このところ、海外市場の不安定化に伴い日本の株式市場も低迷している。業績に大きな変化はないにもかかわらず、バリュエーションの低下により株価が下落している企業も多い。このように、上場企業にとって、海外市場の変動に伴う自社の株価変動は、IRなど自社の努力ではどうにもならないものがある。それだけに、一般的な機関投資家がマクロ経済の変動に伴ってどのような投資行動をとるのかということくらいは知っておきたいところだ。
バリュエーション : 株価純資産倍率(PBR)、株価収益率(PER)など株価の入った指標
機関投資家が株式を売買する場合、①「どの企業の株式」を売買するかを判断する前に、②「株式という資産」自体を増やすか減らすか(これを「アセットアロケーション」という)を判断することになる。さらにその前には、③そもそも「自分たちが扱うことのできる資金」、すなわち「その運用機関のお金」が増えているか減っているか(これを「マネーフロー」という)を判断する必要がある。
企業がIRなどによってコントロールできるのは、このうち①の「どの株を売買するか」という部分に過ぎない。一方、②のアセットアロケーションと、③のマネーフローにいついては、IR等の努力でどうにかなるものではない。
マクロ経済が不安定になると、まず③のマネーフロー自体が変化する可能性がある。運用機関としては、「顧客からのお金が入って来なくなる」「解約が出る」、極端な場合には「運用が継続できない」ということになれば、どんなに割安と思っても株式を買うことはできない。“〇○危機”などと言われるような事態にもなれば、一般的にはマネーフローが止まってしまうため、投資判断とは無関係に株式を売却することが必要となる。
そこまでは行かなくても、②アセットアロケーションの観点から株式を減らすという判断になることもあるが、実際にそうするかどうかは運用会社のスタンスによって大きく異なる。例えば、基本となる資産配分を決めている伝統的な“バランス型”のファンドは、株価が下がると保有ウェイトが低下するためむしろ株式を増やすという行動をとることが多い。これに対し、昨今増加しているリスクのコントロールを重視するファンドは、株価のボラティリティ(変動率)上昇によるリスク(株価が乱高下すること)を低下させるため、株式を売却するという行動をとることがある。こうした投資行動の差は、「ファンド特性の差」によって決まる部分が大きい。
マクロ経済の変動に伴い機関投資家がいかに行動するかは、企業のIR担当者が普段面談しているアナリスト・ファンドマネージャーとは異なる部門の人間の判断で行われる可能性が高い。自社がコントロールできるものではない分、企業としてはそのような機関投資家の行動に一喜一憂する必要はない。むしろ、その行動の背景に何があるかを確認したうえで、株価の変動よりも、マクロ経済が自社の将来の業績に与える影響を冷静に見極め、対応を考えることが重要だろう。