2015/04/20 ガバナンスコード原案「序文」から見える社外取締役に期待される役割

 2015年4月5日のニュース「「ガバナンスコード原案」から「東証のコード」への引き継がれ方」でお伝えしたとおり、今年(2015年)3月5日に公表されたコーポレートガバナンス・コード原案に記載されていた「経緯及び背景」等の序文に相当する箇所は整理される見込みだが、その“精神”まで消滅するわけではない。原案の2ページ~に記載されている「本コード(原案)の目的」の「7」には、同コードが、経営陣が結果責任を問われることを懸念してリスク回避的な方向に偏ることがないよう「攻めのガバナンス」の実現を目指していることが明記されている。

 これまでコーポレートガバナンスは「不正防止」の観点から語られることが多かったため、「攻めのガバナンス」という言葉にピンと来ない向きもあるかもしれない。実際、英米では数度にわたる企業不祥事とそれに伴うコーポレートガバナンス改革を通じて、専ら経営者の行動をモニタリングする「守りのガバナンス」の構築が進められてきた。具体的には、・・・

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2015/04/17 IFRS導入がROEに与える影響

 金融庁が4月15日に公表した「IFRS適用レポート」によると、IFRSの任意適用企業は2015年3月31日時点で75社となっているが、その多くが、「海外子会社等が多いことから、経営管理に役立つ」ことをIFRS適用に踏み切った理由に挙げているという。

 一方、このところ経営管理指標として注目を集めているのがROE(自己資本利益率)だ。日立や三菱重工が10%を超えるROEを経営目標とするなど、ROEを経営の重要指標とする企業は急増している。ROEを巡る最近の流れをおさらいすると、昨年1月にはROEを銘柄選定の主要指標に位置付ける新株価指数「JPX日経インデックス400」が登場(2014年6月11日のニュース「JPX日経インデックス400に選定されると株価は上がるか?」参照)、これをGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)が国内株式の運用指標の1つとして採用している。また、政府の新成長戦略では、日本企業の「稼ぐ力」を高めるには、グローバル水準のROEの達成などを1つの目安とすることが提言され、さらに、昨年8月に公表された伊藤レポートでも、ROEを現場の目標に取り込むことで高いモチベーションを引き出し、中長期的にROE向上を目指す「日本型ROE経営」が打ち出されている。

JPX日経インデックス400 : 資本の効率的活用や投資者を意識した経営観点など、グローバルな投資基準に求められる諸要件を満たした「投資者にとって投資魅力の高い会社」で構成される新しい株価指数。3年平均ROE(自己資本利益率)や独立社外取締役の人数などを加味して構成銘柄が決定される。

 ここで気になるのが、IFRSとROEの関係だ。つまり、IFRSを導入するとROEは上がるのか、あるいは下がるのかという点である。

 周知のとおり・・・

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2015/04/17 IFRS導入がROEに与える影響(会員限定)

 金融庁が4月15日に公表した「IFRS適用レポート」によると、IFRSの任意適用企業は2015年3月31日時点で75社となっているが、その多くが、「海外子会社等が多いことから、経営管理に役立つ」ことをIFRS適用に踏み切った理由に挙げているという。

 一方、このところ経営管理指標として注目を集めているのがROE(自己資本利益率)だ。日立や三菱重工が10%を超えるROEを経営目標とするなど、ROEを経営の重要指標とする企業は急増している。ROEを巡る最近の流れをおさらいすると、昨年1月にはROEを銘柄選定の主要指標に位置付ける新株価指数「JPX日経インデックス400」が登場(2014年6月11日のニュース「JPX日経インデックス400に選定されると株価は上がるか?」参照)、これをGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)が国内株式の運用指標の1つとして採用している。また、政府の新成長戦略では、日本企業の「稼ぐ力」を高めるには、グローバル水準のROEの達成などを1つの目安とすることが提言され、さらに、昨年8月に公表された伊藤レポートでも、ROEを現場の目標に取り込むことで高いモチベーションを引き出し、中長期的にROE向上を目指す「日本型ROE経営」が打ち出されている。

JPX日経インデックス400 : 資本の効率的活用や投資者を意識した経営観点など、グローバルな投資基準に求められる諸要件を満たした「投資者にとって投資魅力の高い会社」で構成される新しい株価指数。3年平均ROE(自己資本利益率)や独立社外取締役の人数などを加味して構成銘柄が決定される。

 ここで気になるのが、IFRSとROEの関係だ。つまり、IFRSを導入するとROEは上がるのか、あるいは下がるのかという点である。

 周知のとおり、ROEは「企業が株主から預かった資金」をいかに効率的に活用し、利益を稼いだかを示す指標であり、下記の算式により算出される。この算式からも明らかなように、ROEを上げるには「純利益を増やす」か「自己資本を減らす」必要がある。

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 まず分母の自己資本から見て行こう。IFRS導入により自己資本が変動するのが、企業が優先株式を発行しているケースだ。優先株式は日本基準では「資本」に区分されるが、IFRSでは「負債」に区分される場合がある。このような優先株式を発行している場合には、IFRSの導入により自己資本(分母)が減少し、その結果ROEが高まるケースが出て来る。また、政策保有株式(いわゆる持合株式)として保有する非上場株式は、日本基準では取得原価(買った値段)で評価されるが、IFRSでは原則として公正価値(時価)で評価され、その結果、評価益が出れば自己資本に加算、評価損が出れば自己資本から減算することになっている。したがって、評価益が出ればROEを引き下げる一方、評価損が出ればROEを引き上げることになる。

優先株式 :普通株式に比べ、配当または残余財産の分配、あるいはその両方を優先的に受ける権利をもつ株式。

 分子の純利益に影響を与えるものとして要注意なのが「のれん」だ。日本基準では、のれんは「20年以内の期間」で償却し、のれんの価値が下がった場合には「減損」を行うことになっている一方、IFRSでは、「のれん」の定期償却は認められていない。すなわちIFRSでは減損処理しか認められておらず、減損処理を行うかどうかは、減損テストにより判断することになる。日本基準からIFRSに移行すれば、毎年の償却が不要になる分、純利益が増え、ROEを高める効果があるものの、減損テストの結果減損損失を計上するはめになれば、ROEが一気に低下することもあり得る。

減損テスト :減損の兆候の有無を評価し、兆候があれば帳簿価額と回収可能価額とを比較すること

 このように、ROEを経営管理指標とする場合には、会計基準の相違が資本や純利益に与える影響にも注意を払う必要がある。まさに“株主の視点”から会計数値を管理することが求められると言えよう。

2015/04/16 (新用語・難解用語)キャプティブ保険

 企業や役員には様々なリスクが付きまとう。時にそれは大震災をはじめとする自然災害のような「防ぎようのないリスク」であることもある。こうしたリスクをカバーするのが火災保険や地震保険、賠償保険、貨物保険など企業を対象とする損害保険や役員を対象とするD&O保険(会社役員賠償責任保険)だが、業種や業態によっては、リスクの複雑化や高額化に既存の保険が対応しきれないということがあり得る。そのような場合に活用されるのが、キャプティブ保険だ。

D&O保険(会社役員賠償責任保険) : 第三者訴訟で役員が損害賠償責任を負った場合に支払われる「普通保険約款」と、株主代表訴訟で役員が敗訴した場合に支払われる「株主代表訴訟補償特約(自動で付与される)」がある。このうち「株主代表訴訟補償特約」は、あくまで会社に対する損害に対して役員が負う責任への保証であるため、保険料の支払いは役員の個人負担(保険料全体の約1割が一般的)となる(1人当たりの保険料は高額ではない)。保険料は役員報酬から天引きされるのが一般的だが、会社によっては、その保険料相当分を役員報酬に上乗せしたうえで、天引きしているところもある。

 キャプティブ(captive)には「つながれた」「縛られた」といった意味があり、・・・

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2015/04/16 (新用語・難解用語)キャプティブ保険(会員限定)

 企業や役員には様々なリスクが付きまとう。時にそれは大震災をはじめとする自然災害のような「防ぎようのないリスク」であることもある。こうしたリスクをカバーするのが火災保険や地震保険、賠償保険、貨物保険など企業を対象とする損害保険や役員を対象とするD&O保険(会社役員賠償責任保険)だが、業種や業態によっては、リスクの複雑化や高額化に既存の保険が対応しきれないということがあり得る。そのような場合に活用されるのが、キャプティブ保険だ。

D&O保険(会社役員賠償責任保険) : 第三者訴訟で役員が損害賠償責任を負った場合に支払われる「普通保険約款」と、株主代表訴訟で役員が敗訴した場合に支払われる「株主代表訴訟補償特約(自動で付与される)」がある。このうち「株主代表訴訟補償特約」は、あくまで会社に対する損害に対して役員が負う責任への保証であるため、保険料の支払いは役員の個人負担(保険料全体の約1割が一般的)となる(1人当たりの保険料は高額ではない)。保険料は役員報酬から天引きされるのが一般的だが、会社によっては、その保険料相当分を役員報酬に上乗せしたうえで、天引きしているところもある。

 キャプティブ(captive)には「つながれた」「縛られた」といった意味があり、キャプティブ保険は「自家保険」と訳されることが多い。文字通り自社(あるいは自社を含む企業グループ)のリスクを専門に引き受ける保険会社であり、自社の子会社として設立される。ただ、日本の法制度上は国内にキャプティブ保険子会社を設立することが困難であり、また、海外保険会社と直接保険契約を締結することもできない。さらに、専門的な保険業務(例えばリスクの査定)を自前で担うことは現実的ではない。そこで、一旦は一般の国内保険会社に保険料を支払ってリスクを移転したうえで、海外に設立したキャプティブ保険子会社に対し、当該国内保険会社が保険料を支払ってリスクを移転する(再保険をかける)という仕組みがとられる。つまり、キャプティブ保険子会社は「再保険会社」という位置付けになる。また、キャプティブ保険子会社も、自社が取り得る限度を超えるリスクを「再々保険会社」に移転することが多い。

再保険 : 保険会社が、自社が引き受けたリスクをさらに別の保険会社(再保険会社)に移転すること。

 海外では著名企業の多くがキャプティブ保険子会社を保有しており、日本でも総合商社や海運会社、大手メーカーなどでキャプティブ保険子会社を持っているところが少なくとも数十社あると言われる。

 キャプティブ保険子会社を設立するメリットは、一般の保険では対応できないリスクをカバーするのみならず、上述のとおり一旦は国内保険会社に支払った保険料の一部を、(当該国内保険会社から)再保険料としてキャプティブ子会社に支払ってもらうことで再度自社グループに取り込めるということもある。さらに、再々保険料などを差し引いたキャプティブ子会社の利益を自社に配当させることも可能だ。

 キャプティブ保険自体は以前からあったが、東日本大震災以降、注目度は高まっており、キャプティブ保険子会社の設立コンサルティング会社も存在している。現在加入している保険でカバーしきれていないリスクがあると感じる企業は、一度検討してみてもよいだろう。

2015/04/15 「ガバナンスコード原案」から「東証のコード」への引き継がれ方

 平成27年3月5日にコーポレートガバナンス・コードの策定に関する有識者会議が「コーポレートガバナンス・コード原案」を公表して以降、多くの企業が「同コードにどのように対応すべきか」頭を悩ませている。同コードには「定時株主総会から6か月間」の猶予期間が設けられているが(2015年2月25日のニュース「ガバナンスコード対応は12月まで猶予あり!?」参照)、この猶予期間を利用せず、施行日(6月1日)と同時に同コードに沿って改訂された「コーポレート・ガバナンスに関する報告書」の提出・公表を目指す会社もあり、“ガバナンス・コード時代”の本格的な到来は目前に迫っている。

 こうした中、東京証券取引所では近日中にも“原案”という文字が取れた正式な「コーポレートガバナンス・コード」を公表する予定だが、原案の内容がどのように引き継がれるのかが気になるところ。その見通しが、当フォーラムの取材で明らかになった。・・・

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2015/04/15 コーポレートガバナンス・コードへの取り組み(2)(会員限定)

<解説>
コードでは厳格な定義は示されず

 コーポレートガバナンス・コード(原案)には「本コード(原案)で使用されている用語についても、法令のように厳格な定義を置くのではなく、まずは株主等のステークホルダーに対する説明責任等を負うそれぞれの会社が、本コード(原案)の趣旨・精神に照らして、適切に解釈することが想定されている」とあります(コード原案序文10)。コードの解釈を会社に任せているのは、コード(原案)が、会社が取るべき行動について詳細に規定する「ルールベース・アプローチ」(細則主義)ではなく、原則のみが記載され会社が各々の置かれた状況に応じて対応していく「プリンシプルベース・アプローチ」(原則主義)を採用しているからです。

 プリンシプルベース・アプローチは、近日中に公表予定の東京証券取引所のコードでも同様に採用されています。このため、各コードについて「コンプライ・オア・エクスプレイン」のどちらを選択するのかを決める際にも、各社なりに用語を解釈することが必要になります。とはいえ、「本コード(原案)の趣旨・精神に照らして、適切に解釈」するためには、一般的にどのように解釈されているのかを意識しておくことも大切です。

 例えば、コード(原案)の基本原則4では「経営陣幹部」(青字)と「経営陣」(赤字)の用語の使い分けがされています。

【基本原則4】
 上場会社の取締役会は、株主に対する受託者責任・説明責任を踏まえ、会社の持続的成長と中長期的な企業価値の向上を促し、収益力・資本効率等の改善を図るべく、
(1)企業戦略等の大きな方向性を示すこと
(2)経営陣幹部による適切なリスクテイクを支える環境整備を行うこと
(3)独立した客観的な立場から、経営陣(執行役及びいわゆる執行役員を含む)・取締役に対する実効性の高い監督を行うこと
をはじめとする役割・責務を適切に果たすべきである。

 経営陣幹部と経営陣のどちらも厳密な定義は示されていません。したがって、その解釈は各社で行わざるを得ませんが、基本原則4と補充原則3-2②をあわせて読むと、次のことが分かります。
ア:基本原則4の(3)では「経営陣」という言葉に執行役員(下線)を含めている(「経営陣」の後の括弧書き内を参照)
イ:基本原則4の(3)の「経営陣(中略)・取締役」という記述は、「経営陣」に含まれない取締役が存在することを前提にしている
ウ:補充原則3-2②には「CEO・CFO等の経営陣幹部」という表現がある

 以上より、コードにおける「経営陣」という言葉は単なるボードメンバー(取締役)とは異なり、取締役全員を指すわけではなく(イ参照)、また、執行役員も含む概念である(ア参照)ことが分かります。一方、「経営陣幹部」はその経営陣の中の幹部を指し、単なる経営陣よりも狭い概念であることが分かります(ウ参照)。なお、コード(原案)には「最高経営責任者等」(補充原則4-1③)という用語もあります。「最高経営責任者等」(補充原則4-1③)という用語もあります。「最高経営責任者等」は経営陣幹部の中のさらに一握りの幹部(CEO。会社によってはCEO+COOなど)となります。

 また、原則1-4の「いわゆる政策保有株式」では、次のように規定されています。

【原則1-4.いわゆる政策保有株式】
 上場会社がいわゆる政策保有株式として上場株式を保有する場合には、政策保有に関する方針を開示すべきである。また、毎年、取締役会で主要な政策保有についてそのリターンとリスクなどを踏まえた中長期的な経済合理性や将来の見通しを検証し、 これを反映した保有のねらい・合理性について具体的な説明を行うべきである。
 上場会社は、政策保有株式に係る議決権の行使について、適切な対応を確保するための基準を策定・開示すべきである。

 コードでは「政策保有株式」の定義はなんら示されていません。そこで各社が「政策保有株式」について解釈する必要があります。実際には、有価証券報告書における開示()と足並みを合わせることになるものと思われます。

 上場会社は、既に有価証券報告書の【コーポレート・ガバナンスの状況】において純投資目的以外の目的で保有する株式の状況を開示しています。

 なお、上記の原則1-4では、「開示」が2か所(赤字)、「説明」が1か所(青字)に用いられています。コードで要求される「開示」はコーポレート・ガバナンス報告書(以下、CG報告書)に新たに設けられる「コードの各原則に基づく開示」欄で行われるのが原則です。2015年3月13日のニュース「CG報告書冒頭にガバナンスコード不実施理由の記載欄が新設」でお伝えしたとおり“参照方式”も認められていますが、参照方式を採用する場合には、CG報告書で「参照すべき場所」を特定しておく必要があります。

 一方、「説明」は開示よりもトーンが弱く、CG報告書での「開示」まで求められているわけではありません(もちろん自主的に開示しても構いませんし、開示はしないとしても、株主との対話の中で説明を求められた場合には回答できるようにしておかなければなりません)。

 以上より、上場会社(東証第一部および第二部)は、各社が政策保有株式について解釈を行い、それに該当する上場株式を保有していれば、「政策保有に関する方針」と「政策保有株式に係る議決権の行使について、適切な対応を確保するための基準」の2つをCG報告書で開示します。

 一方、「保有のねらい・合理性」については投資家に説明すれば十分ということになります。投資家向け説明会や決算発表の場で自主的に説明したり、個別投資家から説明を求められ1対1の場で説明したりする()こともあるでしょう。もちろん、「保有のねらい・合理性」の説明を求められた場合に備えて、事前に回答を準備しておくことは欠かせませんし、合理性を説明できないのであれば政策保有株式の保有をやめることも検討せざるを得ないでしょう。

 この場合、未公表の重要情報が選択的開示にならないよう留意しなければなりません。

選択的開示 : インサイダー情報を特定の者だけに選別的に開示すること。選択的開示をするとインサイダー取引をもたらしてしまうことから、投資家にとって有用な情報であれば証券取引所の適時開示情報閲覧システム(TDnet)で開示すべきである。

「ひな型的な表現」に投資家の厳しい視線

 コードのうち実施しないものがある場合には、CG報告書の「コードの各原則を実施しない理由」欄で実施しない理由を説明しなければなりません()。この理由の説明の際には、「ひな型的な表現」を避けなければなりません。独立社外取締役を2名以上選任していない理由をはじめ、コードを実施しない理由を説得的に書くのは難しいため、ついひな型に頼りたくなるのですが、コード(原案)では、「会社としては、当然のことながら、「実施しない理由」の説明を行う際には、実施しない原則に係る自らの対応について、株主等のステークホルダーの理解が十分に得られるよう工夫すべきであり、「ひな型」的な表現により表層的な説明に終始することは「コンプライ・オア・エクスプレイン」の趣旨に反するものである」(コード原案序文12)と、ひな型を使うことに釘を刺されているだけに、注意が必要です。

 実施しないコードがあることで、その会社のコーポレートガバナンスに関する投資家の評価は大きく変わってくることから、「実施しない理由」は投資家の関心が高いと言えます。そのため、他の開示書類等において、コードの各原則を実施しない理由を記載している場合であっても、CG報告書の「コードの各原則を実施しない理由」欄で「●●に記載されているので、そちらを参照してください」といった参照方式を利用することはできず、必ず「実施しない理由」を記載する必要があります。

 もし、CG報告書の「エクスプレイン」をひな型的な表現で済ませてしまった上場会社があった場合、その会社に対して何らかのペナルティは課されるのでしょうか?実は証券取引所が「ひな型」的な表現かどうかのチェックを行うことはありません。したがって、仮にCG報告書の提出後にひな型的な表現であることが判明しても、証券取引所がペナルティを課すことはありません。

 だからといって、ひな型的な表現で済ませても構わないのかと言うと、そうではありません。CG報告書の開示内容は投資家にウォッチされます。「コーポレートガバナンスの重要性に鑑み、必要に応じて適切に対応して参ります」といった具体性に乏しく経営陣が一体何を考えているのかがまったく伝わってこない「エクスプレイン」に終始している会社は、投資家から「コーポレートガバナンスへの取り組みに真剣ではない会社」との烙印を押され、投資家にそっぽを向かれて、株価が下落することになります。株価の下落により、買収されるリスクも高まります。

 「ひな型」的な表現では、その会社が「本当に伝えたいこと」が投資家に届くわけがありません。CG報告書での開示は「株主との対話」の第一歩と捉え、経営陣が議論を尽くした結果をもとに丁寧で具体的な「エクスプレイン」を心がければ、ひな型的な表現は自然に一掃されるはずです。

以上の解説をご覧いただければ、誰の発言がGOOD発言か、もうお分かりですね。正解は以下のとおり。

<正解>
GOOD発言はこちら

取締役A:「コード原案をじっくり読むと「開示」と「説明」の違いが気になりました。「説明」は「開示」よりもトーンが弱いことから、「開示」と異なりコーポレート・ガバナンス報告書での記載は求められていないのではないでしょうか。」
コメント:コード(原案)を漫然と眺めているだけでは、「開示」と「説明」の使い分けがされていることに気が付きにくいものです。「このコードに対してどのような行動をしなければならないのか」といった具体的なアクションを意識している点がGOOD発言です。

BAD発言はこちら
取締役C:「「経営陣」と言えばボードメンバーを指すイメージがあるのですが、「経営陣幹部」なので、「経営陣」に加えて、「幹部」、すなわち執行役員や役職者も含む広い概念だと思います。」
コメント:コード(原案)には「経営陣」と「経営陣幹部」の定義が記載されていません。このため、「経営陣」という言葉は、会社の経営体制に応じて「ボードメンバーである取締役全員」「業務執行取締役」「業務執行に携わる取締役・執行役員」といった様々な解釈が可能です。「経営陣幹部」の解釈も同様です。もっとも、両者の関係には注意が必要です。取締役Cは「経営陣幹部」を「経営陣」+「経営陣以外の幹部」と誤読し、経営陣幹部の方が経営陣よりも広い概念であると発言している点がBAD発言です。
取締役B:「コードの場合、証券取引所が上場会社のコーポレート・ガバナンス報告書にひな型的な表現がないかどうかを逐一チェックし、ひな型的表現をした会社に対して公表措置などのペナルティを課すのではないでしょうか?」
コメント:証券取引所が、コーポレート・ガバナンス報告書にひな型的表現があるかどうかといった点をチェックすることはありません。また、ひな型的表現をした上場会社があったとしても、証券取引所がそういった会社に記載内容の充実や表現の改善を要請したり、ましてやペナルティを課したりすることはありません。取締役Bの発言のうち「公表措置などのペナルティを課す」という点がBAD発言です。

2015/04/15 【役員会 Good&Bad発言集】コーポレートガバナンス・コードへの取り組み(2)

 東証第一部に上場しているCGC社(3月末決算)では、ちょうど今執行役員会が終わったばかりだ。終了予定時刻を大幅に過ぎてしまったため、出席者の多くは時計を気にしながら配布資料を手に足早に会議室を後にした。部屋に残ったのは、社内取締役の3人だけである。彼らは、1週間前に開催された取締役会で社外取締役からコーポレートガバナンス・コードへの対応策に本腰を入れて検討することを提案され(経緯についてはこちらを参照)、社長より指名を受け、たたき台を練ることを任された取締役A・B・Cの“3人組”だ。まずは、この1週間を使い、各自がコーポレートガバナンス・コード原案を読み込み、この場で疑問点を出し合うことになっている。

 ”3人組”は、まず、それぞれの疑問点を確かめ合うことにした。なかには誤解もあるようだが、じっくりと読み込み始めてから日が浅いのでそれも無理はない。

 次のAからCの発言のうち、誰の発言がGOOD発言でしょうか?

取締役A:「コード原案をじっくり読むと「開示」と「説明」の違いが気になりました。「説明」は「開示」よりもトーンが弱いことから、「開示」と異なりコーポレート・ガバナンス報告書での記載は求められていないのではないでしょうか。」

取締役B:「それには気付きませんでした。私が気になった言い回しは「経営陣」と「経営陣幹部」の使い分けです。この2つはどう違うのでしょうか?」

取締役C:「「経営陣」と言えばボードメンバーを指すイメージがあるのですが、「経営陣幹部」なので、「経営陣」に加えて、「幹部」、すなわち執行役員や役職者も含む広い概念だと思います。
 ところで、コード原案には、コードを「実施しない理由」の説明に際して「ひな型的な記述」を避けなければならないとあります。例のSTAP細胞の騒動以降、学生の論文が他の論文をコピペしているかどうかのチェックが厳格になったと聞いています。コーポレート・ガバナンス報告書におけるひな型的表現も、自分達の頭で考えていないという意味では、学生のコピペ論文と同じようなものです。上場会社がコーポレート・ガバナンス報告書でひな型的表現をした場合、どのようなペナルティが課されるのでしょうか?」

取締役B:「学生のコピペ論文には指導教官が厳しい対応をしているようですね。コードの場合、証券取引所が上場会社のコーポレート・ガバナンス報告書にひな型的表現がないかどうかを逐一チェックし、ひな型的表現をした会社に対して公表措置などのペナルティを課すのではないでしょうか?」

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2015/04/15 「ガバナンスコード原案」から「東証のコード」への引き継がれ方(会員限定)

 平成27年3月5日にコーポレートガバナンス・コードの策定に関する有識者会議が「コーポレートガバナンス・コード原案」を公表して以降、多くの企業が「同コードにどのように対応すべきか」頭を悩ませている。同コードには「定時株主総会から6か月間」の猶予期間が設けられているが(2015年2月25日のニュース「ガバナンスコード対応は12月まで猶予あり!?」参照)、この猶予期間を利用せず、施行日(6月1日)と同時に同コードに沿って改訂された「コーポレート・ガバナンスに関する報告書」の提出・公表を目指す会社もあり、“ガバナンス・コード時代”の本格的な到来は目前に迫っている。

 こうした中、東京証券取引所では近日中にも“原案”という文字が取れた正式な「コーポレートガバナンス・コード」を公表する予定だが、原案の内容がどのように引き継がれるのかが気になるところ。その見通しが、当フォーラムの取材で明らかになった。

 パブリック・コメント手続きを経て原案が確定した以上、原案で示されていた「基本原則」「原則」「補充原則」といった各原則の文言はそのまま引き継がれることになるが、原案の冒頭にあった「経緯及び背景」等の個所は整理される見通し。経緯や背景はコードそのものではないため、不要というわけだ。

 また、原案に斜字体で表記されている〔背景説明〕も削除される。〔背景説明〕は、原案が策定されるに至った背景を説明することで、関係者が「なぜ、そのようなコードが必要なのか」といったコード案の意義を理解するのに役立つことを目的として記載されたものに過ぎないからだ。これはパブリック・コメントを効果的に募るのには欠かせない情報だが、今後「コード」として運用していくうえでは不要というのが、削除の理由である。〔背景説明〕には経済界などの主張が記載されているが、これらの主張は各原則の中に織り込まれ済みであるため、削除しても実質的な影響はないと言えるだろう。

 なお、原案の5ページ「16 本コード(原案)の将来の見直し」には、コードの定期的な見直しを図ることが明記されている。具体的には、会社法の改正や社会情勢の変化、海外のコーポレートガバナンス・コードの動向に伴い、継続的な見直しがかけられることになろう。今後の改訂時においても、まず見直し案の「原案」を策定しパブリック・コメントに付して確定した後、東京証券取引所の「コーポレートガバナンス・コード」に引き継ぐというプロセスは変わらない模様だ。

2015/04/14 「PBR1未満」に高まるプレッシャー

 日本企業の中には、株価が1株当たり株主資本(BPS)を下回っている、すなわちPBR(株価 ÷1株当たり株主資本)が「1未満」のところが数多く存在する。そして、多くの場合、この状況はこれまで放置されてきたと言っていいだろう。

BPS : Book-value Per Shareの略称で「自己資本 ÷ 発行済み株式数」により算出され、会社が解散した場合の1株当たりの価値を示す。「1株当たり純資産」という日本語訳からは、分子は「純資産」と思われがちだが、「自己資本」なので要注意。BPSが高いほど、その企業の安全性が安定性は高いことになる。

 「株価」と「1株当たり株主資本」が一致している場合、PBRは1となる。PBRが1を超えるのは、投資家が負担した資本コスト(新用語・難解用語辞典「ディスカウント・キャッシュフロー(DCF)法」参照)を上回るリターン(ROE)があった場合と考えることができる。これを算式で表わすと以下のとおりとなる。・・・

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