メーカーと当該メーカーの商品を取り扱う流通業者との“縦の関係”において、メーカーが流通業者(卸売業者や小売業者)に対し、販売価格、取扱い商品、販売地域、取引先などを制限する行為のこと。
これまで、垂直的制限行為には常に独占禁止法への抵触リスクが付きまとってきた。これは、日本の独占禁止法が「メーカー=チャネルリーダー」を前提としていることに一因がある。しかし、近年は巨大な販買力を持つ大型小売店の登場とともに、チャネルリーダーはメーカーから小売店側に移りつつあり、厳しい価格競争にさらされるメーカー側からは、現行の独占禁止法による規制への不満の声が上がっていたところだ(2014年4月5日のニュース「シェアは低い方がマーケティングがやりやすくなる?」参照)。
チャネルリーダー : 商品の流通をコントロールする地位にある者。「チャネルキャプテン」とも言われる。
こうした中、今年(2015年)4月には、どのような行為が独占禁止法に違反するのかを具体的に示す「流通・取引慣行ガイドライン(正式名称:流通・取引慣行に関する独占禁止法上の指針)」が改正され、垂直的制限行為に関する適法・違法のボーダーラインが明確化されている。
ポイントは、適法・違法の判断にあたっては、例えば「新商品の販売が促進される」「規参入が容易になる」「品質やサービスが向上する」など、垂直的制限行為を行うことにより「競争を促進する効果」があるかどうかも考慮されるとした点だ。具体例で見ると、ガイドラインでは、下記のケースはいずれも「競争を促進する効果」が認められるとしており、独占禁止法上も適法とされることになる。
(1)“フリーライダー問題”を解消するため、一定地域における販売を1つの流通業者のみに認める。
(2)商品が高品質であるとのイメージを定着させるため、高品質な商品を扱うことで有名な特定の小売業者に限定して商品を供給する。
(3)新商品の発売にあたり、流通業者に専用設備の設置(=投資)を求める必要がある場合、一定地域における販売を1つの流通業者のみに認める。
(4)販売に関するサービスの統一性や質の標準化を図るため、販売先を一定水準を満たす者に限定したり、小売業者の販売方法を制限したりする。
フリーライダー問題 : 他の流通業者による販促活動に“タダ乗り”する形で、自らは販促費をかけずにその分商品を安売りしようという流通業者の登場により、販促活動を行っていた流通業者も販促活動をやめてしまう現象。その結果、商品自体が売れなくなってしまう。流通業者間の販売価格差が生じやすい高額な商品で起こりやすい。
もっとも、垂直的制限行為が適法とされるのは、あくまで「非価格制限行為」のみであり、「再販売価格維持行為」は原則として引き続き独占禁止法違反となる。ガイドラインでは、「正当な理由」がある場合には再販売価格維持行為も違法とならないとしているが、正当な理由があると認められるのは、再販売価格を拘束すること以外の方法では競争促進効果が生じ得ない場合のみであり、実際に「正当な理由あり」と認められるのは難しいとの見方が多い。
非価格制限行為 : 例えば有力メーカーが小売店に他メーカーの競合争商品の取扱いを禁じたり、販売地域を制限するといった行為。要するに、直接的に価格を拘束しない行為を指す。
再販売価格維持行為 : メーカーが小売店等の販売価格を拘束する行為
また、一見すると「非価格制限行為」に見える販売地域の制限であっても、これが“有力メーカー”によって行われた場合には、「再販売価格維持行為」に該当すると判断される恐れがあるので要注意だ。有力メーカーとは、「市場におけるシェア10%以上、又は順位が上位3位以内」であることが目安となる。逆に言うと、「シェア10%未満“かつ”上位4位以下」のメーカーが地域制限を実施したとしても、通常、独占禁止法に触れることはない。
