上場会社の2022年3月期決算の定時株主総会のシーズンが終了した。今年もアクティストファンドを起点とした株主提案がいくつも見られたが、提案資料の内容や会社経営に与えたインパクトの大きさという観点からは、Oasis Management Company Ltd.(以下、オアシス)のフジテックに対するキャンペーンの残した爪痕はすさまじいものがあった。
もともとオアシスは、2020年2月に東京ドームに対して示した業務改善計画案「より良い東京ドームへ」が「エビデンスが豊富でリアリティに満ちている」と高い評価を受けたように(「より良い東京ドームへ」については、2020年10月28日のニュース「アクティビストの業務改善提案への対応が遅れ社長の解任請求へ」を参照)、その調査・提案能力は折り紙付きだった。今回の「フジテックを守るために」(2022年5月19日公表)ではその能力にさらに磨きがかかっており、アクティビストファンドの存在・役割が新たなステージに入ったことを示すシンボリックなレポートとして市場関係者や投資家から注目されている。
オアシスが「フジテックを守るために」の中で指摘していたのが、フジテック社長内山氏による公私混同だ。具体的には下記のとおり。
(1)フジテックが内山家の私的利用のために超高級マンションを取得した
(2)内山社長が保有する法人による不動産投資の失敗を補填するために、当該不動産をフジテックが買い取った
(3)フジテックは内山家が保有する法人の抱える債務に保証を付けたほか、内山社長が保有する法人に11年間にわたり担保なしにフジテックの手許現金の2割にも及ぶ莫大な額の現金を貸し付けていた
(4)フジテックは内山家及び内山社長本人が保有する法人から、その保有不動産を賃借していた
(5)フジテックが保有する非公開の会社の株式を、入札や株主への開示なしに内山社長が保有する法人に売却した
(6)内山社長の自宅の庭の手入れにフジテック社員を利用
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オアシスはこれらを理由に、2022年6月23日の定時株主総会で内山高一社長の取締役選任議案に反対票を投じることを他の株主に推奨するキャンペーンを行った。
上記の反対理由のうち特に注目されるのが、(1)と(6)だ(表中の赤字部分)。(1)は不動産物件「ドムス元麻布104号室」に関する疑義である。当該物件は港区元麻布にあるヴィンテージマンションで、104号室だけで面積は426.44平方メートルもある。当該物件はフジテックが2013年2月に取得し、2021年6月に内山社長の息子である内山雄介氏が代表を務めるサントに売却した。その間、当該物件には内山社長の妻と息子が居住(以下、不動産登記簿や法人登記簿に権利者や代表者の居住地として記載されていることを指す)している(なお、2人の居住開始時期には若干のずれがある)。オアシスでは、ドムス元麻布の他の物件の取引事例等を参考に、現在の不動産市況での推定価格は730百万円程度としており、賃料相場は年間30百万円程度と推計している。
オアシスがフジテック側と事前(決算日より前)に接触した際、フジテックが所有するドムス元麻布104号室に内山高一社長の妻と息子が居住していることを踏まえ、内山家とドムス元麻布104号室はどういった関係にあるのか尋ねたところ、2022年2月上旬にフジテックIRより「首都圏での当社ステータス向上に向けたトップセールス強化を目的に、社用迎賓施設及び役員社宅として運用していたが、当該目的が達成できたこと、また、社用迎賓施設としての利用頻度の低下及び税務上の観点から当該低下に伴う費用負担の方法を検討する必要があった。」との回答があったことを明かしている(「フジテックを守るために」の19ページを参照)。
内山家とドムス元麻布104号室の関係についてオアシスが「フジテックを守るために」で明らかにした疑問点と、それに対する回答としてフジテックが2022年5月20日にリリースした説明文およびオアシスが2022年6月7日にリリースした「フジテックの調査報告書(後述)に対する反論」で示したコメントをまとめると下表のとおり。
「フジテックを守るために」(2022年5月19日公表)での
オアシスの疑問 |
フジテックによるリリース
(2022年5月20日公表) |
フジテックの調査報告書に対するオアシスの反論
(2022年6月7日公表) |
●賃料について
・内山家は賃料を支払っているのか。
・もし、内山家が無償あるいは割引での住居提供という恩恵を受けているならば、それらは税務当局に報告されているのだろうか。
・もし、内山家が無償あるいは割引での住居提供という恩恵を受けていたのならば、当該取引が有価証券報告書の関連当事者取引に記載されていない理由は何か。
●社用迎賓施設および役員の社宅として使用していたと回答しているが、仮にこの主張が正しいとすると、以下のような複数の疑問が生じる。
・なぜ、フジテックにこのような超高級マンションが営業活動の推進および宿泊先として必要なのか?
・内山社長の妻はフジテックの社員ではないにも関わらず、フジテックが同物件の取得直後、同氏が居住地として使用しているのはなぜなのか?
・内山雄介氏は自身の法人であるサント株式会社の登記簿から、2015年からこのマンションを居住地として使用していることが分かるが、雄介氏がその当時役員でもなく、フジテックの従業員の一人に過ぎないのに、なぜ迎賓施設及び、役員の宿泊先にいるのか。
・内山雄介氏は2015年3月期時点で単なる若手社員に過ぎないにもかかわらず、なぜトップセールスの営業拠点だというこのマンションで生活しなければならなかったのか?
・2017年3月期~2019年3月期は、内山雄介氏は千葉の支店長に就いていた。マンションから千葉までの所要時間は公共交通機関で90分。なぜ、フジテックはそんなにも遠くのマンションを雄介氏に提供したのだろうか? |
当社では、オアシスが主張している「当社と当社代表取締役である内山高一氏及びその関係会社との間での関連当事者取引その他行為についての企業統治上の問題」は、「全くあたらない又は事実誤認に基づく主張であると認識」しており、「本取引は、いずれも所定の法令・手続等に従ってなされた適法かつ適切な取引及び行為であり、企業統治上も問題はない」と考えている。 |
5月20日のリリースに記載されている内容は取締役会の承認を受けたものではなく、その時点で調査はまだ継続中であったはず。 |
| 「本取引のうち、オアシスが新たに挙げている事項についても、当社にて至急で調査」したものの、「事実ではないと確認」している。 |
オアシスが関連当事者取引を極めて多岐にわたって分析した結果を発表したのは5月19日であり、それに対して十分な調査を行うには時間が足りず1日ではとても終わるものではなかったはず。 |
「フジテックを守るために」が公表されたのは2022年5月19日であり、フジテックはその翌日(2022年5月20日)に反論のリリースを出している。その反応の速さは評価されるものの、オアシスが指摘しているとおり、内容に具体性がなく、説得力に欠けていたことは否めない。2022年4月1日に開始された西村あさひ法律事務所の平尾弁護士による調査の結果がフジテックの取締役会に報告されたのは2022年5月29日であり、2022年5月20日の時点では当該調査が進行中であったことから、本来は「調査中」と回答すべきであった。もし本当に「本取引は、いずれも所定の法令・手続等に従ってなされた適法かつ適切な取引及び行為であり、企業統治上も問題はない」と考えていたのであれば、そもそも弁護士に調査を依頼する必要はないはずだ。結局、その矛盾をオアシスに突かれ、「(5月20日のリリースを主導したであろう)社長に対する取締役会のガバナンスが効いていない」との反論を受けることとなった。オアシスから初めて接触があったのは期末前であるため、フジテックには、危機管理として、オアシスがキャンペーンを張った場合の対応策を準備しておく時間はあったはずだ。
フジテックが外部の専門家(西村あさひ法律事務所の平尾弁護士)による調査結果を公表したのは2022年5月30日と、遅きに失した感は否めない(フジテックのリリースはこちら)。調査結果の内容とこれに対するオアシスの反論は下表のとおり。
| 項目 |
西村あさひ法律事務所の平尾弁護士による調査結果(2022年5月29日付) |
オアシスの反論 |
| 元麻布物件を巡る経緯 |
当時、フジテックは、首都圏への本格進出を企図しており、首都圏でのステータス向上に向けたトップセールスを行うためのレセプション施設としてドムス元麻布104号室を活用することを考えていた。また、フジテックは、レセプション活動を積極的に行うため、レセプションのホストである代表取締役社長の居所をレセプションエリアに隣接して設ける必要があると判断し、ドムス元麻布104号室をレセプションエリアと居住用エリアに区分けし、内山高一社長にドムス元麻布104号室の居住用エリアヘの居住を要請した。 |
調査報告書は、フジテックが超高級マンションを購入した上で、接待の主催者が「レセプションエリア」の隣に住む必要があるため、内山社長に居住することを依頼したというフジテックの説明をそっくりそのまま受け入れています。
調査報告書では、なぜかこの点に疑問が持たれていません。社長が賓客を接待する場所そのものに住む必要性は全くなく、これは一般的な慣習ではありません。
他の企業には必要ないのに、なぜフジテックには一等地の超高級マンションが迎賓施設として必要だったのでしょうか?
調査報告書では、住居エリアとレセプションエリアを分けるという主張の妥当性を評価せず鵜呑みにして受け入れています。
調査報告書では、日本の他の企業では行われていない極めて異例な超高級マンションの購入理由がそもそも合理的であったかどうかについては評価されていません。
私たちは、日本で何百社もの企業に会ってきました。営業強化のために、一等地にある大きな超高級マンションを買ってそこに社長が住むことが必要と判断した企業はありませんでした。
内山社長は、自分の立場と権限を濫用して、営業強化のためと称して、自分が住みたかったマンションをフジテックに買わせたのでしょう。 |
| 利益相反決議 |
ドムス元麻布104号室取得の件は、2013年2月8日の取締役会に諮られ、利益相反の可能性がある内山高一社長が参加しない形で取締役会決議がなされた。 |
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| 元麻布物件のレセプション用エリア |
フジテックは、2013年(平成25年)の取得以降、ドムス元麻布104号室のレセプション用エリアを継続的にレセプション施設として使用しており、そのことは客観資料からも確認できる。 |
報告書は、このアパートが常に迎賓施設として使用されていた証拠があると主張していますが、どのような証拠が集められたのか、迎賓施設としてドムス元麻布が何回使用されたのか、何ら詳細が記載されていません。
マンションのいわゆる「レセプションエリア」について、以下のような詳細なデータを提供していただけますでしょうか。
a. レセプションエリアに使用されていた面積(単位:平方メートル)は?
b. 居住エリアに使用されていた面積(単位:平方メートル)は?
c. 居住エリアとレセプションエリアの区分けを示す写真や間取り図を提示することはできますか?
d. 2013年から継続してレセプションエリアを事業目的に使用していたことを証明する「客観資料」とは一体何ですか?
e. レセプションエリアはどれくらいの頻度でお客様にどのようにご利用いただいていたのでしょうか?
f. 内山家は、レセプションゾーンを業務で使用していないときは、個人的な目的で使用していたのでしょうか?
g. レセプションゾーンで具体的にどのお客さまをもてなしたか、記録はありますか?
h. 内山家とフジテックの間で、光熱費等はどのように分けられていたのでしょうか? |
| 元麻布物件の居住用エリア |
ドムス元麻布104号室の居住用エリアには、内山高一社長及びその家族が居住していた。 |
・内山社長一家のこのドムス元麻布での生活が、客観的に考えて必要であったかどうかについて、調査報告書では全く検証・評価されていません。
・なぜこの取引はコーポレート・ガバナンス上の観点から問題がないのでしょうか? |
| 元麻布物件の居住用エリアの賃料 |
内山高一社長及びその家族は、フジテックの要請を受け、所定の居住用エリアに係る家賃を支払い、ドムス元麻布104号室の居住用エリアに居住することとした。ドムス元麻布104号室の居住用エリアの賃料は、所得税法基本通達において、役員に対して貸与した住宅等に係る通常の賃料とされる金額を踏まえた上で算出した。 |
・内山一家が、この居住エリアに対して支払った賃料はいくらでしょうか?
・フジテックは、この地域の家賃相場をどの程度であると考えているのでしょうか?
・なぜフジテックは、内山家の支払った家賃が所得税法上の“豪華社宅”の規制を免れると考えているのでしょうか? |
| 調査手法 |
社外取締役の指示に従い、フジテックから提供された取締役会議事録等の関係資料の精査確認及びフジテック関係者に対する聴取 |
本調査は、電子メールを詳細に分析したとも、第三者に依頼して取引や関連する評価の妥当性を評価したとも思われません。また、他に誰にヒアリングを行ったか、何人にヒアリングを行ったかについても何ら触れられていません。そのような詳細な分析がなされた記載がないことは、調査は結論ありきで行われたものであり、調査に信頼性がないことを示しています。 |
上表のとおり、オアシスは「調査は結論ありきで行われたもの」として、調査そのものの信頼性を否定しているが、オアシス側からこのような反論が出て来ることは当然予想されたにもかかわらず、フジテックの社外取締役がなぜ本調査の調査主体に同社の顧問弁護士と同じ法律事務所に属する弁護士を指名したのか、疑問を抱かざるを得ないところだ。顧問弁護士そのものではないにしても、調査主体としての適格性を問われることは目に見えており、危機管理の観点から不適切と言われても仕方ないだろう。社外取締役としては、オアシスがキャンペーンを張った場合に備え、完全な外部の第三者の専門家を選任して早めに調査を依頼し、迅速に報告書を公表できるように準備しておくべきだった。
また、フジテックは5月30日のリリース「当社株主による主張に対する取締役会決議に関するお知らせ」において、「2022年3月14日以降、本日までに、代表取締役である内山高一氏が2回、また、2名の当社社外取締役が各々1回の面談」を当社株主(オアシス)との間で実施する等、「建設的な対話を図るべく、積極的なエンゲージメントを行っておりました」とし、同社が投資家との対話に積極的だったことをアピールしたものの、逆にオアシス側から対話に消極的な同社の姿勢(*)を暴露され、結果として藪蛇となってしまった。
* オアシス側のリリースによると次のとおり。
「オアシスは、フジテックのガバナンスと経営を改善するために株主としてエンゲージメントしようと、何年も前からフジテックに手紙を送り、内山社長との面会を求めてきました。しかし、2022年3月にオアシスが関連者間取引に関する詳細な質問リストを送ってから、ようやくフジテックはオアシスが内山社長と面会する段取りを整えました。その後、内山社長は2度オアシスと面会しましたが、その際に、関連当事者取引の話題を提起しないこと、西村あさひ法律事務所の藤本弁護士を同席させるという厳しい条件が付されました。その際、オアシスの質問に対して、藤本弁護士や他の役員が答えることが多く、内山社長の意見はほとんど聞かれませんでした。オアシスが出席したフジテック社外取締役との他の会議でも、藤本氏が再び出席し、頻繁に介入していたことも併せて、他の株主にお知らせしておきたく存じます。」
上記のとおり、オアシスが「フジテックを守るために」の中で内山社長による公私混同の例として挙げた「(6)内山社長の自宅の庭の手入れにフジテック社員を利用」は、掲載された“庭師”の写真が目を引く印象的な告発となっている(52ページ~58ページ)。フジテックの社員が同社の制服を着て西宮の内山社長の自宅を掃除して茨木事業所に戻る様子が写真に収められており、これに対しオアシスは、「フジテックの従業員が内山家の私的な仕事を行うことは非常に不適切」である旨指摘している。この写真は同社における内山社長の公私混同疑惑を象徴的に伝える1枚として、株主の投票行動(内山社長の再選議案への反対票の投票)に大きな影響を与えたものと思われる。
上記西村あさひ法律事務所の弁護士の調査結果によると「内山高一氏は、フジテックとは関係なく、当該個人に対して、実費等を支払って自宅の庭の手入れを依頼していた。当該個人による庭の手入れは、2018年(平成30年)4月頃から開始して現在も継続しているところ、フジテックと当該個人との間の雇用関係は、2021年(令和3年)6月30日をもって終了しており、また、当該個人がフジテックのアルバイトであった期間中(2016年(平成 28年)6月1日~2021年(令和3年)6月30日)、当該個人は、あくまでアルバイトの勤務時間外に庭の手入れを行っていた。なお、本件詳細資料の写真に写っている軽トラックは、当該個人の所有物である。」とのことだが、仮に、内山社長の主張どおり軽トラックが個人所有のもので、庭の手入れがフジテックの勤務時間外に行われたとしても、なぜ作業終了後にフジテックの茨木事業所に軽トラックで戻る必要があったのかとの疑問は残る。この点はオアシスも、「内山社長の私邸で庭の掃除をした後、車でフジテックの事業所に戻っています。フジテックの勤務時間はいつからいつだったのでしょうか? 2018年4月から2021年6月まで、庭師はフジテックでいつ何時間、何日働いていたのでしょうか?」と問いかけている。
「フジテックを守るために」における詳細な調査と理詰めの反論が功を奏し、オアシスによる「株主の皆様は、内山高一氏の取締役再任に反対票を投じ、フジテックおよび日本全体にコーポレート・ガバナンスの重要性を強く訴えるメッセージを送っていただくようお願い申し上げます。」との呼びかけはフジテックの株主の多くに知られるところとなる。フジテックは、6月8日にガバナンス体制の強化策(リリースはこちら)、6月17日に第三者委員会による追加調査の実施(リリースはこちら)を公表して挽回を図ろうとするも、既に時機を逸していた。
オアシスのキャンペーンが浸透し、フジテックの対応が後手に回り続けた結果、フジテックは内山高一社長の取締役再任議案の取り下げを決断することになる。しかも、取り下げをしたのは定時株主総会の当日朝であり、異例の事態に驚いた株主も多かったことだろう。票読みの結果(*)、内山高一氏の取締役再選は困難との結論になり、「否決」という結果を残さないために議案を取り下げたように見えるが、フジテックは「第三者委員会の調査結果の報告を受けるまでの間、内山高一氏は当社の取締役に就任しない」「当該調査の結果、当社の一部株主より指摘を受けた関速当事者取引その他行為につき問題のないことが確認された際には、改めて、同氏の取締役就任の是非を株主の皆様に諮るべき」との考えによるものと説明している。内山氏の取締役復帰への道筋を残すための一手だったと言えよう。
* フジテックが議案を取り下げたことから、内山社長の取締役再選議案に対して、実際にどの程度の反対票が集まっていたのかは、外部からはうかがい知ることはできない。ただ、2022年3月期の事業報告によると、内山社長の資産管理会社である株式会社ウチヤマ・インターナショナルの持分比率6.21%はオアシスの7.54%を下回っている。この点、本件は持株比率の少ない創業家の立場の危うさを感じさせる事例と言えよう。
さらに世間を驚かせたのは、フジテックにおける株主総会後の初の取締役会で、取締役を退任したばかりの内山高一氏の会長就任が決議されたことだ(フジテックのリリースはこちら)。非取締役の会長職は株主に対してなんら責任を負わず、その一方で、“院政”により社内への影響力を行使することで現経営陣による事業運営の足かせになりかねないため、相談役や顧問職と並び投資家から廃止を求められるのが近年のトレンドとなっている。このような逆風下であえて内山高一氏を会長職に選出したフジテックの取締役会に対しては、ガバナンスが機能していないのではないかとの疑念も生じる。オアシスが「フジテックを守る」ためにキャンペーンを張ったのに対し、社外取締役をはじめとするボードメンバーは「内山高一氏を守る」ことが行動原則になっているようにさえ見受けられる。こうした中、英国の投資ファンドのアセット・バリュー・インベスターズが「社外取締役が株主の利益のために行動したか疑問」として、社外取締役の責任を追及する構えを見せている。こうした事態においてこそ本領を発揮できない社外取締役は存在意義を問われるということであり、他社の社外取締役は同じ轍を踏まないようにしたいところだ。
第三者委員会は調査能力には自ずと限界がある。そもそも調査にあたっては会社側の協力が不可欠となるからだ。今後設置されるフジテックの第三者委員会に対しても、現役の会長をどこまで深く調査しきれるのか、疑問の声がある。また、報道によると、オアシスには複数の内部告発が寄せられている模様であり、今後、オアシスが内部告発等を元にフジテックに対して第二、第三の矢を放つことが当然予想される。そうなると、本事例はガバナンスが機能していない上場会社においてアクティビストファンドが内部告発の受け皿として機能しうる好例として位置づけられることになろう。こうした中、社外取締役が中心となり「ガバナンスが機能していないのではないか」といった疑念の声を払しょくできるのか、同社取締役会の対応が注目される。