オムロンは6月24日、コーポレート・ガバナンス報告書を提出するとともに、コーポレートガバナンス・コードに対応した「オムロン コーポレート・ガバナンス ポリシー 」を発表した(コーポレート・ガバナンス報告書とコーポレート・ガバナンス ポリシーはともにこちらを参照)が、これが機関投資家から高い評価を受けている。コーポレートガバナンス・コードに対応した開示のモデルケースの1つとなりそうだ。
オムロンは元々、投資家との対話を十分に行う企業として有名だが、今回同社が行った対応は、コーポレートガバナンス・コードの趣旨を理解した完成度の高いものと言える。
例えば、株主総会関係では、開催日を「集中日の3営業日以上前」、招集通知の発送を「総会の3週間前まで」と数値目標を示している(ポリシーの1ページ(1)参照)。法務的な発想だと、万が一手違いがあり目標どおり実行できなかったらどうなるのかが気になってしまうところだろうが、こうした懸念を乗り越えた同社の“潔さ”に賛辞を送る声が機関投資家から上がっている(もっと、機関関投資家の目から見ると、もしそのような事態となった場合には事情を説明すれば済むだけであり、それが特段のリスクとは考えられていない)。
機関設計関係では、監査役会設置会社をベースに、取締役会の機能を補完する「諮問委員会」の機能を付加した“ハイブリット型”を打ち出している(4ページ「1.機関設計」参照)。そのうえで、取締役会の構成は「非業務執行取締役を半数以上」「独立社外取締役を1/3以上」とし、4つある諮問委員会のうち、人事諮問委員会、社⻑指名諮問委員会、報酬諮問委員会の委員長は独立社外取締役で、委員の過半数は独立社外取締役、コーポレートガバナンス委員会の委員長・委員は全員独立社外取締役か独立社外監査役とするとした(4ページ(2)参照)。また、取締役会議長は、「取締役の監督機能」という役割を明確にするため、代表権を持たず、業務執行も行わない会長が務めるとした(4ページ(3)参照)。
このほか、買収防衛策を導入しないと宣言した点(2ページ(6)参照)、中⻑期インセンティブの1つとして業績達成条件付新株予約権を発行するなど取締役の報酬に対する考え方を示した点(6ページ~7ページの(3)参照)、株主との建設的な対話に関する基本方針を新たに策定し(10ページ参照)、社外役員の独立性要件も示している点(11ページ参照)も注目される。
投資家の中には、同社の説明の仕方の良さを指摘する向きも多い。まず、説明の流れがスムーズということが挙げられる。「企業理念」から始まり、「ステークホルダー」との関係を株主、従業員、顧客、取引先、社会とそれぞれ分けて説明した後に、「情報開示」「ガバナンスの体制」と続く流れは非常にスムーズである。コーポレートガバナンス・コードを原則1から順番に説明するのに比べると、各段に理解しやすい。コーポレートガバナンス報告書にコーポレートガバナンス・コード実施状況表を掲載し、「コーポレート・ガバナンス ポリシー」における開示場所をすべて示していることも、欲しい情報を見つけやすいという点で重要なポイントの1つと言える。
また、投資家が気にする部分ほど丁寧に説明していることも、機関投資家には好評を博している。例えば、資本政策の基本的な方針ではROICなど具体的指標を提示して説明している点(2ページ(4)参照)や、投資家との対話を通じて得られた意⾒や質問等の取締役会へのフィードバックにコミットしている点(10ページ下から5行目)である。
一方、例えば議決権行使の結果分析を行うのは「反対率が30%を超える場合」と低いハードルを設定し(2ページ(2)参照)、また、政策保有株式に関しても踏み込んだ対応は記載していない(2ページ(5)参照)。要するに、今回の開示資料は、先進的と評価される元々のガバナンス体制を上手くまとめるとともに、コードの論点を正面からしっかり捉えたうえで歯切れよい説明を展開しつつ、経営として対応が難しい部分に関しては“前向き感”を出しながらも現実路線をとっており、この点、機関投資家からは「攻めと守りのバランスが絶妙」との声が聞こえて来る。
オムロンは、今回開示したガバナンスの体制をさらに分かりやすく企業価値に結び付けて説明する「統合レポート」を来月末には公表するとみられる。投資家にとっては、統合レポートの中身が待ち遠しくなるような開示であったと言えよう。
