客に提供し始めているところは多い。特に、“ビッグデータ”と言われる膨大な情報の解析や検索、さらにそれを活用した新たな情報の生成といった技術は、業種を問わず、今後の企業経営に大きな影響を与えることが予想される。

 一方で、新しい技術やビジネスモデルには常に「法的リスク」が付きまとう。従来、この分野の法的リスクとしては、個人情報保護法やセキュリティの問題が中心だったが、最近はこれに「著作権法」上の問題も加わり、新技術を活用したビジネスの障害となる可能性が指摘されている。

 現実的な問題として懸念されるのは、・・・

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2015/11/10 ビッグデータ活用のボトルネック「著作権法」に改正の動き(会員限定)

 デジタル・ネットワーク技術の発展は日進月歩であり、ベンチャー企業のみならず、伝統企業でも従来のビジネスモデルとこれらの技術を組み合わせた新しいサービスを顧客に提供し始めているところは多い。特に、“ビッグデータ”と言われる膨大な情報の解析や検索、さらにそれを活用した新たな情報の生成といった技術は、業種を問わず、今後の企業経営に大きな影響を与えることが予想される。

 一方で、新しい技術やビジネスモデルには常に「法的リスク」が付きまとう。従来、この分野の法的リスクとしては、個人情報保護法やセキュリティの問題が中心だったが、最近はこれに「著作権法」上の問題も加わり、新技術を活用したビジネスの障害となる可能性が指摘されている。

 現実的な問題として懸念されるのは、機械的な情報収集・処理の過程に著作権が発生するコンテンツ(例えば、SNSでの個人のつぶやきや写真、動画等)が混ざり込み、それが原型をとどめたまま出力される、というパターンだ。サービス提供者側としては、コンテンツを鑑賞等の用途で利用する意図がないにもかかわらず、形式的には「複製」や「公衆送信」といった“著作権の侵害行為”に該当してしまうおそれがある。だからといって、不特定多数のコンテンツの権利者に逐一利用の許諾を求めるのは事実上不可能だろう。

 平成24年には世の中のニーズに合わせるべく著作権法が改正され、情報検索や情報解析における著作物の利用について著作権を制限する規定(権利制限規定)が追加されたものの、いまだに「ビジネスニーズを拾いきれていない」「利用が認められる条件が細かすぎ、技術やビジネスの変化に対応できていない」といった批判は強く、平成24年の法改正後も、産業界からは毎年のように「より柔軟に、より包括的に著作物の利用を認めて欲しい」という法改正の要望が出される状況が続いている。

 産業界の声を受け、著作権法の所管官庁である文化庁は本年(2015年)7月に「著作物等の利用円滑化のためのニーズの募集」を実施し、10月には、この募集結果を受けた「ワーキングチーム」がさっそく立ち上げられ、ニーズを提出した企業からのヒアリングも既に始まっている。既存の法律について法改正の“ネタ”をこれだけ広範囲かつ自由に集める試みは極めて珍しい。それだけ多くの関係者が危機感を共有している、ということなのだろう。

 もっとも、募集結果を見ても、示されたニーズや法改正の方向性は様々だけに、果たしてすんなりと抜本的な改正に向けた議論が進んでいくのかは不透明。ビッグデータを今後の事業展開に活用していこうと考える企業経営者は、改正の動向に注視しておく必要があろう。当フォーラムでも、新たな動きがあり次第、続報していきたい。

2015/11/09 新たな“安定株主”

 外国人投資家の増加とともに、銀行・生保など従来の「安定株主」の間では株式の持分を減らす動きが続いており、企業としては安定株主の確保がますます難しくなってきた。今年の株主総会では反対票がそれなりに入る議案もあり、企業は議案成立にも神経を使わざるを得なくなりつつある。

 しかし発想を変えると、従来の安定株主とは異なる新たな“安定株主”の姿が見えて来る。ここでいう“安定株主”とは、無条件に議案に賛成する株主ではなく、「議案に対する行動が安定的な株主」という意味である。それは・・・

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2015/11/09 新たな“安定株主”(会員限定)

 外国人投資家の増加とともに、銀行・生保など従来の「安定株主」の間では株式の持分を減らす動きが続いており、企業としては安定株主の確保がますます難しくなってきた。今年の株主総会では反対票がそれなりに入る議案もあり、企業は議案成立にも神経を使わざるを得なくなりつつある。

 しかし発想を変えると、従来の安定株主とは異なる新たな“安定株主”の姿が見えて来る。ここでいう“安定株主”とは、無条件に議案に賛成する株主ではなく、「議案に対する行動が安定的な株主」という意味である。それは外国人投資家だ。

 国内機関投資家の議決権行使基準を見ると、各機関投資家によって異なる基準が設けてられており、それを個々に理解し賛否を読むのは容易ではない。一方、外国人投資家の議決権行使動向は比較的読み易い。これは、海外に拠点を持つ投資家は議案内容を精査するのに十分な時間が確保できないことから、基本的にISSやグラスルイスなど議決権行使助言会社の意見に従うことになるからだ。

 従来、国内系と外資系では外資系の行使基準の方が厳しく、反対比率も高いとされてきた。しかし、スチュワードシップ・コード実施後は国内系の反対比率が上昇しており、現在はほぼ同じか国内系の方がやや厳しいと言われる。これには、ISSなど議決権行使助言会社の定める賛成推奨基準が、多くの場合、国内機関投資家の議決権行使基準よりも緩いことが影響している(議論を呼ぶような微妙な内容の助言内容は機関投資家が採用しにくいため、助言会社はある程度基準を緩くせざるを得ないと考えられる)。

 外国人投資家は無条件に議案に賛成する従来の安定株主とは性格が異なるものの、議案に対する行動が“安定的”なだけに、企業としてはハンドリングしやすく、票読み(議案の賛否の予測)もやりやすい。従来の安定株主が減少する中で議案への賛成率を高めるためには、議決権行使助言会社の基準を理解し、彼らが反対するような議案は上程しないということが有効な対策の1つとが言えそうだ。

 ちなみに、アジアや中東のファンドは議決権行使を実施しない場合が多く、欧米のファンドでも投資銘柄数を絞り込んだアクティブファンドの中には全ての議案に賛成しているところも散見される。これらも“安定株主”になり得るだろう。

アクティブファンド : インデックスファンドの対極の概念であり、運用担当者(ファンド・マネージャー)が、株式市場や投資銘柄などを調査し、今後の動向を予測することでポートフォリオを決定するファンドのこと。市場の平均的な収益率をベンチマークとし、これを上回る運用成果を上げることを目標にすることが多い。