コーポレートガバナンスというと最近では「コーポレートガバナンス・コード」が真っ先に頭に浮かぶが、・・・
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コーポレートガバナンスというと最近では「コーポレートガバナンス・コード」が真っ先に頭に浮かぶが、他方で、国税局が企業に「税務のコーポレートガバナンス」を求める活動が来年から本格的に実施される模様だ。
ある程度の規模の企業への税務調査は3年周期、巨大企業への税務調査は毎年行われることが多いが、このところ国税局は、「特官所掌法人 」の一部を対象に、「税務に関するコーポレートガバナンスの状況が良好で調査必要度が低い」と認められるところについては、税務調査の間隔を延ばす措置を実施してきた。
「税務に関するコーポレートガバナンスの状況が良好」と認めてもらうには、税務調査で特に問題が把握されず、また、「税務リスクの高い取引」を企業が国税局に対し自主的に開示することが求められる。そして、当該取引が適正に処理されていることを国税局が確認し、ようやく税務調査の間隔が延長される。
もっとも、税務調査の間隔の延長は基本的には「次回」の税務調査までとなる。次回の税務調査で「税務コーポレートガバナンス」に何か問題が把握されれば、その次の税務調査までの間隔は通常通りに戻る。いわば“アメとムチ”により、企業に適正な税務申告を促していこうという作戦だが、国税局は来事務年度(国税局の事務年度は7月開始のため、2016年7月~)からこれを本格的に実施していく方針を打ち出している。これまで、約500社ある特官所掌法人のうち150社程度を対象に税務コーポレートガバナンスをチェックしてきたが、来事務年度からこれを全ての特官所掌法人に拡大するという。将来的には、特官所掌法人以外の法人も対象とされる可能性があろう。
特官所掌法人 : 大企業を調査対象とする「特別国税調査官」が所掌する法人のこと。特別国税調査官は全国国税局の調査部に属している。調査部が所管する法人は約3万社あるが、そのうち特官所掌法人は約500社に過ぎない。
ただ、これまで税務調査期間の延長が認められた企業は10社+αと、全体の1割程度にとどまっている模様。その背景には、いくら国税局が「税務コーポレートガバナンス」を求めたところで、企業側は税務リスクの高い取引を積極的に開示したがらないということがある。国税局側は、企業に税務リスクの高い取引を開示させるにはどうすればよいか頭をひねっているようだが、今後も企業と国税局のせめぎ合いは続くことになりそうだ。
確立された既存市場の秩序や構造を劇的に変え、時には市場そのものを消滅させてしまうほどのインパクトを持つイノベーションのこと。破壊的イノベーションは優良企業を衰退させ、場合によっては倒産に追い込む可能性がある。
破壊的イノベーションの典型例として、しばしばデジタルカメラがアナログカメラ市場を破壊したケースが取り上げられるが、破壊的イノベーションは製造業のみならず、サービス業を含むどの業界にも起こり得る。IT企業による決済サービスへの進出(2014年5月27日のニュース「金融業界が真に恐れるべきライバル」参照)、ピア・ツー・ピア・レンディングなどは、金融業界における破壊的イノベーションの端緒となる可能性があり、また、配車サービスを展開するUberの革新的なビジネスモデルは、タクシー業界にとっての破壊的イノベーションとなり得る(2015年9月28日のニュース「“オンデマンド・エコノミー”ビジネスは日本で普及する?」参照)。
破壊的イノベーションに対し、製品やサービスの改良や品質向上によるイノベーションを「持続的イノベーション」と呼ぶが、世界中のビジネススクールの教科書に載っている「カイゼン」という言葉に象徴されるように、日本企業は基本的に持続的イノベーションにより成長してきた。ただ、それは日本企業の良さであるとともに、変化の激しい時代においては弱点にもなりかねない。経営陣が持続的イノベーションばかりに気をとられ、自社に忍び寄る破壊的イノベーションの兆候に気付かない(あるいは意図的に目をつぶる)のであれば、いずれ破壊的イノベーションを仕掛ける新興企業に屈する時が来るかもしれない。
特に、過去の成功体験を忘れられない優良企業、独占的な市場に安住している企業、規制に守られた企業の経営陣ほど持続的イノベーションに固執し、破壊的イノベーションを受け入れにくい傾向がある。なぜなら、破壊的イノベーションは自社の既存のビジネスモデルを破壊しかねないからだ(これが、ハーバード・ビジネススクールのクレイトン・クリステンセン教授により提唱された「イノベーションのジレンマ」である)。破壊的イノベーションの多くが、既得権益を持たない新興企業によってもたらされる理由はここにある。
持続的イノベーションから逃れられない経営陣の目を破壊的イノベーションにも向けさせる役割が社外取締役に期待されているが、そうは言っても、・・・
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確立された既存市場の秩序や構造を劇的に変え、時には市場そのものを消滅させてしまうほどのインパクトを持つイノベーションのこと。破壊的イノベーションは優良企業を衰退させ、場合によっては倒産に追い込む可能性がある。
破壊的イノベーションの典型例として、しばしばデジタルカメラがアナログカメラ市場を破壊したケースが取り上げられるが、破壊的イノベーションは製造業のみならず、サービス業を含むどの業界にも起こり得る。IT企業による決済サービスへの進出(2014年5月27日のニュース「金融業界が真に恐れるべきライバル」参照)、ピア・ツー・ピア・レンディングなどは、金融業界における破壊的イノベーションの端緒となる可能性があり、また、配車サービスを展開するUberの革新的なビジネスモデルは、タクシー業界にとっての破壊的イノベーションとなり得る(2015年9月28日のニュース「“オンデマンド・エコノミー”ビジネスは日本で普及する?」参照)。
破壊的イノベーションに対し、製品やサービスの改良や品質向上によるイノベーションを「持続的イノベーション」と呼ぶが、世界中のビジネススクールの教科書に載っている「カイゼン」という言葉に象徴されるように、日本企業は基本的に持続的イノベーションにより成長してきた。ただ、それは日本企業の良さであるとともに、変化の激しい時代においては弱点にもなりかねない。経営陣が持続的イノベーションばかりに気をとられ、自社に忍び寄る破壊的イノベーションの兆候に気付かない(あるいは意図的に目をつぶる)のであれば、いずれ破壊的イノベーションを仕掛ける新興企業に屈する時が来るかもしれない。
特に、過去の成功体験を忘れられない優良企業、独占的な市場に安住している企業、規制に守られた企業の経営陣ほど持続的イノベーションに固執し、破壊的イノベーションを受け入れにくい傾向がある。なぜなら、破壊的イノベーションは自社の既存のビジネスモデルを破壊しかねないからだ(これが、ハーバード・ビジネススクールのクレイトン・クリステンセン教授により提唱された「イノベーションのジレンマ」である)。破壊的イノベーションの多くが、既得権益を持たない新興企業によってもたらされる理由はここにある。
持続的イノベーションから逃れられない経営陣の目を破壊的イノベーションにも向けさせる役割が社外取締役に期待されているが、そうは言っても、破壊的イノベーションにより既存事業を一気に失うことは、会社そのものが消滅しかねないことを意味する。破壊的イノベーションへの対応は、それが起こるまでの時間が長いほどやりやすい。経営陣としては、既存事業が安定しているうちに、将来起こり得る破壊的イノベーションへの対応を図るべきだ。
具体的には、破壊的イノベーションを起こす潜在能力を持ったベンチャー企業の買収、破壊的イノベーションをもたらす技術やサービスを事業とする別会社の設立などが考えられる。既存事業が圧倒的な地位を占める現組織内では、破壊的イノベーションは生まれにくいからだ。
逆に、破壊的イノベーションの兆候が見られるにもかかわらずこれを無視したことで市場を奪われる結果を招いた経営陣は、経営責任(不作為による善管注意義務違反)を問われるリスクがあろう。
「少数株主」というと、文字通り「(相対的に)少数の株式を保有している株主」というイメージがあるかもしれないが、実はそうとは限らない。確かに少数株主には、多数派株主に対峙する存在としての「少数派」の株主という意味もあるが、議決権の50%超を確保することなく実質的に経営権を握っている株主がいる会社において、経営権を握っている株主以外の株主を指して「少数株主」と言うこともある。この場合、少数株主が連携すれば理屈の上では「多数派株主」になるが、多くの投資家の意見を束ねるのは容易ではない。だからこそ、議決権の50%以上を確保していない株主に実質的に経営権を握られる上場会社が存在しているわけだ。
会社法にも「少数株主」という概念があるが、これは、議決権の一定割合や一定数を持っていることを条件に、株主総会招集権、株主提案権、会計帳簿閲覧権、取締役等の解任請求権といった権利(=少数株主権)を行使することを認められている株主を指す。会社法上、少数株主は「何事も多数決で決まるという多数決原理を修正してでも、経営権を握っている株主の横暴から守るべき存在」として扱われている。上述のとおり、会社法では、少数株主権は議決権の一定割合や一定数を持っていることが行使の条件になっている。逆に言うと、それに満たない議決権しか有していない株主は少数株主権を付与して保護する対象としていない。
さらに、「少数株主」という言葉は会計の世界でも出てくる。具体的には、連結決算において、「100%子会社以外の連結子会社」の株式を保有している、「親会社以外」の株主を指す。もっとも、例えば支配力基準により連結対象となった子会社のように、親会社よりも持分を有する“少数株主”も存在し得ることから、最近会計基準が改正され「非支配株主」という言い回しに改められたところだ(平成27年4月1日以降に開始する事業年度より適用される「企業結合に関する会計基準」の120項を参照)。
支配力基準 : 議決権を50%超保有しているかどうかのみならず、事実関係によって「他社の経営を実質的に支配しているか否か」を判断すること。例えば親会社が資金援助をするとともに、役員の過半数を送り込んでいる場合には、たとえ議決権が50%以下でも連結子会社となる。
このように一口に「少数株主」と言ってもさまざまな意味があり得るが、株式市場で存在感が抜きん出ている機関投資家も、意外なことに「少数株主」に該当する。というのも、・・・
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「少数株主」というと、文字通り「(相対的に)少数の株式を保有している株主」というイメージがあるかもしれないが、実はそうとは限らない。確かに少数株主には、多数派株主に対峙する存在としての「少数派」の株主という意味もあるが、議決権の50%超を確保することなく実質的に経営権を握っている株主がいる会社において、経営権を握っている株主以外の株主を指して「少数株主」と言うこともある。この場合、少数株主が連携すれば理屈の上では「多数派株主」になるが、多くの投資家の意見を束ねるのは容易ではない。だからこそ、議決権の50%以上を確保していない株主に実質的に経営権を握られる上場会社が存在しているわけだ。
会社法にも「少数株主」という概念があるが、これは、議決権の一定割合や一定数を持っていることを条件に、株主総会招集権、株主提案権、会計帳簿閲覧権、取締役等の解任請求権といった権利(=少数株主権)を行使することを認められている株主を指す。会社法上、少数株主は「何事も多数決で決まるという多数決原理を修正してでも、経営権を握っている株主の横暴から守るべき存在」として扱われている。上述のとおり、会社法では、少数株主権は議決権の一定割合や一定数を持っていることが行使の条件になっている。逆に言うと、それに満たない議決権しか有していない株主は少数株主権を付与して保護する対象としていない。
さらに、「少数株主」という言葉は会計の世界でも出てくる。具体的には、連結決算において、「100%子会社以外の連結子会社」の株式を保有している、「親会社以外」の株主を指す。もっとも、例えば支配力基準により連結対象となった子会社のように、親会社よりも持分を有する“少数株主”も存在し得ることから、最近会計基準が改正され「非支配株主」という言い回しに改められたところだ(平成27年4月1日以降に開始する事業年度より適用される「企業結合に関する会計基準」の120項を参照)。
支配力基準 : 議決権を50%超保有しているかどうかのみならず、事実関係によって「他社の経営を実質的に支配しているか否か」を判断すること。例えば親会社が資金援助をするとともに、役員の過半数を送り込んでいる場合には、たとえ議決権が50%以下でも連結子会社となる。
このように一口に「少数株主」と言ってもさまざまな意味があり得るが、株式市場で存在感が抜きん出ている機関投資家も、意外なことに「少数株主」に該当する。というのも、機関投資家は投資金額こそ大きいものの、会社の経営権を握っているわけではないからだ。
経営権を握っていない分、機関投資家は少数株主としての権利の確保には敏感である。また、上場会社に対して一定割合の持分を保有することにより生じる社会的責任を有するプロフェッショナルとしての自負も、このような機関投資家の思考パターンを生んでいる。
日本の株主権は、米国などに比べると、実態はともかく、少なくとも法律上の保護に関する限り、手厚いものとなっている。例えば米国では、マジョリティ・ボーティングやプロキシー・アクセスなどを巡り、投資家と経営陣の対立が先鋭化した株主権限拡大運動が広がったが、これらは日本では既に実現済み。このため、日本では株主の権利自体を拡大させようとする動きよりは、むしろ権利(例えば株主総会における議題提案権)を行使できるバーを引上げるべきではないかという意見も聞かれる。
マジョリティ・ボーティング : 取締役選任の要件を株主総会における過半数の得票とすること。米国では、取締役の定員の枠内で獲得票の多い順に選任する「相対多数投票制」が多くの会社で採用されている。この方式の下では、株主は取締役選任議案に反対できず、また、候補者数と定員が一致していれば、1票でも得票を得れば全員当選してしまう。
プロキシー・アクセス : 株主が推薦する取締役候補の情報を、会社が発送する株主総会議案の説明書に掲載できるようにするルール
議題提案権 : 総株主の議決権の1%以上の議決権または300個以上の議決権(いずれも定款で引き下げることが可能)を6か月前(定款で短縮することが可能)から引き続き有する株主に与えられる。上記要件を満たさない複数の株主による共同提案も認められている(議決権数の合算によって要件を満たすことが条件)。
ただし、“実質面”から見ると、日本で少数株主(ここでは「経営権を握っていない株主」を意味する)の権利が守られているかという点については異論(すなわち、日本の少数株主の権利は、形式面はともかく実質面では守られていないとの意見)もある。これは、コーポレートガバナンス・コードでも議論となった政策保有株式の存在(安定株主の存在)により少数株主の権利が実質的には希薄化しているといった問題や、大規模増資やMSCBなど議決権の希薄化を伴う資本政策により、実質的に少数株主の権利が確保できていないのではないかという懸念に基づいている。
MSCB : かつてライブドアが発行したことで話題を呼んだ転換価額修正条項付転換社債(Moving Strike Convertible Bond)のこと。MSCBの購入者はどんな株価でも社債を株式に転換することができ、しかも転換時の株式の時価総額はMSCBの購入金額と変わらないことになっている。したがって、株価が低い時に転換が行われれば、大幅に発行済株式総数が増え、1株当たりの利益が希薄化する。
したがって、日本企業が何かアクションを起こす場合には、「少数株主の権利が実質面で弱められることがないか」という視点を常に持つことが、機関投資家からの反対を受けないためのポイントと言えるだろう。
上場会社役員ガバナンスフォーラム
「名古屋議定書」という国際条約をご存知だろうか?京都議定書は知っていても、名古屋議定書は聞いたことがないという人が少なくないのではないか。
名古屋議定書とは、温室効果ガス排出について取り決めた京都議定書と同様、日本が「議長国」としてとりまとめた国際条約であり、名古屋という日本の都市名が条約の名前に付されているにもかかわらず、その知名度は京都議定書に比べて格段に低い。しかし、実は現在、この議定書の締結の是非を巡り関係者間で激しい議論がなされている。場合によっては、日本企業の経営、ひいては産業界全体に大きな影響を及ぼす可能性のある「名古屋議定書」とは一体どのようなものなのか、レポートしたい。
「2.途上国の天然資源等を利用した研究開発に消極的になる企業」へ(会員限定)
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スチュワードシップ・コードが機関投資家に対し「自らの責任と判断の下」での議決権行使を求める中(スチュワードシップ・コード指針5-4)、企業には、機関投資家と良好な関係を構築するための「SR(Shareholder Relations=株主対応)が求められている。そこで、最近目に付く積極的なSRの事例を紹介しよう。・・・
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スチュワードシップ・コードが機関投資家に対し「自らの責任と判断の下」での議決権行使を求める中(スチュワードシップ・コード指針5-4)、企業には、機関投資家と良好な関係を構築するための「SR(Shareholder Relations=株主対応)が求められている。そこで、最近目に付く積極的なSRの事例を紹介しよう。
(1)招集通知の記載充実
機関投資家に有用な情報を招集通知に任意で記載する企業が増加している。例えば「剰余金処分案の参考になるよう資本政策の考え方を説明する」「経営トップの選任議案に信認を得るため、中期経営計画の進捗を解説する」など、事業報告の内容を充実させる例が見られる。また役員候補者の人となりを適切に伝えられるよう、議案に顔写真や「候補者の声」を記載するケースも目立っている。また、読み手の見やすさを意識し、図表や写真などを用いたビジュアル化やカラー化も進展している。これらは読み手である投資家を尊重し、積極的な対話を引出すための「ユーザー・フレンドリー」な取り組みと言える。
(2)招集通知の早期発送/開示
実質株主宛の招集通知は株主名簿上の株主である信託銀行を経由して送付されるため、その分、機関投資家などの実質株主が招集通知を精査できる日数は極めて短くなってしまう。そこで、機関投資家が議決権行使に十分な時間をかけられるよう、株主総会の3~4週間前に招集通知を発送する実務が一般化しつつある。また、招集通知の印刷に数日間かかることを踏まえ、招集通知を取締役会で決議した段階で、発送を待たず事前にウェブ開示するケースも増えている。さらに、ICJの議決権電子行使プラットフォームを利用することで、機関投資家株主の議決権行使環境を改善(招集通知を精査する期間の確保、情報の充実など)することも、上場会社にとって有力な選択肢となっている。
議決権電子行使プラットフォーム : 国内外の機関投資家が議決権を行使しやすいよう、東証と日本証券業協会が出資する株式会社ICJが運営する電子投票のインフラ。株主総会招集通知は、機関投資家に対して名目上の名義人である信託銀行等経由で送られてくることなどから、議案の内容を分析する時間が限られている(このため、自前の議決権行使基準や議決権行使助言会社の基準に従って機械的に議決権を行使せざるを得ない)。議決権電子行使プラットフォームを利用すれば、信託銀行から発送された段階で議案の内容を見られるようになり、時間をかけて議案を検討できる。
(3)「総会前SR訪問」の実施
招集通知の早期発送など様々な実務の前倒しにより、議決権行使前に機関投資家と面談し、議案について説明する機会が得られ、その結果、賛成率を高めることができる。近年、機関投資家の議決権行使担当者は企業と直接的にコミュニケーションすることを重視しており、通常であれば議決権行使助言会社(ISSなど)の推奨通りに反対票を投じるところ、企業から説明を受けたことで賛成に転じるというケースも耳にする。これこそ、まさにエンゲージメント(建設的な対話)に期待される効果と言えよう。なお、時間的制約から海外SRを展開する例は稀で、多くの上場会社は国内機関投資家を対象に総会前SR訪問を実施している模様である。
以上のような取り組みに加え、経営陣は資本市場にどのような企業像を訴えたいのかを検討し、「自社ならでは」のSRを展開していきたいところだ。
これまで述べてきたとおり名古屋議定書には多くの問題があるが、2010年の採択後、開発途上国が次々に締結し、昨年7月に締結国が50カ国を超えたことをもって秋に発効した。一方で、日本は締結していない。政府は、「議長国の責任」ということもあり、名古屋議定書の達成に向けた日本のロードマップなどを提示し2012年9月閣議決定された「生物多様性国家戦略2012-2020」には、「可能な限り早期に名古屋議定書を締結し、遅くとも2015 年までに、名古屋議定書に対応する国内措置を実施することを目指す」と明記されている。しかしながら、締結を推進する環境省などと、締結に慎重な経産省などとの間で意見が分かれるなど、政府内でも意思統一が図られておらず、検討は進んでいない。
締結を推進する側からは、「国際的なルールの取決めの場面で、締結国としての立場で会議に参加するとともに、名古屋議定書の議長国として議論をリードし、利用側にとって過度な負担を強いる仕組みとならないように努めていくべき」との考え方が示されている。確かに、正式なメンバーとしての立場を得ないことには交渉もままならない。これは、名古屋議定書第1回締結国会議(MOP1:2014年10月)において非締結国が“オブザーバー”扱いとなり、与えられる発言の機会が少なかったことにも表れている。また、締結を推進する側からは、懸念の強い「遡及効」について「『条約法に関するウィーン条約』の第2節第28条に『条約の不遡及』が定められている以上、認められようがない」といった主張がなされている。
これに対し、締結に慎重な立場をとる側からは、「締結国の多くが開発途上国であるという現状に鑑みると、たとえ締結国としての立場を得ようと、議長国であろうと(また、日本は一番の資金拠出国でもある)、『議論をリードする』ことは極めて難しいのではないか」との指摘がある。遡及効の問題については、既に国内措置を検討し素案を示している国の中に、明らかに遡及効と言えるような規定を盛り込んでいるものがあることを踏まえ、「ウィーン条約の不遡及に関する規定も原則を示したものでしかない以上、数で勝る途上国が次々に遡及効を含むルールを策定した場合、これを止めるだけの働きかけができるかどうか疑問である」との主張もなされている。
締結の是非については、締結した場合の国内措置の検討と併せて、今後も議論されることになるだろうが、いずれにしても上述したような多くの不明点がもう少し明らかにならない以上、実際の産業・ビジネスに与える影響を計ることは出来ない。
政府は、少なくとも、まず日本としての考え方を政府内で一致させ、これを取りまとめて明らかにするとともに、その考え方を議定書の加盟国に理解してもらうよう働きかけを行なうべきであろう。
名古屋議定書は、日本が議長国を務めた国際条約ではあるが、日本政府は拙速に締結に走ることなく、1つひとつの課題に丁寧に向き合い、また粘り強く開発途上国の理解を得る努力を重ねて欲しい。過大で予測不能なリスクを企業に負わせたり、あるいは日本の研究開発を停滞させたりすることのないよう、政府が一丸となって取り組むべきである。
各企業においては、知名度の低い名古屋議定書について、まずは社内で「日本が締結した場合にどのような影響を受けるか」を検討しておきたいところだ。