2023/01/31 【役員会 Good&Bad発言集】ダークパターン(会員限定)

<解説>
消費者・利用者を欺くダークパターンは企業として回避するのが正解

インターネットの商用利用が進むにつれ、消費者・利用者を欺くユーザーインターフェース(UI)あるいはユーザーエクスペリエンス(UX)の悪用が問題視されるようになりました。2010 年に UX デザイナーの Harry Brignull 氏が、「DARK PATTERNS」というサイトを開設し啓発活動に乗り出したことで、このような悪用を総称する言い回しとして「ダークパターン」が一般化したと言われています。

ユーザーインターフェース : ユーザーと製品やサービスとの接点(インターフェース)のこと。通常はサイトの画面の作りを指す。
ユーザーエクスペリエンス : ユーザーが製品やサービスなどの利用を通じて得ることができる体験

ダークパターンは、確たる定義が定まっているわけではないのですが、一般的には「消費者が気付かない間に不利な判断・意思決定をしてしまうよう誘導する仕組みとなっているウェブデザイン」を指すと言われています(景品表示法検討会が2023年1月13日に公表した報告書の37ページを参照)。OECDが2022年10月26日に公表したDARK COMMERCIAL PATTERNSによると、ダークパターンを次のように分類しています。

OECD : 経済協力開発機構。ヨーロッパ諸国を中心に日・米を含め38か国の先進国が加盟する国際機関であり、国際マクロ経済動向、貿易、開発援助といった分野に加え、最近では持続可能な開発、ガバナンスといった新たな分野についても加盟国間の分析・検討を行っている。

分類 ダークパターンの具体例
forced action 無料トライアル期間の終了と同時に告知することなくクレジットカード課金をしたり、必要以上の個人情報を提供するよう強要したり、広告の視聴を必須にしたりするなど、消費者に強制力を及ぼすこと。サイトの利用規約に合意する旨のチェックを入れなければ商品の詳細情報が記載するページを閲覧できないようにして、当該利用規約に合意すると自動的にメールマガジンに登録したことにしたり、商品の購入時に「メールマガジンの購読を希望する」にデフォルトでチェックマークが入っていたりするメールマガジン配信誘導の手法もよく見受けられる。
interface interference 表示をあいまいにしたり、ひっかけを用いたりすることで、消費者の選択に干渉すること。例えば、サブスクリプション契約の解約画面で「解約する」「続ける」の2つの選択肢のうち「続ける」の方のデザインを強調することで、利用者を「続ける」の選択肢に誘導しようとする手法がある。interferenceは「干渉」の意味。
nagging アプリを開くたびに「通知や位置追跡をオンにしますか」と提案し続けること。根負けした消費者や誤操作した消費者は不本意にスマートフォンの位置情報を提供させられることとなる。naggingは「執拗」の意味。
obstruction 解約方法を伝えるページに容易にたどりつけないようにサイトの作りを複雑にしたり、電話でしか解約できないようにして当該電話番号の受電担当者を絞ることで常に「通話中状態」とし事実上解約できなくしたりすることで、購入者の契約解除権の行使を困難とすること。解約にあたって極めて長文のアンケートへの回答をしなければ解約に至らないといった手法もある。obstructionは「障害」の意味。「購入は容易だが、解約は困難」という意味でごきぶりホイホイ(Roach motel)とも言われる。
sneaking 取引開始時に最低価格を表示して消費者を誘引し、購入の最終段階になってからでなければ税金や決済手数料やシステム利用手数料や配送料といった追加コストを含めた最終価格が表示されないという手法。ドリッププライシングとも言われる。最初に最低価格を表示するのがポイントで、消費者が最初の価格に引っ張られるアンカリング効果を狙ったものと言える。最終価格が提示される前に氏名・住所・電話番号・クレジットカード番号などを記入させることで、「ここまで入力したのだから、もう一度別のサイトで検索するのは面倒くさい」と思わせて、高い価格を認容せざるを得なくさせる効果もある。sneakingは「こっそり」の意味。
social proof 「このページはただいま〇人が見ています」「このお店は、本日は〇件、予約が入りました」「高評価が〇」人といったように他の消費者の購入活動や評価を伝えること。ユーザーレビューを偽装したり、高評価をしてくれた購買者にキャッシュバックしたりして、人気が高いように見せかけたりするような偽装につながりやすい。ウェブデザインに限らず、インフルエンサーに「私も愛用しています」といった写真をSNSで投稿してもらったり、信用力の高い専門家による推薦文を掲載したり、第三者機関の調査結果をもとにNo.1広告を掲示することも広い意味のsocial proofと言える。
urgency サイト上で「残り〇分で終了」「残り〇個限り」などと、希少性を強調し、消費者を焦らせ判断能力を低下させて購入を促すこと。実際には当該期間経過後も同じ条件が適用されたり、在庫も大量にあったりする。urgencyは「緊急」「切迫」の意味。

上述したUXの専門家Harry Brignull 氏が運営するサイトdeceptive designによると、別の切り口から分類されており、上記以外の手法として、例えば次のような手法が紹介されています。

分類 ダークパターンの具体例
Price comparison prevention 価格比較防止。比較する商品の販売単位を意図的に変えたり、それほど安い商品でなくても極端に価格が高い商品と比較することで価格面の優位性についての誤解を誘ったりすることで、容易に価格比較ができないようにする。メーカーが当該販売サイト用の型番を作ることで、型番だけではサイト間の価格比較ができないようにする手法もある。
Confirmshaming 「痩せることを諦める方はこちら」と書かれたボタンをクリックしなければ解約できないようにして、解約することに罪の意識を感じさせるようにする。
Disguised ads コンテンツの続きを読むボタンに見せかけて広告リンクを踏ませたり、PCフリーソフトのダウンロードのボタンを分かりにくくして有料ソフトをダウンロードをさせる手法。OECDの分類のinterface interferenceの一類型と言える。Disguisedは「偽装」の意味。
Bait and switch 入手困難な商品が在庫にあるかのように偽装したり、安い商品で消費者を誘引したりして、実際には別の商品の購入を促す手法。Bait は「餌」、Switch は「小枝などでムチ打つ」の意味。いわゆるおとり商法。

それでは、どうしてインターネットの商用利用でダークパターンが多用されているのでしょうか。すぐに思いつくのは「より多く消費させるため」(企業にとって収益の最大化)ですが、それ以外にも、「ユーザーからより多くの情報を引き出す」(同意を得た上で情報提供してもらうことが難しくなっているため、ダークパターンを用いてユーザーから情報を引き出す)、「サービスをより中毒性の高いものにする」(より長くサービスを使ってもらう)などの動機が指摘されています(消費者庁が開催している「消費者法の現状を検証し将来の在り方を考える有識者懇談会」の第3回会合(2022年9月26日開催)における長谷川敦士氏(株式会社コンセント代表取締役/武蔵野美術大学造形構想学部教授)の資料を参照)。

ダークパターンを生み出す構造について、長谷川氏はデザイナーの倫理観の問題ではなく、デザインの前段階の意思決定=ビジネスの戦略や方針段階の問題であると指摘しています(こちらを参照)。つまり、組織(企業)の思想がダークパターンを生み出すのであり、組織全体でダークパターンを未然に防ぐようにする必要があるという訳です。

上述の景品表示法検討会の報告書では、ダークパターンとされる行為類型の中には、「現行の景品表示法の有利誤認として規制し得ると考えられるものもあるが、その行為類型は多岐にわたり得るため、現行の景品表示法では規制が及ばないものや、そもそも景品表示法の規制対象とはならないようなものも存在するものもあり、規制が必要なのではないか」との意見が出されたものの「現在のところ、国際的に検討が進められており、定義も確定していないことから、今後の国際的な議論状況や理論的な研究の深まり等を引き続き注視していく必要がある」と先送りされました。

ダークパターン回避の啓もうを行っている国内サイトDarkpatterns.jpによると、次のようなエピソードが紹介されています。

例えばアメリカ発のビジネスSNS「LinkedIn」は、ユーザーの意図に反して友人にスパムメールを送るデザインを取り入れ、集団訴訟を起こされた結果、1,300万ドル(当時のレートで約15億円)の支払いを命じられました。

反対に、動画配信サービス「Netflix」は、ダークパターンとは逆の「会員が解約しやすいデザイン」を取り入れたことで、驚異的なスピードで会員数を増やし、動画配信市場シェアでトップになりました。

ダークパターンの根絶には外部の力が不可欠

消費者向けのサイトを運営する上場会社では、消費者を欺いて短期的に売上を勝ち取っても長期的に消費者から離反され持続的なビジネスが困難となることを肝に銘じ、自社のサイトにダークパターンが含まれていないかを検証し、長期的に消費者からの信頼を得るように努めるべきです。

コストを掛けずにダークパターンの検証・改善を行うために自社内のIT部門に検証させようと考える会社もあるかもしれませんが、次の理由からお勧めできません。

・自社内のIT部門のスタッフはダークパターンについての知見に乏しいことから、何が問題なのかを十分に理解していない可能性がある。
・自社内のIT部門のスタッフにとっては慣れ親しんだUIである以上、本質的な問題点を見逃すおそれがある。
・自社内のIT部門のスタッフに検証させることは、これまでの自分自身(あるいは先輩)の仕事を否定することになるため、問題点の指摘に及び腰になる可能性がある。
・「会社の売上を減らすのかどうか」というバイアス(偏向)がかかり、中立的な判断ができずに指摘項目を減らしてしまう可能性がある。

社長の強力なリーダーシップのもと外部の知見を活用しながらダークパターンの検証・改善を行うようにすべきです。

さて、以上の解説をご覧いただければ、誰の発言がGOOD発言か、もうお分かりですね。正解は以下のとおり。

<正解>
GOOD発言はこちら

取締役A:「外注業者にUXのテストをしてもらい、改善箇所を特定するようにしてはいかがでしょうか。」
コメント:自社のサイトの問題点はなかなか社内では指摘しにくいところです。外注業者を活用するアイデアを示した取締役Aの発言はGOODです。

社外取締役C:「いわゆるダークパターンで解約率を技巧的に抑え込むよりも、解約の容易さをアピールすることでサービス利用者に安心感を与え、長期的に信頼を得ることこそが企業価値の向上に資するはずです。」
コメント:上記の解説で紹介したLinkedInの事例とNetflixの事例の比較を意識した発言であり、ダークパターンの危険性と企業価値の関連性を捉えたGOOD発言です。

BAD発言はこちら

営業担当取締役B:「サービスを解約しやすくするようUXを改変するための調査でしたら反対です。あえて売上を落として企業価値を損なうような提案を受け入れるわけにはいきません。」
コメント:確かにサービスを解約しやすくすることで一時的に解約率が高まり売上が落ちるかもしれません。しかし、それは本来解約されていたであろうユーザーをダークパターンで押しとどめていただけであり、ユーザーの満足度の低下に直結していたはずです。ユーザーの満足度の向上こそが長期的な企業価値向上を実現するはずです。営業担当取締役Bの発言は、ダークパターンに依存した不適切な発言と言わざるを得ません。