2015/04/14 「PBR1未満」に高まるプレッシャー(会員限定)

 日本企業の中には、株価が1株当たり株主資本(BPS)を下回っている、すなわちPBR(株価 ÷1株当たり株主資本)が「1未満」のところが数多く存在する。そして、多くの場合、この状況はこれまで放置されてきたと言っていいだろう。

BPS : Book-value Per Shareの略称で「自己資本 ÷ 発行済み株式数」により算出され、会社が解散した場合の1株当たりの価値を示す。「1株当たり純資産」という日本語訳からは、分子は「純資産」と思われがちだが、「自己資本」なので要注意。BPSが高いほど、その企業の安全性が安定性は高いことになる。

 「株価」と「1株当たり株主資本」が一致している場合、PBRは1となる。PBRが1を超えるのは、投資家が負担した資本コスト(新用語・難解用語辞典「ディスカウント・キャッシュフロー(DCF)法」参照)を上回るリターン(ROE)があった場合と考えることができる。これを算式で表わすと以下のとおりとなる。

株価/1株当たり株主資本(PBR)=1+(ROE-資本コスト)

 上記算式によれば、ROEが資本コストを上回っていればPBRは1以上となり、逆にROEが資本コストを下回れば、PBRは1未満となる。

 米国などでは、ROEが資本コストを下回る企業に対しては、株主から不良資産の売却といったリストラの促進圧力が強烈にかかる。また、PBRが1未満となれば買収のターゲットとなり、企業自身がROEを改善させるか、あるいは買収されることで改善されるかの選択が迫られる。

 一方、日本企業の場合、たとえPBRが1未満であっても収益改善を要求する株主はあまりおらず、いたとしてもその圧力は弱い。また、一時期買収防衛策が数多く導入されたことにより、敵対的買収が成功の可能性も低くなっている。そして、何より日本企業自身のコーポレートガバナンスに問題があることが、PBR1未満の企業が放置されれている大きな要因と言えよう。

 しかし、6月1日から適用が開始されるコーポレートガバナンス・コードの導入に象徴されるコーポレートガバナンス強化の流れは、この状況を大きく変える可能性がある。市場関係者の間では、日本企業に対するコーポレートガバナンス強化の圧力がPBR1未満の企業の数を減少させ、その結果、株価が上昇することを期待する声が早くも上がっている。コーポレートガバナンス・コード導入後のPBRの動きに注目したい。

2015/04/13 66号改訂、「会計上の見積りの変更」に該当なら利益の押し上げも

 当フォーラムのニュースでも既報のとおり、企業会計基準委員会(ASBJ)は繰延税金資産(新用語・難解用語辞典の「資産負債法」参照)の将来の回収可能性を定めた委員会報告「繰延税金資産の回収可能性の判断に関する監査上の取扱い(監査委員会報告第66号。以下、66号)」を、日本公認会計士協会から同委員会に移管したうえで見直しを進めている(2015年1月14日のニュース「「業績が不安定な会社」が5年超える繰延税金資産の計上も」を参照)。その結果は、「繰延税金資産の回収可能性に関する適用指針(案)」(以下、本案)として近く取りまとめられるが、その骨格はほぼ固まっている。

 本案では、現行66号(下表参照)における繰延税金資産の回収可能性の判断の基本的な考え方は引き継ぐものの、実務における硬直的な運用を改めるべく、規定の柔軟化が図られる。大きな変更点は次の3点である。・・・

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2015/04/13 66号改訂、「会計上の見積りの変更」に該当なら利益の押し上げも(会員限定)

 当フォーラムのニュースでも既報のとおり、企業会計基準委員会(ASBJ)は繰延税金資産(新用語・難解用語辞典の「資産負債法」参照)の将来の回収可能性を定めた委員会報告「繰延税金資産の回収可能性の判断に関する監査上の取扱い(監査委員会報告第66号。以下、66号)」を、日本公認会計士協会から同委員会に移管したうえで見直しを進めている(2015年1月14日のニュース「「業績が不安定な会社」が5年超える繰延税金資産の計上も」を参照)。その結果は、「繰延税金資産の回収可能性に関する適用指針(案)」(以下、本案)として近く取りまとめられるが、その骨格はほぼ固まっている。

 本案では、現行66号(下表参照)における繰延税金資産の回収可能性の判断の基本的な考え方は引き継ぐものの、実務における硬直的な運用を改めるべく、規定の柔軟化が図られる。大きな変更点は次の3点である。
(1)「分類2」の企業・・・・スケジューリングが不能な将来減算一時差異であっても、繰延税金資産の回収可能性があるとする。
(2)「分類3」の企業・・・合理的に説明できる場合には、5年を超えるスケジューリングができる。
(3)「分類4」の企業・・・合理的に説明できる場合には、「分類2」または「分類3」に該当するものとして扱う。

スケジューリング: スケジューリングとは、一時差異が解消するタイミングのスケジュールを作成することをいう。

<現行66号 繰延税金資産の回収可能性を巡る5つの会社分類>

(1)一時差異と相殺する
だけの十分な課税所得
がある会社
繰延税金資産は全額回収可能と判断する
(2)業績は安定している
が、十分な課税所得がない会社
一時差異等のスケジューリングの結果に基づく限り、回収可能性があると判断できる
(3)業績が不安定な会社 おおむね5年内の課税所得の見積額を限度として、その期間内の一時差異等のスケジューリングの結果に基づく限り、回収可能性があると判断できる
(4)重要な税務上の
繰越欠損金がある会社
翌期(1年)に確実に見込まれる課税所得の見積額を限度として、その期間内の一時差異等のスケジューリングの結果に基づく限り、繰延税金資産は回収可能性がある
※リストラなど特殊要因がなければ課税所得を毎期計上しているような会社は(3)と同様に取り扱う
(5)債務超過の会社、
連続して重要な税務上の
欠損金を計上している会社
繰延税金資産の回収可能性なしと判断する

 本案の議論は終盤に差し掛かっているが、ここに来て“新たな論点”が浮上している。それは、今回の66号の改訂が「会計基準等の改正に伴う会計方針の変更」なのか、あるいは「会計上の見積りの変更」なのかというものだ。

会計基準等の改正に伴う会計方針の変更 : 会計基準等の改正に伴い強制的に行われる会計方針の変更のこと。正当な理由に基づき「認められた会計方針」から別の「認められた会計方針」に任意で行う会計方針の変更とは区別される。

会計上の見積りの変更 : 新たに入手可能となった情報に基づいて、過去に財務諸表を作成する際に行った会計上の見積りを変更すること。

 平成24年3月期から導入された「会計上の変更及び誤謬の訂正に関する会計基準」では、当期において、「会計基準等の改正に伴う会計方針の変更」があり、その会計基準等に経過的な取扱い(例えば「本会計基準は過年度遡及しないこととする」)の定めがなければ、前年度以前の決算も遡って修正すること(これを「過年度遡及修正」という)を求めている。一方、「会計上の見積りの変更」であれば、過年度遡及修正をせずに、変更に伴う影響額を当期(以降)の損益として計上することになる。これは、会計上の見積もりの変更はあくまで「新たに入手可能になった情報」に基づくものであり、過去の期間の財務諸表に影響を与えるものではないからだ。

 今回の66号の改訂が「会計基準等の改正に伴う会計方針の変更」にあたるとなれば、過年度遡及修正が求められる一方、「会計上の見積りの変更」にあたるとなれば、過年度遡及修正は不要となる。

 ASBJ事務局は、上記(1)~(3)のような規定の変更を含む今回の改訂は「会計基準等の改正に伴う会計方針の変更」に該当するとしたうえで、過年度遡及修正は実務上困難であることを踏まえ、「適用初年度の期首時点で累積的影響額を算定し、当該期首時点の利益剰余金等に加減算する方法」を提案している。

 これに対し企業側の委員からは、「『会計上の見積りの変更』と捉えたうえで、変更に伴う影響額を当期の損益として処理することが妥当」との強い意見が出されており、委員会の議論を二分している。

 企業側の委員の主張の根拠は3つある。まず、「今回の改訂の対象である繰延税金資産の回収可能性の判断自体が、“見積り”そのものであることから、今回の会計処理の変更は『会計基準の見積りの変更』と考えるのが自然」というものだ。また、上述のとおり、今回の改訂は66号における基本的な考え方(会社の5分類)を変えずに、硬直的な運用を是正するための“マイナーな変更”にとどまっており、「会計基準の変更」と捉えるのは相応しくないということもある。さらに、「会計基準等の改正に伴う会計方針の変更」として、期首時点の影響額を(損益計上せずに)利益剰余金に直接反映させられると、66号で硬直的な運用が行われたが故にこれまで利益計上できなかった金額を、永久に利益として認識できないことになる。企業からしてみれば、「せっかく66号の硬直的な運用から開放されたのに、これでは全く浮かばれないではないか」というのが率直な感想だろう。

 もし「会計上の見積りの変更」という結論になれば、期首時点の影響額がプラスの会社は、その分だけ、見積り変更をした期の利益が押し上げられることになる。今後、ASBJにおける議論の行方には注目していきたい。

2015/04/11 【特集】コーポレートガバナンス・コード策定に伴う上場制度整備の概要(3・会員限定)

6 独立役員の独立性に関する情報開示の見直し

(1)開示加重要件の廃止

① 現行制度の概要
 現行の独立役員制度では、独立役員に指定するための独立性基準に加えて、独立性に関する情報開示の制度が設けられている。すなわち、一定の類型(開示加重要件と呼んでいる)に該当する者を独立役員に指定する場合には、そうした類型に該当する旨及びそれを踏まえてもなお独立役員として指定する理由を、ガバナンス報告書及び独立役員届出書において説明することが求められている。さらに、開示加重要件に該当しない場合であっても一定の類型の者(取引先出身者、社外役員相互就任先出身者、寄付先出身者)については、その概要の開示(属性情報開示と呼んでいる)が求められる。したがって、現行の独立役員制度では、抵触すると独立役員の指定対象から除外されるミニマムスタンダード(独立性基準)の上に、独立役員に指定する場合に独立性の説明が求められる層(開示加重要件)があり、さらにその上に関係の概要の開示が求められる層(属性情報開示)があるという3層構造となっている。

② 見直しの概要
 本改正では、開示加重要件制度を廃止する。現行の制度で開示加重要件とされる類型については、概要の開示のみを求めることとし、独立性に関する情報開示の制度を属性情報開示制度に一本化する。

 抵触すると独立役員の指定対象から除外されるミニマムスタンダードである独立性基準については、変更はない。

 結果として、見直し後の独立役員制度では、ミニマムスタンダード(独立性基準)の上に、関係の概要の開示が求められる層(属性情報開示)があるだけの2層構造となる。

(2)独立役員届出書の提出実務

① 様式の見直し
 本改正を踏まえ、独立役員届出書の様式を変更する。すなわち、独立役員届出書の様式上も、開示加重要件と属性情報の該当の有無のチェック欄が区分けされているところ、これを一本化することとなる。

 2015年6月1日以降に提出する独立役員届出書は新様式によるものとし、2015年5月中に提出する独立役員届出書は現行の様式又は新様式のいずれでも差し支えないこととする。

② 更新時期の取扱い
 独立役員届出書を更新すべき時期の取扱いは従前のとおりである。すなわち、独立役員届出書の記載内容に変更が生じる場合には、原則として、その2週間前までに更新しなければならない(有価証券上場規程施行規則436条の2第2項)。

 株主総会で独立役員又は社外役員の構成に変更が生じる場合や、再任のため社外役員の構成に変更がない場合でも属性情報開示の記載事項に変更があるときには、株主総会における議決権行使の参考とできるよう、株主総会の2週間前までに独立役員届出書を提出することが求められる。招集通知を早期発送する場合には、独立役員届出書も同時期に提出することが望ましい。
期中の変更の場合には、独立役員の新たな指定や指定解除の2週間前までに変更内容を反映した独立役員届出書を提出する必要がある。期中に属性情報開示の記載事項に変更が生じても、その時点での更新は不要であり、その後の株主総会で社外役員の選任議案が付議されたときに更新すれば足りる。

 コードでは、招集通知の発送に先立ってTDnet等を通じて招集通知に記載する情報を電子的に公表すべきともされている(補充原則1-2②参照)が、これに従い、招集通知の発送に先立って招集通知等の電子ファイルをTDnetを通じて取引所に提出する場合(有価証券上場規程施行規則420条1項)には、独立役員届出書も併せて提出することが望ましい。

7 今後の予定

 パブリックコメントの結果等を踏まえた正式な規則改正内容の公表は、現在のところ、2015年5月上旬ころを見込んでいる。本改正の施行は2015年6月1日となる予定である。

2015/04/11 【特集】コーポレートガバナンス・コード策定に伴う上場制度整備の概要(2・会員限定)

2.コーポレートガバナンス・コード

(1)コーポレートガバナンス・コードの制定

 東証は、金融庁と東証が共同事務局を務める「コーポレートガバナンス・コードの策定に関する有識者会議」(座長 池尾 和人 慶応義塾大学経済学部教授)によって2015年3月5日付で公表された「コーポレートガバナンス・コード原案」(以下「コード原案」という)をその内容とするコードを制定する。制定されたコードは有価証券上場規程の別添とし、後述するコードの趣旨・精神の尊重を定める規定や、コードの各原則を実施しない理由の説明義務を定める規定において引用される。

 コードは5章構成となっている。第1章から第4章(「株主の権利・平等性の確保」、「株主以外のステークホルダーとの適切な協働」、「適切な情報開示と透明性の確保」、「取締役等の責務」)まではOECDコーポレート・ガバナンス原則の構成を踏まえたものとなっており、第5章(「株主との対話」)は独自の章立てとなっている。

各章の冒頭には「基本原則」が置かれており、それに続いて「原則」と「補充原則」が置かれる3層構造となっている。「基本原則」は、OECDコーポレート・ガバナンス原則を踏まえて、実現すべき普遍的な理念・目標を示したものである。「原則」では、「基本原則」を構成要素ごとに整理しつつ、その理念・目標を実現するための具体的方策も記載されている。「補充原則」は、「原則」を補い、「基本原則」の理念・目標を実現するための具体的方策を記載したものである。

(2)プリンシプルベース・アプローチの採用

 コードはプリンシプルベース・アプローチ(原則主義)を採用する(コード原案 序文10項)。上場会社は、コードの適用にあたって、その形式的な記載・文言ではなく、その趣旨・精神に照らして、自らの活動が当該原則に則しているか否かを判断することが求められる。ルールベース・アプローチ(細則主義)であれば、「しなければならないこと」「してはいけないこと」が詳細に決められることが通常だが、プリンシプルベース・アプローチの下では、各原則の趣旨・精神に則した具体的行動を上場会社が自ら考えて実行することが期待されている。

(3)コードの趣旨・精神の尊重規定

 上述のプリンシプルベース・アプローチの意義を踏まえて、有価証券上場規程にコードの趣旨・精神の尊重規定を設ける。具体的には、有価証券上場規程の企業行動規範のうち「望まれる事項」に規定されている現行の「上場会社コーポレート・ガバナンス原則」の尊重規定(445条の3)を、コードの趣旨・精神の尊重規定に置き換える。「望まれる事項」は、上場会社に要請される事項を努力義務として定める規定群で、違反しても実効性確保措置の対象とはならない。

 これに伴い、現行の「上場会社コーポレート・ガバナンス原則」は廃止される。

3 コンプライ・オア・エクスプレイン

(1) 実施しない理由の説明

① 有価証券上場規程
 コードの各原則を実施しない場合の理由の説明を義務付ける規定を有価証券上場規程に新設する。これは、「『日本再興戦略』改訂2014」に従って、コードの各原則についてのコンプライ・オア・エクスプレイン(原則を実施するか、実施しない場合にはその理由を説明するか)を制度化するものである。実施しない理由の説明は、コーポレート・ガバナンスに関する報告書(以下「ガバナンス報告書」という)に記載を求める。

 コードの各原則を実施しない場合の理由の説明義務は、企業行動規範のうちの「遵守すべき事項」に新設する。「遵守すべき事項」は、前述の「望まれる事項」と異なり、違反すれば実効性確保措置の対象となる。したがって、コードの原則を実施せず、その理由の説明もしない場合には、論理的には企業行動規範違反として実効性確保措置の対象となる。もっとも、実施しない理由の評価は株主等のステークホルダーによってなされることが想定されており(コード原案 序文12項参照)、会社の取組みに改善すべき点があれば株主との対話を通じた改善が図られることが想定されている(コード原案 序文8項参照)。したがって、取引所が実効性確保措置をとるとすれば、コードの原則を実施してないことが明らかであり、かつ、上場会社がその理由の説明を拒絶するような場合や、理由の説明が明らかに虚偽であるような場合等と考えられる。

② 適用範囲
 実施しない場合に理由の説明義務が課されるコードの原則の範囲は、市場区分によって異なる。市場第一部又は市場第二部の上場会社は、コードの「基本原則」、「原則」、「補充原則」の73原則の全てについて、いずれかを実施しない場合にはその理由を説明しなければならない。これに対し、マザーズ又はJASDAQの上場会社は、5つの「基本原則」のいずれかを実施しない場合にその理由を説明しなければならない。

(2)ガバナンス報告書における理由の記載欄の新設

 上述のように、コードの各原則を実施しない場合にその理由の説明をガバナンス報告書に記載することを求めることに伴い、ガバナンス報告書にそうした理由の記載欄を新設する。

4 コードの各原則に基づく開示の記載欄の新設

 コードには特定の事項を「開示すべき」とする11の原則(原則1-4、原則1-7、原則3-1、補充原則4-1①、原則4-8、原則4-9、補充原則4-11①、補充原則4-11②、補充原則4-11③、補充原則4-14②、及び原則5-1)が含まれるところ、これらの原則に基づいて開示を行うための記載欄をガバナンス報告書に新設する。これらの11原則を実施するにあたっての、開示場所を提供するものである。

 本欄の記載にあたっては、開示すべき事項の内容を本欄に直接記載してもよいし、有価証券報告書や会社のウェブサイト等でそうした開示を行っている場合には、その内容を参照すべき旨と閲覧方法(ウェブサイトのURL等)を本欄に記載することでもよい。

5 ガバナンス報告書の更新時期

(1)原則的な取扱い

 コードの制定に伴い新設される2つの記載欄の記載内容に変更が生じた場合は、変更が生じた後最初に到来する定時株主総会の日以後遅滞なく記載を更新する必要がある。任意に、変更の都度、遅滞なく記載を更新することももちろん可能である。

(2)初回の特例

 コードの制定に伴い新設される2つの記載欄については、コードの適用開始後の初回の提出時の取扱いに特例を設ける。すなわち、2015年6月1日以降に最初に到来する定時株主総会の日後準備ができ次第速やかに(遅くとも当該定時株主総会の日から6か月が経過するまでに)記載すればよい。6月総会の会社であれば、最長で2015年12月まで初回の記載のための準備期間の猶予がある。既存の記載欄については、通常どおり、定時株主総会の日後遅滞なく更新が必要なので、留意が必要である。

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2015/04/11 【特集】コーポレートガバナンス・コード策定に伴う上場制度整備の概要

佐藤 寿彦
東京証券取引所上場部企画グループ調査役

1.はじめに

 東京証券取引所(以下「東証」という)は、2015年2月24日付で公表した「コーポレートガバナンス・コードの策定に伴う上場制度の整備について」と題する制度要綱に基づいて、同年6月1日付で有価証券上場規程等の一部を改正(以下「本改正」という)する予定である。

 コーポレートガバナンス・コード(以下「コード」という)は、実効的なコーポレート・ガバナンスの実現に資する主要な原則を取りまとめたものである。コードの大きな特色はプリンシプルベース・アプローチを採用する点であり、プリンシプルベース・アプローチの下では、コードの趣旨・精神に照らして適切な行動を各社が自ら判断すべきこととなる。これを踏まえ、本改正ではコードの趣旨・精神の尊重を求める上場規則を設ける。また、コードの各原則を実施しない場合に上場会社にその理由の説明を求める上場規則の改正を行い、コンプライ・オア・エクスプレイン(実施するか、実施しない場合にはその理由を説明するか)の枠組みを導入する。

 これらの改正は、2014年6月に閣議決定された「『日本再興戦略』改訂2014」で、「東京証券取引所が、来年の株主総会のシーズンに間に合うよう新たに「コーポレートガバナンス・コード」を策定することを支援する。新コードについては、東京証券取引所の上場規則により、上場企業に対して“Comply or Explain”(原則を実施するか、実施しない場合にはその理由を説明するか)を求めるものとする。」とされたことを受けたものである。

 本改正は本稿の執筆時現在において制度改正手続き中であり、今後の手続きの過程で内容に変更が生じる場合がある。また、本稿の意見にわたる部分は筆者の個人的見解である。

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2015/04/10 【失敗学第11回】石井表記社の事例(会員限定)

概要

 プリント基板製造装置などの製造を手掛ける石井表記社(東証第二部)のフィリピン子会社で、子会社社長や親会社の常務取締役が関与して、無断設立した下請会社への高額発注、交際費や賞与の不正支払いが行われていた。

経緯

 石井表記社が2015年3月に内部調査報告書「当社海外子会社における不正行為に関する内部調査報告」を公表するまでの経緯を時系列で示すと、次のとおり。

<1989年>
石井表記社(以下、「親会社」)がフィリピンに合弁で会社を設立し、半導体製造機器の製造および販売をスタート。

<1993年>
フィリピンの合弁会社を子会社化する。

<2001年>
フィリピン子会社でプリント基板製造装置の製造および販売がスタート。

<2012年4月>
親会社の課長職であるB氏がフィリピン子会社の社長に就任(出向)。

<2014年>
2月:A常務取締役(以下、「A常務」)、B氏および両名の知人が、親会社に無断で、フィリピン子会社と同業の現地法人(以下、「現地法人」)をフィリピンに設立。
4月:現地法人が生産稼働を開始。
7月:親会社の営業管理部および経営企画室が、フィリピン子会社の月次報告で交際費が異常に多額であることに疑問を持ち、フィリピン子会社へ照会をかけるものの、明確な返答を得られず。
12月:フィリピン子会社の2015年度予算案において、資産および交際費の計画に不自然な点があったことから、親会社の取締役会において他の役員が海外子会社担当のA常務に対し説明をするよう求めたものの、A常務は取締役会を欠席した。
12月25日:役員ミーティングの場で、A常務およびB氏にフィリピン子会社の2015年度予算案における資産および交際費の計画について説明を求めるも、明確な回答を得られず。親会社に内部調査委員会が設置され、調査に着手。

<2015年>
2月3日~2月5日:内部調査委員会がフィリピン子会社で調査を実施。その結果、次の事実が判明。
・A常務およびB氏が交際費や賞与に関して不正(不正の内容は後述)をしていたこと
・外注先である現地法人は自己への利益還元を目的としてA常務、B氏らが設立した会社であったこと
2月10日:緊急役員ミーティングで、A常務およびB氏のすべての業務執行の停止を決定。
2月13日:コンプライアンス委員会を開催し、B氏に対するヒアリングおよびB氏による弁明の場を設ける。取締役会でA常務に事実を確認し、取締役解任議案の上程を決議するとともにB氏の懲戒解雇を処定。
2月17日~2月19日:内部調査委員会による2回目の現地調査が実施される。
2月20日:B氏を懲戒解雇。
3月9日:A常務取締役が取締役を辞任。
3月11日:親会社は「当社連結子会社における当社元常務取締役および子会社元取締役社長による不正行為についての調査に関するお知らせ」を公表し、親会社の経営陣は経営責任をとり報酬を削減(最大で月額報酬の50%を3か月間削減)するとした。
3月20日:フィリピン子会社で不正に発生した外注費、交際費、人件費を貸付金に振り替え、全額を平成28年1月期の費用(貸倒引当金の計上)とする当初の方針を変更し、過年度遡及修正を行うことを公表。

過年度遡及修正 : 前期以前の決算書を遡って修正すること。

内容・原因・改善策

 上述した内部調査委員会の調査報告によると、本件の問題点の内容とその原因および改善策は次のとおりである。

無断設立した下請会社への高額発注

内容 ・A常務、B氏および両名の知人が、自己への利益還元を目的として、フィリピン子会社と同業の現地法人をフィリピンに設立した。この現地法人は、株主であるA常務、B氏および両名の知人に利益を還元することを目的として、親会社に無断で設立されたものであった。
・フィリピン子会社から現地法人に対して設備の売却が行われていた。また、現地法人の業務立ち上げにはフィリピン子会社の社員が協力させられていた。
・B氏は、フィリピン子会社の社内であれば128万円で加工できる作業を、現地法人に2,413万円で発注していた(フィリピン子会社の損害額は2,284万円)。
原因 ・フィリピン子会社および現地法人の両社ともB氏が運営しており、B氏の一存で取引価格が決定される状態であった。また、フィリピン子会社での取締役会は形骸化していた。
・フィリピン子会社の情報はすべてB氏を経由して親会社に伝わるようになっており、フィリピン子会社内の情報がB氏およびA常務にとって都合の良い内容になるように完全にコントロールされていた。
・従業員に対してアンケートを実施した結果、A常務の管掌する組織の風土として、上位者の命令に対する絶対服従およびそれを担保する人事が行われていたことが判明した。現場の要職者に自分の指示に従う社員を登用し、指示に従わない社員に関しては見せしめとも考えられる処遇を行うことで、良識や法規による判断よりも上位者の指示に従わせる組織になっていた。そのため、A常務およびB氏から指示を受けた社員は、指示に従わざるを得ない状況下にあった。
・親会社では、取締役の管掌事業があたかも独立した一企業であるかのような組織風土となっており、取締役が他の取締役の管掌事業の計画や業務進捗などに意見することは少なかった(取締役が相互に業務執行を監督できていなかった)。
・親会社の関係会社管理規程は具体性に乏しく、実際の実務上の運用については管掌取締役などの裁量に大きく依存していた。
・親会社では、原則として毎月1回コンプライアンス委員会を開催することが定められているが、実際のところ定期的に開催されていなかった。
改善策 (組織風土の改革)
 管理職の昇進や異動については管掌取締役の判断のみならず、他の取締役の意見などを評価に反映したうえで決定する。
(取締役会の機能強化)
 取締役が代表取締役を含む他の取締役を監督、監視する役割を再認識し、一層の意識改革や、自己研鑽を行う。また、今後は、法務や財務などに精通した人材を取締役として登用し、社内牽制機能を強化することにより取締役会の機能強化を図るとともに、企業風土の改善に努める。
(関係会社管理体制の再構築)
 親会社が議決権の過半を有する関係会社の役員には、親会社の取締役が少なくとも2名以上兼務することとし、兼任取締役の職務権限の明文化や関係会社の内部統制システムを早急に整備する。また、形骸化していた関係会社の取締役会を定期的に開催するようにしたうえで、親会社の関係会社に対する定期的な監査を実施することにより、ガバナンスを強化する。
(コンプライアンス委員会の活性化)
 コンプライアンス委員会を規程に沿って毎月1回運用し、親会社およびグループ会社に潜在的に存在する不正行為のリスクを検討・整理し、不正行為の抑止策を検討するとともに、親会社およびグループ各社に対して実施する教育・研修の質を高め、役職員の法令遵守の向上に努める。

交際費の不正支出

内容 ・B氏が偽造領収書や私的遊興費用の領収書を交際費として精算し、着服していた。
・B氏がフィリピン子会社より毎月定額を現金で受領していた(使途不明金)。その一部はA常務にも分配されていた。
・フィリピン子会社の損害額は519万円。
原因 ・フィリピン子会社の経営はB氏に任せきりになっていた。
・上述したとおり、A常務の管掌する組織の風土として、上司の命令への絶対服従があった。そこで、A常務やB氏がその地位を利用した業務命令を行っても、従業員は不正を疑いつつも命令に従い協力してしまった。
改善策 「無断設立した下請会社への高額発注」の改善策欄に掲げた改善策に加えて、経費支出に関する承認ルートの確立、定期的な海外子会社監査など子会社管理体制の見直しを行う。

不正な賞与支払い

内容 ・フィリピン子会社の社長にB氏が就任して以降、B氏の指示により出向者に対し賞与が支給されていた。出向者は、規程によると本来は賞与の支給対象者ではなかった。
・賞与はB氏が一旦全額を現金で受領し、B氏を含め出向者3名およびA常務に振り分けしていた。
・フィリピン子会社の損害額は709万円。
原因 出向管理規程、給与規程は定められていたが、順守されていなかった。また、順守されているかどうかの親会社によるチェックも働いていなかった。
改善策 「無断設立した下請会社への高額発注」の改善策欄に掲げた改善策に加えて、労務費に関する承認ルートの確立、親会社による出向管理規程の遵守のチェック、定期的な海外子会社監査など子会社管理体制の見直しを行う。
<この失敗から学ぶべきこと>

 今回の不祥事は、親会社の目が届きにくい海外子会社で起こりました。海外子会社は国内子会社と異なり親会社から遠く離れており、使う言語も異なることから、親会社としてはつい常駐している出向者にすべてを任せてしまいがちです。しかし、それでは今回のような不正が発生しかねません。だからと言って、あらゆる事項に親会社の承認を必要としてしまうと、子会社の機動的な運営が困難になります。また、子会社が親会社の顔色ばかりうかがってしまう組織になってしまうと、子会社従業員の“やる気”が奪われ、会社への忠誠心が低下し、人材の流出につながってしまいます。

 そこで、子会社の規模や管理レベルに応じて、親会社が管理する範囲と子会社に任せる範囲を慎重に区分けすることで、子会社の自主性を認めながら、親会社が間接的に管理する仕組みを構築していく必要があります。海外子会社へのコントロール強化策は次の4つに分けて考えることができます。
(1)海外子会社における自律的なガバナンスの強化
(2)日本の親会社の「管理部門」「内部監査部門」による海外子会社のモリタリング
(3)日本の親会社の「監査役」による海外子会社の監査
(4)会計監査人(現地および親会社の監査法人等)による海外子会社の監査

 つい「日本の親会社の「管理部門」「内部監査部門」による海外子会社のモリタリング」の強化を検討しがちですが、それに先立ちいかにして「海外子会社における自律的なガバナンスの強化」を図るかを検討すべきです。詳細は「海外子会社へのコントロールを強めたい」を参照してください。

 また、今回の事件の背景には、「上司の命令への絶対服従」と「他部門への不干渉」といった親会社の組織風土があると内部調査報告書は指摘しています。いかにしっかりとした内部統制の仕組みを「整備」したとしても、「運用」となると話は別です。内部統制に携わる人や組織風土でいかようにも運用のレベルは変わってきます。そこで重要となるのが統制環境です。同社の経営陣は子会社も含めて、良好な統制環境の構築・維持に気を配るべきでした。

統制環境 : 内部統制を取り巻く環境のこと。例えば次のようなものがある。経営者の誠実性および倫理観、経営方針および経営戦略、組織構造および慣行等が該当する。

 今回の不祥事は子会社社長が親会社の常務取締役と共謀して起こしたものであり、いわゆる“経営者不正”に属する不祥事です。一般的に内部統制は経営者不正に対して無力になりがちですが、子会社の経営者不正の場合は一概にそうとも言えません。親会社の管理部や内部監査室からしてみれば、海外子会社も統制すべき一部門として捉えることができるからです。親会社としては、グループ全体の内部統制のレベル向上のための策(予算統制、内部通報制度など)を普段から構築しておくべきです。実際に、石井表記社の場合、予算統制による異常値の把握が不正発覚のきっかけでした。あらためて予算統制の有効性が証明されたと言えます。もちろん、予算統制を有効なものとするためには、子会社が提出してきた予算案に異常値が含まれていないかをチェックできる人材が親会社にいることが前提になる点には留意しなければなりません。

 同社の改善策のうち、「親会社が議決権の過半を有する関係会社の役員には、親会社の取締役が少なくとも2名以上兼務する」は、取締役同士の牽制効果を期待する統制です。兼務取締役が1名だけのときよりも交通費などの経費は増えてしまいますが、情報の共有化が図られ引継ぎも容易というメリットもあることから、他社でも検討の価値“大”の策です。

 同社では、「社内相談制度」が整備・運用されています(※1)。同制度の詳細は明らかになっていませんが、単なる「相談」であれば相談をした側の保護や相談を受けた側の行動が規定されているのか、公益通報者保護法(※2)の理念に沿った社内通報制度が一般的であるだけに、気になるところです。ちなみに、こういった調査報告書ではお決まりとなった改善策の1つである「内部通報制度の強化」ですが、同社の調査報告書ではまったく触れられていませんでした。今回のような常務取締役や子会社社長の不正に対しては「内部通報制度」を導入し、その窓口を多様化して、外部の法律事務所を窓口の一つに加えるようにする策が“定石”となっているだけに、目立ってしまう点は否めません。

※1 2015年1月期の石井表記社の有価証券報告書の【コーポレート・ガバナンスの状況】より。ちなみに、2015年4月15日現在、EDINETの全文検索機能で「社内相談制度」を検索するとヒットするのは同社のみでした。
※2 公益のために通報を行った労働者に対する解雇等の不利益な取扱いを禁止する法律。こちらを参照。

2015/04/10 セミナー「コーポレートガバナンス・コードの全容と企業の情報開示」および「コーポレートガバナンス・コードを巡る実務対応」を2015年4月10日(金)に開催しました。

本セミナーはすでに開催済みですが、会員の方向けにWEBセミナーを配信中です。
WEBセミナー:コーポレートガバナンス・コードの全容と企業の情報開示
WEBセミナー:コーポレートガバナンス・コードを巡る実務対応

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上場会社役員ガバナンスフォーラムでは、2015年4月10日(金)の14時30分~17時40分に下記のセミナーを開催いたします。

時 間 テーマ 講 師
第一部
14:30

16:00
~コードが企業に求める取組みとは?~
コーポレートガバナンス・コードの全容と企業の情報開示
株式会社東京証券取引所
上場部 統括課長 林 謙太郎 様
第二部
16:10


17:40
~取締役会等で実施すべきことは?「何を」「どのように」開示・公表するのか?~
コーポレートガバナンス・コードを巡る実務対応
TMI総合法律事務所
弁護士 宮下 央 様

■第一部の詳細

セミナー
の内容
 今年6月1日からの適用開始が予定されるコーポレートガバナンス・コードは、上場企業に対しガバナンスの充実に向けた様々な取組みの実施を促すとともに、その遵守状況などを株主等のステークホルダーに対して説明することを求めています。ただ、プリンシプルベース・アプローチ(原則主義)をとる同コードは、企業の自主性に委ねる部分も多いがゆえに、「何をしたらいいのか」頭を悩ませている企業も少なくないようです。本セミナーでは、コーポレートガバナンス・コードを金融庁と共同して策定し、同コードの導入に伴う上場制度の見直しを進める株式会社東京証券取引所から、上場部 統括課長の林謙太郎様をお招きし、各コードの制定の趣旨や意図を紐解きながら、同コードが企業に求める取組みからそれをどのように開示していくのかまで、同コードの全容を解説していただきます。また、コードを実施しない場合に必要になる「実施しない理由」の説明についても言及していただきます。
講師の
ご紹介
林 謙太郎(はやし けんたろう)様
 1994年4月に東京証券取引所に入社後、債券部門、上場部門における勤務、証券保管振替機構への出向を経て、2009年6月から現職。証券保管振替機構への出向中には、株式のDVP決済、株券電子化の制度創設に携わったほか、現職就任後は、2010年における独立役員制度の導入から今般のコーポレートガバナンス・コードの導入に至る一連の取組みの企画・立案業務を担当。

■第二部の詳細

セミナー
の内容
 コーポレートガバナンス・コードはcomply or explainの原則により、上場企業に対し、コードを実施するか、「実施しない理由」を説明することを求めていますが、何をすればコードを実施したことになるかは、個々の企業の判断に委ねられている部分も多くあります。特にコードで開示・公表が求められている項目については、「何を」「どのように」開示・公表すればよいのか、コードの適用を受ける上場企業の関心が非常に高まっています。そこで本セミナーでは、金融庁に出向経験があり、コーポレートガバナンス・コードに詳しいTMI総合法律事務所の宮下央弁護士に、コードに定められている方針や基準(例えば「原則1-4:いわゆる政策保有株式」に関する方針の開示や、「原則4-8:独立社外取締役の有効な活用」など)について、実務的な対応として、取締役会その他の機関において、どのようなことを具体的に実施することが考えられるのか、また、「何を」「どのように」開示・公表することが考えられるのかという点に踏み込んでお話しいただきます。
講師の
ご紹介
宮下 央(みやした おう)様
 2004年弁護士登録。TMI総合法律事務所パートナー弁護士。
 主な取扱分野はM&A・組織再編、コーポレート・ファイナンス、課徴金・インサイダー取引規制をはじめとした法令違反事件の対応、コーポレートガバナンスを含む会社法・金融商品取引法全般。2007年から2010年まで任期付公務員として金融庁の企業開示課に在籍し、公開買付制度、課徴金事案等を担当。

主要著作として以下など多数。
著書
『詳説 公開買付制度・大量保有報告制度Q&A』(商事法務、2011)
『金融商品取引法判例百選』(有斐閣、2013)(第90事件を執筆)
『実務に効く M&A・組織再編判例精選』(有斐閣、2013)
『専門訴訟講座7 会社訴訟』(民事法研究会、2013)
『企業法務のための金融商品取引法』(中央経済社、2015)
雑誌
「改正会社法と実務対応Q&A Ⅰ企業統治(ガバナンス)に関連する改正項目」(金融法務事情、2014)
「金融商品取引法制」(金融法務事情、2014)
「金商法改正によるM&A実務への影響 -インサイダー取引規制の改正を中心に-」(金融法務事情、2013)
「立会外取引をめぐる金融商品取引法の論点」(旬刊商事法務、2013)
「インサイダー取引規制の見直しと実務上の留意点―金融審議会WG報告を踏まえて」(金融法務事情、2012)
「有価証券届出書の虚偽記載に対する課徴金決定と実務への影響 -JVCケンウッドの事例を参考に-」(旬刊商事法務、2011)

詳細はこちらもご覧ください。
なお、セミナー参加費につきましては、上場会社役員ガバナンスフォーラムの会員のみ無料、それ以外の方は2万円(税込 ※)となっております。
※セミナーお申込み前に会員登録いただくと、セミナー参加費は無料となります。

会員登録はこちらから

会員でない方のお振込方法等の詳細はお申込みの受付けメール(下記の「お申込みはこちらから」のボタンをクリック後、お名前等をご入力いただいた後自動送信されるメール)にてご連絡いたします。
ご不明な点等がございましたら、ご遠慮なく jimukyoku@govforum.jp までお問い合わせください。

<セミナー概要>

  • 第一部 コーポレートガバナンス・コードの全容と企業の情報開示
  • 第二部 コーポレートガバナンス・コードを巡る実務対応
  • 【日時】2015年4月10日(金)14時30分~17時40分
  • 【場所】六本木ヒルズ森タワー22階 TMI総合法律事務所セミナールーム
  • 【受付】六本木ヒルズ森タワー1階ロビー 14時より
  • 【講師】第一部 株式会社東京証券取引所 上場部 統括課長 林 謙太郎 様
        第二部 TMI総合法律事務所 弁護士 宮下 央 様
  • 【セミナー参加費】当フォーラム会員は無料、それ以外の方は2万円(税込)

セミナー参加費の請求書はこちらから

2015/04/10 発明は「従業員」から「会社」のものへ、残されたリスク要因は?

難航を極めていた「職務発明制度」の見直しがようやく今国会で実現しそうだ。今回の見直しは、一言で言えば発明について特許を受ける権利を「従業員のもの」から「会社のもの」へと変えるものであり、会社にとって有利な内容となっているが、会社側にもリスク要因は残っている。以下、解説しよう。

職務発明制度とは、従業者が職務上行なった発明(=職務発明)について、法人が特許権を取得する場合の権利関係やその対価(報酬)の取扱いを定めたもの(特許法第35条)。我が国の職務発明制度の最大の特徴(会社にとっては好ましくない特徴)は、次の2点にある。

(1)職務発明についての特許を受ける権利は、まず従業者に発生する(従業者帰属)。従業者に発生した権利は、法人が特許出願をする際に、従業者から法人に譲渡される。
(2)従業者は、特許を受ける権利を法人に譲渡した場合、「相当の対価」を請求できる権利を有する。

つまり、現行の職務発明制度上、会社が特許申請を行うために必要な権利である「特許を受ける権利(特許権ではないことに注意)」は従業員に発生することになっており(従業者帰属)、会社が特許を取得するためには、この権利を「相当の対価」と引き換えに、従業員から会社に譲渡してもらう必要があるわけだ。

このような仕組みは、「従業者の権利を保障し、もって発明奨励に寄与する」趣旨で大正10年から採用されているが、産業界からの評判は芳しくない。会社にとって権利が不安定なだけでなく、「相当の対価」の算定も困難であり、訴訟リスクが高いからだ。

そもそも、職務上の発明について従業員が特許の出願・登録を行い、その後も維持費を支払い続けるということは考えにくい。また、企業がその権利を活用して製品やサービスに展開することが通常である以上、従業員が「特許を受ける権利」を保有し続けるメリットは乏しい。実際、諸外国では、職務発明の特許を受ける権利ははじめから法人に帰属(法人帰属)としているところがほとんどとなっている。

こうした中、一昨年(2013年)から政府内で現行の職務発明制度の見直し議論が始まったものの、労働法学者や労働団体から「発明者に対する処遇の切り下げ」に対する懸念が主張され続け、議論が暗礁に乗り上げていたのは2014年8月19日のニュース「「特許を受ける権利」の帰属を企業に 職務発明制度の見直し議論が迷走」でお伝えしたとおりだ。その結果、当初予定されていた「2014年夏までに結論を得て秋の臨時国会に改正法案提出」というスケジュールは流れることとなったが、ようやく先月(2015年3月)13日、特許法の改正法案が閣議決定され、国会に上程されている。改正案のポイントは以下の3点。

(1)契約、勤務規則その他の定めにおいてあらかじめ法人に特許を受ける権利を取得させることを定めたときは、その特許を受ける権利は、その発生した時から法人に帰属するものとする。
(2)従業者は、特許を受ける権利を取得させた場合には、相当の金銭その他の経済上の利益を受ける権利を有するものとする。
(3)経済産業大臣は、発明を奨励するため、産業構造審議会の意見を聴いて、 相当の金銭その他の経済上の利益の内容を決定するための手続に関する指針を定めるものとする。

このうち最大の目玉となるのが・・・

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