2015/05/28 (新用語・難解用語)2倍議決権制度

 2014年3月、筑波大学発のベンチャー企業で介護ロボットスーツを開発・販売するサイバーダイン社が東証マザーズ市場に上場したが、同社の上場の際に大きな話題となったのがそのガバナンス体制だ。同社では普通株式の他に「普通株式の10倍の議決権」が付与された種類株式を発行、出資割合49.31%の同社社長が89.89%の議決権を保有する形での上場となった。

種類株式 : 普通株式とは種類の異なる株式のこと。配当を優先的に受ける一方議決権が制限される配当優先株など、株主の権利の内容を自由に設定できる。

 同社の有価証券届出書における「コーポレート・ガバナンスの状況」に下記のような記述が見られた。

当社の議決権を山海嘉之及び本財団法人に集中させることにより、当社グループの先進技術の平和的な目的での利用を確保し、人の殺傷や兵器利用を目的に利用されることを防止することにあります。

 同社の場合、「事業の公共性」が、このような特殊なガバナンス体制が容認される理由の1つになったと言えそうだが、国内産業や雇用の保護という名目で、1株あたり「2倍」の議決権を認める法律を作ってしまったのがフランス政府だ。

 フランス政府が2014年に成立させ、2016年4月以降に施行されることになっている「フロランジュ法」には、「2年以上同一名義人により保有された株式に対しては2倍の議決権を強制的に付与する」という条項(2倍議決権制度)が含まれている。企業が2倍議決権制度の適用を回避するためには、株主総会において同制度に反対する議案(すなわち、「1株1議決権」の存続を求める議案)を提出し、「2/3以上」の賛成をもって可決させる必要がある。逆に言うと、それができなければ、2016年4月以降、同制度が強制的に適用されることになる。

 こうした中、大手化粧品会社のロレアルや大手コンサルティング会社のキャップジェミニは、・・・

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2015/05/28 (新用語・難解用語)2倍議決権制度(会員限定)

 2014年3月、筑波大学発のベンチャー企業で介護ロボットスーツを開発・販売するサイバーダイン社が東証マザーズ市場に上場したが、同社の上場の際に大きな話題となったのがそのガバナンス体制だ。同社では普通株式の他に「普通株式の10倍の議決権」が付与された種類株式を発行、出資割合49.31%の同社社長が89.89%の議決権を保有する形での上場となった。

種類株式 : 普通株式とは種類の異なる株式のこと。配当を優先的に受ける一方議決権が制限される配当優先株など、株主の権利の内容を自由に設定できる。

 同社の有価証券届出書における「コーポレート・ガバナンスの状況」に下記のような記述が見られた。

当社の議決権を山海嘉之及び本財団法人に集中させることにより、当社グループの先進技術の平和的な目的での利用を確保し、人の殺傷や兵器利用を目的に利用されることを防止することにあります。

 同社の場合、「事業の公共性」が、このような特殊なガバナンス体制が容認される理由の1つになったと言えそうだが、国内産業や雇用の保護という名目で、1株あたり「2倍」の議決権を認める法律を作ってしまったのがフランス政府だ。

 フランス政府が2014年に成立させ、2016年4月以降に施行されることになっている「フロランジュ法」には、「2年以上同一名義人により保有された株式に対しては2倍の議決権を強制的に付与する」という条項(2倍議決権制度)が含まれている。企業が2倍議決権制度の適用を回避するためには、株主総会において同制度に反対する議案(すなわち、「1株1議決権」の存続を求める議案)を提出し、「2/3以上」の賛成をもって可決させる必要がある。逆に言うと、それができなければ、2016年4月以降、同制度が強制的に適用されることになる。

 こうした中、大手化粧品会社のロレアルや大手コンサルティング会社のキャップジェミニは、2/3を優に超える90%以上の賛成を得て2倍議決権制度の導入に反対する議案が可決された一方で、大手自動車メーカーのルノーの株主総会ではこれが否決されている。その背景には、ルノーの約20%の株式を保有していたフランス政府が否決側に回ったということがある(フランス政府は、否決を実現するため株主総会直前に株式を買い増し、保有比率を15%から19.74%まで引き上げていた)。この結果、グローバル企業であるルノーでも、2016年4月から2倍議決権制度が導入されることになる。

 海外では、創業者等に普通株式の10倍の議決権を付与した状態でナスダック市場に上場したグーグルの時価総額が上場(2004年)から10年で約15倍になった例もあるように、成長過程にある企業など、長期的な視野に立った経営判断を行う安定株主の発言権強化が有効な場合もある。ただ、特に同族系の上場企業などで特定の者(同族関係者等)の発言権が大きくなれば、不可解な経営方針や業績と連動しない高額な役員報酬に対する牽制が効なくなり、コーポレートガバナンスが崩壊するとの指摘は多い。

 コーポレートガバナンス・コードが導入されるなど、政府主導でコーポレートガバナンス強化が進む日本からすれば、ある意味これと逆行するフランス政府の選択が今後どのような結末を迎えるのかは見モノだろう。

2015/05/27 株主総会に関するコーポレートガバナンス・コードへの誤解

 2015年4月28日のニュース「株主総会の7月以降開催が可能に」でお伝えしたとおり、経済産業省が4月23日に公表した“伊藤レポート” の第二弾「対話先進国に向けた企業情報開示と株主総会プロセス」では、株主が十分な議案の検討時間を確保するため、基準日を決算日より後に設定することによる定時株主総会(以下、株主総会)の7月開催(3月決算の場合)が推奨されたところだ。

 しかし、当フォーラムの取材によると、・・・

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2015/05/27 株主総会に関するコーポレートガバナンス・コードへの誤解(会員限定)

 2015年4月28日のニュース「株主総会の7月以降開催が可能に」でお伝えしたとおり、経済産業省が4月23日に公表した“伊藤レポート” の第二弾「対話先進国に向けた企業情報開示と株主総会プロセス」では、株主が十分な議案の検討時間を確保するため、基準日を決算日より後に設定することによる定時株主総会(以下、株主総会)の7月開催(3月決算の場合)が推奨されたところだ。

 しかし、当フォーラムの取材によると、今のところ7月開催を実施する3月決算企業はほぼ無さそうだ。その理由の1つとして、7月に株主総会を開催するとなると第1四半期決算と時期が重なり、対応が難しいということがある。また、基準日を決算日と別の日にすれば、複数の企業の株式を保有する株主の混乱を招く恐れもあろう。

 仮に議決権の基準日だけではなく配当の基準日も決算日と別の日にした場合には、従来通り決算日を基準日とする企業の配当を受ける権利を確定した投資家が、当該株式を売却し、“配当狙い”で自社株式を買ってくることも予想される。そうなれば短期投資家が増えかねないとう問題もある。

 これらの理由から、ほとんどの企業が今後も6月に株主総会を開催(3月決算企業の場合)するとみられるが、こうしたなか気になるのが、来月6月1日から実施されるコーポレートガバナンス・コードに盛り込まれた株主総会に関する下記の記述だ(補充原則1-2③)。

上場会社は、株主との建設的な対話の充実や、そのための正確な情報提供等の観点を考慮し、株主総会開催日をはじめとする株主総会関連の日程の適切な設定を行うべきである。

 コーポレートガバナンス・コードの原案に記載されていた「背景説明」は、株主総会の7月開催に言及していた(10ページ参照)。仮にこのコードが上述した伊藤レポート第二弾と同様に「株主総会の7月開催」を推奨するものであるとすれば、企業としてはどのように「コンプライ」すべきか、悩ましいところだろう。

 しかし、当フォーラムの取材により、上記コードは株主総会の7月開催を意図したものではないことが確認されている。確かに、「背景説明」を見ると7月開催を視野に入れているようにも見えるが、背景説明はあくまでコーポレートガバナンス・コードを策定する過程で出て来た議論を紹介したものであり、コードの“解釈指針”ではない。つまり、補充原則1-2③の背景説明で出て来た「7月開催」という話も、1つの議論に過ぎないということだ。

 では、具体的にこのコードが何を想定しているのかというと、例えば“集中日”を避けた株主総会の開催や、招集通知の早期発送、株主総会前の有価証券報告書の提出などが考えられる。要するに、同コードはこれまでの株主総会実務を大きく変えるものではないと言えよう。

2015/05/26 行政庁が作る「ガイドライン」の法的根拠

 企業活動においては様々な法令の遵守が求められるが、法令同様、企業の行動に大きな影響を与えるのが、各行政庁から出されている「ガイドライン」や「指針」だ(以下、まとめて「ガイドライン」という)。

 行政庁が策定するガイドラインは、行政庁の“判断基準”を示したものであり、企業実務はもちろん、裁判所や、場合によっては警察当局の動きにも一定程度の影響を与える。例えば、企業の「ノウハウ」が営業秘密として法的に保護されるかどうかを判定するうえでは、経済産業省が策定したガイドラインである「営業秘密管理指針」が大きな役割を果たす(【役員会 Good&Bad発言集】リストラに伴う技術流出リスクへの対応参照)。

 営業秘密管理指針は、企業の中で営業秘密をどのように管理すべきかを示したものであり、企業が「営業秘密の侵害があった」として警察に訴えた場合、警察からは必ず「営業秘密管理指針に沿って管理をしていましたか?」と聞かれることになる。仮に同指針に従っていなかった場合、「貴社の管理がずさんだった」とされ、実際に営業秘密を不正に盗まれて勝手に使われているにもかかわらず、警察が動いてすらくれないということもある。また、裁判においても、同指針に沿って営業秘密を管理していなければ、侵害があったことや損害賠償が認められないという結論になりがちである(このような実態を踏まえ、今年1月には同指針が全面改訂され、これまで曖昧だったり厳しすぎたりした箇所が見直され、より企業の実務に即したものとなった。2014年10月3日のニュース「“金庫に隠された営業秘密”のみを保護する規制に改正の動き」参照)。

 もっとも、ガイドラインはあくまで行政庁だけで策定されるものであり、行政庁の運用基準・行動指針に過ぎない。国会で決められるわけではない以上、「法令上の根拠」はない。このため、裁判所の判断を拘束(=裁判規範性)することもなく、裁判ではあくまで「参考」にされるに過ぎない。したがって、実際の裁判でガイドラインに従っていることを主張し、それが認められたとしても、裁判に負けることはあり得る。

 ただし、なかには「法令上の根拠」があるガイドラインも存在する。例えば、・・・

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2015/05/26 行政庁が作る「ガイドライン」の法的根拠(会員限定)

 企業活動においては様々な法令の遵守が求められるが、法令同様、企業の行動に大きな影響を与えるのが、各行政庁から出されている「ガイドライン」や「指針」だ(以下、まとめて「ガイドライン」という)。

 行政庁が策定するガイドラインは、行政庁の“判断基準”を示したものであり、企業実務はもちろん、裁判所や、場合によっては警察当局の動きにも一定程度の影響を与える。例えば、企業の「ノウハウ」が営業秘密として法的に保護されるかどうかを判定するうえでは、経済産業省が策定したガイドラインである「営業秘密管理指針」が大きな役割を果たす(【役員会 Good&Bad発言集】リストラに伴う技術流出リスクへの対応参照)。

 営業秘密管理指針は、企業の中で営業秘密をどのように管理すべきかを示したものであり、企業が「営業秘密の侵害があった」として警察に訴えた場合、警察からは必ず「営業秘密管理指針に沿って管理をしていましたか?」と聞かれることになる。仮に同指針に従っていなかった場合、「貴社の管理がずさんだった」とされ、実際に営業秘密を不正に盗まれて勝手に使われているにもかかわらず、警察が動いてすらくれないということもある。また、裁判においても、同指針に沿って営業秘密を管理していなければ、侵害があったことや損害賠償が認められないという結論になりがちである(このような実態を踏まえ、今年1月には同指針が全面改訂され、これまで曖昧だったり厳しすぎたりした箇所が見直され、より企業の実務に即したものとなった。2014年10月3日のニュース「“金庫に隠された営業秘密”のみを保護する規制に改正の動き」参照)。

 もっとも、ガイドラインはあくまで行政庁だけで策定されるものであり、行政庁の運用基準・行動指針に過ぎない。国会で決められるわけではない以上、「法令上の根拠」はない。このため、裁判所の判断を拘束(=裁判規範性)することもなく、裁判ではあくまで「参考」にされるに過ぎない。したがって、実際の裁判でガイドラインに従っていることを主張し、それが認められたとしても、裁判に負けることはあり得る。

 ただし、なかには「法令上の根拠」があるガイドラインも存在する。例えば、今年(2015年)3月13日に国会に提出され、現在衆議院で審議中の特許法の改正案に盛り込まれた、職務上の発明をした従業員に対して与えられる「相当の金銭その他の経済上の利益の内容を決定するための手続に関する指針」だ(2015年4月10日のニュース「発明は「従業員」から「会社」のものへ、残されたリスク要因は?」参照)。

 これが法令上の根拠を持つのは、特許法の改正条文の35条6項に、この指針を「経済産業大臣が定める」とされているため。今回の特許法改正は、企業の訴訟リスクを低減し、予見可能性を高めることを目的としていたため、このガイドラインが法的根拠を持つことは企業にとって極めて重要だった。このガイドラインに沿って社内規則を定め、当該規則に従って従業員に報奨を付与すれば「適切に報奨した」とみなされ、裁判ではそこを争うことはできない。

 もちろん、この改正特許法関係のガイドラインも国会で決められるわけではないため、「法令上の根拠がある」とは言っても、法律のような確たる裁判規範性はない。しかし、今般の改正の趣旨に鑑み、裁判においても十分に尊重されることが期待される。

 たとえ法令に根拠を置こうと、「行政」の考え方が「裁判所」の規範とはなり得ない(=行政の考え方が裁判所を完全に拘束することは出来ない)ということになる(これが三権分立の考え方でもある)。それだけに、ガイドラインの対象者と策定者(行政)が協力し合い、ガイドラインの実効性を高めていくことが重要であろう。

2015/05/25 エンゲージメントの時代に問われる“経営者の度量”

 上場企業である以上、株主から何らかの提案を受けることは珍しくない。そのような場面に直面した経営陣にとってまず気になるのは、当該株主の「持株比率」だろう。

 持株比率が高い投資家からの提案であれば、内容を問わず、とりあえず聞かざるを得ない。しかし、このように高い持株比率を背景にした提案の中には、そもそも提案の内容に無理があるものが少なくないのも事実。よくあるのは、自社株買いや配当(株主還元)を要求するものだ。もちろん、適切な株主還元であれば実施されてしかるべきだが、本来であれば中長期的にもっと高いリターンが期待できる投資をできたにもかかわらず、無理に株主還元することによってその機会を逸し、中長期にわたって企業価値を毀損してしまうこともある。当然ながら、経営陣としてはそういう提案は拒否したいことだろう。逆に言うと、提案の内容に無理があるからこそ、“数の力”を背景に、「最後は議決権の数で勝負しましょう」というのが、こうした投資家のスタンスと言える。

 一方、たとえ0.1%の持株比率しかない投資家からの提案であっても、それが本当に中長期の企業価値の改善につながるものであれば、経営陣は門前払いにすることなく、聞く耳を持つべきだ。

 こうした提案に耳を傾けられるかどうかは、結局は「経営者の度量」によるところが大きい。ある著名機関投資家は、「他人の意見を聞ける経営者でなければ、エンゲージメントはしない」と言い切る。その機関投資家は、エンゲージメントする前には必ず・・・

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2015/05/25 エンゲージメントの時代に問われる“経営者の度量”(会員限定)

 上場企業である以上、株主から何らかの提案を受けることは珍しくない。そのような場面に直面した経営陣にとってまず気になるのは、当該株主の「持株比率」だろう。

 持株比率が高い投資家からの提案であれば、内容を問わず、とりあえず聞かざるを得ない。しかし、このように高い持株比率を背景にした提案の中には、そもそも提案の内容に無理があるものが少なくないのも事実。よくあるのは、自社株買いや配当(株主還元)を要求するものだ。もちろん、適切な株主還元であれば実施されてしかるべきだが、本来であれば中長期的にもっと高いリターンが期待できる投資をできたにもかかわらず、無理に株主還元することによってその機会を逸し、中長期にわたって企業価値を毀損してしまうこともある。当然ながら、経営陣としてはそういう提案は拒否したいことだろう。逆に言うと、提案の内容に無理があるからこそ、“数の力”を背景に、「最後は議決権の数で勝負しましょう」というのが、こうした投資家のスタンスと言える。

 一方、たとえ0.1%の持株比率しかない投資家からの提案であっても、それが本当に中長期の企業価値の改善につながるものであれば、経営陣は門前払いにすることなく、聞く耳を持つべきだ。

 こうした提案に耳を傾けられるかどうかは、結局は「経営者の度量」によるところが大きい。ある著名機関投資家は、「他人の意見を聞ける経営者でなければ、エンゲージメントはしない」と言い切る。その機関投資家は、エンゲージメントする前には必ず経営者に会ったうえで、提案を受け入れてもらえる余地のある人物なのかどうかを見極めるという。余地がないと判断したらその会社の株を買うことはない。たとえ業績の良い会社であったとしてもだ。

エンゲージメント : 企業と投資家の建設的な対話のこと。機関投資家はスチュワードシップ・コードにより投資先である上場会社とのエンゲージメントを求められており、一方の上場会社も、コーポレートガバナンス・コードにより投資家とのエンゲージメントを求められている。

 企業が中長期的な価値を上げていくためには、良質な長期投資家に株を保有してもらう必要があるが、こうした投資家が集まるかどうかは、経営者の姿勢に大きく左右されることになろう。

2015/05/22 ESG投資、日本における現状

 経済、環境、社会の持続性に配慮した投資手法である「サステナブル投資(持続可能(sustainable)な投資)」の投資資産額はここ数年で急速に拡大している。今年(2015年)に公表された「Global Sustainable Investment Review 2014」によれば、世界のサステナブル投資資産は2012年の13.3兆米ドルからわずか2年で21.4兆米ドルにまで急増、運用資産全体の30.2%を占めるに至っている。サステナブル投資の中で大きな位置を占めるのが、財務情報とESG情報を統合して企業分析を行う「ESGインテグレーション」(通常は単に「ESG投資」と言われる)による投資であり、その額は12兆8540億米ドルにのぼる。

 このようにグローバルで見れば勢いを増す一方のサステナブル投資だが、地域別に見ると、欧州を筆頭に、カナダや米国での拡大が目立つ一方、日本を含むアジアにおいては、運用資産全体に占めるサステナブル投資の割合はわずか0.2%にとどまっている。この数字を見ると、日本ではESG投資をはじめとするサステナブル投資がまだそれほど拡大していないようにも見えるが、それは正しくない。

 まず、・・・

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2015/05/22 ESG投資、日本における現状(会員限定)

 経済、環境、社会の持続性に配慮した投資手法である「サステナブル投資(持続可能(sustainable)な投資)」の投資資産額はここ数年で急速に拡大している。今年(2015年)に公表された「Global Sustainable Investment Review 2014」によれば、世界のサステナブル投資資産は2012年の13.3兆米ドルからわずか2年で21.4兆米ドルにまで急増、運用資産全体の30.2%を占めるに至っている。サステナブル投資の中で大きな位置を占めるのが、財務情報とESG情報を統合して企業分析を行う「ESGインテグレーション」(通常は単に「ESG投資」と言われる)による投資であり、その額は12兆8540億米ドルにのぼる。

 このようにグローバルで見れば勢いを増す一方のサステナブル投資だが、地域別に見ると、欧州を筆頭に、カナダや米国での拡大が目立つ一方、日本を含むアジアにおいては、運用資産全体に占めるサステナブル投資の割合はわずか0.2%にとどまっている。この数字を見ると、日本ではESG投資をはじめとするサステナブル投資がまだそれほど拡大していないようにも見えるが、それは正しくない。

 まず、日本におけるサステナブル投資額の集計はテーマファンドの残高をベースに行われているため、実際の投資額よりもかなり小さく見積もられている可能性が高い。

テーマファンド :ある特定のテーマに関連した銘柄に重点的に投資するファンドのこと。例えば、環境問題を解決したり、環境に優しい事業を展開する企業に投資したりする「エコファンド」、インターネットや情報通信の関連企業に投資する「IT関連ファンド」などが挙げられる。

 また、昨年(2014年)2月からのスチュワードシップ・コードの導入を受け、「スチュワードシップ責任を果たすための投資方針(原則1)」の中で、ESGの各要素について投資先企業と対話を行うことや、「投資先企業の状況の的確な把握(原則3)」の中で、独自のESG評価を運用プロセスに組み込むことなどを表明する機関投資家が相次いでいる。日本版スチュワードシップ・コードの受け入れを表明した機関投資家は、2015年2月末時点で184社にのぼっており、その運用資産の合計額は東証上場企業の資産総額の90%以上に当たるとの試算もある。

 さらに、GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)が先月(2015年4月)に公表した中期計画の中に、「株式運用において、財務的な要素に加えて、収益確保のため、ESG(環境、社会、ガバナンス)を含めた非財務的要素を考慮することについても、資金運用について一般に認められている専門的な知見に基づき、検討する」との記述が入ったことで、運用機関側がこぞってESG投資への対応を始める可能性がある。

 このように、日本においても、ESGをはじめとする非財務情報が「重要な投資情報」であるという認識は機関投資家の間でも着実に広がっている。上場企業としては、それを前提に非財務情報の開示に積極的に取り組む必要がある。

GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人) : 厚生年金と国民年金の積立金の管理・運用を行う厚生労働省所管の独立行政法人。運用資産の規模が100兆円を優に超える世界最大の機関投資家である。