2021/08/31 2021年8月度チェックテスト第2問解答画面(正解)

正解です。
ゴールデンウィークなど大型連休の際に証券市場が閉じていることに対して、「海外で日本の株式市場にも影響を与える大きな出来事が起きても日本の市場では取引ができないというのは投資家にとってリスクではないか」といった批判の声があることから、東証では大型連休における取引機会の確保についての検討を開始しました。

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2021年8月4日 適時開示の慣習が変わる可能性(会員限定)

2021/08/31 2021年8月度チェックテスト第2問解答画面(不正解)

不正解です。
ゴールデンウィークなど大型連休の際に証券市場が閉じていることに対して、「海外で日本の株式市場にも影響を与える大きな出来事が起きても日本の市場では取引ができないというのは投資家にとってリスクではないか」といった批判の声があることから、東証では大型連休における取引機会の確保についての検討を開始しました。

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2021年8月4日 適時開示の慣習が変わる可能性(会員限定)

2021/08/31 2021年8月度チェックテスト第1問解答画面(不正解)

不正解です。
株主総会で決議した取締役の報酬の枠を超えて支払われた役員報酬は無効であり、超過した分は会社に返還しなければなりません。そもそも株主総会決議に反して無効なものを取締役会決議で追認して有効にすることなどできません。以上より、問題文の「当該支払いを有効にするためには取締役会で追認すればよい」は誤りです。

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2021年8月3日 社外取締役増員がもたらすコンプラ違反(会員限定)

2021/08/31 2021年8月度チェックテスト第1問解答画面(正解)

正解です。
株主総会で決議した取締役の報酬の枠を超えて支払われた役員報酬は無効であり、超過した分は会社に返還しなければなりません。そもそも株主総会決議に反して無効なものを取締役会決議で追認して有効にすることなどできません。以上より、問題文の「当該支払いを有効にするためには取締役会で追認すればよい」は誤りです。

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2021年8月3日 社外取締役増員がもたらすコンプラ違反(会員限定)

2021/08/31 【2021年9月の課題】来年に向けた役員報酬に関する事業報告への対応

2021年9月の課題

2021年3月1日に施行された改正会社法を受け、2021年6月の定時株主総会では、各社とも役員報酬に関する手続き対応、事業報告での開示対応に追われることとなりました。
会社法改正により新たに開示が必要となった役員報酬に関する情報は事業報告を通じて株主に提供されるものだけに、各社からは相当神経質になっている様子が伝わってきましたが、それでも、改正事項の全てには対応し切れなかったケースも少なくないようです。
自社の役員報酬に関する事業報告開示対応において、今6月総会では対応ができなかった部分、不十分だった部分を洗い出し、それらを解消するため、来年に向けどのような準備をすべきか、検討してみてください。

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2021/08/30 ESG投資の隆盛に伴い資産運用会社等への開示規制が強化、企業への影響は?

資産運用会社等に対し、ESG投資サステナブル投資(以下、適宜まとめて「ESG投資」という)関連の金融商品について詳細な情報の開示を求める・・・

ESG投資 : 「Environmental(環境)」「Social(社会)」「Governance(企業統治)」に優れた企業に投資すること。
サステナブル投資 : エネルギー資源の利用、温室効果ガス排出、生物多様性、循環型経済など、「環境」に貢献する経済活動への投資、および、不平等解消や社会の結束を促進するなど「社会」目的に貢献する経済活動への投資の総称。また、投資先企業が優れたガバナンスを実践していることもサステナブル投資の条件とされている。

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2021/08/30 ESG投資の隆盛に伴い資産運用会社等への開示規制が強化、企業への影響は?(会員限定)

資産運用会社等に対し、ESG投資サステナブル投資(以下、適宜まとめて「ESG投資」という)関連の金融商品について詳細な情報の開示を求める取り組みが欧州で進んでいる。EUは2021年3月10日に新たなEU法「サステナブルファイナンス開示規則(Sustainable Finance Disclosure Regulation=SFDR)」の適用を開始、運用会社等に、「ESG」「サステナビリティ」などと銘打った金融商品が本当に「ESG」といった言葉を使用するのにふさわしいものであることを追加情報の開示により証明するよう義務付けた。

ESG投資 : 「Environmental(環境)」「Social(社会)」「Governance(企業統治)」に優れた企業に投資すること。
サステナブル投資 : エネルギー資源の利用、温室効果ガス排出、生物多様性、循環型経済など、「環境」に貢献する経済活動への投資、および、不平等解消や社会の結束を促進するなど「社会」目的に貢献する経済活動への投資の総称。また、投資先企業が優れたガバナンスを実践していることもサステナブル投資の条件とされている。

日本でも、金融庁が昨年(2020年)12月に立ち上げた「サステナブルファイナンス有識者会議」などを通じ、欧州をはじめとする世界の各地域の動向をにらみながら日本としての対応方針が協議されており、近い将来、欧州と同様の開示ルールが導入される可能性は十分にある。この開示ルールは企業にも影響を及ぼし得るだけに、経営陣としても頭に置いておきたいところだ。

このような開示ルールが検討されるようになった背景には「グリーンウォッシング」の横行がある。グリーンウォッシングとは、環境に配慮していることやエコを想起される「グリーン」と、上辺だけを飾ることを意味する「ホワイトウォッシュ」を掛け合わせた造語であり、一見すると自社の商品やサービスなどが(実際にはそうではないにもかかわらず)環境に配慮しているかのように見せかけ、環境意識の高い消費者や投資家への訴求効果を高めようとする行為を指す。欧州ではESG投資が拡大の一途を辿っており、2021年3月に欧州の資産運用会社の業界の団体である欧州ファンド・アセットマネジメント協会が公表したデータによると、2020年における欧州のESGファンドの純資産総額は、コロナ禍をものともせず前年比で37.1%増加し、1兆2000億ユーロに達した。一方、非ESGファンドは、4.8%増にとどまっている。わずか数年の間に、十分な規制がないままESG投資が急拡大する中、EU当局は金融商品のグリーンウォッシングに強い懸念を抱いている。しかも、EU加盟各国によって危機感にも温度差がある。そこで、EUの統一的なグリーンウォッシング防止策として作成されたのがSFDRだ。

SFDRは段階的に導入されており、冒頭で述べた2021年3月10日からの適用開始は「第一段階」と位置付けられる。第一段階ではSFDRの本則の大部分の適用が開始された。第二段階は2022年7月1日から実施されることになっており、SFDRで求められる開示内容の詳細を定めた細則の適用が開始される。細則は現在EUが策定中だが、そのドラフトによると、運用会社等は、例えば「環境または社会面の特性を持つ資産」や「サステナブル投資」にどれほどの資産を配分することを計画しているのか、また、「サステナブル投資の目的を達成するため」に投資先を選択する上で使っている投資戦略において「拘束力のある要素(binding elements)」は何か、といったことを開示する必要がある。さらに、投資先企業のおけるCO₂や有害廃棄物の排出量、男女賃金格差や取締役の男女比などのESG関連データの開示も求められる方向だ。こうした開示をルール化することによって、宣伝の際には「ESG」や「サステナビリティ」などの言葉を全面に押し出しておきながら、投資信託(ファンド)の目論見書では一般的なESG情報だけを掲載して誤魔化すというまさにグリーンウォッシングを阻止することが可能となる。

目論見書 : 投資信託(ファンド)を販売する際、投資家に対して交付することが義務付けられている書面。投資信託契約の内容、運用方針、手数料などファンドに関する基本的な情報が記載されている。

こうしてESG投資の透明性が高まった場合の影響としてまず考えられるのは、投資家(特に個人投資家)が安心してESGファンドに投資することができるようになり、ESGファンドの拡大が加速するということだ。また、運用会社等が投資先企業のESG関連データ(温室効果ガス排出量、男女賃金格差など)を収集、公表しなければならなくなることに伴い、ESGデータプロバイダーが、企業から必要な情報を入手するための新しいソリューションを開発し、入手可能なESGデータが一気に増えることが予測される。ESGデータの増加は、企業のESG格付けにも影響を与えることも十分に考えられる(ESG格付けについては、2016年8月5日のニュース『自社の「ESG格付け」を知ってますか?』参照)。ESG格付けの低い企業はESGファンドに組み入れられず、その結果、資金調達能力が低下する恐れがある。

世界的なESG投資の拡大を踏まえれば、今後のSFDRと同様の規制がアジアや米国などでも導入される可能性は高い。日本でも、特に菅政権が「2050年までに温室効果ガス排出量ネットゼロを達成する」との目標を打ち出して以降、個人投資家のESG投資に対する関心が高まっており、個人投資家向けESGファンドが続々と登場してくるだろう。その場合、情報弱者である個人投資家を保護する観点からグリーンウォッシングの防止が課題となり、日本の金融庁がSFDRと同様の規制の導入に踏み切ることは十分に考えられる。実際、金融庁のサステナブルファイナンス有識者会議が今年6月に公表した報告書では、「ESG関連債の信認確保」としてグリーンウォッシングに言及している(18ページ参照)。既に香港では、2022年1月より、SFDRをほぼ“コピー”したような規制の導入が決まっている。

欧州では、「今後資本市場はESG投資重視の方向にのみ向かう」と言われている。ESGが日本で注目され始めたわずか数年前、ESG投資の発展に懐疑的な声も少なくなかったが、その予測は見事に外れた。ESG格付けの低い企業は市場から相手にされなくなる時代がすぐそこまで迫っていることを、上場企業の経営陣は認識する必要があろう。

2021/08/29 【役員会 Good&Bad発言集】株式の投資目的

製造業を営む東証一部上場会社のX社では、取締役会でY社株式への投資の議案が提案されたところです。本議案を提案した取締役Aは取得目的を単に「投資」としか説明しませんでした。また、説明にあたっては、Y社の会社概要、株式の取得予定時期、金額の上限が記載された資料が1枚配布されただけでした。これに対して、社外取締役から「今回の投資目的は純投資でしょうか、それとも政策投資でしょうか。」との質問があり、これに対して次の3人が発言を行いました。誰の発言がGood発言でしょうか?

取締役A:「投資時点で、純投資か政策投資かを明示しなければ投資できないわけではないと考えています。値上がりをすれば売却をするし、事業上の連携が可能になってくれば連携していけばよいだけの話です。」

取締役B:「純投資であれば期待投資リターンについての資料があってしかるべきですし、政策投資であれば今回の投資がどのように事業にプラスに働くのかについての資料があってしかるべきです。現時点では、決議にあたっての提出資料が不足しているのではないでしょうか。」

取締役C:「当社の定款の目的には投資事業のことが触れられていません。政策投資ならともかく、純投資であれば、定款に掲げている目的との整合性を確認すべきと言えます。」

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2021/08/29 【役員会 Good&Bad発言集】株式の投資目的(会員限定)

<解説>
政策投資目的と純投資目的

会社が他の会社の株式を保有することはよくあります。他の会社を支配するために株式を保有するのであれば、当該他の会社は子会社(支配力次第で関連会社)になります。値上がりを期待して他の上場会社の株式を保有したり、事業・資本提携のために株式を相互保有したりする場合もあります。余裕資金運用のために株式を保有することもあるでしょう。こういった有価証券の投資目的はさまざまな分類が可能ですが、本稿では「純投資」「政策投資」「経営支配」の3つに分類することとします。なお、説明の簡素化の観点から、本稿では株式に限定して説明するとともに、経営支配については省略することにします。

目的 説明 具体例
純投資 専ら株式の価値の変動(キャピタルゲイン)または株式に係る配当によって利益を受けること 市場で割安に評価されている銘柄を選定し、値上がりや高配当を期待して株式を保有するケース
経営支配 他社を支配すること 子会社株式や関係会社株式
政策投資 純投資および経営支配以外の目的で保有すること 業務資本提携をした他の上場会社の株式を1%程度保有するケースや取引先持株会に加入しているケース

一口に「投資」と言っても、「純投資」と「政策投資」では目指す方向性が異なることから、コーポレートガバナンス・コード(CGコード)では異なる取扱いがされています。すなわち、CGコードの原則1-4では下記のように政策投資目的で保有している株式(政策保有株式)について定めています。

【原則1-4.政策保有株式】
上場会社が政策保有株式として上場株式を保有する場合には、政策保有株式の縮減に関する方針・考え方など、政策保有に関する方針を開示すべきである。また、毎年、取締役会で、個別の政策保有株式について、保有目的が適切か、保有に伴う便益やリスクが資本コストに見合っているか等を具体的に精査し、保有の適否を検証するとともに、そうした検証の内容について開示すべきである。
上場会社は、政策保有株式に係る議決権の行使について、適切な対応を確保するための具体的な基準を策定・開示し、その基準に沿った対応を行うべきである。

ここでは政策保有株式は「縮減されてしかるべき」ということが前提になっています。これは政策保有株式に対する投資家のネガティブな捉え方が色濃く反映された結果と言えます。機関投資家協働対話フォーラムが、企業年金連合会、第一生命保険、三井住友 DS アセットマネジメント、三井住友トラスト・アセットマネジメント、三菱UFJ信託銀行、明治安田アセットマネジメント、りそなアセットマネジメントの 7 社とともに、政策保有株式を保有する企業へ送付したレターに「政策保有株式に対する投資家の考え方」が丁寧かつ分かりやすく説明されていることから、少し長くなりますが、以下紹介いたします。

3.政策保有株式に対する投資家の考え方
政策保有株式は日本特有の保有形態です。特に、株式の相互保有は、戦後の株式買占めや資本自由化による外国資本の参入に対する企業防衛の目的で発生しました。友好的関係にある企業や取引先などと、相互に安定株主となることで、短期的な視点の株主による経営への介入を制約して、長期的視点の安定的経営を強化するという役割を果たしたという見方もあります。こうした経緯が日本独特の協調的な取引関係と資本関係の二重の関係性を形成してきました。取引先との情報量を増大させ、リスクをシェアし、取引コストを削減するとともに、経営に口を出さない協力的な株主を獲得することで、内部昇格の経営者による日本的経営(いわゆる従業員主権主義)を推進してきたと言われています。

海外でも資本提携やジョイントベンチャーなど、資本拠出を伴う協業関係は存在します。投資家も、詳細な契約で、取引や共同開発などの協業の内容を明確に定める株式保有には、一定の理解を示します。しかしながら、経営支配目的でもなく、資本提携やジョイントベンチャーでもなく、企業間の取引継続に、取引先に対する経営参画権と株式売却圧力を利用しようとする考え方には否定的です。そして最も重要なこととして、政策保有株式を持たせている側が、取引関係を盾にとって取引先を安定株主にしようとする考え方には反対です。このような古い日本的経営の思考やシステムから抜け出すべきではないかと考えています。

政策保有株式には、金融庁の両コードのフォローアップ会議でも「安定株主の存在が企業経営に規律の緩みを生じさせている」可能性や、「バランスシートにおいて活用されていないリスク性資産であり、資本管理上非効率」などの問題が指摘されているとおり、時代の変化、経営環境の変化とともに、さまざまな懸念やリスクが増大しています。

まず、多くの企業が、政策保有の理由に、取引関係の維持・向上を掲げていますが、取引関係の維持・向上と株式保有は分離して考えるべきものです。もともと取引関係や共同事業などの協業関係は、双方の行為を契約で定めています。優れた製品・サービスを適切な価格で提供し、契約に基づいて誠実な取引を継続することが良好な取引関係・相互の信頼関係に結びつくものであり、株式保有が良好な関係の証という考え方は、肯定できるものではありません。グローバルなサプライチェーンが拡大している現在、海外の取引先には、政策保有の考え方は通用しません。むしろ、株式保有が「安定的な取引関係継続の条件」になっているという日本の市場慣行自体が、海外からは閉鎖的な市場と見なされています。

特に、取引関係の維持・向上などの保有理由には、懐疑的な法的論点があります。もし、株式保有を前提に取引を行っているとするなら、会社法上の特定株主に対する利益供与の懸念があり、株主平等の原則に反する考え方となります。さらに、取引先に株式保有を強要しているような場合、株式を持たせている側は、独禁法上の優越的地位の濫用にあたる懸念があると考えます。同時に、取引先としての利益と株主としての利益が相反する可能性も指摘されています。したがって、CGコード原則 1-4 の「保有に伴う便益やリスクが資本コストに見合うかどうかの精査」においても、便益のなかに、売上高や利益などの金銭で計算できる便益を含めた場合は、上記の利益供与や利益相反を自ら認めていることになりかねないと考えます。

同時に、「政策保有する株式のリターンが資本コストを上回っているから良い」という発想は、本業への成長投資か株主還元ではなく、本業ではない株式運用に資金を投じていることとなり、資本効率性の面で事業価値を最大化していないこととなります。この結果、株価のディスカウント要因となり、将来的な資金調達能力の低下につながります。資金が固定化し運転資金などに有効な利用ができないこともデメリットです。これらは財務の側面における懸念です。

次に、株式を持たれている(持たせている)場合の懸念として、まず、事業戦略の側面における懸念が挙げられます。政策保有している取引先が、現在、重要な取引先であったとしても、将来も重要であるという保証はありません。経営環境の変化が激しい「非連続な時代」の現在、サプライチェーンの抜本的変革はあり得ます。万が一、重要な取引先を変更しなければならない時、政策保有株式の存在が取引先変更を困難なものとし、事業戦略の遂行に齟齬を来す可能性があります。場合によっては、現経営陣に対する強力な反対株主となり得ることもあります。

最後に、投資家が最も懸念するガバナンスや倫理における懸念です。投資家は、経営陣を無条件支持する「安定株主政策」によって、経営陣に株主からの付託に対する緊張感が薄れ、経営に甘さが出るのではないかと懸念しています。本来「経営の安定性」は、株主に対するアカウンタビリティを全うし、経営の正統性を強化することで成り立つものであり、経営陣の意に沿わない株主を排除することで成り立つものではありません。

さらに、安定株主政策は、社員にも、ガバナンスに対する間違った認識をもたらし、事業活動を非効率的にする可能性があります。経営陣が安定株主政策を求めると、社員が「安定株主の取引先は身内だから、品質が劣っていても発注する」「株式を売却した取引先とは取引を減少させる」などの判断を行うようになり、非効率な取引を助長させるだけではなく、「“与党”である株主に便益を与えることは当然」との誤った倫理観を醸成させることにもつながりかねません。

このような背景から、政策保有株式を必要と考える企業は、政策保有による「経営の安定性」という考え方から脱却し、投資家からの強い支持を得た「経営の安定性」に向けて、経営の舵を切っていただきたいと考えています。

以上を読めば、政策保有株式は「縮減されてしかるべき」ということを前提にCGコード原則1-4が取りまとめられたことがお分かりになるかと思います。

一方、純投資に対しては、機関投資家は政策保有株式ほどネガティブにとらえていません。もっとも、純投資は、投資銀行や投資会社、保険会社といったプロの投資家ならともかく、定款の目的に「有価証券投資」を明示していない上場会社が「純投資」を反復継続して行う場合は、アクティビストが定款違反ではないかと問題提起する可能性もあり(実際に問題提起された事例は2021年5月17日のニュース「政策保有株売却やTCFD関連でアクティビストの株主提案相次ぐ」を参照)、一般の株主からも「御社はプロの投資家ではないのだから、本来の事業に専念して欲しい。余裕資金があるくらいなら、配当や自己株式取得で株主還元をして欲しい」とクレームが入りかねないので注意が必要です。

取得時の社内説明資料は目的に応じて異なる

CGコードの原則1-4は開示が必要となる原則であることから、コーポレート・ガバナンス報告書では以下のとおり政策保有株式についての説明が欠かせません。

コーポレート・ガバナンス報告書の記載要領
【原則1-4 政策保有株式】
(1)政策保有に関する方針
・・・・・・・・開示項目の内容を記載・・・・・・・・
(2)政策保有株式にかかる検証の内容
・・・・・・・・開示項目の内容を記載・・・・・・・・
(3)政策保有株式にかかる議決権行使基準
・・・・・・・・開示項目の内容を記載・・・・・・・・

さらに有価証券報告書でも政策保有株式の銘柄数及び貸借対照表計上額の合計額、提出会社の保有方針及び保有の合理性を検証する方法、個別銘柄の保有の適否に関する取締役会等における検証の内容等を記載する必要があります。

企業内容等の開示に関する内閣府令2号様式(記載上の注意)
(58) 株式の保有状況(抄)
提出会社が上場会社等である場合には、提出会社の株式の保有状況について、次のとおり記載すること。

a 提出会社の最近事業年度に係る貸借対照表に計上されている投資有価証券(財務諸表等規則第 32 条第1項第1号に掲げる投資有価証券及びこれに準ずる有価証券)に該当する株式のうち保有目的が純投資目的である投資株式と純投資目的以外の目的である投資株式の区分の基準や考え方を記載すること。

b 保有目的が純投資目的以外の目的である投資株式(法第2条第 16 項に規定する金融商品取引所に上場されている株券に係る株式に限ることができる)について、提出会社の保有方針及び保有の合理性を検証する方法を記載すること。また、保有目的が純投資目的以外の目的である投資株式について、個別銘柄の保有の適否に関する取締役会等における検証の内容を記載すること。

c 保有目的が純投資目的以外の目的である投資株式を非上場株式とそれ以外の株式に区分し、当該区分ごとに、次に掲げる事項を記載すること。
⒜ 銘柄数及び貸借対照表計上額の合計額
⒝ 最近事業年度における株式数がその前事業年度における株式数から変動した銘柄について、株式数が増加した銘柄数、株式数の増加に係る取得価額の合計額及び増加の理由並びに株式数が減少した銘柄数及び株式数の減少に係る売却価額の合計額

d 保有目的が純投資目的以外の目的である投資株式(非上場株式を除く。以下dにおいて「特定投資株式」という。)及び純投資目的以外の目的で提出会社が信託契約その他の契約又は法律上の規定に基づき株主として議決権を行使する権限又は議決権の行使を指図する権限(以下dにおいて「議決権行使権限」という。)を有する株式(提出会社が信託財産として保有する株式及び非上場株式を除く。以下dにおいて「みなし保有株式」という。)のうち、最近事業年度及びその前事業年度のそれぞれについて、銘柄別による貸借対照表計上額(みなし保有株式にあっては、当該株式の事業年度末日における時価に議決権行使権限の対象となる株式数を乗じて得た額。以下dにおいて同じ。)が提出会社の資本金額(財務諸表等規則第 60 条に規定する株主資本の合計額が資本金額に満たない場合には、当該合計額)の 100 分の1を超えるもの(当該株式の銘柄数の合計が 60 に満たない場合には、当該貸借対照表計上額の大きい順の 60 銘柄(みなし保有株式が 11 銘柄以上含まれる場合には、みなし保有株式にあっては貸借対照表計上額の大きい順の 10 銘柄、特定投資株式にあっては貸借対照表計上額の大きい順の 50 銘柄。ただし、特定投資株式が 50 銘柄に満たない場合には、開示すべきみなし保有株式の銘柄数は、60 から当該特定投資株式の銘柄数を減じて得た数)に該当するもの)について、特定投資株式及びみなし保有株式に区分して、銘柄ごとに次に掲げる事項を具体的に記載すること。この場合において、特定投資株式及びみなし保有株式に同一銘柄の株式が含まれる場合にそれぞれの株式数(みなし保有株式にあっては、議決権行使権限の対象となる株式数をいう。以下dにおいて同じ。)及び貸借対照表計上額を合算していない場合には、その旨を記載すること。
⒜ 銘柄
⒝ 株式数
⒞ 貸借対照表計上額
⒟ 保有目的(みなし保有株式の場合には、当該株式につき議決権行使権限その他提出会社が有する権限の内容)
⒠ 提出会社の経営方針・経営戦略等、事業の内容及びセグメント情報と関連付けた定量的な保有効果(定量的な保有効果の記載が困難な場合には、その旨及び保有の合理性を検証した方法)
⒡ 株式数が増加した理由(最近事業年度における株式数がその前事業年度における株式数より増加した銘柄に限る。)
⒢ 当該株式の発行者による提出会社の株式の保有の有無

e 保有目的が純投資目的である投資株式を非上場株式とそれ以外の株式に区分し、当該区分ごとに次の⒜及び⒝に掲げる事項を記載すること。また、最近事業年度中に投資株式の保有目的を純投資目的から純投資目的以外の目的に変更したもの又は純投資目的以外の目的から純投資目的に変更したものがある場合には、それぞれ区分して、銘柄ごとに、銘柄、株式数及び貸借対照表計上額を記載すること。
⒜ 提出会社の最近事業年度及びその前事業年度における銘柄数及び貸借対照表計上額の合計額
⒝ 提出会社の最近事業年度における受取配当金、売却損益及び評価損益のそれぞれの合計額

f 提出会社が子会社の経営管理を行うことを主たる業務とする会社である場合における提出会社及びその連結子会社の中で、最近事業年度における投資株式の貸借対照表計上額(以下fにおいて「投資株式計上額」という。)が最も大きい会社(以下fにおいて「最大保有会社」といい、最近事業年度における最大保有会社の投資株式計上額が提出会社の最近連結会計年度における連結投資有価証券(連結財務諸表規則第 30 条第1項第1号に規定する投資有価証券(連結財務諸表規則第 30 条第2項に規定する非連結子会社及び関連会社の株式を除く。)をいう。)に区分される株式の連結貸借対照表計上額の3分の2を超えない場合には、最近事業年度における最大保有会社及び投資株式計上額が次に大きい会社)について、会社ごとに区分して、bからeまでに準じて記載すること。この場合、dにおける資本金額は提出会社の資本金額とし、最大保有会社以外の会社(提出会社が最大保有会社に該当しない場合における提出会社を含む。)について、dに規定する「大きい順の 60 銘柄」は「大きい順の 10 銘柄」に読み替えるものとする。

実際の開示にあたっては、投資家の期待に応えることができるよう、金融庁が2021年3月22日に公表した「政策保有株式:投資家が期待する好開示のポイント(例)」を参考にしたいところです。

以上の開示を前提にすると、政策投資目的の株式を保有する上場会社では、次のような体制を整えることが望ましいと言えます。

<方針の整備>
・純投資と政策投資の区分の基準や考え方を整備する。
・純投資株式および政策保有株式の保有方針と売却方針を整備し、当該方針に沿った運用を行う。
・政策保有株式の縮減に関する方針・考え方など、政策保有に関する方針を整備する。

<保有の適否の検証>
・毎年、取締役会で、個別の政策保有株式について、保有目的が適切か、保有に伴う便益やリスクが資本コストに見合っているか、事業の収益獲得への貢献度合い等の観点も含めた保有の合理性等を具体的に精査し、保有の適否を検証する。時価(含み益)や配当金による検証だけでは純投資の評価と同じになってしまうことから、政策保有株式の評価としては別途の検証が求められる点に注意する。
・検証の内容について開示する。

<増加時>
・政策保有株式の数や銘柄が増加する場合、社内承認にあたっては「取引関係の強化」といった抽象的な理由で説明するのではなく、保有先企業のノウハウやライセンスの利用等、経営戦略上、どのように活用するかを具体的に説明する。そして、当該具体的な理由を開示する(開示にあたっては機密情報に配慮する)。

<議決権行使時>
・政策保有株式に係る議決権の行使について、適切な対応を確保するための具体的な基準を策定・開示し、その基準に沿った対応を行う。

<相互保有時>
・提出会社が政策保有株式として株式を保有している相手方が、当該提出会社の株主となっている場合(相互保有)、理由を明確にするとともに、当該相手方に保有されている株式の数を集計する。

さて、以上の解説をご覧いただければ、誰の発言がGOOD発言か、もうお分かりですね。正解は以下のとおり。

<正解>
GOOD発言はこちら

取締役B:「純投資であれば期待投資リターンについての資料があってしかるべきですし、政策投資であれば今回の投資がどのように事業にプラスに働くのかについての資料があってしかるべきです。現時点では、決議にあたっての提出資料が不足しているのではないでしょうか。」
コメント:株式取得の目的が純投資か政策投資かで取締役会に提出する資料の内容は変わってきます。すなわち、純投資であれば『市場では実力より低く評価されていると投資担当者が判断した理由』『期待リターンとして想定している内容』『売却方針』『ロスカットルール』といった資料が必要になるはずです。一方、政策投資であれば、『政策保有株式の保有方針との整合性』『具体的な保有目的(保有先企業のノウハウやライセンスの利用等、経営戦略上、どのように活用するかを具体的に説明した資料)』『保有に伴う便益やリスクが資本コストに見合っているかを判断した結果』『売却方針』といった資料が必要になるはずです。Bの発言は資料不足を理由に暗に議案の取り下げを迫る策であり、Goodです。A社内では純投資と政策投資の区分の基準や考え方が明確になっていないようなので、それを明らかにすることも提案できていれば、よりGoodでした。

取締役C:「当社の定款の目的には投資事業のことが触れられていません。政策投資ならともかく、純投資であれば、定款に掲げている目的との整合性を確認すべきと言えます。」
コメント:定款の目的に「投資事業」を明示していない上場会社が「純投資」を反復継続して行う場合は、アクティビストから定款違反ではないかと問題提起される可能性があります(政策投資であれば、既存の事業目的との関連性が高いので、同様の問題提起をされる可能性はありません)。Cの発言は、会社の憲法ともいえる定款との整合性へ注意を払うことを促したGood発言です。

BAD発言はこちら

取締役A:「投資時点で、純投資か政策投資かを明示しなければ投資できないわけではないと考えています。値上がりをすれば売却をするし、事業上の連携が可能になってくれば連携していけばよいだけの話です。」
コメント:取締役Bの発言からも分かるように、株式取得の目的が純投資か政策投資かで資料の内容は変わってくるはずであり、株式取得時には投資目的を明示すべきです。しかし、取締役Aの発言を要約すると、『目的が定まってはいないものの、投資をしたいので承認して欲しい』ということになります。目的が定まっていないものに会社の資金を投下するわけにはいきません。以上よりAの発言はBad発言です。