2023/01/11 DWG報告第二弾 企業と投資家の意見対立踏まえ、四半期開示に関する記述が「案」段階から変更(会員限定)

金融庁に設置された金融審議会のディスクロージャーワーキング・グループ(以下、DWG)が12月27日にとりまとめた報告書は、おおむね同15日に公表された同報告書の「案」と同じ内容となったが、四半期開示に関する記述の一部は、企業と投資家等の意見の対立を反映する形で修正されている(両者の意見の対立点については2022年12月20日のニュース『DWGの報告書案、「レビューの有無」の四半期決算短信での開示について企業サイドから反発の声』参照)。

「案」の段階からの主な変更点は下表のとおり。これらの変更点には、上場企業が四半期開示に取り組む姿勢にも影響を与える内容が含まれているので留意したい。

①将来的な四半期決算短信の任意化
12/15案(青字は削除された記述) 12/27確定版(赤字は追加された記述)
今後、適時開示の充実の達成状況や開示を巡る企業の意識の変化、有価証券報告書の開示タイミングの状況等を踏まえた上で、四半期決算短信の任意化について幅広い観点から継続的に検討していくことが考えられる。 今後、適時開示の充実の達成状況や企業の開示姿勢の変化のほか、適時開示と定期開示の性質上の相違に関する意見等を踏まえた上で、四半期決算短信の任意化について幅広い観点から継続的に検討していくことが考えられる。

ここで注目されるのは、企業側の委員から異論が出ていた「有報の開示のタイミング」を四半期決算短信の任意化の条件とするかのような記述がカットされた点だ。「有価証券報告書の開示タイミングの状況」とは要するに有報の早期提出(株主総会前)を意味しており、投資家側の意見を反映した記述と言える。したがって、この点に関しては企業側に軍配が上がったということになる。

ただし、「案」の段階では注釈部分に記載されていた「適時開示と四半期決算短信のような定期開示とは性質が異なっており、適時開示の充実によって定期開示を代替できるものではない」との投資家や研究者の委員の意見が本文に“格上げ”された(「案」3ページの注釈5参照、確定版3ページの本文最終段落参照)。こちらは「注釈ではなく本文に盛り込むよう」要望していた投資家等の声が反映された形となった。

結果だけを見ると、企業と投資家の“痛み分け”にも見えるが、専門家からは、四半期決算短信の任意化を検討するにあたり「適時開示と定期開示の性質上の相違に関する意見等」を踏まえる旨が明記された意味は小さくないとの指摘も聞かれる。「適時開示と定期開示の性質上の相違」とは、換言すれば、“そもそも論”として「四半期開示を適時開示に置き換えることはおかしい」と言っているとも捉えられる。この記述が入ったことで、将来的な四半期決算短信の任意化へのハードルがやや上がったことは否定できないだろう。

②四半期決算短信におけるレビューの有無
12/15案(青字は削除された記述) 12/27確定版(赤字は追加された記述)
投資家から監査人によるレビューを求める意見が一定程度あることや、企業側にもレビューを受けるかどうかは企業側の判断に委ねるべきであるとの意見があることを踏まえ、企業において任意でレビューを受けることを妨げないこととするとともに、投資家への情報提供の観点からレビューの有無を四半期決算短信において開示することが考えられる。 投資家から監査人によるレビューを求める意見が一定程度あることや、企業側にもレビューを受けるかどうかは企業側の判断に委ねるべきであるとの意見があることを踏まえ、企業においてレビューを受けるかどうかは任意とするとともに、投資家への情報提供の観点からレビューの有無を四半期決算短信において開示することが考えられる。

企業側の委員からは『「妨げない」という表現には、原則としてはレビューを受けるべきとの印象がある。レビューを受ける方向に誘導するような表現は望ましくない』旨の主張が聞かれたが、確定版ではこの主張が受け入れられた格好となった。ただし、企業側の委員が同時に求めていた「レビューの有無を開示すること」との記述の削除は認められなかった。企業としては、「開示」を梃子(てこ)にしたレビュー実施のプレッシャーは依然として存在することに留意すべきだろう。

今後の流れとしては、まず四半期報告書の廃止(第1・第3四半期)などに関する金融証券取引法の改正案が今年の通常国会(1月23日~の見込み)に提出され、その成立を受けて東証が証券取引所規制の改正に着手するものとみられる。改正項目を一覧にすると下表のとおりとなる。

報告書への明示 「金融証券取引法」関連事項 「証券取引所規則」関連事項
前回報告書(2022/6) ・上場企業について、法令上の四半期開示義務(第1・第3四半期)を廃止する ・四半期開示を四半期決算短信に「一本化」する
今回報告書(2022/12) ・有価証券報告書の記載内容に重要な変更があった場合、臨時報告書の提出事由とする
・上場企業の半期報告書について、第2四半期報告書と同程度の記載内容と監査人のレビューを求め、提出期限を決算後45日以内とする
・非上場企業は、上場企業に義務付けられる半期報告書の枠組みを選択可能とする
・半期報告書及び臨時報告書の公衆縦覧期間を5年間に延長する
・投資家の要望が特に強い事項(セグメント情報、キャッシュ・フローの情報等)を四半期決算短信の開示内容に追加する
・四半期決算短信については、監査人によるレビューを一律には義務付けない
・レビューの有無を四半期決算短信において開示する
・会計不正が起こった場合や企業の内部統制の不備が判明した場合には、一定期間、監査人によるレビューを義務付ける

※DWG報告書に関するニュース・第一弾は「DWG報告第一弾 SSBJがサステナビリティ開示基準開発へ」参照)

2023/01/10 DWG報告第一弾 SSBJがサステナビリティ開示基準開発へ

日本の非財務開示のルールを定めるSSBJ(サステナビリティ基準委員会)が、SSBJという組織の法令上の位置付けやISSB(国際サステナビリティ基準審議会)が開発を進めるIFRSサステナビリティ開示基準の公表時期などを踏まえ、いよいよ日本のサステナビリティ開示基準の開発に着手する。・・・

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2023/01/10 DWG報告第一弾 SSBJがサステナビリティ開示基準開発へ(会員限定)

日本の非財務開示のルールを定めるSSBJ(サステナビリティ基準委員会)が、SSBJという組織の法令上の位置付けやISSB(国際サステナビリティ基準審議会)が開発を進めるIFRSサステナビリティ開示基準の公表時期などを踏まえ、いよいよ日本のサステナビリティ開示基準の開発に着手する。

SSBJ : 日本における非財務開示の基準を作成する団体。IFRS(国際財務報告基準)の母体であるIFRS財団が「国際サステナビリティ基準審議会(ISSB=International Sustainability Standards Board)」を設立し、非財務開示の国際的な基準「サステナビリティ報告基準」を策定することを受け、日本では財務会計基準機構(FASF)が母体となり、IFRS財団におけるISSBに相当するSSBJ(Sustainability Standards Board of Japan)が設立された。
ISSB : International Sustainability Standards Board(国際サステナビリティ基準審議会)。資本市場向けのサステナビリティ開示の包括的なグローバル・ベースラインを開発するため、IFRS財団が2021年11月に設立した団体。

既にSSBJは、近い将来において日本のサステナビリティ開示基準をSSBJが開発することとなった場合、迅速に基準開発に着手できるようにするため、同基準の開発方針の検討を開始している。具体的には、2022年11月24日に「サステナビリティ基準委員会の運営方針」を公表、同方針で「日本基準の開発にあたっては、高品質かつ国際的に整合性のある基準を考慮し基準開発を行う」との方針を打ち出している。特に、「ISSB(国際サステナビリティ基準審議会)が開発するIFRSサステナビリティ開示基準の内容と整合性のあるものとすることが市場関係者にとって有用である」とし、SSBJはISSBのボードスタッフと継続的に対話を行い、ISSBにおける審議の状況を注視している。

ただ、SSBJが日本でサステナビリティ開示基準を開発するためには、当該基準を「法令(金融商品取引法)」の枠組みの中に位置付けることが必要になる。現行の金融商品取引法では、会計基準設定主体に対して5つの要件(①独立性、②偏りのない多数の者からの継続的な資金提供、③高い専門性を備えた者による合議制の機関の存在、④基準設定における公正かつ誠実な業務運営、⑤経営環境及び会社実務の変化への対応並びに国際的収れんの観点からの継続的な検討)を課しており、これらの要件を満たす団体が開発する会計基準についてのみ、金融庁長官が告示指定することになっている。企業会計基準委員会(ASBJ)が開発する企業会計基準はこの仕組みに則って告示指定されている。

告示指定 : 行政機関等がある事項を広く国民・市民に周知させる行為のこと。告示は法令や条例等に基づいて行われる。なお、告示と類似する行為に「公示」があるが、公示は法令や条例等に基づかない行為であるため、法的効果はない。

同じくサステナビリティ開示基準の開発においてもSSBJの法令上の位置付けが問題となるが(2022年10月7日のニュース「非財務開示ルールが3種類に?」の上から4段落目参照)、金融庁・金融審議会のディスクロージャーワーキング・グループが12月27日に公表した「報告書(14ページの最終段落参照)」には、SSBJは日本基準の設定主体として、ASBJと同様に「独立性」など上記金商法令上の5つの要件を満たす旨の見解が明記された。これを受け、今後SSBJはASBJと並ぶ「基準の設定主体」として法令上の位置付けが明確化されることになる。

報告書の確定に先立ち、12月21日には財務会計基準機構(FASF)に設置されたサステナビリティ基準諮問会議が開催され、SSBJの法令上の位置付けの検討状況や、ISSBで再審議されている「サステナビリティ関連財務情報の開示に関する全般的要求事項」(S1基準案)及び「気候関連開示」(S2基準案)の議論の状況を踏まえ(S1基準案については【特集】ISSB公開草案・前編、S2基準案については同後編参照)、上記SSBJの運営方針に従い、IFRSサステナビリティ開示基準の内容と“整合的な”開示基準開発に着手することが明らかにされている。近く行われるであろう金融庁長官の告示以降、日本におけるサステナビリティ開示基準の開発も一気に加速することになりそうだ。

2022/12/31 【2023年1月の課題】ISS、グラスルイスの2023年議決権行使助言ポリシーを踏まえた経営課題への取り組み

2023年1月の課題

議決権行使助言会社大手のISSおよびグラスルイスの2023年版議決権行使助言ポリシーの内容が明らかになりました。両ポリシーは機関投資家(特にグローバル機関投資家)の議決権行使判断に大きな影響を与えるのみならず、経営陣が取り組むべきテーマを示唆しているとも言えます。両ポリシーの内容を踏まえたうえで、自社の新年度の経営課題を設定するとともに、取り組みの方向性について考えてみてください。

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2022/12/29 【役員会 Good&Bad発言集】名刺やメールアドレスの貸与

ITソリューション業務をメインとしているX社ではマンパワーが不足しており、案件によっては外注業者の活用が必須となっています。X社の取締役会で職務権限表の改訂の決議をする際に、職務の項目欄に「名刺貸与」「メールアドレス貸与」があることに気付いた監査役より当該職務の内容について質問があり、管理担当取締役より「外注業者が当社の名刺やメールアドレスを使って顧客対応するときに必要となる職務です。」との回答が行われました。これに関して次の4人が下記の発言を行いました。誰の発言がGood発言でしょうか?

営業担当取締役A:「顧客に対してワンチームをアピールするために外注業者への名刺貸与やメールアドレスの付与は必須であり、この業界では珍しい話ではありません。」

社外取締役B:「外注業者に無断で当社の社員であるかのような名刺を作られるよりは、当社が名刺を作ってあげることで当社のコントロール下に置くことができるのでいいと思います。」

監査役C:「契約で再委託が禁止されている顧客に再委託がばれないようにするための名刺貸与ではないかが気になっています。」

取締役D:「外注先にメールアドレスを付与してあげれば、社外への情報流出を防ぐことができます。」

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2022/12/29 【役員会 Good&Bad発言集】名刺やメールアドレスの貸与(会員限定)

<解説>
IT業界で目立つ再委託禁止条項の潜脱

IT業界では多重下請構造が問題視されています。なぜなら、中抜きだけをする業者が介在することで全体の原価が高くなってしまうだけでなく、当事者が増えることで責任もあいまいになり、実際に手を動かす現場に回ってくるお金は中抜きで少なくなっていることからクオリティも低下しがちであるからです。それを防止するため、発注元は委託先に対して再委託禁止(あるいは再委託時には発注元の承認が必要)の条項を設けることが少なくありません。とくに国が試験、研究、調査、システム開発等を委託する場合には、不適切な再委託により経済的合理性や効率性を損なうことのないよう、契約に係る業務の全部を一括して第三者に委託すること(いわゆる“丸投げ”)が禁止されるとともに、契約の相手方が再委託を行う場合には、国は、あらかじめ再委託を行う合理的理由、再委託の相手方が再委託される業務を履行する能力等について審査し、承認を行うなどとされています(財務大臣通知「公共調達の適正化について」(平成18年8月25日)を参照)。

多重下請構造 : 業務を受注した企業(元請け)が別の下請企業に業務を委託し、さらにその下請企業が別の下請け企業に業務を委託することにより、実際に業務を遂行する者との間に複数の企業が介在すること

しかし、実際には再委託禁止(あるいは再委託時には顧客の承認が必要)の条項を潜脱するような実務が横行しがちと言えます。その理由として、再委託禁止条項の潜脱には元請けと顧客の双方にメリットがあるからです。

IT業界は参入障壁が小さいことから、小規模の事業者が乱立している業界です。そのような中で、元請けが下請けを使うメリットは次のとおりです。
・元請けにリソース(現場で「手を動かす」要員や知見)が不足している。
・元請けには信用力の高い大手企業が就くことが多く、一般的には元請けの従業員は下請けの従業員よりも給与が高いため、元請けとしては自ら「手を動かす」のではなく下請けに現場の業務をやらせて、元請けは高付加価値業務(顧客対応とプロジェクト管理)に専念することで会社がこなす案件数を増やした方が規模の利益も追及でき会社の利益が増える。
・元請けとしては単に協力企業を紹介しただけではうまみ(利益)が少ない。自らが顧客との契約の当事者となり、案件を差配して原価をコントロールすること(いわゆる下請けたたき)で利益を最大化できる(これがIT業界で下請法違反が絶えない理由となっています)。

もし、顧客から再委託の禁止や再委託時の事前承認を求められても、元請けには次のような理由から顧客に対して再委託の説明や承認の申請を回避したい動機があると言えます。
・顧客に対してはワンチームとして見せたい(リソースが不足していることを顧客にばれるのを回避したい)。
・元請けは一般的に情報セキュリティの体制が充実しているものの、下請け先は十分でない。そのため、元請けが顧客に対して再委託の説明や承認の申請をしようとすると、下請けにおける情報セキュリティの体制が不十分であることを指摘される可能性がある。

一方、顧客は、次のような理由から末端の下請けと直接契約をすることを避ける傾向にあります。
・業務委託の規模に応じてそれなりの業歴・資本金・従業員数・情報セキュリティの水準などを求める発注元も少なくないが、末端の下請けでは当該水準を満たさないことが多い(信用力不足)。
・開発期間が長期になればなるほど、資金力に乏しい末端の下請けは前金や中間金を要求しがちであり、顧客側は後払いを要求しがちである(支払条件のアンマッチ)。
・万が一、プロジェクトが遅延した場合、元請けが大手企業であれば他の協力企業を動員するなどしてなんとか期限に間に合わせるよう尽力してもらえる可能性が高いが、中小企業が元請けだと協力企業の動員が難しく遅延の挽回が困難になりがちである。その場合、顧客の内部で「こんな中小企業に業務を委託することを決めたのは誰か」といった責任論に発展する可能性がある。

このように元請け側・顧客側の双方にメリットがあることから、元請け側は自社リソースだけでは遂行できない業務を請け、再委託禁止条項があるにもかかわらず顧客にばれないように業務の再委託をし(再委託禁止条項の潜脱)、顧客も見て見ぬふりをしがちと言えます。

そして、再委託禁止条項の潜脱に使われやすいのが名刺貸与(現場で業務に携わる下請け業者に元請けの企業名やロゴが付された名刺を利用させ、当該名刺を受け取った顧客に、さも元請け企業の従業員が現場で実務に従事しているかのように誤解させること)とメールアドレスの貸与(現場で業務に携わる下請け業者に元請け企業のドメイン名が付されたメールアドレスを発行し、当該業務に限り使用を認めること)です。名刺に関しては顧客の総務部門、メールアドレスに関しては顧客のIT部門が関与するのが通常であることから、顧客の内部で複数の部門が再委託禁止条項の潜脱にかかわることになります(リモート会議でよく見受けられるバーチャル背景名刺は顧客のIT部門の関与なしに行われるケースが大半と思われます)。メールアドレスを付与された下請けの従業員は当該メールアドレスと整合する肩書き(元請けの従業員であるかのような肩書き)でメールを送信することになります。

再委託が禁止されている中で外注先に再委託をしてしまうと、顧客との契約における再委託禁止条項違反にとどまらず、次のような問題を引き起こします。
・情報セキュリティの劣化(再委託先ではPマークなどを取得していない可能性)
・顧客が認識している範囲の外に個人情報やノウハウなどが流出してしまう。
・下請け側が偽装請負(書類上、形式的には請負(委託)契約であるものの、実態は労働者派遣であるものを言う)の問題に巻き込まれかねない。

行政案件でなければ、再委託禁止条項違反が発覚しても、案件が無事に遂行されている限りそれほど大事にはならないかもしれません。再委託禁止条項違反が問題として浮上しやすいのは、情報漏洩などで責任問題に発展したときです。2022年6月に発生した尼崎市のUSB紛失事件はいまだ記憶に新しいところですが、同事件でもUSBを紛失したのはBIPROGY(旧日本ユニシス)が再委託禁止条項に違反して委託した先からさらに委託されていた会社(すなわち孫請け)の従業員でした(同事件の詳細は(【失敗学第102回】BIPROGYの事例 を参照)。

業務を委託する際、あるいは元請け、下請け等で受託する際には、再委託禁止条項の有無や違反がないことの確認を怠らないようにしましょう(下請け側では顧客と元請けの契約内容をうかがい知ることは困難ですが、名刺やメールアドレスを貸与された場合は再委託禁止条項に違反している可能性が高いと考えるべきです)。

さて、以上の解説をご覧いただければ、誰の発言がGOOD発言か、もうお分かりですね。正解は以下のとおり。

<正解>
GOOD発言はこちら

監査役C:「契約で再委託が禁止されている顧客に再委託がばれないようにするための名刺貸与ではないかが気になっています。」
コメント:監査役Cの発言は、『名刺貸与』という行為そのものではなく、その裏に潜む『契約違反の可能性』に気付いた点でGood発言です。監査役としては、この問題の存在に気付いた以上、名刺貸与やメールアドレス貸与に関する過去の稟議書を閲覧し、顧客との契約内容と照合して、再委託禁止案件ではないかを監査して欲しいところです。

BAD発言はこちら

営業担当取締役A:「顧客に対してワンチームをアピールするために外注業者への名刺貸与やメールアドレスの付与は必須であり、この業界では珍しい話ではありません。」
コメント:顧客に対してワンチームをアピールするのは結構なことですが、顧客の信頼を裏切ることは許される行為ではありません。営業担当取締役Aの発言は“業界の常識”にどっぷり浸かったBad発言です。

社外取締役B:「外注業者に無断で当社の社員であるかのような名刺を作られるよりは、当社が名刺を作ってあげることで当社のコントロール下に置くことができるのでいいと思います。」
コメント:確かに外注業者に無断で当社の社員であるかのような名刺を作られるのは論外ですが、自社が顧客の信頼を裏切る行為に手を染めるのも許されるものではありません。社外取締役Bの発言には、『あくまで顧客と当社との契約違反にならない限り』という条件が不足しており、不適切な発言と言わざるを得ません。

取締役D:「外注先にメールアドレスを付与してあげれば、社外への情報流出を防ぐことができます。」
コメント:いくら下請け先の従業員にメールアドレスを付与したところで、当該下請け先の従業員は「社外の人間」であることに変わりはありません。顧客(以下、顧客に個人情報を提供した個人も含む)が再委託を同意していないのに、元請け先が顧客に無断で再委託先の従業員に自社ドメインのメールアドレスを付与すれば、顧客は元請けに対してだけ情報を開示したつもりが、顧客が同意していない第三者がその情報を受け取っていた(情報の社外流出)という事態になってしまいます。当社がメールアドレスを付与した先であれば大丈夫という取締役Dの発言には、『あくまで顧客と当社との契約違反にならない限り』という条件が不足しており、不適切な発言と言わざるを得ません。