2022/05/11 社外取締役の報酬改革などが俎上に 第3期CGS研究会の主要論点

経済産業省は2021年6月のコーポレートガバナンス・コード(以下、CGコード)の改訂を踏まえ、「第3期」となるコーポレート・ガバナンス・システム研究会(以下、CGS研究会)を同年11月16日から開始し、CGコードの主要原則を実践するための実務指針であるコーポレート・ガバナンス・システム・ガイドライン(以下、CGSガイドライン)の改訂に向けた検討を重ねている。これまで開催された4回の会合における議論をベースに、2022年6月には報告書およびCGSガイドラインの改訂版が公表される予定となっている。

上述のとおりCGSガイドラインはCGコードの実務指針であり、現行CGSガイドライン(2018年9月改訂版)の“序文”には、「コーポレートガバナンス・コードにより示された実効的なコーポレートガバナンスの実現に資する主要な原則を企業が実践するに当たって考えるべき内容をコーポレートガバナンス・コードと整合性を保ちつつ示す」とのくだりがある(「本ガイドラインの位置づけ」の最終段落参照)。したがって、CGSガイドラインおよびCGS研究会における議論を理解することは、現行CGコードへの対応の質の向上につながるものと考えられる。

そこで当フォーラムでは、これまでのCGS研究会(第3期)において議論されてきたコーポレートガバナンスの重要論点を抽出し、それに関連するCGコードと対比したうえで、留意点を整理してみた。自社のガバナンス改善に向けた取り組みを検討する際に活用していただきたい。・・・

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2022/05/11 社外取締役の報酬改革などが俎上に 第3期CGS研究会の主要論点(会員限定)

経済産業省は2021年6月のコーポレートガバナンス・コード(以下、CGコード)の改訂を踏まえ、「第3期」となるコーポレート・ガバナンス・システム研究会(以下、CGS研究会)を同年11月16日から開始し、CGコードの主要原則を実践するための実務指針であるコーポレート・ガバナンス・システム・ガイドライン(以下、CGSガイドライン)の改訂に向けた検討を重ねている。これまで開催された4回の会合における議論をベースに、2022年6月には報告書およびCGSガイドラインの改訂版が公表される予定となっている。

上述のとおりCGSガイドラインはCGコードの実務指針であり、現行CGSガイドライン(2018年9月改訂版)の“序文”には、「コーポレートガバナンス・コードにより示された実効的なコーポレートガバナンスの実現に資する主要な原則を企業が実践するに当たって考えるべき内容をコーポレートガバナンス・コードと整合性を保ちつつ示す」とのくだりがある(「本ガイドラインの位置づけ」の最終段落参照)。したがって、CGSガイドラインおよびCGS研究会における議論を理解することは、現行CGコードへの対応の質の向上につながるものと考えられる。

そこで当フォーラムでは、これまでのCGS研究会(第3期)において議論されてきたコーポレートガバナンスの重要論点を抽出し、それに関連するCGコードと対比したうえで、留意点を整理してみた。自社のガバナンス改善に向けた取り組みを検討する際に活用していただきたい。
※「CGS研究会(第3期)での議論」は同研究会資料に基づき当フォーラムが主旨を要約・編集

経営戦略の策定
CGS研究会(第3期)での議論 関連するCGコード
取締役会は経営戦略やサステナビリティ課題について適切に議論すべきである。そのためには、必要に応じて専門委員会の設置・活用を検討すべきである。 原則4-1
取締役会は、会社の目指すところ(経営理念等)を確立し、戦略的な方向付けを行うことを主要な役割・責務の一つと捉え、具体的な経営戦略や経営計画等について建設的な議論を行うべきであり、重要な業務執行の決定を行う場合には、上記の戦略的な方向付けを踏まえるべきである。

CGS研究会では、戦略策定・審議に十分な時間を割けない、議論の質を向上させたいなどの問題意識から、サステナビリティや経営戦略について検討する際に委員会を活用する上場会社が増加していることが報告された。ただし、このような委員会を設置する場合、①経営・執行の機能を補完・強化するものか、あるいは②取締役会の機能を補完・強化するものか、位置付けを明確にすることが必要となろう。後者である場合、委員会の役割はあくまでも執行側が策定した素案に対する評価・意見にとどまるため、執行からの独立性が強く求められる。委員会のメンバー構成を決める際にもその点を意識することが不可欠となる。

インセンティブ報酬
CGS研究会(第3期)での議論 関連するCGコード
独立社外取締役は監督機能を果たす際、守りのみならず攻めの経営を導出する意識を持つべきである。そのために、独立社外取締役の役員報酬を適切な水準および構成とすべきである。 原則4-2①
取締役会は、経営陣の報酬が持続的な成長に向けた健全なインセンティブとして機能するよう、客観性・透明性ある手続に従い、報酬制度を設計し、具体的な報酬額を決定すべきである。その際、中長期的な業績と連動する報酬の割合や、現金報酬と自社株報酬との割合を適切に設定すべきである。

ガバナンス上、役員報酬には専ら経営陣がリスクテイクをすること、経営のスピードを上げることを促す役割が求められているが、CGS研究会では、社外取締役の報酬についても、社外取締役が企業価値向上に向けた当事者意識を持ち、株主目線を培うことのできるものとする必要があるとの指摘があった。国内機関投資家の多くは監督サイドの役員に対する変動報酬の付与には否定的だが、社外取締役に期待する機能・役割を明確化、高度化させるという意図が説得的であれば、それに応じた報酬制度が望ましいとの論調につながる可能性はあろう。

監督機能の強化
CGS研究会(第3期)での議論 関連するCGコード
上場会社は、自社の戦略や事業特性に応じた取締役会の在り方(モニタリング・ボードマネジメント・ボード)を検討し、これと整合性がとれた機関設計を選択すべきである。

モニタリング・ボード : 経営陣の監督を主たる役割・任務とする取締役会
マネジメント・ボード : 業務執行におけるコンセンサスを形成する場としての取締役会

原則4-10
上場会社は、会社法が定める会社の機関設計のうち会社の特性に応じて最も適切な形態を採用するに当たり、必要に応じて任意の仕組みを活用することにより、統治機能の更なる充実を図るべきである。

CGS研究会では、経営者を選解任権で監督をするモニタリング・ボードが、これからの望ましいガバナンス・モデルであることが明示されるとともに、監査役会設置会社を選択しながらモニタリング・ボードを志向することは望ましくない、中途半端は良くないとの指摘があった。この指摘の背景には、監査役会設置会社では権限移譲に法的な限界が生じることがある。今後、攻めのガバナンスのためには指名委員会等設置会社を選択すべき、監査等委員会設置会社であれば明確にモニタリング・ボードを志向した取り組みを進めるべき、といった論調が強まる可能性もあろう。

指名・報酬委員会
CGS研究会(第3期)での議論 関連するCGコード
指名・報酬委員会においては、独立社外取締役を過半数かつ委員長とするなど、社長や会長の影響力を排した議論ができる構成・運営とすべきである。 原則4-10①
(前略)特に、プライム市場上場会社は、各委員会の構成員の過半数を独立社外取締役とすることを基本とし、その委員会構成の独立性に関する考え方・権限・役割等を開示すべきである。

現行のCGSガイドラインは、「社外役員が少なくとも過半数、または社外役員・それ以外の委員が同数であって委員長が社外役員」であることを求めるにとどまっており、「独立社外取締役が過半数」であることを求める改訂CGコードと比較して立ち遅れた内容となっている。そこでCGS研究会では、委員会の構成員の過半数が社外取締役であり、かつ委員長は社外取締役であることが必要との指摘があった。また、社長あるいは会長が委員会に参加する場合は特に問題があるとの意見も聞かれた。今後は社内取締役の割合に加え、委員としての適格性も一層厳しく問われることになろう。

ボード・サクセッション
CGS研究会(第3期)での議論 関連するCGコード
ボード・サクセッションを検討する際には、社外取締役の個人評価を反映すべきである。また、そのために取締役会の実効性評価を活用すべきである。 原則4-11③
取締役会は、毎年、各取締役の自己評価なども参考にしつつ、取締役会全体の実効性について分析・評価を行い、その結果の概要を開示すべきである。

ボード・サクセッションとは、「自社にふさわしい将来の取締役会の姿を踏まえて、取締役会が自律的かつ継続的に機能を発揮できる状態を作り出す取り組み」と定義される。特に重要となるのが適切な社外取締役の継続的な確保であり、CGS研究会では、それを実現するためには現任の社外取締役の個人評価が必要との指摘があった。具体的には、取締役会の実効性評価で社外取締役のパフォーマンス評価を実施し、その結果を指名委員会と連携することが提案されている。今後は社外取締役の不再任も議論される可能性がありそうだ。

2022/05/10 総会後に提出するCG報告書では「エクスプレイン」の内容にも注目

周知のとおり、2021年6月のコーポレートガバナンス・コード改訂で新設されたいわゆるプライム市場特則(プライム市場上場会社のみを対象とした原則)への対応期限は「2022年4月4日以降に開催される定時株主総会後」とされており、4月総会の上場会社を皮切りに当該対応期限が順次到来している。上場会社で最も多い3月決算会社は、6月総会シーズンを目前に控え、コーポレートガバナンス報告書の更新内容の検討に追われていることだろう。・・・

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2022/05/10 総会後に提出するCG報告書では「エクスプレイン」の内容にも注目(会員限定)

周知のとおり、2021年6月のコーポレートガバナンス・コード改訂で新設されたいわゆるプライム市場特則(プライム市場上場会社のみを対象とした原則)への対応期限は「2022年4月4日以降に開催される定時株主総会後」とされており、4月総会の上場会社を皮切りに当該対応期限が順次到来している。上場会社で最も多い3月決算会社は、6月総会シーズンを目前に控え、コーポレートガバナンス報告書の更新内容の検討に追われていることだろう。

東証はコーポレートガバナンス報告書の更新時期に合わせ、「コーポレートガバナンス報告書 更新時チェックリスト」を上場会社向けに提供している。同リストは2021年6月にリリースされたものを2022年4月に更新したもので、例えばエクスプレインする際の記載事項として新たに下記の3類型を例示するなど、望ましいコーポレートガバナンス・コード対応をガイダンスする内容となっている。

① 具体的な実施予定がある場合
 実施を予定する取組の具体的内容、実施時期等
② 実施について検討中の場合
 検討に関するスケジュールや考慮要素、検討の方向性等
③ 実施しないことを決定した場合
 実施しないこととした理由、代替手段を講じている場合はその内容等

なかでも昨年6月の改訂で新設された補充原則2-4①、同3-1③、同4-8③については、現状の開示不足を明確に指摘したうえで、改善を強く求めている。これらの指摘事項はいずれも2022年1月に東証が公表した「コーポレートガバナンス・コードへの対応状況(2021年12月末時点)」(以下、東証資料)において調査結果として報告されたものである。

原則 記載が求められる事項 東証の指摘・要請
2-4① 女性・外国人・中途採用者それぞれについて、中核人材の登用等(管理職への登用等を含む)における多様性の確保についての「考え方」、自主的かつ測定可能な「目標」及び「その状況」(実際の進捗状況・達成状況) 本原則を「コンプライ」とする一方、「女性」「外国人」「中途採用者」の管理職への登用の3項目のうち、「自主的かつ測定可能な目標」を示していない項目について、その旨や理由が記載されていない事例が見受けられます。3項目のうち、「自主的かつ測定可能な目標」を示さない項目がある場合には、当該目標を示さない旨及びその理由を記載してください。
3-1③ 人的資本や知的財産への投資等 本原則を「コンプライ」とする一方、人的資本や知的財産への投資等についての開示がなされていない事例が見受けられますので、当該事項について記載してください。
4-8③ 支配株主を有する上場会社で、独立社外取締役を含む独立性を有する者で構成された特別委員会を設置している場合は、その旨
【記載箇所】
Ⅰ-4 支配株主との取引等を行う際における少数株主の保護の方策に関する指針
Ⅱ-2 業務執行、監査・監督、指名、報酬決定等の権限に係る事項(現状のコーポレートガバナンス体制の概要)など
本原則に基づき、独立社外取締役を含む独立性を有する者で構成された特別委員会を設置する場合は、左記【記載箇所】などの記載にご反映いただくことを必ずご検討ください。

東証資料によると、TOPIX100採用企業のうち、中核人材における測定可能な目標を外国人について設定しているのは22社、中途採用者については21社にとどまり(9ページ参照)、また、人的資本への投資に言及しているのは71社、知的財産への投資については67社となっている(11ページ参照)。このほか、支配株主を有する上場会社で4-8③をコンプライしている旧東証一部の160社のうち社外取締役が3分の1未満の28社は、コンプライしている以上は特別委員会を設置しているはずだが、そのうち21社(=28社-7社)には特別委員会についての記載がない(12ページ参照)。

コーポレートガバナンス・コードはあくまでも原則主義に基づいており、必ずしも罰則を伴わない(ただし、実施しない場合の理由の説明を行わない場合には公表措置等の対象となる可能性はある)が、東証による調査の結果およびそれを踏まえた要請は機関投資家も当然認識している。上場会社は、「エクスプレイン」する場合を含め、総会後に提出されるコーポレートガバナンス報告書の記載内容への注目がこれまで以上に高まっていることを認識すべきだろう。

原則主義 : 大まかな原理・原則だけを定め、細かな運用は現場の判断に任せるという規制方法のこと。プリンシプルベース・アプローチ とも呼ばれる。プリンシプルベース(原則主義)の反意語は「ルールベース(細則主義)」である。








2022/05/09 吉野屋の「社長の報酬減額」に見る有事における欧米企業との対応の違い

先日、吉野家の常務取締役の立場にある人物が、外部講師として登壇した大学の講義で著しく不適切な発言を行い、大学から講師の職を降ろされるとともに、その翌日には吉野家の取締役の地位をも失った一件(吉野屋ホールディングスのリリースはこちら)が話題となった。これらの処分に対しては「当然」とする声が多いが、気になるのは、取締役の解任に合わせて吉野屋ホールディングスが発表した「社長の月額報酬を3か月間、3割減額する」という社内処分だ。

業績の悪化や不祥事の発生によって、役員報酬を返上もしくは削減するという対応は、・・・

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2022/05/09 吉野屋の「社長の報酬減額」に見る有事における欧米企業との対応の違い(会員限定)

先日、吉野家の常務取締役の立場にある人物が、外部講師として登壇した大学の講義で著しく不適切な発言を行い、大学から講師の職を降ろされるとともに、その翌日には吉野家の取締役の地位をも失った一件(吉野屋ホールディングスのリリースはこちら)が話題となった。これらの処分に対しては「当然」とする声が多いが、気になるのは、取締役の解任に合わせて吉野屋ホールディングスが発表した「社長の月額報酬を3か月間、3割減額する」という社内処分だ。

業績の悪化や不祥事の発生によって、役員報酬を返上もしくは削減するという対応は、実は日本企業固有の極めて特異な報酬慣行であり、欧米企業ではほとんど見られない。

欧米企業の場合、まず業績が悪化した場合の対応としては、基本的にインセンティブ報酬の支給額が小さくなるだけである。固定報酬まで削減しなければならないほど業績が悪化した場合には、ポジションを下りるか、あるいは自ら会社を去るのが普通の対応であり、固定報酬を削減してもなお同じポジションに留まり続けるという発想自体がそもそも無い(新型コロナウイルスの流行初期段階であった2020年上半期には、欧米企業でも固定報酬を削減するという動きが散見されたが、これは資金を留保して大きな不確実性に備えることが目的であり、歴史的にも極めて例外的な対応にすぎない)。

そして不祥事が発生した場合には、有責幹部について「ポジションを下りるか、退任するか」が先に議論される。そのうえで、その事象がマルスクローバック条項のトリガーとなる場合は、その有責幹部のみについて、未払いの報酬の不支給や、支給済みの報酬の返納の必要性が議論されることになる。いずれにせよ、幹部自らの判断で報酬返上を申し出るなどということはあり得ず、報酬はあくまでルールに沿ってドライに処理されるだけである。不祥事が発生した場合に、連帯的に他の幹部がペナルティを負うこともほとんどない。

これに対し日本企業には、有事の際は役員報酬を自主返上して“禊を済ませる”という考え方がいまだに根強くある。近年は日本企業の役員報酬においても業績連動報酬が占める割合が大きくなり、マルス・クローバック条項も組み込まれている。したがって、業績悪化や不祥事発生時には欧米企業のようにルールに沿った対応が一定程度可能なはずだが、依然として自主返上を選択する企業は後を絶たない。

こうした違いは、おそらく欧米企業と日本企業の経営者像の違いに起因している。欧米企業の経営陣は様々なリーダーシップ・ロール(役割、任務)の集合体である。経営陣を構成する個人ごとの役割や責務が明確であり、自社の将来の成長に向けてパフォーマンスを発揮すれば評価されるが、そうでなければ評価されず、よりそのロールにフィットする後継者に席を譲るというのが当然のこととして理解されている。一方で、日本企業では経営陣の一員となることは、いまだ出世競争の最終ゴールという意識が強くある。そして、日本企業の経営陣とは、将来の成長というよりは、「過去」において成果を上げ、大きな失敗をしなかった人物がたどり着くポジションである。ひとたび取締役になれば、役員定年まで在任が可能になるため、極力地位を温存したいというモチベーションが働く。成功者同士の連帯意識も強い。このため、減点要素に必要以上に敏感となり、有事の発生を即座に相殺すべく、報酬の自主返上という発想が生まれるものと思われる。

話を吉野家に戻すと、本件には確かに社長の任命責任という側面もあるかもしれないが、果たして直ちに報酬返上をアピールする必要があっただろうか。株主や従業員、あるいは顧客がそれで溜飲を下げるとも思えない。それよりも、失敗から学ぶという視点に立ち、「取締役任命のプロセスにおけるリーダーシップの要件を改めて見直す」「取締役会に女性を増やすことで、多様な価値観を尊重し、インクルーシブに扱う意識を醸成していく」といった、現状の改善に向けた建設的な施策を表明した方がより意味があったと言えそうだ。

インクルーシブ : 多様性を示すダイバーシティに対し、多様な人材が互いを認め、受け入れ、一体となって働くことを指す。

2022/05/02 日本コーポレートガバナンス研究所(JCGR)「サロン・ド・丸の内」開催のお知らせ

日本コーポレートガバナンス研究所(JCGR)が「サロン・ド・丸の内」を開催します。
下記のとおり、同研究所が開催する5つの研究会には、同研究所のご厚意で、上場会社役員ガバナンスフォーラムの会員は20%割引で参加することができます。
https://govforum.jp/member/information/information-information/61965/

上記5つの研究会に参加される方は、「サロン・ド・丸の内」への参加料(通常3千円)が無料になります。
詳細はJCGR様の下記のご案内をご覧ください。

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JCGRをご支援いただいている皆さま

いつも大変お世話になっております。
5月27日開催の「サロン・ド・丸ノ内」をご案内します。

談論「サロン・ド・丸ノ内」については現下の状況を鑑み、本年度も引き続きウェビナーで開催させていただきます。

「サロン・ド・丸の内」は年6回、奇数月に開催します。

参加するにはJCGR会員(2022年4月~23年3月)として登録いただく必要があります。なお単回参加も可能です。

サロン・ド・丸の内の案内はこちら

5月は金融庁フォローアップ会議はじめ様々な審議会委員を務めておられますSBI大学院大学の上田准教授をお迎えして、本年度の注目すべきガバナンスに関する議論の概要そして見通しについて、JCGR理事の藤島と対談していただきます。

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ウェビナー「対談:2022年度のコーポレートガバナンス最新動向」
(詳しくは上記URLをご参照ください)

講師:
上田 亮子氏 SBI大学院大学准教授、京都大学客員准教授
金融庁 金融審議会ディスクロージャーワーキング・グループ 委員
金融庁 スチュワードシップ・コードおよびコーポレートガバナンス・コードのフォローアップ会議 委員
経産省 人的資本経営の実現に向けた検討会 委員

藤島 裕三 日本シェアホルダーサービス㈱ チーフコンサルタント
日本コーポレートガバナンス研究所(JCGR) 理事

日時:2022年5月27日(金)16:00~17:30

定員:20名(先着順)

参加費:3,000円(JCGR会員は無料)

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参加ご希望の方は、こちらの参加申込み用紙に記入したのち(希望者には Wordファイルの参加申込書をお送りします)、PDF(またはWord)を添付したメールを下記のメールアドレス宛に送信する方法によりお申し込みください。

【問合せ・申し込み】日本コーポレートガバナンス研究所 藤島  fujishima@jcgr.org

入金確認後、事前登録用のURLをお伝えいたします。

なお現在、JCGRでは新年度の研究会員を募集中です。
下記の各講座にお申込みいただいた方はJCGR会員として、サロン・ド・丸ノ内は無料でご参加いただけます。

これを機会に参加ご検討いただきたくお願いいたします。
申込み済みの方は、その旨メールにお書き添えください。

JCGR藤島

【現在、募集中の研究会】
1.コーポレートガバナンス研究会(4月開講)
・現代のコーポレートガバナンスの全貌を1年間で学ぶ。2022年4月~2023年3月にて毎月開催。
・動画配信(YouTube)・ブログ解説・オンラインQ&Aセッション(Zoom)の三位一体セミナー。
・毎月第1週に講義を収録・配信。約2週間後の水曜日にオンラインでQ&Aセッションを実施。
・プログラム詳細はこちら

2.コーポレートファイナンス研究会(4月開講)
・企業価値創造のための現代ファイナンス理論を1年間で学ぶ。2022年4月~2023年3月にて毎月開催。
・動画配信(YouTube)・ブログ解説・オンラインQ&Aセッション(Zoom)の三位一体セミナー。
・毎月第2週に講義を収録・配信。約2週間後の金曜日にオンラインでQ&Aセッションを実施。
・プログラム詳細はこちら

3.経営幹部のためのデータサイエンス研究会(5月開講)
・データサイエンスのユーザーである経営幹部のためのデータサイエンス・リテラシー講座。
・東京駅丸の内直結の会場で、対面かつハンズオンで実施。週末土曜日の1日でコンパクトに完結。
・プログラム詳細はこちら

4.コーポレートガバナンス・コード実務セミナー:総チェック(7月開講)
・コードの意義や改訂の経緯に立ち返って、全83原則を個別に解説。望ましい対応のあり方を議論。
・第1回の総論と第8回の演習は、東京駅丸の内直結の会場で実施。第2-7回の各論はウェビナー。
・プログラム詳細はこちら

5.コーポレートガバナンス・コード実務セミナー:集中講座(7月開講)
・開示14原則、特に改訂で新設・変更された原則に焦点を当てて、望ましい対応のあり方を議論。
・東京駅丸の内直結の会場で、総論から演習まで実施。週末土曜日の1日でコンパクトに完結。
・プログラム詳細はこちら

(お問い合わせ)

日本コーポレートガバナンス研究所(JCGR)→  info@jcgr.org

2022/04/30 【2022年5月の課題】法定開示の見直しと自社にとっての影響・課題

2022年5月の課題

現在、金融庁・金融審議会のディスクロージャーワーキング・グループ(令和3年度)を中心に、金融商品取引法上の有価証券報告書等の法定開示制度自体や、その内容について複数の見直しが同時進行しており、上場企業からは「見直しの全体像が分かりにくい」といった声が聞かれます。

そこで、今後開示が「増える点」および「減る点」をディスクロージャーワーキング・グループの議論などから整理したうえで、自社にとっての影響や課題について考えてみてください。

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2022/04/29 【役員会 Good&Bad発言集】「ビジネスと人権」への対応(5)

東証上場会社のA社では、投資家からの問い合わせをきっかけとして取締役会で「ビジネスと人権」への対応についての検討を行っているところです。これに関してA・B・C・Dの4人が別々に次の発言を行いました。誰の発言がGood発言でしょうか?

取締役A:「インターネットを通じて外部の誰でも書き込めるようにする通報窓口を設置するのはいかがなものかと思います。通報窓口は従業員向けの社内ポータルサイト内にだけ開設してはどうでしょうか。」

取締役B:「通報窓口では当事者本人からの通報だけを受け付けるようにして、当事者本人ではない者、たとえば団体からの通報は、主体が別である以上受け付けないようにしてはいかがでしょうか。」

取締役C:「『苦情処理メカニズムにおけるエンゲージメント』って、要するに人権侵害について機関投資家と議論するということですよね。」

取締役D:「人権侵害の苦情への対応結果は何から何まですべてを公表すればいいというものではないと考えます。公表によりあらたな人権侵害をもたらすことだけは避けなければなりません。」

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2022/04/29 【役員会 Good&Bad発言集】「ビジネスと人権」への対応(5)(会員限定)

<解説>
救済措置

前回までは(1)で「ビジネスと人権」への対応についての総論を述べたのち、(2)で「人権方針」、(3)と(4)で「人権デュー・ディリジェンス」について解説したところです。

「ビジネスと人権」への対応(1):「ビジネスと人権」への対応についての総論
「ビジネスと人権」への対応(2):人権方針
「ビジネスと人権」への対応(3):人権デュー・ディリジェンス(人権への悪影響の特定)
「ビジネスと人権」への対応(4):人権デュー・ディリジェンス(その他のステップ)
「ビジネスと人権」への対応(5):苦情処理および是正措置(救済措置)
「ビジネスと人権」への対応(6):人権問題であることへの気付き

今回は「苦情処理および是正措置」(救済措置)について解説します。

前回までに「人権への悪影響」の予防・軽減のためのプロセスを解説してきましたが、これらの予防・軽減プロセスが動き始めた後といえども、「人権への悪影響」を完全にゼロにすることはできません。つまり、どんなに力を入れて予防・軽減プロセスを整備・運用したとしても、「人権への悪影響」による被害が生じてしまうことは避けられないことになります。そこで、そういった被害が発生したときに備えて、企業は被害者が苦情処理(グリーバンス・メカニズム)を利用できるようにしておく必要があります。苦情処理とは、被害を受けた人および地域が企業に対して被害についての苦情を提起し、企業に対して問題解決を求めることができる仕組みを指します。

苦情処理の目的は「是正」にあります。ここで「是正」とは「人権に対する負の影響を止めるまたは償うことのできる実質的な成果」のことです。OECDデュー・ディリジェンス・ガイダンスでは具体的な是正措置として、今後の負の影響を防止する措置を講じつつ、謝罪、被害回復または地位復帰(例えば、解雇された労働者の復職、団体交渉のための労働組合の承認)、金銭的または非金銭的な補償(例えば、被害者または将来的な支援活動および教育プログラムのための補償基金の設立)、処罰(例えば、不正行為に対して責任を負うスタッフの解雇)等があるとしています(ガイダンスの34ページを参照)。また、人権への影響に関しては、その負の影響を受けた権利保有者およびその代表者と協議し、関与しながら是正を決定するとともに、措置の実施プロセスおよびその結果に対する、苦情を申し立てた人々の満足度を評価するよう努める必要があるとしています(同じくガイダンスの34ページを参照)。なお、OECDデュー・ディリジェンス・ガイダンスの付属文書Q48によると、是正措置の実施は、デュー・ディリジェンスを構成する要素ではなく、「デュー・ディリジェンスによって可能となり、またデュー・ディリジェンスによって支えられるべき、分けられた重要なプロセス」とされています(【役員会 Good&Bad発言集】「ビジネスと人権」への対応(4)において紹介した外務省のパンフレットの「人権デューデリジェンスのステップ」の中にも是正措置は組み込まれていません)。

苦情処理のメカニズムを整備することで、人権への悪影響の特定にあたり役に立つ情報を入手することが可能になります。また、苦情処理は人権侵害の是正に向けての具体的な対処の起点にもなります。

苦情処理および是正措置に関して、国連人権理事会が策定した「ビジネスと人権に関する指導原則」(以下、指導原則)の原則22には次のような定めが設けられています。

22.企業は、負の影響を引き起こしたこと、または負の影響を助長したことが明らかになる場合、正当なプロセスを通じてその是正の途を備えるか、それに協力すべきである。

それでは何をもって苦情処理および是正措置が「正当なプロセス」であると言えるのかが気になるところです。「正当なプロセス」であると言えるための要件については、指導原則の31が列挙しています。

非司法的苦情処理メカニズムのための実効性の要件
31.その実効性を確保するために、非司法的苦情処理メカニズムは、国家基盤型及び非国家基盤型を問わず、次の要件を充たすべきである。
正当性がある:利用者であるステークホルダー・グループから信頼され、苦情プロセスの公正な遂行に対して責任を負う。
アクセスすることができる:利用者であるステークホルダー・グループすべてに認知されており、アクセスする際に特別の障壁に直面する人々に対し適切な支援を提供する。
予測可能である:各段階に目安となる所要期間を示した、明確で周知の手続が設けられ、利用可能なプロセス及び結果のタイプについて明確に説明され、履行を監視する手段がある。
公平である:被害を受けた当事者が、公平で、情報に通じ、互いに相手に対する敬意を保持できる条件のもとで苦情処理プロセスに参加するために必要な情報源、助言及び専門知識への正当なアクセスができるようにする。
透明性がある:苦情当事者にその進捗情報を継続的に知らせ、またその実効性について信頼を築き、危機にさらされている公共の利益をまもるために、メカニズムのパフォーマンスについて十分な情報を提供する。
権利に矛盾しない:結果及び救済が、国際的に認められた人権に適合していることを確保する。
継続的学習の源となる:メカニズムを改善し、今後の苦情や被害を防止するための教訓を明確にするために使える手段を活用する。
事業レベルのメカニズムも次の要件を充たすべきである。
エンゲージメント及び対話に基づく:利用者となるステークホルダー・グループとメカニズムの設計やパフォーマンスについて協議し、苦情に対処し解決する手段として対話に焦点をあてる。

和訳が分かりづらいことから、外務省のパンフレットでざっくり理解したうえで、再度指導原則に戻ると理解が深まるはずです(下図は外務省のパンフレットから引用)。
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経団連がまとめた「人権を尊重する経営のためのハンドブック」(以下、経団連ハンドブック)の47ページには、苦情処理および是正措置のメカニズムを構築する際の考慮事項として、下記の例が示されています。

〔考慮事項の例〕
・当事者が利用しやすい受付方法(電話、電子メール、SNSなど)や言語の選択
・プライバシー保護、適切な機密性確保のための記録の作成と保管の方法
・対処を必要とする案件かなどの判断基準(自社の人権方針や人権に関する国際的な基準、法律の遵守など)
・専門家による調査・助言を必要とする場合の体制整備
・是正、改善、再発防止策の判断基準
・当事者や通報者とのコミュニケーションの方法やタイムライン
・苦情への対応結果についての公開範囲

まず、従業員や取引先関係者が人権に関わる問題を通報・相談できる窓口を設けることは必須となります。既存の内部通報制度の中に組み込むことで、利用者にとって窓口が分かりやすくなるだけでなく、企業側にとっても手続きや事務の重複をなくし運営コストを下げることができます。仮に人権についての苦情処理窓口を内部通報制度の窓口とは別に設けて運用する場合であっても、通報窓口の複数化、通報者のプライバシー保護、範囲外共有の防止、不利益取り扱いの禁止などは内部通報制度の考え方をそのまま転用することができます。内部通報制度に関しては下記の役員会 Good&Bad発言集を参照してください。

【役員会 Good&Bad発言集】内部公益通報制度の設計(1)
【役員会 Good&Bad発言集】内部公益通報制度の設計(2)
【役員会 Good&Bad発言集】内部公益通報制度の設計(3)

なお、通報窓口は、「企業の事業、企業グループやサプライチェーンを通じて、負の影響を受けたと主張する当事者や、代理となる組織にも開かれていることが望ましい」とされています(経団連ハンドブック15ページ)。

透明性の観点から、調査にあたっては外部の専門家や人権団体と連携することも考慮すべきです。外部の専門家や人権団体との連携は企業内の“常識”を改める契機になることも期待されます。

苦情への対応結果は、プロセスおよび成果を今後改善するため,教訓から得られたフィードバックを企業の人権デュー・ディリジェンスに組み込む必要があります。また、苦情への対応結果については別の人権侵害を招かないように配慮しながら(プライバシー保護に留意しつつ)、当事者にだけでなく、広く公開するようにすべきです(当然ながら当事者に公開する情報と広く公開する情報では範囲が異なります)。公開の際の留意点は前回の役員会 Good&Bad発言集の「情報発信と外部とのコミュニケーション」の項目を参照してください。

「ステークホルダーとのエンゲージメント」は、いささかわかりづらい表現です。まずエンゲージメントは「かかわりあい」のことで、具体的には「対話や情報共有」と理解してください。そして、ステークホルダーは「企業の活動により影響を受ける可能性のある利害を持つ個人または団体」を指し、一般的には次のような者または団体となります。
・国や地方自治体
・従業員(派遣社員やパートやアルバイトも含む)、労働組合
・消費者、エンドユーザー
・地域住民
・非政府組織(NGO)、現地の市民社会組織、国内人権機関
・同業他社や取引先
・投資家または株主
これらのステークホルダーと誠意をもって継続的なエンゲージメントを行うことで、人権デュー・ディリジェンスや苦情処理および是正措置の深化を図ることが可能になります。

いままで、解説してきた「ビジネスと人権」への対応の全体像をまとめると、以下の通りとなります(経団連ハンドブック29ページより引用)。

「ビジネスと人権」への対応の全体像
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さて、以上の解説をご覧いただければ、誰の発言がGOOD発言か、もうお分かりですね。正解は以下のとおり。

<正解>
GOOD発言はこちら

取締役D:「人権侵害の苦情への対応結果は何から何まですべてを公表すればいいというものではないと考えます。公表によりあらたな人権侵害をもたらすことだけは避けなければなりません。」
コメント:たとえばLGBTQに関する人権侵害を想定すれば、すべてを公表することで、あらたな人権侵害が惹起される可能性があることは容易に分かります。公表の範囲は慎重にすべきとの取締役Dの発言は正論であり、Goodです。

BAD発言はこちら

取締役A:「インターネットを通じて外部の誰でも書き込めるようにする通報窓口を設置するのはいかがなものかと思います。通報窓口は従業員向けの社内ポータルサイト内にだけ開設してはどうでしょうか。」
コメント:企業が人権を侵害するのは何も従業員に対してだけとは限りません。取引先や地域住民の人権が侵害される可能性も考慮する必要があります。従業員向けの社内ポータルサイト内にだけ通報窓口を設置するよう提案する取締役Aの発言は、従業員以外の被害者の利用可能性や公平性に欠ける不適切な提案であり、Bad発言です。

取締役B:「通報窓口では当事者本人からの通報だけを受け付けるようにして、当事者本人ではない者、たとえば団体からの通報は、主体が別である以上受け付けないようにしてはいかがでしょうか。」
コメント:経団連ハンドブックによると、通報窓口は、「企業の事業、企業グループやサプライチェーンを通じて、負の影響を受けたと主張する当事者や、代理となる組織にも開かれていることが望ましい」とされています(経団連ハンドブック15ページを参照)。人権侵害の救済に資するよう通報は広く受け付けるべきであるにもかかわらず通報主体にこだわる取締役Bの発言はあまりに形式的で官僚主義的と言え、人権侵害からの救済を遅らせることになりかねないBad発言です。

取締役C:「『苦情処理メカニズムにおけるエンゲージメント』って、要するに人権侵害について機関投資家と議論するということですよね。」
コメント:エンゲージメントとは、もともとは「婚約」「約束」「契約」といった意味であり、TPOに応じて様々な使われ方をする用語です。エンゲージメントはビジネスにおいては「つながり」という意味で様々な局面で使われています。たとえば人事においては「企業と従業員とのつながり(愛社精神)」、マーケティングにおいては「企業・製品・サービスと顧客とのつながり(親密度)」、IRにおいては「企業と機関投資家とのつながり(目的を持った対話)」といった使われ方がされています。取締役BはどうやらIRにおけるエンゲージメントしか頭になかったため、「苦情処理メカニズムにおけるエンゲージメント」イコール「人権侵害についての機関投資家との対話」と勘違いしたようです。苦情処理メカニズムにおけるステークホルダーは広く様々な関係者が想定されていることを知らなかった取締役Cの発言はBad発言です