金融庁に設置された金融審議会のディスクロージャーワーキング・グループ(以下、DWG)が12月27日にとりまとめた報告書は、おおむね同15日に公表された同報告書の「案」と同じ内容となったが、四半期開示に関する記述の一部は、企業と投資家等の意見の対立を反映する形で修正されている(両者の意見の対立点については2022年12月20日のニュース『DWGの報告書案、「レビューの有無」の四半期決算短信での開示について企業サイドから反発の声』参照)。
「案」の段階からの主な変更点は下表のとおり。これらの変更点には、上場企業が四半期開示に取り組む姿勢にも影響を与える内容が含まれているので留意したい。
| 12/15案(青字は削除された記述) | 12/27確定版(赤字は追加された記述) |
| 今後、適時開示の充実の達成状況や開示を巡る企業の意識の変化、有価証券報告書の開示タイミングの状況等を踏まえた上で、四半期決算短信の任意化について幅広い観点から継続的に検討していくことが考えられる。 | 今後、適時開示の充実の達成状況や企業の開示姿勢の変化のほか、適時開示と定期開示の性質上の相違に関する意見等を踏まえた上で、四半期決算短信の任意化について幅広い観点から継続的に検討していくことが考えられる。 |
ここで注目されるのは、企業側の委員から異論が出ていた「有報の開示のタイミング」を四半期決算短信の任意化の条件とするかのような記述がカットされた点だ。「有価証券報告書の開示タイミングの状況」とは要するに有報の早期提出(株主総会前)を意味しており、投資家側の意見を反映した記述と言える。したがって、この点に関しては企業側に軍配が上がったということになる。
ただし、「案」の段階では注釈部分に記載されていた「適時開示と四半期決算短信のような定期開示とは性質が異なっており、適時開示の充実によって定期開示を代替できるものではない」との投資家や研究者の委員の意見が本文に“格上げ”された(「案」3ページの注釈5参照、確定版3ページの本文最終段落参照)。こちらは「注釈ではなく本文に盛り込むよう」要望していた投資家等の声が反映された形となった。
結果だけを見ると、企業と投資家の“痛み分け”にも見えるが、専門家からは、四半期決算短信の任意化を検討するにあたり「適時開示と定期開示の性質上の相違に関する意見等」を踏まえる旨が明記された意味は小さくないとの指摘も聞かれる。「適時開示と定期開示の性質上の相違」とは、換言すれば、“そもそも論”として「四半期開示を適時開示に置き換えることはおかしい」と言っているとも捉えられる。この記述が入ったことで、将来的な四半期決算短信の任意化へのハードルがやや上がったことは否定できないだろう。
| 12/15案(青字は削除された記述) | 12/27確定版(赤字は追加された記述) |
| 投資家から監査人によるレビューを求める意見が一定程度あることや、企業側にもレビューを受けるかどうかは企業側の判断に委ねるべきであるとの意見があることを踏まえ、企業において任意でレビューを受けることを妨げないこととするとともに、投資家への情報提供の観点からレビューの有無を四半期決算短信において開示することが考えられる。 | 投資家から監査人によるレビューを求める意見が一定程度あることや、企業側にもレビューを受けるかどうかは企業側の判断に委ねるべきであるとの意見があることを踏まえ、企業においてレビューを受けるかどうかは任意とするとともに、投資家への情報提供の観点からレビューの有無を四半期決算短信において開示することが考えられる。 |
企業側の委員からは『「妨げない」という表現には、原則としてはレビューを受けるべきとの印象がある。レビューを受ける方向に誘導するような表現は望ましくない』旨の主張が聞かれたが、確定版ではこの主張が受け入れられた格好となった。ただし、企業側の委員が同時に求めていた「レビューの有無を開示すること」との記述の削除は認められなかった。企業としては、「開示」を梃子(てこ)にしたレビュー実施のプレッシャーは依然として存在することに留意すべきだろう。
今後の流れとしては、まず四半期報告書の廃止(第1・第3四半期)などに関する金融証券取引法の改正案が今年の通常国会(1月23日~の見込み)に提出され、その成立を受けて東証が証券取引所規制の改正に着手するものとみられる。改正項目を一覧にすると下表のとおりとなる。
| 報告書への明示 | 「金融証券取引法」関連事項 | 「証券取引所規則」関連事項 |
| 前回報告書(2022/6) | ・上場企業について、法令上の四半期開示義務(第1・第3四半期)を廃止する | ・四半期開示を四半期決算短信に「一本化」する |
| 今回報告書(2022/12) | ・有価証券報告書の記載内容に重要な変更があった場合、臨時報告書の提出事由とする ・上場企業の半期報告書について、第2四半期報告書と同程度の記載内容と監査人のレビューを求め、提出期限を決算後45日以内とする ・非上場企業は、上場企業に義務付けられる半期報告書の枠組みを選択可能とする ・半期報告書及び臨時報告書の公衆縦覧期間を5年間に延長する |
・投資家の要望が特に強い事項(セグメント情報、キャッシュ・フローの情報等)を四半期決算短信の開示内容に追加する ・四半期決算短信については、監査人によるレビューを一律には義務付けない ・レビューの有無を四半期決算短信において開示する ・会計不正が起こった場合や企業の内部統制の不備が判明した場合には、一定期間、監査人によるレビューを義務付ける |
※DWG報告書に関するニュース・第一弾は「DWG報告第一弾 SSBJがサステナビリティ開示基準開発へ」参照)
