2021/06/08 上場子会社における「特別委員会」の設置の仕方と構成、審議事項(会員限定)

改訂コーポレートガバナンス・コード(以下、CGコード)の確定版が今週後半に公表される見込みだ(金曜日が有力)。当フォーラムの取材によると、改訂案からの変更点は字句修正のみの2か所で、実質的な変更はない模様。一方、改訂CGコードと同時に確定版が公表される投資家と企業の対話ガイドラインには2か所修正が入り、そのうちの1つは重要な修正とみられる。この点については確定版公表後、すぐにお伝えしたい。

本稿では、今回のCGコード改訂で新設された、上場子会社の利益相反取引を防止するための補充原則4-8③についてとり上げる。同原則に盛り込まれた「特別委員会」については、当局にも企業側から多くの質問が寄せられている模様だ。

利益相反取引 : 上場会社とその上場子会社の間に生じがちな利益相反の一般的な例として、親会社の要請を受け、上場子会社のサービスを親会社にだけ一般価格よりも割安の価格で提供した場合、親会社はコストダウンを図ることができる一方で、子会社の収益機会はその分損なわれ、ひいては子会社の一般株主の配当減や株価下落につながることになる。

<補充原則4-8③>
支配株主を有する上場会社は、取締役会において支配株主からの独立性を有する独立社外取締役を少なくとも3分の1以上(プライム市場上場会社においては過半数)選任するか、または支配株主と少数株主との利益が相反する重要な取引・行為について審議・検討を行う、独立社外取締役を含む独立性を有する者で構成された特別委員会を設置すべきである。

上記のとおり同原則は、支配株主を有する上場会社(すなわち上場子会社)に、①独立社外取締役を過半数(プライム市場上場会社の場合。それ以外の会社は3分の1以上)を選任するか、②「利益が相反する重要な取引・行為」について審議・検討を行う、独立社外取締役を含む独立性を有する者で構成された特別委員会を設置するか、のいずれかを求めている。すなわち、独立社外取締役を過半数揃えられない上場会社は「特別委員会」を設置することになる。

企業側からの質問で最も多いのが、特別委員会は「常設」しなければならないのかというものだ。結論から言えば、常設する必要はない。特別委員会は、「利益が相反する重要な取引・行為」が生じた場合のみ、テンポラリーで設置すればよいことが当フォーラムの取材により確認されている。

また、特別委員会の構成メンバーについて「全員が独立社外取締役でなければならないのか」との質問も聞かれるが、同原則が「独立社外取締役を“含む”独立性を有する者」と言っていることからも分かるように、メンバーの全員が独立社外取締役である必要はない。例えば独立社外取締役を1人、残りのメンバーを「独立性を有する者」とすることも可能である。ここでいう「独立性を有する者」とは、例えば大学教授などの有識者や弁護士などが考えられる。

このほか、そもそも「利益が相反する重要な取引・行為」とは何なのかとの質問も多いようだ。例えば部品の売買など、日常的に発生する親子会社間取引がこの「利益が相反する重要な取引・行為」に該当するのかどうかが企業側の最大の懸念事項となっているが、このような日常的な親子間取引は基本的に「利益が相反する重要な取引・行為」には該当せず、したがって、特別委員会の審議対象にする必要もない。特別委員会の審議対象となる「利益が相反する重要な取引・行為」とは、例えば子会社から親会社への営業譲渡が低額で行われた場合などが想定される。すなわち、同原則では「利益が相反する重要な取引・行為」が頻繁に起こることは想定されていないと言えよう。もっとも、日常的な親子間取引であっても、取引価格が相場よりも明らかに低いような場合は「利益が相反する重要な取引・行為」に該当し得る。また、営業譲渡等も含め、親子会社間における相場価格を逸脱した取引は、税務上、子会社から親会社への「寄付」とみなされ、親会社において相場価格と取引価格との差額が法人税の課税対象となるリスクもある点、留意したいところだ。

2021/06/07 バーチャルオンリー総会開催のための定款変更に関する想定問答

鳴り物入りで導入が決まったバーチャルオンリー株主総会(以下、バーチャルオンリー総会)だが、その根拠法となる産業競争力強化法の成立が、新旧対照表の一部に誤りが発覚したことなどにより遅れているのは既報のとおり(2021年5月24日のニュース「来年以降のバーチャルオンリー総会開催視野に定款変更実施する企業も 自社がとるべき対応は?」参照)。改正産業競争力強化法は「公布日(成立日)」から施行されることになっており、今国会が来週の水曜日(6月16日)までとされていることを踏まえると、今週の水曜か金曜には成立・施行される可能性が高いが、会社法が遅くとも株主総会の2週間前までに招集通知を発送することを求めている以上、ほとんどの上場企業にとってバーチャルオンリー総会の開催は事実上不可能になったと言える。

バーチャルオンリー株主総会 : リアル株主総会を開催せず、全出席者が遠隔地からインターネット等で参加する株主総会。日本の会社法では、株主総会を招集するには、開催する「場所」を定めることを求めていることから(会社法298条1項1号)、実現は困難とされている。
産業競争力強化法 : 日本経済の3つの歪みとされる「過剰規制」「過小投資」「過当競争」を是正するため、収益力の飛躍的な向上に向けた事業再編などの企業の取り組みを後押しする法律。

もっとも、当初から今年の6月総会は「様子見」というスタンスの企業が多かったことから、仮に産業競争力強化法が早期に成立していたとしても、バーチャルオンリー総会の開催に踏み切る企業は少数にとどまった可能性が高い。逆に言うと、検討・準備の時間が十分にある2022年の定時株主総会でバーチャルオンリー総会を開催しようという企業は一定数出て来ることが予想される。

改正産業競争力強化法上、バーチャルオンリー総会を開催するためには定款変更が必要であり、しかも、定款を変更するためには、「場所の定めのない株主総会(=バーチャルオンリー総会)」を開催できる旨を定款で定めることが「株主の利益の確保に配慮しつつ産業競争力を強化することに資する場合として経済産業省令・法務省令で定める要件()」・・・

このコンテンツは会員限定です。会員登録(有料)すると続きをお読みいただけます。

続きはこちら
まだログインがお済みでない場合は
ログイン画面に遷移します。
会員登録はこちらから

2021/06/07 バーチャルオンリー総会開催のための定款変更に関する想定問答(会員限定)

鳴り物入りで導入が決まったバーチャルオンリー株主総会(以下、バーチャルオンリー総会)だが、その根拠法となる産業競争力強化法の成立が、新旧対照表の一部に誤りが発覚したことなどにより遅れているのは既報のとおり(2021年5月24日のニュース「来年以降のバーチャルオンリー総会開催視野に定款変更実施する企業も 自社がとるべき対応は?」参照)。改正産業競争力強化法は「公布日(成立日)」から施行されることになっており、今国会が来週の水曜日(6月16日)までとされていることを踏まえると、今週の水曜か金曜には成立・施行される可能性が高いが、会社法が遅くとも株主総会の2週間前までに招集通知を発送することを求めている以上、ほとんどの上場企業にとってバーチャルオンリー総会の開催は事実上不可能になったと言える。

バーチャルオンリー株主総会 : リアル株主総会を開催せず、全出席者が遠隔地からインターネット等で参加する株主総会。日本の会社法では、株主総会を招集するには、開催する「場所」を定めることを求めていることから(会社法298条1項1号)、実現は困難とされている。
産業競争力強化法 : 日本経済の3つの歪みとされる「過剰規制」「過小投資」「過当競争」を是正するため、収益力の飛躍的な向上に向けた事業再編などの企業の取り組みを後押しする法律。

もっとも、当初から今年の6月総会は「様子見」というスタンスの企業が多かったことから、仮に産業競争力強化法が早期に成立していたとしても、バーチャルオンリー総会の開催に踏み切る企業は少数にとどまった可能性が高い。逆に言うと、検討・準備の時間が十分にある2022年の定時株主総会でバーチャルオンリー総会を開催しようという企業は一定数出て来ることが予想される。

改正産業競争力強化法上、バーチャルオンリー総会を開催するためには定款変更が必要であり、しかも、定款を変更するためには、「場所の定めのない株主総会(=バーチャルオンリー総会)」を開催できる旨を定款で定めることが「株主の利益の確保に配慮しつつ産業競争力を強化することに資する場合として経済産業省令・法務省令で定める要件()」に該当することについて、経済産業大臣および法務大臣の確認を受けることが求められる(改正産業競争力強化法66条)。ところが、今6月総会で定款変更を予定している企業は、武田薬品工業、三井住友フィナンシャルグループ、アイ・ア-ルジャパンホールディングス、リクルートホールディングス、Zホールディングス、アステリア、ソフトバンクグループ、ソフトバンク、LIXIL、リンクモンスターのわずか10社しかない(2021年5月30日時点)。

 当フォーラムの取材によると、①株主総会で用いる通信の責任者を置くこと、②通信障害に対する方針を定めること、③情報リテラシーに格差のある株主への配慮に関する方針を定めること、とされる見込み。

これには、改正産業競争力強化法施行後2年間は、経済産業大臣および法務大臣の確認を受ければ「定款の定めがある」ものとみなす(すなわち、定款変更のための株主総会を開催する必要がない)との経過措置(同法附則3条1項)が設けられていることが影響していると思われる(上記で引用のニュース参照)。すなわち、2022年の定時株主総会は現在の定款のままでバーチャルオンリー総会とすることが可能というわけだが、裏を返せば、上記10社以外の企業が2022年の定時株主総会をバーチャルオンリー総会とするには、経過措置の適用を受けるしか選択肢がないとも言える(定款変更のための臨時株主総会を開催する場合を除く)。

経過措置の適用を受けて2022年の定時株主総会をバーチャルオンリー総会にしようと考えている企業が注意しなければならないのが、改正産業競争力強化法上、経過措置の適用を受けて開催するバーチャルオンリー総会では、「場所の定めのない株主総会」を開催できるようにするための定款変更はできないということだ(改正産業競争力強化法附則3条2項)。すなわち、定款を変更するためには、「場所の定めのある」株主総会(ハイブリッド出席型バーチャル株主総会は場所も定めることになるので可)の開催は必須ということである。したがって、今6月総会で定款変更をしなかった企業が2022年の定時株主総会は経過措置の適用を受けてバーチャルオンリー総会とし、経過措置の適用期限切れ後はいつでもバーチャルオンリー総会を開催できるようにするためには、(施行日次第ではあるが、経過措置の適用期限が切れている可能性が高い)2023年において「場所の定めのある」定時株主総会を開催し、そこで定款変更を行うしかない(臨時株主総会を開催する場合を除く)。この場合、その後バーチャルオンリー総会を開催できるのは最短で2024年の定時株主総会以降となる。ワクチンの効果が見え始めて来た中では考えにくいシナリオかもしれないが、万が一2023年の定時株主総会時に変異株が猛威を振るっていたとしても、企業は「場所」を用意せざるを得ない。

ハイブリッド出席型バーチャル株主総会 : リアル株主総会の場所に在所しない株主が、インターネット等の手段を用いて、文字通り株主総会に会社法上の「出席」をすることができる株主総会。

今6月の株主総会では、「バーチャルオンリー株主総会開催を可能にするための定款変更をしないのはなぜか」との質問が株主から出る可能性もある。一般的な回答としては、「2022年は経過措置の適用を受けバーチャルオンリー総会を開催できるから」「2023年の定時株主総会時にはコロナ禍は収束していることが予想されるから」といったものが想定される。仮に経過措置の適用を受けて開催するバーチャルオンリー総会では定款変更はできないという改正産業競争力強化法の規定を熟知している株主から「2023年にコロナ禍が収束しているという保証はない。リスクマネジメントの意識が低いのではないか」といった厳しい“突っ込み”があった場合には、「2022年は、コロナ禍の状況を見ながら、通常の会場型株主総会あるいはハイブリッド出席型バーチャル株主総会を開催し、定款を変更をすることも視野に入れている」と回答することも考えられよう。

2021/06/04 スキル・マトリックス等の開示求める補充原則4-11①のうち「文章」での説明が求められる部分

間もなく東証より確定版が公表される改訂コーポレートガバナンス・コードでは、スキル・マトリックス等の開示を求める改訂補充原則4-11①(下記参照)が新設されたが、「スキル・マトリックスをはじめ」という言い回しから分かるように、スキル・マトリックスは「スキル等の組み合わせ」を開示する手段の一つとして例示されているに過ぎない。したがって、「スキル等の組み合わせ」の開示には必ずしも「表」を使う必要はなく、文章による説明でも問題ないことは既報のとおりだ(2021年5月10日のニュース『表を用いない「取締役の有するスキル等の組み合わせ」の開示』参照)。

改訂補充原則4-11①(赤字が改訂部分)
取締役会は、経営戦略に照らして自らが備えるべきスキル等を特定した上で、取締役会の全体としての知識・経験・能力のバランス、多様性及び規模に関する考え方を定め、各取締役の知識・経験・能力等を一覧化したいわゆるスキル・マトリックスをはじめ、経営環境や事業特性等に応じた適切な形で取締役の有するスキル等の組み合わせを取締役の選任に関する方針・手続と併せて開示すべきである。その際、独立社外取締役には、他社での経営経験を有する者を含めるべきである。

むしろ、いくら〇がバランス良く配置されたスキル・マトリックスを作っても、それを開示するだけで同原則をコンプライしているとは言い難い。スキル・マトリックスという言葉が独り歩きしている感もある同原則だが、実は同原則の核となるのは・・・

このコンテンツは会員限定です。会員登録(有料)すると続きをお読みいただけます。

続きはこちら
まだログインがお済みでない場合は
ログイン画面に遷移します。
会員登録はこちらから

2021/06/04 スキル・マトリックス等の開示求める補充原則4-11①のうち「文章」での説明が求められる部分(会員限定)

間もなく東証より確定版が公表される改訂コーポレートガバナンス・コードでは、スキル・マトリックス等の開示を求める改訂補充原則4-11①(下記参照)が新設されたが、「スキル・マトリックスをはじめ」という言い回しから分かるように、スキル・マトリックスは「スキル等の組み合わせ」を開示する手段の一つとして例示されているに過ぎない。したがって、「スキル等の組み合わせ」の開示には必ずしも「表」を使う必要はなく、文章による説明でも問題ないことは既報のとおりだ(2021年5月10日のニュース『表を用いない「取締役の有するスキル等の組み合わせ」の開示』参照)。

改訂補充原則4-11①(赤字が改訂部分)
取締役会は、経営戦略に照らして自らが備えるべきスキル等を特定した上で、取締役会の全体としての知識・経験・能力のバランス、多様性及び規模に関する考え方を定め、各取締役の知識・経験・能力等を一覧化したいわゆるスキル・マトリックスをはじめ、経営環境や事業特性等に応じた適切な形で取締役の有するスキル等の組み合わせを取締役の選任に関する方針・手続と併せて開示すべきである。その際、独立社外取締役には、他社での経営経験を有する者を含めるべきである。

むしろ、いくら〇がバランス良く配置されたスキル・マトリックスを作っても、それを開示するだけで同原則をコンプライしているとは言い難い。スキル・マトリックスという言葉が独り歩きしている感もある同原則だが、実は同原則の核となるのは「経営戦略に照らして自らが備えるべきスキル等を特定した上で」という部分だ。

スキル・マトリックス等を開示すること以上に重要なのは、「なぜそのスキル・マトリックス等を作ったのか」ということであり、それを投資家等に理解してもらうためには、経営戦略に照らして自らが備えるべきスキル等をいかにして特定したかを文章で説明する必要がある。また、「経営戦略に照らして・・・」とされている以上、経営戦略が明確になっていなければ「自らが備えるべきスキル等」を特定することもできない。すなわち、同原則への対応を検討するうえで一番最初にしなければならないのは、自社の経営戦略を見つめ直すことである。

経営戦略は各社によって異なるため、「経営戦略に照らして自らが備えるべきスキル等をいかにして特定したか」の説明も各社によって異なるはずだ。金融庁は有価証券報告書における開示の好事例を定期的に公表しているが、これらを真似るのではなく、あくまで自らの言葉で説明することが求められる。ひな型的な記載は論外と言えよう。
なお、当局には「スキルの組み合わせの開示対象者は社外取締役のみか、あるいは全取締役か」との質問が少なからず寄せられているようだが、同原則が「経営戦略に照らして」と前置きしていることを踏まえれば、スキル等の組み合わせの開示対象者から社内取締役が外れることはあり得ない。当然全取締役(社内および社外)が対象となる点、留意したい。

2021/06/03 ACGAのCGランキング 日本は7位→5位も“漁夫の利”との声

香港を拠点とし、アジアに投資するグローバルな機関投資家の団体であるアジア・コーポレート・ガバナンス協会(The Asian Corporate Governance Association=ACGA)は(2021年)5月20日、隔年で実施しているアジア諸国の“コーポレートガバナンス・ランキング”を含むコーポレートガバナンスに関する調査(サーベイ)結果「CG Watch」の2020年版を公表した。今回で10回目となる。本サーベイはアジア太平洋地域の12か国を対象としており、前回の2018年版は「コーポレートガバナンスに関する(on corporate governance)」ものとされていたが、今回からは「ESGのパフォーマンスに関する(on environmental, social and governance (ESG) performance)」ものへと位置付けが変更されている。なお、本サーベイは香港の投資銀行であるCLSAと共同で実施された。

ESG : 「Environmental(環境)」「Social(社会)」「Governance(企業統治)」の頭文字を組み合わせたもので、近年、特にグローバル機関投資家の間で、企業の投資価値を測る評価項目としての地位を確立している。

冒頭で触れたとおり、「CG Watch」では毎回、調査対象国の“コーポレートガバナンス・ランキング”を公表している。下表は現在の調査対象としている12か国が揃った2016年以降のランキング推移である。日本(薄い青の太線グラフ)は前回の7位からマレーシアと並ぶ5位に順位を上げた。7つのカテゴリーを合計したスコア(「Market score」と呼ばれる)は前回の54から今回は59.3に上昇しており、この2年間における改善が認められた形となっている。
56414a
もっともACGAによる寸評(Highlights)では「Ahead on climate change reporting, behind on company CG disclosure」、すなわち「気候変動レポートは進んでいるが、コーポレートガバナンス開示は遅れている」とされており、本サーベイの“核”と言えるコーポレートガバナンス分野への評価は必ずしも高いとは言えない。国別の各論では、日本のパートに” Fragmented reformer”とのタイトルが付けられている。要するに、改革が断片的であることを指摘しているものと思われる。

Fragmented : 断片的な、細分化された、切れ切れの
reformer : 改革者

実際、今回のランクアップはマレーシアとタイのスコアが伸びなかったことによる“漁夫の利”によるものとも言える。両国への寸評ではいずれも「政治的混乱(Political turmoil)」が「政府」カテゴリーのスコアを損なったと指摘、ACGAは両国のランクダウンは当然のこと(no surprise)と捉えている。ACGAの評価尺度では、日本のコーポレートガバナンスの実力は12か国中・・・

このコンテンツは会員限定です。会員登録(有料)すると続きをお読みいただけます。

続きはこちら
まだログインがお済みでない場合は
ログイン画面に遷移します。
会員登録はこちらから

2021/06/03 ACGAのCGランキング 日本は7位→5位も“漁夫の利”との声(会員限定)

香港を拠点とし、アジアに投資するグローバルな機関投資家の団体であるアジア・コーポレート・ガバナンス協会(The Asian Corporate Governance Association=ACGA)は(2021年)5月20日、隔年で実施しているアジア諸国の“コーポレートガバナンス・ランキング”を含むコーポレートガバナンスに関する調査(サーベイ)結果「CG Watch」の2020年版を公表した。今回で10回目となる。本サーベイはアジア太平洋地域の12か国を対象としており、前回の2018年版は「コーポレートガバナンスに関する(on corporate governance)」ものとされていたが、今回からは「ESGのパフォーマンスに関する(on environmental, social and governance (ESG) performance)」ものへと位置付けが変更されている。なお、本サーベイは香港の投資銀行であるCLSAと共同で実施された。

ESG : 「Environmental(環境)」「Social(社会)」「Governance(企業統治)」の頭文字を組み合わせたもので、近年、特にグローバル機関投資家の間で、企業の投資価値を測る評価項目としての地位を確立している。

冒頭で触れたとおり、「CG Watch」では毎回、調査対象国の“コーポレートガバナンス・ランキング”を公表している。下表は現在の調査対象としている12か国が揃った2016年以降のランキング推移である。日本(薄い青の太線グラフ)は前回の7位からマレーシアと並ぶ5位に順位を上げた。7つのカテゴリーを合計したスコア(「Market score」と呼ばれる)は前回の54から今回は59.3に上昇しており、この2年間における改善が認められた形となっている。
56414a
もっともACGAによる寸評(Highlights)では「Ahead on climate change reporting, behind on company CG disclosure」、すなわち「気候変動レポートは進んでいるが、コーポレートガバナンス開示は遅れている」とされており、本サーベイの“核”と言えるコーポレートガバナンス分野への評価は必ずしも高いとは言えない。国別の各論では、日本のパートに” Fragmented reformer”とのタイトルが付けられている。要するに、改革が断片的であることを指摘しているものと思われる。

Fragmented : 断片的な、細分化された、切れ切れの
reformer : 改革者

実際、今回のランクアップはマレーシアとタイのスコアが伸びなかったことによる“漁夫の利”によるものとも言える。両国への寸評ではいずれも「政治的混乱(Political turmoil)」が「政府」カテゴリーのスコアを損なったと指摘、ACGAは両国のランクダウンは当然のこと(no surprise)と捉えている。ACGAの評価尺度では、日本のコーポレートガバナンスの実力は12か国中「5~7位」と考えておくのが妥当と言えそうだ。

下表は、7つの各カテゴリーおよび全カテゴリーの合計について、前回と今回のサーベイにおけるスコアを比較したものである。特に大きく伸びたカテゴリーは「規制当局(Regulators)」と「ガバナンス規制(CG rules)」で、それぞれが10ポイント程度上昇している。「規制当局」のカテゴリーでは、金融庁と東証による取り組み(市場区分の見直しなどが該当するものと推測される)が評価されている。ガバナンス規制については、東証による「ESG情報開示実践ハンドブック」の公表や、コーポレート・ガバナンス報告書(以下、CG報告書)における「グループ経営の考え方」の開示充実(2020年2月25日のニュース「CG報告書の記載要領改訂、“利益相反関係”踏まえた悩ましい記載求める」参照)などが評価された。

56414b

なお、間もなく確定する改訂コーポレート・ガバナンスコード(以下、CGコード)は今回の評価範囲には含まれていないが、同改訂案に対してACGAは「物足りない(not a little more ambitious)」とコメントしている。例えばプライム市場上場会社では、独立社外取締役の占める割合は3分の1でなく「2分の1」は必要と考えている模様。

「上場会社(Listed companies)」とのカテゴリーのスコアは8ポイント低下した。同カテゴリーは、15の大型株と10の中型株をサンプルとして、専ら情報開示についてリサーチした結果を示している。ポジティブな評価としては、有価証券報告書における記述情報やCG報告書におけるCGコード対応の説明、ウェブサイトにおけるIR情報、そして多くのTCFD賛同企業による気候変動リスクの開示が挙げられている。

記述情報 : 有価証券報告書における「経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」「事業等のリスク」、「経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析(MD&A)」を指す。2019年1月31日に公布・施行された開示府令により、2020年3月期決算企業から記載内容の充実が求められることとなった。
TCFD : 主要国の金融当局(中央銀行、金融監督当局、財務省)やIMF(国際通貨基金)、世界銀行、BIS(国際決済銀行)、OECD(経済協力開発機構)などで構成される国際的な金融システムの安定を目的とする組織である金融安定理事会(FSB)が設置した組織。TCFDとは「Task Force on Climate-related Financial Disclosures」の略である。TCFDが2017年6月に公表した最終提言は、気候変動リスクに関する情報開示のフレームワーク(枠組み)のグローバルスタンダードになりつつある。この開示フレームワークは制度開示書類、つまり日本においては有価証券報告書への適用を想定しているが、日本においては現状、金融庁が気候変動リスクについて「開示義務化の予定はない」と明言しており、有価証券報告書だけでなく、統合報告書など投資家向け任意開示書類を含む開示媒体への“自主的な”記載が推奨されている。

一方で、ネガティブな評価の理由としては以下のようなものが挙げられている。キーワードとなる原文の英語表現と併せると、いかに強い論調で批判されているか明確に伝わるはずだ。

① 指名・報酬委員会の活動に関する開示が定型文(boilerplate)である
② 監査報告書の記載が定型的(formulaic)で役に立たない(unhelpful)
③ 営業費用および買掛金・売掛金の詳細が驚くほど不十分(surprisingly poor)
④ 取締役会の多様性に関する方針・計画が依然として不透明(unclear)
⑤ 筆頭独立社外取締役の選任は非常に稀である(extremely rare)
⑥ 報酬開示はアジアのベストプラクティスに大きく遅れている(well behind)
⑦ ESGの重要性(materiality)について議論している企業はほとんどない

materiality : 「重要性」を意味するCSR用語であり、マテリアリティを開示する目的は「自社にとって重要な課題は何か?」を明らかにすることにある。

改訂CGコード案では、上記①は補充原則4-10①(プライム市場上場会社は委員会の権限・役割等を開示すべき)に、④は補充原則4-11①(いわゆるスキル・マトリックスなどを開示すべき)に、⑦は補充原則2-3①(重要な経営課題としてサステナビリティ課題に対する取り組みを検討すべき)にそれぞれ反映されている。また⑤は今回の改訂には盛り込まれなかったものの、金融庁のフォローアップ会議においては複数の委員から強い要望が相次いだ事項である。上場会社は今回のACGAサーベイの結果から機関投資家のニーズが高い事項を再確認したうえで、そのニーズに応えるCGコード対応を検討すべきだろう。

2021/06/02 在宅勤務に必要な物品の従業員への支給

東京都、大阪府、愛知県など大都市圏を中心に6月20日まで緊急事態宣言が発令中だが、東京オリンピック(2021年7月23日~)を目前に控える中、仮に緊急事態宣言が予定通り6月20日に解除されたとしても、まん延防止等重点措置に移行する可能性が高まっている。今回の緊急事態宣言を受け在宅勤務の割合を増やす、あるいは原則在宅勤務のみとした上場会社も少なくないが、この状況はもうしばらく続くことになろう。

在宅勤務がある程度の期間継続することとなった場合に問題となるのが、在宅勤務に要する費用を会社がどこまで負担するべきかという問題だ。この線引きを決めるうえでは、・・・

このコンテンツは会員限定です。会員登録(有料)すると続きをお読みいただけます。

続きはこちら
まだログインがお済みでない場合は
ログイン画面に遷移します。
会員登録はこちらから

2021/06/02 在宅勤務に必要な物品の従業員への支給(会員限定)

東京都、大阪府、愛知県など大都市圏を中心に6月20日まで緊急事態宣言が発令中だが、東京オリンピック(2021年7月23日~)を目前に控える中、仮に緊急事態宣言が予定通り6月20日に解除されたとしても、まん延防止等重点措置に移行する可能性が高まっている。今回の緊急事態宣言を受け在宅勤務の割合を増やす、あるいは原則在宅勤務のみとした上場会社も少なくないが、この状況はもうしばらく続くことになろう。

在宅勤務がある程度の期間継続することとなった場合に問題となるのが、在宅勤務に要する費用を会社がどこまで負担するべきかという問題だ。この線引きを決めるうえでは、所得税上の取扱いも参考になる。国税庁は、在宅勤務費用を会社が負担した場合、従業員が受ける経済的利益を所得税の課税対象とするか否かをまとめた「在宅勤務に係る費用負担等に関するFAQ(源泉所得税関係)」を公表しているが、5月31日に同FAQを改訂し、新たに4つのFAQを追加している。

大部分は常識的な内容となっているが、その中で気を付ける必要があるのが、「在宅勤務に係る環境整備に関する物品の支給」についての取扱いを示した問3だ。本格的に在宅勤務に移行した場合、自宅の広さなど住環境によっては業務に集中できないといった事態が起こり得る。この場合、間仕切りを設置するなどして自宅を在宅勤務用にアレンジすることが考えられるが、今回追加された問3では、従業員の自宅に設置する間仕切り、カーテン、椅子、机、空気清浄機など「在宅勤務に係る環境整備に関する物品」を従業員に支給した場合(すなわち「あげた」場合)には、従業員に対する「現物給与」として所得税の課税対象にしなければならない(=源泉徴収が必要。以下同)とされているので要注意だ。一方、「あげる」のではなく「貸与」であれば所得税の課税対象外とされる。これは従業員が立替払いにより物品を購入した場合も同じであり、あくまで「貸与」という形をとらなければ従業員への現物給与となる(問5①注1参照)。従業員に「貸与」するということは、裏を返せばその物品は「会社の資産」であるため、会社としては在宅勤務への移行に伴い従業員に何を貸与しているか管理する必要がある。これは経理部門等に小さくない事務負担を生むことになりそうだ。

また、いまや自宅に消毒液やマスクなどコロナ対策用品を常備しているという人がほとんどだが、今回追加された問4では、「在宅勤務のために通常必要な」範囲内で在宅勤務の従業員が購入したマスク、石鹸、消毒液、消毒用ペーパー、手袋などの費用を会社が従業員に支給した場合には、当該費用を従業員への給与として課税する必要はないとしている。問4では、「在宅勤務のために通常必要な費用」として、「勤務時に使用する通常必要なマスク等の消耗品費」を例示している。例えば家族が使用する分のマスク等の購入費用まで企業が負担すれば、その分は給与課税の対象としなければならないということになる。

このほか今回のFAQの更新では、感染や感染予防を念頭においた費用に関する問10問11も追加されている。問10は感染が疑われる従業員をホテル等で勤務させた場合のホテル等の利用料やホテル等までの交通費等を旅費規程等に基づいて会社が負担した場合には従業員への給与として課税する必要がないこと、一方、問11では、感染予防のため従業員が「自己判断」で支出した在宅勤務のスペースを消毒するため外部業者への委託費用やPCR検査費用は、従業員への給与として課税する必要があることを明かにしている。いずれも給与課税の対象とすべきかどうかは「業務上の必要性」が分岐点となる(業務上の必要性がなければ給与として課税)。後々税務調査を受けた際に従業員の自己判断によるものでないことを証明するために、会社の承認プロセス(例えば承認申請書の提出を求める)を用意しておく必要があろう。

2021/06/01 【2021年6月の課題】投資家の問題意識に対する自社の取り組み

2021年6月の課題

生命保険協会が毎年投資家、企業に実施しているアンケート調査結果の最新版が4月に公表されています。

そこには、企業に向け以下の10個の提言が掲げられています(4ページ参照)。
①中長期的な株主還元拡大(配当性向30%以上)
②資本コストを踏まえたROEの目標設定と水準向上
③社外取締役に期待する役割・実績についての情報開示を充実
④デジタル化をはじめとする中長期的な投資戦略の情報開示・対話充実
⑤経営層による対話への関与推進
⑥ESGを含む非財務情報の更なる開示
⑦反対比率が高い議案に対する説明充実
⑧ESG取組の情報開示における、統合報告書等の活用
⑨ESG取組の中期経営計画への取込
⑩気候変動が企業活動に与える影響に関する情報開示充実と、情報活用の促進
(企業向けに限ったため出典資料中の番号とは一致しない)

それぞれの提言について、投資家の問題意識を踏まえたうえで、自社の取り組みの方向性を検討してみてください。

このコンテンツは会員限定です。会員登録(有料)すると続きをお読みいただけます。

模範解答を見る
まだログインがお済みでない場合はログイン画面に遷移します。
会員登録はこちらから