3月決算会社の定時株主総会が集中する6月に突入した。定時株主総会では多くの役員の選・退任があるが、役員の選・退任に伴い役員報酬も見直し(改定)されることになる。その際、法定の報酬委員会がある指名委員会等設置会社(株主総会での役員報酬決議は不要)以外の会社で必ず確認しておく必要があるのが、報酬総額が株主総会で決議した枠(*)内に収まっているか、という点だ。
「そんなことは今更言われるまでもない」という声も聞こえてきそうだが、実はこの“役員報酬枠超え”は毎年のように起きている。特に注意すべきは「監査役」および「社外取締役」の報酬だ。
この1年間における上場会社の役員報酬枠超え事例としては、前澤工業(2021年8月3日のニュース「社外取締役増員がもたらすコンプラ違反」参照)、メディアスホールディングス(2021年8月27日のニュース「相次ぐ役員報酬の上限規制違反、今度は監査役報酬の超過が発覚」参照)、ビーブレイクシステムズのほか、直近では名証ネクスト市場に上場しているギガプライズがある。ギガプライズが2022年5月27日にリリースした「株主総会決議を超過する監査役報酬の支払について」によると、同社の監査役報酬の枠(総額)は月額2,000千円以内(20003年2月25日開催の株主総会において決議)とされているが、実際に支払った監査役報酬は2021年3月期(7月から3月までの9か月)が180円、2022年3月期が240千円であり、2023年3月期(4月分と5月分のみ)において40千円超過していたことが発覚した。同社のリリースのとおり、同社の“役員報酬枠超え”は2022年3月期にとどまらず、3年間にもわたっていた。適法性の監査を担う監査役が、自身への報酬に生じていた会社法違反を見逃していたことになる。
注目されるのは、これらの4社のうち前澤工業を除く3社で枠を超えていたのは「監査役」の報酬であり、前澤工業でも「社外取締役」という取締役の中でも別枠で決議が必要となる者の報酬であったということだ。逆に「社内取締役」の報酬枠超過事例は少なくともこの1年間では見当たらない。報酬枠超過事例が「監査役」や「社外取締役」に偏っている要因として、そもそも監査役の報酬枠や社外取締役の報酬枠は社内取締役の報酬枠よりも少ないのが通常であり、社内取締役に比べると増員・増額によってすぐに枠を超過しがちということが挙げられる。
監査役や社外取締役にとっては超過額への対応も気になるところだろう。結論から言えば、枠を超えて支払った部分は「無効」となるため、枠超え部分の報酬は返還を余儀なくされる。例えばギガプライズは監査役に対して超過部分について返還請求を行い、2022年5月26日までに返金を受けたとしている。
ギガプライズは再発防止のため監査役報酬の決定プロセスおよび上限枠の適正な金額設定について今後検討するとしているが、これを「名証ネクスト市場上場会社の例外的な事例」と看過してはならない。上場会社各社はいま一度、役員報酬が株主総会の決議の枠の範囲内であることを確認するとともに、役員の増員(特に社外役員)や報酬の増額時には改めて株主総会で決議した枠の範囲内に収まっていることを確認しておくべきだ。また、そもそも報酬総額が上限(枠)に迫っている会社では、株主総会で当該枠を広げる変更議案の提出を検討する必要があろう。

