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【問題2】
東証のプライム市場およびスタンダード市場に上場している企業は、コーポレートガバナンス報告書に【資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応】のキーワードを記載しなければ、2024年1月に公表予定の「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応」に関する開示企業一覧において「検討中」に分類される。
【問題6】
東証のプライム市場およびスタンダード市場に上場している企業が、東証から要請された「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応」に関する取組みのうち一つでも検討中のものがあれば、コーポレートガバナンス報告書には【資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応】のキーワードを用いることができないため、【資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応(検討中)】のキーワードを用いざるを得ない。
【問題8】
株式報酬に関して本質的に検討すべき論点は「譲渡制限付株式報酬」「パフォーマンスシェア」「有償ストックオプション」「XXX信託」「ZZZ信託」「RSU」といった商品のどれを選択するかである。
2023/11/30 2023年11月度チェックテスト第1問解答画面(不正解)
不正解です。
統合報告書とは自社の「財務情報」と「非財務情報」を文字通り“統合”して、どのように企業価値向上を目指すのかを報告する書類です(問題文の「自社の財務情報と自社を取り巻く外部環境の情報」を統合する旨の記述は誤りです)。
こちらの記事で再確認!
2023年11月1日 統合報告書を作成する必要はあるのか(会員限定)
2023/11/30 2023年11月度チェックテスト第1問解答画面(正解)
正解です。
統合報告書とは自社の「財務情報」と「非財務情報」を文字通り“統合”して、どのように企業価値向上を目指すのかを報告する書類です(問題文の「自社の財務情報と自社を取り巻く外部環境の情報」を統合する旨の記述は誤りです)。
こちらの記事で再確認!
2023年11月1日 統合報告書を作成する必要はあるのか(会員限定)
2023/11/29 【役員会 Good&Bad発言集】消費税免税事業者との取引
上場会社X社の取締役会では、経理担当取締役が「取引先X社(消費税の免税事業者)が2023年10月以降も本体価格に消費税相当分(10%相当分)を乗せた請求書を送付してきている」旨報告したことを契機に、次の3人が消費税の免税事業者への対応について発言を行いました。誰の発言がGood発言でしょうか?
取締役A:「免税事業者であるにもかかわらず消費税を請求するとは驚きですね。そんな請求書は無視して本体価格のみを支払えば十分でしょう。」
取締役B:「免税事業者が消費税を上乗せして請求するのは消費税法違反ですね。消費税の記載を外した請求書を再発行してもらいましょう。」
取締役C:「仕入税額控除に関する経過措置もありますし、当社側には取引前に価格面の打ち合わせをしなかった落ち度もあります。今回は請求額を減額せずに支払って、次の取引前に価格をどうするかについてX社と話し合いをするべきです。」
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2023/11/29 【役員会 Good&Bad発言集】消費税免税事業者との取引(会員限定)
<解説>
免税事業者は消費税を請求できないのか
2023年10月より消費税に関連してインボイス制度が導入されました。これにより、製・商品、サービスの売手側がインボイス登録事業者であれば、買手側から求められたときは、インボイスを交付しなければならなくなりました。また、買手側は消費税の申告にあたり仕入税額控除の適用を受けるために、原則として、取引相手(売手)である登録事業者から交付を受けたインボイスの保存等が必要となりました。インボイス制度の詳細については、2022年3月11日のニュース「2023年10月からのインボイス制度導入を見据えた免税事業者との付き合い方」をご参照ください。
インボイス制度の導入に伴い、「免税事業者は消費税分を乗せて請求してはいけない」との誤解が広まりました。確かに、インボイス制度導入に伴い、免税事業者が請求書に偽のインボイス番号(他人の登録番号の借用や架空の登録番号の捏造)を記載するなどインボイス登録事業者のふりをして請求書を交付することは「適格請求書であると誤認されるおそれのある表示をした書類」(消費税法57の5第1号)に該当するとして、1年以下の懲役または50万円以下の罰金の刑罰を科せられる可能性があります。
| (適格請求書類似書類等の交付の禁止) 消費税法57条の5 適格請求書発行事業者以外の者は第一号に掲げる書類及び第三号に掲げる電磁的記録(第一号に掲げる書類の記載事項に係るものに限る。)を、適格請求書発行事業者は第二号に掲げる書類及び第三号に掲げる電磁的記録(第二号に掲げる書類の記載事項に係るものに限る。)を、それぞれ他の者に対して交付し、又は提供してはならない。 一 適格請求書発行事業者が作成した適格請求書又は適格簡易請求書であると誤認されるおそれのある表示をした書類 二 偽りの記載をした適格請求書又は適格簡易請求書 三 第一号に掲げる書類の記載事項又は前号に掲げる書類の記載事項に係る電磁的記録 消費税法65条 |
換言すれば、免税事業者の交付する請求書が「適格請求書発行事業者が作成した適格請求書又は適格簡易請求書であると誤認されるおそれのある表示をした書類」に該当しなければ、消費税法57の5第1号違反を問われることはありません。ここで「適格請求書であると誤認されるおそれのある表示をした書類」に該当するかどうかの判断にあたって重要となるのはインボイス番号の有無とされており、「消費税額●円」と記載したことではありません。また、免税事業者は「これは適格請求書ではありません」と明記した請求書を交付することを義務付けられているわけでもありません。
「免税事業者はそもそも免税されているのだから、交付した請求書が『適格請求書であると誤認されるおそれのある表示をした書類』に該当しないとしても、そもそも消費税を乗せて請求する行為自体がおかしい」という反論があるかもしれませんが、免税事業者は単に納税を免れているだけであり、消費税相当額を請求することを禁止されているわけではありません。確かに、免税事業者が請求書に「消費税額●円」と記載して消費税相当額を受領することは、消費税の仕組み上予定された行為ではないのですが、だからと言ってそれが消費税法上禁止されている行為にあたる訳でもないのです(消費税法に「免税事業者は消費税を請求してはならない」と明記されていれば別ですが、そのような規定は存在しません)。
要するに、免税事業者の視点で考えれば、適格請求書と誤解さえされなければ、堂々と消費税額を乗せた請求書を交付しても、何ら問題はないことになります。それにもかかわらず「免税事業者は消費税分を乗せて請求してはいけない」という誤解が広まっているので、惑わされないように留意すべきです。
経過措置終了に向けて取引先の選別がはじまる?
免税事業者の視点で考えれば、消費税額を乗せた請求書を交付しても消費税法違反にならないとしても、取引相手の課税事業者から見れば、免税事業者に支払った額を課税仕入にできない(納付すべき消費税額の計算にあたり仕入税額控除ができない)という問題は残ります。そこで、経過措置が設けられており、免税事業者に支払った額のうち、下記の一定の額を仕入税額とみなして控除できます。
| 経過措置適用期間 | 割合 |
| 2023年10月1日~2026年9月30日 | 仕入税額相当額の 80% |
| 2026年10月1日~2029年9月30日 | 仕入税額相当額の 50% |
この経過措置によりインボイス制度は多少の混乱はあったもののスムーズな滑り出しをすることができました。今後は経過措置の終了が近づくにつれ、免税事業者との取引をどうするのか、社内でしっかりと議論していくべきと言えます。
さて、以上の解説をご覧いただければ、誰の発言がGOOD発言か、もうお分かりですね。正解は以下のとおり。
<正解>
取締役C:「仕入税額控除に関する経過措置もありますし、当社側には取引前に価格面の打ち合わせをしなかった落ち度もあります。今回は請求額を減額せずに支払って、次の取引前に価格をどうするかについてX社と話し合いをするべきです。」
(コメント: 本来は、X社のような継続的な取引先との間では、インボイス制度導入前に制度導入後の価格をどのようにするのかを話し合っておくべきでした。それがなかった以上、X社としては従来からの請求(消費税額を乗せた請求書の発行)が許容されたと考えて当然であり、X社からの請求後(取引後)にごねるのは不適切です。取締役Cの発言は、免税事業者からの仕入れに係る経過措置にも目配りしたGOOD発言です。)
取締役A:「免税事業者であるにもかかわらず消費税を請求するとは驚きですね。そんな請求書は無視して本体価格のみを支払えば十分でしょう。」
(コメント:免税事業者といえども、消費税額を乗せて請求することは何ら禁止された行為ではありません。まして、請求額を勝手に減額することは契約違反や下請法違反を問われる可能性があります。取締役Aの発言は免税事業者は納税を免除されているだけであり、消費税額を乗せて請求することを禁止されているわけではないことを理解できていないBAD発言と言わざるを得ません。)
取締役B:「免税事業者が消費税を上乗せして請求するのは消費税法違反ですね。消費税の記載を外した請求書を再発行してもらいましょう。」
(コメント:取締役Aの発言に対するコメントを参照)
2023/11/28 【失敗学第113回】イメージ情報開発の事例
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2023/11/28 【失敗学第113回】イメージ情報開発の事例(会員限定)
概要
ITソリューション事業を営むイメージ情報開発(東証グロース)で役員間のパワーハラスメント(代表取締役から他の取締役に対するパワハラ)が起きた。
経緯
イメージ情報開発が2023年7月25日に公表した「 第三者委員会による調査報告書」等によると、一連の経緯は次のとおり。
2021年
12月1日:イメージ情報開発に今回のパワハラ事案の申告者(以下、申告者)が入社する。イメージ情報開発は、東証の市場再編に伴う経過措置としての上場維持基準に抵触しており、同基準の経過措置終了後は上場廃止になる可能性があった。そのため、代表取締役(以下、代表者)は上場廃止回避のための策を立案し遂行できる人材を探していた。そして、申告者は当該役割を果たすことを期待されていた。申告者の入社後、代表者は申告者の直属の上司として、申告者に様々な指示を出していたが、申告者は成果を出せなかった。
2022年
6月:申告者がイメージ情報開発の取締役に就任する。
2023年
1月18日:イメージ情報開発は、申告者より「適応障害」を理由に1か月の自宅療養が必要とする診断書の提出を受ける。
2月6日:イメージ情報開発は甲弁護士に本件各行為についてのハラスメント調査を依頼する。
2月21日:イメージ情報開発は、甲弁護士から申告書がパワハラ申告した16項目のうち4項目を「パワハラと解されても致し方ない」としつつ、12項目の行為は「パワハラとは認められない」(ただし、12項目のうち7項目は「好ましくない」)と認定する調査報告書を入手する。イメージ情報開発は、申告者よりさらに1か月の自宅療養が必要とする診断書の提出を受ける。
3月24日:申告者はイメージ情報開発の代表取締役以外の取締役に対してパワハラ事案を調査するために第三者委員会を発足させることを依頼する。
3月31日:申告者はイメージ情報開発の代表取締役以外の取締役に対して、再度、パワハラ事案を調査するために第三者委員会を発足させることを依頼する。
4月9日:申告者は、イメージ情報開発の代表取締役以外の取締役に対して、メールで第三者委員会の発足を要請する。
4月10日:イメージ情報開発の取締役会は、利害関係のある取締役を退席させたうえで、本件各行為がパワハラに該当するか否かの調査のため、第三者委員会を設置することを決議する。
5月25日:イメージ情報開発は第三者委員会を設置する。
7月25日:イメージ情報開発は「第三者委員会による調査報告書」を公表する。
8月17日:イメージ情報開発は「第三者委員会の提言を受けた再発防止策の策定等に関するお知らせ」を公表する。
内容・背景・再発防止策
イメージ情報開発の「第三者委員会による調査報告書」によると、代表取締役によるパワハラの内容、それが行われたことの背景、再発防止策は次のとおりとされている。
| 内容 | 代表取締役は従業員(途中から平取締役に昇格)であった申告者に対して、チャットを通じて退社後や深夜において電話に出るよう指示したり(しかも電話の内容は緊急性、必要性、相当性があるとは思えない事柄であった)、会議中に「精神を病んでいるんじゃないか」「ぼけちゃってんの?」「いやがらせでやっているのか」といった相手を侮辱し、人格を傷付ける発言をしたりした。時には、執拗に同じことを繰り返す形で高圧的な指導をして、机をペンで叩きながら威圧することもあった。これらは業務上必要あるいは相当と言える範囲を逸脱し、かつ、社会通念上、就業環境を害するパワハラであった。申告者はパワハラを意識し出してから代表者の発言を録音するようにしていた。 |
| 背景 | 代表者のオーナーとしての驕り 代表者は、イメージ情報開発のオーナー(代表者及びその関係者が過半数の株式を保有している)であり、自身がオーナーであるが故に自信を、ある意味、特別視しているところがあった。また、イメージ情報開発で行われたコンプラ研修を代表者は受講しておらず、パワハラ問題に対する理解が不十分であった。 代表者の焦り 達成不能なミッション 他の役員等の把握能力の低さ 内部通報制度の不存在 |
| 再発防止策と処分 | (再発防止策) 代表者の再発防止策 ・代表者の意識改革 ・パワハラ防止法制の再認識 ・会議方法の改革 会社の再発防止策 ・企業トップに意見を進言できる経営陣 ・内部監査室、コンプライアンス委員会およびリスク管理委員会の形骸化防止 ・パワハラによる被害が発生した場合に被害を申告できる常設の窓口の創設 ・パワハラ問題に関する日常の教育 ・パワハラ問題が発生しない企業風土の確立 ・指名委員会の創設(役員選任ルールの確立) ・顧問弁護士等外部関係者の活用 ・役員懲戒処分の明文化 (処分) |
<この事例から学ぶべきこと>
パワハラというと上司と部下の関係で起きるものと思いがちですが、本来は取締役会の構成員という意味では対等な関係である取締役間でも、実際には本事案のように取締役間で上司と部下の関係が認められることが少なくなく、パワハラの要件の一つである優越的地位が認定されることがあります。社長が平取締役を叱責するケースは少なくないでしょうし、オーナー社長であれば発言が高圧的になり、パワハラ認定される可能性は高まるはずです。社長をメンバーに入れない形で指名委員会を運営するとともに、役員を懲戒処分できることを明確化して、社長に対するけん制機能を持たせるべきです。
イメージ情報開発では、週次会議、経営会議、取締役会等の会議が行われており、その主催者はいずれも代表者で、各会議とも同じ議題を繰り返して議論していました。本報告書では
「代表者は、対象会社における会議や打ち合わせに関して、
①会議の目的を事前に設定すること
②原則として時間外の突発的な会議をしないこと
③会議時間は合理的な範囲にとどめ長時間会議をしないこと
④書面指示に徹し口頭による指示はその補充とすること
⑤長時間、密室での相対による会議は行わないこと
⑥勤務時間外に連絡する際には、その緊急性、必要性、相当性を十分吟味すること
などを心掛けるべきである。」
との提案がなされています(本報告書の54ページ)。こういった対策は、会議を通じたパワハラを防止するだけでなく、社内の効率性向上や意思決定の遅れの改善につながるので、会議の多さに悩んでいる会社ではぜひ取り組むべきです。
2023/11/27 ISSが2024年版ポリシー策定に向けオープンコメント募集、改定案が示唆する取締役会の独立性強化
議決権行使助言会社最大手のISS(Institutional Shareholder Services)は(2023年)11月21日、2024年版の議決権行使助言方針(ポリシー)の改定案についてオープンコメントの募集を開始した(改定案の参考資料となる「グローバル・ベンチマーク・ポリシー調査」の結果については2023年11月6日のニュース「ISS、ROE基準復活へ プライム市場上場企業の17.5%が同基準に抵触」参照)。コメント募集期間は「11月30日まで」とされており、ISSは寄せられたコメントを踏まえて、年内には2024年版ポリシーを確定させる見込み(ちなみに、昨年は11月16日にコメント募集を終了し、同30日に確定版を公表している)。
日本企業を対象に予定されている改定は以下の2つ。以下、それぞれについて解説する。・・・
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2023/11/27 ISSが2024年版ポリシー策定に向けオープンコメント募集、改定案が示唆する取締役会の独立性強化(会員限定)
議決権行使助言会社最大手のISS(Institutional Shareholder Services)は(2023年)11月21日、2024年版の議決権行使助言方針(ポリシー)の改定案についてオープンコメントの募集を開始した(改定案の参考資料となる「グローバル・ベンチマーク・ポリシー調査」の結果については2023年11月6日のニュース「ISS、ROE基準復活へ プライム市場上場企業の17.5%が同基準に抵触」参照)。コメント募集期間は「11月30日まで」とされており、ISSは寄せられたコメントを踏まえて、年内には2024年版ポリシーを確定させる見込み(ちなみに、昨年は11月16日にコメント募集を終了し、同30日に確定版を公表している)。
日本企業を対象に予定されている改定は以下の2つ。以下、それぞれについて解説する。
1.ROEポリシーの再開
2020年6月から適用を猶予していたROEポリシーの適用を再開する。ISSはコロナ禍にあった2020 年 6 月 1 日に「新型コロナウイルス感染症の世界的流行を踏まえたISS 日本向け議決権行使基準の対応」を施行し、「新型コロナウイルス感染症が企業業績に与える多大な影響を考慮」してROEポリシーの適用を一時的に停止していた。しかし、2024年版ポリシーでは、「COVID-19の企業業績への影響が過去のもの」となり、また「日本企業の2023年3月期のROEの中央値が6.8%にまで回復」したことから、3年ぶりにROEポリシーの適用を再開する見通しとなっている。
ROEポリシー : 下記に該当する場合、経営トップである取締役の選任議案に対し原則として反対を推奨するというポリシーのこと。ここでいう「経営トップ」とは通常、社長か会長を指す。
● 資本生産性が低く(過去5期平均の自己資本利益率[ROE=Return On Equity(当期純利益/株主資本)]が 5%を下回り)、かつ改善傾向にない場合
※「改善傾向」とは、過去5期の平均 ROE が 5%未満でも、直近の会計年度の ROE が 5%以上ある場合を指す。
上記で引用した2023年11月6日付のニュースでお伝えしたとおり、ISSが毎年実施している「グローバル・ベンチマーク・ポリシー調査」の調査項目には「ROE基準の一時停止を2024年以降も継続するか否か」が盛り込まれたが、同調査では投資家(Investor)の75%、市場関係者(Non-Investor)の60%が適用の再開に「Yes」と回答しており、これが今回の改定案の内容に直結したと言える。
なお、取締役選任に関する現行のISSの助言ポリシーのうち、機関設計を問わず設定されているものは、ROEポリシーを含め下記のとおりとなっている。
| 下記のいずれかに該当する場合、原則として反対を推奨する。 ● 資本生産性が低く(過去5期平均の自己資本利益率[ROE]が5%を下回り)かつ改善傾向*にない場合、経営トップである取締役** ● いわゆる政策保有株式の過度な保有が認められる場合(政策保有株式の保有額が純資産の20%以上の場合)、経営トップである取締役 ● 株主総会後の取締役会に女性取締役が一人もいない場合、経営トップである取締役 ● 前会計年度における取締役会の出席率が75%未満の社外取締役 * 過去5期の平均ROEが5%未満でも、直近の会計年度のROEが5%以上ある場合を指す ** 経営トップとは通常、社長、会長を指す |
2.買収防衛策(ポイズンピル)に関するポリシーの厳格化
経営権に争いがない場合(平時)に導入・更新される買収防衛策の議案について、ISSはまず「形式審査」、次いで「個別審査」と、二段階の判断基準を設定している(後述)。今回の改定案では、このうち形式審査の基準を見直す。具体的には、取締役会に占める独立社外取締役の要件を現行の「2名以上かつ3分の1」から「過半数」に引き上げる。その理由としてISSは、日本の上場企業の84.3%において、取締役会に占める社外取締役の割合が3分の1になったことと、その一方で過半数に達している上場企業は8.8%にとどまっていることを挙げている。日本企業の実態を反映して取締役会の独立性のハードルを引き上げたということだろう。
ポイズンピル : 「敵対的買収者が被買収企業の株式の一定割合を取得した場合、既存株主は時価より安い価格で新株を購入できる」という権利(ライツ)を既存株主に与える手法。新株が発行されれば、敵対的買収者の持株比率は低下するとともに、1株当たりの株価も安くなり、敵対的買収者は大きな損失を被ることになる。ライツプランとも言われる。
今回の改定箇所(取消し線および赤字部分)を明示した「形式審査」の各項目は下記のとおり。今回の改定で形式審査のハードルが一段高くなったが、これをクリアしても第2段階の「個別審査」では、「具体的な株主価値向上施策」が問われることになる(買収防衛策に関する現行ポリシーの全体像はこちらを参照)。もっとも、ここ数年、ISSの賛成助言を得た買収防衛策の議案は存在しないことから、現実的には今回のポリシー改定による影響は小さいものと考えられる。
|
● 総会後の取締役会に占める出席率に問題のない独立社外取締役が過半数である ● 取締役の任期が1年である ● 特別委員会の委員全員が出席率に問題のないISSの独立性基準を満たす社外取締役もしくは社外監査役である ● 買収防衛策の発動水準が20%以上である ● 有効期限が3年以内である ● 総継続期間が3年以内である ● 他に防衛策として機能しうるものがない ● 株主が買収防衛策の詳細を検討した上で、経営陣に質問する時間を与えるために、招集通知が総会の4週間前までに証券取引所のウェブサイトに掲載されている
|
もっとも、本基準でISSが「取締役会の独立性を確保する」ための要件として、明確に「社外取締役が過半数を構成する」ことを打ち出した意味は決して小さくない。役員の選任基準として「社外が過半数」を掲げる投資家は徐々に増えてきているが、今回の改定は、ISSの助言ポリシーでも「社外が過半数」に舵を切るタイミングが近付いていることを示唆していると言えそうだ。
2023/11/24 外形標準課税逃れ防止策導入へ 減資を検討中の企業がとるべき対応
資本金が1億円以下の企業は、税務上は「中小企業」として扱われ、軽減税率や中小企業向けの特別償却など法人税法等における様々な中小企業向け特例措置の適用を受けることができる(ただし、資本金が1億円以下であっても「資本金5億円以上の会社の100%子会社等」であれば、こうした中小企業向け特例措置の適用を受けることはできない。一定の大法人等の100%子法人等における中小企業向け特例措置の不適用については国税庁のサイトを参照)。なかでも、税務上の「中小企業」にとってメリットが大きいのが、「法人事業税の外形標準課税」(以下、「外形標準課税」)が適用されないということだ。
100%子会社等 : 株式会社を前提にすると、資本金の額が5億円以上の法人による完全支配関係がある普通法人を指す。完全支配関係とは、一の者が、法人の発行済株式等の全部を直接または間接に保有する関係または一の者との間に当事者間の完全支配の関係がある法人相互の関係を指す。100パーセント子法人は当然のこと、例えば親会社が50パーセントしか持っていなくても残りを別の100%子会社を通じて支配していれば完全支配関係があることになる。
外形標準課税は法人税法ではなく地方税法上の制度であり、上記で説明した法人税法のように「法人税法上の資本金が1億円以下であっても資本金5億円以上の会社の100%子会社等であれば中小企業のメリットを受けられない」という制限は設けられていない。すなわち、純粋に資本金が1億円以下か・1億円を超えるかが、課税・非課税の境界線となる。
外形標準課税が適用されない企業にも法人事業税は適用されるが、法人事業税は通常「所得」のみをベースに計算される(これを「所得割」という)ため、赤字で法人税が課税されない企業であれば事業税も課税されない。これに対し外形標準課税は、社員への給与や事務所の家賃などの「付加価値」や「資本金等」も課税ベースに含まれるため(前者を「付加価値割」、後者を「資本割」という)、赤字企業にも容赦なく課税される。典型的には資本金・社員数が多く、事業所面積が広い赤字企業にとって、外形標準課税は重い負担となる。
こうした中、近年、減資により資本金を1億円以下にして外形標準課税の適用を逃れる企業が相次いでいる。シャープは1,218億円あった資本金を1億円にしようとして社会的批判を浴び、方針を撤回したが、コロナ禍による旅行需要の低迷に苦しんだJTBは2021年に23億円あった資本金を1億円に減らし、また、同業界のHISも2022年に247億円あった資本金を1億円に減らしている。HISのリリースを見ると、減資の目的の一つに「税負担の軽減を図ること」が堂々と掲げられているのが目を引く。また、持株会社化や分社化の際に、中小企業としての税制上の恩恵を受けるため資本金を1億円以下に設定する事例も多い。「付加価値割」と「資本割」に基づく外形標準課税によって計算された法人事業税は、損益計算書の「販売費及び一般管理費」に計上されるが、減資により外形標準課税が不適用になれば法人事業税(所得割)は損益計算書の「税引前当期純利益」の下の「法人税、住民税及び事業税」に計上されることから、外形標準課税の対象会社でなくなれば営業利益が改善する効果も期待できる。
減資 : 資本金を減らして資本剰余金を増やすこと。単なる係数上の振替に過ぎないが、会社法上は株主総会の特別決議や債権者保護手続きなどを経る必要がある。
上記のような大企業による外形標準課税回避による地方税収の低下を懸念した総務省は・・・
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