女性の活躍を推進する政府方針や取締役会の多様化(ダイバーシティ)を求める株主の声を受け、女性の社外取締役候補への人気は高まる一方だ。あるエグゼクティブ・サーチ会社によると、女性社外取締役候補を求める上場会社からのオーダーは継続的にあるという。
今年(2015年)8月25日に成立した女性活躍推進法では、大企業(301人以上)に対し「2016年4月1日」までに「女性の活躍の現状に関する情報」を公表することを義務付けている。公表する情報は下記の14項目の中から企業が選択することになるが、この中には「役員に占める女性の割合」も入っている。また、コーポレートガバナンス・コード4-11①では、「取締役会は、取締役会の全体としての知識・経験・能力のバランス、多様性及び規模に関する考え方を定め、取締役の選任に関する方針・手続と併せて開示すべきである」とし、取締役会の多様性を求めている。女性社外取締役候補の人気は今後も続くだろう。
①採用した労働者に占める女性労働者の割合
②採用における男女別の競争倍率
③労働者に占める女性労働者の割合
④男女の継続勤務年数の差異
⑤10事業年度前及びその前後の事業年度に採用された労働者の男女別の継続雇用割合
⑥男女別の育児休業取得率
⑦一月当たりの労働者の平均残業時間
⑧雇用管理区分ごとの一月当たりの労働者の平均残業時間
⑨年次有給休暇の取得率
⑩係長級にある者に占める女性労働者の割合
⑪管理職に占める女性労働者の割合
⑫役員に占める女性の割合
⑬男女別の職種又は雇用形態の転換実績
⑭男女別の再雇用(定年後の再雇用を除く)又は中途採用の実績
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ただ、多くの上場会社が「2名以上の独立社外取締役」の確保にさえ窮する中、女性社外取締役の候補者探しは容易ではない。女性の管理職比率が40%を超える米国でさえ女性の取締役比率は20%を切っている(2015年2月20日のニュース「女性の登用、日本の現在地」参照)。2015年中に「FTSE100企業の取締役会に占める女性比率25%」という目標達成を目指してきた英国では、今年7月14日にこの目標を達成したが(2015年7月29日のニュース「取締役会の女性比率25%達成の英国、次は賃金格差の公表義務付け」参照)、同国はそれでもまだ十分とは考えておらず、女性取締役比率の引上げを求める対象をFTSE350構成企業へと拡大、さらに、女性取締役の比率も「2020年までに33%以上」と前回より引き上げることが提案されている。
FTSE100 : ロンドン証券取引所に上場する銘柄のうち時価総額上位100銘柄による時価総額加重平均型の株価指数。
FTSE350 : ロンドン証券取引所に上場する銘柄のうち時価総額上位350銘柄による時価総額加重平均型の株価指数。
FTSE350構成企業における女性取締役比率が既に26%を超えたとされる英国であればあながち達成不可能な数値ではないだろうが、女性取締役比率を引き上げているのは「社外取締役」であり、社内取締役の割合はぐっと低くなる。
FTSE100構成企業では、女性社外取締役比率は31.4%もあるが、社内取締役は9.6%に過ぎない。3倍を超える両比率の差からは、取締役候補となる女性の人材層が薄く、1人の女性が複数の会社の社外取締役を兼任する「黄金のスカート(golden skirt)」をはいている」と呼ばれる状況が生じていることが想定される。女性取締役比率が35%超と世界でもっとも高いと言われるノルウェーでも同じ状況があり、日本も例外ではないだろう。
コーポレートガバナンス・コードの補充原則4-11②では、社外取締役や社外監査役の兼任社数は「合理的な範囲にとどめるべき」としており、関係者の間ではこれは「2人」と言われている(2015年3月10日のニュース「社外役員の兼任社数の上限は?」参照)。英国では、「女性取締役比率」のみならず、「女性“社内”取締役比率」への関心が高まっている。日本企業においても、社外のみならず社内の女性取締役比率向上も意識していく必要がありそうだ。