2015/06/23 日本への影響は?英国で四半期開示やめる企業相次ぐ(会員限定)

 今年(2015年)4月23日に経済産業省が公表した伊藤レポートの第二弾「対話先進国に向けた企業情報開示と株主総会プロセス」では、モジュール型開示システム(投資家にとって必要な情報を「モジュール(まとまった構成要素)」として特定し、それを各開示制度に当てはめていくという考え方)により、3つの制度開示(金商法開示・会社法開示・証券取引所開示)を一元化する方向性が打ち出されている(資料の115ページ参照)。

 企業の間では、開示負担の軽減を期待する声がある一方、その実現性を疑問視する声もあるが、実はスチュワードシップ・コードやコーポレートガバナンス・コードの“本家”英国では、四半期開示を取りやめる企業が相次いでいる。これは、同国で2014年11月に四半期開示ルールが廃止されたことを受けたもの。投資家保護という大義名分の下、四半期開示はグローバルスタンダードとなってきたが、EUは企業の事務負担や企業を“短期志向”に走らせかねないという四半期開示の弊害を踏まえ、2013年11月に四半期開示ルールを廃止することを決め、EU各国に対して2年以内にこれを実施するよう求めていた。

 もっとも、企業が自主的に四半期開示を行うこと自体が禁止されたわけではない。このため、英国ではいまだ多くの企業が四半期開示を継続している。企業には既に四半期開示を行う体制・慣行が定着していることに加え、四半期開示に対する投資家のニーズは根強いからだ。特に四半期開示は必要と考える米国系の株主が多い企業では、そう簡単にやめることはできないだろう。

 その一方で、四半期開示は中長期的な企業価値を志向するスチュワードシップ・コードやコーポレートガバナンス・コードの趣旨にも逆行するとの指摘は英国の投資家の間でも多く、四半期開示の廃止を歓迎する声も聞こえて来る。

 英国をはじめとするEUにおける四半期開示廃止の流れが、英国のスチュワードシップ・コードやコーポレートガバナンス・コードを“輸入”した日本にどのような影響をもたらすのか、注目される。

2015/06/22 【2015年6月の課題】自社使用品のネットオークションへの流出

2015年6月の課題

 電子機器メーカーのA社は、自社製タブレット端末を社員に貸与してITによる業務効率化を図っていましたが、当該タブレット端末が陳腐化したため、機種を切り替えることにしました。貸与していた旧タブレット端末500台は全て回収し、廃棄物処置業者に廃棄処分を委託しました。廃棄物処理業者による旧タブレット端末の収集・運搬時にはA社社員が立会い、当該処理業者から処分済みのマニフェストも受領しています。

マニフェスト : 産業廃棄物の行き先を管理し、不法投棄を未然防止するために、産業廃棄物の排出事業者と処理業者との間でやり取りされる産業廃棄物管理票のこと。マニフェストを使用しない場合、廃棄物処理法により罰則の対象となる。

 半年後のある日、A社の総務担当取締役は、部下から「廃棄処分したはずのタブレット端末がネットオークションに出品されています。社員に貸与したことを示すシールが貼りつけたままですので、当社で使用していたものにほぼ間違いないと思われます。」との報告を受けました。取締役としては、この問題をどのように処理すべきでしょうか。

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2015/06/22 会社法改正で、海外子会社の不正防止も明確に経営陣の責務に(会員限定)

 少子高齢化に直面する日本の「市場としての魅力」の喪失は今のところ止まる気配がない。金融緩和によって円安となっても、日本企業が海外、特にアジアに進出しようとする動きが減速することはないだろう。

 海外に進出する企業にとってリスクの一つとなっているのが、海外子会社における横領や不正な支出だ。投下する資本が大きくなればなるほどそのリスクは大きくなり、これをきちんと監視・把握する体制の強化が必要となる。

 しかし、現実には海外子会社の経理は子会社任せで、日本の親会社と異なる会計システムを採用しているケースが多い。日常的な経理は子会社任せでも、最低限、銀行口座残高くらいは日次で把握したいところだが、海外子会社が現地の銀行と取引している場合には、銀行から情報を直接入手することは難しい。

 元々こうした実態に悩む財務担当者は多かったが、今年(2015年)5月から施行された改正会社法により、経営陣も明確にこの問題の“当事者”となっていることを認識しなければならない。

 会社法では、従来から取締役会の職責の一つとして「株式会社の業務の適正を確保するために必要な体制の整備」を求めて来た。改正前の会社法では、その体制には「企業集団における業務の適正」を含むことが“施行規則”に規定されていたが、改正会社法ではこれ(企業集団における業務の適正を確保するために必要な体制の整備)が“法律事項”に格上げされ(会社法362条4項6号)、施行規則にはその体制の中身として、子会社における(1)報告、(2)リスク管理、(3)業務効率、(4)法令等遵守のための体制の4点が具体的に書き込まれた(同100条1項5号イ~二)。要するに、日本の親会社の経営陣には従来から海外子会社を含む内部統制の確保が要求されていたが、今回の会社法改正によりそれがより明確にされたわけだ。

 さらに、今後は事業報告に「当該体制の運用状況の概要」を記載することとされ(施行規則118条2号)、その内容は、例えば「内部統制委員会の開催状況」などある程度の具体性が必要とされる(パブコメに対する法務省見解)。また、監査役や社外取締役を中心とする監査委員会は当然、内部統制の状況を監視する職責があり、監査役等が子会社の役職員から報告を受ける体制の整備が必要とされる(同100条3項4号ロ)。

内部統制委員会 : 内部統制基本方針の原案の策定や財務報告に係る内部統制報告制度に基づく内部統制の評価、内部統制の継続的向上などに取り組む内部統制の中核機関。委員長は社長が務めるケースが多い。

 海外子会社を含めた資金管理の一元化はグローバル・キャッシュ・マネジメントと呼ばれ、日本企業も従来から取り組んできたが、日本の銀行のサービスは外資系に比べて遅れているとの不満が企業側から聞こえて来る。こうした中、最近ではノンバンクやキリバなど財務管理ソフトウェア・ベンダーもこの分野に参入している。銀行に対しては、資金効率の向上のみならず、内部統制の観点からもサービスレベルの向上を求める声が益々高まることになりそうだ。

資金効率の向上 : グループ全体の現金や流動資産を一元的に管理し、グループ各社で生じる資金の過不足を調整することで、有利子負債の圧縮や支払手数料の削減などを実現し、効率的な資金利用を図ること。通常は投資有価証券を親会社に集約したり、親会社を中心としたCMS(キャッシュ・マネジメント・システム)を導入したりすることで実現する。

2015/06/22 会社法改正で、海外子会社の不正防止も明確に経営陣の責務に

 少子高齢化に直面する日本の「市場としての魅力」の喪失は今のところ止まる気配がない。金融緩和によって円安となっても、日本企業が海外、特にアジアに進出しようとする動きが減速することはないだろう。

 海外に進出する企業にとってリスクの一つとなっているのが、海外子会社における横領や不正な支出だ。投下する資本が大きくなればなるほどそのリスクは大きくなり、これをきちんと監視・把握する体制の強化が必要となる。

 しかし、現実には海外子会社の経理は子会社任せで、日本の親会社と異なる会計システムを採用しているケースが多い。日常的な経理は子会社任せでも、最低限、銀行口座残高くらいは日次で把握したいところだが、海外子会社が現地の銀行と取引している場合には、銀行から情報を直接入手することは難しい。

 元々こうした実態に悩む財務担当者は多かったが、今年(2015年)5月から施行された改正会社法により、経営陣も明確にこの問題の“当事者”となっていることを認識しなければならない。

 会社法では、従来から取締役会の職責の一つとして「株式会社の業務の適正を確保するために必要な体制の整備」を求めて来た。改正前の会社法では、その体制には「企業集団における業務の適正」を含むことが“施行規則”に規定されていたが、改正会社法ではこれ(企業集団における業務の適正を確保するために必要な体制の整備)が“法律事項”に格上げされ(会社法362条4項6号)、施行規則にはその体制の中身として、子会社における(1)報告、(2)リスク管理、(3)業務効率、(4)法令等遵守のための体制の4点が具体的に書き込まれた(同100条1項5号イ~二)。要するに、日本の親会社の経営陣には従来から海外子会社を含む内部統制の確保が要求されていたが、今回の会社法改正によりそれがより明確にされたわけだ。

 さらに、今後は・・・

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2015/06/19 特商法改正で、訪問販売、テレアポ、ターゲティング広告などが不可に?

 近年、企業の販売活動においてインターネットの存在感が増しているが、その一方で、依然として訪問販売や電話勧誘販売(テレアポ)といった昔ながらの営業手法を活用している企業は少なくない。個別性の高い商品や高額商品の販売、あるいはインターネットを使わない層(高齢者など)に対する販売においては一定の効果がありそうだが、こうした営業手法が法令改正により規制されかねない状況となっている。

 政府内(具体的には、内閣府・消費者委員会の特定商取引法専門調査会)では現在、訪問販売、通信販売、電話勧誘販売などへの規制を強化するため、特定商取引法(特商法)の見直し議論が進んでいる。論点は、・・・

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2015/06/19 特商法改正で、訪問販売、テレアポ、ターゲティング広告などが不可に?(会員限定)

 近年、企業の販売活動においてインターネットの存在感が増しているが、その一方で、依然として訪問販売や電話勧誘販売(テレアポ)といった昔ながらの営業手法を活用している企業は少なくない。個別性の高い商品や高額商品の販売、あるいはインターネットを使わない層(高齢者など)に対する販売においては一定の効果がありそうだが、こうした営業手法が法令改正により規制されかねない状況となっている。

 政府内(具体的には、内閣府・消費者委員会の特定商取引法専門調査会)では現在、訪問販売、通信販売、電話勧誘販売などへの規制を強化するため、特定商取引法(特商法)の見直し議論が進んでいる。論点は、アポなしでの個別訪問や事前承諾のない電話勧誘(これらの訪問・勧誘は、「不招請勧誘」と呼ばれる)を規制の対象とすべきか、という点だ。こうした議論が行われている背景には、訪問販売等に対するクレームが多いということがあるが、今後の議論の方向性によっては、クレームの多寡にかかわらず幅広い業種に影響が及ぶ可能性があるので要注意だ。

 現行の特商法では、「訪問時に『訪問・勧誘を拒否する意思』が示された場合」にのみ、再度の訪問はできないことになっている(再勧誘の禁止)。しかも、再勧誘の禁止に関する罰則規定はない。この点について上記の専門調査会では、再勧誘の禁止にとどまらず、「初回の勧誘」も規制することを視野に検討を進めている。具体的には、戸外に提示された「勧誘お断り」等のステッカーに法的拘束力を持たせる案や、あらかじめ登録された住所や電話番号等に対する勧誘を禁止する仕組みが浮上している。

 これらの規制が実施された場合、訪問販売や電話勧誘販売で顧客を開拓している企業は大きなダメージを受けることになるだろう。訪問販売事業者、通信販売事業者などのほか、新聞販売の勧誘もターゲットになる可能性がある。また、これまで特商法の規制対象(=特定継続的役務)ではなかった美容医療が対象に加えられることになりそうだ。対象となる美容医療行為の範囲は今後の検討次第だが、例えば脂肪吸引や整形手術などの美容医療行為を特商法の対象としてクーリングオフの対象とすることや、虚偽・誇大広告を規制する方向で検討が進められている。このほか、通信販売の1つとして、インターネットにおけるターゲティング広告が「勧誘」に該当するかどうかも今後検討される方向。ターゲティング広告は企業による利用も増えており、仮にこれが規制されることにあれば、企業はインターネット広告戦略の見直しを迫られる。

クーリングオフ : 特定商取引法などの法律で定められた事項が書かれた契約書面(法定書面)を受け取った日から8日間(法定書面を受け取った日を1日目と数える)は、原則として無条件で契約解除を認める条項。

ターゲティング広告 : インターネット上の検索履歴をもとに、興味・関心がありそうな広告を表示する手法。

 一方、金融機関は特商法の適用対象外となっているが、これは、金融機関による不招請勧誘に対しては、金融商品取引法・金融商品販売法による同様の規制があるため。特商法が改正された場合には、金融商品取引法・金融商品販売法もこれに追随する可能性がある。現在の金融商品取引法では、デリバティブ等の一部ハイリスク取引についてのみ「不招請勧誘規制」を設けており、それ以外のものについては、適合性原則及び自主規制という比較的緩やかな形の規制が置かれているに過ぎないが、特商法で厳格に不招請勧誘が禁止され、その規制が金融商品取引法にも反映されれば、例えば生保レディーや証券マンの戸別訪問による勧誘も難しくなる可能性がある。

適合性原則 : 金融商品取引業者は、投資家の知識、経験、財産の状況、投資目的に応じた勧誘を行わなければならないという原則。

 さらに広範な影響が懸念されるのが、地方自治体の消費生活条例(消費生活に関係する基本的な条例)だ。特商法で不招請勧誘への規制が掲げられた場合には、それが地方自治体の条例にそのまま反映される恐れがある。条例には基本的には罰則はないが、同時に「適用除外規定」もないため、条例の規定を律儀に守ろうとすれば、特商法よりも幅広い範囲の事業者に影響が及ぶことになる。

 専門調査会では8月に議論を一旦とりまとめ、必要があれば9月以降も議論を続けるとしている。当フォーラムでは今後の議論の動向をウォッチするとともに、続報していきたい。

2015/06/18 【失敗学第13回】イチケンの事例(会員限定)

概要

 株式会社イチケン(東証第一部上場)の関西支店で、赤字受注時でも利益を出すために、協力会社(下請け)に工事代金の一部を契約額に含めないよう依頼し(工事原価の先送り)、その分を帳簿外で管理したうえで、別の工事の工事代金として支払う(簿外債務の上乗せ支払い)ことを繰り返していた。

経緯

 イチケンが2014年9月に東京証券取引所へ改善報告書を提出するまでの経緯につき、時系列で示すと、次のとおり。
<2008年>
リーマンショック後に関西地区の建設市況が著しく低迷したため、受注高が大きく落ち込んだイチケン関西支店では、売上予算達成のために安値受注を繰り返し行うようになった。イチケンの関西支店の建設部長Aと店舗建設部長Bらは、利益を確保するために、赤字が見込まれる工事について協力会社(下請け)に工事代金の一部を請求しないよう依頼し(工事原価の先送り)、その分を別の工事の工事代金として請求させて支払う(簿外債務の上乗せ支払い)ことを繰り返すようになった。

<2013年>
7月12日:イチケンの関西支店の支店長が同支店建設部長Aと店舗建設部長Bから報告を受ける中で、一部の工事の原価に他の工事の原価が算入されている疑いを持ち、その旨を社長に報告する。
7月17日:社長が、関西支店長およびA・Bに対して面談を実施し、不正が行われていたことを確認。
7月25日:社内調査チームが編成され、7月26日から8月2日の8日間にわたり、一次調査が実施される。
8月6日:不適切な会計処理が行われた可能性があることが判明した旨をリリース。また、外部調整員会を設置し、事実関係の調査分析を開始したこともリリース
9月9日:同社は外部委員会の調査報告書を受領し、過年度の決算を訂正(過年度決算の訂正による純資産への負の影響額は564百万円)。
9月30日:東京証券取引所に改善報告書を提出。

内容・原因・改善策

 イチケンのリリースによると、本件の問題点の内容とその原因と改善策は次のとおりである。

受注プロセスにおける問題点

内容 大幅な安値受注を繰り返し行うようになった。
原因 安値受注に際しては、受注後の仕様変更や経費圧縮等の工夫によるコスト削減が図られることを前提として予定工事原価を算出していたが、コスト削減の役割や責任分担が明確にされていなかった。
改善策 政策的に低採算もしくは赤字が見込まれる工事を受注する場合は、予定工事原価を確認し、顧客に提示する見積金額を決定する社内会議において、利益を改善するためのコスト削減を支店長が指示した物件については、支店長はどの担当部門が責任を持ってコスト削減策を実施するのかを明確にし、これを社内会議の議事録に記録させる。また、コスト削減策の進捗状況も管理する。

購買(発注)プロセスにおける問題点(1)

内容 工事原価の先送りに協力してくれる会社に発注するとともに、簿外債務の返済機会を確保するため、あえて競争見積もり(相見積もり)を実施せず、特定の会社に発注するケースがあった。
原因 競争見積もりを実施しない場合の対処方法が、社内規程で明文化されていなかった。
改善策 競争見積もりの例外処理の明確化。すなわち、競争見積もりを原則とし、例外的に競争見積もりを実施しない場合は、その合理的理由を購買回議書に記載し、承認を必要とする旨を明文化し、内部監査室がその運用状況を確認する。

購買(発注)プロセスにおける問題点(2)

内容 購買部門は、購買回議書の審査にあたり、「工事原価の先送り」や「簿外債務の上乗せ支払い」を指摘できなかった。
原因 ・購買部門は、購買回議書の審査に際し、工事全体の実行予算総額による予算確認を行うにとどまり、工種別の予算額と予算消化の内容の厳格な比較照合を実施していなかった。
・購買部門長は付け替えが行われていたことを認識していた。
改善策 ・購買部門が工事原価の付け替えを牽制する役割を担うことを、社内規程に明示。
・購買部門における審査精度向上のため、施工部門長は作業所長(工事現場の所長)が毎月末日に作成する作業所における工種別の予算額とその消化状況および見通しを記載した「工事損益予想表」を工事部門に回付し、購買部門はこれを指標として工種別予算確認を行う。

支払プロセスにおける問題点

内容 管理部門は、協力会社(下請け)から届いた請求書が「工事原価の先送り」や「簿外債務の上乗せ支払い」を意図した請求書であることを発見できなかった。
原因 管理部門は、届いた請求書の「記載内容チェック」「発注金額との照合」「印鑑漏れの確認」といった形式的なチェックをするだけであり、納品書との数量チェックをしていなかった。また、請求書には「●●一式」とだけ記載され、数量明細が添付されていないにもかかわらず、管理部門は数量明細の提出を求めることなく支払処理を行っていた。
改善策 ・届いた請求書を支払処理に回す際に、数量確認ができる納品書等を請求書に添付する旨を社内規程に明文化。
・管理部門は、不正行為を抑止するため、請求書のチェックに際して、工事の時期、契約時の数量と納品書の数量の比較を行う旨、マニュアルを整備し、実行に移す。

その他の改善策

改善策 ・建設業法のみならず、原価付け替えの禁止等の会計的事項にも踏み込んだコンプライアンス教育の実施。
・内部通報制度の活性化(社内のイントラネットシステム等で「内部通報制度」の内容、意義および通報者が不利益をこうむらないよう公益通報者保護法の趣旨に基づき保護体制が講じられている旨の周知徹底を図る)。
・定期的な人事ローテーションを行い、人事の長期固定化を回避。
・1年に1回、協力会社に対してコンプライアンスに関するアンケート調査を実施。
・協力会社(下請け)専用の相談窓口を設置(窓口は本社業務部門内に設置)し、協力会社への支払通知書に当該窓口の電話番号を記載する。
・監査部門の体制強化。
<この失敗から学ぶべきこと>

 イチケンの不祥事に加担させられていた協力会社44社のうち38社が、イチケンを中心に同社とその協力会社によって組織された任意団体である一栄会に所属していました。一栄会の会員は、会員であることで安定的に仕事を回してもらえる反面、工事原価の先送りを依頼されれば多少無理してでも飲まざるを得なかったことが予想されます。一栄会の会員は取引先持株会(全国一栄会。イチケンの第5位の株主)にも加入することから、イチケンを中心としたいわば“運命共同体”的な連帯感が醸成され、それが不祥事の発覚を遅らせた可能性も考えられます。このように親密な協力会社が存在する場合、請求書等の外部証憑を使った不正が生じやすい点には留意が必要です。

 また、今回のイチケンの事例は、相見積もりの実施や請求書と納品書の照合など基本的な内部統制をしっかりと構築できていれば、回避できた不祥事と言えます。内部統制の構築と言っても決して難しい話ではなく、基本的な“動作”の積み重ねであることを、改めて認識させられる事例でした。

2015/06/18 (新用語・難解用語)アウトサイダー株主(会員限定)

 株主総会で自らを支持してくれる株主を把握するためにも、経営陣にとって株主構成を分析することは極めて重要と言える。

 株主構成を分析する場合、株主の保有目的の観点から、「投資収益を目的に株式を保有する株主」をアウトサイダー株主、「株価以外の関心から株式を保有する株主」をインサイダー株主として区分することがある(単に「アウトサイダー」「インサイダー」と呼ぶことも多い)。アウトサイダー株主の代表例が国内外の機関投資家や個人株主であり、インサイダー株主には、経営陣のほか、従業員持株会、取引関係のある法人(銀行・生損保・事業会社など)が該当する。

 かつての日本の上場会社の株主構成は、株式持ち合いや取引先金融機関による保有を中心に、安定してインサイダー比率が高い状況が続いていた。しかし、北海道拓殖銀行が破綻し山一證券が自主廃業に追い込まれた1997年の金融危機以降、銀行が保有株の売却を続けたため、上場会社の株主構成は大きく変化する。2000年代に入るとついにアウトサイダー比率がインサイダー比率を逆転、これを背景としてアクティビストファンドの台頭も見られた(ただし、ここでいうアウトサイダー株主には、個人投資家など基本的には経営陣を支持する可能性の高い株主も含まれる)。

 上場会社が今後気にかけておきたいのが、海外および国内の機関投資家の保有比率(の増加)だ。なぜなら、アウトサイダー株主である機関投資家は、同じアウトサイダー株主である個人投資家と異なり、会社提案の株主総会議案に反対票を投じる可能性が低くないからだ。会社(経営陣)側は株主の安定化(=インサイダー株主の増加)を図りたいと思うかもしれないが、近年は機関投資家の比率が50%を超える上場会社も増えている。英米の状況を見ても、株主構成において機関投資家が占める割合の増加は不可逆な流れとなっている。

 機関投資家の比率が50%までは達していない上場会社も、安心はできない。これまで“安定的なインサイダー株主”と考えられていた生損保が、最近ではスチュワードシップ・コードの受け入れにより無条件に会社提案の株主総会議案に賛成するというわけでもなくなっているからだ。また、株式を互いに持ち合っている先の上場会社も、コーポレートガバナンス・コードの受け入れにより、投資家へ政策保有株式の保有のねらい・合理性や議決権行使基準を開示することを求められており(コードの【原則1-4. いわゆる政策保有株式】を参照)、いつまで“安定的なインサイダー株主”で居続けてもらえるのか未知数のところがある。

議決権行使基準 : 株主総会議案への賛否を判断するための具体的な基準

 幸い、機関投資家の多くは確固たる議決権行使基準を持っている。その基準は、厳しさの程度の差こそあれ、概ね同じ視点である。そのため、上場会社としては機関投資家の議決権行使結果を予測しやすい。株式の持ち合いなど株主安定化策を実施して機関投資家から不評を買うよりも、むしろ彼/彼女らの行動原理を理解する方が合理的と言えるだろう。

2015/06/18 (新用語・難解用語)アウトサイダー株主

 株主総会で自らを支持してくれる株主を把握するためにも、経営陣にとって株主構成を分析することは極めて重要と言える。

 株主構成を分析する場合、株主の保有目的の観点から、「投資収益を目的に株式を保有する株主」をアウトサイダー株主、「株価以外の関心から株式を保有する株主」をインサイダー株主として区分することがある(単に「アウトサイダー」「インサイダー」と呼ぶことも多い)。アウトサイダー株主の代表例が国内外の機関投資家や個人株主であり、インサイダー株主には、経営陣のほか、従業員持株会、取引関係のある法人(銀行・生損保・事業会社など)が該当する。

 かつての日本の上場会社の株主構成は、株式持ち合いや取引先金融機関による保有を中心に、安定してインサイダー比率が高い状況が続いていた。しかし、北海道拓殖銀行が破綻し山一證券が自主廃業に追い込まれた1997年の金融危機以降、銀行が保有株の売却を続けたため、上場会社の株主構成は大きく変化する。2000年代に入るとついにアウトサイダー比率がインサイダー比率を逆転、これを背景としてアクティビストファンドの台頭も見られた(ただし、ここでいうアウトサイダー株主には、個人投資家など基本的には経営陣を支持する可能性の高い株主も含まれる)。

 上場会社が今後気にかけておきたいのが、・・・

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